説明

コドン最適化したIL−15を用いるワクチンおよび免疫治療とその使用方法

【課題】コドン最適化したIL−15を用いるワクチンおよび免疫治療とその使用方法の提供。
【解決手段】IL−15のための天然のコード配列を持つ核酸分子よりも高いレベルでタンパク質を発現する、IL−15をコードする核酸分子またはそのフラグメントが開示される。付加的な改変(例えば、IL−15シグナル配列のためのコード配列を持たない、および/またはIL−15の非翻訳配列を持たない、および/または非IL−15シグナル配列を持つ)を持つ核酸分子がまた開示される。そのような核酸分子を含有する、プラスミドおよびウイルスベクターを含むベクター、そしてそのような核酸分子を含有する宿主細胞へのベクター、ならびに、そのような核酸分子を単独で用いるか、またはその核酸分子の一部および/または異なる核酸分子の一部である免疫原をコードする核酸配列と組み合わせて用いる方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、IL−15をコードするコドン最適化した核酸配列を含む核酸分子およびそのフラグメント、改善されたワクチン、免疫原に対して個体を予防的および/または治療的に免疫するための改善された方法、ならびに改善された免疫治療用組成物および改善された免疫療法の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫療法は、望ましい治療効果を与えるため、個人の免疫反応を調節することに関する。免疫治療用物質は、個体に投与された場合、望ましくない免疫反応に関連した症状を最終的に減少させるか、または望ましい免疫反応を増加させることによって症状を最終的に軽減させるのに十分な、個体の免疫機構を調節する組成物に関する。いくつかの事例において、免疫療法はワクチン接種プロトコルの一部分であり、そこで個体は、個体が免疫反応を生じる免疫原に対して個体を曝露するワクチンを投与される。そのような事例において、免疫治療用物質は、免疫反応を増加、および/または特定の状態、感染もしくは疾患を処置または予防するのに望ましい免疫反応の一部(例えば、細胞性の武器または体液性の武器)を選択的に増強する。
【0003】
ワクチンは、標的抗原(例えば、アレルゲン、病原体抗原またはヒトの疾患に関与する細胞に関連した抗原)に対して個体を免疫化するために有用である。ヒトの疾患に関与する細胞に関連した抗原としては、癌関連腫瘍抗原および自己免疫疾患に関与する細胞に関連した抗原が挙げられる。
【0004】
そのようなワクチンの設計において、ワクチン接種された個体の細胞中で標的抗原を産生させるワクチンが、免疫機構の細胞性の武器の誘導において効果的であることが認識されている。特に、生弱毒化ワクチン、無発症性ベクターを用いる組み換えワクチン、およびDNAワクチンは、ワクチン接種された個体の細胞において、免疫機構の細胞性の武器の誘導を生じる抗原の産生をそれぞれ導く。一方、タンパク質のみを含む、死菌ワクチンまたは不活化ワクチン、およびサブユニットワクチンは、良好な細胞性免疫反応は誘導しないが、体液性反応を誘導する。
【0005】
細胞性免疫反応は、病原体感染に対する防御を提供するうえで、そして病原体感染、癌、または自己免疫疾患の処置のための有効な免疫媒介治療を提供するうえで、しばしば必要である。したがって、ワクチン接種された個体の細胞中で標的抗原を産生するワクチン(例えば、生弱毒化ワクチン、無発症性ベクターを用いる組み換えワクチン、およびDNAワクチン)が、多くの場合好ましい。
【0006】
そのようなワクチンは、病原体感染またはヒトの疾患に対して、個体を予防的または治療的に免疫するのに多くの場合有効であるとはいえ、改善されたワクチンに対する必要性が存在する。増強された免疫反応を生じる、組成物および方法に対する必要性が存在する。
【0007】
同様に、いくつかの免疫治療用物質は、患者における免疫反応を調節するうえで有用であるが、改善された免疫治療用の組成物および方法に対する必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、IL−15タンパク質をコードする核酸配列(配列番号1を含む)を含む核酸分子、またはIL−15の機能的なフラグメントをコードする、その核酸分子のフラグメントに関する。
【0009】
本発明は、配列番号1を含む核酸分子、またはIL−15の機能的なフラグメントをコードする、その核酸分子のフラグメント(それは、IL−15シグナル配列のためのコード配列がなく、および/またはIL−15コザック領域がなく、および/またはIL−15の5’非翻訳領域がなく、および/またはIL−15の3’非翻訳領域がなく、および/または非IL−15シグナル配列のためのコード配列を含む)に関するものである。
【0010】
本発明は、IL−15タンパク質をコードする核酸配列(配列番号1を含む)を含む核酸分子、またはIL−15の機能的なフラグメントをコードする、その核酸分子のフラグメント、そしてさらに免疫原のためのコード配列を含む核酸分子に関する。
【0011】
本発明は、配列番号1を含む核酸配列を含む核酸分子、またはIL−15の機能的なフラグメントをコードする核酸分子のフラグメント、および免疫原をコードする核酸配列を含む核酸分子を含む組成物に関する。
【0012】
本発明はさらに、配列番号1を含む核酸分子、またはIL−15の機能的なフラグメントをコードする核酸分子のフラグメントを個体に投与する工程を含む、個体における免疫反応を調節する方法に関する。
【0013】
本発明はさらに、配列番号1を含む核酸分子を含む組み換えワクチン、またはIL−15の機能的なフラグメントをコードする核酸分子のフラグメントを含む組み換えワクチンに関する。
【0014】
本発明は、個体において免疫原に対する免疫反応を誘導する方法に関するものであって、その方法は、配列番号1を含む核酸分子、またはIL−15の機能的なフラグメントをコードする核酸分子のフラグメントを、免疫原をコードする核酸分子の一部として、もしくは組み合わせとして、または免疫原との組み合わせで、前記の個体に投与することを含む。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号1を含む核酸分子、またはIL−15の機能性のフラグメントをコードする該核酸分子のフラグメント。
(項目2)
項目1に記載の核酸分子であって、配列番号1を含む、核酸分子。
(項目3)
項目1または項目2に記載の核酸分子であって、IL−15のシグナル配列のためのコード配列を持たない、核酸分子。
(項目4)
項目1〜項目3に記載の核酸分子であって、IL−15のコザック領域および/またはIL−15の5’非翻訳領域および/またはIL−15の3’非翻訳領域を持たない、核酸分子。
(項目5)
項目1〜項目4に記載の核酸分子であって、非IL−15シグナル配列のためのコード配列を含む、核酸分子。
(項目6)
項目1〜項目5に記載の核酸分子であって、IgEシグナル配列のためのコード配列を含む、核酸分子。
(項目7)
項目1〜項目6に記載の核酸分子であって、免疫原のためのコード配列をさらに含む、核酸分子。
(項目8)
項目7に記載の核酸分子であって、前記免疫原が、病原体抗原、癌関連抗原または自己免疫疾患に関連する細胞に連結された抗原である、核酸分子。
(項目9)
項目8に記載の単離された核酸分子であって、前記免疫原が、HIV、HSV、HCV、およびWNVよりなる群から選択される病原体由来の病原体抗原である、核酸分子。
(項目10)
項目1〜項目9に記載の単離された核酸分子であって、該単離された核酸分子がプラスミドである、核酸分子。
(項目11)
項目1〜項目9に記載の核酸分子であって、ウイルスベクター中に組み込まれた、核酸分子。
(項目12)
項目1〜項目9に記載の核酸分子であって、生弱毒化病原体に組み込まれた、核酸分子。
(項目13)
項目1〜項目12に記載の核酸分子、および免疫原をコードする核酸配列を含む核酸分子を含有する、組成物。
(項目14)
項目13に記載の組成物であって、前記免疫原が病原体抗原、癌関連抗原または自己免疫疾患に関連する細胞に連結された抗原である、組成物。
(項目15)
項目14に記載の組成物であって、前記免疫原が、HIV、HSV、HCV、およびWNVよりなる群から選択される病原体由来の病原体抗原である、組成物。
(項目16)
項目13〜項目15に記載の組成物であって、前記核酸分子がプラスミドである、組成物。
(項目17)
注射可能な薬学的組成物であって、項目1〜項目12に記載の核酸分子、または項目13〜項目15に記載の組成物を含有する、組成物。
(項目18)
個体における免疫反応を調節する方法であって、項目1〜項目6に記載の核酸分子を該個体に投与する工程を含む、方法。
(項目19)
組み換えワクチンであって、免疫原をコードする核酸配列および項目1〜項目6に記載の核酸配列を含む、組み換えワクチン。
(項目20)
項目19に記載の組み換えワクチンであって、前記免疫原が病原体抗原、癌関連抗原または自己免疫疾患に関連する細胞に連結された抗原である、組み換えワクチン。
(項目21)
項目20に記載の組み換えワクチンであって、前記免疫原が、HIV、HSV、HCV、およびWNVよりなる群から選択される病原体由来の病原体抗原である、組み換えワクチン。
(項目22)
項目19〜項目21に記載の組み換えワクチンであって、該組み換えワクチンが、組み換えワクシニアワクチンである、組み換えワクチン。
(項目23)
免疫原に対して個体における免疫反応を誘導する方法であって、項目7〜項目12に記載の核酸分子、または項目13〜項目16に記載の組成物、または項目19〜項目22に記載の組み換えワクチンを該個体に投与する工程を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、配列番号1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(定義)
本明細書で用いる場合、用語「標的タンパク質」は、免疫反応のための標的タンパク質として作用する、本発明の遺伝子構築物によりコードされるペプチドおよびタンパク質に関することを意味する。用語「標的タンパク質」および「免疫原」は互換的に用いられ、そして免疫反応がそれに対して誘発され得るタンパク質に関するものである。標的タンパク質は、免疫原性のタンパク質であり、病原体または、それに対する免疫反応が望まれる癌細胞または自己免疫疾患に関与する細胞のような望ましくない細胞型由来のタンパク質と少なくとも一つのエピトープを共有する。標的タンパク質に対して指向する免疫反応は、その標的タンパク質が関与している特異的な感染または疾患に対して個体を防御および/または処置する。
【0017】
本明細書で用いる場合、用語「遺伝子構築物」とは、標的タンパク質または免疫調節タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNA分子またはRNA分子に関するものである。コード配列は、その核酸分子が投与される個体の細胞中での発現を導くことができるプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含む調節エレメントに作動可能に連結された開始および終止シグナルを含む。
【0018】
本明細書で用いる場合、用語「発現可能な形態」とは、標的タンパク質または免疫調節タンパク質をコードするコード配列に作動可能に連結された必要な調節要素を含む遺伝子構築物に関するものであり、その遺伝子構築物が個体の細胞中に存在する場合、そのコード配列が発現される。
【0019】
本明細書で用いる場合、用語「エピトープを共有する」とは、別のタンパク質のエピトープに同一か、または実質的に同様である少なくとも一つのエピトープを含有するタンパク質に関するものである。
【0020】
本明細書で用いる場合、用語「実質的に同様であるエピトープ」は、タンパク質のエピトープと同一ではない構造を持つが、それにもかかわらず、そのタンパク質と交差反応する細胞性免疫反応または体液性免疫反応を惹起するエピトープに関することを意味する。
【0021】
本明細書で用いる場合、用語「細胞内病原体」は、その複製サイクルまたはライフサイクルの少なくとも一時期、宿主細胞内に存在し、そしてそこで病原体タンパク質を産生するか、または産生を引き起こすウイルスもしくは病原性生物に関することを意味する。
【0022】
本明細書で用いる場合、用語「過剰増殖性疾患」は、細胞の過剰増殖によって特徴づけられる疾患および障害に関することを意味する。
【0023】
本明細書で用いる場合、用語「過剰増殖関連タンパク質」は、過剰増殖性疾患に関連するタンパク質に関することを意味する。
【0024】
本明細書で用いる場合、用語「免疫調節タンパク質」とは、免疫調節タンパク質が送達される個人の免疫機構を調節するタンパク質に関するものである。免疫調節タンパク質の例としては:IL−15、CD40L、TRAIL、TRAILrecDRC5、TRAIL−R2、TRAIL−R3、TRAIL−R4、RANK、RANK LIGAND、Ox40、Ox40 LIGAND、NKG2D、F461811またはMICA、MICB、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2E、NKG2F、CD30、CD153(CD30L)、Fos、c−jun、Sp−1、Ap1、Ap−2、p38、p65Rel、MyD88、IRAK、TRAF6、IκB、NIK、SAP K、SAP1、JNK2、JNK1B2、JNK1B1、JNK2B2、JNK2B1、JNK1A2、JNK2A1、JNK3A1、JNK3A2、NF−κ−B2、p49スプライス型、NF−κ−B2、p100スプライス型、NF−κ−B2、p105スプライス型、NF−κ−B 50K鎖前駆体、NFκB p50、ヒトIL−1α、ヒトIL−2、ヒトIL−4、マウスIL−4、ヒトIL−5、ヒトIL−10、ヒトIL−15、ヒトIL−18、ヒトTNF−α、ヒトTNF−β、ヒトインターロイキン12、MadCAM−1、NGF IL−7、VEGF、TNF−R、Fas、CD40L、IL−4、CSF、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、LFA−3、ICAM−3、ICAM−2、ICAM−1、PECAM、P150.95、Mac−1、LFA−1、CD34、RANTES、IL−8、MIP−1α、E−セレクトン(E−selecton)、CD2、MCP−1、L−セレクトン(L−selecton)、P−セレクトン(P−selecton)、FLT、Apo−1、Fas、TNFR−1、p55、WSL−1、DR3、TRAMP、Apo−3、AIR、LARD、NGRF、DR4(TRAIL)、DR5、KILLER、TRAIL−R2、TRICK2、DR6、ICE、VLA−1、およびCD86(B7.2)が挙げられる。
【0025】
(概観)
本発明は、天然の配列と比べて、改善されたタンパク質発現を与えるIL−15をコードする核酸配列を提供する。改善されたIL−15コード配列は、本明細書により参考として援用される2004年6月14日に出願された国際特許出願第PCT/US04/18962号、2003年6月13日に出願された米国仮特許出願第60/478,210号、および2003年6月13日に出願された米国仮特許出願第60/478,205号に明記された発見、特に、非IL−15シグナルペプチド(特にIgEシグナルペプチド)に連結したIL−15タンパク質コード配列を提供する発見、ならびにそのような構築物のワクチンにおける使用および免疫調節タンパク質としてのIL−15タンパク質の送達のための構築物におけるそのような構築物の使用の発見と組み合わせて用いられ得る。いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、ベクター、ワクチン、および免疫調節組成物、ならびに配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸分子またはIL−15の機能性のフラグメントをコードする核酸分子のフラグメントを含む方法を提供する。いくつかの好ましい実施形態において、そのような核酸分子は、IL−15シグナル配列のためのコード配列なしに提供され、そして、より好ましくは、IL−15コザック領域および非翻訳領域なしに提供される。いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、ベクター、ワクチン、および免疫調節組成物、ならびに配列番号1を含む核酸分子またはヒトIgEシグナル配列のためのコード配列に連結されたIL−15の機能性のフラグメントをコードする核酸分子のフラグメントを含む方法を提供する。
【0026】
IL−15をコードする天然の配列が、発現を改善するために改変された。初期の改善において、IL−15配列のためのコード配列のような要素および非翻訳領域が、発現を改善するために欠失させられた。これらの初期の改善は、配列番号1中に規定された成熟IL−15タンパク質の改善されたコード配列に組み入れられ得、そして連結して用いられ得る。好ましい実施形態において、配列番号1を含む核酸分子は、IL−15シグナルペプチドのためのコード配列がなく、そして好ましくはIgEシグナルタンパク質のような別のシグナルタンパク質がその場所に提供される。さらに、IL−15のコザック領域および非翻訳領域は、阻害要素を除くためにまた除去される。好ましくは構築物が含む唯一のIl−15配列は、IL−15シグナルペプチドのない成熟IL−15タンパク質のアミノ酸配列をコードするIL−15配列である。
【0027】
いくつかの実施形態によると、配列番号1によりコードされるIL−15タンパク質に連結された非IL−15シグナル配列を含む融合タンパク質をコードする核酸配列、またはIL−15の機能性のフラグメントをコードする核酸配列のフラグメントを含む単離された核酸分子を含む組成物が提供される。いくつかの好ましい実施形態において、その分子は、IL−15シグナル配列のためのコード配列を持たない。いくつかの好ましい実施形態において、その融合タンパク質は、ヒトにおいて非免疫原性である。
【0028】
いくつかの実施形態によって、配列番号1を含む核酸構築物、またはIL−15の機能性のフラグメントをコードする核酸構築物のフラグメントを含む組成物が提供され、そして上記の他の初期の改善はまた、同じ核酸分子もしくは異なる核酸分子上に、免疫原をコードする核酸配列を随意に含み得る。一般的に、後述される免疫原は、アレルゲン、病原体抗原、癌関連抗原、または自己免疫疾患に関連する細胞に連結された抗原を含む任意の免疫原タンパク質であり得る。好ましい実施形態において、免疫原は、病原体抗原であり、最も好ましくは、HIV、HSV、HCV、およびWNVからなる群より選択される病原体である。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、核酸構築物はプラスミドである。いくつかの好ましい実施形態において、その核酸分子は、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルス、レトロウイルス、RSV、VSV、ポックスウイルス、またはワクチンもしくは遺伝子治療ベクターとして有用な任意の他の受け入れ可能なウイルスベクター)中に組み込まれる。
【0030】
配列番号1を含む遺伝子構築物、またはIL−15の機能性のフラグメントをコードする遺伝子構築物のフラグメントが、本発明のある局面によって弱毒化された生きた病原体中に直接的に組み込まれ得る。ワクチンとして有用なそのような病原体の例を後で示す。好ましい実施形態において、ヒトIL−15が(好ましくはIL−15シグナル配列をもたない)、ヒトIgEシグナル配列に連結される。
【0031】
免疫原のコード配列を含む組成物は、ワクチンとして有用である。免疫原のためのコード配列を含まない組成物は免疫調節組成物として有用であり得る。いくつかの実施形態において、タンパク質免疫原がまた、IL−15の発現により増強される免疫反応のための標的として提供される。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態において、核酸構築物はプラスミドである。いくつかの好ましい実施形態において、その核酸分子は、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルス、レトロウイルス、またはワクチンもしくは遺伝子治療ベクターとして有用な任意の他の受け入れ可能なウイルスベクター)中に組み込まれる。
【0033】
配列番号1を含む遺伝子構築物、またはIL−15の機能性のフラグメントをコードする遺伝子構築物のフラグメントが、本発明のある局面によって弱毒化された生きた病原体中に直接的に組み込まれ得る。ワクチンとして有用なそのような病原体の例を後で示す。好ましい実施形態において、ヒトIL−15が(好ましくはIL−15シグナル配列をもたない)、ヒトIgEシグナル配列に連結される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によると、本発明の組成物は、免疫原および/または免疫原のタンパク質のためのコード配列を含む遺伝子構築物を含有する。そのような組成物は、個体の免疫機構の活性を調節するために、それにより、免疫原に対する免疫反応を増強するために個体に送達される。免疫調節タンパク質をコードする核酸分子が個体の細胞中に取り込まれた場合、免疫調節タンパク質をコードするヌクレオチド配列がその細胞中で発現され、そしてそのタンパク質が、その結果、個体に送達される。本発明の局面は、組み換えワクチンの一部として、および弱毒化ワクチンの一部として、一つまたはそれより多い多様な転写因子または中間の因子をコードする異なる核酸分子を含む組成物中において、一つの核酸分子上のそのタンパク質のコード配列を送達する方法を提供する。
【0035】
本発明のいくつかの局面によって、病原体または異常な疾患関連細胞に対して、個体を予防的および/または治療的に免疫化する組成物ならびに方法が、提供される。そのワクチンは、任意の型のワクチン(例えば、弱毒化生ワクチン、細胞ワクチン、組み換えワクチン、または核酸もしくはDNAワクチン)であり得る。
【0036】
本発明は、免疫調節タンパク質を送達するための組成物およびそれを用いる方法に関する。
【0037】
その核酸分子は、DNA注入(DNAワクチン接種としても言及される)、組み換えベクター(例えば、組み換えアデノウイルス、組み換えアデノ関連ウイルス、および組み換えワクシニア)を含むいくつかの周知の技術のいずれかを用いて、送達され得る。
【0038】
DNAワクチンは、米国特許第5,593,972号明細書、同第5,739,118号明細書、同第5,817,637号明細書、同第5,830,876号明細書、同第5,962,428号明細書、同第5,981,505号明細書、同第5,580,859号明細書、同第5,703,055号明細書、同第5,676,594号明細書、およびそれらの中に引用された優先出願に記載されており、それぞれが本明細書で参考として引用される。それらの出願中に記載された送達プロトコルに加えて、DNAを送達する他の方法が、米国特許第4,945,050号および同第5,036,006号に記載され、それらは両方が本明細書で参考として引用される。
【0039】
投与の経路としては、筋肉内、鼻内、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、動脈内、眼内(intraoccularly)および口腔に、局所的ならびに、経皮的に、または吸入もしくは坐薬により、または粘膜組織(例えば膣、直腸、尿道、頬、および舌下の組織)へ洗浄によりなされるが、それらに限定されない。好ましい投与の経路としては、粘膜組織への投与、筋肉内、腹腔内、皮内、および動脈内注射が挙げられる。遺伝子構築物は、従来の注射器、針無し注入装置、または「微粒子衝撃遺伝子銃」(microprojectile bombardment gene gun)を含む方法により(それらに限定はされない)投与され得る。
【0040】
細胞に取り込まれた場合、その遺伝子構築物は、機能する染色体外分子として細胞中に残存し得るか、および/またはその細胞の染色体DNA中に組み込まれ得る。DNAは、細胞中に導入され得、そこでDNAはプラスミドの形態をした分離した遺伝子物質として、あるいはプラスミドとして残存する。あるいは、染色体中に融合し得る線状DNAが、細胞中に導入され得る。細胞中にDNAを導入する場合、染色体へのDNAの組み込みを促進する試薬が加えられ得る。組み込みを促進するのに有用なDNA配列がまた、そのDNA分子に含まれ得る。あるいは、RNAが、細胞に投与され得る。セントロメア、テロメアおよび複製開始点を含む線状ミニ染色体として、遺伝子構築物を提供することがまた意図される。遺伝子構築物は、弱毒化された生きた微生物体中における遺伝物質の一部に、または細胞中で生存する組み換え微生物ベクター中に、残存し得る。遺伝子構築物は、遺伝子物質が細胞の染色体中に組み込まれるか、または染色体外に残存するかのいずれかである、組み換えウイルスワクチンのゲノムの一部であり得る。遺伝子構築物は、核酸分子の遺伝子発現のために必要な調節要素を含有する。その要素としては:プロモーター、開始コドン、終止コドン、およびポリアデニル化シグナルが挙げられる。加えて、標的タンパク質または免疫調節タンパク質をコードする配列の遺伝子発現のためには、エンハンサーが、しばしば必要とされる。これらの要素が、望ましいタンパク質をコードする配列に作動可能に連結され、そして、それらが投与される個体において、その調節要素が操作可能であることが必要である。
【0041】
開始コドンおよび終止コドンは、望ましいタンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部分となるように、一般的に考慮される。しかしながら、これらの要素は、その遺伝子構築物が投与される個体中で、機能性であることが必要である。開始コドンおよび終止コドンは、コード配列とフレームが合致しなければならない。
【0042】
用いられるプロモーターおよびポリアデニル化シグナルは、個体の細胞中で機能できなければならない。
【0043】
本発明の実施(特にヒトのための遺伝子ワクチンの生産)に有用なプロモーターの例としては、シミアンウイルス40(SV40)由来プロモーター、マウス乳腺癌ウイルス(MMTV)プロモーター、BIV末端反復配列(LTR)プロモーターのようなヒト免疫不全ウイルス(MV)由来プロモーター、モロニーウイルス由来プロモーター、ALV由来プロモーター、CMV最初期プロモーターのようなサイトメガロウイルス(CMV)由来プロモーター、エプスタイン−バーウイルス(EBV)由来プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)由来プロモーター、ならびにヒト遺伝子(例えば、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチン、およびヒトメタロチオネイン(metalothionein))由来プロモーターが挙げられるが、それらに限定されない。
【0044】
本発明の実施(特にヒトのための遺伝子ワクチンの生産)に有用なポリアデニル化シグナルの例としては、SV40ポリアデニル化シグナルおよびLTRポリアデニル化シグナルが挙げられるが、それらに限定されない。特に、SV40ポリアデニル化シグナルに関しては、pCEP4プラスミド(Invitrogen、San Diego CA)中のSV40ポリアデニル化シグナルが用いられる。
【0045】
DNA発現のために必要な調節要素に加えて、他の要素がまた、DNA分子中に含まれ得る。そのような付加的な要素は、エンハンサーを含む。エンハンサーは:ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチンのエンハンサー、ならびにウイルスのエンハンサー(例えば、CMV、RSV、およびEBV由来のエンハンサー)からなる群より選択され得るが、それらに限定されない。
【0046】
遺伝子構築物は、細胞内で、その構築物を染色体外で維持し、そしてその構築物の多数のコピーを産生するために、哺乳動物の複製起点をともなって、提供され得る。Invitrogen(San Diego、CA)から得たpVAX1プラスミド、pCEP4プラスミド、およびpREP4プラスミドは、エプスタイン−バーウイルスの複製起点、および、融合なしに高コピーのエピソーム複製を生じる、EBNA−1核抗原コード領域を含有する。
【0047】
免疫化の適用に関する、いくつかの好ましい実施形態において、標的タンパク質、免疫調節タンパク質および、加えて、そのような標的タンパク質に対する免疫反応をさらに増強するタンパク質のための遺伝子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子が送達される。そのような遺伝子の例としては、他のサイトカインおよびリンフォカイン(例えば、α−インターフェロン、γ−インターフェロン、血小板由来増殖因子(PDGF)、TNF、GM−CSF、上皮増殖因子(EGF)、IL−1、IL−2、Il−4、IL−6、IL−10、IL−12、ならびに、そのシグナル配列の欠失および任意にIgE由来のシグナル配列をもつIL−15を含むIL−15)をコードする遺伝子が挙げられる。
【0048】
遺伝子構築物を受け取った細胞を、なんらかの理由で除去することが望ましい場合、細胞破壊のための標的として役に立つ付加的な要素が加えられ得る。発現可能な形態でのヘルペスチミジンキナーゼ(tk)遺伝子が、その遺伝子構築物に含まれ得る。薬物のガングシクロビル(gangcyclovir)が、個体に投与され得、そしてその薬が、tkを産生するあらゆる細胞を選択的に殺し、したがって、その遺伝子構築物を持つ細胞の選択的な破壊の手段を提供する。
【0049】
タンパク質産生を最大にするために、その構築物が投与される細胞における遺伝子発現によく適合した調節配列が選択され得る。さらに、細胞中で最も効果的に転写されるコドンが選択され得る。当業者は、細胞中で機能するDNA構築物を作ることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、遺伝子構築物が、IgEシグナルペプチドに連結された本明細書に記載の免疫調節タンパク質のコード配列を作るために提供され得る。
【0051】
本発明の一つの方法は、筋肉内、鼻内、腹腔内、皮下、皮内に、または局所的にもしくは洗浄により、吸入、膣、直腸、尿道、頬、および舌下からなる群より選択される粘膜組織へ、核酸分子を投与する工程を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、核酸分子は、エンハンサーとして機能するポリヌクレオチドまたは遺伝子ワクチン促進剤の投与と共に細胞に送達される。エンハンサーとして機能するポリヌクレオチドは、それぞれが本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,593,972号明細書、同第5,962,428号明細書、および1994年1月26日に出願された国際特許出願第PCT/US94/00899号に記載される。遺伝子ワクチン促進剤は、本明細書中に参考として援用される、1994年4月1日に出願された米国特許第021,579号明細書に記載される。核酸分子とともに投与される補因子は、その核酸分子との混合物として投与され得るか、または別々に、核酸分子の投与と同時、投与前もしくは投与後に、投与され得る。加えて、トランスフェクション因子および/または複製因子および/または炎症因子として機能し得、そしてGVFと共に投与され得る他の因子としては、増殖因子、サイトカインおよびリンフォカイン(例えば、α−インターフェロン、γ−インターフェロン、GM−CSF、血小板由来増殖因子(PDGF)、TNF、上皮増殖因子(EGF)、ILA、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12、およびIL−15、ならびに線維芽細胞成長因子)、免疫賦活複合体(ISCOM)のような界面活性剤、フロイント不完全アジュバント、モノホスホリルリピドA(WL)を含むLPS類似体、ムラミルペプチド、キノン類似体およびスクアレンのような小胞およびスクアレン、ならびにヒアルロン酸が挙げられ、それらはまた、その遺伝子構築物と共に投与され用いられ得る。いくつかの実施形態において、免疫調節タンパク質が、GVFとして用いられ得る。いくつかの実施形態において、核酸分子は、送達/取り込みを増強するためにPLGと関連して提供される。
【0053】
本発明による薬学的組成物は、約1ng〜約2000μgのDNAを含む。いくつかの好ましい実施形態において、本発明による薬学的組成物は、約5ng〜約1000μgのDNAを含む。いくつかの好ましい実施形態において、その薬学的組成物は、約10ng〜約800μgのDNAを含む。いくつかの好ましい実施形態において、その薬学的組成物は、約0.1μg〜約500μgのDNAを含む。いくつかの好ましい実施形態において、その薬学的組成物は、約1μg〜約350μgのDNAを含む。いくつかの好ましい実施形態において、その薬学的組成物は、約25μg〜約250μgのDNAを含む。いくつかの好ましい実施形態において、その薬学的組成物は、約100μg〜約200μgのDNAを含む。
【0054】
本発明による薬学的組成物は、用いられる投与の様式に従って処方される。薬学的処方物が、注射可能な薬学的処方物である場合、薬学的処方物は滅菌され、発熱物質を含まず、そして微粒子を含まない。等浸透圧性の処方物が好んで用いられる。一般的に、等浸透圧のための添加剤は、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、および乳糖を含み得る。いくつかの事例では、リン酸緩衝食塩水のような等浸透圧性の溶液が好ましい。安定剤としては、ゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。いくつかの実施形態において、血管収縮剤が、その処方物に加えられる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態に従って、免疫原に対する免疫反応を誘導する方法が、本発明の組成物を個体に送達することによって提供される。ワクチンは、生弱毒化ワクチン、細胞ワクチン、組み換えワクチンまたは核酸ワクチンもしくはDNAワクチンであり得る。
【0056】
遺伝子ワクチンを改善するために免疫調節タンパク質コード配列の発現可能な形態を用いることに加えて、本発明は、改善された弱毒化生ワクチン、および抗原をコードする外来遺伝子を送達する組み換えベクターを用いる改善されたワクチンに関する。弱毒化生ワクチンおよび外来抗原を送達する組み換えベクターを用いるワクチンの例は、米国特許第4,722,848号明細書;同第5,017,487号明細書;同第5,077,044号明細書;同第5,110,587号明細書;同第5,112,749号明細書;同第5,174,993号明細書;同第5,223,424号明細書;同第105,225,336号明細書;同第5,240,703号明細書;同第5,242,829号明細書;同第5,294,441号明細書;同第5,294,548号明細書;同第5,310,668号明細書;同第5,387,744号明細書;同第5,389,368号明細書;同第5,424,065号明細書;同第5,451,499号明細書;同第5,453,364号明細書;同第5,462,734号明細書;同第5,470,734号明細書;および同第5,482,713号明細書に記載され、それぞれが本明細書中に参考として援用される。免疫調節タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物が提供され、ワクチンにおいて、免疫調節タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、発現をもたらすように機能し得る調節配列に作動可能に連結された。本発明による改善されたワクチンを作るために、遺伝子構築物は、弱毒化生ワクチンおよび組み換えワクチン中に組み込まれる。
【0057】
本発明は、個体を免疫化する改善された方法を提供し、その方法は、DNAワクチン、弱毒化生ワクチン、および組み換えワクチンを含む提供されたワクチン組成物の部分として個体の細胞に遺伝子構築物を送達する工程を含む。その遺伝子構築物は、免疫調節タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、そしてその配列は、ワクチンにおいて、発現をもたらすように機能し得る調節配列に作動可能に連結される。改善されたワクチンは、増強された細胞性免疫反応を生じる。
【0058】
本発明は、標的タンパク質(すなわち、病原体、アレルゲン、または個体自身の「異常」細胞と特異的に関連しているタンパク質)に対する増強された免疫反応を誘発するうえで有用である。本発明は、病原体および病原性生物に対して個体を免疫化するうえで有用であり、そのため病原体タンパク質に対する免疫反応が、病原体に対する防御免疫を提供する。本発明は、過剰増殖性細胞と特異的に関連する標的タンパク質に対する免疫反応を誘発することにより、癌のような過剰増殖疾患および障害と戦ううえで有用である。本発明は、自己免疫状態に関与する細胞と特異的に関連する標的タンパク質に対する免疫反応を誘発することにより、自己免疫疾患および障害と戦ううえで有用である。
【0059】
本発明のいくつかの局面によって、標的タンパク質および免疫調節タンパク質をコードするDNAまたはRNAが、発現される個体の組織の細胞に導入され、したがって、コードされたタンパク質を産生する。標的タンパク質、および一つまたは両方の免疫調節タンパク質をコードするDNA配列またはRNA配列が、個体の細胞中での発現に必要な調節要素に連結される。DNA発現のための調節要素は、プロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含有する。加えて、コザック領域のような、他の要素が、その遺伝子構築物中にまた含まれ得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、標的タンパク質をコードする配列の発現可能な形態、および両方の免疫調節タンパク質をコードする配列の発現可能な形態が、個体に送達される同じ核酸分子上に見いだされる。
【0061】
いくつかの実施形態において、標的タンパク質をコードする配列の発現可能な形態は、一つまたはそれより多い免疫調節タンパク質をコードする配列の発現可能な形態を含む核酸分子とは別々の核酸分子上に存在する。いくつかの実施形態において、標的タンパク質をコードする配列の発現可能な形態、および一つまたはそれより多い免疫調節タンパク質をコードする配列の発現可能な形態は、一つまたはそれより多い免疫調節タンパク質をコードする配列の発現可能な形態を含む核酸分子とは別々の一つの核酸分子上に存在する。複数の異なる核酸分子が、本発明に従って、作られ得、そして送達され得、そして個体に送達される。例えば、いくつかの実施形態において、標的タンパク質をコードする配列の発現可能な形態は、一つまたはそれより多い免疫調節タンパク質をコードする配列の発現可能な形態を含む核酸分子とは別々の核酸分子上に存在する、二つの免疫調節タンパク質の一つ以上をコードする配列の発現可能な形態を含む核酸分子とは別々の核酸分子上に存在する。そのような場合、全ての三つの分子が、個体に送達される。
【0062】
核酸分子は、組み換えベクターの核酸分子であるプラスミドDNAとして、または弱毒化ワクチンもしくは細胞ワクチン中で提供される遺伝子物質の一部として提供され得る。あるいは、いくつかの実施形態において、標的タンパク質および/または免疫調節タンパク質のどちらか、または両方が、それらをコードする核酸分子に加えて、またはそれらをコードする核酸分子のかわりに、タンパク質として場合によっては送達される。
【0063】
遺伝子構築物は、標的タンパク質、または遺伝子発現に必要な調節要素に作動可能に連結された免疫調節タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み得る。本発明によって、標的タンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現可能な形態を含む遺伝子構築物、および免疫調節タンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現可能な形態を含む遺伝子構築物を含む遺伝子構築物の組み合わせが提供される。遺伝子構築物の組み合わせを含む、DNA分子またはRNA分子の生細胞への組み込みが、そのDNAまたはRNAの発現ならびに標的タンパク質および一つまたはそれより多い免疫調節タンパク質の産生をもたらす。標的タンパク質に対する増強された免疫反応を結果として生じる。
【0064】
本発明は、全ての病原体(例えば、ウイルス、原核生物、および病原性真核生物(例えば、単細胞病原性生物および多細胞寄生生物))に対して、個体を免疫するために用いられ得る。本発明は、細胞に感染する病原体、被包性でない病原体(例えば、ウイルス)、および原核生物(例えば、淋菌、リステリア菌、および赤痢菌)に対して、個体を免疫するために特に有用である。加えて、本発明はまた、原生動物病原体(それらが細胞内病原体である、ライフサイクルにおけるステージを含む)に対して、個体を免疫するために有用である。表1は、本発明によってワクチンが作られ得るウイルスの科および属のいくつかのリストを提供する。表に記載される抗原のような病原体抗原上に提示されるエピトープに同一または実質的に同様である少なくとも一つのエピトープを含むペプチドをコードするDNA配列を含むDNA構築物は、ワクチンにおいて有用である。さらに、本発明はまた、表2に列挙されるような、原核生物および真核生物である原生動物病原体、ならびに多細胞寄生生物を含む他の病原体に対して、個体を免疫するために有用である。
【0065】
病原体感染を防ぐ遺伝子ワクチンを作るため、防御免疫反応が起こされ得る免疫原タンパク質をコードする遺伝子物質が、標的のためのコード配列として、遺伝子構築物中に含有されねばならない。病原体が細胞内に感染する場合(本発明が特に有用である)、または細胞外に感染する場合のいずれにおいても、全ての病原体抗原が防御反応を誘発することは起こりそうにない。DNAおよびRNAは、両方とも比較的小さく、そして比較的容易に作られ得るため、本発明は、多数の病原体抗原でワクチンを接種することを可能にする付加的な利点を提供する。遺伝子ワクチンにおいて用いられる遺伝子構築物は、多くの病原体抗原をコードする遺伝子物質を含み得る。例えば、いくつかのウイルス遺伝子が、一つの構築物中に含まれ得、それにより、複数の標的を提供する。
【0066】
表1および表2は、いくつかの病原体および病原性生物のリストを含み、それらによる感染から個体を防御するために遺伝子ワクチンが調製され得る。いくつかの好ましい実施形態において、病原体に対して個体を免疫する方法は、HIV、HSV、HCV、WNV、またはHBVに対して向くものである。
【0067】
本発明の別の局面が、過剰増殖性の疾患に特徴的な過剰増殖細胞に対する防御免疫反応を付与する方法、および過剰増殖性疾患に罹患している個体を処置する方法を提供する。過剰増殖性疾患の例としては、全ての形態の癌および乾癬が挙げられる。
【0068】
免疫原である「過剰増殖細胞」関連タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物の、個体の細胞中への導入が、個体のワクチン接種された細胞でのこれらのタンパク質の産生をもたらすことが発見された。過剰増殖性疾患に対して免疫化するため、過剰増殖性疾患に関連するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物が、個体に投与される。
【0069】
過剰増殖関連タンパク質が有効な免疫原性標的であるためには、正常細胞と比較した場合、それが、過剰増殖細胞中で、排他的に、または高いレベルで産生されるタンパク質でなければならない。標的抗原はそのようなタンパク質、タンパク質のフラグメント、およびペプチドを含み、それらは、そのようなタンパク質上に見い出される少なくとも一つのエピトープを含む。いくつかの事例において、過剰増殖関連タンパク質は、タンパク質をコードする遺伝子の変異の産物である。その変異した遺伝子は、正常なタンパク質では見られない異なるエピトープを生じる、わずかに異なるアミノ酸配列を持つこと以外は、正常なタンパク質とほとんど同一であるタンパク質をコードする。そのような標的タンパク質としては、癌遺伝子(例えば、myb、myc、fyn、および転座遺伝子でもあるbcr/abl、ras、src、P53、neu、trk、ならびにEGRF)によりコードされるタンパク質が挙げられる。標的抗原としての癌遺伝子産物に加えて、抗癌処置および保護的なレジメンのための標的タンパク質としては、B細胞リンパ腫により作られる抗体の可変領域およびT細胞リンパ腫のT細胞レセプターの可変領域が挙げられ、それらはいくつかの実施形態において、自己免疫疾患のための標的抗原としてもまた用いられる。他の腫瘍関連タンパク質がまた、標的タンパク質として用いられ得るが、それらは腫瘍細胞において高レベルで見い出されるタンパク質であり、モノクローナル抗体17−IAにより認識されるタンパク質および葉酸塩結合タンパクまたはPSAを含む。
【0070】
本発明は、一つまたはそれより多いいくつかの形態の癌に対して、個体を免疫化するために用いられ得るが、本発明は特に、特定の癌を発症しやすいか、または過去に癌があって、したがって再発しやすい個体を予防的に免疫化するために有用である。遺伝学および技術ならびに疫学における発展が、個体における癌の発症の見込みの決定およびリスクアセスメントを可能にする。遺伝子スクリーニングおよび/または家族の健康暦を用いて、特定の個体が、いくつかの型の癌のいずれか一つを発症する見込みを予測することが可能である。
【0071】
同様に、既に癌を発症した個体、および癌を除くために処置を受けたか、またはさもなければ寛解期の個体は、再発および再発生(reoccurrence)を特に受けやすい。処置レジメンの一部として、そのような個体は、再発と戦うために、その個体が有したと診断された癌に対して免疫化され得る。従って、個体が、ある型の癌を持ち、再発のリスクがあると一度知れると、個体は、癌の将来のいずれの出現とも戦う免疫機構を準備するために免疫化され得る。
【0072】
本発明は、過剰増殖性疾患を罹患した個体を処置する方法を提供する。そのような方法において、遺伝子構築物の導入は、標的タンパク質を産生する過剰増殖細胞と戦う個体の免疫機構を誘導し促進する免疫療法として役に立つ。
【0073】
本発明は、自己免疫に関連する標的(細胞レセプター、および「自己」指向抗体を産生する細胞を含む)に対する広域的な防御免疫反応を与えることにより、自己免疫疾患および自己免疫障害に罹患した個体を処置する方法を提供する。
【0074】
T細胞媒介自己免疫疾患としては、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性真性糖尿病(1DDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、脈管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、クローン病、および潰瘍性大腸炎が挙げられる。これらの疾患のそれぞれは、内在性抗原に結合し、そして自己免疫疾患に関連する炎症カスケードを開始するT細胞レセプターによって特徴づけられる。T細胞の多様な領域に対するワクチンの接種は、それらのT細胞を除去するCTLを含む免疫反応を誘発する。
【0075】
RAでは、その疾患に関わる、T細胞レセプター(TCR)のいくつかの特異的な可変領域が特徴づけられている。これらのTCRとしては、Vβ−3、Vβ−14、20 Vβ−17、およびVα−17が挙げられる。したがって、これらのタンパク質の少なくとも一つをコードするDNA構築物をもちいたワクチン接種が、RAに関連するT細胞を標的とする免疫反応を誘発する。参照:Howell,M.D.,et al.,1991
Proc.Nat.Acad.Sci.USA 88:10921−10925;Piliard,X.,et al,1991 Science 253:325−329;Williams,W.V.,et al.,1992 J Clin.Invest.90:326−333;そのそれぞれが、本明細書中に参考として援用される。MSでは、その疾患に関わる、TCRのいくつかの特異的な可変領域が特徴づけられている。これらのTCRは、VfPおよびVa−10を含む。従って、これらのタンパク質の少なくとも一つをコードするDNA構築物を用いるワクチン接種は、MSに関連するT細胞を標的とする免疫反応を誘発する。参照:Wucherpfennig,K.W.,et al.,1990 Science 248:1016−1019;Oksenberg,J.R.,et al,1990 Nature 345:344−346;そのそれぞれが、本明細書中に参考として援用される。
【0076】
強皮症では、その疾患に関わる、TCRのいくつかの特異的な可変領域が特徴づけられている。これらのTCRは、Vβ−6、Vβ−8、Vβ−14およびVα−16、Vα−3C、Vα−7、Vα−14、Vα−15、Vα−16、Vα−28およびVα−12を含む。従って、これらのタンパク質の少なくとも一つをコードするDNA構築物を用いるワクチン接種は、強皮症に関連するT細胞を標的とする免疫反応を誘発する。
【0077】
特にTCRの可変領域がまだ特徴づけられていない、T細胞媒介自己免疫疾患に罹患している患者を処置するため、滑液の生検が実行され得る。存在するT細胞のサンプルが、採取され得、そしてそれらのTCRの可変領域が、標準的な技術を用いて同定され得る。遺伝子ワクチンは、この情報を用いて調製され得る。
【0078】
B細胞媒介自己免疫疾患としては、狼瘡(SLE)、グレーブズ病、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、ぜん息、クリオグロブリン血症、原発性胆汁性硬化症、および悪性貧血が挙げられる。これらの疾患のそれぞれは、内在性抗原に結合し、そして自己免疫疾患に関連する炎症カスケードを開始する抗体によって特徴づけられる。抗体の可変領域に対するワクチンの接種が、その抗体を産生するB細胞を除去するCTLを含む免疫反応を誘発する。
【0079】
B細胞媒介自己免疫疾患に罹患している患者を処置するため、自己免疫活性に関与する抗体の可変領域が同定されねばならない。生検が実行され得、そして、炎症部位に存在する抗体のサンプルが、採取され得る。それらの抗体の可変領域が、標準的な技術を用いて同定され得る。遺伝子ワクチンは、この情報を用いて調製され得る。
【0080】
SLEの事例では、一つの抗原はDNAであると考えられている。従って、SLEに対して免疫される患者においては、患者の血清が抗DNA抗体についてスクリーニングされ得、そして、その血清中に見い出される、そのような抗DNA抗体の可変領域をコードするDNA構築物を含むワクチンが、調製され得る。
【0081】
TCRおよび抗体の両方の可変領域の中の、共通の構造的な特徴は周知である。特定のTCRまたは抗体をコードするDNA配列は、周知の方法(例えば、本明細書中に参考として援用されるKabat,et al 1987 Sequence of Proteins of Immunological Interest U.S. Department of Health and Human Services,Bethesda MDに記載された方法)に従って一般的に見い出され得る。加えて、抗体から機能性の可変領域をクローニングする一般的な方法が、本明細書中に参考として援用されるChaudhary,V.K.,et al,1990 Proc.Natl.Acad Sci.USA 87:1066において見い出され得る。
【0082】
【表1−1】

【0083】
【表1−2】

【0084】
【表1−3】

【0085】
【表1−4】

【0086】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【公開番号】特開2013−51972(P2013−51972A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−272266(P2012−272266)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2008−550435(P2008−550435)の分割
【原出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(504074710)ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア (20)
【Fターム(参考)】