説明

コップカバーとコップカバーの装着方法及びコップカバーの製造方法

【課題】コップカバーを尿コップに容易に着脱できるようにする。
【解決手段】尿を収容したコップ10の蓋となる円形で弾性のあるコップカバー2であって、外周にコップ10の開口部11の縁16を覆うフランジ部7が設けられ、フランジ部7の内周から、コップ10の開口部11の内側面に接する接触部8が下向きに突き出している。それにより、フランジ部7をコップ10の縁16に押し当てるだけでコップカバー2を装着し、漏れを防止できる。また、フランジ部7と縁16との隙間18から、コップカバー2を外すことができる。さらに、コップカバー2は撥水性なので、尿で汚染されず、再利用でき、尿が洩らさずに、気送子等でコップを自動搬送できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は尿を収容したコップのカバーに関し、搬送時に尿がコップから洩れないようにすることに関する。この発明はまた、コップカバーの装着方法とコップカバーの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
病院、診療機関、検査機関等では、尿を収容したコップを搬送する。このためにはコップからの漏れを防ぐためのカバー(蓋)が必要で、発明者らは蓋を弾性リングでコップに固定することを提案した(特許文献1:特開2009-23836)。特許文献1では、蓋はコップの縁と係合する溝を備え、溝の部分で蓋の断面は逆U字状に上向きに突出している。そして蓋をコップにかぶせ、蓋の突出部を弾性リングで挟みこみ、コップの縁と蓋の突出部との隙間を解消する。しかしこの手法では、弾性リングの着脱に時間が必要で、操作性に問題があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-23836
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、コップカバーをより容易に着脱できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、尿を収容したコップの蓋となる円形で弾性のあるコップカバーの、外周にコップの開口部の縁を覆うフランジ部が設けられ、前記フランジ部の内周から、コップの開口部の内側面に接する接触部が下向きに突き出していることを特徴とする。
【0006】
この発明はまた、尿を収容したコップに、円形で弾性のあるコップカバーを装着する方法であって、
前記コップカバーは、外周にコップの開口部の縁を覆うフランジ部が設けられ、前記フランジ部の内周から、コップの開口部の内側面に接する接触部が下向きに突き出し、
コップの開口部の縁に、接触部を下向きにしてコップカバーのフランジ部を押し当てて、前記接触部をコップ内に押し込むことにより、コップカバーをコップに装着することを特徴とする。
【0007】
この発明では、コップカバーのフランジ部をコップの縁に押し当てると、コップカバーは下向きに湾曲し、かつ接触部は半径方向に圧縮される。コップカバーが下向きに湾曲し、接触部は圧縮されているので、接触部がコップの内側面に密着して、コップから外れなくなる。このように、手のひら等でコップカバーをコップに押し付けるだけで、コップカバーをコップに装着できる。
【0008】
好ましくはコップカバーは閉気孔の発泡合成樹脂から成り、コップカバーは弾性がありまた撥水性で、接触部がコップの内側面に密着して、コップと接触部の間から尿が洩れることがない。
【0009】
好ましくはコップカバーは、円形の上層シートと、上層シートの下面に上層シートと同芯に接着された円形の下層シートとから成る。上層シートと下層シートは共に閉気孔の発泡合成樹脂から成り、下層シートは上層シートよりも小径かつ肉厚である。上層シートの下面で下層シートに覆われていない部分が前記のフランジ部を構成し、下層シートの円周面が前記の接触部を構成する。コップカバーを型等で発泡成形すると、離型剤が必要になる。離型剤は発泡合成樹脂の表面を溶かして、表面の気泡がつぶれ弾力性が低下すると共に、撥水性も低下する。そこで型を用いる代わりに、上層シートと下層シートとを同芯に接着すると、発泡樹脂本来の撥水性が失われず、表面付近の気泡がつぶれることもない。
【0010】
この発明では、尿を収容したコップの蓋となる円形のコップカバーを製造するために、
発泡合成樹脂の第1のシートから円形の上層シートを切り出すと共に、
発泡合成樹脂から成り第1のシートよりも肉厚の第2のシートから、前記上層シートよりも小径で円形の下層シートを切り出し、
上層シートと下層シートとを同芯に接着する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例のコップカバーの底面図
【図2】実施例のコップカバーの鉛直方向断面図
【図3】コップカバーを装着したコップを示す鉛直方向断面図
【図4】気送子のインナーケースにセットしたコップカバー等を示す要部平面図
【図5】インナーケースの鉛直方向断面図
【図6】コップカバーを装着したコップがセットされた水平搬送用のケースの平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。実施例は本発明の範囲を制限するものではなく、公知技術の範囲で自由に変更できる。
【実施例】
【0013】
図1〜図6に、実施例のコップカバー2とその使用方法を示す。図1,図2に示すように、実施例のコップカバー2は平面視で円形で孔はなく、円形の下層シート4と同芯で円形の上層シート6の2層から成る。上層シート6の外周のフランジ部7は、図3の紙コップ10の上部の縁16を覆い、フランジ部7の内周面から鉛直方向下向きに下層シート4が突き出し、その外周面の接触部8が紙コップ10の内側面14と液密に接触する(図3)。9は接触部8の内側の中心部で、下層シート4と上層シート6とが接着され、円形で孔はない。また中心部9の一部を紙、合成樹脂のフィルム等の弾性材料で構成しても良い。なおこの明細書では、カバー2の使用時を基準に上下等の方向を定める。紙コップ10は検尿用で、合成樹脂フィルム、発泡合成樹脂等の他の材質のコップでも良い。
【0014】
コップカバー2の材質を説明する。下層シート4と上層シート6は共に閉気孔の発泡性プラスチックで構成され、下層シート4と上層シート6とは材質が同じでも異なっても良く、例えば発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン等で構成され、密度は例えば0.02〜0.04g/cm程度である。下層シート4は上層シート6よりも肉厚かつ小径で、上層シート6と同芯に図示しない接着剤で接着されている。カバー2の表面には、接着剤あるいは粘着剤等は塗布されておらず、生地の発泡合成樹脂が表面に露出しざらついている。
【0015】
カバー2のサイズの例を説明する。例えば対象となる紙コップ10の外径が80mmとして、カバー2の外径(上層シート6の外径)をほぼ80mmとし、下層シート4の外径を例えば70〜72mmとする。下層シート4の外径は、紙コップ10の開口部11(図3)の外径と同じか僅かに大きくする。シート4,6の厚さは、例えば上層シート6が1〜3mmでここでは2mm、下層シート4が3〜10mmでここでは5mmとする。これらのサイズは一例で、コップ10のサイズと、下層シート4の弾力性等に応じ適宜に変更できる。
【0016】
図3は、尿12を収容した紙コップ10への、カバー2の取り付けを示す。12は検査用のサンプルである尿で、11はコップの開口部、14はコップ10の内側面、16は上端のリング状の縁である。またコップ10は、内側面14等に合成樹脂フィルムでラミネートされ、あるいは疎水性の層が設けられている。
【0017】
下層シート4を下側にして、手のひら等でコップカバー2を紙コップ10に押し当てると、フランジ部7がコップ10の縁16に当たり、下層シート4がコップ10内に押し込まれる。この時、図3の破線で示すようにコップカバー2は下向きに僅かに湾曲し、接触部8は紙コップの内部に押し込まれて半径方向に圧縮される。このためコップカバー2の接触部8は、内側面14に食い込むように押し込まれて密着し、これによってコップカバー2はコップ10に装着される。またコップ10の内側面14と接触部8は共に疎水性ないし撥水性なので、液漏れは生じない。
【0018】
コップの搬送が終了し、カバー2を外す際には、縁16とフランジ部7との隙間18に指等を差し込むと良い。なお後述のケース22(図4,図5)の蓋24が閉じることを妨げない範囲で、上層シート6にタブ等を取り付けても良い。またこの明細書で円形とは真円で有ることの他に、タブ等が取り付けられ、あるいは真円からやや外れて楕円に近いものも含むものとする。実施例のカバー2は、表面に離型剤、接着剤等の層がないので、尿12を汚染しない。また撥水性なので尿がカバー2の内部に浸透せず、水中で超音波洗浄すること等により、再利用できる。
【0019】
図4、図5に、図示しない気送子のインナーケース20に、カバー2で蓋をしたコップ10を収容する例を示す。22は個別のケースで、24はその蓋であり、弾性シート26が内面に設けられている。28は凹部、30は突起で、図5のようにコップ10をセットし、蓋24を閉じて突起30を凹部28で係止する。搬送中に気送子の向きが変化し、例えば上下反転すると、弾性シート26でカバー2を支える。気送子で搬送すると、搬送中に上下が反転する、横倒しになる、鉛直方向の上下に移動する、等のことがある。この時弾性シート26がカバー2を支え、実験により液漏れが全く生じないことが判明した。
【0020】
コップ10の搬送には気送子に限らず、図6に示すケース60等も利用でき、62は下部ケース、64は上部ケース、65は弾性体シートで、その孔66にコップ10を収容し、上部ケース64と下部ケース62とを閉じる。そして空気圧動作の無人搬送車等により、ケース60を搬送する。
【0021】
コップカバー2を製造するには、閉気孔の発泡樹脂から成る肉薄の第1のシートと、閉気孔の発泡樹脂から成る肉厚の第2のシートとを用意し、打ち抜き、切断等により、上層6と下層4とを切り出す。ここで下層4は上層6よりも小径にする。下層4に接着剤を塗布し、上層6と同芯に重ねて接着する。コップカバー2には、これ以外の粘着剤、接着剤等を使用しない。このようにすれば離型剤なしで、コップカバー2を製造できる。
【0022】
実施例及び変形例では以下の効果が得られる。
1) フランジ部7をコップ10の縁16に押し当てるだけで、カバー2を装着し、漏れを防止できる。
2) フランジ部7と縁16との隙間18から、カバー2を外すことができる。
3) カバー2は撥水性なので、尿で汚染されず、再利用できる。
4) 尿が洩れずに、気送子等でコップを自動搬送できる。
【符号の説明】
【0023】
2 コップカバー
4 下層シート
6 上層シート
7 フランジ部
8 接触部
9 中心部
10 コップ
11 開口部
12 尿
14 内側面
16 縁
18 隙間
20 インナーケース
22 ケース
24 蓋
26 弾性シート
28 凹部
30 突起
60 ケース
62 下部ケース
64 上部ケース
65 弾性体シート
66 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿を収容したコップの蓋となる円形で弾性のあるコップカバーであって、
外周にコップの開口部の縁を覆うフランジ部が設けられ、
前記フランジ部の内周から、コップの開口部の内側面に接する接触部が下向きに突き出していることを特徴とする、コップカバー。
【請求項2】
閉気孔の発泡合成樹脂から成ることを特徴とする、請求項1のコップカバー。
【請求項3】
円形の上層シートと、上層シートの下面に上層シートと同芯に接着された円形の下層シートとから成り、上層シートと下層シートは共に閉気孔の発泡合成樹脂から成り、下層シートは上層シートよりも小径かつ肉厚で、上層シートの下面で下層シートに覆われていない部分が前記のフランジ部を構成し、下層シートの円周面が前記の接触部を構成することを特徴とする、請求項2のコップカバー。
【請求項4】
尿を収容したコップに、円形で弾性のあるコップカバーを装着する方法であって、
前記コップカバーは、外周にコップの開口部の縁を覆うフランジ部が設けられ、前記フランジ部の内周から、コップの開口部の内側面に接する接触部が下向きに突き出し、
コップの開口部の縁に、接触部を下向きにしてコップカバーのフランジ部を押し当てて、前記接触部をコップ内に押し込むことにより、コップカバーをコップに装着することを特徴とする、コップカバーの装着方法。
【請求項5】
コップの開口部の縁にコップカバーのフランジ部を押し当てる際に、コップカバーが下向きに湾曲し、かつ前記接触部が半径方向に圧縮されるようにしたことを特徴とする、請求項4のコップカバーの装着方法。
【請求項6】
尿を収容したコップの蓋となる円形のコップカバーの製造方法であって、
発泡合成樹脂の第1のシートから円形の上層シートを切り出すと共に、
発泡合成樹脂から成り第1のシートよりも肉厚の第2のシートから、前記上層シートよりも小径で円形の下層シートを切り出し、
上層シートと下層シートとを同芯に接着することを特徴とする、コップカバーの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−240984(P2011−240984A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117089(P2010−117089)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(304011795)株式会社日本シューター (11)
【Fターム(参考)】