説明

コイル部品の製造方法

【課題】特性を向上させることができると共に、小型化することができるコイル部品の製造方法を提供する。
【解決手段】継ぎ目のない一体物よりなるコア10の第1巻芯部11及び第2巻芯部12に対して、U字型又はコの字型に折り返した導線20を両端部からそれぞれ同時に巻き、第1巻線21と第2巻線22とを連続させて一体的に形成する。また、導線20は、折り返しまで完全に巻かずに、折り返し側の一部を残して巻いたのち、導線20の両端部を直線状に伸ばしながら、導線20の巻いていない残りの一部を巻き、第1巻線21に第1引出端子23を連続して一体的に形成し、第2巻線22に第2引出端子24を連続して一体的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列する第1巻芯部と第2巻芯部とを有する継ぎ目のない一体物よりなるコアに導線を巻回するコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、略ロの字形状の閉磁路をなすコアに巻線を装着したコイル部品が知られている。このコイル部品は、例えば、コアを分割し、別途作成した巻線を装着したのち、コアを突き合わせて継ぎ合わせるか、又は、一体的に略ロの字形状に形成したコアに、巻線を直接巻き付けることにより形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−330704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コアを分割して継ぎ合わせる場合には、コアを一体的に形成する場合に比べて、実効透磁率が低くなってしまうので、巻線の巻数が多く、線径が大きくなってしまい、小型化することが難しいという問題があった。また、特許文献1に記載されているコイル部品は、一体的に形成されたコアを用いているが、コアに独立した2つの巻線を巻きつけたものであり、2つの巻線が連続して一体的に構成されたものではない。更に、コアを一体的に形成する場合には、巻線の端部を長く引き出した状態で巻きつけることができないので、巻線の端部に、引出端子を接続しなければならず、接触抵抗が大きくなり、特性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、特性を向上させることができると共に、小型化することができるコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコイル部品の製造方法は、並列する第1巻芯部と第2巻芯部とを有する継ぎ目のない一体物よりなるコアの第1巻芯部に第1巻線が装着され、第2巻芯部に第2巻線が装着されたコイル部品の製造方法であって、第1巻芯部及び第2巻芯部に対して、U字型又はコの字型に折り返した導線を両端部からそれぞれ同時に巻き、第1巻線と第2巻線とを連続させて一体的に形成するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコイル部品の製造方法によれば、第1巻芯部及び第2巻芯部に対して、U字型又はコの字型に折り返した導線を両端部からそれぞれ同時に巻くようにしたので、継ぎ目のない一体物よりなるコアに第1巻線と第2巻線とを連続させて一体的に形成することができる。よって、飽和を良化することができ、巻線の巻数を少なく、線径を小さくすることができる。従って、小型化することができる。また、接触抵抗を小さくすることができ、特性を向上させることができると共に、第1巻線と第2巻線との接続工程が不要となり、製造工程を簡素化することができる。
【0008】
また、導線の両端部から折り返し側の一部を残して巻いたのち、導線の両端部を直線状に伸ばしながら、導線の巻いていない残りの一部を巻くようにすれば、第1巻線に連続して第1引出端子を一体的に自由な長さに形成することができると共に、第2巻線に連続して第2引出端子を一体的に自由な長さに形成することができる。よって、接触抵抗をより小さくすることができ、特性をより向上させることができると共に、第1引出端子及び第2引出端子の接続工程が不要となり、製造工程をより簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコイル部品の製造方法により製造されるコイル部品の構成を表す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るコイル部品の製造方法の一工程を表す図である。
【図3】図2に続く工程を表す図である。
【図4】図3に続く工程を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る製造方法により製造されるコイル部品1の構成を表すものであり、図2から図4は、本実施の形態に係る製造方法における各工程を表すものである。本実施の形態に係るコイル部品1の製造方法は、例えば、図1に示したように、並列する第1巻芯部11と第2巻芯部12とを有する継ぎ目のない一体物よりなるコア10の第1巻芯部11に第1巻線21が装着され、第2巻芯部12に第2巻線22が装着されたコイル部品1を製造するものである。
【0012】
まず、例えば、図2に示したように、並列する第1巻芯部11及び第2巻芯部12と、第1巻芯部11の一端と第2巻芯部12の一端とを結合する第1結合部13と、第1巻芯部11の他端と第2巻芯部12の他端とを結合する第2結合部14とを有し、継ぎ目のない一体物よりなるコア10を用意する。このコア10は、例えば、いわゆる略ロの字形状の閉磁路を構成しており、フェライト等の磁性体材料により形成する。第1巻芯部11及び第2巻芯部12は、断面形状が略円形の円柱状とすることが好ましいが、断面形状が楕円形状の円柱状、又は、断面形状が多角形の角柱状としてもよい。また、第1巻芯部11及び第2巻芯部12の外周には、例えば、合成樹脂よりなるボビン15,16を配設してもよい。
【0013】
次いで、例えば、銅やアルミニウム等よりなる導線20を用意し、例えば、図3に示したように、一部においてU字型(図3(A)参照)又はコの字型(図3(B)参照)に折り返す。導線20は、例えば、表面を絶縁被膜により被覆したもの(いわゆる被覆導線)でも、表面を絶縁被膜により被覆していないものでもよく、例えば、平角線を用いる。続いて、例えば、図4(A)に示したように、第1巻芯部11にボビン15を介して導線20を一方の端部から巻くと同時に、第2巻芯部12にボビン16を介して導線20を他方の端部から巻き、第1巻芯部11の周りに第1巻線21を形成すると共に、第2巻芯部12の周りに第2巻線22を形成する。その際、導線20は、平角線の平面が第1巻芯部11又は第2巻芯部12の中心線の方向に対して交差するようにエッジワイズに巻回する。なお、図4では、導線20を第1巻芯部11に対して巻回する状態を概念的に表しているが、第2巻芯部12に対する巻回も同様であるので、対応する符号を括弧書きで合わせて示す。
【0014】
また、導線20は、U字型又はコの字型の折り返しまで完全に巻かずに、折り返し側の一部を残して巻いたのち、例えば、図4(B)に示したように、導線20の両端部を直線状に伸ばしながら、導線20の巻いていない残りの一部を巻くようにすることが好ましい。これにより、第1巻線21に連続して第1引出端子23が一体的に形成されると共に、第2巻線22に連続して第2引出端子24が一体的に形成される。また、第1巻線21と第2巻線22とは、一本の導線20を両端部から巻回することにより、連続して一体的に形成される。なお、複数の導線20をコア10に巻回し、複数の第1巻線21及び第2巻線22をコア10に対して配設するようにしてもよい。これにより、例えば、図1に示したコイル部品が得られる。
【0015】
このように本実施の形態によれば、第1巻芯部11及び第2巻芯部12に対して、U字型又はコの字型に折り返した導線20を両端部からそれぞれ同時に巻くようにしたので、継ぎ目のない一体物よりなるコア10に、第1巻線21と第2巻線22とを連続させて一体的に形成することができる。よって、飽和を良化することができ、巻線の巻数を少なく、線径を小さくすることができる。従って、小型化することができる。また、接触抵抗を小さくすることができ、特性を向上させることができると共に、第1巻線21と第2巻線22との接続工程が不要となり、製造工程を簡素化することができる。
【0016】
また、導線20の両端部から折り返し側の一部を残して巻いたのち、導線20の両端部を直線状に伸ばしながら、導線20の巻いていない残りの一部を巻くようにすれば、第1巻線21に連続して第1引出端子23を一体的に自由な長さに形成することができると共に、第2巻線22に連続して第2引出端子24を一体的に自由な長さに形成することができる。よって、接触抵抗をより小さくすることができ、特性をより向上させることができると共に、第1引出端子23及び第2引出端子24の接続工程が不要となり、製造工程をより簡素化することができる。
【0017】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、コア10は、継ぎ目のない一体物により構成すればよく、第1巻芯部11及び第2巻芯部12に第1結合部13及び第2結合部14がそれぞれ結合された閉鎖された環状物により構成してもよく、また、薄帯コアを環状に巻くことにより第1巻芯部11、第2巻芯部12、第1結合部13、及び第2結合部14を形成し、閉磁路を構成するようにしてもよい。
【0018】
また、上記実施の形態では、各工程について説明したが、全ての工程を含んでいなくてもよく、また、他の工程を含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
コイル部品に用いることができる。
【符号の説明】
【0020】
1…コイル部品、10…コア、11…第1巻芯部、12…第2巻芯部、13…第1結合部、14…第2結合部、15,16…ボビン、20…導線、21…第1巻線、22…第2巻線、23…第1引出端子、24…第2引出端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列する第1巻芯部と第2巻芯部とを有する継ぎ目のない一体物よりなるコアの第1巻芯部に第1巻線が装着され、第2巻芯部に第2巻線が装着されたコイル部品の製造方法であって、
第1巻芯部及び第2巻芯部に対して、U字型又はコの字型に折り返した導線を両端部からそれぞれ同時に巻き、第1巻線と第2巻線とを連続させて一体的に形成することを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項2】
導線として平角線を用い、第1巻芯部及び第2巻芯部に対してエッジワイズに巻くことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
第1巻芯部及び第2巻芯部に対して、導線の両端部から折り返し側の一部を残して巻いたのち、導線の両端部を直線状に伸ばしながら、導線の巻いていない残りの一部を巻くことにより、第1巻線に連続して第1引出端子を一体的に形成すると共に、第2巻線に連続して第2引出端子を一体的に形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコイル部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−16715(P2013−16715A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149640(P2011−149640)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(310015167)株式会社今野工業所 (3)