説明

コイル状鉄筋繰出し装置

【課題】手動工具で鉄筋先端部の矯正操作を行うことなく、楽に鉄筋加工装置に鉄筋の先端部を導入できるようにする。
【解決手段】鉄筋保持装置2を、上下軸心回りに回転自在に設置台3に取り付け、鉄筋保持装置2により保持されるコイル状鉄筋1の巻き径方向の外側で、且つ、コイル状鉄筋1の保持位置よりも高い位置に、横方向に繰出す鉄筋1を受ける一対の支持ローラ8を、それらの回転軸心を上下方向に沿わせた状態で横方向に並べて取り付ける支持体12を設け、一対の支持ローラ8よりも鉄筋保持装置2から遠ざかる側で一対の支持ローラ8間に対し遠近移動自在に支持体12に取り付ける曲り矯正ローラ13を設け、支持ローラ8を駆動回転するローラ駆動装置17を設けて鉄筋1を略直線状に矯正する押圧矯正機構4を構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状鉄筋がその巻き軸心を上下方向に向けて保持される鉄筋保持装置を、上下軸心回りに回転自在に設置台に取り付けてあるコイル状鉄筋繰出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記コイル状鉄筋繰り出し装置から繰り出される鉄筋は、一般に、鉄筋曲げ装置や鉄筋切断装置等の鉄筋加工装置に供給される。
しかし、鉄筋保持装置に巻かれたコイル状の鉄筋の先端部は、大きな曲率で曲っているために、その鉄筋加工装置にコイル状鉄筋を導入する際に、鉄筋加工装置に設けた導入用ローラーなどに鉄筋先端部がかみ込みにくく、特に高強度の鉄筋の場合は硬くてバネ弾性があり、そのために、鉄筋の先端部を予め略直線状に矯正する必要がある。
そこで、従来は、コイル状鉄筋の先端部だけを略直線状に矯正するのに、手動工具を使用するしかなかった(適切な文献が見当たらない)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の手動工具を使用するには、工具の準備とその工具を使った鉄筋矯正操作の手間に多くの労力が必要で、不便なものであった。
【0004】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、手動工具で鉄筋先端部の矯正操作を行うことなく、楽に鉄筋加工装置に鉄筋の先端部を導入できるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴構成はコイル状鉄筋がその巻き軸心を上下方向に向けて保持される鉄筋保持装置を、上下軸心回りに回転自在に設置台に取り付けてあるコイル状鉄筋繰出し装置であって、前記鉄筋保持装置により保持されるコイル状鉄筋の巻き径方向の外側で、且つ、コイル状鉄筋の保持位置よりも高い位置に、横方向に繰出す鉄筋を受ける一対の支持ローラを、それらの回転軸心を上下方向に沿わせた状態で横方向に並べて取り付ける支持体を設け、前記一対の支持ローラよりも前記鉄筋保持装置から遠ざかる側で前記一対の支持ローラ間に対し遠近移動自在に前記支持体に取り付ける曲り矯正ローラを設け、前記支持ローラを駆動回転するローラ駆動装置を設け、前記曲り矯正ローラを移動させて前記支持ローラに支持された鉄筋を押圧して略直線状に矯正する押圧矯正機構を構成してあるところにある。
【0006】
本発明の第1の特徴構成によれば、設置台に上下軸心回りに回転自在に取り付けてある前記鉄筋保持装置で保持されたコイル状鉄筋は、その保持位置よりも高い位置で、回転軸心を上下方向に沿わせた状態で横方向に並べて支持体に取り付けられた一対の支持ローラに受けることにより、上方にもつれることなく大きな曲率半径で繰り出される。
そして、押圧矯正機構を設けたことにより、ローラ駆動装置により駆動回転する支持ローラで、鉄筋は送り出されながら、曲り矯正ローラが一対の支持ローラ間に亘る鉄筋を押圧して、略直線状に自動的に矯正する。
従って、コイル状の鉄筋の先端部を、鉄筋加工装置のローラに楽に咬みこませて、確実に導入できるようになる。
【0007】
本発明の第2の特徴構成は、前記支持ローラで受ける鉄筋に対する前記曲り矯正ローラの押圧方向を、コイル状鉄筋の保持位置に向けて斜め下方に向くように傾斜させてあるところにある。
【0008】
本発明の第2の特徴構成によれば、コイル状鉄筋を鉄筋保持装置から繰り出しながら、より高い位置で支持ローラに受ける際に、斜め上方に繰り出される鉄筋に対し、前記曲り矯正ローラの押圧方向を、コイル状鉄筋の保持位置に向けて斜め下方に向くように傾斜させてあるために、押圧されて直線状に強制される鉄筋にねじれ現象の発生を防止できる。
従って、ねじれの無い状態で鉄筋を鉄筋加工装置に供給できる。
【0009】
本発明の第3の特徴構成は、前記鉄筋保持装置により保持されるコイル状鉄筋の巻き径方向の外側で、且つ、コイル状鉄筋の保持位置よりも高い位置に、コイル状鉄筋を繰出し保持する繰出しガイドローラを設けると共に、その繰出しガイドローラを支持する支柱を設け、前記鉄筋保持装置に対する遠近方向に揺動自在に前記設置台に取り付け、前記繰出しガイドローラを前記保持位置から遠ざかる方向に付勢する付勢機構を前記支柱と前記設置台との間に設け、前記鉄筋保持装置を繰り出し方向に、回転駆動する駆動装置を設け、前記付勢機構による付勢力に抗して前記支柱が揺動するに伴って、前記コイル状鉄筋を繰出す方向に前記駆動装置を作動操作する制御装置を設けてあるところにある。
【0010】
本発明の第3の特徴構成によれば、鉄筋保持装置によるコイル状鉄筋の保持位置よりも高い位置に、繰出しガイドローラで引き上げながら繰出すことにより、コイル状鉄筋は、もつれず抵抗少なく繰り出される。しかも、鉄筋保持装置から繰出して鉄筋加工装置に供給される過程で、鉄筋に負荷が掛かれば、ガイドローラを支持する支柱が、付勢機構による付勢力に抗して鉄筋保持装置による保持位置に近づく方向に揺動する。その揺動に基づき制御装置により駆動装置が作動操作して、鉄筋保持装置を鉄筋繰出し方向に駆動回転させて、鉄筋に作用する負荷を低減させる。
従って、コイル状鉄筋は、負荷増大に基づいて強制的に繰り出され、常にスムーズに鉄筋加工装置に供給することができる。
【0011】
本発明の第4の特徴構成は、前記繰出しガイドローラの高さ変更機構を前記支柱に設けてあるところにある。
【0012】
本発明の第4の特徴構成によれば、鉄筋保持装置に保持される鉄筋は、その繰出しに伴って、保持位置の高さが低くなっていくのに対し、支柱に設けた高さ変更機構により繰出しガイドローラの高さを変更することができるために、コイル状鉄筋は、その保持位置の変化に応じて常に繰出し操作を良好に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】鉄筋加工設備の全体平面図である。
【図2】コイル状鉄筋繰出し装置の斜視図である。
【図3】押圧矯正機構の要部斜視図である。
【図4】押圧矯正機構の一部縦断側面図である。
【図5】(a)、(b)は、押圧矯正機構の一部横断平面図である。
【図6】鉄筋誘導装置の側面図である。
【図7】鉄筋誘導装置の要部斜視図である。
【図8】押圧矯正機構の別実施例の一部横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図2に示すように、コイル状鉄筋1がその巻き軸心を上下方向に向けて保持される鉄筋保持装置2を、上下軸心回りに回転自在に設置台3に取り付けてあり、設置台3の一方の隅部に、コイル状鉄筋1の先端部を略直線状に矯正する押圧矯正機構4を設け、他方の隅部に、鉄筋保持装置2から繰り出される鉄筋1を、曲げ加工したり切断したりする鉄筋1加工装置Aに導入ガイドする鉄筋誘導装置5を設けて、コイル状鉄筋繰り出し装置を構成してある。
【0015】
前記設置台3には、図2、図6に示すように、内蔵する第1駆動モーター6により上下軸心回りに駆動回転する回転支持部7を設け、その回転支持部7に鉄筋1保持装置を載置支持させてある。
前記鉄筋保持装置2は、上下方向に沿った鉄パイプを上下回転軸心周りに間隔を置いて配置して一体に連結することにより、外側に鉄筋1をコイル状に巻いて保持できるパイプフレームを形成してある。
【0016】
前記押圧矯正機構4は、図2〜図5に示すように、鉄筋保持装置2により保持されるコイル状鉄筋1の巻き径方向の外側で、且つ、コイル状鉄筋1の保持位置よりも高い位置に、横方向に繰出す鉄筋1を受ける一対の支持ローラ8を、それらの回転軸心を上下方向に沿わせた状態で横方向に並べて取り付ける鉄製の第1支持基台9と、その第1支持基台9を上端部に取り付ける鉄製の角筒状支柱10とから成る支持体12を、設置台3に立設させ、一対の支持ローラ8よりも鉄筋1保持装置から遠ざかる側で、一対の支持ローラ8間に対し油圧シリンダ11の出退操作により遠近移動自在に支持体12における第1支持基台9に取り付ける曲り矯正ローラ13を設け、支持ローラ8をスプロケット14及びチェーン15を介して第2駆動モーター16と連動させて駆動回転するローラ駆動装置17を設け、曲り矯正ローラ13を移動させて前記支持ローラ8に支持された鉄筋1を押圧して略直線状に矯正可能に構成してある(図5(a)→(b))。
【0017】
前記支持ローラ8で受ける鉄筋1に対する曲り矯正ローラ13の押圧方向を、鉄筋保持装置2によるコイル状鉄筋1の保持位置に向けて斜め下方に向くように傾斜させて(例えば水平に対する約15度の傾斜角)、鉄筋保持装置2の保持位置から斜め上方に繰り出される鉄筋1に矯正加工によって捩れが働かないようにしてある。
【0018】
前記支持ローラ8の周面は凹凸形状に形成してあり、支持ローラ8により送り出す鉄筋1を滑りにくくしてあり、また、曲り矯正ローラ13の周面にもリング状の溝をローラ軸心方向に複数本形成して、押圧する鉄筋1をローラ軸心方向に滑りにくくしてある。
【0019】
前記支持体12には、先端部に鉄筋掛止用のフック18を取り付けたワイヤ19を巻き取る手動式のウインチ20と、フック18を取り付けたワイヤ19を曲り矯正ローラ13の上方に誘導するワイヤ誘導筒21を取り付けてある。つまり、コイル状鉄筋1が特に高強度で硬い材質の場合に、鉄筋保持装置2に巻き取られている鉄筋1の端部を、ワイヤ19を伸ばしてフック18に掛止させ、手動式のウインチ20に取り付けたハンドル22を回して、フック18に掛止した鉄筋1の端部を支持ローラ8と曲り矯正ローラ13との間に楽に誘導できるようにし、鉄筋1端部を押圧矯正機構4で矯正できるように構成してある。尚、図3中の23は、フック18に鉄筋1を掛止したワイヤ19をウインチ20で巻き戻す際に、ワイヤ19を誘導する滑車である。
【0020】
前記鉄筋誘導装置5を構成するに、図2及び図6〜図7に示すように、前記鉄筋保持装置2により保持されるコイル状鉄筋1の巻き径方向の外側で、且つ、コイル状鉄筋1の保持位置よりも高い位置に、コイル状鉄筋1を繰出し保持する繰出しガイドローラ24を設けると共に、その繰出しガイドローラ24を第2支持基台25を介してその上端部で支持する鉄製の支柱26を設け、鉄筋保持装置2に対する遠近方向に揺動自在に設置台3に取り付け、繰出しガイドローラ24を保持位置から遠ざかる方向に付勢するコイルスプリングからなる付勢機構27を、支柱26と設置台3との間に設け、付勢機構27による付勢力に抗して支柱26が揺動するに伴って、鉄筋保持装置2を第1駆動モーター6から成る駆動装置で回転駆動操作して、コイル状鉄筋1を繰り出す制御装置(図外)を設けてある。
前記支柱26の付勢機構27による付勢力に抗した一定以上の揺動は、設置台3に設けたセンサーSにより検出するように構成してある。
【0021】
前記第2支持基台25上に設ける繰出しガイドローラ24は、横方向に並べた一対の縦軸ローラ24Aと、上下方向に並べた2対の横軸ローラ24Bから成り、その一対の縦軸ローラ24Aと2対の横軸ローラ24Bとの間に、繰出し鉄筋1を挿通させて誘導するように構成してある。
【0022】
前記支柱26は、上下伸縮自在に構成して繰出しガイドローラ24の高さ変更機構28を形成してある。
【0023】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0024】
1. 前記支持体12における鉄筋押圧方向は、傾き15度に限らないが、その傾斜角を調整できるようにしてあればなお良い。
2. 前記一対の支持ローラ8の間には、図8に示すように、補助支持部材29を固定して鉄筋1の出口側で鉄筋1の先端部が、曲り矯正ローラ13で押付けた時に、より直線状に矯正され易くなるようにしてあっても良い。
3. 前記押圧矯正機構4の第1支持基台9は、鉄筋を入れやすくするように、左右に首振りすべく上下軸心回りに回転自在に取り付けてあっても良い。
4. 前記鉄筋誘導装置5の第2支持基台25においても、上記と同様に鉄筋を入れやすくするように、左右に首振りすべく上下軸心回りに回転自在に取り付けてあっても良い。
【0025】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 鉄筋
2 鉄筋保持装置
3 設置台
4 押圧矯正機構
8 支持ローラ
12 支持体
13 曲り矯正ローラ
17 ローラ駆動装置
24 繰出しガイドローラ
26 支柱
27 付勢機構
28 高さ変更機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状鉄筋がその巻き軸心を上下方向に向けて保持される鉄筋保持装置を、上下軸心回りに回転自在に設置台に取り付けてあるコイル状鉄筋繰出し装置であって、
前記鉄筋保持装置により保持されるコイル状鉄筋の巻き径方向の外側で、且つ、コイル状鉄筋の保持位置よりも高い位置に、横方向に繰出す鉄筋を受ける一対の支持ローラを、それらの回転軸心を上下方向に沿わせた状態で横方向に並べて取り付ける支持体を設け、
前記一対の支持ローラよりも前記鉄筋保持装置から遠ざかる側で前記一対の支持ローラ間に対し遠近移動自在に前記支持体に取り付ける曲り矯正ローラを設け、
前記支持ローラを駆動回転するローラ駆動装置を設け、
前記曲り矯正ローラを移動させて前記支持ローラに支持された鉄筋を押圧して略直線状に矯正する押圧矯正機構を構成してあるコイル状鉄筋繰出し装置。
【請求項2】
前記支持ローラで受ける鉄筋に対する前記曲り矯正ローラの押圧方向を、コイル状鉄筋の保持位置に向けて斜め下方に向くように傾斜させてある請求項1に記載のコイル状鉄筋繰出し装置。
【請求項3】
前記鉄筋保持装置により保持されるコイル状鉄筋の巻き径方向の外側で、且つ、コイル状鉄筋の保持位置よりも高い位置に、コイル状鉄筋を繰出し保持する繰出しガイドローラを設けると共に、その繰出しガイドローラを支持する支柱を設け、前記鉄筋保持装置に対する遠近方向に揺動自在に前記設置台に取り付け、
前記繰出しガイドローラを前記保持位置から遠ざかる方向に付勢する付勢機構を前記支柱と前記設置台との間に設け、
前記鉄筋保持装置を繰り出し方向に、回転駆動する駆動装置を設け、
前記付勢機構による付勢力に抗して前記支柱が揺動するに伴って、前記コイル状鉄筋を繰出す方向に前記駆動装置を作動操作する制御装置を設けてある請求項1または2に記載のコイル状鉄筋繰出し装置。
【請求項4】
前記繰出しガイドローラの高さ変更機構を前記支柱に設けてある請求項3に記載のコイル状鉄筋繰出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−40586(P2012−40586A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183127(P2010−183127)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000223056)東陽建設工機株式会社 (17)
【Fターム(参考)】