説明

コイル装置

【課題】 無接点充電装置において使用される100kHz近傍のQ値の劣化が発生しやすいという問題があった。この様に100kHz近傍のQ値が劣化した場合、無接点充電装置において伝送効率が悪化してしまう。コイルのインダクタンス値を変更することなく高いQ値を得ることができるコイル装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 巻線を巻回して第1の層と第2の層が形成されたコイルとコアを備えている。コイルは第1の層の外径と第2の層の外径を異ならせる。そして、コイルの外径の小さい方の層をコアに取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線を巻回して形成されたコイルと、このコイルが取り付けられるコアを備えたコイル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコイル装置に、巻線を巻回してコイルを形成し、このコイルをコイルの内周から引き出された引き出し線がない面を下にした状態で板状のコアに取り付けた無接点充電用のコイル装置がある(例えば、特許文献1を参照。)。この無接点充電用のコイル装置は、コイル自身の損失を少なくするために、その大きさの許す限り平行2線やリッツ線など太い巻線を巻回してコイルを形成したり、場合によっては図4に示す様に、平行2線によって構成された巻線41をバイファイラ巻きして2つの層を有するコイルを形成したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-231586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のコイル装置が実装される無接点充電装置においては、コイルのインダクタンス値やコイルの最大形状等が規格で決められたものもある。
この様な状況の中、巻線をバイファイラ巻きして2つの層を有するコイルを形成した従来のコイル装置は、同じ巻数になる様に巻回しても、巻線を巻線機で巻く際の巻線機の巻枠のスペースと、巻線の厚みによって巻線同士の重なり具合が異なり、コイル41の2つの層の外径が同じにならないことがあった。この様なコイルは、2つの層のインダクタンス値が同じであるものの、このコイル41をコア42に取り付けた場合、無接点充電装置において使用される100kHz近傍のQ値の劣化が発生しやすいという問題があった。この様に100kHz近傍のQ値が劣化した場合、無接点充電装置において電力の伝送効率が悪化してしまう。
【0005】
本発明は、コイルのインダクタンス値を変更することなく高いQ値を得ることができるコイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコイル装置は、巻線を巻回して第1の層と第2の層が形成されたコイルとコアを備え、コイルは第1の層の外径と第2の層の外径を異ならせ、外径の小さい方の層をコアに取り付ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコイル装置は、巻線を巻回して第1の層と第2の層が形成されたコイルとコアを備え、コイルは第1の層の外径と第2の層の外径を異ならせ、外径の小さい方の層をコアに取り付けるので、コイルのインダクタンス値を変更することなく高いQ値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のコイル装置の第1の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明のコイル装置の製造途中を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明のコイル装置の第2の実施例を示す上面図である。
【図4】従来のコイル装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のコイル装置は、巻線を巻回して2つの層が形成され、内周と外周からそれぞれ引き出し線が引き出されたコイルと、このコイルが取り付けられる板状のコアを備える。コイルは、平行2線によって構成された巻線をその2つの線がコイルの巻軸と平行な方向に並ぶ様に配列した状態でバイファイラ巻きすることにより2つの層が形成されると共に、一方の層の外径が他方の層の外径よりも大きく形成される。このコイルは、外径の小さい方の層がコアに接触する様に取り付けられ、内周側の引き出し線が外径の大きい方の層の上面側から引き出される。
【実施例】
【0010】
以下、本発明のコイル装置の実施例を図1乃至図3を参照して説明する。
図1は本発明のコイル装置の第1の実施例を示す斜視図である。
図1において、11はコイル、12はコアである。
コイル11は、巻線として絶縁された導線2本が平行に配列され、互いに融着された平行2線を用い、2つの線11A、11Bがコイルの巻軸と平行な方向に並ぶ様に配列した状態でバイファイラ巻きすることにより同じ巻数巻かれた2つの層A、Bが形成される。この2つの層A、Bは、一方の層Aの外径が他方の層Bの外径よりも大きく形成される。このコイル11は、内周から引き出し線11A1、11B1が、外周から引き出し線11A2、11B2がそれぞれ引き出される。この時、コイル11の内周側の引き出し線11A1、11B1は、外径が大きい方の層Aの上面側から外周に向けて引き出される。
この様に形成されたコイル11は、外径が小さい方の層Bを下に向けた状態でコア12に搭載される。
コア12は、フェライトで板状に形成されたものが用いられ、上面に搭載されたコイル11の外径が小さい方の層Bの底面が接着剤で接着される。
【0011】
この様なコイル装置は次の様にして製造される。図2は本発明のコイル装置におけるコイルの製造途中を模式的に示した断面図である。
まず、絶縁された導線2本が平行に配列され、互いに融着された平行2線が巻線機を用いて巻回される。巻線機は、その表面に段差が設けられ、径の小さい部分と径の大きい部分が形成された巻枠23、この巻枠を回転させるための軸24、巻枠23の径の大きい部分側に設けられた鍔25及び、巻線を巻回する際に巻枠23の径の小さい部分に接触させて巻枠23と連動して回転する鍔26を備える。平行2線は、2つの線11A、11Bの一端を、平行2線の2つの線11A、11Bが巻線機の巻枠23の表面上に平行に並ぶ様に、線11Aを巻枠の径の大きい部分に、線11Bを巻枠11Bの径の小さい部分にそれぞれ配置する。この状態で巻線機の巻枠23を回転させることにより、平行2線がバイファイラ巻きされる。巻線機の巻枠23と鍔26を離間させて巻回された巻線を巻枠23から取り外すことにより、外径が大きい層Aと外径の小さい層Bの2つの層が形成されたコイル11が形成される。
このコイル11は、内周側の引き出し線11A1、11B1を外径が大きい層の上面側から外周に向けて引き出し、外径が小さい層を下に向けた状態で板状のコア12に接着される。
【0012】
この様に形成されたコイル装置は、外径が大きい層をコアに接着した場合コイル単体のQの周波数特性が全体的に低くなってコイル単体のQ値よりも低くなるのに対して、外径が小さい層をコアに接着した場合、予め無接点充電装置において使用される100kHzよりも高い周波数でQが最大になるように設定されたコイル単体のQの周波数特性が低周波側にシフトするだけなので、無接点充電装置において使用される100kHz近傍のQ値を高くすることができる。
【0013】
図3は本発明のコイル装置の第2の実施例を示す上面図である。
コイル31は、平行2線を構成する2つの線がコイルの巻軸と平行な方向に並ぶ様に配列した状態でバイファイラ巻きすることにより2つの層が形成される。この2つの層は、一方の層の外径が他方の層の外径よりも大きく形成される。このコイル31は、内周から引き出し線31A1、31B1が、外周から引き出し線31A2、31B2がそれぞれ引き出される。この時、コイル31の内周側の引き出し線31A1、31B1は、外径が小さい方の層の底面側から外周に向けて引き出される。
この様に形成されたコイル31は、外径が小さい方の層を下に向けた状態でコア32に搭載される。
コア32は、フェライトで板状に形成されたものが用いられ、切り込み32Aが設けられる。このコア32の上面に搭載されたコイル31は、外径が小さい方の層の底面が接着剤でコア32に接着され、内周側の引き出し線31A1、31B1が切り込み32A内に収納される。
【0014】
以上、本発明のコイル装置の実施例を述べたが、本発明はこの実施例に限られるものではない。例えば、コアは磁性体のシートで構成されてもよい。また、コアは金属磁性体で形成してもよい。さらに、巻線機は表面に段差が設けられていない巻枠と、この巻枠を回転させるための軸、巻枠に設けられた鍔及び、巻線を巻回する際に巻枠に接触させて巻枠と連動して回転する鍔を備え、2つの鍔を2つの鍔の間隔が平行2線の幅よりも僅かに小さくなる様に形成し、平行2線が巻枠の表面に対して斜めに配置される様にしてもよい。
また、実施例では巻線に平行2線を用いた場合を説明したが、巻線にリッツ線を用いた場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0015】
11 コイル
12 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を巻回して第1の層と第2の層が形成されたコイルとコアを備え、該コイルは第1の層の外径と第2の層の外径を異ならせ、外径の小さい方の層を該コアに取り付けたことを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
前記コアに切り込みを設け、前記コイルの内周から引き出された引き出し線が該コアの切り込み内に引き出された請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記コアが磁性体シートである請求項1又は請求項2の記載のコイル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−105796(P2013−105796A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247051(P2011−247051)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)