説明

コイン返却装置

【課題】硬貨返却口に蓋や開閉板を設けると、返却された硬貨が表に飛び出すことはないが、返却された硬貨が見えにくくなり、返却硬貨の取り忘れを招く恐れがある。
【解決手段】筐体の扉の裏側に取り付けられた、不良コインを下に排出するリジェクト口を設けたコイン選別器と、前記コイン選別器の下方に開口する前記扉に設けたコイン返却口と、前記コイン選別器のリジェクト口と前記コイン返却口を連接するリジェクトカップ20であって、該リジェクトカップ20は前記扉に固定され、前記コイン返却口に合致する開口を有すると共に前記リジェクト口を包含する奥行き及び幅を有する略箱状体であり、前記リジェクトカップの上面は前記リジェクト口の下側にコイン落下穴29を有し、該コイン落下穴の下側内部には垂線が斜め上横後方に向く面を配した傾斜面24bを設け、コイン返却口の下縁より下側に位置する底面22bを設けたコイン動作式装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨やメダル等を投入することで動作するコイン動作式装置の硬貨選別装置に設けるコイン返却口の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲーム機等に取り付けられるコインドアのサービス扉へのドロップタイプの硬貨選別装置としては、ほぼ直立するベースプレートの上部に縦長矩形の硬貨口が形成され、下部には硬貨の返却口が形成されている。返却口の後側には、保留箱が固定され、返却された硬貨がランダムに横たわることができる。返却口は、上部が保留箱内にビポット可能に指示された蓋によってカバーされ、蓋を押し込むことにより、返却硬貨を保留箱から取り出すことができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また硬貨返却口にスポンジ等の異物が挿入されるのを防止するため、硬貨返却口に回動自在に軸支された開閉板と前記硬貨返却口の前記開閉板と反対側の壁面から硬貨返却経路へ下り勾配に傾斜して突出した第1の突出片を備えて異物の進入を防止する硬貨返却口において、前記第1の突出片と対向する前記開閉板の面に、硬貨返却経路へ下り勾配に傾斜して突出した第2の突出片を備え、前記開閉板の回動位置において前記第1の突出片と前記第2の突出片が当接して前記硬貨返却経路を閉鎖するように構成した硬貨返却口の異物挿入防止構造がある(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-25404号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】特許第3472634号公報(第2頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した硬貨返却口の蓋や開閉板は金属板や硬質樹脂板で出来ており、いずれも上部が水平に軸支されており、手先を後方に押し込んで内部の硬貨を取り出す構造となっている。
硬貨返却口に蓋や開閉板を設けると、返却された硬貨が表に飛び出すことはないが、返却された硬貨が見えにくくなり、返却硬貨の取り忘れを招く恐れがある。
そこで本発明は、硬貨返却口に蓋や開閉板を設けずに、返却された硬貨が表に飛び出さない構造を有するコイン返却口を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明では、上記課題を解決するために、投入したコインを返却するコイン返却口を有するコイン動作式装置において、筐体の扉の裏側に取り付けられた、投入したコインの真贋を判別し正規コインと不良コインとに選別し、不良コインを下に排出するリジェクト口を設けたコイン選別器と、前記コイン選別器の下方に開口する前記扉に設けたコイン返却口と、前記コイン選別器のリジェクト口と前記コイン返却口を連接するリジェクトカップであって、
該リジェクトカップは前記扉に固定され、前記コイン返却口に合致する開口を有すると共に前記リジェクト口を包含する奥行き及び幅を有する略箱状体であり、
前記リジェクトカップの上面は前記リジェクト口の下側にコイン落下穴を有し、該コイン落下穴の下側内部には垂線が斜め上後方に向く面を配した傾斜面を設け、
コイン返却口の下縁より下側に位置する底面を設けた、コイン動作式装置としてある。
【0007】
上記発明により、投入したコインがコイン選別器で不良コインと判別された際に、コイン選別器のリジェクト口から、リジェクトカップに開口したコイン落下穴からリジェクトカップ内に落下してくる。この際に落下してきたコインは、垂線が上横後方に向いた面を有する傾斜面に衝突し、その跳ね返り方向は側面奥側方向になり、リジェクトカップの奥側に衝突しコイン返却口の下縁より低い底面のリジェクトカップ内に滞留する。
【0008】
本願発明では、上記課題を解決するために、上記発明において、リジェクトカップは、奥側下方が手前に傾斜した傾斜面となり、コイン返却口の開口下縁に向けて底面が上り傾斜となっているコイン動作式装置としてある。
【0009】
上記発明により、リジェクトカップの奥側下方が手前に傾斜した傾斜面となっていることで、滞留するコインの位置が傾斜面から滑り落ちているのでリジェクトカップの底面の中ほど寄りに位置しており、さらリジェクトカップの底面の手前側がコイン返却口の開口下縁に向けて上り傾斜となっているので、コインが落下の衝撃で飛び出すことがない。さらにコイン返却口から指先を入れてコインを取り出す際に奥まで指先を入れなくても滞留したコインは底面の中ほどに位置しているので触れ易く、コイン返却口に向けて底面が傾斜しているので、コインに指先を当てて傾斜面をなぞるようにして容易に取り出すことができる。
【0010】
本願発明では、上記課題を解決するために、さらにコイン選別器のリジェクト口の下側に位置するリジェクトカップ内の傾斜面はコイン返却口の開口には至らない位置で垂直な壁面になるコイン動作式装置としてある。
【0011】
上記発明により、コイン選別機のリジェクト口の下側に位置する傾斜面がコイン返却口の開口には至らない位置で垂直な壁面となっているので、開口の奥側は箱状の空間となっており、コイン返却口から指を挿入しても衝つかる障壁となるものはなく、突き指することなく安全にコインに指先を当てて回収することができる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明のコイン返却装置では、コイン返却口に蓋がないことから、コインが返却されたコインが見えずに取り忘れを招く恐れがなくなる。
さらに本発明の構造により、コイン返却口に扉が無くともコインが表に飛び出すことはないし、コイン回収時に指を蓋で挟むようなこともない。
しかも、蓋がないことで、コストアップを最小限とすることができ、利用価値が高く安全性に富むコイン返却口を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】貨幣装置の一例としてのコイン装置の透過斜視図である。
【図2】図1の外観斜視図である。
【図3】コイン装置の左側面図である。
【図4】コイン装置の正面図である。
【図5】リジェクトカップの図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。以下、本願発明の実施例について述べる。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は貨幣装置の一例としてコイン装置の透過斜視図を示し、扉2を透過して扉2の背面に取り付けた部材が示されている。
図2は図1の外観斜視図を示す。図3は同左側面図を示し、図4は、同正面図を示す。
【0016】
コイン装置1は例えば自動販売機、業務用ゲーム機や駐車料金清算機等のコイン動作式機器、最近では磁気カードや電子マネーカード、あるいは携帯電話に決済機能を有して無線通信で動作する方式も併用されている機器等の前面の扉2の裏側にブラケット3を介して取り付けられている。
コイン装置1は、略直立した縦長の取付板である扉2の上方の筐体に設けた図示しないコイン投入口からコインCが投入され、コイン受け部4に導かれ、コインセレクタ5にてコインの真贋が判別され、正規のコインCtはコインセレクタの後方にある正規ルート6(点線で示す)に流れ、不良コインCfはコインセレクタの手前にある返却ルート7(一点鎖線で示す)に流れる。
【0017】
コインセレクタ5は、立設した基板と、該基板にコイン1枚の厚み分の間隔を有して対向配置されたフラッパと、基板あるいはフラッパのいずれか一方に取り付けられコインが転動するレールとでコインルートが形成され、このコインルートの終端下部にコインルートに近接してマグネットが配設され、擬似磁性コインがこのコインルートを転動すると、マグネットの磁力によって転動速度が減速され、コインルートの終端から下方のコイン返却ルート7に転動方向を変えられてコインリジェクト口に落下させて排出される構造である。
【0018】
扉2はヒンジ機構2aにより筐体に鍵8を用いて開閉自在に取り付けられ、コインCがコイン装置内にて詰まった際に使用するリジェクトボタン9と、不良コインCfを返却するコイン返却口10が設けてある。
【0019】
正規ルート6に流れた正規コインはコインセレクタの下面の奥側中央の正規ルート6に連接したブラケット3に取り付けた正規コイン通過部11を通過して図示しないキャッシュボックスに落下していく。
返却ルート7に流れた不良コインは、コインセレクタの下面の手前左側に位置するリジェクト口7aから、コインセレクタの返却ルート7の下方に位置するリジェクトカップ20に落下する。
リジェクトカップ20は扉2のコイン返却口10の裏側に取り付けられており、コイン返却口10より右側に幅広で奥行きがブラケット3に取り付けられたコインセレクタの返却ルート7に至っている。
コイン返却口10は指先が入るほどの縦3cm、幅4cmほどの矩形状の開口であり、扉2に設けてある。
【0020】
図5にはリジェクトカップを示し、図5(A)にはリジェクトカップの斜視図、図5(B)には同正面図、図5(C)には図5(B)のA−A線での縦断面図を示している。
リジェクトカップ20は、縦4cm、幅6cm、奥行6cm程の大きさの箱状であり、それぞれ上面21、底面22、左壁面23、右壁面24、奥壁面25をから構成され、手前側が開口した開口面26となっている。
さらに該開口面26の左右側には扉2への縦長矩形の取付面27、28が設けてあり、各取付面27,s28には取付穴27a、28aがそれぞれ設けてあり、扉2の内側に設けた図示しないスタッドに螺着される。リジェクトカップ20は硬質樹脂製あるは金属板を加工して構成している。
【0021】
リジェクトカップの上面21の右奥側には縦長矩形に開口したコイン落下穴29が開口している。該コイン落下穴29には、コインセレクタの左側下面に連なる返却ルート7から落下してくるコインCfが通過可能で、落下したコインがリジェクトカップ20内に収納される。
【0022】
リジェクトカップ20は、扉2のコイン返却口10の裏側に取付面27,28に設けた取付穴27a、27bを扉2の内側に設けた図示しないスタッドに挿入し固定される。
この状態では、コイン返却口10はリジェクトカップの開口面26に合致する。ここでリジェクトカップの矩形状の開口面26はコイン返却口10より若干大きい。
コイン返却口10の開口より若干大きいリジェクトカップ10の右側の壁面24の高さ方向の中ほどから上側が右斜め上に向けて斜面24aが形成されている。斜面24aの横幅はコイン返却口10の開口幅の3割ほどであり、奥側の斜面24bは、右奥に向けて傾斜している。つまり奥側の斜面に垂線Lを設けるとその垂線Lは斜め奥側に向く。
これにより、コイン落下穴29から真下に縦方向に落下して来たコインが斜面24bに衝突した際に、斜面が右奥側に傾斜しているので、コインは衝撃でリジェクトカップの対向する側面の奥側である左奥側方向に跳ね返るのである。
【0023】
リジェクトカップの奥底面22aは、奥側の底の3分の1ほどが手前下方に向けて傾斜しており、コイン返却口10の下縁10aより低い底面22bが奥行きの2分の1ほどが平らになっており、手前はコイン返却口に向けて斜め上方に向けて前斜面22cを形成している。
これにより、コイン落下穴29から落下したコインが斜面24bに衝突して跳ね返り、左奥側方向に向けて跳ね返る。斜面24bで跳ね返ったコインは、左壁面23、奥壁面25、奥側底面22aの何れかに当り、その落下の勢いを失い、奥側底面22aあるいは、底面22bに静止し保留される。
コイン返却口10から指をリジェクトカップ20に差し入れて、内部に保留されていくるコインに手の指を差し出してあてがい床面を滑らして前斜面22cを上らせてコインを取り出し、コイン返却口10から取り出すことができる。
【0024】
コイン選別機のリジェクト口7aの下側に位置する傾斜面がコイン返却口10の開口には至らない位置で垂直な壁面となっているので、開口の奥側は箱状の空間となっており、コイン返却口10から指を挿入しても衝つかる障壁となるものはなく、突き指することなく安全にリジェクトカップ内に貯留されたコインに指先を当てて回収することができる。
【0025】
コインセレクタにて投入コインが正規コインと判定されずに、コインが曲っている等の何等かの原因で詰まった場合は、リジェクトボタン9を押すことで、コインセレクタのリジェクトレバー5aが押し下げられ、不良硬貨が詰まっているコイン保持部5bを開放し、不良硬貨を返却ルート7へ流し、レジェクト口から取付板2に開口して設けたリジェクトカップ20に落下する。
【0026】
上述の通り本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0027】
1 コイン装置
2 取付板
2a ヒンジ機構
3 ブラケット
4 コイン受部
5 コインセレクタ
6 正規ルート
7 返却ルート
8 鍵
9 リジェクトボタン
10 コイン返却口
11 正規コイン振分部
20 リジェクトカップ
21 上面
22 底面
23 左壁面
24 右壁面
25 奥壁面
26 開口面
27 取付面
27a 取付穴
28 取付面
28a 取付穴
29 コイン落下穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入したコインを返却するコイン返却口を有するコイン動作式装置において、
筐体の扉の裏側に取り付けられた、投入したコインの真贋を判別し正規コインと不良コインとに選別し、不良コインを下に排出するリジェクト口を設けたコイン選別器と、
前記コイン選別器の下方に開口する前記扉に設けたコイン返却口と、
前記コイン選別器のリジェクト口と前記コイン返却口を連接するリジェクトカップであって、
該リジェクトカップは前記扉に固定され、前記コイン返却口に合致する開口を有すると共に前記リジェクト口を包含する奥行き及び幅を有する略箱状体であり、
前記リジェクトカップの上面は前記リジェクト口の下側にコイン落下穴を有し、該コイン落下穴の下側内部には垂線が斜め上横後方に向く面を配した傾斜面を設け、
コイン返却口の下縁より下側に位置する底面を設けたことを特徴とするコイン動作式装置。
【請求項2】
請求項1において、リジェクトカップは、奥側下方が手前に傾斜した傾斜面となり、コイン返却口の開口下縁に向けて底面が上り傾斜となっていることを特徴とするコイン動作式装置。
【請求項3】
請求項1において、コイン選別器のリジェクト口の下側に位置するリジェクトカップ内の傾斜面はコイン返却口の開口には至らない位置で垂直な壁面になることを特徴とするコイン動作式装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−176622(P2010−176622A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21573(P2009−21573)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000132471)株式会社セガ (811)
【Fターム(参考)】