説明

コネクタ及びこのコネクタを備えた携帯端末

【課題】高い嵌合保持力を維持しつつ、低背化が実現可能なコネクタを提供する。
【解決手段】リセプタクルコンタクトは、コンタクト接触部と、コンタクト接触部の端部から延出し、プラグコネクタの挿入方向に沿うように、又は、リセプタクル本体の底面側へ向かいつつコンタクト接触部に近づくように、屈曲させてなる屈曲部が形成された内壁接触部と、を備え、プラグコンタクトは、第1接触面部を備え、第1接触面部をコンタクト接触部に摺動させつつ、リセプタクル本体に対してプラグコンタクトを挿抜し、少なくとも、屈曲部は、リセプタクル本体からプラグコネクタを抜脱するときに、リセプタクル本体の内壁に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに結合して電気的に接続されるリセプタクルコネクタとプラグコネクタとを備えるコネクタ及び、このコネクタを備えた携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
リセプタクルコネクタとプラグコネクタとを備え、リセプタクルコネクタに設けられた差込溝にプラグコネクタを挿入することにより両者を導通させるコネクタにおいては、これを搭載する携帯端末その他の装置の小型化に伴って、低背化の要請が強まりつつある。しかし、低背化に伴って、リセプタクルコネクタとプラグコネクタの嵌合を保持する保持力(嵌合保持力)が低下しやすくなり、これにより外れやすくなるという問題があった。
【0003】
これに対して、リセプタクルコネクタ(リセプタクル型電気コネクタ)のリセプタクルコンタクト(ターミナル)にロック爪を設け、プラグコネクタ(プラグ型電気コネクタ)のプラグ本体(絶縁ハウジング)にロック爪に対応させた係止突部を形成したコネクタが提案されている(特許文献1)。このコネクタでは、リセプタクルコネクタとプラグコネクタ嵌合時にロック爪と係止突部を互いに係合させることにより、嵌合保持力の向上を図っている。
【0004】
一方、低背化の実現とともに、リセプタクルコネクタからプラグコネクタを抜くときに、リセプタクルコネクタのコンタクトの端部が捲れ上がることを防止するために、リセプタクルコネクタのインシュレータ中央に設けた支柱の上方両側に移動抑制部を対称に設けたコネクタが提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−259979号公報
【特許文献2】特開2001−338711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リセプタクルコンタクトにロック爪を設けた上述のコネクタ(特許文献1)では、プラグコネクタの挿抜を繰り返すうちに、係止突部が形成されたプラグ本体がロック爪により削れてしまいやすい。これにより、プラグ本体からダストが出るとともに、係止突部の形状が変化して嵌合保持力が低下するおそれがある。
【0006】
また、移動抑制部を設けたコネクタ(特許文献2)では、コネクタをさらに低背化しようとすると、移動抑制部を薄くする必要がある。しかし、移動抑制部の厚さを小さくすると、移動抑制部の強度が弱くなるため、コンタクトの捲れ上がりを防止できないケースが発生するおそれがある。さらに、捲れ上がりを防止できたとしても、移動抑制部に引っかかったコンタクトが本来の位置に戻らないおそれがあり、コンタクトが本来の位置に戻らないコネクタはその機能を発揮することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のコネクタは、絶縁部材からなるプラグ本体、及び、このプラグ本体に保持された少なくとも1以上のプラグコンタクトを有するプラグコネクタと、絶縁部材からなりプラグコネクタが挿抜されるリセプタクル本体、及び、プラグコネクタが挿入されたときにプラグコンタクトに接触導通するようにリセプタクル本体に保持された少なくとも1以上のリセプタクルコンタクトを有するリセプタクルコネクタと、を備え、リセプタクルコンタクトは、リセプタクル本体にプラグコネクタが挿入されたときに、プラグコンタクトと接触するコンタクト接触部と、コンタクト接触部の端部から延出し、プラグコネクタの挿入方向に沿うように、又は、リセプタクル本体の底面側へ向かいつつコンタクト接触部に近づくように、屈曲させてなる屈曲部が形成された内壁接触部と、を備え、プラグコンタクトは、挿抜方向に延びる第1接触面部を備え、第1接触面部をコンタクト接触部に摺動させつつ、リセプタクル本体に対してプラグコンタクトを挿抜し、少なくとも、屈曲部は、リセプタクル本体からプラグコネクタを抜脱するときに、リセプタクル本体の内壁に当接することを特徴としている。このコネクタにおいて、内壁接触部は、コンタクト接触部の端部から、リセプタクル本体の底面側ヘ向かいつつ、内壁側へ延びる傾斜部を備え、傾斜部の端部に屈曲部が形成されていることが好ましい。
【0008】
上記リセプタクルコンタクトは、リセプタクル本体にリセプタクルコンタクトを保持する保持部と、保持部とコンタクト接触部とが所定間隔を置いて配置されるようにこれらを互いに連結する連結部と、を備え、プラグコンタクトは、第1接触面部に対向している第2接触面部と、第1接触面部の一方の端部とこれに対向する第2接触面部の一方の端部とを連結し、所定間隔に対応した長さを備えた連結面部と、を備え、第1接触面部及び第2接触面部をコンタクト接触部及び保持部にそれぞれ摺動させつつ、リセプタクル本体に対してプラグコンタクトを挿抜することが好ましい。
【0009】
上記保持部は、プラグコネクタの挿抜方向に延びる外側片と、この外側片と対向する中央片と、外側片及び中央片と直交する方向に延び、外側片の一方の端部とこれに対向する中央片の一方の端部間を連結する水平連結片と、を備え、連結部は、中央片の他方の端部から水平連結片が延びる方向に平行に延びる水平連結部と、水平連結部の端部から延びる第1撓み片と、を備え、コンタクト接触部は、第1撓み片の端部から中央片側へ折り返し保持部側へ延びる第2撓み片と、この第2撓み片の端部から中央片に接近しつつ連結部から離間するように延び、さらに中央片から離間する方向へ屈曲してなる屈曲凸部を備える接触凸部と、この接触凸部から水平連結片が延びる方向に平行に延びる水平片と、を備え、中央片と第2接触面部、及び、接触凸部と第1接触面部をそれぞれ摺動させつつ、リセプタクル本体に対してプラグコンタクトを挿抜することができる。
【0010】
上記第1接触面部には、第2接触面部から離れる方向に突出した凸部が形成されており、凸部が接触凸部を乗り越えるようにプラグコンタクトをリセプタクル本体内に挿入することができる。
【0011】
上記中央片は、水平連結片側の端部において、外側片から離れる方向に突出する保持凸部を備え、第2接触面部は、第1接触面部から離れる方向に突出する突起部を備え、突起部が保持凸部を乗り越えるようにプラグコネクタをリセプタクル本体内に挿入するとよい。
【0012】
上記プラグコネクタ及びリセプタクルコネクタのいずれか一方は表示装置ユニット上に配置され、他方は基板上に配置され、差込溝にプラグコネクタを挿入することにより表示装置ユニットと基板とが導通することができる。
【0013】
上記プラグコネクタ及びリセプタクルコネクタのいずれか一方は撮像素子ユニット上に配置され、他方は基板上に配置され、差込溝にプラグコネクタを挿入することにより撮像素子ユニットと基板とが導通することができる。
【0014】
本発明に係る携帯端末は、上記のいずれかのコネクタを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のコネクタにおいては、プラグコンタクト又はリセプタクルコンタクトの端部から延出し、このコンタクトを保持するプラグ本体又はリセプタクル本体の内壁に接触する内壁接触部を設けている。
この内壁接触部は、コンタクトを保持するプラグ本体又はリセプタクル本体の内壁に弾性変形しつつ当接するため、内壁との間に摩擦抵抗が生じるともにプラグに対する押圧力を増加させることができるため、コネクタが低背化されても高い嵌合保持力を維持することができる。
また、上記特許文献2記載の移動抑制部のような部材を用いることなく低背化を実現しつつ、コネクタ脱抜の際の姿勢によらずコンタクト端部が捲れ上がることを防ぐことができる。
またさらに、所定以上に傾いた状態でのプラグコネクタとリセプタクルコネクタの嵌合・脱抜(斜め挿抜)時や、コネクタのハンドリングの際に、外乱等により想定以上の荷重がかかったとしても、内壁接触部が内壁と当接しているため、内壁接触部及びこれを設けたコンタクトが過剰に変位することがなく塑性変形を防止できるので、コネクタとしての性能を確実に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本実施形態に係るコネクタは、互いに結合して電気的に接続されるリセプタクルコネクタ1(図1)とプラグコネクタ2(図3)とを備える。例えば、リセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2の一方をLCD(液晶ディスプレイ)(表示装置)ユニットやCCD(電荷結合素子)(撮像素子)ユニット側に配置し、他方をこれらのユニットと導通して動作を制御する基板側に配置して、リセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2とを結合することによってユニットと基板とを電気的に接続する。また、本実施形態に係るプラグコネクタ2とリセプタクルコネクタ1は、携帯端末(例えば、携帯電話、携帯可能なコンピュータを含むPDA(Personal Digital Assistant))内における接続や、携帯端末と外部機器との接続に適用することができる。なお、リセプタクルコネクタ1及びプラグコネクタ2は、LCDユニットのほかに、表示装置として、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイユニット、プラズマディスプレイユニット、有機エレクトロルミネッセント素子ディスプレイユニットにも適用することができる。また、CCDユニットのほかに、撮像素子として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ユニットにも、リセプタクルコネクタ1及びプラグコネクタ2を適用することができる。
【0017】
図1に示すリセプタクルコネクタ1は、絶縁部材である合成樹脂の射出成形品からなりプラグコネクタ2が挿抜される差込溝31が設けられたリセプタクル本体3と、差込溝31の両側にそれぞれ配設された複数のリセプタクルコンタクト4と、を備える。リセプタクル本体3は、例えばナイロン9T(商標)、変性ナイロン、液晶ポリマーを射出成形してなる絶縁性部材である。
【0018】
図2に示すリセプタクルコンタクト4は、スタンピング成形により形成された帯状の金属材からなり、保持部40と、連結部50と、コンタクト接触部55と、内壁接触部60と、が連続一体として形成されている。ここで、プラグコネクタ2をリセプタクルコネクタ1に嵌合するときにプラグコネクタ2が配置される側(図2において上側)を上側、リセプタクルコネクタ1が配置される側(図2において下側)を下側と称している。
【0019】
保持部40は、下側が開口となったU字状に曲成され、差込溝31の縁部31a(図5)を挟む形でリセプタクル本体3に保持される。連結部50は、保持部40における差込溝31の内側に位置する一端からリセプタクルコネクタ1の幅方向に延びる。コンタクト接触部55は、連結部50の端部から上方に折り返され中央片43に向けて略S字状に形成されている。
【0020】
保持部40は、プラグコネクタ2の挿抜方向(プラグコネクタ2のリセプタクルコネクタ1への挿入方向及びリセプタクルコネクタ1からの抜脱(抜去)方向)に延びる外側片41、この外側片41と対向するように延びる中央片43、及び、外側片41及び中央片43と直交する方向に延び、外側片の一方の端部とこれに対向する中央片43の一方の端部間を連結する水平連結片42から構成される。保持部40の両端部のうち、差込溝31の外側に位置する外側片41の端部からは、リセプタクル本体3の長手方向の側面から外部へ延出する端子部44が連続一体に設けられており、この端子部44は例えば回路基板の導電パターンに半田固定される。
【0021】
外側片41及び/又は中央片43には、プラグコネクタ2の挿抜方向略中央に、幅方向両側に突出する係止部(不図示)を設けることが好ましい。この係止部は、リセプタクルコンタクト4をリセプタクル本体3に装着したときにリセプタクル本体3に設けられた被係止部(不図示)と係合し、これにより、リセプタクルコンタクト4はリセプタクル本体3に対して確実に固定される。
【0022】
中央片43には、水平連結片42側の端部からプラグコネクタ2の挿抜方向略中央にかけて、外側片41から離れる方向に突出した保持凸部43aが形成されている。この保持凸部43aは、端子部44、外側片41、水平連結片42と同じ厚さの中央片43において、プラグコネクタ2の挿抜方向略中央から下側を圧潰して板厚を薄くすることによって形成する。さらに、保持凸部43aは、その裏面(外側片41側の面)から金型を用いて叩くことにより、その凸寸法及びプラグコネクタ2の挿抜方向における配置位置を調整することができる。圧潰によって薄くなった部分の板厚は、連結部50及びコンタクト接触部55と同じ板厚としている。このような板厚分布とすると、保持部40及び端子部44のリセプタクル本体3への固定が強固となるとともに、プラグコネクタ2の挿抜時のリセプタクルコンタクト4の変位により伝達される応力を効果的に分散して塑性変形を防止することができる。よって、リセプタクル本体3にリセプタクルコンタクト4を装着するときにおける外側片41及び水平連結片42の変形を防止することができる。さらに、端子部44へ応力が伝わりにくくなるため、リセプタクル本体3に対する端子部44の固定において、及び、コネクタと基板との接合においてリセプタクル本体3や接合に使用する半田等にクラックが発生することを防止することができる。
また、リセプタクルコンタクト4が極めて薄い場合(例えば0.1mm以下)は全て均一の板厚としてもよい。
【0023】
連結部50は、中央片43の端部から水平連結片42が延びる方向に平行な方向に延設された水平連結部51と、水平連結部51の端部から水平連結部51が延びる方向から徐々に上方に離れるように延びる第1撓み片52と、から構成される。また、水平連結部51と第1撓み片52とは、例えば水平連結部51が延びる方向から徐々に上方に離れるような曲面で一体に形成してもよい。
【0024】
コンタクト接触部55は、第1撓み片52の端部から中央片43側へ折り返し、水平連結部51側へ延びる第2撓み片56、第2撓み片56の端部から中央片43に接近しつつ連結部50から離間するように延び、中央片43から離間する方向へ略U字状に屈曲してなる屈曲凸部58aを備える接触凸部58、及び、この接触凸部58から水平連結部51が延びる方向と平行に延びる水平片59からなり、全体として略S字形状に形成される。第1撓み片52と第2撓み片56は連続一体に形成され、一定の曲率半径を備える曲率円上にのるように形成することもできる。コンタクト接触部55を複数の曲面を備える略S字形状とすることにより、曲率半径の大きな曲面を形成することができるためコンタクト接触部55自身のばね性を向上することができる。さらに、コンタクト接触部55を第1撓み片52と接続することにより、コンタクト接触部55が連結部50によるばね性を伴いながらさらに動くことができる。よって、コネクタの低背化のためにスペースが制限される場合であっても、優れたばね性を発揮することができる。
【0025】
内壁接触部60は、コンタクト接触部55の水平連結部59の端部から保持部40から離れるように延出している。この内壁接触部60は、リセプタクル本体3に保持されたときに、リセプタクル本体3の底面部32(図5)側ヘ向かいつつ、内壁35側へ延びる傾斜部61と、この傾斜部61の端部に形成された屈曲部62から、リセプタクルコネクタ3の内壁35と略平行に(プラグコネクタ2の挿入方向に沿って)、内壁35と対向するように形成された先端部63と、を備える。ここで、先端部63は、内壁35に平行でなくてもよく、屈曲部62から、リセプタクル本体3の底面部32側へ向かいつつ、コンタクト接触部55に接近するように延びる構成とすることもできる。
【0026】
リセプタクルコンタクト4は、基材(例えばベリリウム銅、チタン銅、りん青銅、コルソン(ニッケル−シリコン)系銅合金)上に、下地めっき(例えばニッケルめっき)を施した後に、仕上げめっき(例えば金めっき)を施して作製する。リセプタクルコンタクト4の板厚は、コネクタの小型化、低背化を考慮し、ばね設計や加工性の観点から、例えばコネクタのピッチが0.3〜0.5mmの場合には、保持部40、端子部44、及び保持凸部43aは0.08〜0.15mm、中央片43の保持凸部43a以外の部分、連結部50、コンタクト接触部55、及び内壁接触部60は、0.05〜0.08mmであることが好ましい。このときの下地めっきの厚さは、例えばニッケルの場合は0.5μm〜4μmであることが好ましい。これは、0.5μm未満であると下地めっきとしての効果が得られず、4μmを超えるとプラグコネクタ2との摺接時の変形によってクラックが生じやすくなるためである。また、仕上げめっきの厚さは、例えば金の場合、保持部40、連結部50、コンタクト接触部55、及び内壁接触部60は0.03〜0.5μmであることが好ましく、端子部44は0.03μm〜0.2μmであることが好ましい。これは、端子部44の仕上げめっきの厚さが0.2μmを超えると、基板に実装するときに使用する半田(例えば、錫−鉛、錫−銅、錫−銅−銀)に金が拡散しやすくなり、これにより、接合強度が低下してクラックが発生しやすくなるためである。
【0027】
リセプタクルコンタクト4は、上側からリセプタクル本体3に挿入され、上述の係止部をリセプタクル本体3の被係止部内に圧入することによりリセプタクル本体3に保持される。これは、内壁接触部60を設けたことにより高い嵌合保持力を実現することができるため、リセプタクル本体3の下側から挿入する必要がないからである。したがって、実装面であるリセプタクル本体3の底面部32にリセプタクルコンタクト4を挿入するための貫通穴を設ける必要がない。
さらに、特許文献2記載のコネクタでは、移動抑制部を成形するための金型による制約上、リセプタクル本体の底面部に貫通穴が形成されてしまうが、本実施形態のコネクタでは、移動抑制部を設ける必要がないため、貫通穴を形成することなくリセプタクル本体を成形することができる。
したがって、本実施形態のコネクタでは、リセプタクル本体3の底面部32に貫通穴が形成されないため、実装基板のパターン配線禁止領域を減らすことができるとともに、フラックスその他の異物が基板からリセプタクル本体3内へ進入することを防ぐことができる。
【0028】
リセプタクルコンタクト4をリセプタクル本体3に装着したときに水平連結部51及び第1撓み片52の下方に位置する底面部32(図5)は、プラグコネクタ2がリセプタクルコネクタ1に嵌合されていない状態では水平連結部51との間に所定の間隔を備えている。この間隔は、0.01〜0.05mmが好ましい。0.01mm未満とすると、製造上のばらつきにより水平連結部51と接触するものとしないものとが生じ、0.05mmを超えるとリセプタクルコンタクト4のばねとしての挙動が安定しないため、所定の接圧(接触圧)や接点位置が得られない傾向になるからである。
【0029】
このように配置されたリセプタクルコンタクト4に対してプラグコンタクト7を嵌合すると、水平連結部51と第1撓み片52のうち少なくとも水平連結部51が底面部32に当接する。これにより、リセプタクルコンタクト4の挙動が安定する。すなわち、リセプタクルコンタクト4の形状変化が底面部32により制限されるため、リセプタクルコンタクト4の塑性変形を防止することができる。また、リセプタクルコンタクト4の下方に絶縁性の底面部32が配置されることになるため、リセプタクルコネクタ1の下方にも配線をすることができる。
【0030】
図3に示すプラグコネクタ2は、絶縁部材である合成樹脂のインサート成形品からなる略直方体形状のプラグ本体5と、それぞれ帯状の金属部材からなりプラグ本体5の長手方向に沿った両側にそれぞれリセプタクルコネクタ1におけるリセプタクルコンタクト4と対応して同じピッチで配設された複数のプラグコンタクト7とを備える。プラグ本体5は、例えばナイロン9T(商標)、変性ナイロン、液晶ポリマーからなり、プラグコンタクト7とともに一体成形(インサート成形)してなる絶縁性部材である。
【0031】
図4に示すプラグコンタクト7は、スタンピング成形により形成された帯状の金属材からなり、プラグコネクタの挿抜方向へ延びる第1接触面部71と、第1接触面部71に対向して延びる第2接触面部72と、第1接触面部71及び第2接触面部72と直交する方向に延び、第1接触面部71の一方の端部71aとこれに対向する前記第2接触面部72の一方の端部72a間を連結する連結面部73と、が連続一体に形成されてなるものである。第1接触面部71の他方の端部71bからは、プラグ本体5を貫通して、連結面部73と略平行に延びる端子部74が連続一体に形成されている。この端子部74は、例えば回路基板の導電パターンに半田固定される。なお、プラグコンタクト7は、リセプタクルコンタクト4と同様の材料、構成により形成することができるため、その説明は省略する。
【0032】
第1接触面部71には、連結面部73側の端部71aに第2接触面部72から離れる方向に突出する凸部71dが凸設されている。第1接触面部71をこのような構成とすると、プラグコネクタ2のリセプタクルコネクタ1への挿抜時の屈曲凸部58aと凸部71dとの接触により、クリック感が得られるとともに、リセプタクルコンタクト4内へのプラグコンタクト7の保持を確実にすることができる。
【0033】
一方、第2接触面部72には、第1接触面部71から離れる方向に突出する突起部72bが形成されている。第2接触面部72をこのような構成とすると、プラグコネクタ2のリセプタクルコネクタ1への挿抜時の保持凸部43aと第1接触面部72の各部との接触により、クリック感が得られるとともに、リセプタクルコンタクト4内へのプラグコンタクト7の保持を確実にすることができる。さらに、リセプタクルコンタクト4とプラグコンタクト7は、第2接触面部72と保持凸部43a、及び、第1接触面部71と屈曲突部58aの2カ所でそれぞれ当接して、リセプタクルコンタクト4がプラグコンタクト7を挟み込む形となり、確実に電気的接続を得ることができる。
【0034】
以上の構成のコネクタにおいては、図5(a)に示すように、プラグコンタクト7のリセプタクルコンタクト4への挿入当初には端部71aが接触凸部58の上部に圧接され、第1撓み片52が底面部32に接近する。さらにプラグコンタクト7をリセプタクルコンタクト4に挿入すると、図5(b)に示すように、水平連結部51が延びる方向において内壁接触部60及びコンタクト接触部55が弾性変形して、保持凸部43aと屈曲凸部58aの間のギャップが拡がって、屈曲部62はプラグコネクタ7の挿入方向に延びる内壁35に当接し、第2接触面部72と中央片43が摺動するとともに、第1接触面部71と接触凸部58が摺動しつつ、コンタクト接触部55と保持部40との間に第1接触面部71及び第2接触面部72が嵌入される。
【0035】
ここで、保持凸部43aと屈曲凸部58aとの間のギャップは、プラグコンタクト7をリセプタクルコンタクト4に挿入していないときには、所定間隔となっている。この所定間隔は、プラグコンタクト7の第1接触面部71と第2接触面部72との間隔(所定間隔に対応した長さの間隔)より小さくされており、プラグコンタクト7をリセプタクルコンタクト4に挿入するとその間隔が拡がり、かつ、リセプタクルコンタクトプラグコンタクト4の弾性力によりプラグコンタクト7を挟持することができる。この所定間隔は、プラグコンタクト7の設計形状、プラグコンタクト7を挟持する力の設計値などによって任意の値とすることができる。
【0036】
ここで、プラグコネクタ2のリセプタクルコネクタ1への挿抜にともなう内壁接触部60の挙動について説明する。
まず、プラグコネクタ2をリセプタクルコネクタ2に挿入するときは、内壁接触部60は、第1接触面部71と屈曲凸部58aとの当接により上から押されるため略S字形状が潰れるとともに、保持凸部43aと屈曲凸部58aとの間のギャップを広げるように、コンタクト接触部55と保持部40との間にプラグコンタクト7が入り込むため、内壁35側にスライドする。内壁接触部60には、傾斜部61が設けられているため、内壁接触部60の上側部分と内壁35とが当接することがないため、低い嵌合力でプラグコネクタ2をリセプタクルコネクタ2に挿入することができる。
【0037】
次に、プラグコネクタ2をリセプタクルコネクタ1から抜脱するときの挙動について説明する。
プラグコネクタ2をリセプタクルコネクタ1から抜脱しようとすると、リセプタクルコンタクト4は、プラグコンタクト7に対する接圧により、保持凸部43aと屈曲凸部58aとの間のギャップが開いたまま上方に持ち上がろうとする。このときコンタクト接触部55には第1接触面部71との摩擦により回転モーメント(図6では左回転の方向)がかかるため、内壁接触部60が回転する。よって、内壁接触部60が接触的に内壁部35に当接するため、ギャップの寸法の規制がかかるともに、内壁接触部60の弾性により、ギャップがより開こうとしても高い接圧がかかるため、嵌合が保持される。すなわち、このような構成により、高い嵌合保持力を実現することができる。さらに、内壁接触部60の板厚を圧潰して薄くしたりして嵌合保持力の調整をすることができる。したがって、コネクタのハンドリング時に、想定以上の荷重がかかったとしても、内壁接触部60及びリセプタクルコンタクト4が過剰に変位することがなく塑性変形を防止できるので、これにより、コネクタとしての性能を確実に維持することができる。
【0038】
一方、リセプタクルコンタクト4からのプラグコンタクト7の抜脱時には、図6に示すように、凸部71dと屈曲凸部58aとの摺動によりコンタクト接触部55が上方に持ち上げられる力が働く。この力は、プラグコネクタ2とリセプタクルコネクタ1とが互いに傾いた状態で抜脱(斜め抜脱)したときに大きくなるが、内壁接触部60が弾性変形して屈曲部62がリセプタクル本体3の内壁35に当接しているため、リセプタクルコンタクト4が捲れ上がることを防ぐことができる。プラグコンタクト7の抜脱が終わると、リセプタクルコンタクト4の弾性により、保持凸部43aと屈曲凸部58aの間のギャップは小さくなって、リセプタクルコンタクト4はプラグコンタクト7挿入前の状態に復元する。
【0039】
以上のように、本実施形態に係るコネクタでは、内壁接触部60を内壁35に対して係合させるのではなく、弾性変形させつつ当接させる構成としているため、プラグコネクタ2とリセプタクルコネクタ1の挿抜の繰り返しによる嵌合保持力の低下を防止することができる。また、コネクタの低背化を妨げるような部材がないため、より低背化されたコネクタを実現することができる。またさらに、プラグコネクタ2とリセプタクルコネクタ1を嵌合するときに、想定以上の荷重がかかったとしても、内壁接触部60が内壁35と当接しているため、内壁接触部60及びリセプタクルコンタクト7が過剰に変位することがなく、これにより、コネクタとしての性能を確実に維持することができる。さらに、内壁接触部60を内壁35に対して係合させるのではなく、弾性変形させつつ当接させる構成としているため、プラグコネクタ2とリセプタクルコネクタ1の挿抜の繰り返しによる嵌合保持力の低下を防止することができ、プラグ本体5から発生するダストを大幅に低減することができる。
【0040】
なお、本実施形態においてリセプタクルコンタクト4の機能とプラグコンタクト7の機能とを入れ替えてもよい。
【0041】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係るリセプタクルコネクタの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリセプタクルコンタクトの構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプラグコネクタの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るプラグコンタクトの構成を示す縦断面図である。
【図5】(a)は本発明の実施形態に係るリセプタクルコネクタへのプラグコネクタの挿入を開始したときの状態を、(b)はリセプタクルコネクタへのプラグコネクタの挿入が完了した状態を、それぞれ示す縦断面図(挿抜方向に沿った断面図)である。
【図6】本発明の実施形態に係るリセプタクルコネクタからプラグコネクタを抜脱するときの状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 リセプタクルコネクタ
2 プラグコネクタ
3 リセプタクル本体
4 リセプタクルコンタクト
5 プラグ本体
7 プラグコンタクト
31 差込溝
40 保持部
41 外側片
42 水平連結片
43 中央片
43a 保持凸部
50 連結部
51 水平連結部
52 第1撓み片
55 コンタクト接触部
56 第2撓み片
58 接触凸部
58a 屈曲凸部
59 水平片
60 内壁接触部
61 傾斜部
62 屈曲部
63 先端部
71 第1接触面部
71d 凸部
72 第2接触面部
72b 突起部
73 連結面部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部材からなるプラグ本体、及び、このプラグ本体に保持された少なくとも1以上のプラグコンタクトを有するプラグコネクタと、絶縁部材からなり前記プラグコネクタが挿抜されるリセプタクル本体、及び、前記プラグコネクタが挿入されたときに前記プラグコンタクトに接触導通するように前記リセプタクル本体に保持された少なくとも1以上のリセプタクルコンタクトを有するリセプタクルコネクタと、を備えたコネクタであって、
前記リセプタクルコンタクトは、
前記リセプタクル本体に前記プラグコネクタが挿入されたときに、前記プラグコンタクトと接触するコンタクト接触部と、
前記コンタクト接触部の端部から延出し、前記プラグコネクタの挿入方向に沿うように、又は、前記リセプタクル本体の底面側へ向かいつつ前記コンタクト接触部に近づくように、屈曲させてなる屈曲部が形成された内壁接触部と、を備え、
前記プラグコンタクトは、前記挿抜方向に延びる第1接触面部を備え、
第1接触面部を前記コンタクト接触部に摺動させつつ、前記リセプタクル本体に対して前記プラグコンタクトを挿抜し、
少なくとも、前記屈曲部は、前記リセプタクル本体から前記プラグコネクタを抜脱するときに、前記リセプタクル本体の内壁に当接することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記内壁接触部は、前記コンタクト接触部の端部から、前記リセプタクル本体の底面側ヘ向かいつつ、前記内壁側へ延びる傾斜部を備え、前記傾斜部の端部に前記屈曲部が形成されている請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記リセプタクルコンタクトは、前記リセプタクル本体に前記リセプタクルコンタクトを保持する保持部と、前記保持部と前記コンタクト接触部とが所定間隔を置いて配置されるようにこれらを互いに連結する連結部と、を備え、
前記プラグコンタクトは、前記第1接触面部に対向している第2接触面部と、前記第1接触面部の一方の端部とこれに対向する前記第2接触面部の一方の端部とを連結し、前記所定間隔に対応した長さを備えた連結面部と、を備え、
第1接触面部及び前記第2接触面部を前記コンタクト接触部及び前記保持部にそれぞれ摺動させつつ、前記リセプタクル本体に対して前記プラグコンタクトを挿抜する請求項1又は請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記保持部は、前記プラグコネクタの挿抜方向に延びる外側片と、この外側片と対向する中央片と、前記外側片及び前記中央片と直交する方向に延び、前記外側片の一方の端部とこれに対向する前記中央片の一方の端部間を連結する水平連結片と、を備え、
前記連結部は、前記中央片の他方の端部から前記水平連結片が延びる方向に平行に延びる水平連結部と、前記水平連結部の端部から延びる第1撓み片と、を備え、
前記コンタクト接触部は、前記第1撓み片の端部から前記中央片側へ折り返し前記保持部側へ延びる第2撓み片と、この第2撓み片の端部から前記中央片に接近しつつ前記連結部から離間するように延び、さらに前記中央片から離間する方向へ屈曲してなる屈曲凸部を備える接触凸部と、この接触凸部から前記水平連結片が延びる方向に平行に延びる水平片と、を備え、
前記中央片と前記第2接触面部、及び、前記接触凸部と第1接触面部をそれぞれ摺動させつつ、前記リセプタクル本体に対して前記プラグコンタクトを挿抜する請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1接触面部には、前記第2接触面部から離れる方向に突出した凸部が形成されており、前記凸部が前記接触凸部を乗り越えるように前記プラグコンタクトを前記リセプタクル本体内に挿入する請求項4記載のコネクタ。
【請求項6】
前記中央片は、前記水平連結片側の端部において、前記外側片から離れる方向に突出する保持凸部を備え、前記第2接触面部は、第1接触面部から離れる方向に突出する突起部を備え、前記突起部が前記保持凸部を乗り越えるように前記プラグコネクタを前記リセプタクル本体内に挿入する請求項4又は請求項5記載のコネクタ。
【請求項7】
前記プラグコネクタ及び前記リセプタクルコネクタのいずれか一方は表示装置ユニット上に配置され、他方は基板上に配置され、前記差込溝に前記プラグコネクタを挿入することにより前記表示装置ユニットと前記基板とが導通する請求項1から請求項6のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項8】
前記プラグコネクタ及び前記リセプタクルコネクタのいずれか一方は撮像素子ユニット上に配置され、他方は基板上に配置され、前記差込溝に前記プラグコネクタを挿入することにより前記撮像素子ユニットと前記基板とが導通する請求項1から請求項6のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項記載のコネクタを備えたことを特徴とする携帯端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−305513(P2007−305513A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134997(P2006−134997)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000128407)京セラエルコ株式会社 (77)
【Fターム(参考)】