説明

コネクタのシール構造及びその製造方法

【目的】 アースコネクタやエンジンコネクタにおける端子からの水や油の浸入を防止し得るシール構造及びその製造方法を提供する。
【構成】 コネクタハウジング1の壁部8から端子2を導出させるコネクタにおいて、壁部に対する端子の埋入部3の表裏面に複数の横溝を刻設し、埋入部にシールコート剤6を介して壁部8を一体成形してなるシール構造、並びに、コネクタハウジング1に対する端子の埋入部にシールコート剤を塗布した後、埋入部のシールコート剤上にコネクタハウジングを一体成形するコネクタの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アースコネクタやエンジンコネクタにおける端子からの水や油の浸入を防止したシール構造及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図5は、従来におけるアースコネクタのシール構造を示すものである。この構造は、雌コネクタハウジング21にジョイントアース端子22を装着し、相手雄コネクタハウジング23に、タブ状のジョイント端子24に対する雌端子25を収容させると共にグリス27を充填することによって、雄、雌両コネクタ26,28内部の防水を行わせるものである。
【0003】しかしながら、上記構造にあっては、両端子24,25の接続による熱でグリス27が溶けて防水性が悪くなり、その場合にアース端子29の埋入部30の隙間からコネクタ26,28内に水が浸入するという欠点があった。
【0004】図8は、同じく従来のエンジンコネクタのシール構造を示すものである。この構造は、エンジンブロック51の接続孔52に固定される雌コネクタ53の内部にエポキシ樹脂54を充填して、エンジンブロック51の内側から該コネクタ53に導入される電線55に沿ってのオイル上がりを防止したものである。
【0005】該エポキシ樹脂54は、コネクタ端部のゴム栓56の内側から電線圧着端子57の雄タブ基部にかけて充填される。また該雌コネクタ53には接続孔52に対してOリング58を設け、相手雄コネクタ59には該雌コネクタ53に対するパッキン60を設けて、防油と防水とを図っている。しかしながら、上記構造にあっては、コネクタ53内にエポキシ樹脂54を充填する作業が汚れ易く面倒で手間がかかるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した点に鑑み、アースコネクタにおける端子からの水の浸入やエンジンコネクタにおけるオイルの浸入を簡単確実に防止し得るシール構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、コネクタハウジングの壁部から端子を導出させるコネクタにおいて、該壁部に対する該端子の埋入部の表裏面に複数の横溝を刻設し、該埋入部にシールコート剤を介して該壁部を一体成形してなることを特徴とするコネクタの防水構造、並びに、端子にコネクタハウジングを一体成形するコネクタの製造方法において、該コネクタハウジングに対する該端子の埋入部にシールコート剤を塗布した後、該埋入部のシールコート剤上に該コネクタハウジングを一体成形することを特徴とするコネクタの製造方法をそれぞれ採用するものである。
【0008】
【作用】シールコート剤によって端子の埋入部とコネクタハウジング間の隙間がなくなり、外部からの水や油の浸入が阻止される。該埋入部に設けた複数の横溝は、シールコート剤の付着性を向上させ、シール性を一層向上させる。該シールコート剤の塗布及びハウジングの一体成形は簡単迅速に行うことができる。
【0009】
【実施例】図1は、本発明に係るコネクタのシール構造をアースコネクタに適用した例を示す斜視図、図2は、同じく相手コネクタを嵌合する状態の縦断面図、図3は、図2のA−A断面図である。このシール構造は、合成樹脂製の雌コネクタハウジング1から導出するアース端子2の該ハウジング1に対する埋入部3にシールコート剤6を塗布し、該埋入部3のシールコート剤6上に該コネクタハウジング1を一体モールド成形してなることを特徴とする。
【0010】該アース端子2は、図4に示す如く、コネクタハウジング1内に収容されるジョイント端子4の基部5に一体に連成されたものであり、該基部5から直角に折り曲げ連成された平板状の埋入部3の表裏面には、横断方向に複数の横溝7を刻設して、シールコート剤6の付着性の向上を図っている。
【0011】該横溝7は埋入部3の表裏面において千鳥状に配列されている。該埋入部3の先端方は直角に折り曲げられ、コネクタハウジング1の壁部8から外部に突出し(9)、その先端に更に直角に折り曲げられたアース接続部10が連成されている。
【0012】該シールコート剤6としてはスプレーにより塗布可能なシリコン系接着剤(セメダインLG−002 等) が好適である。なお、図2の如く、雌コネクタ(アースコネクタ)11の底壁12には、雄コネクタ13の先端嵌合部14に対するシールパッキン15を配設してあり、該雄コネクタ13の後部には、端子16の電線17に密着するゴム栓18を装着している。
【0013】従って、両コネクタ11,13の嵌合後は、アース端子2からの水の浸入をシールコート剤7で防ぎ、コネクタ嵌合部14からの浸入をシールパッキン15で防ぎ、外部から雄コネクタ13への浸入をゴム栓18で防いで、完璧な防水性が確保される。
【0014】図5は、本発明に係るコネクタのシール構造をエンジンコネクタに適用した例を示す分解縦断面図、図6は同じく組付状態を示す縦断面図である。該エンジンコネクタ31は、エンジンブロック32の接続孔33にボルト等(図示せず)で固定される中継コネクタ34と、該中継コネクタ34に対してエンジンブロック32の内側から接続する内部コネクタ35と、同じくエンジンブロック32の外側から接続する外部コネクタ36とにより構成される。
【0015】該中継コネクタ34の中間壁部37には真直な平板状の中継端子38を埋入させ、該中継端子38の両側の雄タブ39,39を各コネクタ嵌合室40,41内に突出させている。本発明のシール構造は、該中継端子38の埋入部42に前例同様のシールコート剤6を塗布し、該埋入部42のシールコート剤6上に合成樹脂製のコネクタハウジング43(中間壁部37)を一体モールド成形やインサート成形してなることを特徴とする。
【0016】該中継コネクタ34はエンジンブロック32の接続孔33に対するOリング44を有し、外部コネクタ36は中継コネクタ34の先端嵌合部45に対するパッキン46と電線47に対するゴム栓48とを有している。なお内部コネクタ35はシール構造を有さない。内部及び外部コネクタ35,36は中継端子38の雄タブ39,39に対する雌端子49,50を有し、コネクタ嵌合によってエンジン内外の電気的接続を行う。中継端子38のシールコート剤6はエンジン内部からのオイル上がりと外部からの水の浸入とを同時に阻止する。
【0017】
【発明の効果】以上の如くに、本発明によれば、端子の埋入部にシールコート剤を介してコネクタハウジングを一体成形させるから、熱や振動等が加わった場合でも確実に水や油の浸入を防ぐことができ、しかも従来のようなグリスやエポキシ樹脂の充填作業が不要であるから、作業が容易で且つコンパクトなシール構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコネクタのシール構造の第一実施例を示す要部切欠斜視図である。
【図2】同じく相手コネクタを嵌合する状態を示す縦断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】ジョイントアース端子を示す斜視図(円内は要部拡大図)である。
【図5】本発明に係るコネクタのシール構造の第二実施例を示す分解縦断面図である。
【図6】同じく組付状態を示す縦断面図である。
【図7】第一従来例を示す分解縦断面図である。
【図8】第二従来例を示す分解縦断面図である。
【符号の説明】
1,43 コネクタハウジング
2 アース端子
3,42 埋入部
6 シールコート剤
7 横溝
8,37 壁部
11 アースコネクタ
31 エンジンコネクタ
38 中継端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コネクタハウジングの壁部から端子を導出させるコネクタにおいて、該壁部に対する該端子の埋入部の表裏面に複数の横溝を刻設し、該埋入部にシールコート剤を介して該壁部を一体成形してなることを特徴とするコネクタのシール構造。
【請求項2】 端子にコネクタハウジングを一体成形するコネクタの製造方法において、該コネクタハウジングに対する該端子の埋入部にシールコート剤を塗布した後、該埋入部のシールコート剤上に該コネクタハウジングを一体成形することを特徴とするコネクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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