説明

コエンザイムQ10含有スラリー状化粧料組成物及びその製法

【課題】難水溶性のコエンザイムQ10を分離、沈降、結晶化を起こすことなく水性相に安定に分散する、コエンザイムQ10含有スラリー状化粧料組成物の提供。
【解決手段】コエンザイムQ10を飽和脂肪酸に溶解し、飽和脂肪酸石鹸水とを混合溶解す
ることにより、水性相に安定に分散するコエンザイムQ10含有スラリー状化粧料組成物が
得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品、医薬部外品分野に使用されるコエンザイムQ10(ユビキノン10とも呼ばれる)を含有するスラリー状化粧料組成物及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
コエンザイムQ10は、抗酸化作用、皮膚細胞活性化作用があるため化粧料の有効成分として注目されている。しかし難水溶性のため、油等に溶解して得られる溶液を乳化剤を用いて水へ乳化する方法等が取られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−238396
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の文献に記載されてるように、従来の技術はコエンザイムQ10を水中に乳化分散させる方法がとられており、コエンザイムQ10を安定なスラリー状にすることについての提案はされてない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によればコエンザイムQ10、飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸石鹸が水中に均一に分散されているスラリー状の化粧料組成物が提供される。
【0006】
また本発明によればコエンザイムQ10を飽和脂肪酸に溶融した溶液を、飽和脂肪酸石鹸を溶解した溶液に混合することを特徴とするスラリー状化粧料組成物の製法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コエンザイムQ10が取り込まれた固相の飽和脂肪酸と飽和脂肪酸石鹸とからなる酸性石鹸(または複塩とも呼ばれる)であって、水に不溶な酸性石鹸にコエンザイムQ10が取り込まれ、水中に安定なスラリーを形成する。本発明のスラリー状化粧料組成物を化粧水や水性化粧品に応用した場合、コエンザイムQ10を含有する飽和脂肪酸の結晶は、皮膚に塗擦した時、皮膚温で溶融し皮膚に吸収される。またスラリー状化粧料組成物を化粧水や水性化粧料液に添加した場合、水溶液は懸濁するが、この懸濁物は飽和脂肪酸結晶由来による鱗片状または葉状晶の結晶集合体であり、光沢を発し商品価値を著しく高める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における飽和脂肪酸の炭素数は、入手の容易さの観点から飽和脂肪酸の炭素数は12〜22個であることが好ましい。その具体例として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸が挙げられる。炭素数10以下の飽和脂肪酸は、変臭しやすく、融点が低い為結晶化し難い。
【0009】
本発明における飽和脂肪酸石鹸を構成する飽和脂肪酸は、上述した飽和脂肪酸と同一である。
【0010】
この飽和脂肪酸石鹸は、上述した飽和脂肪酸をアミン類、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンを用いて、または無機アルカリ塩、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いて鹸化することにより得られる。
【0011】
コエンザイムQ10、飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸石鹸の配合割合は、通常化粧料組成物に対して、コエンザイムQ10は0.01〜10重量%、飽和脂肪酸は1〜30重量%、飽和脂肪酸石鹸は1〜30重量%である。
【0012】
本発明の化粧料組成物におけるスラリーの分散、安定性をはかるため、乳化剤を用いてもよい。乳化剤としては、HLB(Hydrophile Lipophile Balance)が8以上、好ましくはHLB10以上の界面活性剤が適している。乳化剤の具体例としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルアミンオキシド,またショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル等の糖系界面活性剤等が挙げられる。これらの乳化剤は単独もしくは2種以上組み合わせて用いられる。乳化剤の配合割合は、化粧料組成物に対して、0.1〜40重量%である。
【0013】
さらに化粧水または、水性化粧品に添加した場合の安定化を図るため、水溶性高分子を用いてもよい。水溶性高分子の具体例としては、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体等のポリカルボン酸塩類、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストリンアルギン酸ナトリウム、キトサン、アラビアガム、キサンタンガム、グアガムなどが挙げられる。水溶性高分子は、コエンザイムQ10、飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸石鹸からなるスラリー状の化粧料混合物を調製した後に添加することもでき、飽和脂肪酸石鹸を調製する段階で添加することも出来る。
【0014】
本発明を構成する組成物の配合比は、コエンザイムQ10、0.01〜10重量%、飽和脂肪酸1〜30重量%、飽和脂肪酸石鹸1〜30重量%、乳化剤0.1〜40重量%及び水溶性高分子の配合割合は組成物に対して1.0〜50重量%である。
【0015】
次いで、本発明のコエンザイムQ10含有化粧料組成物の調製法を説明する。まず、コエンザイムQ10を、融点以上に加熱して溶融した飽和脂肪酸に添加して溶解させる。溶解温度は、コエンザイムQ10が過度に加熱されて劣化することを防止するために、一般には70〜80℃である。こうして得られたコエンザイムQ10の飽和脂肪酸溶液を飽和脂肪酸石鹸を溶解した水溶液に混合し、充分に撹拌する。飽和脂肪酸石鹸を溶解した水溶液の温度は、飽和脂肪酸と飽和脂肪酸石鹸との酸性石鹸(すなわち複塩)の形成を容易にするために70〜80℃であることが好ましい。
【実施例】
【0016】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
実施例1
ステアリン酸(商品名「NAA-172」日本油脂(株)製)15gを80℃に熱溶融し、コエンザイムQ10(日清ファルマ(株)製)0.5gを加え溶解し,コエンザイムQ10のステアリン酸溶液を調製した。次いで精製水46.6gにトリエタノールアミン(和光純薬工業(株)製)3.5g加え80℃に加熱し、ステアリン酸15gを80℃で加熱溶融し加えステアリン酸トリエタノールアミン石鹸液を調製した。こうして得られたステアリン酸トリエタノールアミン液にコエンザイムQ10のステアリン酸溶液を80℃で撹拌しながら添加し、コエンザイムQ10を含有する水に不溶な酸性石鹸(または複塩とも云う)液を調製した。更に分散、安定化をはかるために、乳化剤として、モノラウリン酸デカグリセリル(阪本薬品工業(株)製)10g、安定剤としてポリビニルピロリドン(商品名「PVP-K30」アイエスピー製)20gを加え混合撹拌し、スラリー状化粧料組成物を得た。
【0018】
実施例2
ステアリン酸15gを80℃に熱溶融し、コエンザイムQ10、0.5gを加え溶解し,コエンザイムQ10のステアリン酸溶液を調製した。精製水53.1gにキサンタンガム(商品名「ケルトロール」大日本製薬(株)製)0.5g溶解し、溶解後水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)0.9gを加え80℃に加熱し、これに80℃で加熱溶融したステアリン酸を加えて、ステアリン酸ナトリウム石鹸液を調製した。こうして得られたステアリン酸ナトリウム溶液にコエンザイムQ10のステアリン酸溶液を80℃で撹拌しながら添加し、コエンザイムQ10を含有する水に不溶な酸性石鹸液を調製した。次いで80℃に溶解したモノステアリン酸ポリエチレングリコール(55モル)(日光ケミカルズ(株)製)25gを加え混合撹拌し、スラリー状化粧料組成物を得た。
【0019】
実施例3
ミリスチン酸(商品名「NAA-142」日本油脂(株)製)15gを80℃に加温し、これにコエンザイムQ10を0.5g加えて溶解し、コエンザイムQ10のミリスチン酸溶液を調製した。次いで精製水46.6gにトリエタノールアミン4gを加え80℃に加熱し、これにミリスチン酸15gを80℃で加熱溶融した溶融物を加えてステアリン酸トリエタノールアミン石鹸液を調製した。こうして得られたミリスチン酸トリエタノールアミン液にコエンザイムQ10のステアリン酸溶液を80℃で撹拌しなら添加し、コエンザイムQ10を含有する水に不溶な酸性石鹸液を調製した。更に乳化剤としてモノラウリン酸デカグリセリル10g、更に安定剤としてポリビニルピロリドン20gを加え混合撹拌し、スラリー状化粧料組成物を得た。
【0020】
実施例4
ミリスチン酸15gを80℃に加温し、これにコエンザイムQ10を0.5g加えて溶解し、コエンザイムQ10のミリスチン酸溶液を調製した。精製水65gにキサンタンガム0.5gを溶解し、溶解後トリエタノールアミン4gを加え80℃に加熱した。こうして得られたキサンタンガム含有ミリスチン酸トリエタノールアミン溶液にコエンザイムQ10のステアリン酸溶液を80℃で撹拌しなら添加し、コエンザイムQ10を含有する水に不溶な酸性石鹸液を調製し、更にモノミリスチン酸デカグリセリル(阪本薬品工業(株)製)10gを加え混合撹拌し、スラリー状化粧料組成物を得た。
【0021】
【表1】

【0022】
参考例1
上記の実施例で得た試料を表2に示す割合で他の成分と配合して水性化粧料を調製した。この化粧料に於けるコエンザイムQ10含有スラリー状化粧料組成物の安定性試験を行った。
【0023】
【表2】

【0024】
評価方法
− 極めてスラリーの安定性がよい。
± コエンザイムQ10及びスラリーの結晶浮遊または底部に僅かに凝集した結晶物が見られる。
+ コエンザイムQ10及びスラリーの浮遊物または底部に凝集した結晶物が見られる。
++ コエンザイムQ10及びスラリーが完全に凝集沈降し,上層部は透明か透明に近い。
【0025】
【表3】

【0026】
参考例2 参考例1で調製した水性化粧料を45℃の恒温器中で1日保存し、次いで室温で放置するサイクル試験を行った。室温の最高温度は24℃、最低温度は11℃ であった。
【0027】
【表4】

【0028】
本発明のスラリー状化粧料組成物は、水性化粧料中において、アルコール濃度が6%になるまでは非常に高い安定性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コエンザイムQ10、飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸石鹸が水中に均一に分散されているスラリー状の化粧料組成物。
【請求項2】
組成物に対して、0.01〜10重量%のコエンザイムQ10、1〜30重量%の飽和脂肪酸及び1〜30重量%の飽和脂肪酸石鹸を含有することを特徴とする請求項1のスラリー状化粧料組成物。
【請求項3】
飽和脂肪酸の炭素数が12〜22個であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のスラリー状化粧料組成物。
【請求項4】
コエンザイムQ10を飽和脂肪酸に溶融した溶液を、飽和脂肪酸石鹸を溶解した水溶液に混合することを特徴とするスラリー状化粧料組成物の製法。

【公開番号】特開2007−246420(P2007−246420A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70207(P2006−70207)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(501075062)有限会社エスケープランナー (2)
【Fターム(参考)】