説明

コジェネレーションシステム及び運転方法

【課題】 一次エネルギーの消費量又は光熱費等を抑制した運転が可能なコジェネレーションシステムを提供する。
【解決手段】 コジェネレーションシステム1は、給電熱装置100が生成する電力及び熱と、商用電力系統50から入力される電力と、を供給する。このコジェネレーションシステム1では、需要予測演算部85が電力需要量及び熱需要量を予測する。そして、予測消費エネルギー演算部86が、給電熱装置100の運転方法毎に、電力需要量及び熱需要量に応じて電力及び熱を供給するために給電熱装置100で消費される燃料に関する第1の予測消費量及び系統電力を生成するために必要とされる燃料に関する第2の予測消費量を演算する。そして、最適運転選択部87が第1の予測消費量及び第2の予測消費量に基づいて運転方法を選択し、制御部13が選択された運転方法に従って給電熱装置100の運転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成した電力及び熱を供給するコジェネレーションシステム及び当該コジェネレーションシステムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコジェネレーションシステムとして、発電する際に発熱する燃料電池を備えたものがある。例えば、下記特許文献1には、この燃料電池を電力負荷に追従して発電するように運転制御するコジェネレーションシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−25986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コジェネレーションシステムには、一次エネルギーの消費量又は光熱費等を抑制した効率的な運転が求められている。しかしながら、上記特許文献1に記載のコジェネレーションシステムでは、効率とは関わらずに電力負荷に応じて発電するので、効率を向上させることは困難である。
【0005】
一般的に燃料電池は、発電する際に発熱するので、発電量と発熱量とをそれぞれ制御することはできない。更に、コジェネレーションシステムは、利用者によって異なる需要パターンに応じて電力と熱とを供給するので、効率的な運転方法を特定するのが困難である。
【0006】
そこで本発明は、一次エネルギーの消費量又は光熱費等を抑制した効率的な運転が可能なコジェネレーションシステム及び運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコジェネレーションシステムは、給電熱装置が生成する電力及び熱と、給電熱装置とは別の供給源から入力される電力と、を供給するコジェネレーションシステムにおいて、電力需要量及び熱需要量を予測する予測手段と、給電熱装置の起動タイミングと給電熱装置における起動タイミングからの運転時間と複数の値の中から設定される給電熱装置の運転中における最大出力値との組み合わせによる給電熱装置の運転方法毎に、予測手段によって予測された電力需要量及び熱需要量に応じて電力及び熱を供給するために給電熱装置で消費される燃料に関する第1の予測消費量及び別の供給源から入力される電力を生成するために必要とされる燃料に関する第2の予測消費量を演算する演算手段と、演算手段によって演算された第1の予測消費量及び第2の予測消費量に基づいて運転方法を選択する選択手段と、選択手段によって選択された運転方法に従って給電熱装置の運転を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のコジェネレーションシステムでは、予測手段が電力需要量及び熱需要量を予測し、演算手段が給電熱装置で消費される燃料に関する第1の予測消費量と別の供給源から入力される電力を生成するために必要とされる燃料に関する第2の予測消費量とを給電熱装置の運転方法毎に演算する。これにより、コジェネレーションシステムによって電力及び熱を供給するために消費される燃料の予測消費量が給電熱装置の運転方法毎に算出される。そして、選択手段が第1の予測消費量及び第2の予測消費量に基づいて運転方法を選択するので、燃料の消費量に応じた効率的な運転方法を選択することができる。これにより、制御手段によって一次エネルギーの消費量又は光熱費等を抑制した運転を行うことができる。
【0009】
好ましくは、演算手段は、第1の予測消費量として給電熱装置で消費される燃料の一次エネルギー量を演算し、第2の予測消費量として別の供給源から入力される電力を生成するために必要とされる燃料の一次エネルギー量を演算することにより、コジェネレーションシステムが供給する電力及び熱を生成するために消費する総一次エネルギー量を演算し、選択手段は、演算手段によって演算された総一次エネルギー量に基づいて運転方法を選択する。
【0010】
これにより、電力及び熱を供給するために消費される一次エネルギー量を抑制した効率的な運転を行うことができる。例えば、電力及び熱を供給するために消費される一次エネルギー量が最少となる運転方法を選択して、省エネルギー化を図ることができる。
【0011】
好ましくは、予測手段は、所定時間毎に予測を行うことにより電力需要量及び熱需要量を更新し、演算手段は、予測手段によって更新された電力需要量及び熱需要量に基づいて演算することにより第1の予測消費量及び第2の予測消費量を更新し、選択手段は、演算手段によって更新された演算結果に基づいて運転方法を選択することにより選択結果を更新し、制御手段は、選択手段によって更新された運転方法に従って給電熱装置の運転を制御する。
【0012】
これにより、予測した電力需要量又は熱需要量に誤差が有る場合であっても、所定時間毎に運転方法を更新するので、誤差を抑制して最適な運転方法を選択することができる。
【0013】
好ましくは、第1の予測消費量を演算するために必要であると共に外気温によって変動するパラメータを外気温別に格納する格納手段を備え、演算手段は、外気温と格納手段に格納されたパラメータとに基づいて第1の予測消費量を演算する。
【0014】
この場合、外気温によって変動する第1の予測消費量を精度よく予測することができる。従って、寒冷地等の地域に設置した場合であっても、最適な運転方法を選択することができる。
【0015】
また、好ましくは、格納手段は、パラメータとして、外気温別に給電熱装置の待機時の消費エネルギーを示す情報を格納する。
【0016】
また、好ましくは、格納手段は、演算手段に用いられるパラメータとして、給電熱装置に係る、出力別の投入エネルギー、出力別の発電効率、出力別の熱回収効率、起動時の消費エネルギー、出力別の燃料電池熱回収水出口温度、定格出力、最低出力、停止動作時の消費エネルギー、負荷追従速度、待機時の消費エネルギー、貯湯槽の容量、貯湯槽の放熱率、各配管の放熱率、燃料電池の冷却水の許容温度、バックアップボイラの効率、系統電力の発電効率を示す情報を格納する。
【0017】
また、好ましくは、格納手段は、外気温別に出力別の熱回収効率、出力別の燃料電池熱回収水出口温度、貯湯槽の容量、貯湯槽の放熱率、及び各配管の放熱率を示す情報を格納する。
【0018】
また、好ましくは、格納手段は、外気温別及び運転を停止してからの経過時間別に、待機時の消費エネルギー、起動時の消費エネルギーを示す情報を格納する。
【0019】
好ましくは、給電熱装置の性能に関する値を測定する測定手段と、測定手段によって測定された値に基づいて、給電熱装置の性能に関するパラメータを更新する更新手段と、を備え、演算手段は、更新手段によって更新されたパラメータを用いて第1の予測消費量を演算する。
【0020】
この場合、給電熱装置の経年劣化が起こった場合であっても、また、給電熱装置の性能について差違があった場合であっても、給電熱装置の性能に関する値を測定し、その測定された値に基づいて、給電熱装置の性能に関するパラメータを更新するので、演算手段は、実際の給電熱装置の性能に応じた第1の予測消費量を演算することができる。よって、誤差を抑制してより最適な運転方法を選択することができる。
【0021】
本発明の運転方法は、給電熱装置が生成する電力及び熱と、給電熱装置とは別の供給源から入力される電力と、を供給するコジェネレーションシステムの運転方法において、電力需要量及び熱需要量を予測する予測ステップと、給電熱装置の起動タイミングと給電熱装置における起動タイミングからの運転時間と複数の値の中から設定される給電熱装置の運転中における最大出力値との組み合わせによる給電熱装置の運転方法毎に、予測ステップにおいて予測された電力需要量及び熱需要量に応じて電力及び熱を供給するために給電熱装置で消費される燃料に関する第1の予測消費量及び別の供給源から入力される電力を生成するために必要とされる燃料に関する第2の予測消費量を演算する演算ステップと、演算ステップにおいて演算された第1の予測消費量及び第2の予測消費量に基づいて運転方法を選択する選択ステップと、選択ステップにおいて選択された運転方法に従って給電熱装置の運転を制御する制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のコジェネレーションシステム及び運転方法によれば、一次エネルギーの消費量又は光熱費等を抑制したより効率的な運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るコジェネレーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係るコジェネレーションシステムが備える運転制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係るコジェネレーションシステムが備える燃料電池パラメータ格納部に格納されたデータを示す図である。
【図4】本実施形態に係るコジェネレーションシステムにおける総一次エネルギー量の演算手順を示すフロー図である。
【図5】本実施形態に係るコジェネレーションシステムにおける運転方法の選択手順を示すフロー図である。
【図6】本実施形態に係るコジェネレーションシステムにおける運転時間及び起動時刻別の一次エネルギーの削減率を示す図である。
【図7】本実施形態に係るコジェネレーションシステムにおける光熱費の演算手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
図1は、本実施形態に係るコジェネレーションシステムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係るコジェネレーションシステム1は、例えば家庭に設置されて電力及び熱を生成し、その家庭の電力需要及び熱需要に応じて生成した電力及び熱を供給するシステムである。
【0026】
このコジェネレーションシステム1は、燃料電池ユニット10と、貯湯槽ユニット20と、給湯器30とを備えている。燃料電池ユニット10で発電した電力を電気機器EIに供給することにより、コジェネレーションシステム1は電力を供給する。そして、燃料電池ユニット10の発電に伴って発生した熱で加熱した水を貯湯槽ユニット20に貯めて、給湯器30を用いて熱機器HIに供給することにより、コジェネレーションシステム1は熱を供給する。
【0027】
最初に燃料電池ユニット10について説明する。この燃料電池ユニット10は、燃料電池装置11と、熱交換器12と、制御部13とを有する。燃料電池装置11は、燃料系統70と第1燃料管71を介して接続されている。燃料電池装置11は、この燃料系統70から供給される第1の燃料(例えば、灯油)を用いて発電する。燃料電池装置11は、例えば、改質装置と、燃料電池と、バーナーとを含んで構成される。
【0028】
まず、燃料電池装置11では、改質装置が、供給された第1の燃料を改質して水素を生成する。バーナーは、改質装置の改質反応熱を供給するためのものである。バーナーの燃料は、第1の燃料を用いる。そして、燃料電池が、改質装置によって生成された水素を入力して化学反応により発電を行う。燃料電池から排出されるオフガスには未反応の水素が含まれ、これをバーナーの燃料として用いることができる。燃料電池により生成された電力は、電力線15を介して熱機器HIに供給される。
【0029】
燃料電池装置11と電気機器EIとを繋ぐ電力線15は、商用電力系統50から供給される電力を送電する電力線51と接続されている。これにより、コジェネレーションシステム1は、電力線15を介して、燃料電池装置11よって生成された電力だけでなく、商用電力系統50から入力される電力も電気機器EIに供給する。
【0030】
電力線51上には電流計46が設置されており、この電流計46によって商用電力系統50から電気機器EIに供給される系統電力を電流値として計測する。また、燃料電池装置11には、燃料電池装置11が発電した電力を計測可能な電流計(不図示)が備わっている。よって、商用電力系統50から供給された系統電力量と、燃料電池装置11が発電した電力量とを、コジェネレーションシステム1において把握することができる。
【0031】
燃料電池装置11は、発電に伴って発熱する。熱交換器12は、燃料電池装置11で発生する熱を回収し、熱交換器12と貯湯槽ユニット20との間で水を循環させる熱回収用配管2A、2B内の水に熱を伝達する。熱交換器12は、貯湯槽21から流出した熱回収用配管2B内の水に熱を伝達し、貯湯槽21に流入する熱回収用配管2A内に熱伝達された水を流す。
【0032】
制御部13は、燃料電池装置11の運転を制御するための手段であり、後述する運転制御装置80の信号に基づいて燃料電池装置11の運転を制御する。制御部13は、運転制御装置80から出力される信号であって、燃料電池装置11の起動タイミング、運転時間、及び最大出力を示す信号に基づいて、運転の制御を行う。
【0033】
この燃料電池ユニット10は、更に、燃料電池ユニット10の性能に関する値を測定する性能計測器14を備える。性能計測器14は、出力別の発電効率、出力別の排熱回収効率、起動時のエネルギー、出力別の燃料電池排熱回収水出口温度、定格出力、最低出力、停止動作時消費エネルギー、負荷追従速度、及び待機時消費エネルギー等を算出するのに必要な値を計測する。例えば、性能計測器14は、燃料系統70から燃料電池ユニット10に供給される第1の燃料の量を計測する流量計、発電量を計測する電流計、熱回収用配管2Aと熱交換器12との接続部分(燃料電池排熱回収水出口)の温度を計測する温度計等から構成される。
【0034】
引き続いて、貯湯槽ユニット20及び給湯器30について説明する。貯湯槽ユニット20は、貯湯槽21と三方弁25とを有し、これらは第1出湯用配管22、配管23、上水用配管24、及び第2出湯用配管26を介して給湯器30に接続されている。
【0035】
貯湯槽21は、熱交換器12において熱伝達された水を貯えるタンクである。この貯湯槽21は、上部において熱回収用配管2Aと接続しており、貯湯槽21内には、熱交換器12で熱伝達された水が熱回収用配管2Aを介して流入可能な構成となっている。貯湯槽21は、下部において熱回収用配管2Bと接続しており、貯湯槽21の下部に貯えられた水が熱交換器12に流入可能な構成となっている。
【0036】
また、貯湯槽ユニット20は、貯湯槽21に貯えられた水の温度を計測可能な温度計(不図示)が備わっている。この温度計は、貯湯槽ユニット20の筐体の内側に、鉛直方向に沿って複数設けられる。温度計としては、熱電対やサーミスタ等を用いることができる。
【0037】
貯湯槽21は、上部においてさらに第1出湯用配管22と接続しており、貯湯槽21の上部に貯えられた水を出湯可能な構成となっている。貯湯槽21は、下部において配管23と接続しており、貯湯槽21の下部から上水を給水可能な構成となっている。配管23には、上水用配管24から上水が流入する。配管23上には流量計43が接続されており、貯湯槽21に供給される上水の流量を計測する。
【0038】
三方弁25は、第1出湯用配管22及び上水用配管24の双方から流入した水を第2出湯用配管26に供給することが可能な構成になっている。上水用配管24は、商用の給水系統60から上水を貯湯槽21に供給する水道管61と接続している。第1出湯用配管22によって運ばれた水及び上水用配管24によって運ばれた水の双方を混合した水又は一方の水は、第2出湯用配管26を介して給湯器30へ供給される。
【0039】
給湯器30は、第2出湯用配管26から流入した水を、出湯用配管3を介して熱機器HIに供給する。出湯用配管3上には流量計44が接続されており、熱機器HIに流入する水の流量を計測する。また、給湯器30は、バックアップボイラ31を備え、バックアップボイラ31により必要に応じて第2出湯用配管26から流入した水を加熱する。バックアップボイラ31は、第1燃料管71と接続した第2燃料管72を介して燃料系統70に接続され、第1の燃料を用いて燃焼する。給湯器30は、給湯する水の温度を計測可能な温度計(不図示)が備わっている。この温度計として、熱電対やサーミスタ等が用いられているが、これに限定されない。
【0040】
上記のように構成されるコジェネレーションシステム1は、燃料電池ユニット10で発電した電力を電気機器EIに供給すると共に、発電に伴って発生した熱で加熱した水を貯湯槽21に貯めて熱機器HIに供給する。熱機器HIに供給される水は、燃料電池ユニット10による熱だけでは必要な温度に達しない場合はバックアップボイラ31により加熱されて供給される。すなわち、燃料電池ユニット10、貯湯槽ユニット20、及び給湯器30によって構成される給電熱装置100は、第1の燃料を用いて電力と熱とを生成し、供給する。そして、コジェネレーションシステム1は、補完的に、商用電力系統50から商用電量を入力して供給する。このようなコジェネレーションシステム1の供給電力量、給湯量、第1の燃料の消費量等は、各温度計、流量計、電力計によって把握することができる。
【0041】
本実施形態に係るコジェネレーションシステム1は、更に、外気温センサ90、性能計測器14、及び運転制御装置80を備えて構成される。
【0042】
外気温センサ90は、外気温情報を取得するセンサである。コジェネレーションシステム1は、家屋の外に設置される場合が多く、外気温センサ90は、コジェネレーションシステム1が設置された環境の温度を測定する。この外気温センサ90は、取得した外気温情報を運転制御装置80へ出力する。外気温センサ90には熱電対やサーミスタ等を用いることができる。
【0043】
運転制御装置80は、例えば、電子制御を行うデバイスであり、CPU(CentralProcessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。また、燃料電池ユニット10や貯湯槽ユニット20にCPU、ROM、RAM等が備わる場合は、そのハードウェア資源を利用して動作するものであっても良い。
【0044】
運転制御装置80の入出力インターフェイスには、燃料電池ユニット10の性能に関する値を計測する性能計測器14、貯湯槽ユニット20及びそれに備わる温度計、給湯器30及びそれに備わる温度計、外気温センサ90、気象予報センタ91、流量計43、44、電流計46に、直接あるいはネットワークを介して論理的に接続されており、信号の送受信が可能となっている。
【0045】
気象予報センタ91は、現在の外気温情報、予想外気温情報、現在から過去6時間前の平均外気温情報を提供する情報源である。そして、運転制御装置80は、外気温センサ90又は気象予報センタ91から外気温を示す情報を入力し、外気温情報に基づいて燃料電池ユニット10及び貯湯槽ユニット20の運転を制御する。
【0046】
この運転制御装置80は、図2に示すように、電熱需要履歴格納部81、現状データ格納部82、燃料電池パラメータ格納部(格納手段)83、及びパラメータ更新部(更新手段)84を備え、各格納部に格納されたデータを用いて情報処理を行うための需要予測演算部(予測手段)85、予測消費エネルギー演算部(演算手段)86、及び最適運転選択部(選択手段)87を備える。
【0047】
電熱需要履歴格納部81は、運転制御装置80に入力された各計測器からの情報を基に、コジェネレーションシステム1の電熱需要量を算出し、外気温情報及び計測時刻と対応させて格納する。格納される電熱需要量は、コジェネレーションシステム1の利用者が消費した電力量及び熱量である。
【0048】
電力量は、電気機器EIに供給された電力量である。また、電力量には、給電熱装置100自体が消費する待機電力等が含まれる。待機電力には、寒冷地に設置されたコジェネレーションシステム1において給電熱装置100が備える凍結防止用のヒータへ供給する電力が含まれる。
【0049】
この電力量は、商用電力系統50から供給された電力量と燃料電池装置11から供給された電力量との合計である。商用電力系統50から供給された電力量は、電流計46で計測された電流値から計算され、燃料電池装置11から供給された電力量は、燃料電池ユニット10に備わる性能計測器14で計測された電流値から計算される。
【0050】
熱量は、熱機器HIに供給された熱量である。この熱量は、燃料電池装置11から供給された熱量と、バックアップボイラ31から供給された熱量との合計である。熱量は、給湯器30から給湯された水量及び温度によって計算される。供給された水量は流量計44で計測され、その温度は給湯器30に備わる図示しない温度計で測定される。このようにして計算された過去の電熱需要量が、電熱需要履歴格納部81によって、時間帯別及び外気温別に格納される。
【0051】
現状データ格納部82は、現在のコジェネレーションシステム1の状態に関するデータを入力し、格納する。具体的には、現状データ格納部82は、貯湯槽21内部の鉛直方向に沿って配置された複数の温度計から出力される温度情報を入力する。これにより、現状データ格納部82は、貯湯槽21内に蓄えられた水の温度分布状態を示す情報を格納することとなる。
【0052】
また、現状データ格納部82は、上水の温度を測定する温度計(図示せず)から入力される上水の温度情報を格納する。また、現状データ格納部82は、外気温センサ90から入力される外気温情報を格納する。また、現状データ格納部82は、燃料電池装置11が動作中か否かを示す動作情報を入力し、現在の電力需要量及び給湯需要量(熱需要量)を入力し、それぞれ格納する。
【0053】
燃料電池パラメータ格納部83は、燃料電池ユニット10の発電性能及び発熱性能に関する性能パラメータを格納する。性能パラメータには、出力別の投入エネルギー、出力別の発電効率、出力別の熱回収効率、起動時の消費エネルギー、出力別の燃料電池熱回収水出口温度、定格出力、最低出力、停止動作時の消費エネルギー、負荷追従速度、待機時の消費エネルギー、貯湯槽の容量、貯湯槽の放熱率、各配管の放熱率、燃料電池の冷却水の許容温度、バックアップボイラの効率、系統電力の発電効率等が含まれる。
【0054】
燃料電池パラメータ格納部83は、出力別の熱回収効率、出力別の燃料電池熱回収水出口温度、貯湯槽の容量、貯湯槽の放熱率、及び各配管の放熱率について、外気温別でデータを格納する。更に、燃料電池パラメータ格納部83は、待機時の消費エネルギー及び起動時の消費エネルギーについて、凍結防止用のヒータを運転する場合のエネルギーも考慮して、外気温別及び運転を停止してからの経過時間別でのデータを格納することが好ましい。
【0055】
例えば、燃料電池パラメータ格納部83では、図3に示すように、待機電力(待機時の消費エネルギー)を外気温度別に格納している。図3に示す表は、運転を停止してからの経過時間が、8時間程度の場合に設定されたパラメータを示す。
【0056】
この燃料電池パラメータ格納部83が格納する性能パラメータは、予め初期値が設定され、コジェネレーションシステム1において実際に運転がなされるとパラメータ更新部84によって更新される。更新される性能パラメータは、例えば、出力別の発電効率、出力別お排熱回収効率、起動時のエネルギー、出力別の燃料電池排熱回収水出口温度、定格出力、最低出力、停止動作時消費エネルギー、負荷追従速度、及び待機時消費エネルギー等である。
【0057】
パラメータ更新部84は、性能計測器14から入力したデータに基づいて、現状の燃料電池ユニット10の性能パラメータを算出し、燃料電池パラメータ格納部83に格納された性能パラメータを更新する。例えば、パラメータ更新部84は、1000時間程度運転する毎に性能パラメータを更新する。
【0058】
需要予測演算部85は、現在以降のコジェネレーションシステム1の電熱需要量を予測する。需要予測演算部85は、現在または予想された未来の外気温情報と、電熱需要履歴格納部81に格納された過去の電熱需要量とに基づいて現在から24時間後までの予測電力需要量と予測電熱需要量とを予測する。この予測は、既存の技術を用いて、例えば、1時間毎に行われる。また、需要予測演算部85は、予測した未来の電熱需要量を予測消費エネルギー演算部86へ出力する。
【0059】
予測消費エネルギー演算部86は、需要予測演算部85によって予測された現在から24時間後までの電熱需要量に応じて電力及び熱を供給する場合に必要とされる総一次エネルギー量を演算する。この予測消費エネルギー演算部86は、現状データ格納部82及び燃料電池パラメータ格納部83に格納されたパラメータを用いて演算を行う。演算する総一次エネルギー量は、給電熱装置100で消費される一次エネルギー量(第1の予測消費量)と、商用電力系統50から入力される電力を発電するために必要とされる一次エネルギー量(第2の予測消費量)と、の和を示す一次エネルギー量である。
【0060】
給電熱装置100で消費される一次エネルギー量として、燃料電池ユニット10に供給された第1の燃料の量を一次エネルギー量に換算した値(消費一次エネルギーFCE)と、給湯器30に供給された第1の燃料の量を一次エネルギー量に換算した値(消費一次エネルギーBUE)とを用いる。また、商用電力系統50についての一次エネルギー量は、発電所においてコジェネレーションシステム1に入力した商用電力量を供給するにあたって、必要となった第2の燃料の量を一次エネルギー量に換算した値(消費一次エネルギーKTE)を用いる。この消費一次エネルギーKTEは、電流計46によって計測される商用電力系統50から供給される系統電力量から演算することができる。
【0061】
予測消費エネルギー演算部86は、消費一次エネルギーFCE、消費一次エネルギーBUE、及び消費一次エネルギーKTEを足し合わせる。これにより、予測消費エネルギー演算部86は、給電熱装置100で消費される第1の燃料の一次エネルギーを演算すると共に、商用電力系統50から入力される系統電力を生成するために必要とされる第2の燃料の一次エネルギー演算して、総一次エネルギー量を演算する。
【0062】
予測消費エネルギー演算部86は、燃料電池装置11の運転方法毎に総一次エネルギー量をそれぞれ演算する。燃料電池装置11の運転方法には、燃料電池装置11の起動タイミングと、起動タイミングからの運転時間と、運転中の最大出力値と、の組み合わせで決まる複数の運転パターンがある。予測消費エネルギー演算部86は、需要予測演算部85から電熱需要量が出力される1時間毎に、複数の運転方法毎の総一次エネルギー量をそれぞれ演算する。そして、予測消費エネルギー演算部86は、運転方法を示す情報と総一次エネルギー量とを関連付けた演算結果を最適運転選択部87へ出力する。
【0063】
最適運転選択部87は、入力した演算結果に基づいて、総一次エネルギー量が最も小さくなる運転方法を選択する。そして、その運転方法を示す情報として、燃料電池装置11の起動タイミングと、運転時間と、運転中の最大出力値とを示す情報を、燃料電池ユニット10の制御部13へ出力する。起動タイミングを示す情報としては、現在から起動までの時間を示す情報でもよいし、起動時刻を示す情報を用いてもよい。最適運転選択部87は、演算結果が入力される1時間毎に、最適運転方法を選択して制御部13へ出力する。
【0064】
これにより、制御部13は、総一次エネルギー量が最も小さくなる運転方法となるように、燃料電池装置11の起動タイミング、運転時間、最大出力値を設定して、燃料電池装置11を運転制御する。最適運転方法は1時間毎に更新されることとなるので、燃料電池装置11は、1時間毎に更新される運転方法に従って運転制御される。
【0065】
引き続いて、予測消費エネルギー演算部86が、総一次エネルギー量を演算する手順について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係るコジェネレーションシステムにおける総一次エネルギー量の演算手順を示すフロー図である。
【0066】
まず、演算対象となる運転方法を示すパラメータを読み込む(ステップS1)。そのパラメータとは、現時点から起動開始までの時間S、運転時間Ope、及び最大出力MAXWである。また、現状出力Wも読み込む。続いて、T=0とし(ステップS2)、T時間後の予測電力需要量を需要予測演算部85から読み込む(ステップS3)。
【0067】
そして、T時間後に予測電力需要量を供給するための発電出力を決定する(ステップS4)。決定した発電出力に基づいて、T時間目における燃料電池ユニット10において消費する消費一次エネルギーFCEを算出する(ステップS5)。また、T時間目に必要となる商用電力系統50から入力する電力量を算出し、T時間目における消費一次エネルギーKTEを算出する(ステップS6)。
【0068】
続いて、T時間後の予測熱需要量(予測給湯需要量)を需要予測演算部85から読み込む(ステップS7)。また、T時間後の貯湯槽21の蓄熱量を算出する(ステップS8)。そして、T時間後の予測熱需要量と貯湯槽21の蓄熱量とに基づいて、必要となるT時間目のバックアップボイラの消費一次エネルギーBUEを算出する(ステップS9)。以上のステップで算出した消費一次エネルギーFCE、消費一次エネルギーKTE、及び消費一次エネルギーBUEを足し合わせて、T時間目の総消費一次エネルギーTEを算出する(ステップS10)。
【0069】
続いて、T=T+1とし(ステップS11)、0時間後からT時間後までの総消費一次エネルギーALLEにT時間目の総消費一次エネルギーTEを加算して、0時間後からT+1時間後までの総消費一次エネルギーALLEを算出する(ステップS12)。そして、T>24でない場合(ステップS13でNO)は、T>24となるまで、ステップS3〜S12を繰返す。
【0070】
T>24となった場合(ステップS13でYES)は、一連のフローを終了する。以上の手順により、現在から24時間後までの間において、コジェネレーションシステム1が1つの運転方法に従って運転制御されて電力及び熱を供給するに当たって、消費される総消費一次エネルギーALLEが算出される。
【0071】
次に、最適運転選択部87が、最適な運転方法を選択する手順について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係るコジェネレーションシステムにおいて運転方法を選択する手順を示すフロー図である。
【0072】
まず、起動開始までの時間を示すパラメータSを0に設定し(ステップS21)、運転時間を示すパラメータOpeを0に設定し(ステップS22)、最大出力を示すパラメータMAXWを100に設定する(ステップS23)。このようにして設定したパラメータは、予測消費エネルギー演算部86によって読み込まれる。
【0073】
設定したパラメータによって示される運転方法における総消費一次エネルギーALLEを、予測消費エネルギー演算部86から呼び出し、比較対象となる一次的な総消費一次エネルギーALLETEMPとする(ステップS24)。一次的な総消費一次エネルギーALLETEMPが、現時点で最少となる総消費一次エネルギーMINALLEより小さい場合(ステップS25でYES)は、ステップS28へ進む。
【0074】
一次的な総消費一次エネルギーALLETEMPが、現時点で最少となる総消費一次エネルギーMINALLEより小さい場合(ステップS25でYES)は、該当するパラメータを格納し、該当する運転方法を記録する(ステップS26)。そして、一次的な総消費一次エネルギーALLETEMPを現時点で最少となる総消費一次エネルギーMINALLEとする(ステップS27)。なお、現時点で最少となる総消費一次エネルギーMINALLEは、初期値として、所定値を予め設定しておく。
【0075】
続いて、最大出力MAXWに100Wを加算して最大出力MAXWとする(ステップS28)。この値が燃料電池装置11の最大出力(例えば1000W)以下である場合(ステップS29でNO)は、ステップS25に戻って、ステップS28までの手順を繰り返す。最大出力MAXWが燃料電池装置11の最大出力を超える場合(ステップS29でYES)は、運転時間Opeに1時間を加算して運転時間Opeとする。
【0076】
この新たな運転時間Opeが24以下である場合(ステップS31でNO)は、ステップS23に戻って、ステップS30までを繰り返す。運転時間Opeが24を超える場合(ステップS31でYES)は、起動開始までの時間Sに1時間を加算して起動開始までの時間Sとする(ステップS32)。この新しい起動開始までの時間Sが24未満である場合(ステップS33でNO)は、ステップS22に戻って、ステップS32までを繰り返す。起動開始までの時間Sが24以上である場合(ステップS33でYES)は、一連のフローを終了する。
【0077】
以上の手順により、起動開始までの時間が0、1、…、23時間、運転時間が0、1、…24時間、最大出力が100、200、…、1000Wの組み合わせによって決まる6000通りの運転方法について、それぞれ総消費一次エネルギーが算出され、その中で最少の総消費一次エネルギーとなる運転方法が選択される。この手順が1時間毎に実行され、一時間毎に、最少の総消費一次エネルギーとなる運転方法が更新される。このように一時間毎に更新される運転方法に従って、燃料電池装置11が運転制御される。
【0078】
予測消費エネルギー演算部86による演算結果の例を図6に示す。図6は、運転時間及び起動時刻別の総一次エネルギーの削減率を示す図である。図6は、最大出力が900Wであり、コジェネレーションシステム1を導入せずに系統電力のみによって電力を供給し、一般給湯器によって熱を供給した場合と比較して削減される一次エネルギーの割合を示す。図6に示すように、本実施形態に係るコジェネレーションシステム1では、7時に起動して15時間運転する運転方法が最も消費一次エネルギーが小さいことを把握し、その運転方法に従って燃料電池装置11の運転が実行される。
【0079】
以上説明した本実施形態に係るコジェネレーションシステム1では、需要予測演算部85が電力需要量及び熱需要量を予測し、予測消費エネルギー演算部86が給電熱装置100で消費される第1の燃料の一次エネルギー量と商用電力系統50から入力される電力を生成するために必要とされる第2の燃料の一次エネルギー量とを給電熱装置100の運転方法毎に演算する。これにより、コジェネレーションシステム1によって電力及び熱を供給するために消費される総一次エネルギー量が給電熱装置100の運転方法毎に算出される。そして、最適運転選択部87が総一次エネルギー量に基づいて運転方法を選択するので、総一次エネルギー量に応じた効率的な運転方法を選択することができる。これにより、制御部13によって一次エネルギーの消費量を抑制した運転を行うことができる。
【0080】
コジェネレーションシステム1では、燃料電池装置11、貯湯槽ユニット20、商用電力系統50、給湯器30の発電又は発熱効率がそれぞれ異なると共に、各装置は状況によっても効率が異なる。本実施形態に係るコジェネレーションシステム1によれば、需要量に応じて電力及び熱量を供給するに当たって、必要となる一次エネルギー量が最少となるようにコジェネレーションシステム1を運転するので、省エネルギー性を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態に係るコジェネレーションシステム1では、需要予測演算部85が予測電力需要量及び予測熱需要量を1時間毎に更新し、それに応じて、予測消費エネルギー演算部86が総一次エネルギー量を更新し、最適運転選択部87が選択結果を更新する。よって、予測した電力需要量又は熱需要量に誤差が有る場合であっても、所定時間毎に運転方法を更新するので、誤差を抑制して最適な運転方法を選択することができる。
【0082】
また、本実施形態に係るコジェネレーションシステム1では、現状データ格納部82にて格納する性能パラメータを外気温別に格納し、予測消費エネルギー演算部86はその性能パラメータと外気温とに基づいて消費一次エネルギーFCE,BUEを演算する。この場合、外気温によって変動する消費一次エネルギーFCEを精度よく予測することができる。従って、寒冷地では、凍結防止用ヒータの消費一次エネルギー量が大きくなるが、それを加味して最適な運転方法を選択することができる。なお、凍結防止用ヒータは給電熱装置100が停止中に起動されるので、同様の電熱需要であっても外気温が低い場合は、給電熱装置100の停止時間が短い方が効率は向上する。本実施形態に係るコジェネレーションシステム1では、そのような外気温と凍結防止用ヒータの影響を加味して、最適な運転方法を選択することができる。
【0083】
また、本実施形態に係るコジェネレーションシステム1では、給電熱装置100の性能に関する値を測定し、その測定された値に基づいて、給電熱装置100の性能に関するパラメータを更新するので、予測消費エネルギー演算部86は、実際の給電熱装置100の性能に応じた消費一次エネルギーFCEを演算する。この場合、給電熱装置100の経年劣化が起こった場合であっても、また、給電熱装置100によるパラメータの差違があった場合であっても、性能パラメータの誤差を抑制してより最適な運転方法を選択することができる。
【0084】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、運転方法毎の総消費一次エネルギー量を演算して最も総消費一次エネルギー量が最少となる運転方法を選択したが、これに限られない。運転方法毎にかかる料金を演算して最も料金が最少となる運転方法を選択するようにしてもよい。このような本実施形態に係る変形例について説明する。
【0085】
変形例に係るコジェネレーションシステム1の運転制御装置80では、上述の予測消費エネルギー演算部86に替えて、予測消費光熱費演算部を備える。予測消費光熱費演算部は、需要予測演算部85によって予測された現在から24時間後までの電熱需要量に応じて電力及び熱を供給する場合に必要とされる光熱費を演算する。この予測消費光熱費演算部は、現状データ格納部82及び燃料電池パラメータ格納部83に格納されたパラメータを用いて演算を行う。燃料電池パラメータ格納部83には、上述のパラメータに加えて、第1の燃料の単価及び系統電力の単価が格納されている。
【0086】
予測消費光熱費演算部によって演算される光熱費は、給電熱装置100で消費される第1の燃料の燃料料金と、商用電力系統50から入力される電力の電力料金KTYと、の和である。燃料料金は、燃料電池ユニット10に供給される第1の燃料の量の料金FCYと、給湯器30に供給される第1の燃料の量の料金BUYとの和である。この燃料料金は、燃料電池ユニット10に供給される第1の燃料の量と給湯器30に供給される第1の燃料の量とに基づいて算出される。
【0087】
予測消費光熱費演算部は、燃料電池ユニット10にかかる料金FCY、バックアップボイラにかかるBUE、及び系統電力にかかる料金KTYを足し合わせる。これにより、予測消費光熱費演算部は、給電熱装置100で消費される第1の燃料の量(第1の予測消費量)に基づいて燃料料金を演算すると共に、商用電力系統50から入力される系統電力量に基づいて電力料金を演算して、光熱費を演算する。系統電力量は、この系統電力を生成するために必要とされる燃料に関する第2の予測消費量である。
【0088】
予測消費光熱費演算部は、燃料電池装置11の運転方法毎に24時間分の光熱費をそれぞれ演算する。予測消費光熱費演算部は、需要予測演算部85から電熱需要量が出力される1時間毎に、複数の運転方法毎の光熱費をそれぞれ演算する。そして、予測消費光熱費演算部は、運転方法を示す情報と光熱費とを関連付けた演算結果を最適運転選択部87へ出力する。これに応じて、最適運転選択部87は、光熱費が最も安くなる運転方法を選択する。
【0089】
引き続いて、予測消費光熱費演算部が、光熱費を演算する手順について、図7を参照して説明する。図7は、本実施形態に係るコジェネレーションシステムにおける光熱費の演算手順を示すフロー図である。
【0090】
まず、演算対象となる運転方法を示すパラメータS、Ope、MAXW及び現状出力Wを読み込む(ステップS41)。続いて、T=0とし(ステップS42)、T時間後の予測電力需要量を需要予測演算部85から読み込む(ステップS43)。そして、T時間後に予測電力需要量を供給するための発電出力を決定する(ステップS44)。決定した発電出力に基づいて、T時間目における燃料電池ユニット10にかかる料金FCYを算出する(ステップS45)。また、T時間目に必要となる商用電力系統50から入力する電力量を算出し、T時間目における系統電力に係る料金KTYを算出する(ステップS46)。
【0091】
続いて、T時間後の予測熱需要量(予測給湯需要量)を需要予測演算部85から読み込む(ステップS47)。また、T時間後の貯湯槽21の蓄熱量を算出する(ステップS48)。そして、T時間後の予測熱需要量と貯湯槽21の蓄熱量とに基づいて、必要となるT時間目のバックアップボイラに係る料金BUYを算出する(ステップS49)。以上のステップで算出した料金FCY、料金KTY、及び料金BUYを足し合わせて、T時間目にかかる料金TYを算出する(ステップS50)。
【0092】
続いて、T=T+1とし(ステップS51)、0時間後からT時間後までにかかる料金ALLYにT時間目にかかる料金TYを加算して、0時間後からT+1時間後までにかかる料金ALLYを算出する(ステップS52)。そして、T>24でない場合(ステップS53でNO)は、T>24となるまで、ステップS53〜S52を繰返す。
【0093】
T>24となった場合(ステップS53でYES)は、一連のフローを終了する。以上の手順により、現在から24時間後までの間において、コジェネレーションシステム1が1つの運転方法に従って運転制御されて電力及び熱を供給するに当たって、必要となる光熱費が算出される。
【0094】
以上の説明において、本発明は、コジェネレーションシステム1が供給する電力及び熱を生成するために必要となる消費一次エネルギー又は光熱費を抑制するようにコジェネレーションシステム1を制御することとしたが、CO2を抑制するように制御してもよい。この場合、コジェネレーションシステム1において排出されるCO2の量及び系統電力の発電に伴って排出されるCO2の量を運転方法毎に演算して、そのCO2の量が最少となる運転方法を選択するようにしてもよい。
【0095】
また、本発明に係るコジェネレーションシステム1は、消費一次エネルギー量を最少とする運転制御を行うか、光熱費を最少とする運転制御を行うか、又は、排出されるCO2の量を最少とする運転制御を行うか、利用者がリモコン等で選択可能に構成されていることも好ましい。
【0096】
また、本発明に係るコジェネレーションシステム1は、各種の情報をリモコン等に搭載された表示画面に表示するように構成されていることが好ましい。各種の情報とは、最適運転選択部87によって選択された運転方法、需要予測演算部85によって予測された電熱需要のパターン、及び燃料電池パラメータ格納部83に格納された性能パラメータ等である。このような各種の情報を表示することにより、利用者に運転状況、予測情報、効率等の情報を提供し、消費エネルギーを抑制する生活を促進させることができる。なお、各種の情報の提供については、コジェネレーションシステム1をインターネット等の通信網に接続可能に構成し、パーソナルコンピュータや携帯電話等の情報端末によってアクセスして情報を取得できるようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、燃料電池装置11の運転方法には、燃料電池装置11の起動タイミングと、起動タイミングからの運転時間と、運転中の最大出力値と、の組み合わせで決まる複数の運転パターンがあるとしたが、これに限られない。運転方法には、起動タイミング、起動タイミングからの運転時間、及び運転中の最大出力値以外の要素を組み合わせた複数の方法を含めてもよい。例えば、その要素として最低出力値別、一定出力別運転方法等がある。
【0098】
本発明のコジェネレーションシステムは、給電熱装置が生成する電力及び熱と、給電熱装置とは別の供給源から入力される電力と、を供給するコジェネレーションシステムにおいて、電力需要量及び熱需要量を予測する予測手段と、給電熱装置の起動タイミングと給電熱装置における起動タイミングからの運転時間と給電熱装置の運転中における出力値との組み合わせによる給電熱装置の運転方法毎に、予測手段によって予測された電力需要量及び熱需要量に応じて電力及び熱を供給するために給電熱装置で消費される燃料に関する第1の予測消費量及び別の供給源から入力される電力を生成するために必要とされる燃料に関する第2の予測消費量を演算する演算手段と、演算手段によって演算された第1の予測消費量及び第2の予測消費量に基づいて運転方法を選択する選択手段と、選択手段によって選択された運転方法に従って給電熱装置の運転を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0099】
本発明のコジェネレーションシステムでは、予測手段が電力需要量及び熱需要量を予測し、演算手段が給電熱装置で消費される燃料に関する第1の予測消費量と別の供給源から入力される電力を生成するために必要とされる燃料に関する第2の予測消費量とを給電熱装置の運転方法毎に演算する。これにより、コジェネレーションシステムによって電力及び熱を供給するために消費される燃料の予測消費量が給電熱装置の運転方法毎に算出される。そして、選択手段が第1の予測消費量及び第2の予測消費量に基づいて運転方法を選択するので、燃料の消費量に応じた効率的な運転方法を選択することができる。これにより、制御手段によって一次エネルギーの消費量又は光熱費等を抑制した運転を行うことができる。
【0100】
好ましくは、演算手段は、第1の予測消費量として給電熱装置で消費される燃料の一次エネルギー量を演算し、第2の予測消費量として別の供給源から入力される電力を生成するために必要とされる燃料の一次エネルギー量を演算することにより、コジェネレーションシステムが供給する電力及び熱を生成するために消費する総一次エネルギー量を演算し、選択手段は、演算手段によって演算された総一次エネルギー量に基づいて運転方法を選択する。
【0101】
これにより、電力及び熱を供給するために消費される一次エネルギー量を抑制した効率的な運転を行うことができる。例えば、電力及び熱を供給するために消費される一次エネルギー量が最少となる運転方法を選択して、省エネルギー化を図ることができる。
【0102】
好ましくは、演算手段は、第1の予測消費量として給電熱装置で消費される燃料の量を演算して当該燃料に係る燃料料金を演算し、第2の予測消費量として別の供給源から入力される電力量を演算して当該電力量に係る電力料金を演算し、選択手段は、演算手段によって演算された燃料料金及び電力料金に基づいて運転方法を選択する。
【0103】
これにより、電力及び熱を供給するために必要な料金を抑制した効率的な運転を行うことができる。例えば、電力及び熱を供給するために必要な料金が最少となる運転方法を選択して、光熱費の抑制を図ることができる。
【0104】
好ましくは、予測手段は、所定時間毎に予測を行うことにより電力需要量及び熱需要量を更新し、演算手段は、予測手段によって更新された電力需要量及び熱需要量に基づいて演算することにより第1の予測消費量及び第2の予測消費量を更新し、選択手段は、演算手段によって更新された演算結果に基づいて運転方法を選択することにより選択結果を更新し、制御手段は、選択手段によって更新された運転方法に従って給電熱装置の運転を制御する。
【0105】
これにより、予測した電力需要量又は熱需要量に誤差が有る場合であっても、所定時間毎に運転方法を更新するので、誤差を抑制して最適な運転方法を選択することができる。
【0106】
好ましくは、第1の予測消費量を演算するために必要であると共に外気温によって変動するパラメータを外気温別に格納する格納手段を備え、演算手段は、外気温と格納手段に格納されたパラメータとに基づいて第1の予測消費量を演算する。
【0107】
この場合、外気温によって変動する第1の予測消費量を精度よく予測することができる。従って、寒冷地等の地域に設置した場合であっても、最適な運転方法を選択することができる。
【0108】
好ましくは、給電熱装置の性能に関する値を測定する測定手段と、測定手段によって測定された値に基づいて、給電熱装置の性能に関するパラメータを更新する更新手段と、を備え、演算手段は、更新手段によって更新されたパラメータを用いて第1の予測消費量を演算する。
【0109】
この場合、給電熱装置の経年劣化が起こった場合であっても、また、給電熱装置の性能について差違があった場合であっても、給電熱装置の性能に関する値を測定し、その測定された値に基づいて、給電熱装置の性能に関するパラメータを更新するので、演算手段は、実際の給電熱装置の性能に応じた第1の予測消費量を演算することができる。よって、誤差を抑制してより最適な運転方法を選択することができる。
【符号の説明】
【0110】
1…コジェネレーションシステム、11…燃料電池装置、13…制御部(制御手段)、14…性能計測器(計測手段)、50…商用電力系統(別の供給源)、80…運転制御装置、81…電熱需要履歴格納部、82…現状データ格納部、83…燃料電池パラメータ格納部(格納手段)、84…パラメータ更新部(更新手段)、85…需要予測演算部(予測手段)、86…予測消費エネルギー演算部(演算手段)、87…最適運転選択部(選択手段)、100…給電熱装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電熱装置が生成する電力及び熱と、前記給電熱装置とは別の供給源から入力される電力と、を供給するコジェネレーションシステムにおいて、
電力需要量及び熱需要量を予測する予測手段と、
前記給電熱装置の起動タイミングと前記給電熱装置における前記起動タイミングからの運転時間と複数の値の中から設定される前記給電熱装置の運転中における最大出力値との組み合わせによる前記給電熱装置の運転方法毎に、前記予測手段によって予測された電力需要量及び熱需要量に応じて電力及び熱を供給するために前記給電熱装置で消費される燃料に関する第1の予測消費量及び前記別の供給源から入力される電力を生成するために必要とされる燃料に関する第2の予測消費量を演算する演算手段と、
前記演算手段によって演算された前記第1の予測消費量及び前記第2の予測消費量に基づいて前記運転方法を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された運転方法に従って前記給電熱装置の運転を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするコジェネレーションシステム。
【請求項2】
前記演算手段は、前記第1の予測消費量として前記給電熱装置で消費される燃料の一次エネルギー量を演算し、前記第2の予測消費量として前記別の供給源から入力される電力を生成するために必要とされる燃料の一次エネルギー量を演算することにより、コジェネレーションシステムが供給する電力及び熱を生成するために消費する総一次エネルギー量を演算し、
前記選択手段は、前記演算手段によって演算された前記総一次エネルギー量に基づいて前記運転方法を選択することを特徴とする請求項1に記載のコジェネレーションシステム。
【請求項3】
前記予測手段は、所定時間毎に予測を行うことにより前記電力需要量及び前記熱需要量を更新し、
前記演算手段は、前記予測手段によって更新された前記電力需要量及び前記熱需要量に基づいて演算することにより前記第1の予測消費量及び前記第2の予測消費量を更新し、
前記選択手段は、前記演算手段によって更新された演算結果に基づいて運転方法を選択することにより選択結果を更新し、
前記制御手段は、前記選択手段によって更新された運転方法に従って前記給電熱装置の運転を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のコジェネレーションシステム。
【請求項4】
前記第1の予測消費量を演算するために必要であると共に外気温によって変動するパラメータを外気温別に格納する格納手段を備え、
前記演算手段は、外気温と前記格納手段に格納されたパラメータとに基づいて前記第1の予測消費量を演算することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコジェネレーションシステム。
【請求項5】
前記格納手段は、前記パラメータとして、外気温別に前記給電熱装置の待機時の消費エネルギーを示す情報を格納することを特徴とする請求項4に記載のコジェネレーションシステム。
【請求項6】
前記格納手段は、前記演算手段に用いられるパラメータとして、前記給電熱装置に係る、出力別の投入エネルギー、出力別の発電効率、出力別の熱回収効率、起動時の消費エネルギー、出力別の燃料電池熱回収水出口温度、定格出力、最低出力、停止動作時の消費エネルギー、負荷追従速度、待機時の消費エネルギー、貯湯槽の容量、貯湯槽の放熱率、各配管の放熱率、燃料電池の冷却水の許容温度、バックアップボイラの効率、系統電力の発電効率を示す情報を格納することを特徴とする請求項4又は5のいずれか1項に記載のコジェネレーションシステム。
【請求項7】
前記格納手段は、外気温別に前記出力別の熱回収効率、前記出力別の燃料電池熱回収水出口温度、前記貯湯槽の容量、前記貯湯槽の放熱率、及び前記各配管の放熱率を示す情報を格納することを特徴とする請求項6に記載のコジェネレーションシステム。
【請求項8】
前記格納手段は、外気温別及び運転を停止してからの経過時間別に、前記待機時の消費エネルギー、前記起動時の消費エネルギーを示す情報を格納することを特徴とする請求項6又は7に記載のコジェネレーションシステム。
【請求項9】
前記給電熱装置の性能に関する値を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された値に基づいて、前記給電熱装置の性能に関するパラメータを更新する更新手段と、を備え、
前記演算手段は、前記更新手段によって更新されたパラメータを用いて前記第1の予測消費量を演算することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコジェネレーションシステム。
【請求項10】
給電熱装置が生成する電力及び熱と、前記給電熱装置とは別の供給源から入力される電力と、を供給するコジェネレーションシステムの運転方法において、
電力需要量及び熱需要量を予測する予測ステップと、
前記給電熱装置の起動タイミングと前記給電熱装置における前記起動タイミングからの運転時間と複数の値の中から設定される前記給電熱装置の運転中における最大出力値との組み合わせによる前記給電熱装置の運転方法毎に、前記予測ステップにおいて予測された電力需要量及び熱需要量に応じて電力及び熱を供給するために前記給電熱装置で消費される燃料に関する第1の予測消費量及び前記別の供給源から入力される電力を生成するために必要とされる燃料に関する第2の予測消費量を演算する演算ステップと、
前記演算ステップにおいて演算された前記第1の予測消費量及び前記第2の予測消費量に基づいて前記運転方法を選択する選択ステップと、
前記選択ステップにおいて選択された運転方法に従って前記給電熱装置の運転を制御する制御ステップと、
を含むことを特徴とする運転方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−248538(P2012−248538A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149572(P2012−149572)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【分割の表示】特願2007−270514(P2007−270514)の分割
【原出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】