説明

コネクタ及びスタック状電極への接続構造

【課題】スタック状電極の設置、使用において、接続が容易且つ極めて短時間で出来、しかも接続を間違え難くすることを目的とする。又、スタック作業の作業性を向上させることを目的とする。更に、省スペースで配線を可能とすることを目的とする。
【解決手段】ハウジング4とハウジング4に挿入され、配線材1を電極板2に圧接する楔5を備えて構成され、ハウジング4は、楔5と配線材1が挿入される内部空洞40を有し、一端部には、電極板2の先端部が挿入され、内部空洞40に繋がる複数の溝部43を有し、他端には、楔5と配線材1が挿入される開口部46を有し、楔5は、基部58と基部58から延設されて、配線材1を電極板2に押圧する先端押圧部512を備えて構成され、前後移動が可能な楔5が、ハウジング4の内部空洞40内に、開口部46から挿入して設置されるコネクタ6。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ、特にスタック状電極への配線接続に好適なコネクタ及びコネクタのスタック状電極への接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からスタック状の電極の端子に複数の線を配線する場合、図7に示すように、電極100一枚毎に、電極100の一部に丸線101を半田鏝で半田付け102をし、その後電極をスタック状に重ねる方法や、電極一枚毎に、電極の一部と丸線に夫々半田ペーストを塗布し、電極全体をリフローし、その後電極をスタック状に重ねる方法や、図8に示すように、電極100一枚毎に、電極100の一部に、丸線101の端部に取り付けた接続端子103をネジ止めし、その後電極をスタック状に重ねる方法が採用されている。
【0003】
又、図9に示すように、スタック状の電極において、電極100一枚毎に、突起状の端子104を夫々設けると共に、丸線101の端部にソケット105を設け、電極100に設けられた突起状の端子104にソケット105を嵌合させる接続構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−339828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の接続構造及び接続方法では以下の問題点があった。即ち、電極の一部に丸線を半田鏝で半田付けする場合、電極のサイズが大きいため、熱量が足りず、大掛かりな装置、例えば熱圧着装置が必要となる。又、電極一枚毎に、接続作業を行なう必要があり、しかも配線が交錯するので、接続を間違え易いという問題点や、作業が煩雑で、時間がかかるという問題点があった。又、端子接続後に電極をスタック状に重ねるので、スタック作業の作業性が極めて悪いという問題点があった。
【0006】
又、電極の一部と丸線に夫々半田ペーストを塗布し、電極全体をリフローする場合、電極のサイズが大きいため、大きなリフロー炉が必要になる。又、リフローにより、電極全体に熱履歴が残ってしまうという問題点があった。又、電極一枚毎に、接続作業を行なう必要があり、しかも配線が交錯するので、接続を間違え易いという問題点や、作業が煩雑で、時間がかかるという問題点があった。又、端子接続後に電極をスタック状に重ねるので、スタック作業の作業性が極めて悪いという問題点があった。
【0007】
又、電極に、丸線の端部に取り付けた接続端子をネジ止めする場合、接続端子がスペースをとり、スタックのピッチを狭くすることが出来ないという問題点があった。又、電極一枚毎に、接続作業を行なう必要があり、しかも配線が交錯するので、接続を間違え易いという問題点や、作業が煩雑で、時間がかかるという問題点があった。又、端子接続後に電極をスタック状に重ねるので、スタック作業の作業性が極めて悪いという問題点があった。
【0008】
更に、特許文献1に記載されているような接続の場合でもあっても、やはり電極一枚毎に、接続作業を行なう必要があり、しかも配線が交錯するので、接続を間違え易いという問題点や、作業が煩雑で、時間がかかるという問題点があった。
【0009】
又、配線として丸線を用いているので、配線を設置するための広いスペースが必要であるという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、スタック状電極の設置、使用において、接続が容易且つ極めて短時間で出来、しかも接続を間違え難くすることを目的とする。又、スタック状電極への接続のために特別な装置を用いることもなく、電極に熱履歴が残らなくすることを目的とする。又、スタック状電極の電極間のピッチを必要に応じて狭くすることを可能とすることを目的とする。又、スタック作業の作業性を向上させることを目的とする。更に、省スペースで配線を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段としての本発明は、複数の電極板を間隔をあけて積層してなるスタック状電極と、回路基板の先端部に導体露出部が形成されてなる配線材とを接続するコネクタであって、ハウジングと該ハウジングに挿入され、前記配線材を前記電極板に圧接する楔を備えて構成され、前記ハウジングは、前記楔と前記配線材が挿入される内部空洞を有し、一端部には、前記電極板の先端部が挿入され、前記内部空洞に繋がる複数の溝部を有し、他端には、前記楔と前記配線材が挿入される開口部を有し、前記楔は、基部と該基部から延設されて、前記配線材を前記電極板に押圧する先端押圧部を備えて構成され、前記楔が、前記ハウジングの前記内部空洞内に、前記開口部から挿入されて設置されることを特徴とするネクタである。
【0012】
又、上記コネクタにおいて、前記ハウジングには、前記コネクタを接続する前記スタック状電極に対して、前記コネクタの位置を固定するための位置固定機構を設けたことを特徴とするコネクタである。
【0013】
又、上記コネクタにおいて、前記楔の前記ハウジング内での移動を規制する移動規制機構を設けたことを特徴とするコネクタである。
【0014】
又、上記コネクタにおいて、前記位置固定機構は、前記溝部間に形成され、前記電極板間に挿入される挿入片に設けた、前記電極板に設けられた係止孔と係合する係止爪で構成したことを特徴とするコネクタである。
【0015】
又、上記コネクタにおいて、前記位置固定機構は、前記電極板に設けられた、前記楔及び前記配線材が挿入される挿入凹部の下縁と当接する、前記溝部に架設したリブで構成したことを特徴とするコネクタである。
【0016】
又、上記コネクタにおいて、前記楔は、前記基部から前記先端押圧部と反対方向に延設された揺動可能なバネ部を備え、前記移動規制機構は、該バネ部に設けた係止突起と、前記ハウジングに設けた、前記係止突起と係合する係止孔で構成したことを特徴とするコネクタである。
【0017】
又、上記コネクタにおいて、前記楔の前記先端押圧部を上片と下片に分割し、該上片と下片間に空隙を設けたことを特徴とするコネクタである。
【0018】
又、上記いずれかのコネクタを用い、複数の電極板を間隔をあけて積層してなるスタック状電極と、回路基板の先端部に導体露出部が形成されてなる配線材とを接続する接続構造であって、前記電極板には、前記楔及び前記配線材が挿入される挿入凹部が形成され、前記電極板が前記ハウジングの前記溝部に挿入され、前記ハウジングの溝部に前記電極板の挿入凹部を位置させ、前記楔の先端押圧部が前記ハウジング内で前記挿入凹部に挿入される一方、先端部に導体を露出させて端子を設けた前記配線材が前記ハウジング内に挿入されて、前記挿入凹部に挿入され、前記端子を前記電極板と前記楔で挟持させ、前記端子を前記電極に接続していることを特徴とするスタック状電極への接続構造である。
【0019】
又、上記スタック状電極への接続構造において、前記挿入凹部の一端から、前記端子と接触する接触片を延設し、前記端子を前記接触片と前記楔で挟持させ、前記端子を前記電極板に接続していることを特徴とするスタック状電極への接続構造である。
【0020】
又、上記スタック状電極への接続構造において、前記挿入片には係止爪が設けられる一方、前記電極板には係止孔が設けられ、前記係止爪が前記係止孔に挿入され、前記ハウジングが、前記電極板に係止されていることを特徴とするスタック状電極への接続構造である。
【0021】
又、上記スタック状電極への接続構造において、前記配線材の先端部には、複数の導体を露出させて複数の端子が設けられ、前記挿入凹部が前記スタック状電極の複数の電極板に一列に配置されて形成され、前記複数の端子が夫々前記電極板と前記楔で挟持され、前記端子を前記電極板に接続していることを特徴とするスタック状電極への接続構造である。
【発明の効果】
【0022】
以上のような本発明によれば、スタック状電極の設置、使用において、コネクタのハウジング内に配線材を設置し、配線材に設けた端子を楔と電極で挟持させることにより、複数の端子を一括接続できるので、接続が容易且つ極めて短時間で出来、しかも接続を間違え難くすることが可能となった。又、スタック状電極への接続のために特別な装置を用いることもなく、電極に熱履歴が残らなくすることが可能となった。又、スタック状電極の電極間のピッチを必要に応じて狭くすることが可能となった。又、電極をスタック状にしてから接続することが出来るので、スタック状に組み立てるスタック作業の作業性を向上させることが可能となった。更に、省スペースで配線が可能となった。又、配線を電極から容易に取り外すことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明コネクタのスタック状電極への接続構造を示す斜視図
【図2】本発明コネクタ一実施例斜視図
【図3】図2A−A線断面図
【図4】本発明に用いる楔一実施例斜視図
【図5】本発明コネクタのスタック状電極への接続構造を示す分解斜視図
【図6】本発明コネクタのスタック状電極への接続構造を示す一部断面図
【図7】従来のスタック状電極への配線接続構造を表す図
【図8】従来のスタック状電極への配線接続構造を表す図
【図9】従来のスタック状電極への配線接続構造を表す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態を図に従って説明する。本発明のコネクタ6は、図1に示すように、複数の電極板2を間隔をあけて積層してなるスタック状電極20と、回路基板の先端部に導体露出部が形成されてなる配線材とを接続するコネクタ6であって、ハウジング4と楔5を備えて構成され、配線材とスタック状電極20を接続する際に用いられるものである。尚、スタック状電極20は、図1及び5に示すように、板状の電極板2を複数重ねたものであり、例えば燃料電池のスタック電極等がある。
【0025】
ハウジング4は、可撓性を有する合成樹脂等を用いて射出成形等で形成され、図2、図3及び図5に示すように、楔5と配線材が挿入される内部空洞40を有する断面略長方形筒状に形成され、一端部には、電極板2の先端部が挿入される、内部空洞40に繋がる複数の溝部43が互いに平行に形成され、溝部43が形成された端部と反対側の他端には、内部空洞40に繋がり、楔5と配線材が挿入される開口部46を有している。又、溝部43間には、スタック状電極20の電極板2間に挿入される複数の板状の挿入片42が、同一方向に櫛歯状に互いに平行に形成されて、電極板2に差し込まれる櫛状の挿入部44が形成されている。
【0026】
ハウジング4は、図3に示すように、開口部46から溝部43方向に、ハウジング4の底面419の一部を対向する上面418方向に傾斜させ、開口部46から挿入片42方向に内部空洞40の高さが低くなるよう形成している。又、内部空洞40には、ハウジング4に強度を持たせ、又、配線の動きを規制するため、底面419から上面418に達し、挿入片42と同一方向に延びる隔壁411を設けている。
【0027】
ハウジング4が備える溝部43の数は特に限定されず、後述するように、スタック状電極20と配線材としてのフレキシブルプリント基板1とを接続する場合、フレキシブルプリント基板1とフレキシブルプリント基板1に設ける端子3の数に対応させて、溝部43は少なくとも端子3の数以上の適宜所定数を設ければよく、例えば、フレキシブルプリント基板1に4個の端子3を設けている場合、ハウジング4には1つの隔壁411を設け、挿入片42は両端に設けた2本の挿入片420と、挿入片420間に設けた5本の挿入片42の計7本を設け、溝部43を5個設ければよい。
【0028】
挿入片42は、その間に形成される溝部43の幅が電極板2を挿入可能であって、電極板2間に挿入片42を挿入可能な幅となれば特にその形状は限定されず、平板状、棒状等でもよいが、その上端部及び下端部に、隣接する挿入片42方向且つ、互いに同一方向に延設する張出部425を設け、断面略コの字型とし、溝部43の幅を狭めて電極板2の厚さと同程度とすることが好ましい。このような構成とすることで、電極板2を挿入片42,42間に挟持することが可能となり、ハウジング4の固定が確実なものとなるからである。張出部425は挿入片42の上端部又は下端部の一方に設けることとしてもよく、又、挿入片42の先端に設けることも出来る。尚、挿入片42には、挿入片42の上端部及び下端部に設けられた張出部425により、凹部429が形成される。
【0029】
又、溝部43の先端部分は、テーパー状に形成することが好ましい。このような形状とすることで、電極板2を溝部43に容易に挿入することが出来るからである。
【0030】
ハウジング4の両端の挿入片420には、外方に向けて突出する係止爪421が設けられている。この係止爪421は、後述するように、スタック状電極20にハウジング4が挿入されると、係止爪421が電極板2に設けた係止孔22に挿入され、係止爪421が係止孔22に係合し、ハウジング4ひいてはコネクタ6とスタック状電極20を固定するためのものであり、コネクタ6を接続する電極板2に対して、コネクタ6の位置を固定するための位置固定機構を構成している。尚、係止孔22は、ハウジング4の固定と共に、ハウジング4のスタック状電極20への挿入程度の目印にもなっている。
【0031】
係止爪421は1つの挿入片42にのみ設けてもよいが、2つ以上の挿入片42に設けることにより、ハウジング4の固定が強固なものとなるので、好ましい。又、挿入片42に係止爪421を設ける場合には、内方に向けて突出させてもよく、外方に向けて突出させてもよい。尚、ハウジング4は係止爪421を設けない構成としてもよい。
【0032】
又、図2に示すように、ハウジング4の側壁41の内面には、開口部46より内方から挿入片42方向に延びる溝417を形成している。又、側壁41には、両端の挿入片420より外側に突出した張出部415が形成され、張出部415の先端に挿入片42と同方向に突出する突起416を設け、突起416と両端の挿入片420との間に、電極板2が挿入される浅溝430を形成している。浅溝430には、電極板2が挿入されるが、配線材や楔5は挿入されず、電極板と端子の接続に用いる物ではなく、ハウジング4の位置決めに用いられるものである。
【0033】
又、図3に示すように、挿入片42間、即ち溝部43に板状のリブ71を架設している。このリブ71は後述するように、電極板2に設けた、楔5及び配線材が挿入される挿入凹部24の下縁と当接し、コネクタ6の位置を固定するための第二の位置固定機構として、ハウジング4が下方にずれるのを防止し、配線材に設けた端子3を電極板2と楔5で確実に挟持することが出来るようにしている。尚、第二の位置固定機構としては、コネクタ6が下方にずれるのを防止することが出来れば、板状のリブに限定されず、棒体等の形状も採用することが出来る。又、ハウジング4の底面419の開口部46側には、後述する楔5のバネ部59に設けた係止突起55と係合する係止孔45が設けられている。
【0034】
楔5は、可撓性を有する合成樹脂等を用いて形成され、図4に示すように、基部58と基部58から延設されて、配線材を電極板2に押圧する先端押圧部512を備え、基部58から先端方向に、厚みが薄くなるよう一部がテーパー状に形成されると共に、横幅は、ハウジング4の開口部46から挿入可能な所定の幅に形成している。楔5の基部58から延設された先端押圧部512は上片51と下片52に分割され、上片51と下片52間に空隙50を設け、バネ性をもたせていると共に、上片51の両外側には、ハウジング4に設けた溝417内に挿入され、移動し、溝417の開口部46側の端部に係止される係合突起56が設けられている。このように楔5の先端部にバネ性を持たせることにより、配線材及びそこに設けた端子の破損を防止しつつ、配線材を電極板2と楔5で確実に挟持することが出来、電極板2との接続を確実なものとすることが出来る。尚、上片51及び下片52の先端部は、先端方向に向かって薄くなるようなテーパー状に形成することが好ましい。又、先端押圧部512は上片51と下片52に分割しない構成としてもよい。
【0035】
又、楔5の先端から内方に向けて、ハウジング4の隔壁411が挿入される、隔壁411と略同一幅の溝状凹部521が形成されている。従って、上片51及び下片52は、溝状凹部521により夫々左右に分割されている。基部58は平板状の基面589の両側端から側壁581を立設して断面コの字型に形成され、又、基部58から、基部58の基面589及び両側壁581で形成される凹部583内に、基部58の基面589及び両側壁581と離間したバネ部59が延設されている。バネ部59は基部58の凹部583内を上下方向に揺動可能で、後部、言い換えれば基部58から延設された先端部に、押圧突起591を基部58の基面589と反対方向に突出させて設けると共に、バネ部59の下面595に、押圧突起591と同方向に突出した係止突起55を設けている。
【0036】
コネクタ6は、図2、図3及び図5に示すように、楔5を、ハウジング4の開口部46から、先端押圧部512を先端にして内部空洞40に挿入して設置して構成している。楔5は、ハウジング4内で前後移動、即ち挿脱方向への移動が可能であるが、上述のように、図2に示すように、楔5のハウジング4内での移動を規制する第一の移動規制機構を、係合突起56と溝417で構成し、係合突起56がハウジング4の両側壁415の内面に設けた溝417と係合し、楔5の移動を規制し、ハウジング4から抜けてしまうことを防止している。楔5がハウジング4の奥まで挿入される際、ハウジング4の底面419の上面418方向に傾斜した部分に楔5のテーパー状の部分が摺動し、楔5を、ハウジング4の上面418方向に押し上げ、楔5とハウジング4の上面418との離間距離を縮める。
【0037】
尚、楔5とハウジング4の離間距離が、そこに配線材が挿入可能な距離になるよう楔5及びハウジング4が形成されている。この離間部分には、配線材が挿入されるので、楔5を緩めた状態で容易に配線材をハウジング内に挿入設置可能とすると共に、楔5をハウジング4の先端方向に挿入することにより、配線材を確実に保持することが出来るようになる。
【0038】
楔5がハウジング4の奥まで挿入されると、係止突起55と係止孔45で構成される、楔5のハウジング4内での移動を規制する第二の移動規制機構が働き、即ち、係止突起55がハウジング4に設けた係止孔45に挿入、係止され、楔5の移動を規制し、楔5の抜けを防止すると共に位置固定する。この際、楔5の先端押圧部512は、挿入片42内に挿入され、溝部43内に挿入される。楔5を後方に移動させる場合、即ちハウジング4から抜く方向に移動させる場合には、押圧突起591を押し、係止孔45と係止突起55の係合を解いて行なう。
【0039】
尚、楔5のハウジング4内での移動を規制する移動規制機構として、上述のような第一、第二の移動規制機構に替えて、或いは加えて、楔5に係止孔を設けると共に、ハウジング4に係止突起を設けて楔5の移動を防止するよう構成した移動規制機構を採用することとしてもよい。
【0040】
このようなコネクタ6を用いて、配線材とスタック状電極20を接続するに際して、複数の導体を有する柔軟性のある配線材として、フレキシブルプリント基板1に複数の導体としての複数の回路11が設けられ、銅や銅合金等の導電性材料で形成された回路11の端部を露出させて端子3が設けられたものを使用することが出来る。
【0041】
尚、このようなフレキシブルプリント基板1とコネクタ6を備えて、スタック状電極に配線材を接続する、スタック状電極用配線10を構成することが出来る。
【0042】
コネクタ6を用いて、端子3を有するフレキシブルプリント基板1をスタック状電極20に接続する構造の一例を以下に説明する。図1及び5に示すように、フレキシブルプリント基板1を、スタック状電極20と接続するにあたり、電極板2には切れ込みを入れて、或いは一部を切欠いて、配線材としてのフレキシブルプリント基板1の端子3が設けられた部分及び楔5が挿入され、電極板2と端子3が接続される挿入凹部24を形成し、各電極板2の挿入凹部24を直線状に横一列に配置している。又、挿入凹部24の高さは、コネクタ6の挿入片42の高さ以下に形成している。又、電極板2の挿入凹部24より内方には、係止孔22が形成されている。
【0043】
電極板2に設ける挿入凹部24の形状及び幅は、フレキシブルプリント基板1及び楔5を挿入可能であれば特に限定はされず、電極板2の端部から内方へ一直線状に切れ込みをいれ、或いは切欠きを形成し、挿入凹部24を形成してもよいが、電極板2の端部から内方へ入れる一直線状の切れ込み或いは切欠きの内先端から所定の角度、例えば90°の角度を持って更に上方に切れ込み或いは切欠きを入れて形成することが好ましい。後者のように2辺の切れ込み或いは切欠きを入れた場合、切れ込み或いは切欠きで囲われ、一辺のみが他の電極2部分に連接した方形の部分は端子3と接触する接触片27となる。
【0044】
このように挿入凹部24の上部から下方に接触片27を延設した場合、挿入凹部24にフレキシブルプリント基板1及び楔5を挿入すると、端子3を接触片27と楔5で挟持し、端子3を電極板2に接続し、主に接触片27部分が湾曲し、そのバネ性で確実にフレキシブルプリント基板1を挟み、電極板2と端子3の接続を確実なものとすることが出来る。この際、端子3には接触片27の下端部或いは一部の面部が接触する。更に、接触片27の他の電極板2部分に連接した一辺部分、即ち接触片27の上辺を予め曲折し、接触片27によりバネ性を持たせることで、電極板2と端子3の接続をより確実なものとすることが出来るので好ましい。尚、接触片27の形状は方形に限定されない。
【0045】
フレキシブルプリント基板1に設ける導体としての回路11の数及び回路11に対応して設ける端子3の数は特に限定されず、フレキシブルプリント基板1に1本の回路のみ設けると共に、1個の端子3のみを設ける構成も採用でき、この場合、複数の端子を一括接続することは出来ないが、半田付けやビス止め等の従来技術と比較した場合、接続が容易且つ極めて短時間で出来、接続のために特別な装置を用いることもない等、上述の本発明の効果を充分に発揮しうるものである。しかし、より接続を容易且つ極めて短時間で行なうことが出来、しかも接続を間違え難くするために、複数の回路11を設けたフレキシブルプリント基板1に複数の端子3を設けることが好ましい。
【0046】
回路11及び端子3を複数設ける場合には、フレキシブルプリント基板1の先端部に切り込みをいれ、先端部を複数に分割し、分割したフレキシブルプリント基板1の夫々の先端部に設けられた所定数の回路11の数に対応して、夫々同数の端子3を設けることとしてもよい。この場合においても、分割したフレキシブルプリント基板1の夫々の先端部に設ける回路11及び端子3は上述と同様に特に限定されない。又、ハウジング4に隔壁411を設ける場合、フレキシブルプリント基板1の先端には、隔壁411の形状に対応した凹部19を設け、フレキシブルプリント基板1の挿入時に、凹部19に隔壁411が挿入される。
【0047】
電極板2の接触片27が曲折されていない場合には、ハウジング4に挿入設置された端子3が、溝部43と重なる位置になるよう端子3を形成し、接触片27が曲折されている場合には、その曲折の程度に対応して、端子3のフレキシブルプリント基板1上の位置を定めて形成する。
【0048】
電極板2の接触片27が曲折されている場合、電極板2が溝部43に挿入される際には、接触片27は、図1に示す、挿入片42の上端部及び下端部に設けられた張出部425で形成される凹部429を通って挿入部44内に挿入される。
【0049】
コネクタ6を、スタック状電極20と接続する際には、電極板2を溝部43に挿入し、換言すれば、挿入片42,42間に電極板2を挿入し、挿入片42,42間には電極板2の挿入凹部24を位置させ、リブ71を電極板2の挿入凹部24の下縁と当接させてコネクタ6の下方への移動を規制してコネクタ6の位置を固定しつつ、挿入片42に設けた係止爪421が電極板2に設けられた係止孔22に挿入されるまで挿入し、係止爪421が係止孔22に係止され、ハウジング4ひいてはコネクタ6とスタック状電極20が固定される。
【0050】
このように電極板2は溝部43に挿入され、挿入片42,42間に挿入され、或いは更に挟持される。このように、挿入片42に設けた、電極板2に設けた係止孔22と係合する係止爪421は、コネクタ6を接続する電極板2に対して、コネクタ6の位置を固定するための第一の位置固定機構となる。この際、挿入片42,42間には電極板2の挿入凹部24が位置し、挿入凹部24の上縁、或いは接触片27及び下縁が挿入片42,42間に挟まれ、挿入部24の上縁、或いは接触片27が内部空洞40に上方から挿入されている。
【0051】
フレキシブルプリント基板1の設置の際は、ハウジング4に楔5を緩めた状態にして、フレキシブルプリント基板1の端子3が設けられた先端部分を、ハウジング4の内部空洞40に挿入し、詳しくは、ハウジング4の開口部46から、楔5の基面589とハウジング4の上面418間に、端子3を上方に向けて挿入して、更に挿入して端子3を挿入片42内に挿入すると共に、電極板2の挿入凹部24に挿入され接触片27、即ち電極板2と対向させる。
【0052】
そして、楔5をハウジング4先端方向に移動させ、楔5の先端押圧部512を挿入片42内に挿入すると共に、電極板2の挿入凹部24に挿入し、電極板2と楔5とをフレキシブルプリント基板1を挟んで対向させ、端子3を電極板2、接触片27に当接させて、楔5と接触片27で端子3を挟持させ、圧接させて、端子3を電極板2に接続している。この際、フレキシブルプリント基板1は隔壁411で位置決めされる。又、楔5は、係止突起55がハウジング4に設けた係止孔45に挿入、係止され、ハウジング4に位置固定され、緩むことはない。
【0053】
尚、櫛歯状に設けられた挿入片42間の溝部43総てに電極板2が挿入されてもよいが、適宜間隔で一部の溝部43に電極板2が挿入されてもよい。又、溝部43に挿入された電極板2は総て端子3と接続させてもよいが、溝部43に挿入された電極板2のうち一部の電極板2のみを端子3と接続させてもよい。
【0054】
尚、ハウジング4を用いずに、フレキシブルプリント基板1及び楔5のみでも、フレキシブルプリント基板1とスタック状電極20とを接続することは充分に可能であるが、フレキシブルプリント基板1のスタック状電極20への固定を強固にするために、ハウジング4を用いること、即ちハウジング4と楔5で構成した上述のコネクタ6を用いることが好ましい。
【0055】
尚、上述の説明では、導体を有する柔軟性のある配線としてフレキシブルプリント基板1を使用しているが、導体を有する柔軟性のある配線としては、フレキシブルプリント基板1に限定されず、フレキシブルフラットケーブルやメンブレンを使用することとしてもよい。この場合、フレキシブルプリント基板1を用いる場合と同様、フレキシブルフラットケーブルの導体としての銅線先端部やメンブレンの導体としての回路先端部を端子3として構成すればよく、ハウジング4、楔5、コネクタ6も同様に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0056】
1 フレキシブルプリント基板
10 スタック状電極用配線
11 回路
2 電極板
20 スタック状電極
22 係止孔
24 挿入凹部
27 接触片
3 端子
4 ハウジング
40 内部空洞
41 側壁
411 隔壁
42 挿入片
421 係止爪
425 張出部
43 溝部
44 挿入部
45 係止孔
46 開口部
5 楔
55 係止突起
56 係合突起
58 基部
59 バネ部
6 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極板を間隔をあけて積層してなるスタック状電極と、回路基板の先端部に導体露出部が形成されてなる配線材とを接続するコネクタであって、
ハウジングと該ハウジングに挿入され、前記配線材を前記電極板に圧接する楔を備えて構成され、
前記ハウジングは、前記楔と前記配線材が挿入される内部空洞を有し、一端部には、前記電極板の先端部が挿入され、前記内部空洞に繋がる複数の溝部を有し、他端には、前記楔と前記配線材が挿入される開口部を有し、
前記楔は、基部と該基部から延設されて、前記配線材を前記電極板に押圧する先端押圧部を備えて構成され、
前記楔が、前記ハウジングの前記内部空洞内に、前記開口部から挿入されて設置されることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記コネクタを接続する前記スタック状電極に対して、前記コネクタの位置を固定するための位置固定機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記楔の前記ハウジング内での移動を規制する移動規制機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記位置固定機構は、前記溝部間に形成され、前記電極板間に挿入される挿入片に設けた、前記電極板に設けられた係止孔と係合する係止爪で構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記位置固定機構は、前記電極板に設けられた、前記楔及び前記配線材が挿入される挿入凹部の下縁と当接する、前記溝部に架設したリブで構成したことを特徴とする請求項2から4のうちいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記楔は、前記基部から前記先端押圧部と反対方向に延設された揺動可能なバネ部を備え、前記移動規制機構は、該バネ部に設けた係止突起と、前記ハウジングに設けた、前記係止突起と係合する係止孔で構成したことを特徴とする請求項3から5のうちいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記楔の前記先端押圧部を上片と下片に分割し、該上片と下片間に空隙を設けたことを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか1項に記載のコネクタを用い、複数の電極板を間隔をあけて積層してなるスタック状電極と、回路基板の先端部に導体露出部が形成されてなる配線材とを接続する接続構造であって、
前記電極板には、前記楔及び前記配線材が挿入される挿入凹部が形成され、前記電極板が前記ハウジングの前記溝部に挿入され、前記ハウジングの溝部に前記電極板の挿入凹部を位置させ、前記楔の先端押圧部が前記ハウジング内で前記挿入凹部に挿入される一方、先端部に導体を露出させて端子を設けた前記配線材が前記ハウジング内に挿入されて、前記挿入凹部に挿入され、前記端子を前記電極板と前記楔で挟持させ、前記端子を前記電極に接続していることを特徴とするスタック状電極への接続構造。
【請求項9】
前記挿入凹部の一端から、前記端子と接触する接触片を延設し、前記端子を前記接触片と前記楔で挟持させ、前記端子を前記電極板に接続していることを特徴とする請求項8に記載のスタック状電極への接続構造。
【請求項10】
前記挿入片には係止爪が設けられる一方、前記電極板には係止孔が設けられ、前記係止爪が前記係止孔に挿入され、前記ハウジングが、前記電極板に係止されていることを特徴とする請求項8又は9に記載のスタック状電極への接続構造。
【請求項11】
前記配線材の先端部には、複数の導体を露出させて複数の端子が設けられ、前記挿入凹部が前記スタック状電極の複数の電極板に一列に配置されて形成され、前記複数の端子が夫々前記電極板と前記楔で挟持され、前記端子を前記電極板に接続していることを特徴とする請求項8から10のうちいずれか1項に記載のスタック状電極への接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−192384(P2010−192384A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37960(P2009−37960)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】