説明

コネクタ及びワイヤハーネス

【課題】雄端子側の取付位置の誤差を許容し、雄端子の取付位置に誤差があっても、雌端子との良好な接触を得ることができるコネクタ、及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、雄端子7が嵌合される嵌合部21、及び電線5が接続される接続部23を有する雌端子2と、雌端子3の嵌合部21を収容する収容孔311が形成されたハウジング30とを備え、雌端子2の嵌合部21は、雄端子7との嵌合方向に対して交差する方向へ移動可能に、ハウジング30の収容孔311に収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌端子をハウジングに収容してなるコネクタ、及びそのコネクタを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄端子に接続される雌端子をハウジングに固定したコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のコネクタは、L字状に形成された雌端子を有し、この雌端子が合成樹脂製のハウジングに収容されている。ハウジング及び雌端子は、内部を遮蔽状態に保つ金属製のシェルに収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−147353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のコネクタは、例えばインバータやモータ等の機器側に設けられた、雄端子を有する雄側コネクタに接続される。この雄端子と雌端子とを嵌合する際、例えば雄端子の取り付け位置に誤差があると、両端子の接点における接触圧力が低下してしまい、端子間の良好な接触を得ることができない。また、例えばモータ等の振動が発生する機器又はその周辺にコネクタが接続された場合には、接触圧力の低下によって雄端子と雌端子との間に振動に伴う微摺動が発生し、これら両端子の接点に摩耗等が生じるおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、雄端子側の取付位置の誤差を許容し、雄端子の取付位置に誤差があっても、雌端子との良好な接触を得ることができるコネクタ、及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、相手側接触端子と接触する接触部、及び電線が接続される接続部を有する接触端子と、前記接触端子の前記接触部を収容する収容孔が形成されたハウジングとを備え、前記相手側接触端子の前記収容孔への挿入により、前記相手側接触端子と前記接触端子とが接触するコネクタにおいて、前記接触端子の前記接触部は、前記相手側接触端子の前記収容孔への挿入方向に対して交差する方向へ移動可能に、前記収容孔に収容されたコネクタを提供する。
【0008】
また、前記接触端子は、前記相手側接触端子が嵌合される嵌合部を前記接触部として有する雌端子であり、前記相手側接触端子は、前記嵌合部に少なくとも一部が収容される雄端子であるとよい。
【0009】
また、前記接触端子の前記嵌合部は、板状に形成された前記相手側接触端子の接触面に直交する方向に、前記収容孔内で移動可能であるとよい。
【0010】
また、前記接触端子の前記嵌合部は、板状に形成された前記相手側接触端子の接触面に直交する第1の方向、ならびに前記第1の方向及び前記相手側接触端子の挿入方向に直交する第2の方向に、前記収容孔内で移動可能であってもよい。
【0011】
また、前記接触端子は、前記嵌合部における前記相手側接触端子との接点に前記相手側接触端子を押し付けるばね部材を有しているとよい。
【0012】
また、前記接触端子は、前記嵌合部が前記相手側接触端子の挿入方向に沿って形成されると共に、前記接続部が前記挿入方向に対して交差する方向に延びるように屈曲して形成され、前記ハウジングには、前記嵌合部に当接して前記雌端子の前記挿入方向への移動を規制する当接部が形成されているとよい。
【0013】
また、前記接触端子は、雄端子であると共に、前記相手方の端子は、雌端子であってもよい。
【0014】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、前記コネクタと、前記接触端子の前記接続部に接続された撚線からなる芯線、及び前記芯線を被覆する被覆部材を有する電線とを備え、前記電線は、前記接続部に接続される先端部と前記ハウジングに保持される被保持部との間に、前記芯線をほぐすことにより可撓性を高めた可撓部が形成されたワイヤハーネスを提供する。
【0015】
また、前記ハウジングには、更に、前記電線を保持し、前記電線を収容する電線収容凹部を有する電線保持部が形成され、前記収容孔の幅方向の中心軸と前記電線収容凹部の幅方向の中心軸とは、一致していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、雄端子側の取付位置の誤差を許容し、雄端子の取付位置に誤差があっても、雌端子との良好な接触を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るコネクタを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。
【図2】コネクタの内部構造を示し、(a)は背面図、(b)は斜視図である。
【図3】第2ハウジング部材を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(b)のC−C線断面図、(d)は背面図、(e)は斜視図である。
【図4】雌端子を示す斜視図である。
【図5】雌端子の嵌合部に収容されるばね部材の斜視図である。
【図6】雌端子に嵌合される雄端子を示す斜視図である。
【図7】雌端子と雄端子とが嵌合された状態を示し、(a)は、雌端子の嵌合部の中心軸線C1に沿った断面における断面図、(b)は、中心軸線C1に直交する断面における断面図である。
【図8】図1のB−B線断面における雌端子及びその周辺部を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、コネクタの組み立て手順の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係るコネクタ及びワイヤハーネスを、図1〜図9を参照して説明する。このコネクタ及びワイヤハーネスは、例えば電気モータを走行用の駆動源として有する車両に搭載され、電気モータと、電気モータに三相交流電流を供給するインバータとの間を接続するために用いられる。すなわち、このコネクタは、電気モータ又はインバータに予め固定されたコネクタに接続される。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るコネクタを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。図2は、コネクタの内部構造を示し、(a)は背面図、(b)は斜視図である。
【0020】
このコネクタ1は、接触端子の一例としての雌端子2と、雌端子2を収容するハウジング30と、雌端子2及びハウジング30を収容する金属製のシェル40とを備えている。本実施の形態では、ハウジング30に3つの雌端子2が収容されている。3つの雌端子2には、3本の電線5がそれぞれ接続されている。3本の電線5は、ハウジング30内において、それぞれ直線状になっている。コネクタ1及び3本の電線5は、ワイヤハーネス10を構成する。
【0021】
ハウジング30は、3本の電線5を挟んで互いに対向する第1ハウジング部材31と第2ハウジング部材32とからなる。第1ハウジング部材31及び第2ハウジング部材32は、例えばPBT(Polybutylene terephthalate:ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂からなる。また、ハウジング30には、電線5を保持する電線保持部310,320が形成されている。電線5は、第1ハウジング部材31の電線保持部310と第2ハウジング部材32の電線保持部320との間に挟持され、保持されている。電線保持部310,320は、それぞれ電線5の一部を収容する3つの電線収容凹部310a,320aを有している。
【0022】
シェル40は、第1ハウジング部材31側の第1シェル部材41と、第2ハウジング部材32側の第2シェル部材42とからなる。第1シェル部材41及び第2シェル部材42は、例えばアルミニウム等の導電性の金属からなる。第1シェル部材41と第1ハウジング部材31との間には、Oリング61が配置されている。
【0023】
また、シェル40は、第1シェル部材41が3つの雌端子2及びハウジング30を収容し、平板状の第2シェル部材42によって第1シェル部材41の開口を覆うように構成されている。図2(a)及び(b)では、コネクタ1から第2シェル部材42及び第2ハウジング部材32を取り外した状態を示している。
【0024】
第1シェル部材41と第2シェル部材42とは、複数(本実施の形態では4本)のボルト43によって固定されている。また、第1シェル部材41には、外方に突出するボルト保持部410が3箇所に形成され、各ボルト保持部410には、インバータ等の機器側にコネクタ1を固定するためのボルト44が回転可能に保持されている。
【0025】
雌端子2は、相手側接触端子の一例としての雄端子7(後述)が嵌合される嵌合部21と、電線5の芯線51の一端がそれぞれ接続される電線接続部23と、嵌合部21と電線接続部23とを連結する連結部22と、を一体に有している。嵌合部21は、雄端子7と接触する接触部の一例である。
【0026】
第1ハウジング部材31には、3つの雌端子2の嵌合部21をそれぞれ収容する3つの収容孔311が形成されている。これらの3つの収容孔311は、直線状に並列して形成されている。また、各収容孔311は、第2ハウジング部材32に対向する平面状の底面31aに直交する方向に沿って延びる筒部を有する有底筒状に形成され、その底部には、後述する雄端子7の接触部71を挿通させるスリット状の開口311aがそれぞれ形成されている。
【0027】
第1ハウジング31の収容孔311の幅方向(図2における左右方向)の中心軸と電線収容凹部310aの幅方向(図2における左右方向)の中心軸とは、略一致し、更にこれら中心軸は、電線5の軸と一致する。ここで、「一致」とは、完全に一致する場合のみをいうものではなく、多少ずれている場合(例えば、5mm程度)も含むものとする。
【0028】
第1シェル部材41には、第1ハウジング部材31の各収容孔311に収容された雌端子2の嵌合部21を挿通させる第1の筒部411が形成されている。第1の筒部411の外周面には、環状のシール部材62が保持されている。また、第1の筒部411の先端面には、樹脂製のカバー部材63が係止されている。
【0029】
また、第1シェル部材41には、3本の電線5を挿通させる第2の筒部412が形成されている。第2の筒部412には、3本の電線5をそれぞれ挿通させる3つの挿通孔412aが形成されている。挿通孔412aは、その軸方向が第2シェル部材42と平行に形成されている。また、挿通孔412aの軸方向と第1の筒部411の突出方向とは互いに直交している。つまり、直方体形状のシェル40における6つの面のうち、挿通孔412aが形成された面と第2シェル部材42とが互いに直交している。また、第1の筒部411が形成された面は、挿通孔412aが形成された面と互いに直交し、かつ第2シェル部材42に対向している。
【0030】
各挿通孔412aには、電線5の外周面と挿通孔412aの内周面との間を封止するシール部材64が収容されている。各シール部材64は、第2の筒部412に係止されたカバー部材65によって抜け止めされている。なお、図2(b)では、第2の筒部412にシール部材64及びカバー部材65を取り付ける前の状態を示している。
【0031】
電線5は、芯線51、及び芯線51を被覆する被覆部材52を有している。芯線51は、複数の導体素線を撚り合わせた複数の子撚線を、さらに撚り合わせて形成された撚線(親撚線)である。
【0032】
第1ハウジング部材31の電線保持部310及び第2ハウジング部材32の電線保持部320は、電線5の被覆部材52の外周を保持している。また、電線保持部310,320に保持された部分よりも先端側では、被覆部材52が除去されて芯線51が露出している。
【0033】
雌端子2の電線接続部23に接続された電線5の先端部5aと、電線保持部310,320に保持された被保持部5bとの間には、芯線51の撚りをほぐすことにより可撓性を高めた可撓部5cが形成されている。この可撓部5cは、撚り(子撚り及び親撚りのうち、少なくとも親撚りの一部)がほぐされることにより、図2先端部5a及び被保持部5bよりもその外径が膨らんでいる。この可撓部5cが形成されていることにより、電線5の先端部5aと被保持部5bとが電線5の軸(長手)方向に相対移動可能となっている。すなわち、端子2の嵌合部21は、被保持部5bに対して電線5の軸(長手)方向に相対移動可能となっている。これにより、嵌合部21は、雄端子7に沿って移動しやすくなっている。また、可撓部5cが形成されていることにより、嵌合部21は、被保持部5bに対して電線5の軸(長手)方向に交差する方向にも相対移動可能となっている。更に、嵌合部21が被保持部5bに対して電線5の軸(長手)方向及び軸(長手)方向に交差する方向に相対移動可能となっていることにより、嵌合部21は、電線5の軸(長手)方向に交差(直交)する方向を軸とした回転も可能となっている。
【0034】
可撓部5cは、その中央部が第1ハウジング部材31の底面31aから離間するように湾曲している。これにより、嵌合部21は、被保持部5bに対して電線5の軸(長手)方向に容易に相対移動できるようになる。
【0035】
また、図1に示すように、第2の筒部412には、電線5から放射される電磁波を遮蔽するためのシールド線66が、帯状のクランプ部材67によって固定されている。
【0036】
図3は、第2ハウジング部材32を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(b)のC−C線断面図、(d)は背面図、(e)は斜視図である。
【0037】
第2ハウジング部材32には、第1ハウジング部材31の底面31aに対向する底面32aに直交するように、当接部321が形成されている。当接部321は、底面32aから第1ハウジング部材31側に向かって立設して形成されている。この当接部321は、その先端面321aが、図1(c)に示すように、雌端子2の嵌合部21の一端面(開口311aとは反対側の端面)に対向している。そして、当接部321は、先端面321aが嵌合部21に当接することで、雌端子2の一方向(後述する雄端子7との嵌合方向)への移動を規制している。
【0038】
また、第2ハウジング部材32には、当接部321に連続して、3つ3の雌端子2の収容空間を区画する2つの壁部322が形成されている。壁部322は、当接部321の長手方向に対して直交する方向に延びるように形成されている。
【0039】
(雌端子及び雄端子の構成)
図4は、雌端子2を示す斜視図である。図5は、雌端子2の嵌合部21に収容されるばね部材24の斜視図である。図6は、雌端子2に嵌合される雄端子7を示す斜視図である。
【0040】
図4に示すように、雌端子2は、一端に雄端子7が嵌合される嵌合部21を有し、他端に電線5の先端部5aが接続される電線接続部23を有し、嵌合部21と電線接続部23とが連結部22によって連結されている。雌端子2の材料としては、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、銅、銅合金等の導電性の金属を用いることができる。また、雌端子2の表面を錫等によってメッキしてもよい。
【0041】
嵌合部21は、内部に雄端子7が挿入される筒状であり、雄端子7との嵌合方向に沿って形成されている。嵌合部21は、四辺が底部211、一対の側部212,213、及び天井部214から形成された断面矩形状である。より具体的には、底部211、一対の側部212,213、及び天井部214は、それぞれ平板状に形成され、底部211と天井部214が対向し、底部211と一対の側部212,213との間、及び天井部214と一対の側部212,213との間が連結されている。
【0042】
また、嵌合部21には、ばね部材24の4つの爪部241がそれぞれ係止される4つの開口21aが、天井部214と一対の側部212,213との角部に形成されている。また、底部211には、嵌合部21の内側に長手方向に沿って延びる一対の突条211bが形成されている。
【0043】
電線接続部23は、長円状に扁平した管状であり、例えばかしめによって電線5の先端部5aが圧着される。雌端子2は、嵌合部21の中心軸線C1と電線接続部23の中心軸線C2とが互いに直交して交差するように形成されている。つまり、雌端子2は、嵌合部21が雄端子7との嵌合方向に沿って形成されると共に、電線接続部23が雄端子7との嵌合方向に対して交差する方向に延びるように形成されている。
【0044】
図5に示すように、ばね部材24は、緩やかに湾曲して形成された湾曲部240と、雌端子2の開口21aに係止される4つのL字状の爪部241と、湾曲部240と爪部241とを連結する連結部242とを一体に有する。湾曲部240はさらに、湾曲方向の中央部にあたる頂部240aと、頂部240aを挟んで互いに逆方向に傾斜する一対の傾斜部240bとを有する。
【0045】
ばね部材24の材料としては、例えば、ステンレス鋼、リン青銅、ベリリウム銅等の金属材料、又はゴム等の非金属材料を用いることができる。
【0046】
図6に示すように、雄端子7は、雌端子2の嵌合部21に挿入される接触部71を一端に有し、インバータ等の機器の内部配線に電気的に接続される機器接続部72を他端に有している。接触部71、機器接続部72は、一枚の板材から形成されている。雄端子7は、その一部である接触部71が嵌合部21に収容されることにより、雌端子2と接触する。つまり、第1ハウジング部材31の収容孔311への雄端子7の挿入により、雄端子7と雌端子2とが接触する。雄端子7(接触部71)の収容孔311への挿入方向は、接触部71と嵌合部21との嵌合方向と同義である。
【0047】
接触部71は、平板状の底部711、及び底部711に対して直交するように折り曲げられ、互いに対向する板状の一対の起立部712,713から形成された断面コ字状である。また、接触部71の先端部71aは、厚さ方向において先細なテーパ状に形成されている。起立部712,713の内面間の幅W1は、ばね部材24の湾曲部240の幅W2(図5参照)よりも大きな寸法に設定されている。
【0048】
機器接続部72は、機器の内部配線に電気的に接続されると共に機器にボルトで締結して固定するための機器接続穴72aが形成された平板状である。
【0049】
図7は、雌端子2と雄端子7とが嵌合された状態を示し、(a)は、雌端子2の嵌合部21の中心軸線C1に沿った断面における断面図、(b)は、中心軸線C1に直交する断面における断面図である。
【0050】
雌端子2と雄端子7とは、雄端子7の接触部71が雌端子2の嵌合部21に挿入されて嵌合される。雄端子7の接触部71は、底部711の一方の平面711aにばね部材24の湾曲部240の頂部240aが接触し、ばね部材24の弾性力によって、底部711の他方の平面711bが嵌合部21の底部211に形成された一対の突条211bに押し付けられている。つまり、底部711の他方の平面711bは、雌端子2の嵌合部21(底部211)に接触する接触面であり、平面711bと突条211bとの接触部が、雌端子2と雄端子7との接点である。
【0051】
また、雌端子2は、雄端子7との嵌合方向(矢印Aの方向)に沿った嵌合部21の延伸方向と電線接続部23の延伸方向とが直交するように形成されたL字状である。嵌合部21の延伸方向における天井部214の一端面(雄端子70が挿入される側とは反対側の端面)214bは、コネクタ1の内部にて、第2ハウジング部材32の当接部321の先端面321a(図1参照)に接触する。当接部321の先端面321aは、雄端子7との嵌合方向に対して直交するように形成されている。
【0052】
図8は、図1のB−B線断面における雌端子2及びその周辺部を示す断面図である。
【0053】
図8に示すように、雌端子2の底部211の外面211a及び天井部214の外面214aに直交する高さ方向における嵌合部21の寸法H1は、第1ハウジング部材31の収容孔311の内面311bにおける同方向の寸法H2よりも小さく形成されている。また、雌端子2の一対の側部212,213の外面212a,213aに直交する幅方向における嵌合部21の寸法W3は、第1ハウジング部材31の第1の収容孔311の内面311bにおける同方向の寸法W4よりも小さく形成されている。ここで、上記高さ方向は、雄端子7の底部711の平面711bに直交する第1の方向(矢印Bの方向)であり、上記幅方向は、第1の方向及び雌端子2と雄端子7との嵌合方向に直交する第2の方向(矢印Cの方向)である。
【0054】
雌端子2の嵌合部21の外面211a,212a,213a,214aと収容孔311の内面311bとの間には、寸法H1と寸法H2との差に応じた第1の方向の隙間S1、及び寸法W3と寸法W4との差に応じた第2の方向の隙間S2が形成されている。つまり、雌端子2の嵌合部21は、収容孔311に、遊びをもって嵌め合いされている。すなわち、雌端子2の嵌合部21は収容孔311に遊嵌されている。これにより、雌端子2の嵌合部21は、収容孔311内で、第1の方向及び第2の方向に移動可能である。
【0055】
また、寸法H1と寸法H2との差、及び寸法W3と寸法W4との差は、0.2〜0.6mmであるとよい。この場合、雌端子2の嵌合部21が収容孔311の中央部に位置しているとすると、第1の方向における一方の隙間S1の寸法、及び第2の方向における一方の隙間S2の寸法は、0.1〜0.3mmとなる。本実施の形態では、寸法H1と寸法H2との差、及び寸法W3と寸法W4との差が0.4mm(隙間S1の寸法及び隙間S2の寸法が0.2mm)に設定されている。
【0056】
雄端子7の接触部71は、収容孔311の底部に形成された開口311a(図1参照)を介して雌端子2の嵌合部21に挿入される。開口311aは、ばね部材24の湾曲部240における傾斜部240bに対して嵌合方向に対向する位置、又は湾曲部240の頂部240aと嵌合部21の突条211bとの間の位置に嵌合方向に対向する位置に形成されている。
【0057】
これにより、接触部71が湾曲部240の頂部240aと嵌合部21の突条211bとの間に進入した場合には、雌端子2の嵌合部21が第1の方向に大きく移動することなく、雌端子2と雄端子7との嵌合が完了する。また、接触部71が湾曲部240の傾斜部240bに当接した場合には、雌端子2が雄端子7に対して第1の方向に相対移動して、雄端子7の接触部71が湾曲部240の頂部240aと嵌合部21の突条211bとの間に案内される。
【0058】
また、雌端子2の嵌合部21は、ばね部材24の湾曲部240が、雄端子7の接触部71における一対の起立部712,713の間に案内されるように、雄端子7に対して第2の方向に相対移動可能である。
【0059】
(コネクタ1の組み立て手順)
次に、コネクタ1の組み立て手順について、図9を参照して説明する。図9(a)〜(c)は、コネクタ1の組み立て手順の一例を示す説明図である。
【0060】
コネクタ1の組み立てでは、図9(a)に示すように、まず第1シェル部材41に第1ハウジング部材31、シール部材62、及びカバー部材63を順次組み付ける。この組み付けが完了した状態を図9(b)に示す。
【0061】
次に、第1ハウジング部材31の3つの収容孔311に、電線5が電線接続部23に接続された雌端子2の嵌合部21を挿入する。なお、嵌合部21の収容孔311への挿入前に、予め電線5の芯線51をほぐして可撓部5cを形成しておく。
【0062】
次に、第1シェル部材41に第2ハウジング部材32及びOリング61を収容し、第2シェル部材42をボルト43によって第1シェル部材41に固定する。そして、シールド線66をクランプ部材67によって第1シェル部材41の第2の筒部412に固定してコネクタ1の組み立てを完了する。
【0063】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0064】
(1)雌端子2の嵌合部21は、第1ハウジング部材31の収容孔311内で移動可能であるので、雄端子7のインバータ等の機器側への取付位置に誤差があっても、嵌合部21が雄端子7にならうように収容孔311内で移動する。これにより、雌端子2と雄端子7との良好な接触を得ることができる。
【0065】
(2)特に、雌端子2の嵌合部21は、収容孔311内で第1の方向(図8の矢印B方向)に移動可能であるので、板状の雄端子7がその厚さ方向に傾き、もしくは曲がっていたとしても、嵌合部21が雄端子7に沿って移動及び傾動することができ、雄端子7との良好な接触を得ることができる。
【0066】
(3)また、雌端子2の嵌合部21は、収容孔311内で第2の方向(図8の矢印C方向)にも移動可能であるので、板状の雄端子7がその厚さ方向及び厚さ方向に直交する方向に傾き、もしくは曲がっていたとしても、嵌合部21が雄端子7に沿って移動及び傾動することができ、雄端子7との良好な接触を得ることができる。
【0067】
(4)雌端子2は、嵌合部21の内部にばね部材24を有しているので、雄端子7がばね部材24の弾性によって嵌合部21の底部211(突条211b)に押し付けられる。また、雄端子7の接触部71がばね部材24の傾斜部240bに接触すると、傾斜部240bの傾斜に沿って雄端子7と雌端子の嵌合部21とが相対移動し、雄端子7の接触部71がばね部材24の頂部240aと底部211の突条211bとの間に案内される。これにより、雄端子7との良好な接触を得ることができる。
【0068】
(5)雄端子7との嵌合時における雌端子2の嵌合方向への移動は、第2ハウジング部材32の当接部321との当接によって規制される。当接部321の先端面321aは、雄端子7と雌端子2との嵌合方向に対して直交するように形成されているので、先端面321aへの接触によって雌端子2の嵌合部21の嵌合方向に直交する方向への移動が妨げられることがない。これにより、嵌合部21が雄端子7にならって自由に移動することができ、雌端子2と雄端子7との良好な接触を得ることができる。
【0069】
(6)電線5には、撚線のほぐしによる可撓部5cが形成されているので、撚線のほぐしを行わない場合に比較して、嵌合部21がより柔軟に動くことができる。これにより、雄端子7の取り付け部位への荷重による負担を低減しながら、雄端子7と雌端子2との良好な接触を得ることができる。また、電線5の一部に撚線のほぐしによる可撓部5cが形成されているので、部品点数を増加することなく、可撓部5cの可撓性を高めることができる。更に、収容孔311に対する嵌合部21の位置を容易に調整でき、嵌合部21を収容孔311に容易に収容することができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0071】
また、上記実施の形態では、コネクタ1が3つの雌端子2を有する場合について説明したが、これに限らず、雌端子2の数は1つでもよい。なお、本発明は、個々の雌端子2が収容孔311内で自由に移動することができるよう、複数の雌端子2を有するコネクタ及びワイヤハーネスに特に有効である。
【0072】
また、上記実施の形態では、電線5の芯線51が撚線からなる場合について説明したが、これに限らず、芯線51が単線であってもよい。この場合、単線からなる芯線を例えばコネクタ内で湾曲させることにより、可撓部5cを形成することができる。
【0073】
更に、上記実施の形態では、接触端子として雌端子2、相手方の端子として雄端子7を用いたが、接触端子として雄端子7、相手方の端子として雌端子2を用いることも可能である。また、相手方の端子として機器のバスバーを用い、接触端子としてバスバーにボルト締めされる板状の端子を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…コネクタ、2…雌端子(接触端子)、5…電線、5a…先端部、5b…被保持部、5c…可撓部、7…雄端子(相手側接触端子)、10…ワイヤハーネス、21…嵌合部(接触部)、21a…開口、22…連結部、23…電線接続部(接続部)、24…ばね部材、30…ハウジング、31…第1ハウジング部材、31a…底面、32…第2ハウジング部材、32a…底面、40…シェル、41…第1シェル部材、42…第2シェル部材、43,44…ボルト、51…芯線、52…被覆部材、61…リング、62…シール部材、63…カバー部材、64…シール部材、65…カバー部材、66…シールド線、67…クランプ部材、70…雄端子、71…接触部、71a…先端部、72…機器接続部、72a…機器接続穴、211…底部、211a,212a,213a,214a…外面、211b…突条、212,213…側部、214…天井部、240…湾曲部、240a…頂部、240b…傾斜部、241…爪部、242…連結部、310…電線保持部、311…収容孔、311a…開口、320…電線保持部、321…当接部、321a…先端面、322…壁部、410…ボルト保持部、411…第1の筒部、412…第2の筒部、412a…挿通孔、711…底部、711a…平面、711b…平面、712,713…起立部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側接触端子と接触する接触部、及び電線が接続される接続部を有する接触端子と、
前記接触端子の前記接触部を収容する収容孔が形成されたハウジングとを備え、
前記相手側接触端子の前記収容孔への挿入により、前記相手側接触端子と前記接触端子とが接触するコネクタにおいて、
前記接触端子の前記接触部は、前記相手側接触端子の前記収容孔への挿入方向に対して交差する方向へ移動可能に、前記収容孔に収容されたコネクタ。
【請求項2】
前記接触端子は、前記相手側接触端子が嵌合される嵌合部を前記接触部として有する雌端子であり、
前記相手側接触端子は、前記嵌合部に少なくとも一部が収容される雄端子である、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記接触端子の前記嵌合部は、板状に形成された前記相手側接触端子の接触面に直交する方向に、前記収容孔内で移動可能である、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記接触端子の前記嵌合部は、板状に形成された前記相手側接触端子の接触面に直交する第1の方向、ならびに前記第1の方向及び前記相手側接触端子の挿入方向に直交する第2の方向に、前記収容孔内で移動可能である、
請求項2又は3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記接触端子は、前記嵌合部における前記相手側接触端子との接点に前記相手側接触端子を押し付けるばね部材を有している、
請求項2乃至4の何れか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記接触端子は、前記嵌合部が前記相手側接触端子の挿入方向に沿って形成されると共に、前記接続部が前記挿入方向に対して交差する方向に延びるように屈曲して形成され、
前記ハウジングには、前記嵌合部に当接して前記雌端子の前記挿入方向への移動を規制する当接部が形成されている、
請求項2乃至5の何れか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記接触端子は、雄端子であると共に、前記相手側接触端子は、雌端子である、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のコネクタと、
前記接触端子の前記接続部に接続された撚線からなる芯線、及び前記芯線を被覆する被覆部材を有する電線とを備え、
前記電線は、前記接続部に接続される先端部と前記ハウジングに保持される被保持部との間に、前記芯線をほぐすことにより可撓性を高めた可撓部が形成された、
ワイヤハーネス。
【請求項9】
前記ハウジングには、更に、前記電線を保持し、前記電線を収容する電線収容凹部を有する電線保持部が形成され、
前記収容孔の幅方向の中心軸と前記電線収容凹部の幅方向の中心軸とは、一致している
請求項8に記載のワイヤハーネス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−69660(P2013−69660A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48666(P2012−48666)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】