説明

コネクタカバー

【課題】 コネクタに装着されたコネクタカバーを取り外しにくくする。
【解決手段】 所定の基板140に実装される基板側コネクタ160とこれに挿抜されるハーネス側コネクタ150とが接続された状態で、これらを脱抜不能に覆うコネクタカバー10であって、接続状態にある各コネクタ150、160の全体又は一部を覆う本体11と、コネクタカバー10を取り外し不能に固定する固定手段と、本体周面から外方へ突設形成された遮蔽部20と、を備え、遮蔽部20は、外力により不正の痕跡が残るように薄肉形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に実装されたコネクタに装着されるコネクタカバーに関し、特に、そのコネクタカバーを取り外す行為に対して抑止力となるとともに、該コネクタカバーを取り外しにくい構造とし、かつ、この構造を有するものの、取り外そうと外力を加えた場合に痕跡が残るようにしたコネクタカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スロットマシンやパチンコ機等の遊技機には、ゲーム性に関与する複数の基板が配設されている。
これらの基板には、遊技の結果を左右するとともに、遊技機全体を制御する主要な基板である主基板が含まれている。
主基板は、プリント基板上にCPU,ROM,RAM等の種々の電子部品が配置されたコンピュータとして構成されている。
このような遊技の結果を左右する主基板は、不正改造の対象となり易く、そのために、当該主基板を透明な二つのケースの間に挟んで収容するとともに、さらに、このケースを開封不能に封止している。
【0003】
ところが、近年では、基板収納ケースを開けることなく、回路基板と諸装置とを接続するケーブルのコネクタを脱抜して、ここに不正基板等の不正部品を取り付けたり、正規な基板を不正改造基板に交換したりする不正行為が行われることがある。
そこで、この不正行為を防止するための改良技術が種々提案されている。
例えば、コネクタを前後から挟むように正面側部品と背面側部品とを取り付け、ピンで留めて固定するコネクタカバーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この技術によれば、そのカバーを破壊しない限りコネクタを脱抜できず、不正な基板をコネクタに接続できないため、不正行為を防止できる。
【0004】
また、全体が一体形成されており、少なくともコネクタの上面、正面、側面と、背面の一部を覆うコネクタカバーが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
この技術によれば、コネクタカバーの正面内側の下方に設けられた突起部がコネクタの底面縁部に係止するので、このコネクタカバーを容易に取り外すことができない。これにより、コネクタを脱抜できず、不正基板等と交換する不正行為を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−460号公報
【特許文献2】特開2006−34784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1、2に記載の技術においては、次のような問題があった。
例えば、特許文献1に記載の技術(文献技術1)は、コネクタカバーが複数の部品で構成されているため、管理が煩雑となっていた。
また、各部品ごとに取り付ける作業が必要となるため、工数が多くなり、時間がかかっていた。
【0007】
これに対し、特許文献2に記載の技術(文献技術2)は、部品数が一つであるため、文献技術1が有する問題を解消している。
ところが、文献技術2は、コネクタカバーの内面の下方に形成された突起部をコネクタの底面縁部に係止させることで、コネクタカバーが外されるのを防止していた。このため、先端が鉤状の棒をコネクタカバーの底部から挿入し、突起部が底面縁部から外れる方向に鉤棒を引きつつコネクタカバーを上方へ持ち上げれば、このコネクタカバーを外すことができた。
そうすると、コネクタへの不正行為が可能となり、コネクタカバーを取り付ける意味がなくなっていた。
【0008】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、コネクタカバーを取り外す行為に対して抑止力となるとともに、該コネクタカバーを取り外しにくい構造とし、かつ、この構造を有するものの、取り外そうとする外力が加わった場合にはその外力に対して簡単に塑性変形することでコネクタに対する不正操作の発覚を容易にするコネクタカバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明のコネクタカバーは、所定の基板に実装される基板側コネクタとこれに挿抜されるハーネス側コネクタとが接続された状態で、これらを脱抜不能に覆うコネクタカバーであって、接続状態にある各コネクタの全体又は一部を覆う本体と、コネクタカバーを取り外し不能に固定する固定手段と、本体周面から外方へ突設形成された遮蔽部と、を備え、遮蔽部は、外力により不正の痕跡が残るように薄肉形成された構成としてある。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコネクタカバーによれば、コネクタカバーが、コネクタカバーを取り外し不能に固定する固定手段を有するとともに、本体周面から外方へ突設形成された遮蔽部を備えたので、該コネクタカバーを取り外そうとする行為に対して抑止力となり、かつ、該コネクタカバーを取り外しにくい構造とすることができる。
また、このようにコネクタカバーを取り外しにくい構造とするものの、取り外そうとして外力が加えられた場合にはその外力により簡単に塑性変形することで、コネクタに対する不正操作の発覚を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の遊技機(スロットマシン)の構成を示す外観斜視図である。
【図2】主基板が収納された基板ケースの構成を示す外観斜視図である。
【図3】コネクタ及びコネクタカバーの構成を示す外観斜視図である。
【図4】基板側コネクタにハーネス側コネクタが嵌合された状態を示す外観斜視図である。
【図5】コネクタにコネクタカバーが装着された状態を示す外観斜視図である。
【図6】(a)は、コネクタカバーの上面図、(b)は、コネクタカバーの正面図、(c)は、コネクタカバーの底面図である。
【図7】(a)は、コネクタカバーの長手方向の縦断面図、(b)は、コネクタにコネクタカバーが装着された状態における長手方向の縦断面図である。
【図8】遮蔽部の縦方向断面を示す要部拡大図(図7のA部拡大図)である。
【図9】コネクタカバーから閉塞部材を分離した状態を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るコネクタカバーの好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
[実施形態]
まず、本発明のコネクタカバーを備えた遊技機の実施形態について、図1を参照して説明する。
同図は、本実施形態の遊技機であるスロットマシンの構成を示す外観斜視図である。
なお、本実施形態においては、遊技機に関する説明を、次の「(I)遊技機(スロットマシン)」にて行い、コネクタカバーに関する説明を、「(III)コネクタカバー」にて行う。
【0014】
(I)遊技機(スロットマシン)
遊技機には、パチンコ機、スロットマシン、アレンジボール、雀球など様々な機類があるが、本実施形態では、メダルを遊技媒体とするスロットマシンに本発明のコネクタカバーを適用した場合について説明する。
【0015】
図1に示すように、スロットマシン100は、複数のリール110a,110b,110cを回転させることによって遊技媒体であるメダルを獲得することができる回胴式遊技機を構成している。
スロットマシン100は、必要な機械、装置等を収納する正面側が開口した筐体100bと、筐体100bの正面側を開閉可能に覆う前扉100aとで構成されている。
前扉100aは、筐体100bにヒンジ等を介して開閉可能に取り付けられる扉体で、この前扉100aに各リール110の回転を始動させるスタートレバーや、回転している各リール110を停止させる3つの停止ボタンなどの複数の操作手段が設けられて、スロットマシン100の正面部を構成している。
【0016】
筐体100bの中央には、リール110a,110b,110cと、各リール110を回転可能に支持する図示しないモータ及び回転位置を検出するセンサ等が設けられている。
また、筐体100bの下部には、メダルの貯留・払出しを行うメダル払出装置120が設けられる。
筐体100bの上部には、所定のプリント基板が収容された基板ケース130が設けられている。
【0017】
基板ケース130は、上記の各操作手段からの信号に基づき、各リール110、メダル払出装置120などの各装置を制御することで、スロットマシン遊技の進行制御を行う、いわゆる主基板140が収容されている。
主基板140は、各リール110に停止表示される図柄の組合せを判定し、所定の図柄の組合せのときには、メダル払出装置120に対して所定数のメダルを払い出させる制御を行う。
【0018】
このような構成からなるスロットマシン100は、主基板140により、以下のように制御されてスロットマシン遊技が進行する。
まず、遊技者によりメダルが投入され、スタートレバーが操作されると、主基板140は、各リール110を回転させる制御を行うとともに、ボーナスや小役等を抽選する内部抽選を行い、各停止ボタンが押下操作されたタイミングに基づき、抽せん結果に応じた図柄の組合せで停止するよう、回転している各リール110の停止制御を行う。
【0019】
このようなスロットマシン遊技の進行を制御する主基板140には、CPU(中央演算処理装置)、ROM及びRAMなどの記憶手段、I/OインターフェイスなどのIC部品、抵抗、コンデンサ、トランジスタなどの様々な電子部品などが実装されている。
また、主基板140には、図2に示すように、スロットマシン100内の種々の装置と接続するための基板側コネクタ160が実装されている。
この基板側コネクタ160に対しては、上方からハーネス側コネクタ150が接続される(図4参照)。このため、主基板140を収容する基板ケース130には、基板側コネクタ160の実装位置に対応した部分に、開口したコネクタ孔131が形成されており、基板ケース130が閉じた状態では、基板側コネクタ160の少なくとも本体部161の上部及びレバー162(後述)がコネクタ孔131から露出して、ハーネス側コネクタ150の嵌合を可能としている。
【0020】
ところで、主基板140では、基板側コネクタ160からハーネス側コネクタ150を取り外し、ここに不正基板等の不正部品を取り付けたり、正規な主基板を不正改造基板に交換したりして、スロットマシン100における遊技特性(例えば、出玉率)を変更し、メダルを不正に払い出させるという行為が行われてきた。
そこで、本実施形態の遊技機100は、基板側コネクタ160とハーネス側コネクタ150が接続された状態でコネクタカバー10を装着することで、ハーネス側コネクタ150を脱抜不能とし、不正部品の取り付けを不可能とした。
以下、本実施形態のコネクタAとコネクタカバー10の構成について、図3〜図9を参照しつつ説明する。
【0021】
(II)コネクタA
コネクタAは、図3に示すように、ハーネス側コネクタ150と、基板側コネクタ160とを有している。
なお、図3は、ハーネス側コネクタ150、基板側コネクタ160、コネクタカバー10の各構成を示す外観斜視図である。
【0022】
ハーネス側コネクタ150は、ワイヤハーネス170の端部に接続されており、基板側コネクタ160の本体部161の開口163に嵌合することで、ワイヤハーネス170の各線と基板側コネクタ160の各ピン164とを対応付けて接続する。
ワイヤハーネス170は、複数本の電線を同一面上で平行に配置し、フラットケーブルとして形成したものである。
【0023】
基板側コネクタ160は、横長で箱状の本体部161と、この本体部161の両側面に取り付けられたレバー162とを有している。
本体部161は、上面に開口163が形成されており、ハーネス側コネクタ150が挿抜可能になっている。
【0024】
レバー162は、ヘッド部162−1と、このヘッド部162−1を本体部161に対し回動可能に接続するアーム部162−2とを有している。
ヘッド部162−1の底面162−3のうち開口163側の辺には、下方向に凸状の係止部162−4が形成されている。この係止部162−4は、図4に示すように、ハーネス側コネクタ150が本体部161の開口163に嵌め込まれたときに、そのハーネス側コネクタ150の上面両端の凹部151に係合して、このハーネス側コネクタ150を保持しロックする。
【0025】
また、ヘッド部162−1の底面162−3のうち、係止部162−4が形成された辺に対向する辺は、下向きの段差162−5になっており、コネクタカバー10のツメ部16(後述)が係合する。この機能については、後記の「(III)コネクタカバー」における「(III−21)ツメ部」で詳述する。
【0026】
(III)コネクタカバー
次に、コネクタカバーについて、図3、図5〜図7を参照して説明する。
図5は、コネクタにコネクタカバーを装着した状態を示す外観斜視図である。図6(a)は、コネクタカバーの上面図、図6(b)は、コネクタカバーの正面図、図6(c)は、コネクタカバーの底面図である。図7(a)は、コネクタカバーの長手方向における縦断面図、図7(b)は、コネクタにコネクタカバーを装着したときの長手方向における縦断面図である。
【0027】
コネクタカバー10は、コネクタAを覆う本体11と、この本体11の周面に形成された遮蔽部20とを有しており、閉塞部材30(後述)を除き、本体11と遮蔽部20が一体形成されている。
ここでは、本実施形態におけるコネクタカバー10の最大の特徴である遮蔽部20について先に説明し、遮蔽部20以外の本体11の特徴については、その後に説明する。
【0028】
(III−1)遮蔽部
遮蔽部20は、本体11の周面(正面12、背面13、側面14)から外方に向かってフランジ状に突設形成された板状部分である。
また、遮蔽部20は、基板140に実装された基板側コネクタ160の本体部161にハーネス側コネクタ150が嵌合され、これにコネクタカバー10が装着されたときに、該コネクタカバー10の本体11の周面からその基板140の実装面に向かって斜め下方向へ突設形成された形状となっている。
さらに、遮蔽部20の下端部21は、図5に示すように、基板ケース130のコネクタ孔131から露出したコネクタAに該コネクタカバー10を装着したときに、そのコネクタ孔131の外縁にて基板ケース130の外側からほぼ当接する。これにより、このコネクタカバー10を外さなければ、基板ケース130を開放できないようになっている。そこで、コネクタカバー10を外そうとするものの、コネクタカバー10の本体11の両端内部には、係止部(ツメ部16)が形成されており、後述するように、基板側コネクタ160のレバー162に係合して、該コネクタカバー10を取り外し不能としている。このため、その内側にアクセスしようとするが、その係止部の形成された本体11の両端の外側周面には遮蔽部20が突設形成されているので、そのアクセスに用いられる不正工具の侵入が遮断される。このように、コネクタカバー10は、係止部や遮蔽部20等を有して取り外しにくい構造となっている。そして、このような構造を有するにもかかわらず、不正行為者が該コネクタカバー10を取り外そうとして遮蔽部20に外力を加えると、この遮蔽部20が塑性変形するので、不正行為の痕跡を残すことができる。
【0029】
また、遮蔽部20は、塑性変形可能に薄肉に形成されている。つまり、遮蔽部20に対して外力が加わると容易に塑性変形する。これにより、不正行為が行われた痕跡を確実に残すことができる。
【0030】
さらに、遮蔽部20は、その外力に伴い一定以上の力が加わると白化する材料で形成されている。これにより、不正行為によって遮蔽部20が変形した事実を白色の発色痕跡として残すことができる。
しかも、白化する材料として、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)を用いた場合は、常温では透明の固体として存在し、白化した部分は不透明になる。このことから、その白色痕は、遮蔽部20の他の部分よりも目立つので、不正行為の事実を容易に発見できる。
【0031】
また、図1に示すように、遊技機100においては、基板ケース130が垂直方向に立てた状態で取り付けられており、コネクタカバー10がその垂直面に対して直交する方向から取り付けられている。そして、遮蔽部20は、その取り付けられた状態では、基板ケース130の垂直面に沿って広がるように、本体11の周面から突設形成されているので、前扉100aを開けて基板ケース130を見たときに、遮蔽部20の全体を一度に視認できる。これにより、白化の痕跡をすぐに確認でき、不正行為の事実を確実に発見できる。
なお、本実施形態においては、白化する材料としてABSを用いるが、これに限るものではなく、白化する他の材料で遮蔽部20を形成することができる。
【0032】
また、遮蔽部20は、コネクタカバー10の本体11の周面からほぼ直交方向外方へ突設形成された第一遮蔽部23と、この第一遮蔽部23の外周端辺から斜め下方向へテーパ状に延伸形成された第二遮蔽部24とを有した形状としてある。
特に、第二遮蔽部24は、第一遮蔽部23より急勾配で形成されるとともに、基板140に実装された基板側コネクタ160の本体部161にハーネス側コネクタ150が嵌合され、これにコネクタカバー10が装着されたときに、その基板140の実装面に向かって下方向へ延伸形成された形状となっている。
【0033】
さらに、図8に示すように、第一遮蔽部23と第二遮蔽部24との間の曲部25には、薄肉部25−1が形成されている。薄肉部25−1は、曲部25の全体又は一部に形成されており、第一遮蔽部23や第二遮蔽部24よりも肉厚が薄くなっている。
【0034】
このように、遮蔽部20は、第二遮蔽部24が第一遮蔽部23よりも急勾配で形成されており、かつ、第二遮蔽部24が第一遮蔽部23よりも外側にあることから、遮蔽部20をめくり上げようとするときには、まず第二遮蔽部24がめくられる。そして、第二遮蔽部24と第一遮蔽部23との間の曲部25に薄肉部25−1が形成されており、この薄肉部25−1は、第一遮蔽部23及び第二遮蔽部24よりも厚みが薄くなっていることから、第二遮蔽部24に外力が加わると、薄肉部25−1に最初に負荷がかかって容易に変形し白化する。
しかも、薄肉部25−1は、第一遮蔽部23と第二遮蔽部24との間の曲部25に形成されているので、コネクタカバー10を上方から見たときに、遮蔽部20の上面22の中ほどに位置する。このことから、白化したことを容易に発見できる。
【0035】
さらに、第二遮蔽部24だけでなく第一遮蔽部23をもめくり上げようとすると、今度は、遮蔽部20の付け根部分(遮蔽部20と本体11との接合部分)が変形して白化する。これにより、白化する部分が薄肉部25−1から付け根部分にまで広がることから、その白化した部分を容易に見つけることができる。
しかも、第二遮蔽部24をテーパ状に形成したことで、遮蔽部20の下方に空間ができるため、工具を挿入しやすくなる。また、第二遮蔽部24の端部に工具の先端が引っ掛かりやすくなる。よって、遮蔽部20がめくりやすくなり、その結果、不正行為の痕跡が残り易くなる。
【0036】
なお、図5においては、遮蔽部20の下端部21(第二遮蔽部24の周縁)が基板ケース130の上面133に接触しているが、これに限るものではなく、例えば、遮蔽部20の全体をコネクタ孔131に収めるとともに、その遮蔽部20の下端部21をコネクタ孔131の開口縁部132に近接又は接触させるようにすることができる。この場合、遮蔽部20の上面22と基板ケース130の上面133がほぼ面一となる。これにより、遮蔽部20をめくり上げるために工具を遮蔽部20の下端部21に接触させようとしても、コネクタ孔131の開口縁部132が遮って、接触できない。よって、遮蔽部20をめくり上げることができなくなり、コネクタカバー10の取り外しを阻止できる。
【0037】
また、図3等においては、遮蔽部20が、コネクタカバー10の本体11の周面を一周するように形成されているが、一周させることに限るものではなく、本体11の周面の一部にのみ形成することもできる。
この場合、コネクタカバー10の本体11のうち、コネクタAの側部を覆う部分(コネクタカバー10の側面14、正面12の右側部及び左側部、背面13の右側部及び左側部)の外側面においてのみ、遮蔽部20を突設形成させることができる。これにより、コネクタカバー10の本体11における側面14の裏側15にツメ部16(後述)が形成されている場合に、コネクタカバー10の側面14付近のコネクタ孔131から不正工具を挿入して、ツメ部16によるコネクタAへの係止を解除する行為を阻止することができる。
【0038】
さらに、遮蔽部20は、コネクタカバー10の側面14においては、該側面14の中央より下方に形成されているのに対し、コネクタカバー10の正面12や背面13においては、上に凸のやまなりに形成されている。これは、ハーネス側コネクタ150が嵌合された基板側コネクタ160にコネクタカバー10を装着したときに、ハーネス側コネクタ150に接続されたワイヤハーネス170にコネクタカバー10が接触して、このコネクタカバー10の装着が阻止されることを回避するためである。ただし、ワイヤハーネス170は、ハーネス側コネクタ150から見て一方向にのみ延設されているため、遮蔽部20は、コネクタカバー10の正面12又は背面13の一方においてのみやまなりに形成し、他方では、側面14に形成された遮蔽部20と同じ高さで形成するようにすることができる。
【0039】
(III−2)本体
コネクタカバー10の本体11は、接続状態にあるハーネス側コネクタ150と基板側コネクタ160の全体又は一部を覆う形状となっている。具体的には、ハーネス側コネクタ150が嵌合された基板側コネクタ160の上面及び側面のほとんどと、正面及び背面の上部や側部を覆う形状となっている。
また、本体11は、コネクタAに装着された状態において、コネクタAとの隙間から針金などの不正工具が挿入されないように、内部形状がコネクタAの外形に近似した形状としてある。
ここでは、本体11の特徴であるツメ部16と剥ぎ取り部17について、順次説明する。
【0040】
(III−21)ツメ部
ツメ部16は、コネクタAにコネクタカバー10を装着したときに、このコネクタカバー10の取り外しを困難とするための構造の一つである。
ツメ部16は、図6(c)、図7(a)、(b)に示すように、本体11の側面14の裏側15の下部から斜め上方向に向かって突設形成された平板バネである。
【0041】
このツメ部16は、該コネクタカバー10が基板側コネクタ160に取り付けられるときと取り付けられていないときで、その状態が異なる。
例えば、該コネクタカバー10が基板側コネクタ160に取り付けられていないとき、つまり、荷重がないとき、ツメ部16は、突設方向が側面裏側15の下部から斜め上方向となっている(図7(a)参照)。
該コネクタカバー10が基板側コネクタ160に取り付けられる際、ツメ部16は、基板側コネクタ160のヘッド部162−1に接する。この場合、ツメ部16は、ヘッド部162−1からの荷重により側面裏側15の方へ押されて、突設方向がほぼ上方向となる。この状態で、ツメ部16は、ヘッド部162−1からの荷重により弾性エネルギーを蓄勢する。
【0042】
そして、ツメ部16の先端16−1がヘッド部162−1の底面162−3の段差162−5に達すると、ヘッド部162−1からの荷重がなくなる。このとき、ツメ部16は、それまで蓄勢していた弾性エネルギーにより元の状態に戻り、突設方向が側面裏側15の下部から斜め上方向となる(図7(b)参照)。
こうして、該コネクタカバー10が基板側コネクタ160に取り付けられると、ツメ部16の先端16−1がヘッド部162−1の底面162−3の段差162−5に係合する。この係合は、段差162−5の下方にツメ部16の先端16−1が位置するだけでなく、そのツメ部16の先端16−1が段差162−5の奥まで達したかたちとなっている。これは、ツメ部16がコネクタカバー10の側面裏側15の下部から斜め上方向に突設形成されたためであり、これにより、コネクタカバー10の取り外しを困難とする要因となっている。
【0043】
こうしてコネクタカバー10を取り付けた後、今度は基板側コネクタ160から取り外すために、このコネクタカバー10を上方(コネクタ10の装着方向とは反対の方向)へ持ち上げようとすると、ツメ部16が上方にある段差162−5に引っ掛かり、このままでは、コネクタカバー10を取り外すことはできない。
ここで、特許文献2の問題点を説明したときに挙げた針金を使って、コネクタカバー10を取り外すことが考えられる。
【0044】
例えば、先端が鉤状の針金をコネクタカバー10の側面14の底部から挿入する。そして、ツメ部16が段差162−5から外れる方向に針金を引いてみる。そうすると、側面14の下部とこれに繋がるツメ部16の付け根部分が外方に引っ張られるだけであって、ツメ部16の先端16−1は段差162−5に係止したままとなる。
また、針金の先端がツメ部16に達したとしても、ツメ部16の付け根部分を支点とし、ツメ部16の先端16−1を力点として、このツメ部16の先端16−1を側面裏側15に押し付けることは、針金の操作では到底できない。
このように、コネクタカバー10は、針金などを用いても取り外すことができない。このことから、コネクタAに不正部品を取り付ける行為を確実に防止できる。
【0045】
さらに、ツメ部16は、コネクタカバー10が基板側コネクタ160に装着された状態において、基板側コネクタ160のレバー162がロックを解除するのを妨げる箇所に位置している。しかも、ツメ部16が係止する段差162−5は、ヘッド部162−1の開方向側面162−6の下辺に位置している。つまり、レバー162がロックを解除する方向にツメ部16が位置しているので、レバー162を開こうとしてもツメ部16がつっかえ棒となって開くことができない。これにより、レバー162がロックを解除する方向へ開くのを阻止できる。
【0046】
また、コネクタカバー10が不正に取り外され、再度コネクタAに装着された場合でも、遮蔽部20に変形や白化の痕跡が残っているので、その不正を容易に発見することができる。
なお、ツメ部16は、コネクタカバー10をコネクタAから取り外し不能に固定することから、「固定手段」としての機能を有している。
【0047】
(III−22)剥ぎ取り部
剥ぎ取り部17は、メンテナンス等によりハーネス側コネクタ150を基板側コネクタ160から取り外す必要が生じたときに、コネクタカバー10の装着を解除するために設けられた部分である。
この剥ぎ取り部17は、図3、図6(a)、(c)、図7(a)、(b)に示すように、コネクタカバー10の本体11のほぼ中央部に形成されており、本体11の上面18に形成された開口17−1と、本体11の正面裏側12−1及び背面裏側13−1にそれぞれ形成された肉厚部17−2と、この肉厚部17−2の両脇に形成された溝部17−3とを有している。
【0048】
開口17−1は、本体11の上面18においてほぼ矩形に形成されており、この矩形を構成する四辺のうちの二辺(対向する二辺)が、上面18の長辺と平行している。この二辺は、剥ぎ取り部17を剥ぎ取る際、工具により挟まれて剥ぎ取りが開始される部分となる。以後、この二辺を「剥ぎ取り開始部17−4」という。
【0049】
肉厚部17−2は、本体11の正面12の裏側12−1から遮蔽部20の裏側にかけて形成されるとともに、背面13の裏側13−1から遮蔽部20の裏側にかけて形成されたほぼ矩形縦長の隆起部分であって、上端は、開口17−1の剥ぎ取り開始部17−4に達し、下端は、遮蔽部20の下端部21付近にまで達し、幅は、剥ぎ取り開始部17−4である開口17−1の二辺の長さよりも短くなっている。
溝部17−3は、肉厚部17−1の両脇に縦長に形成された、平行な二本一組の溝である。この溝部17−3の上端は、開口17−1の剥ぎ取り開始部17−4に達しており、下端は、遮蔽部20の下端部21付近(又は、曲部25の裏側付近)に達している。この溝部17−3が形成された箇所の厚みは、肉厚部17−2よりも薄くなっており、さらに、本体11の中でも特に薄くなっている。
【0050】
この剥ぎ取り部17は、ラジオペンチなどの工具を用いて剥ぎ取り可能となっている。すなわち、その工具を用いて剥ぎ取り開始部17−4を挟み、この挟んだ状態で工具を下方へ引き降ろしていくと、剥ぎ取り部17が溝部17−3に沿って引きちぎられていく。そして、本体11の正面裏側12−1の剥ぎ取り部17と背面裏側13−1の剥ぎ取り部17の両方がそれぞれ本体11から完全に引きちぎられると、本体11が左右二つの部品に分断される。これにより、コネクタカバー10を取り外すことができる。
【0051】
なお、剥ぎ取り部17は、本実施形態においては、コネクタカバー10の本体11のほぼ中央部に位置しているが、本体11のほぼ中央部に限るものではなく、任意の位置に形成できる。
ただし、剥ぎ取り部17は、開口17−1を有することから、ツメ部16から遠い位置に設けるのが望ましい。
【0052】
また、不正行為者がコネクタカバー10を取り外す手法として、例えば、剥ぎ取り部17の溝部17−3を、カッターナイフやニッパーなどの工具を用いて不正に切断し、その後、その切断部分を接着剤などで接着して修復することが考えられる。しかし、溝部17−3は、遮蔽部20につながっているので、その切断に伴って遮蔽部20が変形して白化するか又は波状に切断される。このため、修復が困難となり、その不正行為を容易に発見することができる。よって、メンテナンス性を確保しつつ、その不正を容易に発見することができる。
【0053】
また、図3、図9に示すように、コネクタカバー10の上面18の両端部には、孔19が形成されている。孔19は、金型を用いてコネクタカバー10を樹脂成形する際に、ツメ部16に対応して設けられた開口である。
この孔19には、閉塞部材30が嵌め込まれる。これにより、その孔19から針金などを入れてツメ部16の係止を解除する行為を阻止することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のコネクタカバーによれば、コネクタカバーの両端内部に、コネクタに係合して該コネクタカバーを取り外し不能とする係止部を設けるとともに、コネクタカバーの外周に遮蔽部を設けたので、該コネクタカバーを外すことに対して抑止力になるとともに、コネクタカバーを取り外しにくい構造とすることができる。
また、コネクタカバーが取り外しにくい構造を有しているものの、取り外そうとして遮蔽部に外力を加えると、この遮蔽部が塑性変形するので、これにより不正行為の痕跡を残すことができる。
【0055】
さらに、その変形に伴って遮蔽部が白化するので、その不正行為を白化痕として残すことができ、不正行為の事実を容易に発見できる。
しかも、剥ぎ取り部を設けたことで、メンテナンスの際、この剥ぎ取り部を切断することにより、コネクタカバーを取り外すことができる。
【0056】
以上、本発明のコネクタカバーの好ましい実施形態について説明したが、本発明に係るコネクタカバーは上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、基板ケースに収容するプリント基板を主基板としたが、スピーカやランプ等を制御する演出用の基板であるサブ基板や、その他の基板を収容することもできる。
【0057】
また、上述した実施形態では、例えば、コネクタカバーを装着するコネクタを主基板に実装されたコネクタとしたが、これに限るものではなく、サブ基板に実装されたコネクタにコネクタカバーを装着することもできる。
さらに、上述した実施形態では、コネクタカバーを、変形を伴う加圧により白化する材料で形成することとしたが、これに限るものではなく、例えば、一定以上の力が加わると変色する塗料を遮蔽部の表面に塗布することもできる。これにより、遮蔽部を変形させるためにラジオペンチの先端で該遮蔽部の端部を挟むと、この挟んだ部分が変色するため、不正行為の痕跡を残すことができる。
【0058】
また、上述した実施形態では、遮蔽部が、第一遮蔽部と第二遮蔽部とを有して、途中から傾斜角度が変わる形状(縦方向断面がへの字状)としたが、これに限るものではなく、例えば、基板ケースに収納された基板に配設されているコネクタにコネクタカバーを装着したときに、このコネクタカバーの本体の周面から基板ケースの上面に平行な方向に突設形成された形状とし、ここから基板ケースの上面に向かって傾斜するテーパ部については省略することができる。あるいは、遮蔽部は、コネクタカバーの本体の周面から急勾配のテーパ状に形成することができる。
【0059】
さらに、上述した実施形態では、コネクタカバーをコネクタから脱抜不能とする構造としてツメ部を有したが、これに限るものではなく、例えば、コネクタカバーを二つの部材で構成し、コネクタの両側から挟み込んで固定するなど、該コネクタカバーを脱抜不能とする任意の構造を採用することができる。
しかも、上述した実施形態では、外力が加わることで遮蔽部が塑性変形することとしたが、塑性変形に限るものではなく、弾性変形するものとすることができる。この場合も、所定以上の外力が加われば遮蔽部が白化するので、不正行為の事実を白化痕として残すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、遊技機に使用されるコネクタカバーに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 コネクタカバー
11 本体
12 正面
13 背面
14 側面
15 側面裏側
16 ツメ部(固定手段)
17 剥ぎ取り部
17−1 開口
17−2 肉厚部
17−3 溝部
18 上面
19 孔
20 遮蔽部
21 下端部
22 上面
23 第一遮蔽部
24 第二遮蔽部
25 曲部
25−1 薄肉部
30 閉塞部材
100 スロットマシン(遊技機)
140 主基板
150 ハーネス側コネクタ
160 基板側コネクタ
170 ワイヤハーネス
A コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の基板に実装される基板側コネクタとこれに挿抜されるハーネス側コネクタとが接続された状態で、これらを脱抜不能に覆うコネクタカバーであって、
接続状態にある前記各コネクタの全体又は一部を覆う本体と、
前記コネクタカバーを取り外し不能に固定する固定手段と、
前記本体周面から外方へ突設形成された遮蔽部と、を備え、
前記遮蔽部は、外力により不正の痕跡が残るように薄肉形成された
ことを特徴とするコネクタカバー。
【請求項2】
前記遮蔽部は、外力に伴って白化する材料で形成された
ことを特徴とする請求項1記載のコネクタカバー。
【請求項3】
前記遮蔽部は、前記本体周面から突設形成された第一遮蔽部と、この第一遮蔽部の外周端辺から延伸形成された第二遮蔽部とを有し、
前記第二遮蔽部は、前記第一遮蔽部より急勾配で前記基板の実装面に向かって下方向へ延伸する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタカバー。
【請求項4】
前記第一遮蔽部と前記第二遮蔽部との間の曲部に、前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部よりも厚さが薄い薄肉部を有した
ことを特徴とする請求項3記載のコネクタカバー。
【請求項5】
前記基板は、所定の基板ケースに収納されるとともに、前記基板側コネクタは、前記基板ケースのコネクタ孔から露出するように配設され、
前記遮蔽部の下端部が、前記コネクタ孔の外縁に基板ケース外側からほぼ当接する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコネクタカバー。
【請求項6】
剥ぎ取ることで前記コネクタカバーの本体が分断し該コネクタカバーの装着を解除可能とする剥ぎ取り部を有した
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコネクタカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−85778(P2012−85778A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234357(P2010−234357)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】