説明

コネクタ、コネクタ装置および電池ユニット

【課題】簡便な構造でコンタクトのフローティング量を大きく確保し、しかも、部品点数が少なく、組み付けに係る作業負担を低減するコネクタおよびコネクタ装置を提供すること。
【解決手段】第1ハウジング20と、第1ハウジング20に取り付けられ第1ハウジング20と共にコンタクト収容部60を構成する第2ハウジング30と、コンタクト収容部60に収容されるコンタクト40とを備え、第2ハウジング30は、第1ハウジング20に対して相対的にスライド可能に取り付けられ、コンタクト40は、第1ハウジング20と第2ハウジング30との間に遊びをもった状態でコンタクト収容部60内に収容され、第2ハウジング30は、コンタクト収容部60内におけるコンタクト40の位置を制御し、第1ハウジング20と第2ハウジング30とが相対的にスライドした際に、コンタクト40を押動する制御部34を有しているコネクタ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびコネクタ装置に関し、特に、接続対象物との間の位置ずれ補正機能を備えたコネクタおよびコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接続対象物との間の位置ずれ補正機能を備えたコネクタとして、図15に示すように、パネル110に取り付けられる端子台本体120と、端子台本体120に組み付けられる導電接続配線板130と、端子台本体120に内蔵された雄ピン受けナット140と、雄ピン受けナット140を介して端子台本体120に取り付けられる雄ピン150と、雄ピン150を介して端子台本体120に組み付けられるプラグインコネクタハウジング160とを備えたプラグインコネクタ(雄)100が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1に記載されたプラグインコネクタ(雄)100では、雄ピン150や雄ピン受けナット140を端子台本体120に対して多少のガタつきをもって組み付けることにより、プラグインコネクタ(雄)100とプラグインコネクタ(雌)170との間のプラグイン接続に必要とされるフローティング機能を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−346940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のプラグインコネクタ(雄)100では、各部材間に取り付けガタを敢えて形成することによりフローティング性を確保しているが、この取り付けガタを大きく取り過ぎると部材の取り付け強度が損なわれることになるため、取り付けガタの大きさは一定に制限され、結果として、確保できるフローティング量(雄ピン150の変位量)が制限されるという問題があった。
【0006】
また、従来のプラグインコネクタ(雄)100では、取付部材としての雄ピン受けナット140を介して雄ピン150を端子台本体120に対して取り付けているため、部品点数が多く、組み付けに係る作業負担も大きいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、簡便な構造でコンタクトのフローティング量を大きく確保し、しかも、部品点数が少なく、組み付けに係る作業負担を低減するコネクタおよびコネクタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコネクタは、第1ハウジングと、前記第1ハウジングに取り付けられ前記第1ハウジングと共にコンタクト収容部を構成する第2ハウジングと、前記コンタクト収容部内に少なくとも一部が収容されるコンタクトとを備え、前記第2ハウジングは、前記第1ハウジングに対して相対的にスライド可能に取り付けられ、前記コンタクトは、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に遊びをもった状態で前記コンタクト収容部内に収容され、前記第2ハウジングは、前記コンタクト収容部内における前記コンタクトの位置および姿勢を制御し、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが相対的にスライドした際に、前記コンタクトを押動する制御部を有していることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
前記コンタクトは、前記第2ハウジング側に配置され接続対象物に接触する接触部を有していてもよい。
【0010】
前記コンタクトは、前記第1ハウジング側に配置され他の接続対象物に接触する他の接触部を更に有していてもよい。
【0011】
前記第1ハウジングは、前記コンタクト収容部内における前記コンタクトの位置および姿勢を制御し、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが相対的にスライドした際に、前記コンタクトを押動する制御部を有していてもよい。
【0012】
前記コンタクトは、対向配置された一対の導電部材と、前記一対の導電部材の間に設けられ前記一対の導電部材を相互に接近させる方向に付勢する付勢部材とを備え、前記コンタクトは、前記付勢部材により付勢された前記一対の導電部材で接続対象物を挟持して接続されるように構成されていてもよい。
【0013】
前記第2ハウジングの前記制御部は、前記一対の導電部材間に介在して配置されていてもよい。
【0014】
前記第1ハウジングの前記制御部は、前記一対の導電部材間に介在して配置されていてもよい。
【0015】
前記第2ハウジングは、前記接続対象物と嵌合する方向及び前記第1ハウジングが相対的にスライドする方向に直交する方向に、前記コンタクトの位置を規制する位置規制部を有していてもよい。
【0016】
前記第1ハウジングは、前記接続対象物と嵌合する方向及び前記第2ハウジングが相対的にスライドする方向に直交する方向に、前記コンタクトの位置を規制する位置規制部を有していてもよい。
【0017】
前記第2ハウジングは、前記接続対象物と嵌合する方向に直交する方向に、前記第1ハウジングに対して相対的にスライド可能に取り付けられていてもよい。
【0018】
本発明のコネクタ装置は、前記コネクタと、前記コネクタが取り付けられる取り付け対象物とを備え、前記第1ハウジングは、前記取り付け対象物に対して移動可能な状態で前記取り付け対象物に取り付けられていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、第1ハウジングに対して第2ハウジングをスライド可能に取り付け、第1ハウジングおよび第2ハウジングにより構成されたコンタクト収容部内に遊びをもった状態でコンタクトを配置することにより、第2ハウジングのスライド動作に伴ってコンタクトを変位させることが可能であるため、簡便な構造でコンタクトのフローティング量(変位量)を大きく確保でき、接続対象物との接続の確実性を向上できる。
【0020】
また、第1ハウジングおよび第2ハウジングにより構成されたコンタクト収容部に遊びをもった状態でコンタクトを収容していることにより、ハウジングに対するコンタクト組み付けのために取付部材等の追加部品を必要としないため、部品点数が少なく、組み付けに係る作業負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例であるコネクタの使用態様図である。
【図2】コネクタを取り付けた電池ユニットを示す説明図である。
【図3】電池ユニットに対するコネクタの取り付け方法を説明する説明図である。
【図4】ブスバーとコネクタとラック側コネクタとを示す斜視図である。
【図5】ブスバーとコネクタとラック側コネクタとを相互に嵌合させた状態を示す斜視図である。
【図6】コネクタを示す分解斜視図である。
【図7】コネクタを示す全体斜視図である。
【図8】コネクタを切断してコネクタ内部を示す説明図である。
【図9】図8とは異なる角度からみてコネクタ内部を示す説明図である。
【図10】図8および図9とは異なる位置でコネクタを切断してコネクタ内部を示す説明図である。
【図11】図8乃至図10とは異なる位置でコネクタを切断してコネクタ内部を示す説明図である。
【図12】コンタクトを示す全体斜視図およびコンタクトを切断して示す説明図である。
【図13】第1ハウジングに対して第2ハウジングをスライドさせる様子を示す説明図である。
【図14】電池ユニットに対するコネクタの取り付け時、および、ラック側コネクタに対するコネクタの取り付け時の状態を概念的に示す説明図である。
【図15】従来のプラグインコネクタを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施例であるコネクタを図面に基づいて説明する。
【0023】
なお、以下の説明では、コネクタに対してブスバー(接続対象物)およびラック側コンタクト(他の接続対象物)を接近させて嵌合させる方向を第1方向X、第1ハウジングに対して第2ハウジングを相対的にスライドさせる方向を第2方向Y、第1方向Xおよび第2方向Yに直交する方向を第3方向Zとして規定する。なお、以下に示す実施例では、第1方向Xに対して第2方向Yが直交するものとして説明するが、第2方向Yが第1方向Xに直交しないものとして構成してもよい。また、以下に示す実施例では、コネクタに対するブスバーの嵌合方向とコネクタに対するラック側コンタクトの嵌合方向とが相互に平行に設定されているものとして説明するが、非平行に設定してもよい。
【実施例】
【0024】
本実施例のコネクタ10は、2次電池用コネクタであり、図1乃至図5に示すように、バッテリ(2次電池)72を内蔵した電池ユニット70のケーシング(取り付け対象物)71に取り付けられ、電池ユニット70を収容ラック80に挿入した際に、収容ラック80に取り付けられたラック側コネクタ90に嵌合し、電池ユニット70に内蔵されバッテリ72に接続されたブスバー73と、ラック側コネクタ90に設けられたラック側コンタクト91との間を電気的に接続するものである。なお、図2に示す符号51は、後述する信号用コンタクト(図示しない)に接続される信号線である。
【0025】
コネクタ10は、図4乃至図11に示すように、第1ハウジング20と、第1ハウジング20に対して相対的に第2方向Yにスライド可能に取り付けられる第2ハウジング30と、第1ハウジング20および第2ハウジング30により構成されたコンタクト収容部60に収容される電源供給用のコンタクト40と、第1ハウジング20に取り付けられ信号用コンタクト(図示しない)を保持する信号用ハウジング50とを備えている。
【0026】
第1ハウジング20は、絶縁性樹脂から形成され、図3に示すように、電池ユニット70のケーシング71に形成された取り付け開口部71aに対して第2方向Yおよび第3方向Zに遊び(隙間)を有し、ケーシング71に対して第2方向Yおよび第3方向Zに移動可能な状態で、スペーサ74およびボルト75を用いて、ケーシング71に取り付けられている。
【0027】
第1ハウジング20は、図6乃至図11に示すように、コンタクト40の一部を収容する第1収容部21と、第1収容部21内へラック側コンタクト91を挿入させる第1開口部22と、後述する第2ハウジング30の取付バネ部33を第2方向Yにスライド可能な状態で支持するスライドガイド部23と、コンタクト収容部60内におけるコンタクト40の位置および姿勢を制御する第1制御部24と、第3方向Zにおけるコンタクト40の位置を規制する第1位置規制部25と、信号用ハウジング50を保持する信号用ハウジング保持部26とを一体に有している。
【0028】
第1収容部21は、図6や図8に示すように、第2ハウジング30側において開口し、第2ハウジング30に形成された第2収容部31と共にコンタクト収容部60を構成している。
第1制御部24は、図6乃至図11に示すように、第1収容部21を規定する第1ハウジング20の内壁から第1収容部21内に向けて第3方向Zに沿って延出され、図9や図13に示すように、第1方向Xにおけるコンタクト40の支持部41cと第1接触部41dとの間の領域で、一対の導電部材41間に介在している。第1制御部24は、第2ハウジング30に形成された第2制御部34と協働して、コンタクト収容部60内におけるコンタクト40の姿勢(具体的には、第1方向Xおよび第2方向Yにより規定される平面内における姿勢)を制御している。更に詳しくは、第1制御部24は、第1ハウジング20と第2ハウジング30との間の相対的な位置関係に関わらず、第1開口部22から挿入されるラック側コンタクト91が第1接触部41d間に入り込むことが可能である程度に、第1ハウジング20に形成された第1開口部22と第1接触部41dとの位置関係を制御する。また、第1制御部24は、第1接触部41d間に対するラック側コンタクト91の挿入時に、第1方向Xにおけるラック側コンタクト91の挿入位置(挿入の深さ)を規制する部位として機能する。
【0029】
第2ハウジング30は、絶縁性樹脂から形成され、第1ハウジング20に対して第2方向Yにスライド可能な状態で取り付けられている。
【0030】
第2ハウジング30は、図6乃至図10に示すように、コンタクト40の一部を収容する第2収容部31と、第2収容部31内へブスバー73を挿入させる第2開口部32と、第1ハウジング20のスライドガイド部23に取り付けられる取付バネ部33と、コンタクト収容部60内におけるコンタクト40の位置および姿勢を制御する第2制御部34と、第3方向Zにおけるコンタクト40の位置を規制する第2位置規制部35と、ブスバー73を第2開口部32に向けて誘導するガイド部36とを一体に有している。
【0031】
第2収容部31は、図8に示すように、第1ハウジング20側において開口し、第1ハウジング20に形成された第1収容部21と共にコンタクト収容部60を構成している。
第2制御部34は、図8乃至図11に示すように、第2収容部31を規定する第2ハウジング30の内壁から第2収容部31内に向けて第3方向Zに沿って延出され、図13に示すように、第1方向Xにおけるコンタクト40の支持部41cと第2接触部41eとの間の領域で、一対の導電部材41間に介在している。第2制御部34は、第1ハウジング20に形成された第1制御部24と協働して、コンタクト収容部60内におけるコンタクト40の姿勢(具体的には、第1方向Xおよび第2方向Yにより規定される平面内における姿勢)を制御している。更に詳しくは、第2制御部34は、第1ハウジング20と第2ハウジング30との間の相対的な位置関係に関わらず、第2開口部32から挿入されたブスバー73が第2接触部41e間に入り込むことが可能である程度に、第2ハウジング30に形成された第2開口部32と第2接触部41eとの位置関係を制御する。また、第2制御部34は、第2接触部41e間に対するブスバー73の挿入時に、第1方向Xにおけるブスバー73の挿入位置(挿入の深さ)を規制する部位として機能する。
【0032】
コンタクト40は、電源供給用のソケットコンタクトであり、図8に示すように、コネクタ10に形成された各コンタクト収容部60内に、第3方向Zに並列した状態で、2つ1組で配置されている。各コンタクト40は、第1ハウジング20および第2ハウジング30を含むいずれの部材との間においても遊び(隙間)をもった状態で収容され、換言すると、各コンタクト40は、第1ハウジング20および第2ハウジング30を含むいずれの部材に対しても固定されていない。
【0033】
各コンタクト40は、図12に示すように、一対の導電部材41と、一対の導電部材41間に取り付けられ一対の導電部材41を相互に接近させる方向に付勢する付勢部材42とから構成されている。なお、本実施例では、付勢部材42は、図12に示すように、コイルバネから構成されているが、具体的な態様はこれに限定されず、例えば、ゴム等の弾性部材から構成されてもよい。
【0034】
一対の導電部材41は、非弾性の導電性金属(タフピッチ銅、純度99%程度の銅)から形成され、それぞれ同一形状を有している。本実施例では、導電部材41は、純銅の導電率を100%とすると50%以上の導電率を有する。
【0035】
一対の導電部材41は、図12に示すように、一対の導電部材41間で離間配置される基部41aと、各基部41aに形成され付勢部材42が取り付けられる取付部41bと、基部41aから他方の導電部材41に向けて延び付勢部材42による付勢力に抗して他方の導電部材41を支持する支持部41cと、第1方向Xにおける取付部41b(および支持部41c)の両側にそれぞれ形成される第1接触部41dおよび第2接触部41eとをそれぞれ有している。
【0036】
本実施例においては、支持部41cは、図12に示すように、各基部41aの第3方向Zにおける両側から第2方向Yに沿ってそれぞれ立設され、一方の導電部材41と他方の導電部材41とが第1方向Xに相対的に位置規制されるように、他方の導電部材41に形成された支持部41cに係合している。
【0037】
各コンタクト40は、図12に示すように、一対の導電部材41に付勢部材42を取り付け、一対の導電部材41間で支持部41c同士を相互に係合させた状態で、組み付け後の立体構造が自律的に維持されるように構成されている。
【0038】
各コンタクト40は、第1接触部41d同士および第2接触部41e同士を第2方向Yに対向させた状態で配置され、第1収容部21内に配置された第1接触部41d間でラック側コンタクト91を挟持してラック側コンタクト91に接続され、また、第2収容部31内に配置された第2接触部41e間でブスバー73を挟持してブスバー73に接続される。
【0039】
各コンタクト40は、前述したように、第1ハウジング20に形成された第1制御部24と、第2ハウジング30に形成された第2制御部34とにより、コンタクト収容部60内における姿勢および位置(具体的には、第1方向Xおよび第2方向Yにより規定される平面内における位置および姿勢)を制御され、また、第1ハウジング20に形成された第1位置規制部25と、第2ハウジング30に形成された第2位置規制部35とにより、コンタクト収容部60内における第3方向Zにおける位置を規制されている。
【0040】
付勢部材42は、図12に示すように、一対の導電部材41にそれぞれ形成された取付部41b間に取り付けられ、コンタクト40を構成する一対の導電部材41にそれぞれ形成された基部41aおよび支持部41cにより規定された空間内に配置されている。
【0041】
つぎに、コネクタ10の組み付け方法について、主に図6に基づいて説明する。
【0042】
まず、第1ハウジング20の第1収容部21に対して、コンタクト40を挿入する。
ここで、第2方向Yに対向する第1接触部41d間の間隔は、第1ハウジング20に形成された第1制御部24の幅寸法(第2方向Yにおける幅寸法)より狭く設定されている。そのため、第1ハウジング20に対するコンタクト40の挿入時には、第1制御部24により第1接触部41d間の間隔が一旦は広げられ、更にコンタクト40の挿入を押し進めると、第1接触部41dが第1制御部24を乗り越えて第1接触部41d間の間隔が元の間隔に復帰し、コンタクト40が第1制御部24により第1方向Xに抜け止めされる。
このように、第1ハウジング20に対するコンタクト40の取り付けは、第1収容部21に対するコンタクト40の挿入の一動作により達成される。
【0043】
次に、取付バネ部33側を先頭にして第2ハウジング30を第1ハウジング20に対して挿入する。
この際、第1ハウジング20に接触して取付バネ部33が一旦は弾性変形し、更に第1ハウジング20への挿入を押し進めると、取付バネ部33が弾性復帰し、第1ハウジング20のスライドガイド部23に係合して、第2ハウジング30が第1ハウジング20に対して抜け止めされる。
ここで、第2方向Yに対向する第2接触部41e間の間隔は、第2制御部34の幅寸法(第2方向Yにおける幅寸法)以上に設定されている。そのため、第1ハウジング20に対する第2ハウジング30の挿入時には、第2接触部41eと第2制御部34とが相互に引っ掛かることなく、第1ハウジング20に対する第2ハウジング30の挿入を円滑に行うことができる。
このように、第1ハウジング20に対する第2ハウジング30の取り付けは、第1ハウジング20に対する第2ハウジング30の挿入の一動作により達成される。
なお、第1制御部24と同様に、第2制御部34の幅寸法を、第2接触部41e間の間隔より大きく設定してもよい。
【0044】
つぎに、電池ユニット70に対するコネクタ10の取り付け方法について、主に図14に基づいて以下に説明する。
【0045】
まず、第2ハウジング30側を先頭にして、コネクタ10をケーシング71に形成された取り付け開口部71a内に挿入し、各第2接触部41e間に各ブスバー73を挿入させる。
この際、各第2ハウジング30が第1ハウジング20に対して第2方向Yにスライド可能に取り付けられているため、ブスバー73と第2ハウジング30のガイド部36との当接により、第2ハウジング30の第2方向Yにおける位置が補正される。
そして、この第2ハウジング30のスライドに伴って、コンタクト40が第2ハウジング30に形成された第2制御部34により第2方向Yに押動され、第2接触部41eの位置も第2方向Yに補正される。
【0046】
また、この際、コネクタ10内に挿入されるブスバー73は、第2制御部34に当接した場合、第1方向Xにおける挿入位置(挿入深さ)を第2制御部34により規制される。
【0047】
次に、スペーサ74およびボルト75を用いて、第1ハウジング20をケーシング71に取り付ける。
【0048】
この電池ユニット70に対してコネクタ10を取り付けた状態では、ケーシング71に対して固定されたブスバー73を、第2接触部41eが挟持しているため、第2接触部41e(または第2ハウジング30)とブスバー73(またはケーシング71)との間の位置関係も凡そ固定されるが、本実施例では、第1ハウジング20が第2ハウジング30およびケーシング71に対して第2方向Yにスライド可能に設けられているため、第1ハウジング20は、ケーシング71に対して第2方向Yに自在に移動することができる。
【0049】
つぎに、収容ラック80に対する電池ユニット70の取り付け方法について、主に図14に基づいて以下に説明する。
【0050】
まず、コネクタ10側を先頭にして、コネクタ10付きの電池ユニット70を、収容ラック80に対して挿入し、各第1接触部41d間に各ラック側コンタクト91を挿入させる。
この際、ラック側コネクタ90のラック側ハウジング92には、図4に示すように、コネクタ10を第2方向Yに誘導するガイド部92aが形成されており、また、第1ハウジング20がケーシング71に対して第2方向Yに移動可能に取り付けられているため、第1ハウジング20はこのガイド部92aにより第2方向Yに押され、第1ハウジング20は電池ユニット70に対してスライドして第2方向Yに位置補正される。
なお、本実施例では、上述したように、ラック側ハウジング92にガイド部92aを形成したが、その反対に、第1ハウジング20側に、第1ハウジング20とラック側ハウジング92との間の第2方向Yにおける位置関係を補正するガイド部を形成してもよい。
【0051】
そして、この電池ユニット70に対する第1ハウジング20のスライドに伴って、コンタクト40が第1ハウジング20に形成された第1制御部24により第2方向Yに押動され、第1接触部41dの位置も第2方向Yに補正される。
【0052】
また、この際、コネクタ10内に挿入されるラック側コンタクト91は、第1制御部24に当接した場合、第1方向Xにおける挿入位置を第1制御部24により規制される。
【0053】
このようにして得られた本実施例のコネクタ10では、第1ハウジング20に対して第2ハウジング30をスライド可能に取り付け、第1ハウジング20および第2ハウジング30により構成されたコンタクト収容部60内に遊びをもった状態でコンタクト40を配置することにより、第2ハウジング30のスライド動作に伴って第2制御部34によりコンタクト40の第2接触部41eを変位させることが可能であるため、簡便な構造でコンタクト40のフローティング量(変位量)を大きく確保でき、第2接触部41eとブスバー73との間の第2方向Yにおける位置ずれを許容して、第2接触部41eとブスバー73との間の接続の確実性を向上できる。
【0054】
更に、第2ハウジング30に対して第1ハウジング20をスライド可能に取り付けることに加えて、第1ハウジング20をケーシング71に対して第2方向Yに移動自在に取り付けることにより、電池ユニット70に対してコネクタ10が取り付けられブスバー73と第2接触部41eとの間が凡そ固定された場合であっても、電池ユニット70のケーシング71に対する第1ハウジング20の移動性を維持できるため、第1接触部41dとラック側コンタクト91との間の第2方向Yにおける位置ずれを許容して、第1接触部41dとラック側コンタクト91との間の接続の確実性を向上できる。
【0055】
また、第1ハウジング20および第2ハウジング30により構成されたコンタクト収容部60に遊びをもった状態でコンタクト40を収容していることにより、第1ハウジング20および第2ハウジング30に対するコンタクト40の組み付けのために取付部材等の追加部品を必要としないため、部品点数が少なく、組み付けに係る作業負担を低減できる。
【0056】
第1収容部21内におけるコンタクト40の位置および姿勢を制御する第1制御部24が、導電部材41間に配置されていることにより、第1収容部21を規定しコンタクト40の周囲に位置する第1ハウジング20の内壁の設計に関わらず、第1ハウジング20が第2方向Yのいずれの方向にスライドする場合であっても、第1制御部24のみで第1接触部41d側のコンタクト40の位置および姿勢を制御することが可能であるため、第1ハウジング20の設計自由度を向上できる。
【0057】
また、第2制御部34についても同様に、第2収容部31内におけるコンタクト40の位置および姿勢を制御する第2制御部34が、導電部材41間に配置されていることにより、第2収容部31を規定しコンタクト40の周囲に位置する第2ハウジング30の内壁の設計に関わらず、第2ハウジング30が第2方向Yのいずれの方向にスライドする場合であっても、第2制御部34のみで第2接触部41e側のコンタクト40の位置および姿勢を制御することが可能であるため、第2ハウジング30の設計自由度を向上できる。
【0058】
また、第1制御部24が導電部材41間に配置されていることにより、第1制御部24が、コネクタ10内に対するラック側コンタクト91の挿入時に、第1方向Xにおけるラック側コンタクト91の挿入位置を規制する部位としても併せて機能するため、第1制御部24とは別途にラック側コンタクト91の挿入位置を規制する部位を形成する必要がなく、第1ハウジング20の設計自由度をより一層向上できる。
【0059】
また、第2制御部34についても同様に、第2制御部34が導電部材41間に配置されていることにより、第2制御部34が、コネクタ10内に対するブスバー73の挿入時に、第1方向Xにおけるブスバー73の挿入位置を規制する部位としても併せて機能するため、第2制御部34とは別途にブスバー73の挿入位置を規制する部位を形成する必要がなく、第2ハウジング30の設計自由度をより一層向上できる。
【0060】
なお、上述した実施例では、コネクタが、異なる2つの接続対象物が外部から嵌合されるコネクタであるものとして説明したが、コネクタの具体的態様はこれに限定されず、例えば、コネクタに対して1つの接続対象物が外部から嵌合されるように構成してもよい。
【0061】
また、上述した実施例では、コンタクトが、一方の接続対象物に接触する第1接触部と、他方の接続対象物に接触する第2接触部とを有しているものとして説明したが、外部から嵌合される接続対象物が1つである場合には、片方の接触部のみをコンタクトに形成すればよい。
【0062】
また、上述した実施例では、第1ハウジングと第2ハウジングの両方が、コンタクト収容部内におけるコンタクトの位置および姿勢を制御する制御部を有しているものとして説明したが、一方のハウジングのみに制御部を設けてもよい。
【0063】
また、上述した実施例では、第1ハウジングが取り付け対象物に対して移動可能に取り付けられているものとして説明したが、第1ハウジングが取り付け対象物に対して固定されていてもよい。
【0064】
また、上述した実施例では、コンタクトが、一対の導電部材と付勢部材とから構成され、一対の導電部材で接続対象物を挟持して接触するものとして構成されているが、コンタクトの具体的態様は上記に限定されず、例えば、単一の導電部材からコンタクトを構成してもよい。
【0065】
また、上述した実施例では、コンタクト全体がコンタクト収容部内に収容されているものとして説明したが、コンタクトの一部をコンタクト収容部の外部に突出させてもよい。
【0066】
また、上述した実施例では、コンタクトが、電源供給用コンタクトであるものとして説明したが、信号コンタクトとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 ・・・ コネクタ
20 ・・・ 第1ハウジング
21 ・・・ 第1収容部
22 ・・・ 第1開口部
23 ・・・ スライドガイド部
24 ・・・ 第1制御部
25 ・・・ 第1位置規制部
26 ・・・ 信号用ハウジング保持部
30 ・・・ 第2ハウジング
31 ・・・ 第2収容部
32 ・・・ 第2開口部
33 ・・・ 取付バネ部
34 ・・・ 第2制御部
35 ・・・ 第2位置規制部
36 ・・・ ガイド部
40 ・・・ コンタクト
41 ・・・ 導電部材
41a ・・・ 基部
41b ・・・ 取付部
41c ・・・ 支持部
41d ・・・ 第1接触部
41e ・・・ 第2接触部
42 ・・・ 付勢部材
50 ・・・ 信号用ハウジング
51 ・・・ 信号線
60 ・・・ コンタクト収容部
70 ・・・ 電池ユニット
71 ・・・ ケーシング(取り付け対象物)
71a ・・・ 取り付け開口部
72 ・・・ バッテリ
73 ・・・ ブスバー(接続対象物)
74 ・・・ スペーサ
75 ・・・ ボルト
80 ・・・ 収容ラック
90 ・・・ ラック側コネクタ
91 ・・・ ラック側コンタクト(他の接続対象物)
92 ・・・ ラック側ハウジング
92a ・・・ ガイド部
X ・・・ 第1方向
Y ・・・ 第2方向
Z ・・・ 第3方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、前記第1ハウジングに取り付けられ前記第1ハウジングと共にコンタクト収容部を構成する第2ハウジングと、前記コンタクト収容部内に少なくとも一部が収容されるコンタクトとを備え、
前記第2ハウジングは、前記第1ハウジングに対して相対的にスライド可能に取り付けられ、
前記コンタクトは、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に遊びをもった状態で前記コンタクト収容部内に収容され、
前記第2ハウジングは、前記コンタクト収容部内における前記コンタクトの位置および姿勢を制御し、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが相対的にスライドした際に、前記コンタクトを押動する制御部を有していることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記コンタクトは、前記第2ハウジング側に配置され接続対象物に接触する接触部を有していることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記コンタクトは、前記第1ハウジング側に配置され他の接続対象物に接触する他の接触部を更に有していることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1ハウジングは、前記コンタクト収容部内における前記コンタクトの位置および姿勢を制御し、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが相対的にスライドした際に、前記コンタクトを押動する制御部を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記コンタクトは、対向配置された一対の導電部材と、前記一対の導電部材の間に設けられ前記一対の導電部材を相互に接近させる方向に付勢する付勢部材とを備え、
前記コンタクトは、前記付勢部材により付勢された前記一対の導電部材で接続対象物を挟持して接続されるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第2ハウジングの前記制御部は、前記一対の導電部材間に介在して配置されていることを特徴とする請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記コンタクトは、対向配置された一対の導電部材と、前記一対の導電部材の間に設けられ前記一対の導電部材を相互に接近させる方向に付勢する付勢部材とを備え、
前記コンタクトは、前記付勢部材により付勢された前記一対の導電部材で接続対象物を挟持して接続されるように構成され、
前記第1ハウジングの前記制御部は、前記一対の導電部材間に介在して配置されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第2ハウジングは、接続対象物と嵌合する方向及び前記第1ハウジングが相対的にスライドする方向に直交する方向に、前記コンタクトの位置を規制する位置規制部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記第1ハウジングは、接続対象物と嵌合する方向及び前記第2ハウジングが相対的にスライドする方向に直交する方向に、前記コンタクトの位置を規制する位置規制部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記第2ハウジングは、接続対象物と嵌合する方向に直交する方向に、前記第1ハウジングに対して相対的にスライド可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のコネクタと、前記コネクタが取り付けられる取り付け対象物とを備え、
前記第1ハウジングは、前記取り付け対象物に対して移動可能な状態で前記取り付け対象物に取り付けられていることを特徴とするコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−8612(P2013−8612A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141457(P2011−141457)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【特許番号】特許第5041563号(P5041563)
【特許公報発行日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】