説明

コケモモ抽出物含有の美容組成物及びその応用

本発明は、コケモモ抽出物、及びそれを美容に応用することに関する。本発明は、アントシアニンと、プロアントシアニジンと、レスベラトロールとカテキン等のポリフェノールとを含有するコケモモ抽出物を提供する。本発明は、コケモモ抽出物を美容に応用することにも関し、その応用は下記に限られないが美白、シミ除去、しわ取り、保湿、及び皮膚の滑らかさ増加、及び皮膚の敏感さ改善を含む。本発明は、コケモモ抽出物で製造した医薬品、美容組成物、及び食品に関する。従来の美用品と比べて、本発明のコケモモ抽出物はより高い効果、及び高い安全性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコケモモ抽出物、及びそれを美容に応用することに関する。本発明は、アントシアニン5〜35重量%と、プロアントシアニジン20〜80重量%と、レスベラトロール0.01〜50重量%とを含有するコケモモ抽出物を提供する。本発明は、コケモモ抽出物を美容に応用することにも関し、下記に限られないが、その応用は美白、シミ取り、しわ取り、保湿、皮膚の滑らかさ増加、及び皮膚の敏感さ改善を含む。本発明は、コケモモ抽出物を用いて製造する医薬品、美容組成物、及び食品について開示する。従来の美容品と比べて、本発明のコケモモ抽出物は、強い効果及び高い安全性を有する。
【背景技術】
【0002】
コケモモ(Vaccinium vitis−idaea L.)(別名が唐小豆、小リンゴ、歯くれ、熊果葉など)はツツジ科(Ericaceae)のコケモモ属(シャシャンボ属)に属し、多年生落葉又は常緑低木、又は小低木植物である。原産地は、中国の東北、旧ソ連、北朝鮮、北米、及び北欧の高山帯に自生し、くろまめの木とよく混生し、常緑小低木である。木の高さは15〜30cm、葉は常緑、草本であり、耐寒性に強く、耐寒性にすぐれる。コケモモの果実は、明るい赤色であり、味がしょっぱく渋く、栄養は豊富で、高い利用価値を秘めている。
【0003】
特許文献1には、コケモモの葉、及び果実抽出物を用いて、その他の原料と配合して美容組成物を製造することが開示されている。アルコール水溶液でコケモモの葉、及び果実を抽出して、得られた抽出液を濃縮し、樹脂処理をおこなってから、コケモモ抽出物を得ている。しかし、この特許に開示された方法によって得られた抽出物は、次の欠点を有する:(i)コケモモの果実と葉の混合物を原料として用いているので、得られた製品中の成分は複雑で、応用効果が限られている;(ii)本製品は外用にしか応用できない;(iii)本方法でコケモモ中の有効成分を十分に抽出することが困難で、資源を浪費することになる。
【0004】
特許文献2には、コケモモ抽出物を含有する美容組成物が開示されている。しかし、本特許もコケモモの葉、及び果実(それぞれ約50%)の抽出物を原料として用いているので特許文献1の欠点を解決できず、同様に外用にしか利用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3826698号公報
【特許文献2】国際公開第2006/134583号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、現在は、安全且つ高効率的にコケモモを抽出すると共に、コケモモ抽出物の応用を更に開発する必要がある。そこで、コケモモ抽出物の有効成分を明確にし、その安全性や有効性を実証し、応用分野を広げる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はコケモモ抽出物、及びそれを美容に応用することに関する。本発明は、アントシアニン5〜35重量%と、プロアントシアニジン20〜80重量%と、レスベラトロール0.01〜50重量%とを含有するコケモモ抽出物を提供する。本発明は、コケモモ抽出物を美容に応用することにも関し、下記に限られないが、その応用は美白、シミ取り、しわ取り、保湿、皮膚の滑らかさ増加、及び皮膚の敏感さ改善を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、コケモモの抽出物を提供することによって、従来技術に存在している上記の問題を解決することを目的とする。
【0009】
本発明に使うコケモモ抽出物の抽出方法は、従来の抽出方法を用いてもよく、中国公開特許CN101077864Aに開示されている技術を含むが、それに限定しない。ここはその特許を参考とする。
【0010】
選ばれたコケモモ抽出物の抽出方法の一例は、次の工程を含む:
(1)抽出工程:酸含有水溶液でコケモモを常温抽出し、(又はアルコール水溶液でコケモモを常温又は低温抽出する)、濾過後、コケモモ抽出液を得る。
(2)濃縮工程:(1)の工程で得られた抽出液を樹脂で処理する。
(3)乾燥工程:得られた濃縮物を乾燥し、アントシアニンを豊富に含有する画分を得る。
(4)精製工程:コケモモを酸含有水溶液(又はアルコール水溶液)で抽出・濾過して得られた残渣からの抽出物をシリカカラムで精製して、レスベラトロールを豊富に含有する画分を得る。
(5)アントシアニンを豊富に含有する画分とレスベラトロールを豊富に含有する画分を適切な比率で混合し、三種類のコケモモ抽出物を得る。それぞれはコケモモ抽出物I、II、IIIである。コケモモ抽出物Iの組成は、アントシアニン15%、プロアントシアニジン60%及びレスベラトロール0.01%であり、コケモモ抽出物IIの組成は、アントシアニン5%、プロアントシアニジン10%及びレスベラトロール20%であり、コケモモ抽出物IIIの組成は、アントシアニン10%、プロアントシアニジン35%及びレスベラトロール10%である。
【0011】
上記のコケモモ抽出物の各主要組成成分の測定方法は次の通りとする。
(1)アントシアニンのHPLC測定方法
【0012】
【表1】

【0013】
(2)レスベラトロールのHPLC測定方法
【0014】
【表2】

【0015】
(3)プロアントシアニジンの測定方法としては、酒石酸法、Folin−C法のいずれでもよい。
【0016】
本発明に記載のコケモモ抽出物は、コケモモの果実から抽出する抽出物である。
【0017】
本発明は、本発明の上記コケモモ抽出物の一種類以上を美容に応用することにも関する。
【0018】
本発明のコケモモ抽出物は美容製品の開発にも応用できる。皮膚は、結合組織に属し、その中に含まれるコラーゲン、及びエラスチンは、皮膚の全体構造に対して重要な役割を果たしている。コラーゲンの適度な架橋は皮膚の柔軟性を維持するが、体内のラジカルが酸化することにより、架橋が増加して皮膚にしわ、及びニキビが出てくる。本発明のコケモモ抽出物は、コラーゲンの適度な架橋を促進し、ラジカルを有効的に除去し、肌の若さ、美白且つ艶やかさを維持できる。また、エラスチンは皮膚に弾力性を与えているから、エラスチンが欠乏すると、皮膚が弛み、人がふけて見えてしまう。エラスチンはラジカル又はエラスチナーゼで分解される。本発明のコケモモ抽出物は、ラジカルを除去し、エラスチナーゼの生成を阻害して、その活性を抑制し、皮膚の健康状況を改善する機能を持っている。紫外線による光老化モデルのねずみ皮膚のヒドロキシプロリンの含量、及びSOD活性の測定結果から、本発明のコケモモ抽出物を摂取したねずみの皮膚中のヒドロキシプロリン含量及びSOD活性はモデル動物より、遥かに高いことが分かった。コケモモ抽出物は、その良好な抗酸化作用により、皮膚コラーゲンを保護し、しわ防止かつ老化防止という美容効果を果たすことが証明された。
【0019】
また、本発明者は、本発明のコケモモ抽出物がその他の美容効果も有することを発見した。すなわち、下記の美容効果に限らないが、美白、シミ除去、しわ取り、保湿や皮膚の滑らかさの増加及び敏感肌の改善効果を有する。
【0020】
本発明によって開発されたコケモモ抽出物は理想的なメラニン生成の抑制剤として、次の性質を有する:(1)色素の過剰な沈着を有効に治療できる;(2)メラニン細胞や表皮、及び真皮細胞に対して影響を示さない;(3)アレルギー誘発性、発ガン性、催奇形性を有しない;(4)安定性が良好。
【0021】
本発明のコケモモ抽出物は、下記に限らないが、カプセル、錠剤、内服液などの薬剤に製造することができる。
【0022】
本発明のコケモモ抽出物は、ドリンク、酒、お菓子、キャンディー、ガムなどの食品に製造することができる。
【0023】
製剤の種類にもよるが、上記の特に言及した成分以外に、本発明の製剤の中には、通常の賦形剤又はキャリアーを含有してもよい。
【0024】
一つの実施形態において、美容製品における本発明のコケモモ抽出物の含有量は、0.0001重量%〜100重量%であり、0.01重量〜30重量%が好ましく、0.1重量%〜15重量%がより好ましい。
【0025】
一つの実施形態において、本発明の抽出物は、内服してもよい。摂取量は、毎日1mg/kg〜5mg/kgである。大人の摂取量は、通常60mg/日〜3000mg/日の範囲である。
【0026】
本発明は、活性成分としてコケモモ抽出物を含有する内服の美容組成物も提供する。本製造法で製造した組成物の美容製品は、錠剤、カプセル、ソフトカプセル、丸剤、粉剤又は顆粒剤等の固体製剤でもよく、内服液、乳剤、シロップ等の液体製剤でもよい。
【0027】
本発明の美容組成物は、キャンディー、ガム、スープ、乳製品及びドリンク等の食品に混入してもよい。これらの食品の具体的な例としては、ガム、キャンディー、チョコレート、ゼリー、クッキー、フライド食品、スープ調味料、ミルク、ヨーグルト、アイスクリーム、乳酸飲料、アルコール飲料、ビタミン飲料、ミネラル飲料、コーヒー、機能性飲料等が挙げられる。本発明のコケモモ抽出物を食品に添加する際には、添加量は0.0001重量%〜100重量%であり、0.01重量%〜30重量%が好ましく、0.1重量%〜15重量%がより好ましい。
【0028】
本発明は、本発明のコケモモ抽出物を活性成分として含有する美白、又はスキンケア組成物として提供できる。本発明の美白、又はスキンケア組成物には、美容上、及び皮膚ケア上によく見られる補助剤を更に含有することができ、例としては、例えば親水性又は親油性のゲル剤、親水性又は親油性の活性剤、防腐剤、抗酸化剤、溶媒、香料、日焼け止め剤、色素、香味吸収剤、及び着色剤が挙げられる。当業者は必要に応じて各補助剤の量を選択することができる。
【0029】
美白、又はスキンケア組成物が乳剤である場合、脂質相の比率は、通常、組成物の総重量の5〜80重量%であり、5〜50重量%が好ましく、例えば、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%等であるが、それらに限定されない。乳剤系の組成物に用いられる油、乳化剤及び共乳化剤は、本分野に通常使用の物質から選ばれる。組成物中の乳化剤及び乳化助剤の比率は、通常、組成物の総重量の0.3〜30重量%であって、0.5〜20重量%が好ましい。
【0030】
本発明のコケモモ抽出物と混合して用いられる油は、ミネラルオイル、植物由来の油(例えば、大豆油)、動物由来の油(例えば、ラノリン)、合成油(例えば、ペルヒドロスピナセン)を含む。また、脂肪アルコール、脂肪酸およびワックスも脂肪物質として使用してもよい。
【0031】
本発明のコケモモ抽出物と配合して用いられる乳化剤及び乳化助剤は、脂肪酸エステル(例えば、エチレングリコール)及びステアリン酸グリセリドのようなグリセリンの脂肪酸エステルを含む。
【0032】
本発明の一つの実施形態において、本発明のコケモモ抽出物は少なくとも一種類の活性剤と配合して使ってもよい。本発明のコケモモ抽出物と配合して用いられる活性剤は、下記に限らないが、エラグ酸、及びその誘導体、キノール、アルブチン、レゾルシノール、及びその誘導体、ビタミンC、及びその誘導体、パントテン酸スルホン酸エステルその誘導体、コウジ酸、胎盤抽出物、α−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)又はその受容体あるいは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を直接又は間接的に干渉できる分子、ポリヒドロキシ化合物(例えば、グリセリン、グリコール又はプロピレングリコール)、ビタミン、ケラチン可溶化剤あるいは剥皮剤(例えば、サリチル酸、及びその誘導体)、α−アルキド(例えば、乳酸又はりんご酸)、アスコルビン酸、及びその誘導体、レチノイン酸、レチンアルデヒド、レチノール、及びその誘導体、抗炎剤、皮膚軟化剤、及びその混合物、化学的又は物理的な日焼け止め剤(例えば、微粉化した酸化亜鉛、酸化チタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン及びメトキシケイヒ酸オクチル)、及びデオキシリボ核酸と核酸を含む。
【0033】
上記により、本発明は下記のものを提供する。
【0034】
(項目1)
5〜35重量%のアントシアニンを含有するコケモモ抽出物。
【0035】
(項目2)
20〜80重量%のプロアントシアニジンを含有するコケモモ抽出物。
【0036】
(項目3)
5〜100%のポリフェノール成分を含有し、このポリフェノール成分は、アントシアニン、プロアントシアニジン、フラボン、カテキン、エピカテキン及びその重合物を含む群から選ばれるものであるコケモモ抽出物。
【0037】
(項目4)
0.01〜50重量%のレスベラトロールを含有するコケモモ抽出物。
【0038】
(項目5)
アントシアニン、プロアントシアニジン、フラボン、カテキン、エピカテキン、及びその重合物を含む群から選ばれるポリフェノール成分を更に5〜100%の量で含有する項目4に記載のコケモモ抽出物。
【0039】
(項目6)
5〜35重量%のアントシアニンと、20〜80重量%のプロアントシアニジンと、0.01〜50重量%のレスベラトロールを含有するコケモモ抽出物。
【0040】
(項目7)
項目1〜6のいずれかに記載のコケモモ抽出物の、チロシナーゼ活性異常により引起こされた病気の治療、又は予防薬としての医薬品の製造への応用。
【0041】
(項目8)
チロシナーゼ活性の抑制に用いられる、項目1〜6のいずれかに記載のコケモモ抽出物を含有する医薬品組成物。
【0042】
(項目9)
コケモモ抽出物の含有量が医薬品組成物の0.0001重量%〜100重量%を占める項目8に記載の医薬品組成物。
【0043】
(項目10)
項目1〜6のいずれかに記載のコケモモ抽出物の、美容又はスキンケア組成物への応用。
【0044】
(項目11)
上記美容、又はスキンケア組成物を、メラニン生成の抑制、ならびに色素沈着、シミ取り及びニキビ取りとして応用することを含む項目10に記載の応用。
【0045】
(項目12)
上記美容又はスキンケア組成物をターンオーバーの促進、皮膚水分含量の向上、皮膚弾力性の増加、しわ防止、及びアンチェイジングのために応用することを含む項目10に記載の応用。
【0046】
(項目13)
前記美容又はスキンケア組成物を、皮膚の滑らかさ増加及び皮膚の敏感さ改善として応用することを含む項目10に記載の応用。
【0047】
(項目14)
項目1〜6のいずれかに記載のコケモモ抽出物を含む美容組成物又はスキンケア組成物。
【0048】
(項目15)
ブルーベリー抽出物、葡萄抽出物、石榴抽出物、棘梨抽出物、りんご抽出物及びキウイフルーツ抽出物を含む群から選ばれる果物抽出物と、コラーゲン、ヒアルロン酸又はそれらの組み合わせから選ばれる一種以上のものと、美容上に使用可能なキャリアー及び賦形剤とを更に含む項目14に記載の美容組成物又はスキンケア組成物。
【0049】
(項目16)
項目1〜6のいずれかに記載のコケモモ抽出物を含有する、美容効果のある食品。
【0050】
(項目17)
ブルーベリー抽出物、葡萄抽出物、石榴抽出物、棘梨抽出物、りんご抽出物及びキウイフルーツ抽出物を含む群から選ばれる果物抽出物と、コラーゲン、ヒアルロン酸又はそれらの組み合わせから選ばれる一種以上のものと、食品業界で使用可能なキャリアー及び賦形剤とを更に含む項目16に記載の美容効果のある食品。
【0051】
(項目18)
下記に限られないが、キャンディー、菓子、スープ、乳製品及びドリンクを含む項目16又は17に記載の食品。
【0052】
(項目19)
対処する必要がある肌に、項目14若しくは15に記載の美容又はスキンケア組成物を使用するか、又は項目17若しくは項目18に記載の食品を飲むことを含むスキンケア方法。
【0053】
以下は、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、これによって本発明が限定されることはない。
【実施例】
【0054】
[実施例1]コケモモ抽出物Iの製造
コケモモ1000gを3倍量の水に浸け、セルラーゼ0.1%を添加して攪拌した。40℃のウォーターバス中で2時間保温し、濾過して抽出液を得た。その抽出液を限外濾過膜(分子量2000)で濾過した。膜濾過した後の濃縮液をHP20型樹脂に通液し、60%エタノールで吸着物を脱着し、濃縮後、スプレードライヤーで乾燥してアントシアニン画分を得た。
【0055】
上記の抽出操作で得られた残渣を原料とし、75%エタノールで加熱抽出し、黄色いペーストを得た。そのペーストをシリカカラムに通し、レスベラトロール画分を集めた。
【0056】
上記のアントシアニン画分とレスベラトロール画分を混合し、コケモモ抽出物Iを得た。その組成は、アントシアニン15%、プロアントシアニジン60%、レスベラトロール0.01%である。
【0057】
[実施例2]コケモモ抽出物IIの製造
コケモモ果実1000gを原料とし、2%の塩酸エタノールを溶媒とし、40℃で抽出を行い、抽出液を直接に樹脂カラムへ通液した。樹脂は、XAD16樹脂を用いた。90%のエタノールで吸着物を脱着し、真空濃縮してエタノールを除去してから、スプレードライヤーで乾燥して、アントシアニン画分を得た。
【0058】
上記の抽出条件で得られた残渣を原料とし、無水エタノールで加熱抽出し、黄色いペーストを得た。そのペーストをシリカカラムに通液し、レスベラトロールを豊富に含有する画分を集めた。その後、95%エタノールで再結晶を行い、レスベラトロールを得た。
【0059】
前記アントシアニン画分とレスベラトロール画分を混合し、コケモモ抽出物IIを得た。組成は、アントシアニン5%、プロアントシアニジン10%、レスベラトロール20%である。
【0060】
[実施例3]コケモモ抽出物IIIの製造
コケモモ果実1000gを原料とし、60%エタノール水溶液を溶媒とし、40℃で抽出を行った。抽出液中のエタノールを回収した後、樹脂カラムに通した。樹脂は、CHPA20イオン交換樹脂を用いた。90%エタノールで吸着物を脱着し、真空濃縮してエタノールを除去してから、スプレードライヤーで乾燥して、アントシアニン画分を得た。
【0061】
上記の抽出条件で得られた残渣を原料とし、95%エタノールで加熱抽出を行い、黄色いペーストを得た。そのペーストをシリカカラムに通液し、レスベラトロール画分を集めた。
【0062】
上記のアントシアニン画分とレスベラトロール画分を混合し、コケモモ抽出物IIIを得た。組成は、アントシアニン10%、プロアントシアニジン35%、レスベラトロール10%である。
【0063】
[実施例4]細胞増殖に対するコケモモ抽出物とアルブチンの影響の比較
【0064】
B16メラニン細胞(中科院上海細胞研究所より購入)を10%ウシ胎仔血清及びペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質を含有するRPMI−1640培養液を用いて、37℃、5%COの条件下で培養し、細胞融合80%時、0.125%のトリプシン(Difco、アメリカ)で消化した。
【0065】
テトラゾリウム化合物(MTT)比色法によりメラニン細胞の増殖活性を測定した。B16メラニン細胞を1×10密度で24穴プレートに置き、二日目に液を交換し、異なる濃度の被験物、即ち、実施例3で製造されたコケモモ抽出物III(アントシアニン画分10%と、オリゴメリック・プロシアニジン(OPC)35%とレスベラトロール10%を含有する)とアルブチン(市販品を用いた)をそれぞれに投入した。被験物を投入しなかったブランクを対照とした。
【0066】
20時間培養後、0.15ml MTTを添加し、引き続き4時間培養した後、3000rpmで10分間遠心し、上澄みを捨て、各ウェルにDMSO(1%)1mlを注入し、十分に溶解するまで振動させ、その後、150μlを取り、96穴培養プレートに入れた。MQX200マイクロプレートの分光光度計(Bio−Tek、アメリカ)でOD値を測定した。励起波長は570nm、検出波長は630nmとした。
【0067】
また、次の式を参考にして、メラニン細胞増殖に対する被験物の抑制率を計算した。
メラニン細胞増殖抑制率=(1―処理群の吸光度/陰性対照群の吸光度)×100%
【0068】
細胞生存率に対するコケモモ抽出物、及びアルブチンの影響の結果は表1に示した。
【0069】
【表3】

【0070】
表1から分かるように、同じ濃度の場合、アルブチン投入群より、コケモモ投入群のほうがメラニン細胞の生存率が高いことを分かった。コケモモはアルブチンよりB16細胞に対する毒性が小さく、安全性もアルブチンより優れることが証明された。
【0071】
[実施例5]細胞増殖活性に対するコケモモ抽出物と葡萄種子抽出物、松樹皮抽出物の影響の比較
実験方法は実施例4と同様である。コケモモ抽出物は実施例3で製造したコケモモ抽出物IIIを用いた。松樹皮抽出物及び葡萄種子抽出物はすべて市販品を用い、ブランクを対照とした。結果は表2に示した。
【0072】
【表4】

【0073】
表2から分かるように、異なる濃度の松樹皮抽出物、葡萄種子抽出物、コケモモ抽出物は、B16細胞の増殖作用に対する影響が基本的に同一であることが分かった。細胞生存率は、濃度の増加に伴って増加し、明らかに用量依存性を示した。体外細胞作用の場合、松樹皮抽出物、葡萄種子抽出物、コケモモ抽出物は、すべて安全成分であることが証明された。
【0074】
[実施例6]コケモモ抽出物、葡萄種子抽出物、松樹皮抽出物およびアルブチンの、B16メラニン細胞のチロシナーゼ活性に対する抑制率の比較
B16メラニン細胞(中科院上海細胞研究所より購入)を10%ウシ胎仔血清及びペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質を含有するRPMI−1640培養液を用いて、37℃、5%COの条件下で培養し、細胞融合80%時、0.125%のトリプシン(Difco、アメリカ)で消化し、繁殖用又は試験用とした。
【0075】
チロシナーゼ活性は、ドーパをドーパキノンに酸化する速度に基づいて確定したものである。Lドーパを触媒基質とする。Marlinez−Esparza等の改良方法(Ando H,Itoh A,Mishima Yら,Correlation between the number of melanosomes,tyrosinase mRNA levels,and tyrosinase activity cultured murine melanoma cells in response to various melanogenesis regulatory agents. J Cell Physiol,1995,163 608−614)を用いて475nmのドーパキノンの吸光度を測定した。吸光度が高ければ、ドーパキノンの含量が高く、チロシナーゼ活性も強い。
【0076】
被験物のコケモモ抽出物は、実施例3で製造したコケモモ抽出物IIIを用いた。他の被験物は、すべて市販品を用いた。
【0077】
被験物を3日間培養した後、上澄みを捨て、pH7.0のPBSで3回洗浄し、(毎回、1000rpmで5分間遠心)その後各ウェルに1%Troton X−100溶液400μlを加え、細胞を溶解した。そして、100μlを取り、96穴プレートに入れ、37℃で温めてから、各ウェルに1.7%Lドーパ(sigma、アメリカ)100μlを添加し、475nm波長の吸光度を測定し、ブランクのウェルのところを0に調整し、37℃で1時間内、10分毎に各ウェルの吸光度A値を読み取った。
【0078】
下記の式により、各被験物のチロシナーゼ活性に対する抑制率を計算した:
チロシナーゼ活性抑制率=(1−処理群の吸光度/陰性対照群の吸光度)×100%
実験結果を表3に示した。
【0079】
【表5】

【0080】
上記の表から分かるように、濃度の増加に伴って4種類の被験物はすべて、チロシナーゼ活性に対する抑制率が向上しているが、コケモモ抽出物の向上率がより明らかであり、濃度が30mg/Lに達したとき、コケモモ抽出物は、他の被験物よりチロシナーゼ活性に対する抑制率が遥かに高いことが分かった。
【0081】
[実施例7]B16細胞メラニン生成に対するコケモモ抽出物と葡萄種子抽出物、松樹皮抽出物、アルブチンの影響の比較
B16メラニン細胞(中科院上海細胞所より購入)を10%ウシ胎仔血清及びペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質を含有するRPMI−1640培養液を用いて、37℃、5%COの条件下で培養し、細胞融合80%時、0.125%のトリプシン(Difco、アメリカ)で消化し、繁殖用又は試験用とした。
【0082】
強いアルカリ性溶液で細胞を溶解し、メラニンを溶解した後、吸光度を測定した。メラニン含有量の測定は、Hosoi等の改良方法を用いた(Victoria M, Virador, Nobuhiko Kobayashiら,A standardized protocol for assessing regulators of pigmentation. Analytical Biochemistry, 1999, 270 207−219)。
【0083】
B16メラニン細胞を1×10密度で6穴プレートで培養し、24時間後に液を交換し、異なる濃度の被験物を添加した。被験物のコケモモ抽出物は、実施例3で製造したコケモモ抽出物IIIを用い、他の被験物は市販品を用いた。
【0084】
72時間後、PBSで二回洗浄し、サンプルを空気乾燥してから、400μlの1NのNaOH(DMSO 1%含有)に溶解した。そして、80℃で1時間加熱した後、冷却し、酵素免疫測定装置で475nm波長の吸光度を測定した。
【0085】
下記の式により、各被験物のメラニン含有量に対する抑制率を計算した:
メラニン含有量に対する抑制率={(1−(被験物ウェルの吸光度値/被験物ウェルの細胞密度)/(対照ウェルの吸光度値/対照ウェルの細胞密度))×100%
異なる濃度で、メラニン生成に対する松樹皮抽出物、葡萄種子抽出物、コケモモ抽出物の影響を分析し、結果は表4に示した。
【0086】
【表6】

【0087】
表4から分かるように、同じ濃度内で、松樹皮抽出物はメラニン生成に対して、顕著な抑制効果を有しておらず、他の三種類の物質の抑制率は、濃度の増加に伴って徐々に増加した。濃度が30mg/Lに達成したとき、コケモモ抽出物及び葡萄種子抽出物のメラニン抑制率は、それぞれ30.04%及び39.26%となり、いずれもアルブチンより遥かに高いことが分かった。
【0088】
[実施例8]異なるコケモモ抽出物についてのB16メラニン細胞のチロシナーゼ活性に対する抑制率の比較
実験方法は、実施例6と同様に行った。被験物のコケモモ抽出物は、実施例1、2、3で得たコケモモ抽出物I、II、IIIを用いた。
【0089】
実験の結果は、表5に示した。
【0090】
【表7】

【0091】
表5から分かるように、3種類の抽出物についてのチロシナーゼ活性に対する抑制率は、濃度の増加に伴って増加し用量依存性を顕著に現したことが分かった。濃度は10mg/L以下の場合、効果があまり出ていなかったが、濃度が20mg/L以上の場合、3種類の抽出物についてのチロシナーゼ活性に対する抑制率は、すべて著しく向上し、その中でコケモモ抽出物IIIの効果が最も顕著である。
【0092】
[実施例9]異なるコケモモ抽出物についてのB16メラニン細胞のメラニン生成に対する影響の比較
実験方法は、実施例7と同様に行なった。被験物のコケモモ抽出物は、実施例1、2、3で得たコケモモ抽出物I、II、IIIを用いた。実験の結果は、表6に示した。
【0093】
【表8】

【0094】
表6から分かるように、用量の増加に伴って、3種類の抽出物についてはB16細胞のメラニン生成に対する抑制率がすべて向上したが、コケモモ抽出物IIIの効果が最も顕著であることが分かった。
【0095】
[実施例10]皮膚光老化モデルネズミ皮膚SOD活性及びHYP(ヒドロキシプロリン)含量に対するコケモモ抽出物の影響
体重15〜20gの昆明種のマウス50匹を任意に5グループに分け、それぞれは正常対照群、モデル対照群、コケモモ高、中、低用量群にした。正常対照群以外の各グループは、マウスの背中の毛を剃り、毎日UVA管で照射し、光老化モデルをとした。高用量、中用量、低用量群のマウスに、それぞれ、160、80、40mg/kg用量で、コケモモ抽出物(アントシアニン12.9%、プロアントシアニジン60.3%及びレスベラトロール10.1%を含有する)を摂取させ、同時に対照群には同量の蒸留水を摂取させた。8週間後、マウスを殺して、直ちに背中の毛を剃った部分の全層皮膚を取り、生化学法で一部のSOD活性及びHYP含有量を測定した。具体的な結果は、表7に示した。
【0096】
【表9】

【0097】
表7から分かるように、コケモモ抽出物は光照射による皮膚の老化過程を抑制し、皮膚中のSOD活性及びHYP含有量を向上し皮膚活力、及び弾力性を回復するので美容効果を有するサブリメント、及び化粧品に応用することができる。
【0098】
[実施例11]コケモモ抽出物のカプセルの内服による皮膚への影響
コケモモ抽出物I、II、IIIを、それぞれカプセルに入れた。各カプセルは、抽出物150mgを含有している。22歳〜55歳の女性ボランティア39名を募集し、3グループに分け、それぞれコケモモ抽出物I、II、IIIの3種類のカプセルを毎日一粒摂取させた。摂取前、及び摂取8週間後に、顔面スキャナでRGB光線での顔の表膚のしわ度、シミ、皮膚の敏感さ、滑らかさ、肌色の深さを測定し、UVで水分含有量を測定した(システム単位で、数値が小さければ小さい程、しわ度が低いことを表している)。摂取前後のボランティアの顔の表膚のしわの数値、シミ面積、敏感さの変化、滑らかさの変化、肌色の変化、及び水分含有量の変化を比較して、コケモモ抽出物カプセルのしわ取り、シミ除去、皮膚の敏感さ改善、肌の滑らかさ改善、美白及び保湿効果を解析した。ヒトでの臨床実験の結果は、表8に示した。
【0099】
【表10】

【0100】
実験の結果から分かるように、ボランティアは抽出物I、II、IIIの三種類のカプセルを摂取した後、みんな顔のしわ度、及びシミが減少し、抽出物I、II、IIIが皮膚の敏感さ、滑らかさを改善し、美白、保湿効果を有することが分かった。抽出物Iは、皮膚の敏感さ、滑らかさ改善、及びシミ除去、美白の面において、摂取する前と比べると、統計学的に有意な改善を有し(P<0.05)、総有効率が全て87%に達した。抽出物IIIは、顔のしわ度、及びシミを明らかに減少させ、皮膚の敏感さおよび滑らかさを改善した。摂取する前と比べると、統計学的に有意な改善を有し(P<0.05)、総有効率が全て82%以上に達した。美白、及び保湿面において特に効果が著しく、摂取する前と比べると、統計学的に有意な改善を有し(P<0.01)、総有効率は100%に達した。
【0101】
[実施例12]コケモモ抽出物で作製した美容効果を有するキャンディー
一般的な方法により、表9に示した比率でキャンディーを作製した。
【0102】
【表11】

【0103】
[実施例13]コケモモ抽出物を含有する美容保健食品
通常の方法を用いて、表10に示した重量比でコケモモ抽出物含有の美容保健食品を作製した。
【0104】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜35重量%のアントシアニンを含有するコケモモ抽出物。
【請求項2】
20〜80重量%のプロアントシアニジンを含有するコケモモ抽出物。
【請求項3】
5〜100%のポリフェノール成分を含有し、前記ポリフェノール成分は、アントシアニン、プロアントシアニジン、フラボン、カテキン、エピカテキン、及びその重合物からなる群から選ばれるものであるコケモモ抽出物。
【請求項4】
0.01〜50重量%のレスベラトロールを含有するコケモモ抽出物。
【請求項5】
アントシアニン、プロアントシアニジン、フラボン、カテキン、エピカテキン、及びその重合物を含む群から選ばれるポリフェノール成分を更に5〜100%の量で含有する請求項4に記載のコケモモ抽出物。
【請求項6】
5〜35重量%のアントシアニンと、20〜80重量%のプロアントシアニジンと、0.01〜50重量%のレスベラトロールとを含有するコケモモ抽出物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のコケモモ抽出物の、チロシナーゼ活性異常により引起された病気の治療又は予防のための医薬品の製造への応用。
【請求項8】
チロシナーゼ活性の抑制に用いられる、請求項1〜6のいずれかに記載のコケモモ抽出物を含有する医薬品組成物。
【請求項9】
前記コケモモ抽出物の含有量が前記医薬品組成物の0.0001重量%〜100重量%を占める請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のコケモモ抽出物の、美容又はスキンケア組成物への応用。
【請求項11】
前記美容又はスキンケア組成物を、メラニン生成の抑制、ならびに色素沈着やシミ取り、及びニキビ取りとして応用することを含む請求項10記載の応用。
【請求項12】
前記美容又はスキンケア組成物を、ターンオーバーの促進、皮膚水分含量の向上、皮膚弾力性の増加やしわ防止、及びアンチエイジングンのために応用することを含む請求項10に記載の応用。
【請求項13】
前記美容又はスキンケア組成物を、皮膚の滑らかさ増加、及び皮膚の敏感さ改善として応用することを含む請求項10に記載の応用。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれかに記載のコケモモ抽出物を含む美容組成物又はスキンケア組成物。
【請求項15】
ブルーベリー抽出物、葡萄抽出物、石榴抽出物、棘梨抽出物、りんご抽出物、及びキウイフルーツ抽出物を含む群から選ばれる果物抽出物と、コラーゲン、ヒアルロン酸又はそれらの組み合わせから選ばれる一種以上のものと、美容上に使用可能なキャリアー及び賦形剤とを更に含む請求項14に記載の美容組成物、又はスキンケア組成物。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれかに記載のコケモモ抽出物を含有する、美容効果がある食品。
【請求項17】
ブルーベリー抽出物、葡萄抽出物、石榴抽出物、棘梨抽出物、りんご抽出物及びキウイフルーツ抽出物を含む群から選ばれる果物抽出物と、コラーゲン、ヒアルロン酸又はそれらの組み合わせから選ばれる一種以上のものと、食品業界で使用可能なキャリアー及び賦形剤とを更に含む請求項16に記載の美容効果がある食品。
【請求項18】
下記に限られないが、キャンディー、菓子、スープ、乳製品及びドリンクを含む請求項16又は17に記載の食品。
【請求項19】
対処する必要がある肌に、請求項14若しくは15に記載の美容又はスキンケア組成物を使用するか、又は請求項17若しくは18に記載の食品を飲むことを含むスキンケア方法。

【公表番号】特表2010−531816(P2010−531816A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513616(P2010−513616)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/CN2008/000740
【国際公開番号】WO2009/003352
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510002589)
【Fターム(参考)】