説明

コイル洗浄装置

【課題】鋼帯を巻き取ったコイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れを除去することが可能なコイル洗浄装置を提供する。
【解決手段】鋼帯を巻き取ったコイル1が当該コイルの内周で支持された状態で洗浄液の付与された拭き取り材8をコイル外周の予め設定された拭き取り部分に所定の押し付け力で押し付け、洗浄液の付与された拭き取り材8がコイル外周の拭き取り部分に所定の押し付け力で押し付けられた状態で当該洗浄液の付与された拭き取り材8をコイル外周の周方向の何れか一方に移動する。二つのテンションロール4に所定の張力で巻回されたゴムベルト5とコイル1の外周との間に挟まれた拭き取り材8をコイル外周の下側部分に所定の押し付け力で押し付けることにより、拭き取り材8のコイル外周への接触面圧が接触面内で均一化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼帯を巻き取ったコイル外周の汚れを除去するコイル洗浄装置に関し、例えば圧延油が汚れとして外周に付着したコイルと汚れのないコイルを共通搬送設備に搭載する場合に汚れの付着したコイル外周の汚れを除去する場合などに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば設備数の低減、省スペースなどの目的から製鉄所では台車搭載装置などの搬送設備を共用化することがある。つまり、異なる鋼帯のコイルが台車搭載装置などの共通搬送設備に搭載されることがある。その際、共用化の対象となっている鋼帯コイルの何れかの外周に圧延油などの汚れが付着していると、その汚れが共通搬送設備に付着し、本来、汚れのないコイルにも付着する恐れがある。このような鋼帯コイルの外周の汚れを除去するコイル洗浄装置として、例えば下記特許文献1では、鋼帯を巻き取ったコイルを一対のクレードルロール上に搭載し、クレードルロールを回転駆動することでコイルを回転し、回転中のコイルの外周面に洗浄液を直接スプレーして塗布し、洗浄液と共に汚れである防錆油をクレードルロールで絞り落とすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−81967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば汚れの付着した鋼帯コイルを台車搭載装置などの共通搬送設備に搭載し、その汚れが共通搬送設備に付着し、汚れていない鋼帯コイルに付着するような場合、共通搬送設備に接触する汚れの付着した鋼帯コイルの外周部分は予め決まっているので、その予め決まった部分のみ汚れを除去すればよいが、前記特許文献1に記載されるコイル洗浄装置では、鋼帯コイルをクレードルロール上で回転させて外周面の汚れを除去するため、鋼帯コイルの外周面の予め設定された部分のみ汚れを除去することが困難である。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、鋼帯を巻き取ったコイル外周の予め設定された部分の汚れを除去することが可能なコイル洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のコイル洗浄装置は、鋼帯を巻き取ったコイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れを拭き取り材に吸着して除去するコイル洗浄装置であって、前記拭き取り材に洗浄液を付与する洗浄液付与装置と、前記コイルが当該コイルの内周で支持された状態で前記洗浄液の付与された拭き取り材を前記コイル外周の予め設定された拭き取り部分に予め設定された押し付け力で押し付ける押し付け装置と、前記押し付け装置によって前記洗浄液の付与された拭き取り材が前記コイル外周の予め設定された拭き取り部分に予め設定された押し付け力で押し付けられた状態で前記洗浄液の付与された拭き取り材を前記コイル外周の周方向の何れか一方に移動する拭き取り材移動装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記拭き取り材は幅広繊維体からなり、前記拭き取り材移動装置は、前記拭き取り材が巻かれた巻き戻しリールから当該拭き取り材を巻き取りリールで巻き取って当該拭き取り材が緩まない張力を付与することを特徴とするものである。
また、前記コイル外周の予め設定された拭き取り部分は前記内周で支持されたコイルが吊り下げられた状態での下側部分であり、前記押し付け装置は二以上のロールに予め設定された張力で巻回されたゴムベルトからなり、前記内周で支持されたコイルが吊り下げられた状態で前記ゴムベルトとコイルの外周との間に挟まれた拭き取り材をコイル外周の下側部分に予め設定された押し付け力で押し付けることを特徴とするものである。
また、前記ゴムベルトの移動速度と拭き取り材の移動速度とを同等としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
而して、本発明のコイル洗浄装置によれば、鋼帯を巻き取ったコイルが当該コイルの内周で支持された状態で洗浄液の付与された拭き取り材をコイル外周の予め設定された拭き取り部分に予め設定された押し付け力で押し付け、洗浄液の付与された拭き取り材がコイル外周の予め設定された拭き取り部分に予め設定された押し付け力で押し付けられた状態で洗浄液の付与された拭き取り材をコイル外周の周方向の何れか一方に移動することとしたため、コイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れのみを確実に除去することができる。
【0009】
また、拭き取り材を幅広繊維体で構成することにより洗浄液が含まれやすく、その拭き取り材が巻かれた巻き戻しリールから当該拭き取り材を巻き取りリールで巻き取って当該拭き取り材が緩まない張力を付与することとしたため、拭き取り材のコイル外周への接触状態が均一化され、コイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れをより一層確実に除去することができる。
【0010】
また、コイル外周の予め設定された拭き取り部分が内周で支持されたコイルが吊り下げられた状態での下側部分である場合に、内周で支持されたコイルが吊り下げられた状態で、二以上のロールに予め設定された張力で巻回されたゴムベルトとコイルの外周との間に挟まれた拭き取り材をコイル外周の下側部分に予め設定された押し付け力で押し付けることとしたため、拭き取り材のコイル外周への接触面圧が接触面内で均一化され、コイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れをより一層確実に除去することができる。
【0011】
また、ゴムベルトの移動速度と拭き取り材の移動速度とを同等としたことにより、拭き取り材のコイル外周への接触状態及び接触面圧がより一層均一化され、コイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れをより一層確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のコイル洗浄装置の概略構成図である。
【図2】図1のコイル洗浄装置における鋼帯コイルセットの説明図である。
【図3】共通搬送設備の説明図である。
【図4】図1のコイル洗浄装置の拭き取り材送り長さの説明図である。
【図5】図1のコイル洗浄装置の効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明のコイル洗浄装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のコイル洗浄装置の概略構成図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は平面図、図1(c)は操作盤及び制御盤の構成図である。本実施形態では、後段に詳述するように、圧延油の汚れが付着した鋼帯を巻き取ったコイルと、圧延油の汚れを除去したコイルを共用化された共通搬送設備に搭載する。汚れが付着したコイルをそのまま共通搬送設備に搭載すると共通搬送設備に汚れが付着し、その共通搬送設備に付着した汚れが、汚れを除去したコイルに再付着する。本実施形態のコイル洗浄装置は、圧延油の汚れが付着した鋼帯コイルの外周の予め設定された拭き取り部分、具体的にはクレーンで吊り下げられて共通搬送設備に搭載されるコイル外周の下側部分の汚れを除去する。
【0014】
圧延油の汚れが付着したコイル1は、図1(a)に示すように、トング2を介して図示しないクレーンから吊り下げられている。トング2は、汚れの再付着などを回避するため、汚れが付着したコイル1の内周を支持する。汚れが付着したコイル1は、クレーンから吊り下げられた状態のまま、後述する共通搬送設備にも搭載される。ちなみに、汚れが付着したコイル1はクレーンで吊り下げられたままの状態でコイル洗浄装置にもセットされるので、コイル洗浄装置には重量に対する強度はさほど重要でない。
【0015】
本実施形態のコイル洗浄装置のテーブル型本体3の上部にはコイル1の軸方向と平行な軸を有する二つのテンションロール4が回転自在に設けられ、それらのテンションロール4にゴムベルト5が巻回されている。二つのテンションロール4は、図示しないスプリングなどの付勢機構によって互いに離間する方向に付勢されており、その結果、ゴムベルト5には予め設定された張力が付与されている。ゴムベルト5は、少なくともコイル1の軸線方向寸法より幅広である。二つのテンションロール4の一方、図1(a)では図示左方のテンションロール4にテンションロール用モータ7が設けられており、テンションロール用モータ7によって図示左方のテンションロール4が予め設定された速度で回転し、その結果、ゴムベルト5も図1(a)の反時計回り方向に予め設定された速度で移動される。なお、ゴムベルト5は、純粋なゴムベルトの他、可撓性と弾性を有する材料からなる幅広のベルトであれば、それらもゴムベルトであると見なして使用可能である。
【0016】
前記二つのテンションロール4のうち、他方のテンションロール4、つまり図1(a)の図示右方のテンションロール4の下方には、拭き取り材8を巻き重ねた巻き戻しリール9が設けられ、一方のテンションロール4、つまり図1(a)の図示左方のテンションロール4の下方には、拭き取り材8を巻き取る巻き取りリール10が設けられている。巻き取りリール10には巻き取りリール用モータ11が設けられ、巻き取りリール用モータ11によって巻き取りリール10を予め設定された速度で回転し、その結果、拭き取り材8は図1(a)の図示右方から左方に予め設定された速度で且つ緩まない程度の予め設定された張力で移動される。なお、後述するように、拭き取り材8はゴムベルト5と同等の速度で移動される。巻き取りリール10は、拭き取り材8の巻き取り量、つまり巻き取りリール10に巻き取られた拭き取り材8の外径に応じて拭き取り材8の移動速度が変化する。そのため、例えば巻き取りリール10に巻き取られた拭き取り材8の外径又は巻き取り量に応じて巻き取りリール用モータ11の回転速度をフィードフォワード制御するとか、或いはゴムベルト5の移動速度と拭き取り材8の移動速度の差で巻き取りリール用モータ11の回転速度をフィードバック制御するなどの制御を行う。
【0017】
拭き取り材8は、二つのテンションロール4に巻回されているゴムベルト5の上面を通って巻き取りリール10に巻き取られる。前述のように、ゴムベルト5と拭き取り材8は同等の速度で移動されるので、ゴムベルト5の上面に搭載された拭き取り材8はゴムベルト5と同期して一緒に移動する。拭き取り材8は、後述する洗浄液が浸み込みやすく且つ洗浄液を含みやすい布や紙などの幅広の繊維体からなり、少なくともコイル1の軸線方向寸法より幅広であり、ゴムベルト5より幅狭であることが望ましい。なお、本実施形態では拭き取り材8にタオルを用いた。
【0018】
拭き取り材8の移動方向上流側、具体的には図1(a)の図示右方のテンションロール4の上方には、洗浄液を吹き出すノズル12が拭き取り材8の幅方向、即ちコイル1の軸線方向に拭き取り材8の幅相当分複数並べて配設されている。各ノズル12には、洗浄液タンク13内に貯留されている洗浄液がポンプ14を介して供給され、各ノズル12から拭き取り材8の上面に吹き付けられ、洗浄液は拭き取り材8に含浸される。なお、洗浄液には、圧延油などの汚れを分解しやすいアルコール(エタノール等)などの有機溶剤などが用いられる。
【0019】
また、コイル洗浄装置の本体3には、複数の光電スイッチからなるコイル高さセンサ17が設けられている(図では1セットのみを示す)。また、図1(c)に示す符号15はクレーンの機上操作盤、符号16はコイル洗浄装置の地上制御盤であり、互いに無線通信可能となっている。また、コイル洗浄装置の拭き取り材移動方向中央部側方には、コイル1を吊り下げて降ろす際のマーカとなるセンターマーカ18が配設されており、クレーン操作者は、このセンターマーカ18の中央の十字にコイル1の軸線が一致又はほぼ一致するようにコイル1を吊り下げて降ろす。
【0020】
このコイル洗浄装置では、前述のようにセンターマーカ18の中央の十字にコイル1の軸線が一致又はほぼ一致するようにコイル1をクレーンで吊り下げて降ろす。コイル高さセンサ17は、例えば図2に示すような4つの高さを検出できるように設定されている。即ち、コイル洗浄装置の上方でコイル1を一旦停止する待機高さA、待機高さAより下方でコイル1の下側部分の汚れを除去する上限高さB、上限高さBより下方でコイル1の下側部分の汚れを除去する下限高さC、下限高さCより下方で機械的に規制される規制高さDの4つの高さを検出することができ、例えば夫々の高さ毎に異なるライトが点灯或いは点滅する。上限高さBから下限高さCの高さ範囲内にコイル1の下側部分があるとき、当該下側部分によって拭き取り材8及びゴムベルト5が撓み、拭き取り材8はゴムベルト5の張力及び弾性力によって予め設定された押し付け力でコイル1の下側部分に押し付けられる。
【0021】
クレーン操作者は機上操作盤15を操作して待機高さAでコイル1を一旦停止し、次いで予め設定された所定の操作を行ってコイル1の下側部分が上限高さBと下限高さCの間に位置する状態で再びコイル1を停止する。その状態では、前述のように拭き取り材8はゴムベルト5の張力及び弾性力によって予め設定された押し付け力でコイル1の下側部分に押し付けられているので、前記クレーン操作者による所定の操作を無線通信によって地上制御盤16が受信したら、地上制御盤16ではポンプ14を作動させて洗浄液タンク13内の洗浄液をノズル12から拭き取り材8に吹き付け、次いでテンションロール用モータ7及び巻き取りリール用モータ11を駆動させて、前述のようにゴムベルト5及び拭き取り材8を同等の速度で予め設定された方向、即ちコイル1の周方向の何れか一方に移動させ、洗浄液が含浸した拭き取り材8によってコイル1の下側部分の汚れを除去する。拭き取り材8が後述する予め設定された所定送り長さだけ移動したらテンションロール用モータ7及び巻き取りリール用モータ11を停止してゴムベルト5及び拭き取り材8の移動を停止する。停止が確認されたら、クレーン操作者はコイル1を共通搬送設備に搭載すべくクレーンを操作する。
【0022】
例えば圧延の中間工程のコイル、つまり圧延油等の汚れが付着しているコイルと、梱包前のコイル、つまり汚れが除去されたコイルを共通搬送設備に搭載すると、汚れが共通搬送設備に付着し、その汚れが梱包前の汚れが除去されたコイルに再付着する。圧延時に潤滑や冷却を目的として使用する圧延油は、中間工程のコイルに付着している。圧延油は、経時変化により、埃や酸化した鉄粉を吸収して褐色の液体に変化する。この褐色の液体が溶融亜鉛メッキ鋼板などの白地の梱包前コイルに付着するとそのコイルは再度製造ラインに装入される。製造ラインでは、最外周側からコイルを巻きほぐし、圧延油(上記褐色の液体)が再付着した汚れ付着部分の鋼板を切断するため、歩留低下や作業コスト増加につながる。
【0023】
共通搬送設備としては、例えば図3に示す台車搭載装置が挙げられる。図3aは台車搭載装置の平面図であり、図中の符号101はスキッドと呼ばれるコイル受け台、符号102は台車リフトカーである。コイル1を台車103に搭載する場合、図3bに示すように、例えばコイル1をスキッド101に搭載したら台車リフトカー102でコイル1を上昇し、台車リフトカー102がコイル1の軸線方向に移動した後、台車リフトカー102が下降して台車103にコイル1が搭載される。コイル1の外周に汚れが付着していると、図3aに網掛けした部分に汚れが付着し、その汚れが図3aに示す梱包前のコイル104に再付着する。
【0024】
本実施形態のコイル洗浄装置は、共通搬送設備に付着するコイル1の下側部分の汚れのみを拭き取り材8で拭き取って除去するため、無駄がなく、効率がよい。また、クレーンはトング2によってコイル1の内周を支持しているため、汚れを除去した後のコイル外周の下側部分に汚れが再付着するのを抑制防止することができる。また、コイル外周の汚れを拭き取り材8に吸着して除去するため、汚れが飛散することがなく、飛散による汚れの再付着を抑制防止することができる。また、拭き取り材8はコイル1の周方向の一定方向に移動して汚れを除去するので、拭き取り材8に吸着された汚れがコイル1に再付着することがない。また、拭き取り材8に緩まない程度の張力を付与することにより、コイル1の外周への接触状態が均一化する。また、ゴムベルト5により拭き取り材8を予め設定された押し付け力でコイル1の外周に押し付けることにより、コイル1の外周への拭き取り材8の接触面圧が接触面内で均一化し、より一層汚れを確実に除去することができる。また、拭き取り材8とゴムベルト5を同等の速度で移動させることにより、拭き取り材8にしわが発生しにくく、コイル1の外周への接触状態がより一層均一化する。
【0025】
次に、前述した拭き取り材8の送り出し長さなどについて検討する。例えば、前記共通搬送設備のスキッド101に搭載されるコイル1の搭載状態が図4aのような場合、接触弧長Arcはコイル外径に応じて図4bのように求まる。拭き取り材8によるコイル1の下側部分の拭き取り長さについては、この接触弧長Arcに予め設定された所定長さ200mmを加算した値とした。洗浄液の吹き付け長さは、経験則から拭き取り長さの1/6倍とした。拭き取り材8の送り長さは、拭き取り長さと洗浄液吹き付け長さの和、即ち拭き取り長さの1.17倍と、洗浄液が吹き付けられた拭き取り材8が拭き取り開始位置に到達するまでの距離500mmを加算した値とした。洗浄液の単位面積当たりの吹き付け量は320mL/mとした。また、拭き取り材8の幅は2200mm、拭き取り材8の移動速度は200mm/sec、拭き取り材8の張力は10kgfとした。夫々の算出式を以下に示す。
【0026】
拭き取り長さ(m/コイル)=接触弧長Arc(m/コイル)+0.2(m)
洗浄液吹き付け長さ(m/コイル)=拭き取り長さ(m/コイル)×1/6
拭き取り材送り長さ(m/コイル)=拭き取り長さ(m/コイル)
+洗浄液吹き付け長さ(m/コイル)
+0.5(m)
【0027】
このコイル洗浄装置を用いて、外径が約1000〜2600mm、幅が約830〜1860mmのコイル、2500個のコイルについて1ヶ月間、コイル下側部分の汚れ除去を行い、梱包前の汚れが除去されたコイルに汚れが再付着する不合格率(={不合格コイル個数/(合格コイル個数+不合格コイル個数)}×100[%])を実施例として試験した。一方、比較例として、7日ごとに共通搬送設備を洗浄液とタオルにて作業者が拭き取り清掃し、同様に梱包前の汚れが除去されたコイルに汚れが再付着する不合格率を試験した。図5に試験の結果を示す。本実施形態のコイル洗浄装置による実施例では不合格率は1%であるのに対し、比較例では17%と不合格率が高い。
【0028】
このように本実施形態のコイル洗浄装置では、鋼帯を巻き取ったコイル1が当該コイルの内周で支持された状態で洗浄液の付与された拭き取り材8をコイル外周の予め設定された拭き取り部分に予め設定された押し付け力で押し付け、洗浄液の付与された拭き取り材8がコイル外周の予め設定された拭き取り部分に予め設定された押し付け力で押し付けられた状態で当該洗浄液の付与された拭き取り材8をコイル外周の周方向の何れか一方に移動することにより、汚れが再付着することなく、コイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れのみを確実に除去することができる。
【0029】
また、拭き取り材8を幅広繊維体で構成することにより洗浄液が含まれやすく、その拭き取り材8が巻かれた巻き戻しリール9から当該拭き取り材8を巻き取りリール10で巻き取って当該拭き取り材8が緩まない張力を付与することとしたため、拭き取り材8のコイル外周への接触状態が均一化され、コイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れをより一層確実に除去することができる。
【0030】
また、コイル外周の予め設定された拭き取り部分が内周で支持されたコイル1が吊り下げられた状態での下側部分である場合に、内周で支持されたコイル1が吊り下げられた状態で、二つのテンションロール4に予め設定された張力で巻回されたゴムベルト5とコイル1の外周との間に挟まれた拭き取り材8をコイル外周の下側部分に予め設定された押し付け力で押し付けることにより、拭き取り材8のコイル外周への接触面圧が接触面内で均一化され、コイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れをより一層確実に除去することができる。
【0031】
また、ゴムベルト5の移動速度と拭き取り材8の移動速度とを同等としたことにより、拭き取り材8にしわが発生しにくく、拭き取り材8のコイル外周への接触状態及び接触面圧がより一層均一化され、コイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れをより一層確実に除去することができる。
【0032】
なお、前記実施形態では、二つのテンションロール4とそれらに巻回されたゴムベルト5が本発明の押し付け装置を構成する。この押し付け装置としては、他の構成も考えられるが、幅広で、且つ比較的長い拭き取り材をコイル1の外周に均一な面圧で押し付けるにはゴムベルトが有効である。
また、汚れの付着したコイルと汚れの除去されたコイルが共有化する共通搬送設備は台車搭載装置以外であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1はコイル
2はトング
3は本体
4はテンションロール
5はゴムベルト
7はテンションロール用モータ
8は拭き取り材
9は巻き戻しリール
10は巻き取りリール
11は巻き取りリール用モータ
12はノズル
13は洗浄液タンク
14はポンプ
15は機上操作盤
16は地上制御盤
17はコイル高さセンサ
18はセンターマーカ
101はスキッド
102は台車リフトカー
103は台車
104は梱包前のコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯を巻き取ったコイル外周の予め設定された拭き取り部分の汚れを拭き取り材に吸着して除去するコイル洗浄装置であって、前記拭き取り材に洗浄液を付与する洗浄液付与装置と、前記コイルが当該コイルの内周で支持された状態で前記洗浄液の付与された拭き取り材を前記コイル外周の予め設定された拭き取り部分に予め設定された押し付け力で押し付ける押し付け装置と、前記押し付け装置によって前記洗浄液の付与された拭き取り材が前記コイル外周の予め設定された拭き取り部分に予め設定された押し付け力で押し付けられた状態で前記洗浄液の付与された拭き取り材を前記コイル外周の周方向の何れか一方に移動する拭き取り材移動装置とを備えたことを特徴とするコイル洗浄装置。
【請求項2】
前記拭き取り材は幅広繊維体からなり、前記拭き取り材移動装置は、前記拭き取り材が巻かれた巻き戻しリールから当該拭き取り材を巻き取りリールで巻き取って当該拭き取り材が緩まない張力を付与することを特徴とする請求項1に記載のコイル洗浄装置。
【請求項3】
前記コイル外周の予め設定された拭き取り部分は前記内周で支持されたコイルが吊り下げられた状態での下側部分であり、前記押し付け装置は二以上のロールに予め設定された張力で巻回されたゴムベルトからなり、前記内周で支持されたコイルが吊り下げられた状態で前記ゴムベルトとコイルの外周との間に挟まれた拭き取り材をコイル外周の下側部分に予め設定された押し付け力で押し付けることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル洗浄装置。
【請求項4】
前記ゴムベルトの移動速度と拭き取り材の移動速度とを同等としたことを特徴とする請求項3に記載のコイル洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−108151(P2013−108151A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255945(P2011−255945)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】