説明

コネクタ、コネクタハウジング、およびコネクタの製造方法

【課題】ツイストペアケーブル4,104の先端をコネクタハウジング10,110に容易に固定することができ、かつ通信品質の低下を防止できるコネクタ1,101、コネクタハウジング10,110、およびコネクタ1,101の製造方法を提案し、製造効率と品質を向上させる。
【解決手段】圧着端子6を有する被覆電線7が複数本ツイストされたツイストペアケーブル4,104と、前記圧着端子6が取り付けられたコネクタハウジング10,110とを備えたコネクタ1,101であって、前記コネクタハウジング10,110は、前記圧着端子6を取り付ける装着突起35が複数設けられたハウジング台3,103を備え、該装着突起35は、前記ハウジング台3,103へ向かって前記圧着端子6を厚み方向に取付許容する構成であるコネクタ1,101であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばツイスト電線が接続されて利用されるようなコネクタ、コネクタハウジング、およびコネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の被覆電線の先端部がコネクタハウジングに並べて収納されたコネクタが提供されている。このコネクタに用いる被覆電線として、近年、ツイスト電線を用いるものが提案されている。このツイスト電線は、2本の被覆電線を撚り合わせ(ツイスト)したものである。ツイストにより、各被覆電線から発生する磁界の向きが逆向きになるため、各被覆電線は、互いに発生磁界を打ち消すことができる。これにより、ツイスト電線は、電磁誘導の影響を少なくすることができ、漏話や外部ノイズも減少させることができる。
【0003】
ここで、コネクタハウジングには、複数の被覆電線の先端部が挿入されて固定される。ツイスト電線の場合、ツイストされた複数の被覆電線の先端部の端子の位置および方向を合わせることが作業上困難であるため、先端部の端子を同時に挿入して固定することは難しい。このため、先端部分のある程度を撚り戻し、その上で端子を一本ずつ挿入する作業が必要となる。そうすると、撚り戻した部分で発生磁界を打ち消す効果が得られないか減少することになり、通信品質が低下することになる。
【0004】
これを防止するものとして、ツイスト電線の撚り戻し部に電線保持部材を取り付ける端末処理構造が提案されている(特許文献1参照)。この構造は、撚り戻し部に電線保持部材を取り付けることで、撚り戻し部分の各被覆電線を近接させて導体間距離を調整するものである。これにより、インピーダンスを整合させることができるとされている。
【0005】
しかし、この構造によると、ツイスト電線の各被覆電線の太さに応じて複数種類の電線保持部材を用意しなければならないという問題点がある。また、撚り戻し部分の導体間距離を電線保持部材の取付によって調整するものであるから、この電線保持部材の取付作業に手間がかかるという問題点もある。また、電線保持部材を取り付ける部分は、コネクタハウジングから被覆電線が出てきている部分になるため、作業しづらいという問題点がある。特に複数の被覆電線をコネクタハウジングに取り付ける場合に、電線保持部材を取り付ける必要のない隣の被覆電線が電線保持部材の取付作業の邪魔になるという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−71404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述の問題点に鑑み、ツイスト電線の先端をコネクタハウジングに容易に固定することができ、かつ通信品質の低下を防止できるコネクタ、コネクタハウジング、およびコネクタの製造方法を提案し、製造効率と品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、接続端子を有する被覆電線が複数本ツイストされたツイスト電線と、前記接続端子が取り付けられたコネクタハウジングとを備えたコネクタであって、前記コネクタハウジングは、前記接続端子を取り付ける取付部が複数設けられた配置台部を備え、該取付部は、前記配置台部へ向かって前記接続端子を厚み方向に取付許容する構成であるコネクタであることを特徴とする。
【0009】
前記接続端子は、圧着により被覆電線に取り付ける圧着端子、あるいは溶接により被覆電線に取り付ける端子など、適宜の端子により構成することができる。またこの接続端子は、雌型接続端子とする、あるいは雄型接続端子とするなど、被覆電線に取り付ける適宜の端子で構成することができる。
【0010】
前記取付部と前記取付台は、別体によって形成されて合体する構成とする、あるいは一体に構成されるなど、適宜の構成とすることができる。
【0011】
この発明により、ツイスト電線の先端となる接続端子をコネクタハウジングに容易に固定することができ、かつ通信品質の低下を防止することができる。すなわち、接続端子を厚み方向に取り付けることができるため、従来のように長手方向に挿入する場合であれば撚り戻しが必要であったところを、撚り戻しを必要とせずに取り付けることができる。
【0012】
この発明の態様として、前記配置台部は、前記複数の取付部が横並びに配置されている構成とすることができる。
これにより、ツイスト電線の接続端子を横並びの状態のままで厚み方向へ取り付けることができ、被覆電線の撚り戻し無く取り付けることを容易に実現できる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記配置台部に配置された取付部の先端側に、該取付部への前記接続端子の挿入を許容する開放部を備えることができる。
これにより、接続端子を厚み方向に取り付けて位置決めすることを容易に実現することができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記取付部は、前記接続端子を挟持する挟持部材で構成され、該挟持部材は、前記接続端子が収納されて外側へ変形すると内側へ復帰する方向に弾性力が働く弾性材により形成することができる。
【0015】
前記挟持部材は、コネクタハウジングと同一素材(例えば樹脂など)で一体に形成する、あるいは別体(例えば弾性金属など)で形成してコネクタハウジングに取り付けるなど、適宜の部材によって構成することができる。
【0016】
この態様により、接続端子を嵌め込み式でコネクタハウジングに取り付けることができ、作業の容易性と嵌め込み後の取り付けの安定性とを両立することができる。また、挟持部材が弾性を有するため、取り付け部位が様々な太さのツイスト電線をいずれも取り付けることができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記挟持部材は、前記接続端子を抜け止めする抜止部が設けられている構成とすることができる。
これにより、ツイスト電線の複数の接続端子を1つずつ挟持部材に取り付ける際に、次の接続端子の取り付け作業中に先に取り付けた接続端子が挟持部材から抜け出ることを防止でき、取り付け作業を容易にすることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記接続端子の長手方向の位置規制を行う長手方向位置規制部を備えることができる。
これにより、相手方の接続端子が接続される際に接続端子の位置が長手方向にずれることを防止できる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記コネクタハウジングは、前記配置台部と、該配置台部に取り付けられた前記接続端子を覆うカバー部とで別体により構成され、前記カバー部と前記配置台部とに、互いに係合して抜け止めするハウジング抜止部を設けることができる。
【0020】
これにより、配置台部にツイスト電線の接続端子を取り付けてから配置台部とカバー部とを接続することができるため、容易に作業することができる。また、接続した配置台部とカバー部とをハウジング抜止部により抜け止めして固定することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記コネクタハウジングは、前記接続端子を前記配置台部とで挟んで被覆するカバー部を備え、該カバー部を開閉可能に形成することができる。
これにより、配置台部にツイスト電線の接続端子を取り付けてから開閉するカバー部で被覆することができるため、容易に作業することができる。
【0022】
またこの発明は、ツイスト電線の被覆電線に設けられた接続端子が取り付けられるコネクタハウジングであって、前記接続端子を取り付ける取付部が複数設けられた配置台部を備え、該取付部は、前記配置台部へ向かって前記接続端子を厚み方向に取付許容する構成であるコネクタハウジングとすることができる。
【0023】
これにより、ツイスト電線を撚り戻さずとも容易に取り付けることができるコネクタハウジングを提供でき、性能の良いコネクタを容易に製造することができる。
【0024】
またこの発明は、接続端子を有する被覆電線を複数本ツイストされたツイスト電線をコネクタハウジングに取り付けてコネクタを製造するコネクタ製造方法であって、前記コネクタハウジングに設けられた配置台部の取付部に前記接続端子を厚み方向に取り付ける取付ステップと、該接続端子を前記コネクタハウジングのカバー部で被覆する被覆ステップとを有するコネクタ製造方法とすることができる。
【0025】
これにより、被覆電線を撚り戻すことなくツイスト電線をコネクタハウジングに容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明により、容易にツイスト電線の先端をコネクタハウジングに固定することができ、かつ通信品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】雌型の圧着端子を有するコネクタの外観を示す斜視図。
【図2】ハウジングカバーの外観を示す斜視図。
【図3】ハウジング台とツイストペアケーブルの外観を示す斜視図。
【図4】ツイストペアケーブルの外観を説明する説明図。
【図5】ツイストペアケーブルをハウジング台に取り付けた状態の斜視図。
【図6】取付時の構造を断面図により説明する説明図。
【図7】ツイストペアケーブル付きハウジング台とハウジングカバーの斜視図。
【図8】挿入途中のツイストペアケーブル付きハウジング台とハウジングカバーの斜視図。
【図9】コネクタの縦断面図。
【図10】実施例2のコネクタハウジングとツイストペアケーブルの斜視図。
【図11】実施例2のカバー部が開いている状態のコネクタの斜視図。
【図12】実施例2のコネクタの斜視図。
【図13】コネクタの構成を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、雌型の圧着端子を有するコネクタ1の外観を示す斜視図であり、図2はハウジングカバー2の外観を示す斜視図であり、図3はハウジング台3とツイストペアケーブル4の外観を示す斜視図であり、図4はツイストペアケーブル4の外観を説明する説明図である。
【0030】
図1に示すように、コネクタ1は、ハウジングカバー2と、ハウジング台3と、ツイストペアケーブル4とで主に構成されている。このうちのハウジングカバー2とハウジング台3とでコネクタハウジング10が構成されている。
【0031】
図2に示すように、ハウジングカバー2は、全体が内部中空の略四角柱形状に形成され、内部の収納空間17の一方(後方)が開放され、他方(前方)に複数の挿入穴13が設けられている。
【0032】
ハウジングカバー2の上面には、図示省略する雄型のコネクタ等に接続する際に挿入方向をガイドするガイドレール11と、挿入後に抜け止めする抜け止め突起12とを備えている。
【0033】
ハウジングカバー2の収納空間17には、下面の挿入穴13側に抜け止め突起21が設けられている。この抜け止め突起21は、収納空間17内側(図示上方)へ突出しており、収納空間17外側(図示下方)へ押圧されると退避し、素材の弾性力によって退避位置からもとの位置へ戻ろうとする復帰方向への付勢を行う。この抜け止め突起21は、挿入されたツイストペアケーブル4を抜け止めする。
【0034】
また、ハウジングカバー2の収納空間17には、下面の中央付近から開口18側へ向かって一直線のガイド溝25が設けられている。また、ハウジングカバー2の収納空間17には、開口18付近の幅方向両端に抜け止め凹部23が設けられている。この抜け止め凹部23は、挿入されたハウジング台3を抜け止めする。
ハウジングカバー2の開口18には、幅方向両側の壁部が凹状に切り欠かれた係合凹部15が設けられている。
【0035】
図3に示すように、ハウジング台3は、略板状の支持台部31の上面に複数の仕切り板32(32a,32b)が横並びに突設されて構成されている。
仕切り板32は、幅方向の両側が高さの高い外部仕切り板32aで形成され、それ以外の内側が少し高さの低い内部仕切り板32bで形成されている。
【0036】
これらの仕切り板32は、コネクタ1の接続方向(前後方向)に長い壁状に形成されており、幅方向に複数(この例では5つ)が等間隔に並行に並列配置されている。
【0037】
各仕切り板32の間には、ツイストペアケーブル4の先端部を収納する収納空間38が形成される。この収納空間38は、上面が開放されて上から下への圧着端子6の取り付けを許容する。そして、収納空間38の後方も開放されており、ツイストペアケーブル4の被覆電線7が収納空間38の外へ出るように構成されている。また、収納空間38の前方の下部には、位置決め端面33が設けられている。
【0038】
また、仕切り板32は、接続方向(前後方向)の中央付近で分断されている。これにより、該分断部付近に設けられた装着突起35が広がる方向(幅方向)へ変形しても支障のないようにしている。
【0039】
外部仕切り板32aは、一端に幅方向へ突出する係合突起34が設けられている。この係合突起34は、ハウジングカバー2の係合凹部15に係合し、ハウジング台3がそれ以上ハウジングカバー2内に入り込まないように係止する。
【0040】
また、外部仕切り板32aの係合突起34付近の底部は、支持台部31に接触しないようにスリット34aが設けられている。このスリット34aにより、外部仕切り板32aの係合突起34付近の下部に、弾性抜け止め片37が形成されている。
【0041】
弾性抜け止め片37は、接続方向先端部(前方先端部)が支持台部31に接続された略棒状の部位であり、下面に抜け止め突起37aが設けられている。この抜け止め突起37aは、下方へ凸であって、前方側が傾斜面で構成され、後方側が垂直面で構成されている。これにより、ハウジングカバー2へハウジング台3が挿入されていくときは、抜け止め突起37aがひっかかることなく弾性抜け止め片37が上方へ退避し、奥まで挿入されると素材の弾性力によって弾性抜け止め片37が下方へ復帰して、抜け止め突起37aがハウジングカバー2の抜け止め凹部23(図2参照)に係合する。
【0042】
装着突起35は、各収納空間38の接続方向(前後方向)の中央付近に左右対称に設けられている。またこの装着突起35は、前後方向に並ぶ仕切り板32の間の位置に設けられている。
【0043】
この装着突起35は、左右両方が上方へ突出し、その上端付近に内側へ突出する抜け止め突起36が設けられている。この装着突起35により、ツイストペアケーブル4の圧着端子6を挟持して抜け止めすることができる。
【0044】
ツイストペアケーブル4は、2つの端子付き被覆電線5によって構成されている。この端子付き被覆電線5は、被覆電線7の先端に圧着端子6が接続されて構成されている。そして、ツイストペアケーブル4は、この端子付き被覆電線5の被覆電線7が互い違いに螺旋状にツイストされて構成されている。
【0045】
図4(A)に示すように、端子付き被覆電線5の圧着端子6は、先端側の内部中空の円柱形状に形成されたボックス部51と、電線導体61を圧着するワイヤーバレル56と、絶縁被覆62を圧着するインシュレーションバレル58とで主に構成されている。この圧着端子6は、表面が錫メッキ(Snメッキ)された黄銅等の銅合金条に、打ち抜き加工及び折曲加工を施して立体構成したオープンバレル型端子である。
【0046】
ボックス部51の底面には、図4(B)に示すように係合孔53が設けられており、この係合孔53の両横に下方へ突出するスタビライザ54が左右対称に形成されている。このスタビライザ54は、下方へ突出する板状の突起であり、底辺が水平、前後に位置する両側辺(右辺および左辺)が垂直に形成されている。
【0047】
ボックス部51の底面の前方端には、挿入される雄型端子に接触する接触片52が設けられている。この接触片52は、図4(C)に示すように、板形状を曲げ加工して製造することができ、ボックス部51の底面の前方端から上後方へ湾曲し、そこから上後方へ上がってから下後方へ下がる山形に形成されている。この接触片52の山形の頂点52aは、ボックス部51の天井面に近接しており、山形の後端となる端部52bは、頂点52aより下方位置で係合孔53の上方に位置している。
【0048】
これにより、ボックス部51の先端に設けられた挿入口55から雄型端子が挿入されると、頂点52aに接触して下方へ押圧し、接触片52の山形部分全体が傾倒して端部52bが下方へ下がる。そして、接触片52の弾性力によって復帰する方向へ付勢するから、雄型端子に接触片52の頂点52aが接触し続け、良好に通電が行われる状態を維持する。
【0049】
ワイヤーバレル56とインシュレーションバレル58は、ボックス部51の底部が基部側(被覆電線7側)に伸びた板状部を曲げ加工して形成される。
ワイヤーバレル56は、まず断面U字型に形成され、そのU字形状内側に電線導体61を収納した状態で両上端を内側下方へ曲げ加工してM字型に形成されることで、電線導体61をしっかりと圧着し通電する。
【0050】
インシュレーションバレル58は、まず断面U字型に形成され、そのU字形状内側に絶縁被覆62を収納した状態で両上端を内側下方へ曲げ加工してM字型に形成されることで、絶縁被覆62をしっかりと圧着する。
【0051】
被覆電線7は、銅素線を束ねた銅芯線である電線導体61と、この電線導体61を絶縁樹脂で被覆する絶縁被覆62とで構成されている。
【0052】
このようにワイヤーバレル56で被覆電線7の先端部7aの電線導体61を固定して通電し、かつインシュレーションバレル58で先端部7aの絶縁被覆62を固定することで、被覆電線7の先端部7aに圧着端子6がしっかり圧着される。
【0053】
次に、これらのハウジングカバー2、ハウジング台3、およびツイストペアケーブル4を用いてコネクタ1を製造する方法について説明する。
図5は、ツイストペアケーブル4をハウジング台3に取り付けた状態の斜視図を示し、図6は、取付時の構造を断面図により説明する説明図を示し、図7は、このツイストペアケーブル4付きハウジング台3をハウジングカバー2に挿入する前の斜視図を示し、図8は挿入途中を底面側から見た斜視図を示し、図9は完成したコネクタ1の縦断面図を示す。
【0054】
図5に示すように、まず、隣り合う2つの収納空間38(図3参照)にツイストペアケーブル4の各圧着端子6がそれぞれ収納されて装着突起35に取り付ける取付ステップを実行する。圧着端子6を取り付ける際、ハウジング台3の収納空間38に対して、圧着端子6に雄型端子が挿入される方向(圧着端子6の長手方向)と垂直な方向である上下方向(取付方向)に取り付ける。従って、ツイストペアケーブル4の被覆電線7を撚り戻さずとも2つの圧着端子6をハウジング台3に取り付けることができる。
【0055】
詳述すると、図6(A)に示すように、対向配置された装着突起35の間には収納空間38が形成されていると共に、この収納空間38の上部に開放部38aが設けられている。この開放部38aから矢印に示すように圧着端子6が下方へ押し込まれると、図6(B)に示すように装着突起35が広がる方向へ一次的に変形する。そこからさらに奥まで圧着端子6が押し込まれると、図6(C)に示すように装着突起35が自身の弾性力によって復帰して、抜け止め突起36により圧着端子6のワイヤーバレル56を抜け止めする。
【0056】
この取付の際、2つの圧着端子6を同時に各収納空間38の装着突起35に取り付けても良いが、圧着端子6の位置方向を2極合わせることが作業上困難であれば、1つずつ圧着端子6を収納空間38の装着突起35に取り付けると良い。具体的に説明すると、図3に示したように、ツイストペアケーブル4の各圧着端子6を2つの収納空間38の上にそれぞれ軽く置き、一方の圧着端子6のワイヤーバレル56を位置方向の微調整の後に装着突起35に押し込んでパチンと取り付け、次いで他方の圧着端子6のワイヤーバレル56を位置方向の微調整の後に装着突起35に押し込んでパチンと取り付けて図5に示した取付状態とすることができる。
【0057】
このように1つずつ圧着端子6を装着突起35に取り付ける場合でも、従来のように長手方向に長い距離を挿入するのとは異なり、圧着端子6の厚み方向に短い距離の押し込みで済むため、被覆電線7を撚り戻す必要がない。従って、図示するように、2つの圧着端子6の間に位置する内部仕切り板32bの後端からすぐに被覆電線7のツイストが始まる状態で取り付けることができる。また、撚り戻して再度より合わせるといったことをせずともこの状態でとりつけることができるため、ツイストの状態、すなわち各被覆電線7の発生磁界を互いに打ち消すことができる状態をほとんど変化させることなく良好に保つことができる。
【0058】
この取付の際、圧着端子6は、ワイヤーバレル56が対向配置された装着突起35の間に嵌め込まれることで、抜け止め突起36によって抜け止めされて固定される。2つの装着突起35により圧着端子6の幅方向の位置が規制され、また抜け止め突起36によって圧着端子6が上方へ抜け出ないように上下方向の位置が規制される。
【0059】
特に、収納空間38の底面から抜け止め突起36までの高さは、ワイヤーバレル56の底面から抜け止め突起36との当接部までの高さとほぼ一緒に形成されており、これによって圧着端子6が上下方向にズレないようにしっかり固定される。また、この状態で、ボックス部51の底面とインシュレーションバレル58の底面が収納空間38の底面に接触するため、圧着端子6がハウジング台3に対して揺動することなくしっかりと固定される。
【0060】
また、隣合う仕切り板32(32a,32b)の間隔は、圧着端子6のボックス部51の幅とほぼ同一かわずかに大きい程度に形成されているため、ボックス部51の左右方向の位置が仕切り板32によっても規制される。
【0061】
また、ボックス部51のスタビライザ54が、位置決め端面33に接触して係止されるため、圧着端子6の前後方向の位置がこれによって固定される。
【0062】
また、インシュレーションバレル58と該インシュレーションバレル58が圧着されている被覆電線7の先端部7aも幅方向両端が仕切り板32で挟まれているため、左右方向にズレ動かないよう位置規制される。
【0063】
このように、圧着端子6の中央付近に位置するワイヤーバレル56が装着突起35によって挟持されて幅方向および取付方向(上下方向)にズレ動かないよう固定されるとともに、圧着端子6の底面(特にボックス部51の底面とインシュレーションバレル58の底面)が支持台部31の上面(すなわち収納空間38の床面)に接触することで圧着端子6が取付方向(上下方向)に揺動しないように固定され、さらに仕切り板32に圧着端子6の両側(特にボックス部51の両側とインシュレーションバレル58の両側)が接触若しくは近接するため幅方向にも揺動しないように固定され、その上圧着端子6のスタビライザ54がハウジング台3の位置決め端面33に当接して前後方向に移動しないよう係止されるため、圧着端子6がいずれの方向にもズレ動くことや揺動することが無いように安定して強固にハウジング台3に固定される。
【0064】
次に、このようにツイストペアケーブル4が固定されたハウジング台3を、図7に示すように、ハウジングカバー2の開口18から収納空間17へ挿入する被覆ステップを実行する。このとき、ハウジング台3の幅がハウジングカバー2の収納空間17の幅と同じか若干狭い構成であるため、左右の外部仕切り板32aの各側面が収納空間17の側壁に接触してスムーズに挿入される。また、ハウジング台3の高さ(特に外部仕切り板32aの高さ)がハウジングカバー2の収納空間17の高さと同じか若干低い構成であるため、ハウジング台3の底面が収納空間17の床面に接触しハウジング台3の上面(外部仕切り板32aの上面)が収納空間17の天井面に接触してスムーズに挿入される。
【0065】
挿入の際、図8に示すように、ハウジング台3の底面に幅方向中央位置で前後方向に長い凸状に形成されたガイドレール39がハウジングカバー2の収納空間17の床面に形成されたガイド溝25にガイドされるため、スムーズに挿入されるとともに、上下逆向きに挿入されることが防止される。
【0066】
そして、ハウジング台3がハウジングカバー2の収納空間17に完全に挿入されると、ハウジングカバー2の係合凹部15にハウジング台3の係合突起34が当接し、これ以上挿入されないように係止される。
【0067】
またこの状態まで挿入されると、ハウジング台3の弾性抜け止め片37に設けられた抜け止め突起37aがハウジングカバー2の抜け止め凹部23に入り込む。そして、図9の縦断面図に示すように、抜け止め突起37aの後方に設けられた垂直面が抜け止め凹部23の抜け止め係止面23aに当接してしっかりと抜け止めされる。
【0068】
また、このようにして奥まで挿入された状態のとき、ツイストペアケーブル4の圧着端子6に設けられた係合孔53に、ハウジングカバー2の収納空間17の床面に突出して設けられた抜け止め突起21の上端が入り、圧着端子6を固定する。これにより、ハウジングカバー2に対して圧着端子6が直接固定され、強度を高めるとともに、ハウジングカバー2の挿入穴13に対する圧着端子6の挿入口55の位置精度を安定させることができる。
【0069】
詳述すると、矢印Yに示す方向に雄型端子が挿入されると、圧着端子6の接触片52に当たってツイストペアケーブル4およびハウジング台3が抜き出される方向に押圧される。このとき、仮に抜け止め突起21が無ければ、圧着端子6のスタビライザ54がハウジング台3の位置決め端面33を押圧しつつ係止され、ハウジング台3の抜け止め突起37aが抜け止め係止面23aを押圧しつつ係止されて、この構造のみによって抜け止めされる。そうすると、圧着端子6にかかる押圧力がハウジング台3を介してハウジングカバー2に受けられることとなり、その間で様々な方向に力がかかって不具合に繋がる可能性が出てくる。また圧着端子6が押圧される接触片52からハウジングカバー2の抜け止め係止面23aまでの距離も長いため、その間での変形等の原因にもなり得る。
【0070】
これに対して、抜け止め突起21によって圧着端子6をハウジングカバー2に直接固定することで、雄型端子の挿入により圧着端子6にかかる力を、ハウジングカバー2で直接受け止めることができる。しかも、圧着端子6が押圧される接触片52に非常に近い位置に設けられた抜け止め突起21で固定されているため、様々な方向に力がかかって変形や不具合が発生することを防止できる。
【0071】
以上の構成および製造方法により、ツイストペアケーブル4の圧着端子6をハウジング台3に容易に固定することができ、かつ通信品質の低下を防止することができる。すなわち、圧着端子6を厚み方向にハウジング台3に取り付けることができるため、従来のように長手方向に挿入する場合であれば撚り戻しが不可欠であったところを、撚り戻すことなく取り付けることができる。
【0072】
また、装着突起35が横並びに配置されているため、ツイストペアケーブル4の圧着端子6を横並びの状態のままで厚み方向へ取り付けることができ、被覆電線の撚り戻し無く取り付けることを容易に実現できる。
【0073】
また、装着突起35が圧着端子6の幅方向の位置を規制する構成のため、圧着端子6を厚み方向である上下方向に取り付けて位置決めすることを容易に実現することができる。特に、装着突起35により圧着端子6のワイヤーバレル56を挟持するため、圧着端子6を嵌め込み式でハウジング台3に取り付けることができ、作業の容易性と嵌め込み後の取り付けの安定性とを両立することができる。
【0074】
また、装着突起35が弾性を有するため、被覆電線7の太さに応じてワイヤーバレル56の太さが様々に異なる各種のツイストペアケーブル4を、いずれも同じハウジング台3に取り付けることができる。
【0075】
また、装着突起35に抜け止め突起36が設けられているため、ツイストペアケーブル4の圧着端子6を1つずつ装着突起35に取り付ける際に、次の圧着端子6の取り付け作業中に先に取り付けた圧着端子6が装着突起35から抜け出ることを防止でき、取り付け作業を容易にすることができる。
【0076】
また、圧着端子6の係合孔53とハウジング台3の抜け止め突起21、および圧着端子6のスタビライザ54とハウジング台3の内部仕切り板32bにより圧着端子6の長手方向の位置規制を行うため、相手方となる雄型端子が挿入接続される際に圧着端子6の位置が長手方向にずれることを防止できる。
【0077】
また、コネクタハウジング10をハウジングカバー2とハウジング台3とで構成したため、ハウジング台3にツイストペアケーブル4の圧着端子6を取り付けてからハウジング台3とハウジングカバー2とを接続することができる。このため、容易に作業することができる。また、接続したハウジング台3とハウジングカバー2とを、抜け止め突起37aと抜け止め凹部23により抜け止めして固定することができる。
【実施例2】
【0078】
図10は、実施例2のコネクタハウジング110およびツイストペアケーブル104を示す斜視図、図11は、コネクタハウジング110にツイストペアケーブル104を取り付けた状態のコネクタ101の斜視図、図12は完成したコネクタ101の斜視図、図13はコネクタ101の構成を縦断面図により示す説明図である。
【0079】
図10に示すように、ツイストペアケーブル104は、圧着端子6のボックス部51の底面に設けられるスタビライザ154の位置が実施例1と異なっている。このスタビライザ154は、圧着端子6の開口55側の端部底面に下方へ突出して設けられている。ツイストペアケーブル104のその他の構成は、実施例1と同一であるため、同一要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0080】
コネクタハウジング110は、ハウジング台103にハウジングカバー102が開閉可能に接続されて構成されている。
【0081】
ハウジング台103は、ハウジングカバー102を取り付ける回動支持部170が前方上部に突出して設けられている。この回動支持部170は、幅方向に長い回動支持溝171が設けられており、この回動支持溝171がハウジングカバー102の回動軸181を回動可能に支持する。
【0082】
ハウジング台103の外部仕切り板132aは、前後方向に長い板状に形成されており、内側の装着突起35の対向位置に凹部140が設けられている。この凹部140により、装着突起35が幅方向外側へ広がることを可能にし、かつ、外部仕切り板132aで側面全体を被覆できるように構成している。
【0083】
ハウジング台103の外部仕切り板132aの後端上部には、カバー係止部173が左右対称に設けられている。このカバー係止部173は、閉じられたハウジングカバー102の係止部183と嵌合し、ハウジングカバー102が意図せず開いてしまわないように固定する。
【0084】
ハウジング台103の収納空間38の前方端部には、複数の位置決め孔133が設けられている。この位置決め孔133は、1つの収納空間38に対して2つ設けられており、ツイストペアケーブル4の各圧着端子6のスタビライザ154が挿入されて、圧着端子6の位置を適切に固定する。
【0085】
ハウジングカバー102は、板状のカバー部182と、その一辺に設けられた回動軸181により主に構成されている。
【0086】
その他の構成は、実施例1と同一であるため、同一要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0087】
以上の構成により、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。例えば、コネクタ101は、図10に矢印で示すように、ハウジング台103の収納空間38へのツイストペアケーブル104の圧着端子6の収納、取り付けをする取付ステップを、長手方向と垂直な厚み方向に圧着端子6を押し込む簡単な操作で実現することができる。
【0088】
取り付けの際、隣り合う2つの収納空間38の上にツイストペアケーブル104の2つの圧着端子6をそれぞれ乗せ、図13(A)に示すように、スタビライザ154を位置決め孔133に挿入した状態でワイヤーバレル56を装着突起35にパチンとはめ込むことができる。
【0089】
図11に示すように、ハウジング台103の収納空間38にツイストペアケーブル104の圧着端子6を取り付けると、被覆ステップとして図12に示すようにハウジングカバー2を倒して閉じるだけで、図13(B)に示すようにコネクタ101を容易に完成させることができる。
【0090】
また、圧着端子6を撚り戻す必要がないため、ハウジング台103に容易に装着して良好な通信状態とすることができる。
【0091】
以上の各実施例では雌型の圧着端子6を有するツイストペアケーブル4,104を用いたが、これに限らず雄型の圧着端子を有するツイストペアケーブルを用いるなど、様々なツイストケーブルを用いることができる。
【0092】
また、ツイストペアケーブル4,104は、圧着端子6の代わりに、溶接により被覆電線7に接続する接続端子を用いることもできる。
また、コネクタ1,101は、雄型のコネクタとしたが、これに限らず雌型のコネクタとすることもできる。
【0093】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のカバー部は、実施形態のハウジングカバー2,102に対応し、
以下同様に、
配置台部は、ハウジング台3,103に対応し、
ツイスト電線は、ツイストペアケーブル4,104に対応し、
取付部および挟持部材は、装着突起35に対応し、
抜止部は、抜け止め突起36に対応し、
ハウジング抜止部は、抜け止め突起37aと抜け止め凹部23に対応し、
長手方向位置規制部は、スタビライザ54と位置決め端面33、およびスタビライザ154と位置決め孔133に対応し、
弾性材は、樹脂に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
この発明は、被覆電線をツイストさせたツイスト電線を接続したコネクタを用いる様々な分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1,101…コネクタ、2,102…ハウジングカバー、3,103…ハウジング台、4,104…ツイストペアケーブル、6…圧着端子、7…被覆電線、10,110…コネクタハウジング、23…抜け止め凹部、33…位置決め端面、35…装着突起、36…抜け止め突起、37a…抜け止め突起、38a…開放部、54…スタビライザ、133…位置決め孔、154…スタビライザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続端子を有する被覆電線が複数本ツイストされたツイスト電線と、
前記接続端子が取り付けられたコネクタハウジングとを備えたコネクタであって、
前記コネクタハウジングは、
前記接続端子を取り付ける取付部が複数設けられた配置台部を備え、
該取付部は、前記配置台部へ向かって前記接続端子を厚み方向に取付許容する構成である
コネクタ。
【請求項2】
前記配置台部は、
前記複数の取付部が横並びに配置されている
請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記配置台部に配置された取付部の先端側に、該取付部への前記接続端子の挿入を許容する開放部を備えた
請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記取付部は、
前記接続端子を挟持する挟持部材で構成され、
該挟持部材は、
前記接続端子が収納されて外側へ変形すると内側へ復帰する方向に弾性力が働く弾性材により形成された
請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記挟持部材は、
前記接続端子を抜け止めする抜止部が設けられている
請求項4記載のコネクタ。
【請求項6】
前記接続端子の長手方向の位置規制を行う長手方向位置規制部を備えた
請求項1から5のいずれか1つに記載のコネクタ。
【請求項7】
前記コネクタハウジングは、
前記配置台部と、該配置台部に取り付けられた前記接続端子を覆うカバー部とで別体により構成され、
前記カバー部と前記配置台部とに、互いに係合して抜け止めするハウジング抜止部を設けた
請求項1から6のいずれか1つに記載のコネクタ。
【請求項8】
前記コネクタハウジングは、
前記接続端子を前記配置台部とで挟んで被覆するカバー部を備え、
該カバー部を開閉可能に形成した
請求項1から6のいずれか1つに記載のコネクタ。
【請求項9】
ツイスト電線の被覆電線に設けられた接続端子が取り付けられるコネクタハウジングであって、
前記接続端子を取り付ける取付部が複数設けられた配置台部を備え、
該取付部は、前記配置台部へ向かって前記接続端子を厚み方向に取付許容する構成である
コネクタハウジング。
【請求項10】
接続端子を有する被覆電線を複数本ツイストされたツイスト電線をコネクタハウジングに取り付けてコネクタを製造するコネクタ製造方法であって、
前記コネクタハウジングに設けられた配置台部の取付部に前記接続端子を厚み方向に取り付ける取付ステップと、
該接続端子を前記コネクタハウジングのカバー部で被覆する被覆ステップとを有する
コネクタ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−38494(P2012−38494A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176156(P2010−176156)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】