説明

コネクタ及び一体成形品

【課題】コネクタ間口と同形状のリブを設けることなくコネクタの反りを防止する。
【解決手段】コネクタ1は、繊維強化樹脂製であり、ケース2及びコネクタ間口3が裏面に一体化されて設けられている。コネクタ1の表面には、凹凸部4が形成されている。凹凸部4は、ケース2とコネクタ間口3との間に形成されており、ケース2及びコネクタ間口3に沿って直線状に延びている。コネクタ1の裏面側の平坦部では、コネクタ1を形成する樹脂の繊維がコネクタ1の表面に沿って配置されるが、ケース2及びコネクタ間口3の形成位置ではこれらの側面にも沿うように繊維が配置されることから、繊維の配向に乱れが生じている。一方、コネクタ1の表面側の平坦部では、コネクタ1を形成する樹脂の繊維がコネクタ1の表面に沿って配置されるが、凹凸部4では凹部及び凸部の側面にも沿うように繊維が配置されることから、乱れによる反りを相殺することで反りを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース及びコネクタ間口が一面に一体に成形された繊維強化樹脂製の一体成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1,2のコネクタは、ケース及びコネクタ間口が一面に備えられている。この種のコネクタには、ケースとコネクタ間口とが同材質の繊維強化樹脂で一体に成形されているものがある。
【0003】
このコネクタでは、成形時に樹脂の冷却に伴ってコネクタ間口側がケース側に反るのを防止するため、ケース及びコネクタ間口の形成面の反対面には、コネクタ間口と同形状のリブがコネクタ間口と対向する位置に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−003550号公報
【特許文献2】特開2010−017069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のコネクタでは、リブを設けることで素子のレイアウトが制限され、また、リブの分樹脂量が増えて重量が増加するという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決できるコネクタ及び一体成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明のコネクタは、ケースとコネクタ間口とが一面に一体成形された繊維強化樹脂製のコネクタであって、前記ケースと前記コネクタ間口との間に位置した前記一面の反対面には、凹部及び凸部の少なくとも一方からなり、前記ケース及び前記コネクタ間口に沿って延びた反り防止部が設けられており、前記反り防止部において、繊維の配向の乱れにより、前記コネクタ間口と反対側に前記コネクタを反らせる力を生じさせることを特徴とする。
また、本発明の一体成形品は、ケース、連結部、コネクタ筒部の順番で、ベースに対して一方側に一体成形された一体成形品であって、前記ケースと前記コネクタ筒部間における前記連結部には、前記一方側と反対側に、凹部及び凸部の少なくとも一方からなる反り防止部を備え、前記反り防止部において、成形品に含まれる強化繊維の配向の乱れにより、前記一方側と反対側に前記ベースを反らせる力を生じさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コネクタを反らせようとする力が反り防止部により相殺されるため、コネクタ間口と同形状のリブを設けることなくコネクタの反りを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態のコネクタを示す図である。
【図2】図1の枠B内の拡大断面図である。
【図3】図1のコネクタを従来のコネクタと比較して示す図である。
【図4】コネクタの変形例を示す図である。
【図5】図4の枠C内の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
図1に示すコネクタ1は、ケース2及びコネクタ間口3がベースの裏面に一体化されて設けられている。コネクタ1は、ガラス繊維等の繊維で強化された繊維強化樹脂製であり、ケース2及びコネクタ間口3も同材質の繊維強化樹脂で一体に成形されている。
【0012】
コネクタ1の表面には、断面略台形の凹部及び凸部を備えた凹凸部4が形成されている。凹凸部4は、ベースのケース2とコネクタ間口3との間の連結部に形成されており、ケース2及びコネクタ間口3に沿って直線状に延びている。
【0013】
コネクタ1の裏面側の平坦部では、図2の枠D内に拡大して示すように、コネクタ1を形成する樹脂中の繊維6がコネクタ1の表面に沿って配置される。図示しないが、ケース2及びコネクタ間口3の形成位置ではこれらの側面にも沿うように繊維6が配置されるため、繊維6の配向に乱れが生じている。このため、コネクタ1の裏面側では、ケース2とコネクタ間口3との間に位置した部分で、コネクタ1を裏面側に反らせようとする力が働いている。
【0014】
一方、コネクタ1の表面側の平坦部では、図2の枠E内に拡大して示すように、コネクタ1を形成する樹脂中の繊維6がコネクタ1の表面に沿って配置されるが、凹凸部4では凹部及び凸部の側面にも沿うように繊維6が配置されることから、繊維6の配向に乱れが生じている。このため、コネクタ1の表面側では、ケース2とコネクタ間口3との間に位置した部分で、コネクタ1を表面側に反らせようとする力が働いている。
【0015】
この結果、ケース2とコネクタ間口3との間に位置した部分では、コネクタ1を裏面側に反らせようとする力がコネクタ1を表面側に反らせようとする力で相殺され、コネクタ1の平面度が保たれている。
【0016】
本実施形態によれば、コネクタ1の表面に形成された凹凸部4を境にしてコネクタ1に表面側に反ろうとする力が働くことで、ケース2とコネクタ間口3との間を境にしてコネクタ1を裏面側に反らせようとする力が相殺されるため、コネクタ間口3と同形状のリブをコネクタ1の表面に設けることなく、コネクタ1の反りを防止できる。
【0017】
このため、コネクタ間口3と同形状のリブを裏面に備えた従来のコネクタ1(図3(a)参照)では、コネクタ間口3の形成位置でのコネクタ1と基板7との間の距離=L1であったのに対し、本実施形態のコネクタ1では、コネクタ間口3の形成位置でのコネクタ1と基板7との間の距離=L2(図3(b)参照)をリブ30を備えない分長くすることができる。従って、コネクタ間口3の裏面側にも素子を配置でき、基板7に実装する素子のレイアウトの自由度が上がる。
【0018】
また、コネクタ間口3と同形状のリブ30を設けない分、コネクタ1の製品重量を軽くできる。また、コネクタ1の反りを抑えることで、部品の振動溶着面の平面精度や、コネクタ1と基板7との接続に用いる端子及びバスバーのアライメント精度を上げることができる。
【0019】
なお、上記実施形態では、反り防止部を構成する凹凸部4が2つの凹部間に1つの凸部を備える構成であったが、凹部及び凸部の数量は任意である。また、凹部及び凸部の何れか一方のみで反り防止部が構成されていてもよい。また、凹凸部4を構成する凹部及び凸部の断面形状は断面台形状である必要はなく、断面矩形状に形成されていてもよい。
【0020】
また、コネクタ1の表面に凹凸部4を設けるだけでなく、図4に示すように、コネクタ1の裏面にリブ5を形成してもよい。リブ5は、図5に拡大して示すように、断面矩形の凹状を呈している。リブ5は、ケース2とコネクタ間口3との間の凹凸部4と対向する位置に形成されており、ケース2及びコネクタ間口3に沿って直線状に延びている。
【0021】
この構成によれば、ケース2とコネクタ間口3との間に位置した部分では、ケース2とコネクタ間口3との間を境にしてコネクタ1が裏面側に反り難くなるため、コネクタ1の反りを効果的に防止できる。また、コネクタ1の材質は、繊維強化樹脂であれば任意である。また、本発明は、コネクタ間口3に相当するコネクタ筒部と、連結部と、ケース2とがこの順番でベースの一面に一体成形された他の一体成形品にも適用できる。
【符号の説明】
【0022】
1 コネクタ
2 ケース
3 コネクタ間口
4 凹凸部
5 リブ
6 繊維
7 基板
30 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースとコネクタ間口とが一面に一体成形された繊維強化樹脂製のコネクタであって、
前記ケースと前記コネクタ間口との間に位置した前記一面の反対面には、凹部及び凸部の少なくとも一方からなり、前記ケース及び前記コネクタ間口に沿って延びた反り防止部が設けられており、
前記反り防止部において、繊維の配向の乱れにより、前記コネクタ間口と反対側に前記コネクタを反らせる力を生じさせることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
ケース、連結部、コネクタ筒部の順番で、ベースに対して一方側に一体成形された一体成形品であって、
前記ケースと前記コネクタ筒部間における前記連結部には、前記一方側と反対側に、凹部及び凸部の少なくとも一方からなる反り防止部を備え、
前記反り防止部において、成形品に含まれる強化繊維の配向の乱れにより、前記一方側と反対側に前記ベースを反らせる力を生じさせることを特徴とする一体成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−69544(P2013−69544A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207222(P2011−207222)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】