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コエンザイムQ10含有組成物
説明

コエンザイムQ10含有組成物

【課題】生体内で迅速に溶解させることが可能なコエンザイムQ10の製剤形態を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、コエンザイムQ10、油脂、親油性乳化剤及び賦形剤を含む、固体状である、コエンザイムQ10含有組成物を提供する。本発明の組成物は水中に分散されたときにコエンザイムQ10及び油脂を含む微細な油相粒子を迅速に放出する、自己乳化型製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10、油脂、親水性乳化剤及び賦形剤を含むコエンザイムQ10含有組成物及びその製造方法を提供する。
【0002】
さらに、本発明は上記組成物の肝機能保護剤としての用途を提供する。
【背景技術】
【0003】
近年の健康志向の増加により、医薬品として使用されていた成分が一般の食品へも使用できるものが増加している。その中の一つであるコエンザイムQ10は、ユビキノン、補酵素Q、CoQ10、UQ とも呼ばれる油溶性成分である。イソプレノイド鎖(n)1〜12が自然界に存在していることが知られているが、ヒトではn=10のコエンザイムQ10(ユビデカレノン)のみが存在する。コエンザイムQ10は生体内で、ATP産生に欠かせない成分として真核細胞のミトコンドリアに多く存在し、生体エネルギー産生の必須成分と言われている。また、生体内で優れた抗酸化機能を発揮することが知られており、生体内で活性酸素が関与すると考えられている疾患、心筋梗塞、高血圧、狭心症、肝炎、癌などの、いわゆる生活習慣病と呼ばれる疾病に対して予防効果が期待されている。さらに、アルツハイマー、パーキンソン病、うつ病などの脳疾患、歯肉歯周病、筋ジストロフィー、肥満防止などにも効果があるとされ、心肺機能向上効果、新陳代謝促進による老化防止効果などがあるとされている。特に近年の罹患率が非常に高くなっている脂肪肝、急性肝炎・ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害、慢性肝炎、肝硬変などの肝障害に対する治療効果あるいは予防効果は強く注目されている[Gastroenterologia Japonica (1981) 16(3): 281−285]。
【0004】
コエンザイムQ10の生体内での需要の一部は、生体内合成によってまかなわれているが、それ以外は食物から取り入れている。生体内合成量は加齢により低下することが知られている。また食物から得られる量はごく僅かであるので、結果的に生体内でのコエンザイムQ10の総量は、加齢とともに減少することとなる。従って、生体内合成量を補う目的で、現在ではサプリメントとして摂取することが盛んに行なわれている。
【0005】
コエンザイムQ10は油溶性の物質であり、現在市販されている経口投与型のコエンザイムQ10サプリメントは基本的にコエンザイムQ10の結晶粉末を油脂に分散させたタイプか油脂に溶解させたもの、及び結晶粉末をカプセルに封入したものが大半である。このような状態のものは摂取されても、体内への吸収率、とりわけ空腹時の生物学的利用能が非常に低いことが解っている[Free Radical Research (2006) 40(5): 445−453]。これに対し、マイクロエマルション前濃縮物として投与した場合には、コエンザイムQ10の体内への吸収率が非常に高くなることが示されている。マイクロエマルション前濃縮物とは、親油性物質を乳化剤添加によって溶解した状態のものをいい、体内の水や胃液、腸液等の水性媒質に接触すると乳化し、マイクロエマルションを形成する系のことである。例えば特開2007−15965「ユビキノン類を含有する水溶性組成物」ではコエンザイムQ10等のユビキノン類とグリセリン等の多価アルコール、リン脂質等を含有する懸濁液を調製し、分散粒子の平均粒子径が110nm以下のユビキノン類分散組成物を得ることに成功している。特開2007−131619「コエンザイムQ10含有活性組成物」ではコエンザイムQ10にポリグリセリンモノミリステートならびにポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含有させることでコエンザイムQ10の水分散性と吸収性を改善することに成功している。また、特開2008−239580「エマルション組成物並びにこれを含む食品及び化粧品」では、低温での長期保存の場合でも安定した乳化を示すエマルション組成物を提示している。
【0006】
ここで問題となるのがコエンザイムQ10の安定性である。固体状態での同化合物の安定性は極めて高いが、油状・溶液状態での安定性は酸化や光分解によって著しく低くなることが明らかとなっており、サプリメントして流通させることを考慮するとエマルジョンあるいはその前濃縮物という形態が必ずしも最適ではない。そこで、生物学的利用能を改善しつつ、なおかつ固体状態を維持した安定な製剤の設計が求められているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−15965号公報
【特許文献2】特開2007−131619号公報
【特許文献3】特開2008−239580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、生体内における溶解度が向上した、保存安定性に優れたコエンザイムQ10含有組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、コエンザイムQ10、油脂、親水性乳化剤及び賦形剤を含む自己乳化型コエンザイムQ10含有粉末組成物がコエンザイムQ10の溶解度を向上させることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、上記組成物は優れた肝臓保護作用を有する。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(4)を提供する。
(1) コエンザイムQ10、油脂、親水性乳化剤及び賦形剤を含む、固体状である、コエンザイムQ10含有組成物。
(2) コエンザイムQ10が非晶質のコエンザイムQ10である、(1)の組成物。
(3) コエンザイムQ10及び油脂を含む油相と、水、水性溶媒及び賦形剤を含む水相と、親水性乳化剤とを含み、前記水相中に前記油相が乳化分散している乳化スラリーを乾燥する乾燥工程を含む、(1)又は(2)の組成物の製造方法。
(4) (1)又は(2)の組成物を有効成分として含有する肝臓保護剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明により提供されるコエンザイムQ10含有組成物は、コエンザイムQ10を生体内で速やかに溶解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(A)は粉末組成物2の走査型電子顕微鏡における外観を示す図である。顕微鏡のスケールは10μmである。図1(B)は乾式レーザー回折法における粉末組成物2の粒度分布を示す図である。
【図2】図2(A)は組成物2の粉末X線回折図である。図2(B)は組成物2の示差走査熱量測定結果を示す図である。
【図3】図3は粉末組成物2を水に溶解した際に形成されるエマルジョンの透過型電子顕微鏡における表面形態を示す図である。顕微鏡のスケールは500nmである。
【図4】図4(A)は粉末組成物2を水に溶解した際のpH1.2における溶出特性を示す図である。図4(B)は粉末組成物2を水に溶解した際のpH6.8における溶出特性を示す図である。
【図5】図5はコエンザイムQ10含有組成物のUVA/B照射後の製剤中コエンザイムQ10残存量を示す図である。
【図6】図6はコエンザイムQ10含有組成物を投与したラットの血漿中コエンザイムQ10濃度推移を示す図である。
【図7】図7(A)はコエンザイムQ10含有組成物を投与したラットの血漿中ALT(U/L)活性の変化を示す図である。図7(B)はコエンザイムQ10含有組成物を投与したラットの血漿中AST(U/L)活性の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
I.材料
本発明の組成物に必須成分として含まれるコエンザイムQ10、油脂、親水性乳化剤及び賦形剤について詳述する。
【0013】
1.コエンザイムQ10
本発明において、コエンザイムQ10とは、「ユビデカレノン」として日本薬局方に記載されている補酵素の一種であり、ユビキノン10、補酵素UQ10等と呼ばれることもあるものを指す。
【0014】
コエンザイムQ10は、酵母、鯖、鰯、小麦胚芽等の天然物に多く含まれており、熱水、含水アルコール、アセトン等の溶媒によってコエンザイムQ10を抽出することができる。コエンザイムQ10は工業的にも製造可能であり、一般的には発酵法や合成法が知られている。本発明で使用されるコエンザイムQ10は、天然物から抽出されたものであってもよく、工業的に合成されたものであってもよい。また、コエンザイムQ10として市販品を使用してもよい。
【0015】
2.油脂
本発明において使用される油脂としては、特に限定されるものではなく、医薬品あるいは食品として使用され、または将来使用されるものが含まれる。コエンザイムQ10の水性溶媒への溶解を補助する油脂としては、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
【0016】
前記液体の油脂としては、例えば中鎖脂肪酸トリグリセライド、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0017】
上記の中でも、組成物のエマルション形成時の粒子径、安定性の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセライドが好ましく用いられる。「中鎖脂肪酸トリグリセライド」とは、3分子の中鎖脂肪酸と1分子のグリセロールとがエステル結合したものである。「中鎖脂肪酸」とは、一般に炭素数が8〜12程度の脂肪酸をいう。
【0018】
3.親水性乳化剤
本発明において使用される親水性乳化剤としては、特に限定されるものではなく、医薬品あるいは食品として使用され、または将来使用されるものが含まれる。
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性-疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。川上式を次に示す。
【0019】
HLB=7+11.7log(Mw/M0)
ここで、Mwは親水基の分子量、M0は疎水基の分子量である。
【0020】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
【0021】
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の乳化剤を得ることが出来る。
【0022】
本発明で使用することの出来る水溶性乳化剤としては、水性媒体に溶解する乳化剤であれば、特に限定は無いが、例えばHLBが10以上、好ましくは12以上、より好ましくは14〜16のノニオン界面活性剤が好ましい。HLBが低すぎると、乳化力が不十分となることがある。
【0023】
本発明で使用することの出来る乳化剤は、特に制限は無いが、ノニオン性乳化剤が好ましい。ノニオン性乳化剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンなどが挙げられる。より好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルである。また、上記の乳化剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0024】
本発明に用いられるグリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸グリセリドの好ましい例としては、モノオレイン酸モノグリセリド、モノステアリン酸モノグリセリド、モノパルミチン酸モノグリセリド、モノミリスチン酸モノグリセリド、モノラウリン酸モノグリセリド等が挙げられ、それらのなかで、モノオレイン酸モノグリセリド、モノステアリン酸モノグリセリドが、好ましい。本発明においては、これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、花王(株)社製の、エキセルT−95、エキセルVS−95、エキセルP−40S、エキセルO−95R、エキセル200、エキセル122V、日光ケミカルズ(株)社製の、NIKKOL MGU、NIKKOL MGM、NIKKOL MGS−AV、NIKKOL MGS−AMV、NIKKOL MGS−ASEV、NIKKOL MGS−BV、NIKKOL MGS−BMV、NIKKOL MGS−BSEV、NIKKOL MGS−BSE−C、NIKKOL MGS−C、NIKKOL MGS−DEXV、NIKKOL MGS−F20V、NIKKOL MGS−F40V、NIKKOL MGS−F50V、NIKKOL MGS−F50SEV、NIKKOL MGS−F75V、NIKKOL MGS−TGV、NIKKOL MGS−TGLV、NIKKOL MGS−150V、NIKKOL MGIS、NIKKOL MGO、NIKKOL MGOL−70、NIKKOL MGC、NIKKOL DGO−80、NIKKOL DGS−80等が挙げられる。
【0025】
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸とのエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS、NIKKOL DGMO−CV、NIKKOL DGMO−90V、NIKKOL DGDO、NIKKOL DGMIS、NIKKOL DGTIS、NIKKOL Tetraglyn 1−SV、NIKKOL Tetraglyn 1−O、NIKKOL Tetraglyn 3−S、NIKKOL Tetraglyn 5−S、NIKKOL Tetraglyn 5−O、NIKKOL Hexaglyn 1−L、NIKKOL Hexaglyn 1−M、NIKKOL Hexaglyn 1−SV、NIKKOL Hexaglyn 1−O、NIKKOL Hexaglyn 3−S、NIKKOL Hexaglyn 4−B、NIKKOL Hexaglyn 5−S、NIKKOL Hexaglyn 5−O、NIKKOL Hexaglyn PR−15、NIKKOL Decaglyn 1−L、NIKKOL Decaglyn 1−M、NIKKOL Decaglyn 1−SV、NIKKOL Decaglyn 1−50SV、NIKKOL Decaglyn 1−ISV、NIKKOL Decaglyn 1−O、NIKKOL Decaglyn 1−OV、NIKKOL Decaglyn 1−LN、NIKKOL Decaglyn 2−SV、NIKKOL Decaglyn 2−ISV、NIKKOL Decaglyn 3−SV、NIKKOL Decaglyn 3−OV、NIKKOL Decaglyn 5−SV、NIKKOL Decaglyn 5−HS、NIKKOL Decaglyn 5−IS、NIKKOL Decaglyn 5−OV、NIKKOL Decaglyn 5−O−R、NIKKOL Decaglyn 7−S、NIKKOL Decaglyn 7−O、NIKKOL Decaglyn 10−SV、NIKKOL Decaglyn 10−IS、NIKKOL Decaglyn 10−OV、NIKKOL Decaglyn 10−MAC、NIKKOL Decaglyn PR−20、三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−50D、O−15D、B−100D、B−70D、ER−60D、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
【0026】
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステルS−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKフォーマーFD、DKエステルF10、F10P、F20、F20P、F20W、F50、F50P等が挙げられる。
【0027】
4.賦形剤
通常、賦形剤は散剤、錠剤などの固形製剤の増量、希釈、充填、補形等の目的で加えられるものであり、主薬の放出特性に大きく影響するので、その選択あるいは変更には注意を要する。本発明において、賦形剤は、薬剤の溶解性を高めるため、及び/又は自己凝集能を低減させるために効果的である。従って、賦形剤としては、水易溶性のものが好ましいが、著しく吸湿するものは本製剤の性質上好ましくない。本発明において、賦形剤は、一般的に使用されるデンプン類、乳糖、ブドウ糖、白糖、結晶セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等が用いられるが、生物学的に不活性であり、かつある程度の代謝が期待されるものを用いても良い。その他、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、蔗糖、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、寒天、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ステアリン酸等の脂肪酸あるいはその塩、ワックス類などを用いても良い。本発明において特に好ましい賦形剤は、乳糖及びエリスリトールである。
【0028】
II.本発明の組成物
本発明の組成物はコエンザイムQ10、油脂、親水性乳化剤及び賦形剤を含む固体状の組成物である。固体状の本発明の組成物は、エマルション状態(液状)のコエンザイムQ10含有組成物と比較して高い光安定性を示す。例えば油脂として液状油脂を用いるなど、液状成分を一部に用いたとしても組成物自体が固体状であればよい。本発明の組成物の形状は固体状である限り、どのような形状であってもよく、典型的には粉末、ペレット、フレーク、ビーズ等の形状であることができる。粉末状の組成物は水分散性に優れているため特に好ましい。本発明の組成物が粉末状である場合、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定したときの平均粒子径が1〜200μmの粉末粒子を含む組成物であることが好ましい。
【0029】
本発明の組成物は、上記I欄にて詳述したコエンザイムQ10、油脂、親水性乳化剤及び賦形剤を主原料として調製される。本発明の組成物は、他の成分を適量、例えば組成物の全重量(組成物の固形分の全重量を指す。以下同じ)に対して0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0〜5重量%、更に好ましくは0〜2重量%含んでいてもよい。「他の成分」は、本発明の組成物の目的及び効果を妨げない生理的に許容される成分であれば特に限定されない。最も好ましくは、本発明の組成物は、他の成分を含まず、コエンザイムQ10、油脂、親水性乳化剤及び賦形剤のみから構成される。
【0030】
本発明の組成物における各必須成分の含有量は特に限定されない。コエンザイムQ10の含有量は、目的とする作用が奏される量であれば特に限定されないが、組成物の全重量に対して0.01〜40重量%であることが好ましく、0.01〜10重量%であることがより好ましい。0.01重量%以上である場合には、最終製品に対し、コエンザイムQ10の薬理作用が期待できるだけの量を配合することが容易となり、40重量%以下である場合には製剤化によって長期にわたり非晶質体を保持することが容易となるからである。
【0031】
油脂の含有量は、組成物の全重量に対して0.01〜40重量%であることが好ましく、0.01〜10重量%であることがより好ましい。0.01重量%以上の場合には、油相中にコエンザイムQ10が十分に溶解でき、さらに、非晶質体を維持する観点からも好ましく、40重量%以下である場合には乳化粒子を十分に微細化することが容易となるからである。また、油脂の含有量は、コエンザイムQ10の重量1に対して油脂が0.1〜10であることが好ましく、0.5〜2であることがより好ましい。
【0032】
親水性乳化剤の含有量は、組成物の全重量に対して0.l〜50重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましい。0.1重量%以上の場合にはエマルションの形成が十分となり、50重量%以下の場合には、粉末成形性、流動性,安定性及び味などが良好であり、経口剤としての商品価値が高いためである。
【0033】
賦形剤は、他の組成の残分であることから、いかなる含有量でも構わない。典型的には、組成物の全重量に対して20〜90重量%である。
【0034】
本発明の組成物は、典型的には、水中に添加した際に、コエンザイムQ10と油脂とを含む油相粒子が水中に分散することが可能な構造を有する。具体的には、本発明の組成物は、該組成物を常温(25℃)の水に分散させたときの、コエンザイムQ10と油脂とを含む油相粒子の、動的光散乱法により測定される平均粒径が好ましくは10〜2000nm、より好ましくは50〜400nmとなる構造を有する。本発明の組成物は、水のpHに依存せず、幅広いpH域の水系中においてコエンザイムQ10を溶解可能であるという有利な効果を奏する。
【0035】
本発明の組成物は、賦形剤を含むマトリックス相と、当該マトリックス相中に分散した状態で存在する、コエンザイムQ10及び油脂を含む油相粒子とを含み、親水性乳化剤が、当該油相粒子と当該マトリックス相との界面を中心に分布している構造を有していると推定される。このような構造の組成物は、乳化スラリーを乾燥させる後述の方法により調製することが可能である。当該組成物が水中に添加されると、賦形剤のマトリックス相は水中において崩壊し、前記油相粒子は、好ましくは上記の平均粒径を有する油相粒子として水中に分散する。すなわち本発明の組成物は自己乳化型製剤である。油相粒子は本発明の組成物中において、好ましくは上記の平均粒径を有する油相粒子として水中に分散可能な微細な粒子径の粒子として存在する。
【0036】
本発明の組成物中ではコエンザイムQ10は非晶質の状態で存在することが特に好ましい。非晶質のコエンザイムQ10は、結晶性コエンザイムQ10と比較して水中での溶解性が顕著に高いためである。本発明の組成物中のコエンザイムQ10は長期保存後も安定に非晶質の状態を保持することが可能であるという驚くべき効果を奏する。本発明において、「非晶質」とはコエンザイムQ10が無水物、水和物、溶媒和物等の特定の結晶構造を有さず,エネルギー準位的にも高い状態にあり,粉末エックス線回折においてはハローパターンを示すことを意味する。
【0037】
III.本発明の組成物の使用形態・用途
本発明の組成物は、飲食品(特定保健用食品を含む)、医薬部外品、医薬品、化粧品等の用途に用いることができる。実施例に示すとおり、本発明の組成物が経口摂取された場合に血漿中コエンザイムQ10濃度が高まることから、本発明の組成物は、飲食品、医薬部外品、医薬品等として経口摂取される、経口摂取用組成物であることが特に好ましい。
【0038】
本発明の組成物は、コエンザイムQ10、油脂、親水性乳化剤及び賦形剤を主原料として調製される製品であるが、当該製品(一次製品)の特徴(特に内部構造)が保持されている限り、上記用途に許容される他の材料と共に、更なる加工が施された高次製品中の一部分として提供されてもよい。例えば、このような高次製品としては、本発明の組成物をカプセル用外殻材に封入したカプセル剤、本発明の組成物を打錠成形に必要な成分とともに打錠成形した錠剤、本発明の組成物を造粒した顆粒剤、丸剤、吸入剤、点鼻剤等の任意の形態が挙げられる。
【0039】
本発明の組成物によれば、コエンザイムQ10を従来技術と比べて安定的に保持することが可能であり、なおかつ、コエンザイムQ10の投与量を減少させることが可能であることから、医療経済学的な見地からも有用性が高い。
【0040】
本発明の組成物は経口摂取された場合に優れた肝臓保護作用、具体的には、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の血漿中活性を抑制する作用を奏する。このため本発明の組成物は、飲食品、医薬部外品、医薬品等の任意の形態で提供される、経口摂取用の肝臓保護剤として有用である。本発明の組成物を肝臓保護剤として用いる場合、コエンザイムQ10が肝臓保護作用を奏する有効量で投与されるように、本発明の組成物が投与されればよい。そのような有効量としては、特に限定されないが、コエンザイムQ10として一日あたり0.1〜1000mg/Kg体重の経口投与量が例示できる。本発明の肝臓保護剤は、肝機能の低下が認められる対象者に投与する治療的な用途で用いてもよいし、肝機能の低下を未然に防ぐために対象者に投与する予防的な用途で用いてもよい。本発明の肝臓保護剤は本発明の組成物のみからなるものであってもよいし、本発明の組成物と、飲食品、医薬部外品、医薬品等の所望の形態において許容される賦形剤等の成分とを組み合わせた組成物であってもよい。
【0041】
IV.本発明の組成物の製造方法
本発明の組成物は、コエンザイムQ10及び油脂を含む油相と、水、水性溶媒及び賦形剤を含む水相と、親水性乳化剤とを含み、前記親水性乳化剤の作用により、前記水相中に前記油相が乳化分散している乳化スラリーを乾燥することにより製造することができる。
【0042】
1.混合工程(乳化スラリー調製工程)
乳化スラリーは、コエンザイムQ10及び油脂を溶解した水性溶媒と、水とを、賦形剤及び親水性乳化剤の存在下において十分に混合することにより形成することができる。このとき、賦形剤及び親水性乳化剤は、水性溶媒系及び水系のいずれか一方又は両方に、混合前に予め配合し溶解させることが好ましい。どちらの系に配合するかは、賦形剤及び親水性乳化剤の各系への溶解性に応じて適宜決めればよい。実施例では、賦形剤を水性溶媒系及び水系のいずれか一方に予め溶解し、親水性乳化剤を水性溶媒系に予め溶解してから両系の混合を行っている態様を示すが、これらの態様には限定されない。
【0043】
本発明において「水性溶媒」とは水溶性の溶媒を指す。水性溶媒は、好ましくは、コエンザイムQ10を溶解し、かつ水と混合することで水へ速やかに拡散する、水への拡散を駆動力としてエマルションを形成することが可能な溶媒である。このような性質を満足する水性溶媒としてエタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられ、安全性の観点からエタノールが特に好ましい。
【0044】
水系の媒体として使用する水は特に限定されないが、形成する乳化スラリーの乳化安定性の観点からカルシウムイオンなどの陽イオンを極力含まないことが望ましい、すなわち電気伝導度が低いことが望ましく、イオン交換水などの使用が望ましい。また、乳化剤の化学的安定性を維持するために、pHは2〜8の範囲であることが望ましい。
【0045】
乳化スラリー調整のための水性溶媒及び水の使用量は特に限定されないが、典型的には、水性溶媒の量はコエンザイムQ10を溶解しうる量以上であることが好ましく、水の量は溶解する固形分重量の2倍〜50倍の重量であることが望ましい。水の量が固形分重量の2倍より少ないと、賦形剤などの固形分を十分に溶解することができず、50倍より多いと、乾燥する液量が増すために著しく経済性を損なうからである。水性溶媒と水の比は重量比で1:10〜1:0.1の範囲であることが好ましい。水性溶媒1に対して水が10以下であると、乾燥液量の増加を抑制することができ、経済性の観点から好ましく、水性溶媒1に対して水が0.1以上であると、水及びコエンザイムQ10を溶解した水性溶媒との混合時に容易にエマルションの形成がなされるからである。
【0046】
混合方法は、水性溶媒系と水系とが、充分に混合され、所望の乳化スラリーを形成する手法であれば何ら限定されないが、例えば、ミキサー、混合ノズル、攪拌子等を用いる攪拌混合、振とう混合、回転混合、超音波を利用した混合などが挙げられ、攪拌混合が好ましく、ミキサーや混合ノズルを用いる攪拌混合が特に好ましい。ミキサーとしては、ホモミキサー、ホモジェッター、ポリトロンホモジナイザー、クレアミックス等の高速撹拌機、プロペラ撹拌機、高圧乳化するための高圧乳化機が挙げられる。高圧乳化機としては、ナノマイザー、アルティマイザー、マイクロフルイタイザー等の均質化処理機が挙げられる。これらの均質化処理機を用いた均質化法による乳化スラリーの製造は、1000kg/cm以上、好ましくは1500kg/cm以上、さらに好ましくは2000kg/cm以上の高せん断力を与える均質化法により行うことができる。
【0047】
乳化スラリー中では、コエンザイムQ10及び油脂を含む油相と、水、水性溶媒及び賦形剤を含む水相と、親水性乳化剤とを含み、前記親水性乳化剤の作用により、前記水相中に前記油相が乳化分散している。乾燥直前における乳化スラリー中での油相の粒子径は、特に限定されないが動的光散乱法により測定される平均粒径が10nm〜2000nmであることが好ましい。この範囲の平均粒径を有する油相を有する乳化スラリーを調製することにより、乾燥後の本発明の組成物を水中に再分散させたときに、上記II欄で説明した水中での平均粒子径を有する油相粒子を提供することができる。
【0048】
2.乾燥工程
上記乳化スラリーを乾燥する手法としては、水性溶媒及び水を十分に除去し、乾燥できる手法であれば何ら限定されないが、例えば、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、真空乾燥法、ドラム乾燥法、遠赤外線乾燥法などが挙げられ、乾燥効率や経済性の観点から噴霧乾燥法が特に好ましい。
【0049】
噴霧乾燥装置としては、ディスク式、ノズル式、二流体ノズル式、四流体ノズル式、二液混合ノズル式などが挙げられるが、得られる粉末の二次粒子特性に応じて、自由に選択することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
粉末組成物1の調製
コエンザイムQ10(旭化成ファーマ社製)5g、中鎖脂肪酸トリグリセリド(ココナード MT、花王社製)5g及びショ糖脂肪酸エステル(DKエステルSS、第一工業製薬社製) 40gを99.5%発酵エタノール(日本アルコール販売社製)500mLに溶解した溶液をA液とする。エリスリトール(三菱化学フーズ社製)50gをイオン交換水1500mLに溶解した溶液をB液とする。B液をTKホモミキサー(プライミクス社製)で、5000rpmで撹拌しながら、A液を加え、得られた乳化スラリーをL−8i型スプレードライヤー(大川原化工機社製)で入口温度150℃、アトマイザディスク回転数25000rpm、送液速度1.8kg/hの条件下で噴霧乾燥を行い、粉末組成物1を得た。粉末組成物1をイオン交換水で100倍希釈し、ELS−Z(大塚電子社製)を用いて動的光散乱法で測定した平均粒径は約200nmであった。
【0052】
[実施例2]
粉末組成物2の調製
実施例1と同様にA液及びB液を調整し、二液混合ノズル(大川原化工機社製)を用いて、A液及びB液を流路内で混合しながら、NL−5型スプレードライヤー(大川原化工機社製)を用いて、入口温度160℃、噴霧エアー圧力0.1MPa、送液速度3.9kg/hの条件下で噴霧乾燥することで粉末組成物2を得た。粉末組成物Bをマイクロスコープで観察すると、3〜5μm程度の微細な粒子を形成していた。
【0053】
[実施例3]
粉末組成物3の調製
A液を実施例1と同様に調整し、B液はヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)50gをイオン交換水1500mLに溶解することで調製した。マグネティックスターラーで撹拌しながらB液中にA液を少量ずつ加え、得られた乳化スラリーを−80℃で凍結した後に、凍結乾燥機 FTU−1100(東京理化学機器社製)を用いて24時間減圧乾燥し、得られた固形物をジューサーミキサーで粉砕した後、目開き500μmの篩でろ過し、粉末組成物3を得た。粉末組成物3をイオン交換水で100倍に希釈して得られた溶液の動的光散乱法で測定した平均粒径は約200nmであった。
【0054】
[実施例4]
粉末組成物4の調製
コエンザイムQ100.5g、中鎖脂肪酸トリグリセリド0.5g、ショ糖脂肪酸エステル4g及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製)5gを99.5%発酵エタノール 50mLに溶解した溶液をA液とする。イオン交換水150mLをB液とする。マグネティックスターラーで撹拌しながらB液中にA液を少量ずつ加え、得られた乳化スラリーをロータリーエバポレーター R−210(日本ビュッヒ社製)を用いて、40℃の湯浴中で20hPaの減圧条件下で5時間減圧乾燥し、得られた固形物をジューサーミキサーで粉砕した後、目開き500μmの篩でろ過し、粉末組成物4を得た。粉末組成物4をイオン交換水で100倍に希釈して得られた溶液の動的光散乱法で測定した平均粒径は約200nmであった。
【0055】
[実施例5]
粉末組成物の表面形態及び粒子径評価
実施例2で得た粉末組成物2の走査型電子顕微鏡写真(VE−7800,Keyence Corporation, Osaka, Japan)を図1(A)に、0.2MPaの乾燥空気で分散した粉末組成物2のレーザー回折(Mastersizer 2000 equipped with Hydro 2000 ・P, Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)による粒度分布を図1(B)に示す。粉末組成物2は平均粒子経15.1μm,SPAN Factor 2.58の黄色粉末であり、粒子が会合した状態で存在していることが示唆された。
【0056】
[実施例6]
粉末組成物中コエンザイムQ10の結晶性及び保存安定性評価
実施例2で得た粉末組成物2の粉末X線回折(D8 ADVANCE, Bruker AXS GmbH, Karlsruhe, Germany)及び示差走査熱量測定(DSC Q1000, TA Instruments, New Castle, Delaware)を行った。結果をそれぞれ、図2(A)及び図2(B)に示す。実施例2で得た粉末組成物2内のコエンザイムQ10は非晶質の状態で存在していることが確認された。また、粉末組成物2を40℃及び40℃/75%相対湿度にて4週間保存後であっても、組成物中のコエンザイムQ10は非晶質の状態を保持していることが示唆され、長期保存後も安定に非晶質を保持していることも認められた。
【0057】
[実施例7]
水分散後のナノエマルジョン形成能評価
実施例2で得た粉末組成物2の透過型電子顕微鏡(H−7600 transmission electron microscope, Hitachi, Tokyo, Japan)による表面形態の写真を図3に、動的光散乱法(Zetasizer Nano, Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)による粒径測定の結果を表1に示す。実施例2で得た粉末組成物2は水に分散後、平均粒径282nmのミセルを形成し、強い表面負電荷を示した。
【0058】
【表1】

【0059】
[実施例8]
水分散後のナノエマルジョン形成能評価
粉末組成物2のpH1.2及びpH6.8試験液中における溶出試験の結果を図4(A)及び図4(B)に示す。図4(A)及び図4(B)中、○は結晶性コエンザイムQ10を表し、□は粉末組成物2を表す。データは3回の試験の平均±標準偏差の値である。結晶性コエンザイムQ10は試験中検出されなかった。粉末組成物2は結晶性コエンザイムQ10と比較して著しく溶解性が改善した。
【0060】
[実施例9]
光安定性評価
各コエンザイムQ10組成物のUVA/B(250W/m)照射(Atlas Suntest CPS+ solar simulator, Atlas Material Technology LLC, Chicago, IL)後の製剤中コエンザイムQ10残存量を測定した。結果を図5に示す。図5中、○は結晶性コエンザイムQ10を表し、□は粉末組成物2(粉体)を表し、△は粉末組成物2(溶液)を表す。データは3回の試験の平均±標準偏差の値である。この結果より、コエンザイムQ10光分解速度及び光分解半減期を算出した結果を表2に示す。粉末組成物2において、粉体のコエンザイムQ10の光分解速度は、溶液のコエンザイムQ10の光分解速度と比較して約3倍低値を示し、光安定性が高いことを示した。
【0061】
【表2】

【0062】
[実施例10]
薬物動態学的評価
雄性Sprague−Dawleyラット(週齢:13〜15週 体重:447±31g)に結晶性コエンザイムQ10及び粉末組成物2(100mg−コエンザイムQ10/kg)をそれぞれ経口投与、コエンザイムQ10溶液(0.3mg−コエンザイムQ10/kg)を尾静脈投与後、経時的採血を行い、血漿中コエンザイムQ10濃度をHPLC−UV(Shimadzu class−VP HPLC system, Shimadzu, Kyoto, Japan; UV: 275 nm)を用いて測定した。血漿中濃度推移を図6に示す。図6中、○は結晶性コエンザイムQ10を表し、□は粉末組成物2を表し、◇はコエンザイムQ10溶液を表す。データは、結晶性コエンザイムQ10と粉末組成物2については、6回の測定の平均±標準偏差の値であり、コエンザイムQ10溶液については、2回の測定の平均±標準偏差の値である。また、各薬物動態学的パラメーターの算出を表3に示す。粉末組成物2投与群は結晶性コエンザイムQ10投与群と比較して高い血漿中濃度推移を示し、粉末組成物2のBAは結晶性コエンザイムQ10と比較して約5倍高値を示した。この結果から、粉末自己乳化型製剤技術によるコエンザイムQ10の溶解性改善により、経口吸収性が向上したと考えられる。
【0063】
【表3】

【0064】
[実施例11]
肝保護機能評価
雄性Sprague−Dawley ラット(週齢:8週、体重:278±10g)にCCl溶液(0.7mL−CCl/kg)経口投与6、12時間前に結晶性コエンザイムQ10及び粉末組成物2(100mg−コエンザイムQ10/kg)を経口投与し、CCl投与後24時間における血漿中ALT及びAST活性を測定した。結果を図7(A)及び図7(B)に示す。データは4回の測定の平均±標準偏差の値である。CCl投与24時間後、血漿中ALT及びAST活性は顕著な上昇を認め、粉末組成物2前投与により、血漿中ALT及びAST活性をそれぞれ93%、80%抑制し、結晶性コエンザイムQ10と比較して高い肝保護機能性を示した。この結果は、粉末自己乳化型製剤技術によるコエンザイムQ10の溶解性改善、経口吸収性向上により肝臓へのコエンザイムQ10曝露量が増加したことによると推察する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コエンザイムQ10、油脂、親水性乳化剤及び賦形剤を含む、固体状である、コエンザイムQ10含有組成物。
【請求項2】
コエンザイムQ10が非晶質のコエンザイムQ10である、請求項1の組成物。
【請求項3】
コエンザイムQ10及び油脂を含む油相と、水、水性溶媒及び賦形剤を含む水相と、親水性乳化剤とを含み、前記水相中に前記油相が乳化分散している乳化スラリーを乾燥する乾燥工程を含む、請求項1又は2の組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2の組成物を有効成分として含有する肝臓保護剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−32301(P2013−32301A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168521(P2011−168521)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 :日本薬学会第131年会(Webにて要旨集のみ公開) 主催者 :公益社団法人 日本薬学会 タイトル :「Coenzyme Q▲10▼の溶解性および経口吸収性の改善を指向した新規製剤開発」 掲載アドレス:http://nenkai.pharm.or.jp/131/pc/ipdfview.asp?i=3377 電気通信回線発表日:平成23年2月1日
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【出願人】(592007612)横浜油脂工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】