説明

コネクタ付きケーブル及びコネクタ付きケーブルの製造方法

【課題】コネクタ内部で光ファイバが動き難くなるように余長処理して、光結合部の損傷を抑制する。
【解決手段】本発明は、光信号を伝送するための光ファイバを有するケーブルと、前記光ファイバの端面と光学的に結合された光電変換部を搭載した基板を収容するコネクタと、を備えるコネクタ付きケーブルであって、前記コネクタから延び出る前記ケーブルの方向を前後方向とし、前記コネクタから見て前記ケーブルの側を後とし、逆側を前とするとともに、前記基板から見て前記光電変換部の側を上とし、逆側を下としたとき、前記コネクタの内部において、前記光ファイバの前記前後方向の向きを変えて前記光ファイバをU字状に湾曲させた湾曲部が少なくとも3つ形成されているとともに、前側の2つの湾曲部の一方が前記基板の下側に位置し、他方が前記基板の上側に位置するように、前記光ファイバが配線されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ付きケーブル及びコネクタ付きケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機器間の光伝送を行うには、例えば電気信号と光信号とを変換する光電変換部を各機器に設け、この光電変換部に光コネクタを介して光ケーブルを接続し、この光ファイバケーブルにより光信号の送受信を行う方式を用いることができる。
【0003】
この方式では、光コネクタに汚れや異物が付着すると信号の劣化が起こるという問題がある。また、この方式では、機器内に光ファイバ処理部や光電変換部が必要となってしまう。そこで、光電変換部をコネクタ側に設けたコネクタ付きケーブルが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−226027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、機器の小型化及び情報伝送量の増大に伴い、小型のコネクタ内に光ファイバを収容する必要が生じている。その一方、ケーブルに張力が加えられたときに光ファイバや光結合部の損傷を抑制するために、コネクタ内に光ファイバの余長を十分に確保することが求められる。
【0006】
但し、コネクタ内に光ファイバの余長を十分に確保しても、コネクタ内部で光ファイバが動きやすい状態だと、光結合部の損傷を抑制することができない。
【0007】
本発明は、コネクタ内部で光ファイバが動き難くなるように余長処理しつつ、光結合部の損傷を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる第1の発明は、光信号を伝送するための光ファイバを有するケーブルと、前記光ファイバの端面と光学的に結合された光電変換部を搭載した基板を収容するコネクタと、を備えるコネクタ付きケーブルであって、前記コネクタから延び出る前記ケーブルの方向を前後方向とし、前記コネクタから見て前記ケーブルの側を後とし、逆側を前とするとともに、前記基板から見て前記光電変換部の側を上とし、逆側を下としたとき、前記コネクタの内部において、前記光ファイバの前記前後方向の向きを変えて前記光ファイバをU字状に湾曲させた湾曲部が少なくとも3つ形成されているとともに、前側の2つの湾曲部の一方が前記基板の下側に位置し、他方が前記基板の上側に位置するように、前記光ファイバが配線されていることを特徴とするコネクタ付きケーブルである。
【0009】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コネクタ内部で光ファイバが動き難くなるように余長処理しつつ、光結合部の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施形態のコネクタ付きケーブル1の全体斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態のコネクタ付きケーブル1の平面図及び側面図である。
【図3】図3は、本実施形態で用いられる複合ケーブル2の断面図である。
【図4】図4は、本実施形態のコネクタ付きケーブル1の機能ブロック図である。
【図5】図5は、カメラ側コネクタ10の分解斜視図である。
【図6】図6は、親基板20の斜視図である。
【図7】図7は、子基板40の周辺を斜め上から見た斜視図である。
【図8】図8Aは、発光部41と光ファイバ3との間を光学的に結合する光結合部43の説明図である。図8Bは、光ファイバ3の端部の接着箇所の説明図である。
【図9】図9は、カメラ側コネクタ10の端末部12を斜め上から見た斜視図である。
【図10】図10は、図9の保護カバー51を外した図である。
【図11】図11は、カメラ側コネクタ10の端末部12を斜め下から見た斜視図である。
【図12】図12Aは、端末部12を左側から見た側面図である。図12Bは、端末部12を右側から見た側面図である。
【図13】図13は、本実施形態及び比較例の光ファイバ3の末端部3Iの説明図である。
【図14】図14は、グラバ側コネクタ110の分解斜視図である。
【図15】図15は、グラバ側コネクタ110の子基板140の周辺を斜め上から見た斜視図である。
【図16】図16は、グラバ側コネクタ110の端末部112を斜め上から見た斜視図である。
【図17】図17は、図16の保護カバー151を外した図である。
【図18】図18は、グラバ側コネクタ110の端末部112を斜め下から見た斜視図である。
【図19】図19は、コネクタ付きケーブル1の製造方法の説明図である。
【図20】図20は、第1変形例のカメラ側コネクタ10の端末部12を斜め下から見た斜視図である。
【図21】図21は、第2変形例のカメラ側コネクタ10の端末部12を斜め上から見た斜視図である。
【図22】図22は、第3変形例のグラバ側コネクタ110の端末部112を斜め上から見た図である。
【図23】図23は、第4変形例のカメラ側コネクタ10の子基板40の周辺を斜め上から見た斜視図である。
【図24】図24は、第6変形例のカメラ側コネクタ10の子基板40の周辺を斜めから見た斜視図である。
【図25】図25は、第7変形例のカメラ側コネクタ10の子基板40の周辺を斜めから見た斜視図である。
【図26】図26は、湾曲部を1つにした場合の余長処理の参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
光信号を伝送するための光ファイバを有するケーブルと、前記光ファイバの端面と光学的に結合された光電変換部を搭載した基板を収容するコネクタと、を備えるコネクタ付きケーブルであって、前記コネクタから延び出る前記ケーブルの方向を前後方向とし、前記コネクタから見て前記ケーブルの側を後とし、逆側を前とするとともに、前記基板から見て前記光電変換部の側を上とし、逆側を下としたとき、前記コネクタの内部において、前記光ファイバの前記前後方向の向きを変えて前記光ファイバをU字状に湾曲させた湾曲部が少なくとも3つ形成されているとともに、前側の2つの湾曲部の一方が前記基板の下側に位置し、他方が前記基板の上側に位置するように、前記光ファイバが配線されていることを特徴とするコネクタ付きケーブルが明らかとなる。
このようなコネクタ付きケーブルによれば、コネクタ内部で光ファイバが動き難くなるように余長処理しつつ、光結合部の損傷を抑制することができる。
【0014】
前記基板の縁に凹所が形成されており、前記コネクタの内面と前記凹所との間の隙間を前記光ファイバが通過することによって、前記基板の下側と上側の配線を連絡させていることが望ましい。これにより、コネクタの小型化を図ることができる。
【0015】
前記基板とは別の子基板に前記光電変換部が実装されており、前記基板と前記子基板とが電気的に接続されることによって、前記基板に前記光電変換部が搭載されていることが望ましい。これにより、光ファイバの配線が容易な構成になる。
【0016】
前記基板と前記子基板との間に前記光ファイバが挟まれて配線されていることが望ましい。これにより、コネクタ内での光ファイバの動きを拘束できる。
【0017】
前記前側の2つの湾曲部に対して後側に形成された湾曲部は、前記基板の上側に位置しており、前記基板の上側に位置する2つの前記湾曲部の間の部分が、前記基板と前記子基板との間に挟まれていることが望ましい。これにより、光ファイバの端が動き難くなり、光結合部の損傷を抑制できる。
【0018】
前記基板の上側に位置する前記湾曲部と前記光ファイバの前記端面との間において前記光ファイバが曲げられて、前記光ファイバが前記前後方向に対して鋭角をなすように前記光ファイバの前記端面と前記光電変換部とが結合されていることが望ましい。これにより、コネクタの小型化を図ることができる。
【0019】
前記ケーブルは、信号線を更に備えており、前記基板は、前記信号線の端部をスルーホール接続するためのスルーホールを備えており、前記コネクタの内部において、いずれかの前記湾曲部が、前記基板にスルーホール接続された前記信号線の被覆上に位置していることが望ましい。これにより、光ファイバの損傷を抑制できる。
【0020】
光信号を伝送するための光ファイバを有するケーブルと、前記光ファイバの端面と光学的に結合された光電変換部を搭載した基板を収容するコネクタと、を備えるコネクタ付きケーブルの製造方法であって、前記ケーブルを準備する工程と、前記光ファイバの前記端面と前記光電変換部とを光学的に結合する工程と、前記コネクタから延び出る前記ケーブルの方向を前後方向とし、前記コネクタから見て前記ケーブルの側を後とし、逆側を前とするとともに、前記基板から見て前記光電変換部の側を上とし、逆側を下としたとき、前記光ファイバの前記前後方向の向きを変えて前記光ファイバをU字状に湾曲させた湾曲部を少なくとも3つ形成するとともに、前側の2つの湾曲部の一方が前記基板の下側に位置し、他方が前記基板の上側に位置するように、前記光ファイバを配線する工程と、を有することを特徴とするコネクタ付きケーブルの製造方法が明らかとなる。
このような製造方法によれば、光結合部の損傷しにくいコネクタ付きケーブルを製造できる。
【0021】
===全体構成===
図1は、本実施形態のコネクタ付きケーブル1の全体斜視図である。図2は、本実施形態のコネクタ付きケーブル1の平面図及び側面図である。
【0022】
コネクタ付きケーブル1は、複合ケーブル2と、複合ケーブル2の両端に設けられた2つのコネクタから構成されている。本実施形態のコネクタ付きケーブル1は、カメラリンクインターフェースに適合する構成になっており、一方のコネクタはカメラ側コネクタ10(送信側コネクタ)となり、他方のコネクタはグラバ側コネクタ110(受信側コネクタ)となる。カメラ側コネクタ10及びグラバ側コネクタ110は、それぞれ26ピンコネクタ端子を有する。
【0023】
カメラリンク規格の1種であるBase Configurationによれば、メタルケーブルから構成された差動信号線によって、カメラ側コネクタ10とグラバ側コネクタ110との間で信号(映像信号や制御信号)が伝送される。但し、差動信号線による映像信号の伝送時の制約のため、カメラリンク規格では、伝送距離が最大10mと規定されている。これに対し、本実施形態では、複数の差動信号線を用いて伝送すべき映像信号を、時分割多重方式で光ファイバで伝送している。これにより、本実施形態のコネクタ付きケーブル1は、伝送距離を30m程度にすることが可能である。
【0024】
図3は、本実施形態で用いられる複合ケーブル2の断面図である。
【0025】
複合ケーブル2は、1本の光ファイバ3と、7本の差動信号線4と、2本の電源線6とを備えている。光ファイバ3は、光信号を伝送するためのものである。以下の説明では、光ファイバ素線、光ファイバ心線及び光ファイバコード等も単に「光ファイバ」と呼ぶことがある。差動信号線4は、2本の信号線5を1組とするメタルケーブルから構成されている。このため、複合ケーブル2は14本の信号線5を備えていることになる。これらの差動信号線4は、主に制御信号を伝送しており、映像信号を伝送する場合と比べて低周波数の信号を伝送する。2本の電源線6は、信号線5と比べて太いメタルケーブルから構成されており、一方の電源線6の電位は12Vであり、他方の電源線6の電位はGNDである。
【0026】
図4は、本実施形態のコネクタ付きケーブル1の機能ブロック図である。
【0027】
カメラ側コネクタ10は、発光部41と、駆動部42と、LVDSシリアライザ21と、カメラ側MCU22とを備えている。
発光部41は、LD(Laser Diode:レーザダイオード)である。本実施形態では、発光部41として、基板に垂直な光を出射するVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザ)が採用されている。発光部41は、駆動部42から出力されたバイアス電流と変調電流との和である電流信号によって駆動され、光信号を光ファイバ3に出力する。
LVDSシリアライザ21は、4つの映像信号(X0〜X3)及び映像信号用クロック信号(XCLK)を時分割にて多重化し、シリアル信号に変換する。このシリアル信号に応じた光信号が、光ファイバ3を介して伝送されることになる。
カメラ側MCU22は、例えば(1)発光部41の周辺温度を示す温度データと、発光部41に出力するバイアス電流の大きさのモニタ情報であるバイアス電流データとを取得すること、(2)温度データとバイアス電流データを差動信号線4を介してグラバ側MCU122に送信すること、(3)発光部41の光信号の強度を制御するためのバイアス電流の設定データと、変調電流の設定データとを差動信号線4を介してグラバ側MCU122から取得すること、(4)バイアス電流の設定データと変調電流の設定データとに基づいて発光部41のバイアス電流と変調電流を設定すること、(5)グラバ側コネクタ110のLVDSデシリアライザ121の受信クロックの再生が完了したことを通知するLOCK信号を差動信号線4を介してグラバ側MCU122から取得すること、(6)LOCK信号をLVDSシリアライザ21に出力すること、などを行う。
【0028】
グラバ側コネクタ110は、受光部141と、電流電圧変換部142と、LVDSデシリアライザ121と、グラバ側MCU122とを備えている。
受光部141は、PD(Photo Diode:フォトダイオード)である。本実施形態では、受光部141として、GaAsのPIN型フォトダイオード(PIN−PD)が採用されている。
【0029】
電流電圧変換部142は、受光部141から供給された電流に応じた電圧信号をLVDSデシリアライザ121に出力する。また、電流電圧変換部142は、受光部141から供給された電流に応じたモニタ電圧をグラバ側MCU122に出力する。
LVDSデシリアライザ121は、電流電圧変換部142から入力された電圧信号(シリアル信号)に基づいて、4つの映像信号(X0〜X3)及び映像信号用クロック信号(XCLK)を生成し、不図示のグラバに出力する。
グラバ側MCU122は、例えば(1)モニタ電圧を監視して、発光部41の状態(正常・異常)を検出すること、(2)LVDSデシリアライザ121からLOCK信号を取得し、LOCK信号を差動信号線4を介してカメラ側MCU22に送信すること、(3)温度データとバイアス電流データを差動信号線4を介してカメラ側MCU22から取得すること、(4)温度データとバイアス電流データに基づいてバイアス電流の設定データと変調電流の設定データを生成し、差動信号線4を介してカメラ側MCU22に送信すること、などを行う。
【0030】
ところで、カメラ側コネクタ10及びグラバ側コネクタ110が図4に示した機能を果たすためには、コネクタ内部の基板に光ファイバ3とメタルケーブル(差動信号線4、電源線6)の両方を接続する必要がある。本実施形態では、光ファイバ3とメタルケーブルのそれぞれの接続作業を容易にするため、メタルケーブルが接続される親基板とは別に、光ファイバ3を接続するための子基板を用意している。そして、光ファイバ3の接続後の子基板を、メタルケーブルの接続後の親基板に搭載(接続)している。
なお、カメラ側コネクタ10の子基板には、光電変換部として発光部41が実装されている。また、グラバ側コネクタ110の子基板には、光電変換部として受光部141が実装されている。
【0031】
===カメラ側コネクタ10===
<構成>
図5は、カメラ側コネクタ10の分解斜視図である。カメラ側コネクタ10は、ハウジング11と、端末部12とを備える。
【0032】
ハウジング11は、電子部品である端末部12を覆うためのものである。ハウジング11には、複合ケーブル2を内部に導入するための導入口が形成されている。ハウジング11の導入口において、複合ケーブル2の口出し部7の近くのかしめ部材8が保持される。ハウジング11は、ケース11Aとカバー11Bとを有する。ケース11Aに端末部12を収容した後、カバー11Bでケース11Aの収容部を覆い、両者をネジ留めすることになる。
【0033】
端末部12は、親基板20と、子基板40と、端子部52とを備える。親基板20及び子基板40は、プリント回路基板であり、それぞれ図3に示した機能を果たす。親基板20及び子基板40の構成については、後述する。親基板20の一端側には、端子部52が接続されている。端子部52には、26ピンコネクタ端子が設けられている。親基板20の他端側には、複合ケーブル2が配置されている。
【0034】
以下のカメラ側コネクタ10の説明では、図に示すように、前後、上下、左右を定義する。すなわち、カメラ側コネクタ10から真っ直ぐに延び出たときの複合ケーブル2の方向を「前後方向」とし、カメラ側コネクタ10から見て複合ケーブル2の側を「後」とし、逆側を「前」とする。また、親基板20の法線方向に沿って「上下方向」を定義し、親基板20から見て子基板40の側(光電変換部となる発光部41のある側)を「上」とし、逆側を「下」とする(図中では上下の位置関係が逆になっている)。また、前後方向及び上下方向と垂直な方向を「左右方向」とし、図のように「右」と「左」を定義する(上下の位置を合わせた状態で前側から見たときの右手側を「右」とし、左手側を「左」とする)。
【0035】
<親基板20の構成>
図6は、親基板20の斜視図である。
【0036】
親基板20の後側(複合ケーブル2の側)には、左右方向に並ぶスルーホールの列(スルーホール列)が3列ある。3列のスルーホール列のうち、最も後側のスルーホール列のことを「後側スルーホール列31A」と呼び、後側スルーホール列31Aよりも前側にある2つのスルーホール列のことを「前側スルーホール列32A」と呼ぶことがある。
後側スルーホール列31Aは、6個のスルーホールから構成されている。この6個のスルーホールのことを「後側スルーホール31」と呼ぶことがある。前側スルーホール列32Aは、それぞれ4個のスルーホールから構成されている。前側スルーホール列32Aのスルーホールのことを「前側スルーホール32」と呼ぶことがある。
親基板20の後側には、全部で14個のスルーホール(6個の後側スルーホール31と、8個の前側スルーホール32)が設けられていることになる。これらのスルーホールは、複合ケーブル2の差動信号線4を構成する信号線5を半田付けするための貫通孔である。
【0037】
親基板20の右縁には、凹所24が形成されている。親基板20がハウジング11に収納されると、親基板20の左右の縁とハウジング11の内面との間には殆ど隙間が無い状態になるが、凹所24では、ハウジング11の内面との間に隙間が形成される。この隙間に光ファイバ3が配線されることによって、親基板20の上下両側で光ファイバ3の余長を確保することが可能になる(光ファイバ3の配線については後述する)。
【0038】
親基板20の右側には、2ピンヘッダ用の2個のスルーホール33が前後方向に並んで形成されている。この2個のスルーホールは、親基板20の右縁から所定長さだけ離れて形成されており、親基板20がハウジング11のケース11Aに収納されたときに、2ピンヘッダ61とハウジング11の内面との間に光ファイバ3を配線することを可能にしている。
【0039】
親基板20の左側には、10ピンヘッダ用の10個のスルーホール34が前後方向に並んで形成されている。この10個のスルーホールは、親基板20の左縁から所定長さだけ離れて形成されており、親基板20がハウジング11のケース11Aに収納されたときに、10ピンヘッダ62(不図示)とハウジング11の内面との間に光ファイバ3を配線することを可能にしている。
【0040】
親基板20には、4ピンヘッダ用の4個のスルーホール35と、複合ケーブル2の電源線6を半田付けするための2個のスルーホール36とが形成されている。電源線用のスルーホール36は、端子部52を接続するための接続部25に最も近いスルーホールである。これは、親基板20上での電源配線パターンを極力減らすためである。電源配線パターンを減らすことにより、信号パターンとのクリアランスを考慮する箇所が減り、基板の小型化を図ることが可能になる。
【0041】
<子基板40の構成>
図7は、子基板40の周辺を斜め上から見た斜視図である。子基板40には、主に光学部品(発光部41及びその駆動部42(図7では不図示))が搭載されている。そして、子基板40に搭載された発光部41は、光ファイバ3の端面に光学的に結合されている。
【0042】
子基板40は、2ピンヘッダ61、10ピンヘッダ62及び4ピンヘッダ63を介して、親基板20の上側に搭載される。このため、子基板40にも、2ピンヘッダ用スルーホールと、10ピンヘッダ用スルーホールと、4ピンヘッダ用スルーホールとが形成されている。
【0043】
子基板40には、凹部44が形成されている。凹部44は、光ファイバ3の端面を発光部41と光結合させる際に、光ファイバ3の心線の被覆が子基板40と干渉することを回避するために形成された切り込みである。凹部44の幅は、光ファイバ3(心線の被覆を含む)の外径900μmよりも広く設定されている。これにより、光ファイバ3の端面から心線の被覆までの長さLを短くでき、光ファイバ3の損傷を抑制できる。また、光ファイバ3の被覆の一部を凹部44の間に位置させることが可能になり、子基板40と光ファイバ3の被覆との間を接着固定することができる(後述)。
【0044】
凹部44は、前後方向及び左右方向に対し、斜めに形成されている。つまり、凹部44の切り込み方向は、前後方向に対して0°<θ<90°の関係になっている。好ましくは、凹部44の切り込み方向は、前後方向に対して30°<θ<60°の関係になっているのが良い。ここでは、凹部44の切り込み方向は、前後方向に対して45°だけ斜めになっている。
これにより、凹部44の開口部が右前側を向くように、形成されている。この結果、凹部44の開口部は、ハウジング11に収容されたときにハウジング11の右側の内面(ケース11Aの右側の内面)の方を向くようになる。凹部44を斜めに形成することによって、光ファイバ3が、前後方向に対して鋭角をなすように子基板40に接続されることになる。
【0045】
凹部44の延長線上に、発光部41が実装されている。発光部41は、凹部44に沿って子基板40上に導かれた光ファイバ3の端面と光学的に結合されている。
【0046】
図8Aは、発光部41と光ファイバ3との間を光学的に結合する光結合部43の説明図である。光ファイバ3の光軸は子基板40とほぼ平行であり、発光部41の光軸は子基板40の面にほぼ垂直であるため、互いの光軸はほぼ垂直に配置されている。なお、光結合部43の構造等については、特開2010−237642号公報や国際公開公報WO2011/83812にも記載されている。
【0047】
光結合部43は、伝送される光に対して透明な樹脂から構成されている。但し、光が伝送される樹脂内の光路が短いため、ある程度の透明性があれば良い。光結合部43は、光ファイバ3の端面3Jの全面を覆い、光ファイバ3の上部まで付着している。但し、光結合部43は光ファイバ3のコアの全断面を覆っていれば良く、光ファイバ3の端面3Jを完全に覆っていなくても良い。同様に、光結合部43は、発光部41の発光面41Aを覆っていれば良く、発光部41を完全に覆っていなくても良い。
【0048】
光結合部43の外面431は、光結合部43を構成する透明樹脂と外部の気体(空気、窒素など)との界面を形成しており、発光部41から照射された光は外面431で反射して光ファイバ3に入射する。光結合部43を構成する透明樹脂は、光ファイバ3の光軸と発光部41の光軸とが交差する交点Pの位置には存在せず、光結合部43の外面431は、光ファイバ3の端面3J及び発光部41の発光面41Aの側に凹んだ形状になっている。具体的には、光結合部43の外面431では、発光部41の発光面41Aに対向する位置Aと光ファイバ3の端面に対向する位置Bにおいて凹形状になっているとともに、位置Aと位置Bとの間も凹形状になっている。
【0049】
光結合部43を構成する透明樹脂が、発光部41の光軸と光ファイバ3の光軸とが交差する交点Pの位置には存在しないことにより、光が拡散する範囲が狭くなり、損失を低減することができる。また、光結合部43の外面431を凹んだ形状にすることによって、反射面としての位置及び角度を精密に制御しなくても、より低い作製精度で確実な光結合を実現することができる。また、光ファイバ3の端面3Jと発光部41との間が単一の透明樹脂で構成された光結合部43で光結合されるため、極めて低コストに、かつ簡易な工程で作成可能である。
【0050】
図8Bは、光ファイバ3の端部の接着箇所の説明図である。光ファイバ3は、端部の少なくとも2箇所で接着固定されている。
第1接着部は、光ファイバ3の端面3Jと発光部41との間を接着固定する部分である。上記の光結合部43を構成する透明樹脂が接着剤として機能することによって、第1接着部が構成されている。このため、第1接着部の透明樹脂は、光結合部43を構成する機能と、接着剤としての機能とを有する材料が採用される。透明樹脂としては、例えば、UV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いることができる。具体的には、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
第2接着部は、光ファイバ3の被覆と子基板40との間を接着固定する部分である。この部分を固定することによって、光ファイバ3の端部の動きを抑制し、光結合部43の破損を抑制している。なお、光結合部43が図8Aに示すような簡潔な構成であるため、光ファイバ3の光軸が子基板40の表面に近接した状態になるが、子基板40には凹部44が形成されているため、光ファイバ3(外径900μm)が子基板40と干渉することが回避され、光ファイバ3の被覆の一部を凹部44の間に位置させることが可能になる。これにより、第2接着部における光ファイバ3の被覆と子基板40との接着が可能になっている。なお、第2接着部の接着剤としては、例えば、熱可塑性樹脂などを用いることができる。具体的には、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。第2接着部の接着剤は、第1接着部の透明樹脂とは異なり、光を透過させる機能は無くても良い。
【0051】
<光ファイバ3の配線>
次に、光ファイバ3の配線について説明する。なお、光ファイバ3は、曲げ半径を許容曲げ半径よりも大きく設定しつつ、狭いコネクタ内(ハウジング11内)に収容する必要がある。
【0052】
図9は、カメラ側コネクタ10の端末部12を斜め上から見た斜視図である。図10は、図9の保護カバー51を外した図である。図11は、カメラ側コネクタ10の端末部12を斜め下から見た斜視図である。図12Aは、端末部12を左側から見た側面図である。図12Bは、端末部12を右側から見た側面図である。
【0053】
ここでは、ハウジング11内の光ファイバ3の各部のことを、複合ケーブル2の口出し部7から光ファイバ3の端部に向かって順に、根元部3A、下側直線部3B、第1前側湾曲部3C、移行部3D、第1上側直線部3E、後側湾曲部3F、第2上側直線部3G、第2前側湾曲部3H、末端部3Iと呼ぶことがある。根元部3Aは、口出し部7から下側直線部3Bまでの間の部分である。下側直線部3Bは、親基板20の左下側においてほぼ直線状に配線された部分である。第1前側湾曲部3Cは、親基板20の前下側においてU字状に湾曲させた湾曲部である。移行部3Dは、親基板20の凹所24において親基板20の下側から上側に連絡させている部分である。第1上側直線部3Eは、移行部3Dと後側湾曲部3Fとの間の部分であり、親基板20の右上側においてほぼ直線状に配線された部分である。後側湾曲部3Fは、親基板20の後上側においてU字状に湾曲させた湾曲部である。第2上側直線部3Gは、後側湾曲部3Fと第2前側湾曲部3Hとの間の部分であり、親基板20の左上側においてほぼ直線状に配線された部分である。第2前側湾曲部3Hは、親基板20の前上側においてU字状に湾曲させた湾曲部である。末端部3Iは、第2前側湾曲部3Hと光結合部43との間の部分である。
【0054】
光ファイバ3は、ハウジング11内をおよそ2周回されて余長処理されている。このため、光ファイバ3は、ハウジング11内において、前後方向の向きを3回変えるように取り回されている。この結果、ハウジング11内の光ファイバ3には、U字状に湾曲させた湾曲部(第1前側湾曲部3C、後側湾曲部3F、第2前側湾曲部3H)が3箇所ある。このように、U字状に湾曲させた湾曲部があるため、複合ケーブル2に張力が加えられても、光ファイバ3の端部の光結合部43まで張力は伝わらず、光ファイバ3や光結合部43の損傷を抑制できる。
【0055】
ハウジング11の後側から光ファイバ3が挿入されて2周分の余長処理がされているため、3つの湾曲部のうちの2つの湾曲部(第1前側湾曲部3C、第2前側湾曲部3H)は前側に位置することになる。この2つの湾曲部を直接上下に重ねて配線してしまうと、上下に嵩張ってしまう。また、上下に嵩張った光ファイバ3は、ハウジング11内で動きやすい状態になり、光結合部43を損傷させるなどの故障の原因になる。
そこで、本実施形態では、前側の2つの湾曲部のうちの一方(第1前側湾曲部3C)を親基板20の下側に位置させ、他方(第2前側湾曲部3H)を親基板20の上側に位置させている。つまり、前側の2つの湾曲部が親基板20の上下に分かれるように、光ファイバ3を配線している。言い換えると、前側の2つの湾曲部が親基板20を挟んで反対側に位置するように、光ファイバ3を配線している。これにより、親基板20の上下のそれぞれでは、光ファイバ3が重ならずに済む。また、光ファイバ3が重ならないため、光ファイバ3を動かないように保持することが容易になる。
なお、親基板20の上下両側で光ファイバ3の余長処理を行うことを実現するために、親基板20に凹所24が形成されている。凹所24ではハウジング11の内面との間に隙間が形成されるので、この隙間を光ファイバ3の移行部3Dが通過することによって、基板の上下両側での光ファイバ3の余長処理を連絡させている。
【0056】
光ファイバ3の下側直線部3Bは、10ピンヘッダ62及び電源線6よりも外側(左側)に配線されている(図11、図12A参照)。これにより、下側直線部3Bは、ハウジング11と10ピンヘッダ62及び電源線6との間で左右方向に拘束されて、ハウジング11内での動きが制限される。
【0057】
光ファイバ3の第1上側直線部3Eは、2ピンヘッダ61よりも外側(右側)に配線されている(図7、図9、図10、図12B参照)。これにより、第1上側直線部3Eは、ハウジング11と2ピンヘッダ61との間で左右方向に拘束される。更に、第1上側直線部3Eは、親基板20と子基板40との間に配線されることによって、上下方向にも拘束される。したがって、第1上側直線部3Eは、左右方向及び上下方向の動きが制限されている。
【0058】
光ファイバ3の第2上側直線部3Gは、10ピンヘッダ62よりも外側(左側)に配線されている(図10参照)。これにより、第2上側直線部3Gは、ハウジング11と10ピンヘッダ62との間で左右方向に拘束される。更に、第2上側直線部3Gは、親基板20と子基板40との間に配線されることによって、上下方向にも拘束される。したがって、第2上側直線部3Gは、左右方向及び上下方向の動きが制限されている。
【0059】
第2上側直線部3Gは、第1上側直線部3Eと比べて、左右方向及び上下方向に拘束される部分が長いため、ハウジング11内で動き難くなる。つまり、第1上側直線部3Eよりも光ファイバ3の端の方の第2上側直線部3Gが動き難い構成になっている。これにより、ハウジング11内で光ファイバ3の端が動くことによって光結合部43が損傷することを抑制できる。
なお、光結合部43の損傷を抑制するために、光ファイバ3の端に近い第2上側直線部3Gをできるだけ長くするため(拘束される部分を長くするため)、後側湾曲部3Fを親基板20の上側(子基板40が搭載される側)に配置させている。また、後側湾曲部3Fを親基板20の上側に配置することを実現させるために、第2上側直線部3Gとは左右方向の逆側(右側)に移行部3D(及び親基板20の凹所24)を配置させている。
【0060】
図13は、本実施形態及び比較例の光ファイバ3の末端部3Iの説明図である。
狭いハウジング11内において光ファイバ3をU字状に湾曲させる場合、湾曲部の始点と終点は、いずれもハウジング11の内面のごく近くに位置することになる。一方、子基板40に発光部41を実装するためには、光結合部43は、ハウジング11の内面から離して位置させる必要がある。このため、第2前側湾曲部3Hよりも先の末端部3Iにおいて、ハウジング11の内面の近くの位置から、ハウジング11の内面から離れた位置まで、配線する必要がある。
比較例では、光結合部43での光ファイバ3の方向が前後方向と平行になっている。このため、比較例では、第2前側湾曲部3Hよりも先の末端部3Iにおいて、光ファイバ3を2回曲げる必要が生じる。この結果、比較例では、末端部3Iの前後方向の長さを長くする必要があり、カメラ側コネクタ10の前後方向が長くなってしまう。
これに対し、本実施形態では、光結合部43での光ファイバ3の方向が前後方向に対して角度θだけ斜めになっている(θは、鋭角(0°<θ<90°の範囲内)であり、ここでは45°である)。これにより、本実施形態では、第2前側湾曲部3Hよりも先の末端部3Iにおいて、光ファイバ3を1回曲げるだけで良い。このため、本実施形態では、末端部3Iの前後方向の長さを短くでき、カメラ側コネクタ10の小型化を図ることができる。
なお、末端部3Iにおいて光ファイバ3を1回曲げるだけで済むようにするため、子基板40の凹部44の切り込み方向が前後方向に対して角度θ(ここでは45°)だけ斜めになっている。これにより、光結合部43において光ファイバ3が前後方向に対して鋭角をなすように、光ファイバ3の端面と発光部41とが光結合されるようになる。
【0061】
また、比較例では、末端部3Iにおいて光ファイバ3がS字状に曲げられており、末端部3Iにおける光ファイバ3の2箇所の曲げ方向が異なっている(図13に示すように上から見たときに、光ファイバ3の端面に向かう方向について、反時計回りに曲がる箇所と、時計回りに曲がる箇所とがある)。この比較例のように、曲げ方向の異なる部分が隣接していると、光ファイバ3が動きやすくなってしまう。このため、比較例では、光ファイバ3を安定的に収納するための支点(接着など)を増やすことなどが必要になってしまう。
これに対し、本実施形態では、末端部3Iでは光ファイバ3が1回曲がるだけなので、末端部3Iでは、曲げ方向の異なる部分が隣接することが無い。このため、比較例と比べて、末端部3Iでは光ファイバ3が動き難い状態になる。
【0062】
更に本実施形態では、末端部3Iでの光ファイバ3の曲げ方向が、第2前側湾曲部3Hでの光ファイバ3の曲げ方向と、同じ方向になる。図13に示すように上から見たときに、光ファイバ3の端面に向かう方向について、光ファイバ3は、第2前側湾曲部3Hでも末端部3Iでも反時計回りに曲がっている。つまり、本実施形態では、光ファイバ3が上下方向及び左右方向に拘束された第2上側直線部3Gと、光ファイバ3が接着固定された光結合部43(及び図8Bの第2接着部)との間では、光ファイバ3の曲げ方向が同じ方向になっている。これにより、光ファイバ3が上下方向及び左右方向に拘束された第2上側直線部3Gと、光ファイバ3が接着固定された光結合部43(及び図8Bの第2接着部)との間では、光ファイバ3の曲げ弾性力を利用することによって、光ファイバ3が極めて動き難い構成になっている。
【0063】
上記のように光ファイバ3を配線することによって、ケーブルクランプ等を使用したり、接着箇所を増やしたりしなくても、狭いハウジング11内に長い光ファイバ3を安定的に収納できる。
【0064】
<信号線5・電源線6の配置>
次に、図7、図9〜図11、図12A及び図12Bを用いて、信号線5及び電源線6の配線について説明する。
【0065】
14本の信号線5は、親基板20にスルーホール接続される。表面実装ではなく、スルーホール接続を採用した理由は、ケーブル2に張力がかかっても親基板20から信号線5を外れにくくするためである。
【0066】
14本の信号線5のうちの6本の信号線5は、6個の後側スルーホール31にそれぞれスルーホール接続される。この6本の信号線5は、端部が上から下に向かって後側スルーホール31に挿入され、半田付けされる。残りの8本の信号線5は、8個の前側スルーホール32にそれぞれスルーホール接続される。この8本の信号線5は、端部が下から上に向かって挿入され、半田付けされる。
【0067】
つまり、後側スルーホール31と前側スルーホール32とでは、半田付けの方向が逆になる。これにより、親基板20の両側に14本の信号線5を分散させることができ、狭い領域における信号線5の接続作業が容易になる。また、親基板20の両側から信号線5をスルーホール接続することによって、信号線5に張力がかかっても親基板20から信号線5が外れにくくなる。
【0068】
更に、後側スルーホール31に接続される6本の信号線5は、いずれも端部が上から下に向かって後側スルーホール31に挿入されている。つまり、この6本の信号線5の端部は、光ファイバ3の後側湾曲部3Fのある親基板20の上側から挿入されている。これにより、光ファイバ3の後側湾曲部3Fは、後側スルーホール31から突出した半田のエッジには接触せず、損傷せずに済む。また、光ファイバ3の後側湾曲部3Fは、6本の信号線5の被覆の上側に配線されており、仮に信号線5に接触しても信号線5の被覆が緩衝材となるため、損傷し難い。
【0069】
なお、6本の信号線5の被覆上にある後側湾曲部3Fの両側にある第1上側直線部3E及び第2上側直線部3Gは、いずれも親基板20と子基板40との間に挟まれて配線されている。第1上側直線部3E及び第2上側直線部3Gは子基板40から下向きに力を受けるため、第1上側直線部3Eと第2上側直線部3Gとの間に位置する後側湾曲部3Fには下向きの力が働きやすく、仮に後側湾曲部3Fの下側に半田のエッジがあると光ファイバ3を損傷しやすい。したがって、本実施形態のように、第1上側直線部3E及び第2上側直線部3Gがいずれも親基板20と子基板40との間に挟まれて配線されている構成では、後側湾曲部3Fが信号線5の被覆上に位置していることは、光ファイバ3の損傷を防止する上で、特に有効になる。
【0070】
後側スルーホール31に接続される6本の信号線5は、撓ませずにスルーホール接続される。これに対し、前側スルーホール32に接続される8本の信号線5は、若干撓ませてスルーホール接続される(図12B参照)。この理由は、(1)前側スルーホール32に8本の信号線5を接続させる際に、後側スルーホール31から突出した半田のエッジの下側を超えて配線させる必要があるため、(2)後側スルーホール31の半田付けを親基板20の下側から目視検査する際に、前側スルーホール32に接続された8本の信号線5を左右方向にずらせるようにするため、である。
【0071】
後側湾曲部3Fは、後側スルーホール31に撓ませずにスルーホール接続された6本の信号線5の被覆上に配置される。これにより、信号線5と後側湾曲部3Fとを上下方向に嵩張らずに配線できる。仮に、前側スルーホール32に撓ませてスルーホール接続された8本の信号線5の被覆上に後側湾曲部3Fを配置すると、信号線5と後側湾曲部3Fとが上下方向に嵩張るだけでなく、後側湾曲部3Fが親基板20から離れて配線されてしまい、光ファイバ3が動きやすくなったり、後側湾曲部3Fの曲げ半径が小さくなったりするおそれがある。
【0072】
2本の電源線6は、信号線5よりも端子部52に近い位置でスルーホール接続される。これは、親基板20上での電源配線パターンを極力減らすためである。また、2本の電源線6は、4ピンヘッダ63の下側を越えて配線される。但し、電源線6の被覆は信号線5の被覆と比べて厚いため、ピンとの接触による損傷は起こり難いので、このような配線が許容される。
【0073】
===グラバ側コネクタ110===
次に、グラバ側コネクタ110について説明する。グラバ側コネクタ110はカメラ側コネクタ10に似た構成であるため、グラバ側コネクタ110の各構成要素を、カメラ側コネクタ10の対応する構成要素の符号に100を加算した符号で示し、その構成要素の説明を省略することがある。
【0074】
<構成>
図14は、グラバ側コネクタ110の分解斜視図である。
【0075】
以下のグラバ側コネクタ110の説明では、図に示すように、前後、上下、左右を定義する。すなわち、グラバ側コネクタ110から真っ直ぐに延び出たときの複合ケーブル2の方向を「前後方向」とし、グラバ側コネクタ110から見て複合ケーブル2の側を「後」とし、逆側を「前」とする。また、親基板120の法線方向に沿って「上下方向」を定義し、親基板120から見て子基板140の側(光電変換部となる受光部141のある側)を「上」とし、逆側を「下」とする。また、前後方向及び上下方向と垂直な方向を「左右方向」とし、図のように「右」と「左」を定義する(上下の位置を合わせた状態で前側から見たときの右手側を「右」とし、左手側を「左」とする)。
【0076】
図15は、グラバ側コネクタ110の子基板140の周辺を斜め上から見た斜視図である。なお、グラバ側コネクタ110の子基板140には、発光部41ではなく、受光部141が実装されている。
【0077】
親基板120の後側(複合ケーブル2の側)には、左右方向に並ぶスルーホールの列が2列ある。後側スルーホール列は、6個の後側スルーホール131から構成されている。前側スルーホール列は、8個の前側スルーホール132から構成されている。なお、グラバ側コネクタ110で前側スルーホール132が1列なのは、グラバ側コネクタ110の親基板120の左右方向の幅がカメラ側コネクタ10と比べて大きく、8個の前側スルーホール132を左右方向に並べることが可能だからである。
【0078】
親基板120の右縁には、凹所124が形成されている。親基板120がハウジング111に収納されると、親基板120の左右の縁とハウジング111の内面との間には殆ど隙間が無い状態になるが、凹所124では、ハウジング111の内面との間に隙間が形成される。この隙間に光ファイバ3が配線されることによって、親基板120の上下両側で光ファイバ3の余長を確保することが可能になる。
【0079】
子基板140には、凹部144が形成されている。凹部144は、光ファイバ3の端面を受光部141と光結合させる際に、光ファイバ3の心線の被覆が子基板140と干渉することを回避するために形成された切り込みである。凹部144の幅は、光ファイバ3(心線の被覆を含む)の外径900μmよりも広く設定されている。これにより、光ファイバ3の端面から心線の被覆までの長さLを短くでき、光ファイバ3の損傷を抑制できる。また、光ファイバ3の被覆の一部を凹部144の間に位置させることが可能になり、子基板140と光ファイバ3の被覆との間を接着固定することができる。
【0080】
凹部144は、前後方向及び左右方向に対し、斜めに形成されている。ここでは、凹部144の切り込み方向は、前後方向に対して45°だけ斜めになっている。これにより、光ファイバ3が、前後方向に対して鋭角をなすように子基板140に接続されることになる。
【0081】
凹部144の延長線上に、受光部141が搭載されている。受光部141は、凹部144に沿って子基板140上に導かれた光ファイバ3の端面と光学的に結合されている。なお、受光部141と光ファイバ3との間を光学的に結合する光結合部143は、前述の図8Aの光結合部43とほぼ同様の構成である。また、光ファイバ3の端部の少なくとも2箇所の接着箇所は、前述の図8Bとほぼ同様である。
【0082】
<光ファイバ3の配線>
図16は、グラバ側コネクタ110の端末部112を斜め上から見た斜視図である。図17は、図16の保護カバー151を外した図である。図18は、グラバ側コネクタ110の端末部112を斜め下から見た斜視図である。
【0083】
光ファイバ3は、ハウジング111内をおよそ2周回させて余長処理されている。このため、光ファイバ3は、ハウジング111内において、前後方向の向きを3回変えるように取り回されている。この結果、ハウジング111内の光ファイバ3には、U字状に湾曲させた湾曲部(第1前側湾曲部3C、後側湾曲部3F、第2前側湾曲部3H)が少なくとも3箇所ある。このように、U字状に湾曲させた湾曲部があるため、複合ケーブル2に張力が加えられても、光ファイバ3の端部の光結合部143まで張力は伝わらず、光ファイバ3や光結合部143の損傷を抑制できる。
【0084】
本実施形態では、前側の2つの湾曲部のうちの一方(第1前側湾曲部3C)を親基板120の下側に位置させ、他方(第2前側湾曲部3H)を親基板120の上側に位置させている。つまり、前側の2つの湾曲部が親基板120の上下に分かれるように、光ファイバ3を配線している。言い換えると、前側の2つの湾曲部が親基板120を挟んで反対側に位置するように、光ファイバ3を配線している。これにより、親基板120の上下のそれぞれでは、光ファイバ3が重ならずに済む。また、光ファイバ3が重ならないため、光ファイバ3を動かないように保持することが容易になる。
なお、親基板120の上下両側で光ファイバ3の余長処理を行うことを実現するために、親基板120に凹所124が形成されている。凹所124ではハウジング111の内面との間に隙間が形成されるので、この隙間を光ファイバ3の移行部3Dが通過することによって、基板の上下両側での光ファイバ3の余長処理を連絡させている。
【0085】
光ファイバ3の第2上側直線部3Gは、10ピンヘッダ162よりも外側(左側)に配線されている(図17参照)。これにより、第2上側直線部3Gは、ハウジング111と10ピンヘッダ162との間で左右方向に拘束される。更に、第2上側直線部3Gは、親基板120と子基板140との間に配線されることによって、上下方向にも拘束される。したがって、第2上側直線部3Gは、左右方向及び上下方向の動きが制限されている。
【0086】
第2上側直線部3Gは、左右方向及び上下方向に拘束される部分が長いため、ハウジング111内で動き難くなる。これにより、ハウジング111内で光ファイバ3の端が動くことによって光結合部143が損傷することを抑制できる。
なお、光結合部143の損傷を抑制するために、光ファイバ3の端に近い第2上側直線部3Gをできるだけ長くするため(拘束される部分を長くするため)、後側湾曲部3Fを親基板120の上側(子基板140が搭載される側)に配置させている。また、後側湾曲部3Fを親基板120の上側に配置することを実現させるために、第2上側直線部3Gとは左右方向の逆側(右側)に移行部3D(及び親基板120の凹所124)を配置させている。
【0087】
本実施形態では、光結合部143での光ファイバ3の方向が前後方向に対して角度θだけ斜めになっている(θは、鋭角(0°<θ<90°の範囲内)であり、ここでは45°である)。これにより、本実施形態では、第2前側湾曲部3Hよりも先の末端部3Iにおいて、光ファイバ3を1回曲げるだけで良い(図13参照)。このため、本実施形態では、末端部3Iの前後方向の長さを短くでき、グラバ側コネクタ110の小型化を図ることができる。
なお、末端部3Iにおいて光ファイバ3を1回曲げるだけで済むようにするため、子基板140の凹部144の切り込み方向が前後方向に対して角度θ(ここでは45°)だけ斜めになっている。これにより、光結合部143において光ファイバ3が前後方向に対して鋭角をなすように、光ファイバ3の端面と受光部141とが光結合されるようになる。
【0088】
上記のように光ファイバ3を配線することによって、ケーブルクランプ等を使用したり、接着箇所を増やしたりしなくても、狭いハウジング11内に長い光ファイバ3を安定的に収納できる。
【0089】
<信号線5・電源線6の配線>
次に、図15〜図18を用いて、信号線5及び電源線6の配線について説明する。
【0090】
14本の信号線5は、親基板120にスルーホール接続される。表面実装ではなく、スルーホール接続を採用した理由は、ケーブル2に張力がかかっても親基板120から信号線5を外れにくくするためである。
【0091】
14本の信号線5のうちの6本の信号線5は、6個の後側スルーホール131にそれぞれスルーホール接続される。この6本の信号線5は、端部が上から下に向かって後側スルーホール131に挿入され、半田付けされる。残りに8本の信号線5は、8個の前側スルーホール132にそれぞれスルーホール接続される。この8本の信号線5は、端部が下から上に向かって挿入され、半田付けされる。
【0092】
つまり、後側スルーホール131と前側スルーホール132とでは、半田付けの方向が逆になる。これにより、親基板120の両側に14本の信号線5を分散させることができ、狭い領域における信号線5の接続作業が容易になる。また、親基板120の両側から信号線5をスルーホール接続することによって、信号線5に張力がかかっても親基板120から信号線5が外れにくくなる。
【0093】
更に、後側スルーホール131に接続される6本の信号線5は、いずれも端部が上から下に向かって後側スルーホール131に挿入されている。つまり、この6本の信号線5の端部は、光ファイバ3の後側湾曲部3Fのある親基板120の上側から挿入されている。これにより、光ファイバ3の後側湾曲部3Fは、後側スルーホール131から突出した半田のエッジには接触せず、損傷せずに済む。また、光ファイバ3の後側湾曲部3Fは、6本の信号線5の被覆の上側に配線されており、仮に信号線5に接触しても信号線5の被覆が緩衝材となるため、損傷し難い。
【0094】
後側スルーホール131に接続される6本の信号線5は、撓ませずにスルーホール接続される(図17参照)。これに対し、前側スルーホール132に接続される8本の信号線5は、若干撓ませてスルーホール接続される(図18参照)。この理由は、カメラ側コネクタ10での信号線5の配線と同様である。
【0095】
後側湾曲部3Fは、後側スルーホール131に撓ませずにスルーホール接続された6本の信号線5の被覆上に配置される。これにより、信号線5と後側湾曲部3Fとを上下方向に嵩張らずに配線できる。
【0096】
2本の電源線6は、信号線5よりも端子部152に近い位置でスルーホール接続される。これは、親基板120上での電源配線パターンを極力減らすためである。
【0097】
===製造方法===
図19は、コネクタ付きケーブル1の製造方法の説明図である。
【0098】
<複合ケーブル2の前処理>
まず、複合ケーブル2が用意される。次に、複合ケーブル2の両端の前処理が行われる。
【0099】
この前処理において、複合ケーブル2の端部のシースを取り除き、光ファイバ3、信号線5及び電源線6が取り出される。本実施形態では、光ファイバ3がコネクタ内で2周回させて余長処理できる長さになるように、複合ケーブル2から光ファイバ3が取り出される。
【0100】
複合ケーブル2の口出し部7において、光ファイバ3の周囲に接着剤が塗布され、光ファイバ3と信号線5及び電源線6との間が接着される(図中には接着部が黒く図示されている)。この接着によって、複合ケーブル2に張力が加えられても、複合ケーブル2の口出し部7から先にその張力が伝わることを抑制できる。
【0101】
複合ケーブル2の口出し部7には、金属リングが挿入され、この金属リングがかしめられて、かしめ部材8が構成されている。なお、かしめ部材8によって、複合ケーブル2に張力が加えられても、複合ケーブル2の口出し部7から先にその張力が伝わることを抑制できる。
【0102】
<光ファイバ3の接続>
次に、光ファイバ3の端部が子基板40(及び子基板140)に取り付けられる。このとき、まず、光ファイバ3の端部のUV被膜を除去して光ファイバ素線が取り出され、光ファイバ素線の端部がカットされて、光ファイバ3が端面処理される。このときの光ファイバ3の端面から心線の被覆までの長さはLである(図7、図8B、図15参照)。そして、端面処理された光ファイバ3と子基板40が自動調心機にセットされ、子基板40に搭載された光電変換部(発光部41、受光部141)と光ファイバ3の端面とが自動調心された後、光結合部43が形成される(図8A参照)。光ファイバ3を子基板40に取り付けた後、光結合部43を保護するため、保護カバー51が子基板40に取り付けられる。また、光結合部43は破損しやすいため、子基板40の凹部44の間に位置する光ファイバ3の被覆と子基板40との間を接着固定する(図8B参照)。
【0103】
本実施形態では、子基板40が親基板20と分離しているため、自動調心機にセットすべき基板を小さくできる。また、子基板40をコネクタ形状やサイズに依存しない形状にすることができるため、調心工程の自動化が容易になる。
【0104】
ところで、本実施形態では、光ファイバ3をコネクタ内で2周回させて余長処理できるように、複合ケーブル2から光ファイバ3が取り出されている。但し、光ファイバ3の接続の際に(例えば光ファイバ3の端面処理の際に)、失敗することが起こり得る。このような場合、余長処理の長さを1周回分減らすように、光ファイバ3を短くカットすると良い。この場合、図26の参考図に示すように、通常であれば3つある湾曲部(第1前側湾曲部3C、後側湾曲部3F、第2前側湾曲部3H)を1つにして、余長処理すると良い。これにより、光ファイバ3の接続に1度失敗しても、複合ケーブル2を破棄せずに済む。
【0105】
<信号線5・電源線6の接続>
次に、信号線5及び電源線6が親基板20(及び親基板120)に半田付けされる。なお、親基板20には、予め端子部52が接続されている。
【0106】
まず、6本の信号線5が、6個の後側スルーホール31にそれぞれスルーホール接続される。この6本の信号線5は、端部が上から下に向かって後側スルーホール31に挿入され、半田付けされる。残りの8本の信号線5は、8個の前側スルーホール32にそれぞれスルーホール接続される。この8本の信号線5は、端部が下から上に向かって挿入され、半田付けされる。また、2本の電源線6も親基板20にスルーホール接続される。
【0107】
本実施形態では、親基板20と子基板40とが分離しているため、信号線5や電源線6を半田付けする際に、半田ごてで光ファイバを損傷させずに済み、フラックス等の飛散によって光結合部43を汚さずに済む。
【0108】
また、本実施形態では、後側スルーホール31と前側スルーホール32とでは、半田付けの方向が逆になるため、信号線5の半田付け作業が容易になるとともに、親基板20から信号線5が外れにくくなる。
【0109】
また、前側スルーホール32に接続される8本の信号線5が若干撓ませて接続されるため、前側スルーホール32に接続された8本の信号線5を左右にずらして、後側スルーホール31の半田付けを目視検査することができる。
【0110】
<親基板と子基板の接続(光ファイバ3の配線)>
次に、親基板20と子基板40とを接続する(親基板120と子基板140も接続する)。このとき、光ファイバ3の配線も行われる。
【0111】
まず、作業者は、図11(又は図18)に示すように、親基板20の下側において、複合ケーブル2の口出し部7の付近の光ファイバ3を10ピンヘッダ62よりも外側(左側)に配線して、根元部3Aを形成する。次に、作業者は、光ファイバ3を10ピンヘッダ62の外側において10ピンヘッダ62に沿って前後方向に配線して、下側直線部3Bを形成する。次に、作業者は、光ファイバ3の前後方向の向きを変えることによって、U字状に湾曲させた湾曲部を親基板20の前下側に配線して、第1前側湾曲部3Cを形成する。そして、作業者は、親基板20の凹所24において光ファイバ3を下側から上側に配線して、移行部3Dを形成する。
【0112】
次に、作業者は、図9(又は図16)に示すように、親基板20の上側において、2ピンヘッダ61よりも外側(右側)において前後方向に光ファイバ3を配線して、第1上側直線部3Eを形成する。次に、作業者は、光ファイバ3の前後方向の向きを変えることによって、U字状に湾曲させた湾曲部を親基板20の後上側に配線して、後側湾曲部3Fを形成する。なお、後側湾曲部3Fは、後側スルーホール31に接続された6本の信号線5の被覆上に配置される。次に、作業者は、光ファイバ3を10ピンヘッダ62の外側において10ピンヘッダ62に沿って前後方向に配線して、第2上側直線部3Gを形成する。次に、作業者は、光ファイバ3の前後方向の向きを変えることによって、U字状に湾曲させた湾曲部を親基板20の前上側に配線して、第2前側湾曲部3Hを形成する。次に、作業者は、第2前側湾曲部3Hよりも先において光ファイバ3を1回曲げて末端部3Iを形成しつつ、2ピンヘッダ61、10ピンヘッダ62及び4ピンヘッダ63を介して親基板20に子基板40を搭載する。親基板20に子基板40を搭載するとき、第2上側直線部3Gを親基板20と子基板40との間に挟み込む。また、カメラ側コネクタ10の場合、第1上側直線部3Eも親基板20と子基板40との間に挟み込む。親基板20と子基板40との間で光ファイバ3が挟まれることによって、光ファイバ3の上下方向の動きを拘束できる。
【0113】
本実施形態では、親基板20と子基板40とが分離しているため、上記のように光ファイバを配線することが容易である。
【0114】
なお、カメラ側コネクタ10の場合、第1上側直線部3E及び第2上側直線部3Gがいずれも親基板20と子基板40との間に挟まれて配線されるため、親基板20に子基板40を搭載するときに後側湾曲部3Fに下向きの力が働きやすい。但し、後側湾曲部3Fが信号線5の被覆上に配置されており、信号線5の被覆が緩衝材となり、光ファイバ3の損傷は抑制されている。
【0115】
親基板20に子基板40を搭載した後、作業者は、2ピンヘッダ61、10ピンヘッダ62及び4ピンヘッダ63の各ピンを半田付けすることによって親基板20と子基板40とを電気的に接続し、端末部12を完成させる。このとき、子基板40には保護カバー51が取り付けられているため、半田ごてで光ファイバを損傷させずに済み、フラックス等の飛散によって光結合部43を汚さずに済む。
【0116】
端末部12の完成後、作業者は、端末部12をケース11Aに収容し、カバー11Bでケース11Aの収容部を覆い、両者をネジ留めする。これにより、コネクタ付きケーブル1が完成する。
【0117】
===変形例===
<第1変形例:光ファイバ3の周回数を変更した例>
前述の実施形態では、光ファイバ3がコネクタ内をおよそ2周回されて余長処理されており、コネクタ内に湾曲部が3箇所あった。但し、コネクタ内の光ファイバ3の余長処理は、これに限られるものではない。光ファイバ3がコネクタ内において3回以上巻き回されて余長処理されていても良い。
【0118】
図20は、第1変形例のカメラ側コネクタ10の端末部12を斜め下から見た斜視図である。なお、親基板20の上側の構成及び配線は、前述の実施形態と同様なので、図示を省略する。
【0119】
第1変形例では、光ファイバ3は、ハウジング11内をおよそ3周回されて余長処理されている。このため、光ファイバ3は、ハウジング11内において、前後方向の向きを5回変えるように取り回されている。この結果、ハウジング11内の光ファイバ3には、U字状に湾曲させた湾曲部が、5箇所ある。5つの湾曲部のうち、3つの湾曲部が前側に位置し、2つの湾曲部が後側に位置する。前側に位置する3つの湾曲部のうち、1つの湾曲部が親基板20の上側に位置し(図20では不図示)、2つの湾曲部が親基板20の下側に位置する。また、後側に位置する2つの湾曲部のうち、一方が親基板20の上側に位置し(図20では不図示)、他方が親基板20の下側に位置する。
【0120】
第1変形例では、前側に3つの湾曲部が親基板20の上下に分かれるように光ファイバ3が配線されている。このため、第1変形例は、3つの湾曲部が親基板20の一方の側だけに配置された場合と比べて、光ファイバ3が上下に嵩張らずに済み、光ファイバ3がハウジング11内で動き難くなる。
【0121】
なお、第1変形例のように、ハウジング11内において光ファイバ3を3周回以上させて余長処理する場合には、親基板20の前上側には1つの湾曲部だけが配置されることが望ましい。これにより、光結合部43のある親基板20の上側では、光ファイバ3が重ならずに済み、光ファイバ3がハウジング11内で動きにくくなり、光結合部43の損傷を抑制できる。この場合、親基板20の下側では湾曲部が上下に重なるため、光ファイバ3が比較的動きやすい状態になるが、光結合部43への影響が少ないため、許容される。
【0122】
<第2変形例:親基板と子基板とを分離しない例>
前述の実施形態では、親基板と子基板とが分離しているため、光ファイバ3、信号線5及び電源線6の接続作業や配線作業が容易になっている。但し、接続作業や配線作業の手間が許容されるのであれば、親基板と子基板とを分離しなくても良い。なお、親基板と子基板とを分離しない場合、光電変換部(発光部41又は受光部141)は、親基板20に直接実装されることによって、親基板20に搭載される。
【0123】
図21は、第2変形例のカメラ側コネクタ10の端末部12を斜め上から見た斜視図である。図に示すように、第2変形例では、光電変換部である発光部41が親基板20の上側に実装され、光結合部43が親基板20の上側に位置する。
【0124】
このような第2変形例においても、前側の2つの湾曲部が親基板20の上下に分かれるように、光ファイバ3が配線されている。これにより、第2変形例においても、親基板20の上下のそれぞれでは、光ファイバ3が重ならずに済む。
【0125】
なお、第2変形例を実現するためには、親基板20の表面に対して発光部41であるVCSELの発光面を450μm以上持ち上げる必要がある。このため、親基板20と発光部41との間にサブマウント(例えば、メタライズされた窒化アルミ基板)を介在させると良い。
【0126】
<第3変形例:親基板に凹所が無い例>
前述の実施形態では、親基板に凹所が形成されており、凹所において親基板の下側から上側へ光ファイバ3が配線されていた。但し、親基板に凹所が無くても良い。
【0127】
図22は、第3変形例のグラバ側コネクタ110の端末部112を斜め上から見た図である。図に示すように、第3変形例では、親基板120の右縁には凹所124が形成されていない。また、第3変形例では、光ファイバ3は、親基板120の右縁の外側を通って、下側から上側へ配線されている。
【0128】
第3変形例では、ハウジング111の内面と親基板120の右縁との間に光ファイバ径程度の隙間を確保する必要がある。このため、第3変形例では、前述の実施形態と比べると、ハウジング111が大型化する。
【0129】
このような第3変形例においても、前側の2つの湾曲部が親基板120の上下に分かれるように、光ファイバ3が配線されている。これにより、第3変形例においても、親基板120の上下のそれぞれでは、光ファイバ3が重ならずに済む。
【0130】
<第4変形例:子基板に凹部が無い例>
前述の実施形態では、子基板に凹部が形成されていた。但し、子基板に凹部が無くても良い。
【0131】
図23は、第4変形例のカメラ側コネクタ10の子基板40の周辺を斜め上から見た斜視図である。図に示すように、第4変形例では、子基板40には凹部44が形成されていない。
【0132】
第4変形例では、光ファイバ3の光軸と子基板40の表面との距離が光ファイバ3(心線の被覆を含む)の半径よりも短い場合、光ファイバ3の端面から心線の被覆までの長さL’を短くできないため、前述の実施形態と比べると、光ファイバ3が損傷しやすくなってしまう。また、第4変形例では、前述の実施形態と比べると、光ファイバ3の被覆と子基板40とを接着し難くなってしまう。
【0133】
このような第4変形例においても、前側の2つの湾曲部が親基板20の上下に分かれるように、光ファイバ3が配線されている。これにより、第4変形例においても、親基板20の上下のそれぞれでは、光ファイバ3が重ならずに済む。
【0134】
<第5変形例:光結合部での光ファイバの方向を斜めにしない例>
前述の実施形態では、光結合部での光ファイバ3の方向が、前後方向に対して45°斜めになっていた。但し、光結合部での光ファイバ3の方向が前後方向と平行でも良い。
【0135】
光結合部での光ファイバ3の方向が前後方向と平行の場合、図13において比較例として説明した通り、光ファイバ3を2回曲げる必要が生じる。この結果、光ファイバ3の末端部3Iでの前後方向の長さが長くなってしまう。
【0136】
このような場合であっても、前側の2つの湾曲部が親基板20の上下に分かれるように、光ファイバ3が配線されていれば、光ファイバ3が重ならずに済む。
【0137】
<第6、7変形例:後側湾曲部が信号線の被覆の上に位置しない例>
前述の実施形態では、光ファイバ3の後側湾曲部3Fが、後側スルーホールに接続された6本の信号線5の被覆の上側に配線されていた。但し、光ファイバ3の後側湾曲部3Fが、信号線5の被覆の上側に位置しなくても良い。
【0138】
図24は、第6変形例のカメラ側コネクタ10の子基板40の周辺を斜めから見た斜視図である。
【0139】
第6変形例では、後側湾曲部3Fが、前側スルーホール32の上側に配置されている。前側スルーホール32では、信号線5の端部が下から上に向かって挿入されているため、前側スルーホール32の上側には半田のエッジが突出しているおそれがある。但し、このような後側湾曲部3Fの配置が許容されるならば、第6変形例においても、前側の2つの湾曲部が親基板20の上下に分かれるように光ファイバ3を配線することが可能である。
【0140】
図25は、第7変形例のカメラ側コネクタ10の子基板40の周辺を斜めから見た斜視図である。
【0141】
第7変形例では、後側スルーホール31と前側スルーホール32のいずれとも半田付けの方向が同じであり、親基板20の両側に14本の信号線5を分散させることができない。また、第7変形例では、後側スルーホール31に接続される信号線5の端部が下から上に向かって挿入されているため、後側スルーホール31の上側には半田のエッジが突出しているおそれがある。但し、このような配置が許容されるならば、第7変形例においても、前側の2つの湾曲部が親基板20の上下に分かれるように光ファイバ3を配線することが可能である。
【0142】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、例えば以下のように変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0143】
<コネクタ付きケーブル1について>
前述のコネクタ付きケーブル1は、カメラリンクインターフェースに適合する構成であった。但し、他の用途に用いられるコネクタ付きケーブルに、前述の実施形態の構成を採用しても良い。
【0144】
<ケーブルについて>
前述の複合ケーブル2は信号線5や電源線6を備えていたが、これに限られるものではない。例えば、信号線5や電源線6の無い光ケーブルの端部にコネクタが設けられたコネクタ付きケーブルであっても良い。
【0145】
また、前述の複合ケーブル2は、光ファイバを1本だけ備えていたが、これに限られるものではない。例えば、複合ケーブルが複数の光ファイバを備えていても良い。
【符号の説明】
【0146】
1 コネクタ付きケーブル、2 複合ケーブル、3 光ファイバ、
3A 根元部、3B 下側直線部、3C 第1前側湾曲部、3D 移行部、
3E 第1上側直線部、3F 後側湾曲部、3G 第2上側直線部、
3H 第2前側湾曲部、3I 末端部、3J 端面、
4 差動信号線、5 信号線、6 電源線、
7 口出し部、8 かしめ部材、10 カメラ側コネクタ、
11,111 ハウジング、
11A,111A ケース、
11B,111B カバー、
12,112 端末部、
20,120 親基板、
21 LVDSシリアライザ、22 カメラ側MCU、
24,124 凹所、25 接続部、
31,131 後側スルーホール、31A 後側スルーホール列、
32,132 前側スルーホール、32A 前側スルーホール列、
33 2ピンヘッダ用スルーホール、34 10ピンヘッダ用スルーホール、
35 4ピンヘッダ用スルーホール、36 電源線用スルーホール、
40,140 子基板、41発光部、41A発光面、42 駆動部、
43,143 光結合部、
44,144 凹部、
51,151 保護カバー、52,152 端子部、
61,161 2ピンヘッダ、
62,162 10ピンヘッダ、
63,163 4ピンヘッダ、
110 グラバ側コネクタ、
121 LVDSデシリアライザ、122 グラバ側MCU、
141 受光部、142 電流電圧変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を伝送するための光ファイバを有するケーブルと、
前記光ファイバの端面と光学的に結合された光電変換部を搭載した基板を収容するコネクタと、
を備えるコネクタ付きケーブルであって、
前記コネクタから延び出る前記ケーブルの方向を前後方向とし、前記コネクタから見て前記ケーブルの側を後とし、逆側を前とするとともに、前記基板から見て前記光電変換部の側を上とし、逆側を下としたとき、
前記コネクタの内部において、前記光ファイバの前記前後方向の向きを変えて前記光ファイバをU字状に湾曲させた湾曲部が少なくとも3つ形成されているとともに、前側の2つの湾曲部の一方が前記基板の下側に位置し、他方が前記基板の上側に位置するように、前記光ファイバが配線されている
ことを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ付きケーブルであって、
前記基板の縁に凹所が形成されており、
前記コネクタの内面と前記凹所との間の隙間を前記光ファイバが通過することによって、前記基板の下側と上側の配線を連絡させている
ことを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタ付きケーブルであって、
前記基板とは別の子基板に前記光電変換部が実装されており、
前記基板と前記子基板とが電気的に接続されることによって、前記基板に前記光電変換部が搭載されている
ことを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタ付きケーブルであって、
前記基板と前記子基板との間に前記光ファイバが挟まれて配線されている
ことを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタ付きケーブルであって、
前記前側の2つの湾曲部に対して後側に形成された湾曲部は、前記基板の上側に位置しており、
前記基板の上側に位置する2つの前記湾曲部の間の部分が、前記基板と前記子基板との間に挟まれている
ことを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のコネクタ付きケーブルであって、
前記基板の上側に位置する前記湾曲部と前記光ファイバの前記端面との間において前記光ファイバが曲げられて、前記光ファイバが前記前後方向に対して鋭角をなすように前記光ファイバの前記端面と前記光電変換部とが結合されている
ことを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のコネクタ付きケーブルであって、
前記ケーブルは、信号線を更に備えており、
前記基板は、前記信号線の端部をスルーホール接続するためのスルーホールを備えており、
前記コネクタの内部において、いずれかの前記湾曲部が、前記基板にスルーホール接続された前記信号線の被覆上に位置している
ことを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項8】
光信号を伝送するための光ファイバを有するケーブルと、
前記光ファイバの端面と光学的に結合された光電変換部を搭載した基板を収容するコネクタと、
を備えるコネクタ付きケーブルの製造方法であって、
前記ケーブルを準備する工程と、
前記光ファイバの前記端面と前記光電変換部とを光学的に結合する工程と、
前記コネクタから延び出る前記ケーブルの方向を前後方向とし、前記コネクタから見て前記ケーブルの側を後とし、逆側を前とするとともに、前記基板から見て前記光電変換部の側を上とし、逆側を下としたとき、前記光ファイバの前記前後方向の向きを変えて前記光ファイバをU字状に湾曲させた湾曲部を少なくとも3つ形成するとともに、前側の2つの湾曲部の一方が前記基板の下側に位置し、他方が前記基板の上側に位置するように、前記光ファイバを配線する工程と、
を有することを特徴とするコネクタ付きケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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