説明

コエンザイムQ10組成物による基礎代謝向上

【課題】短期間の摂取で、基礎代謝の向上作用を奏する基礎代謝向上剤を提供することにある。
【解決手段】配合割合が質量比で大豆タンパクまたは大豆タンパク加水分解物が5から90重量%、コエンザイムQ10が10から95重量%の組成物を用いることにより、上記課題を解決することを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10を有効成分として含有する基礎代謝向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎代謝とは、生命維持に必要な最小限の消費エネルギーであり、一般に「快適な温度(20〜25℃)で肉体、精神ともに安静で、空腹(食後12〜16時間)、横臥時覚醒状態の消費エネルギー」と定義されている(非特許文献1を参照)。すなわち、基礎代謝は生命を維持するために必要最小限の消費エネルギーを意味し、一定条件下で測定された基礎代謝量は各個体においてほぼ同じ値を有するが、個体間では体格、性別、年齢、環境条件等の要因によって変動する。例えば、体格が大きいほど体表面積が多くなり、体表からの放出エネルギー量が増えるため基礎代謝量は多くなり、女子は男子より体脂肪が多く、体格が小さいため基礎代謝量は通常6〜10%少ない。体表面積当たりの基礎代謝量は生後2〜3歳で最高値となり、その後急激に低下し、思春期以降はゆるやかに更に低下する。環境温度が低くなると体温維持のために発熱エネルギー量が多くなるから基礎代謝量は高くなり、運動や重労働の場合は基礎代謝量を高め、肥満者は体脂肪が多く、基礎代謝量は低い。
【0003】
加齢にともなう基礎代謝量の低下は、食事エネルギーの消費を低下させるため肥満傾向を促進し、肥満との因果関係が指摘されている生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化症、虚血性心疾患等)を誘発する要因や体質となる。また、肥満状態から脱出するために食事制限(いわゆるダイエット)が行われることが多く、摂取エネルギー量を抑えて比較的簡単に肥満を解消できるのであるが、健康面においては各種の問題が生じることが知られている。特に過度の食事制限を行うことにより、生体防護機能等の影響から基礎代謝が低下してダイエット効果が減殺するとともに、食事制限中止後には急激な体重増加(リバウンド)が起こる。又、体内で産生されるエネルギー量が低下するため、身体の疲労回復遅延や倦怠感を招き、活動意欲、やる気といった精神心理面へも負影響を及ぼす。
このような社会的背景において、生体の基礎代謝を維持又は増進する基礎代謝向上剤の研究が行われており、例えばドコサヘキサエン酸(DHA)(特許文献1を参照)、ジヒドロチオクト酸(特許文献2)等が知られているが、機能発現が遅い欠点や安定性、高価である欠点がある。
【0004】
コエンザイムQ10(以下、CoQ10と記す)はベンゾキノン誘導体であり、ミトコンドリア、リソゾーム、ゴルジ体、ミクロソーム、ペルオキシソーム、或いは細胞膜等に局在し、電子伝達系の構成成分としてATP産生賦活、生体内での抗酸化作用、膜安定化に関与している事が知られている、生体の機能維持に必要不可欠な物質である。これらは、食事によって補給される一方、生体内でも生合成されているが、生体内での含量は加齢や生体が受ける種々のストレスにより顕著に減少することが知られている。更に、激しい運動や過労時等、生体内で過酸化物が生成しやすい条件下においても、組織内濃度の減少が推定されている。
【0005】
生体内CoQ10含量の低下は、その特性上、ATP産生力の減退、心機能の減退、酸化ストレスに対する抵抗性の減退、生体膜の不安定化をもたらし、健康上好ましくない。従って、不足しているCoQ10を補給することは、ミトコンドリアでのエネルギー産生促進及び生体の抗酸化能を向上し、恒常性を維持するために有益である。このCoQ10を使用してアルコール代謝を上げる方法(特許文献3)が知られている。しかし、このような毒性物質の代謝と異なり、基礎代謝に対する機能は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−315535号公報
【特許文献2】特開2007−308468号公報
【特許文献3】特開2007−20432号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】栄養学ハンドブック編集委員会編「第三版栄養学ハンドブック」、技報堂出版株式会社、1996年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、比較的短期間の摂取で、安価な基礎代謝の向上作用を奏する基礎代謝向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示す方法により、本発明の課題を解決するに至った。
〔1〕配合割合が質量比で大豆タンパクまたは大豆タンパク加水分解物が5から90重量%、コエンザイムQ10が10から95重量%の基礎代謝向上組成物。
〔2〕〔1〕記載の基礎代謝向上組成物を用いた基礎代謝向上方法。
〔3〕コエンザイムQ10が50−500mg/日となる様に前記基礎代謝向上組成物を摂取する〔2〕に記載の基礎代謝向上方法。
〔4〕〔1〕記載の基礎代謝向上組成物を用いた機能性食品。
【発明の効果】
【0010】
安価で生体吸収性が高く同時に栄養学上の優れ、短期間の摂取で、基礎代謝の向上作用を奏する基礎代謝向上剤を提供することを可能とした。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では使用するCoQ10は酸化型、還元型どちらでも使用できる。その合成は有機合成、発酵法どちらでも構わない。
【0012】
本発明では、大豆タンパク又はその加水分解物を用いた場合、安全性が高く、しかも簡便かつ経済的に少量の添加量でCoQ10の生体吸収性を著しく高めることができる。大豆タンパクやその加水分解物を使用する。これらは大豆から製造される。本発明はCoQ10の生体吸収性を高めることができるだけではなく、同時に栄養学上の優れた特性を活かした経口摂取用組成物を製造することが可能となる。
【0013】
本発明は、CoQ10を1日当たり50−500mg摂取することで基礎代謝向上させる方法である。より好ましくは100から300mgである。投与する人の体重は特に限定されないが、30−150kgの体重の人が一般的に多く、それらの人に有効である。また、投与する人の年齢は3−90歳である。代謝が落ちる年齢の30−80歳がより好ましい。
【0014】
大豆タンパク又はその加水分解物の製造方法は特に限定されない。例えば、脱脂してある大豆から希アルカリ溶液(pH8〜9)でタンパク質を抽出後、不溶成分を遠心分離によって沈殿したタンパク質を回収し、水洗後水に懸濁して噴霧乾燥することによって得られる。
またはアルカリ抽出後、酸添加して可溶分を除きアルカリ中和したものがあげられる。
またはアルコール洗浄したのち酵素分解して得ることができる。脱脂していない大豆も原料として使用できる。使用する大豆タンパクやその加水分解物に含まれるたんぱく含有量は40%以上が好ましく、より好ましくは55%以上である。
【0015】
本発明で使用可能な大豆タンパクやその加水分解物は市販しており、それらを使用できる。例えば不二製油社製のソヤサワー、ハイニュートシリーズ、フジプロシリーズ、サンラバーシリーズ、プロリーナシリーズ、日清オイリオ社製のニューソイミー、ニューコミテックス、プロコン、ソルピー、ソーヤフラワー、アルファープラス等が販売されており、使用しやすい。
【0016】
本発明において、CoQ10と大豆タンパクやその加水分解物を混合する場合、粉末でCoQ10と大豆タンパクやその加水分解物と混合することで作ることができる。大豆タンパクやその加水分解物は水やアルコールに均一の分散を作りやすく、それを使って混合してもよい。大豆タンパクやその加水分解物とCoQ10を単に混合するだけという大変簡便な方法を採用することによって、CoQ10の生体吸収性を顕著に高めることが可能となった。
【0017】
CoQ10の融点が70℃付近であることから、混合の際に過度の熱がかからない方法が好ましい。20から70℃で行うのがより好ましい。
配合割合は質量比で大豆タンパクまたは大豆タンパク加水分解物が5から90、CoQ10が10から95の混合物を使用できる。CoQ10と大豆由来粉の粉体の大きさはどの種類でも0.1から500μmが好ましく、より好ましくは5μmから300μmである。
【0018】
本発明によって、CoQ10からなる製剤とほぼ等しい嵩張らない剤形のものから、栄養的な面から注目されている大豆を同時かつ容易に摂取できるものをつくることが可能となる。
【0019】
本発明で得られるCoQ10の経口摂取用組成物の投与剤形は、特に制限されず使用する用途により適宜選択することができる。
本発明の経口摂取用組成物は、ヒト用または動物用として、食品、機能性食品、医薬品または医薬部外品として使用することができる。ここでいう機能性食品とは、健康食品、栄養補助食品、栄養機能食品、栄養保険食品等、健康の維持あるいは食事にかわり栄養補給の目的で摂取する食品を意味している。具体的な形態としてはカプセル剤、タブレット、チュアブル、錠剤、ドリンク剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防菌防黴剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等を用いることができる。
より一般的には通常の食品、例えば味噌、醤油、インスタントみそ汁、ラーメン、焼きそば、カレー、コーンスープ、マーボードーフ、マーボーなす、パスタソース、プリン、ケーキ、パン等に加えることも可能である。
【0021】
製剤は、CoQ10と大豆由来の粉体を少なくとも含む組成物よりなるが、さらに任意の有効成分を含有していてもよい。それら製剤は、医薬、食品として許容される一種またはそれ以上の加工用の担体と共に混合し、製剤学の技術分野において公知の任意の方法により製造される。
【実施例】
【0022】
以下、実施例および比較例をもって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例にのみ限定されるものではない。
【0023】
実施例1 組成物の調製
酸化型CoQ10(三菱瓦斯化学製)320kg、大豆タンパク加水分解物(日清オイリオ社製)を72kg、そして二酸化ケイ素8kgを徳寿工作所Vー2000型を使用し14回転で30分処理し組成物を調製した。これをゼラチン製カプセルにCoQ10が100mgになるようにつめた。
【0024】
実施例2〜5 基礎代謝測定
実施例1で作製したカプセルを使用し(CoQ10として100mg or 300mg/日)を連続摂取した。そして呼吸代謝測定装置VO2000(MEDGRAPHICS)を用い、安静時の酸素消費量及び炭酸ガス生成量を測定し、安静時エネルギー消費量を測定する。測定時期は、実施例1で調製した組成物の摂取開始前及び連続摂取期間中の任意及び接収終了数日後とする。結果を以下の表1に示す。
【表1】

注)安静時消費エネルギー(kCal/day)を表示
摂取していない0日と比較してどの個人も10から20日程度で基礎代謝が向上している。また、摂取を中止すると消費カロリーは減少し、本発明の組成物が有効であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ヒト用または動物用として、食品、機能性食品、医薬品または医薬部外品として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合割合が質量比で大豆タンパクまたは大豆タンパク加水分解物が5から90重量%、コエンザイムQ10が10から95重量%の基礎代謝向上組成物。
【請求項2】
請求項1記載の基礎代謝向上組成物を用いた基礎代謝向上方法。
【請求項3】
コエンザイムQ10が50−500mg/日となる様に前記基礎代謝向上組成物を摂取する請求項2に記載の基礎代謝向上方法。
【請求項4】
請求項1記載の基礎代謝向上組成物を用いた機能性食品。

【公開番号】特開2012−219033(P2012−219033A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83854(P2011−83854)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】