説明

コイル内蔵基板および電子装置

【課題】コイル導体の特性を考慮しつつ、IC素子およびコイル導体の放熱性を向上させること。
【解決手段】コイル内蔵基板1は、フェライト基体11と、フェライト基体11内に設けられたコイル導体12と、フェライト基体11の上面に設けられたIC素子用導体層14と、IC素子用導体層14およびコイル導体12に熱的に結合されておりフェライト基体11の表面に熱を伝導するようにフェライト基体11内に設けられた熱伝導経路13とを含んでいる。熱伝導経路13は、フェライト基体11よりも低い比透磁率およびフェライト基体11よりも高い熱伝導率を有する材料を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電子機器等において用いられるコイル内蔵基板および電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話等の電子機器の電源装置等においてコイル内蔵基板が用いられている。コイル内蔵基板は、フェライト基体と、フェライト基体内に設けられたコイル導体とを含んでいる。例えば、IC素子が、コイル内蔵基板上に実装されるとともに、コイル導体に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−158975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイル内蔵基板のコイル導体における発熱およびコイル内蔵基板に実装されるIC素子における発熱によって、IC素子の動作に影響が生じる可能性がある。したがって、コイル内蔵基板においては、コイル導体の特性を考慮しつつIC素子およびコイル導体の放熱性を向上させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様によれば、コイル内蔵基板は、フェライト基体と、フェライト基体内に設けられたコイル導体と、フェライト基体の上面に設けられたIC素子用導体層と、IC素子用導体層およびコイル導体に熱的に結合されておりフェライト基体の表面に熱を伝導するようにフェライト基体内に設けられている熱伝導経路とを含んでいる。熱伝導経路は、フェライト基体よりも低い比透磁率およびフェライト基体よりも高い熱伝導率を有する材料を含んでいる。
【0006】
本発明の他の態様によれば、電子装置は、上記構成のコイル内蔵基板と、コイル内蔵基板のIC素子用導体層上に実装されたIC素子とを含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によるコイル内蔵基板は、IC素子用導体層およびコイル導体に熱的に結合されておりフェライト基体の表面に熱を伝導するようにフェライト基体内に設けられている熱伝導経路を含んでおり、熱伝導経路が、フェライト基体よりも低い比透磁率およびフェライト基体よりも高い熱伝導率を有する材料を含んでいることによって、コイル導体の特性を向上させつつIC素子およびコイル導体の放熱性を向上させることができる。
【0008】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のコイル内蔵基板と、コイル内蔵基板のIC素子用導体層上に実装されたIC素子とを含んでいることによって、コイル導体の特性が向上されておりかつIC素子およびコイル導体における放熱性が向上されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるコイル内蔵基板を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示されたコイル内蔵基板の縦断面図である。
【図3】図1に示されたコイル内蔵基板の下面図である。
【図4】図2に示された電子装置の第1の変形例を示す縦断面図である。
【図5】図2に示された電子装置の第2の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
本発明の実施形態における電子装置は、図1および図2に示されているように、コイル内蔵基板1と、コイル内蔵基板1に実装されたIC素子2とを含んでいる。コイル内蔵基板1は、フェライト基体11と、フェライト基体11内に設けられたコイル導体12および熱伝導経路13と、フェライト基体11の上面に設けられたIC素子用導体層14と、フェライト基体11の下面に設けられた実装用導体層15とを含んでいる。図1において、コイル内蔵基板は、仮想のxyz空間内に設けられており、上方向とは仮想のz軸の正方向のことをいう。
【0012】
フェライト基体11は、複数のフェライト層11a〜11eを含んでおり、複数のフェライト層11a〜11eは互いに積層されている。複数のフェライト層11a〜11eのうちフェライト基体11の表面部に位置するフェライト層11aおよび11eを表面フェライト層11aおよび11eといい、表面フェライト層11aおよび11eの間に設けられたフェライト層11b〜11dを介在フェライト層11b〜11dという。フェライト基体11の材料例は、例えば、ZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe
,SrFeまたはCuFeである。
【0013】
コイル導体12は、平面的に複数回巻かれた形状を有している。図1および図2に示された例において、コイル導体12は、複数の層にわたって設けられており、複数の層に設けられたコイル導体12は、互いに電気的に接続されている。コイル導体12の材料例は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)または銀合金等である。
【0014】
熱伝導経路3は、IC素子用導体層14およびコイル導体12に熱的に結合されており、フェライト基体11の下面に熱を伝導するようにフェライト基体11内に設けられている。図1および図2に示された例において、熱伝導経路3は、IC素子用導体層14およびコイル導体12に接している。熱伝導経路3は、フェライト基体11よりも低い比透磁率およびフェライト基体11よりも高い熱伝導率を有する材料を含んでいる。熱伝導経路3の材料例は、非磁性フェライト、アルミナまたは窒化アルミ等である。
【0015】
IC素子用導体層14は、熱伝導経路3上に設けられており、実装用導体層15はフェライト基体11の下面に設けられている。図1および図2等において構成の一部が省略されているが、IC素子用導体層14はコイル導体12に電気的に接続されており、コイル導体12は実装用導体層15に電気的に接続されている。
【0016】
IC素子2は、コイル内蔵基板1のIC素子用導体層14に実装されており、コイル導体2に電気的に接続されている。
【0017】
本実施形態のコイル内蔵基板1において、コイル導体12およびIC素子用導体層14に熱的に結合された熱伝導経路3が、フェライト基体11よりも低い比透磁率およびフェライト基体11よりも高い熱伝導率を有する材料を含んでいることによって、コイル導体12の特性を向上させつつIC素子2およびコイル導体12の放熱性を向上させることができる。さらに詳細には、本実施形態のコイル内蔵基板1において、フェライト基体11よりも低い比透磁率を有する熱伝導経路13がコイル導体12の上方及び下方に設けられていることによって、コイル導体12の周りに発生する磁束による磁気飽和が起こりにくくなり、コイル導体12
の重畳特性を向上させることができる。また、本実施形態のコイル内蔵基板1において、フェライト基体11よりも高い熱伝導率を有する熱伝導経路13がコイル導体12およびIC素子用導体層14に熱的に結合されていることによって、コイル導体12およびIC素子用導体層14における放熱性が向上されている。図2において、IC素子用導体層14およびコイル導体12における熱の伝導がブロック矢印によって模式的に示されている。
【0018】
図2等に示された構成の第1の変形例について図4を参照して説明する。図2等に示された構成において、熱伝送経路13の幅がコイル導体12の幅と同じであることに対して、第1の変形例において、熱伝送経路13の幅はコイル導体12の幅よりも狭い。熱伝送経路13の幅およびコイル導体12の幅とは、図4における部分拡大図において示されているように、縦断面図における熱伝送経路13およびコイル導体12それぞれの横方向の長さのことをいう。第1の変形例において、熱伝送経路13の幅がコイル導体12の幅よりも狭いことによって、図2等に示された構成に比べて、コイル導体12の周りのフェライト基体11の量を多くすることができ、コイル導体12のインダクタンス値を増大させることができる。
【0019】
図2等に示された構成の第2の変形例について図5を参照して説明する。図2等に示された構成において、熱伝送経路13の幅がコイル導体12の幅と同じであることに対して、第2の変形例において、熱伝送経路13の幅はコイル導体12の幅よりも広い。第2の変形例において、熱伝送経路13の幅がコイル導体12の幅よりも広いことによって、図2等に示された構成に比べて、IC素子2およびコイル導体12における放熱性を向上させることができる。
【0020】
本実施形態の電子装置は、コイル内蔵基板1と、コイル内蔵基板1のIC素子用導体層14上に実装されたIC素子2とを含んでいることによって、コイル導体12の特性が向上されておりかつIC素子2およびコイル導体12における放熱性が向上され、IC素子2の動作特性が向上されている。
【符号の説明】
【0021】
1 コイル内蔵基板
11 フェライト基体
11a〜11b フェライト層
12 コイル導体
13 熱伝導経路
14 IC素子用導体層
15 実装用導体層
2 IC素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト基体と、
該フェライト基体内に設けられたコイル導体と、
前記フェライト基体の上面に設けられたIC素子用導体層と、
前記IC素子用導体層および前記コイル導体に熱的に結合されており、前記フェライト基体の下面に熱を伝導するように前記フェライト基体内に設けられている熱伝導経路とを備えており、
該熱伝導経路が、前記フェライト基体よりも低い比透磁率および前記フェライト基体よりも高い熱伝導率を有する材料を含んでいることを特徴とするコイル内蔵基板。
【請求項2】
前記熱伝導経路の幅が前記コイル導体の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1記載のコイル内蔵基板。
【請求項3】
前記熱伝導経路の幅が前記コイル導体の幅よりも広いことを特徴とする請求項1記載のコイル内蔵基板。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコイル内蔵基板と、
該コイル内蔵基板の前記IC素子用導体層上に実装されたIC素子とを備えていることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98311(P2013−98311A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238959(P2011−238959)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】