説明

コネクタ接続端子

【課題】携帯電話やコードレス電話の充電部のコネクタ接続端子において、耐腐食性を向上させ、金属腐食による電気接続部における通電不良の発生をなくし、コネクタ接続端子の信頼性を高める。
【解決手段】銅系基材11の表面にニッケル層12を形成し、このニッケル層を下地としてさらにロジウム層13を順次形成する。このことにより、充電時の腐食作用にも耐えられる耐腐食性の極めて優れたコネクタ接続端子が得られ、また、めっき工数の低減による製造工程の簡略化に伴い低コスト化を実現でき、特に携帯電話の電池パック、充電パットや狭ピッチコネクタのコネクタ接続端子として有効に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子製品や半導体製品等において電気的接続を行うコネクタの接触部であるコネクタ接続端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機、コードレス電話機、携帯用ディジタルカメラ等の携帯電子機器においては、携帯電話等の筐体外部に露出する二次電池の充電端子と、充電台等に内蔵され電力を供給する充電器の端子とを当接させて接触させる構造になっており、携帯電話等を充電台等に着脱することにより簡単に電気的な接続を行うことができる。このような接続端子では、接続端子がユーザの手に触れ、また空気中にさらされているので、金属の腐食に伴う通電不良が発生し易い。通常、接続端子の基材として、導電性の高い銅が使用されるが、銅とその多くの合金は、導電性は高いが、通常の環境において腐食を受け易く、反応性酸化物や硫化物を生成し、表面上の腐食生成物は接続端子の導電性を低減させる。
【0003】
そこで、従来、耐腐食性及び接触信頼性が強く要求される用途のコネクタ接続端子では、表面に耐腐食性及び接触信頼性の高い金層を設ける構造が採用されていた。具体的には、下地である銅と金層との間にニッケル層を形成していた。ニッケル層は、人間の汗や油、及び空気中の塩素イオンや硫化イオンなど自然界に存在する多くのイオンと反応して形成されるニッケル腐食生成物により、腐食し易い欠点があるが、適度な硬度を有し、各種金属層素材との密着性がよいため金層と銅下地の中間層として用いられていた。また、ニッケル層は、銅が金層に拡散するのを防止するバリヤ層としての役割もあった。
【0004】
ところが、上記構造においても、ニッケル層において、ピンホールが発生し易く、このピンホールにおいて、導電性基材と金層が直接接触することから、両者のイオン化傾向の差に基づく電気腐食が生じることがあり、特に導電基材が銅または銅合金の場合に顕著であった。これに対してニッケルめっき層や金めっき層を厚くする等の対策も考えられるが、コストや生産性の問題もあり、基本的解決には至っていない。
【0005】
また、携帯電話における充電パッドや電池パックの充電コネクタのように、充電部を構成するコネクタ接続端子では、導体接触面の表面処理によっては、充電部の接触面において、腐食が進行し易い。これは、充電時に、異種金属間の電位差によりに電流が流れると、異種金属間における電子の授受が活発になり、これが腐食の原動力となる腐食電流となり、充電しない場合に比べて腐食進行を助長するためである。
【0006】
従って、特に、充電部を構成する接続端子では、従来の異種金属間(例えば、金(Au)とニッケル(Ni)間)の電位差(AuとNi間で約1V)によって起電力が発生することにより、電位の低い錆び易い金属が錆びるという異種金属間の電位差による基本的な錆び要因に加え、腐食電流を加速する充電電流により腐食が促進されるため、より高い耐腐食性が要求される。
【0007】
これらの要求に対応して、銅層と金層の間に、第1のNiメッキ層と第2のNiメッキ層を形成し、第1のNiメッキ層のイオウ含有量を減らして、その腐食電位を第2のNiメッキ層の腐食電位より高くすることにより、耐腐食性を改善するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、導電性基体上にNi、Cu、Agのいずれか、または、これらを含む合金からなる下地層の上に、ルテニウム(Ru)層を形成し、その上にAu、Ag、Rh,Co,Ni、In、Snの少なくとも1種類の金属、又はそれらを含む合金を形成するコネクタの表面処理が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、これらの表面処理においても、人間の手の接触が頻繁にあり、空気中にさらされた腐食性環境においては、コネクタ接続端子の耐腐食性を十分満足させるものが得られておらず、また、従来の対応では、表面処理数が多く、工程も複雑になりコスト高となる問題を有していた。
【特許文献1】特開2001−234361号公報
【特許文献2】特開2002−356706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来の問題を解決するためになされたものであり、接続端子の複合めっき層の一部に、ロジウム(Rh)金属を導入し、このロジウムを最上層および電位差緩衝層として用いることにより、表面処理工程が簡単で、充電時での腐食促進にも耐えられる耐腐食性の高いコネクタ接続端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、銅系基材上にニッケル層が形成され、さらに、このニッケル層を下地層としてその表面にロジウム層を形成したものである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコネクタ接続端子おいて、前記ニッケル層とロジウム層との間に、パラジウム層、又はパラジウムとニッケルとの合金層を形成したものである。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1に記載のコネクタ接続端子おいて、前記ロジウム層の表面に金層を形成したものである。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3に記載のコネクタ接続端子おいて、前記ニッケル層とロジウム層との間にパラジウムとニッケルとの合金層を形成したものである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコネクタ接続端子おいて、前記ニッケル層または前記ニッケルを含む合金層中の硫黄成分を抑制したものである。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコネクタ接続端子おいて、前記ニッケル層をニッケルとリンとの合金層としたものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、ロジウム(Rh)金属を緩衝材および最上層として用いることにより、銅(Cu)系基材上に形成されたニッケル(Ni)を含む層に金(Au)層を表面処理した場合、及び銅系基材上に形成されたニッケルを含む層にルテニウム(Ru)層を表面処理した場合に比べて、耐腐食性が向上し、腐食進行を抑制することができ、コネクタ接続端子の耐腐食性を向上することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、ニッケル層とロジウム(Rh)層の間に、パラジウム(Pd)層またはパラジウムとニッケルの合金層(Pd−Ni層)を導入することにより、ニッケル層とロジウム層間の電位差を緩衝できる電位差緩衝効果から耐腐食性能が向上し腐食進行を抑制でき、耐腐食性の良いコネクタ接続端子を得ることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、ロジウム(Rh)層は、金層(Au)とニッケル間の電位差を緩衝できることから、従来の銅(Cu)素材上に形成されるニッケル層と金(Au)層の表面処理に比べて耐腐食性能が向上し腐食進行を抑制でき、コネクタ接続端子の耐腐食性を向上することができる。また、この金メッキ層は、耐食性、概観上の装飾性を担うと共に、外部機器との接触時に接触抵抗を低減する機能をも有している。
【0020】
請求項4の発明によれば、ロジウム(Rh)層およびパラジウムとニッケルの合金層(Pd−Ni層)の挿入により、金(Au)層とニッケル層間の電位差を緩衝できることから、従来のCu素材上に形成されるニッケル層と金(Au)層の表面処理に比べて、耐腐食性能が向上し腐食進行を抑制でき、耐腐食性の良いコネクタ接続端子を得ることができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、ニッケル(Ni)中の硫黄成分を抑制することにより、硫黄を含有するニッケルよりも、ニッケル電位が貴になり、電位差が縮まり、耐腐食性能を向上し、腐食進行を抑制でき、耐腐食性を向上できるコネクタ接続端子を得ることができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、ニッケル(Ni)層をニッケルとリン(P)の合金層(Ni−P層)とすることにより、単体ニッケル(Ni)層よりもニッケル電位が貴になり電位差が縮まることにより、耐腐食性能を向上して腐食進行を抑制でき、耐腐食性の良いコネクタ接続端子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るコネクタ接続端子について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、実施形態1に係るコネクタ接続端子の概略断面構成を示す。コネクタ接続端子は、基材として銅(Cu)系基材11をベースに、その表面にニッケル(Ni)層12をメッキし、さらにそのNi層12の上にロジウム(Rh)層13をめっきを施して形成している。この構成により、従来の、銅基材上にニッケル層を形成した表面処理に比べ、耐腐食性能が向上する。また、銅基材上にニッケル層を形成し、その上に金(Au)層を形成した場合と比較しても、金(Au)に比べニッケルと電位差の少ないロジウム層を設けることにより、電位差緩衝効果によりニッケル層の腐食が抑制され、コネクタ接続端子の耐腐食性が向上した。
【0025】
また、Rhの膜厚みは、0.001μm〜3μmの範囲が望ましい。例えば、ここでは、日鉱メタルプレーティングの「F9」を用い、電流密度は0.1〜10ASD、温度は35〜70degCでめっきを行った。
【0026】
このようにして得られたコネクタ接続端子は、特に耐腐食性に優れ、このコネクタ接続端子を有するコネクタは極めて信頼性の高いものであった。
【0027】
図2は、実施形態2に係るコネクタ接続端子の概略断面構成を示す。コネクタ接続端子は、基材として銅系基材21をベースに、その表面にニッケル(Ni)層22をメッキし、そのNi層22の上にパラジウム(Pd)とニッケルとの合金層(以下、Pd−Ni層と略す)23をめっき形成し、さらに、この上にロジウム(Rh)層24を形成している。
【0028】
このように、ニッケル層22とロジウム層24の間に、パラジウムまたはPd−Ni層23が挿入されることにより、ニッケル層22と、ロジウム層24間との電位差が緩衝され、ニッケル層の腐食を抑制させることができた。
【0029】
ここで、Pd−Ni層の合金比率は、Pd含有率が50%以上が望ましい。また、Pd−Ni層はパラジウム(Pd)単体の層でも良い。また、パラジウム系金属の代わりに、ルテニウム等の貴金属も代用することができる。PdまたはPd−Ni層の厚みは、0.01um〜3umの範囲が望ましい。
【0030】
このようにして得られたコネクタ接続端子は、さらに耐腐食性に優れ、このコネクタ接続端子を有するコネクタは極めて信頼性の高いものであった。
【0031】
図3は、実施形態3に係るコネクタ接続端子の概略断面構成を示す。コネクタ接続端子は、銅(Cu)系基材31をベースに、その表面にニッケル(Ni)層32をメッキし、そのニッケル層32の上にロジウム(Rh)層33をめっき形成し、さらに、この上に金(Au)層34を形成している。ここで、ロジウム層33は、金(Au)層34とニッケル層32の間の電位差を緩衝できることから、銅(Cu)系基材にニッケル層、金層の表面処理をしたコネクタ接続端子に比べ、耐腐食性能が向上し腐食進行を抑制することができた。
【0032】
ここで、ロジウム層33の膜厚みとしては、0.01um〜3umの範囲が望ましく、また、金層34の膜厚みは、0.01um〜3umの範囲が望ましい。
【0033】
このようにして得られたコネクタ接続端子は、さらに耐腐食性に優れ、このコネクタ接続端子を有するコネクタは極めて信頼性の高いものであった。
【0034】
図4は、実施形態4に係るコネクタ接続端子の概略断面構成を示す。コネクタ接続端子は、銅系(Cu)基材41をベースに、その表面にニッケル(Ni)層42をメッキし、そのニッケル層42の上にパラジウム(Pd)とニッケル(Ni)との合金層(以下、Pd−Ni層と略す)43をめっき形成し、この上にロジウム(Rh)層44形成し、さらに、この上に金(Au)層45を形成している。ここで、Pd−Ni層43及びロジウム層44は、金層45とニッケル層42の間の電位差を緩衝できることから、銅系基材上のニッケル層及びその上に金層の表面処理をしたコネクタ接続端子に比べ、耐腐食性能が格段に向上し腐食進行を抑制することができた。
【0035】
次に、実施形態5に係るコネクタ接続端子は、上記の各実施形態1〜4において、形成されるニッケル(Ni)層を、ニッケル層中の硫黄成分を撲滅したニッケル層で構成するものである。ここで、めっきには、添加剤に硫黄成分を含まないニッケル浴を用いる。そのため、ニッケルめっき層中に、不純物として硫黄成分が含有されないように、めっき浴として、浴中に硫黄析出成分を含まないニッケル浴(例えば、上村工業製スルニック浴や、硫黄を含有しないワット浴等)を用い、さらに、このような硫黄析出成分を含まないめっき浴中に、硫黄成分を含まない添加剤を使用して、全く硫黄を含有しないめっき浴を用いるようにする。
【0036】
このような硫黄を含有しないニッケルめっき層は、硫黄を含有するニッケルめっき層と比較して、合金めっき層及び貴金属めっき層との間の電位差が小さくなり、このため硫黄を含有するニッケルめっき層を形成する場合より、さらに高い耐腐食性が得られる。
【0037】
次に、実施形態6に係るコネクタ接続端子は、上記の第1〜第4の各実施形態において、ニッケル(Ni)層の代わりに、ニッケル(Ni)とリン(P)との合金層(以下、Ni−P層と略す)で構成するものである。このことにより、単体のニッケル(Ni)層に比べて、Ni−P層の電位が貴になり、上位層との電位差が縮まり、耐腐食性を向上することができる。
【0038】
ここで、Ni−P層として耐腐食性を向上させるには、リン(P)の含有率を5%以上とすることが望ましい。
【0039】
次に、上述の本発明の各実施形態の耐腐食性能の有効性を実験的に評価するため、耐電解腐食評価試験及び耐亜硫酸ガス腐食評価試験を行った。それらの試験結果を以下に説明する。実験にあたり、従来のコネクタ接続端子を比較例として比較評価した。
【0040】
(比較例1)
従来のコネクタ接続端子に使用されている、銅(Cu)基材の上にニッケル(Ni)層を下地めっきし、その上にルテニウム(Ru)層を形成したものを比較例1とした。
【0041】
(比較例2)
従来のコネクタ接続端子に使用されている、銅(Cu)基材の上にニッケル(Ni)層を下地めっきし、その上に金(Au)層を形成したものを比較例2とした。
【0042】
(比較例3)
従来のコネクタ接続端子に使用されている、銅(Cu)基材の上にニッケル(Ni)層を下地めっきし、その上にルテニウム(Ru)層を形成し、さらに金(Au)層を形成したものを比較例3とした。
【0043】
(耐電解腐食評価試験)
各実施形態1〜4及び比較例1〜3の形成部材のテストピースを用いて測定し、得られた耐電解腐食評価試験データのグラフを図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)に示した。
【0044】
この測定は、図5に示す耐電解腐食性の評価方法を用いて行った。銅図において、容器51に1.0wt%(重度濃度の略)の塩化ナトリュウム水溶液52を注入し、この水溶液52中に、白金極板53とテストピース54を3cmの間隔をおいて電極を並べて浸し、テストピース54の電極をプラス電極、白金電極53をマイナス電極として直流電圧源55より電圧4.5Vの直流電圧を印加して、150オームの抵抗56の両端の電圧を電圧計57で測定し、この電圧値と150オームの抵抗値から電流値を求めることにより、電極間に流れる電流と時間の関係を20分間測定する方法で行った。その結果を、酸化電流と時間の関係グラフとして、図6(a)、(b)、及び図7(a)、(b)に示した。各グラフにおいて、縦軸は酸化電流(mA)、横軸は時間(分)を示す。
【0045】
図6(a)、(b)は、最上位層が金(Au)めっきを形成していない場合において、ニッケル(Ni)上にロジウム(Rh)を形成する実施形態1(図6(a)、(b)ではRh/Niと表示)及びニッケル(Ni)と、ロジウム(Rh)層の間にPd−Ni層を形成する実施形態2(図6(a)、(b)ではRh/Pd−Ni/Niと表示)と、ニッケル(Ni)上にルテニウム(Ru)を形成する比較例1(図6(a)、(b)ではRu/Niと表示)の各測定結果を示したグラフであり、図6(a)はスタートから20分間の測定データを示し、図6(b)はスタートから5分間の測定データを拡大表示したものである。
【0046】
両図から明らかなように、比較例1では実験スタートから30秒以内で、酸化電流が急激に増加しているが、実施形態1では約5分後に酸化電流の増加が始まり、実施形態2では20分経過しても殆ど増加しないので、実施形態1、2とも比較例1に比べ耐電解腐食特性がかなり向上することが確認できた。
【0047】
図7(a)、(b)は、最上位層を金(Au)層で形成した場合において、ニッケル(Ni)層上にロジウム(Rh)層と金層を形成する実施形態3(図7(a)、(b)ではAu/Rh/Niと表示)と、実施形態3のニッケル(Ni)層とロジウム(Rh)層の間にPd−Ni層を形成する実施形態4(図7(a)、(b)ではAu/Rh/Pd−Ni/Niと表示)と、ニッケル(Ni)上に金(Au)層を形成する比較例2(図7(a)、(b)ではAu/Niと表示)、及び比較例2のニッケル(Ni)層と金(Au)層の間にルテニウム(Ru)層を形成する比較例3(図7(a)、(b)ではAu/Ru/Niと表示)の各測定結果を示したグラフであり、図7(a)はスタートから20分間の測定データを示し、図7(b)はスタートから5分間の測定データを拡大表示したものである。
【0048】
両図から明らかなように、比較例2及び比較例3では、実験スタートからそれぞれ30秒以内及び2分以内で、酸化電流が急激に増加しているが、実施形態3では約17分以降に酸化電流が増加し出し、実施形態4では20分経過しても増加しない。従って、実施形態3,4のいずれも、比較例2、3に比べ耐電解腐食特性が極めて向上することが確認できた。
【0049】
以上の耐電解腐食評価試験より明らかなように、ロジウム(Rh)の導入により、実施形態1〜4は、比較例1〜3の何れとの比較においても、著しい耐電解腐食性の向上が見られ、極めて良好な特性を得られていることが分かる。
【0050】
(耐亜硫酸ガス腐食評価試験)
実施形態1〜4及び比較例1〜3の形成部材をテストピースとして、封孔処理を施したものと、封孔処理を施さないもの用意し、耐亜硫酸ガスによる腐食評価試験を行った。
なお、複合めっきでは、耐腐食性をよくするため、通常、皮膜に存在する微細な孔を塞ぐため封孔処理を施す場合が多いが、今回の測定では封孔処理を施した場合と、施さない場合に分けて測定した。
【0051】
これらの測定は、濃度10ppmの亜硫酸ガス含有雰囲気中に、40℃、湿度95%RHの条件で96時間暴露した結果をそれぞれ観察し、耐腐食性を評価した。耐腐食性の判定基準は4段階とし、評価基準は次の通りである。
「3」・・・腐食なし
「2」・・・若干腐食あり
「1」・・・全体にかなり腐食
「0」・・・完全に腐食
以上の結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
これらの結果から明らかなように、実施形態1〜4では、いずれもロジウム層の導入により、従来のコネクタ接続端子の比較例1〜3に比べ、全体的に優れた耐腐食性能を有する。また、第2の実施形態と第4の実施形態のデータから、ロジウム層とニッケル層間にパラジウム系金属層を導入することにより、さらに、耐腐食性能が強化されていることが確認できた。さらにまた、封孔処理を施さない場合であっても、優れた良好な耐食性を有することも確認できた。
【0054】
図8に本発明のコネクタ接続端子を適用した携帯電話の充電部のコネクタ接続端子の例を示している。同図において、携帯電話本体71の下方端面の点線で囲んだ部分Aは、コネクタ接続端子部を示し、充電パッド72は充電器と面接触する充電部の充電端子であり、本発明の表面処理が適用される。また、システムコネクタ73は、充電器から充電ケーブルで充電する場合に、充電ケーブルコネクタに接続される受け側金属端子であり、この端子にも本発明の表面処理を適用してもよい。
【0055】
以上述べたように、本発明によるコネクタ接続端子によれば、表面層にロジウム(Rh)層を形成するこにより、耐電解腐食性及び耐亜硫酸ガス腐食性の両面から、従来の銅(Cu)基材上にニッケル(Ni)層を形成した表面処理に比べ、一段と耐腐食性能が向上すると共に、ニッケル層上にさらに金(Au)層を形成した場合に比べても、極めて優れた耐腐食性を得ることができ、充電時の腐食作用の進行が促進される場合においても、十分耐えられる耐腐食性を持った充電用のコネクタ接続端子を得ることができる。従って、特に使用頻度の高い携帯電話の電池パック、充電パットや狭ピッチコネクタのコネクタ接続端子としては有効である。また、銅基材上にニッケル層とロジウム層の簡単な3層構造で構成できるので、めっき層数が少なく、製造工程を簡素化でき、生産性に富んだコネクタ接続端子を実現することができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、様々な変形が可能である。ニッケル(Ni)層とロジウム(Rh)層との間に、パラジウム層またはパラジウムとニッケルの合金層(Pd−Ni層)を形成することにより、図6、図7及び表1に示したように耐腐食性能は著しく向上する。従って、より耐腐食性の優れた充電用のコネクタ接続端子を実現でき、特に、携帯電話の電池パック、充電パットや狭ピッチコネクタ等のコネクタ接続端子としては好適に用いることができる。
【0057】
また、銅層(Cu)上にニッケル層とロジウムを形成後に、さらに金(Au)層を形成することにより、金層を施さない場合に比べ、格段に耐腐食性能が向上する。また、最上層に金(Au)を用いることにより電気伝導率が向上し接触抵抗も低減できる。このことにより、通電性が良く、より耐腐食性の優れた充電用のコネクタ接続端子を実現でき、特に、携帯電話の電池パック、充電パットや狭ピッチコネクタ等のコネクタ接続端子としては好適に用いることができる。
【0058】
また、ニッケル層とロジウム層との間に、パラジウム(Pd)層またはパラジウムとニッケルの合金層を形成した上に、さらに金(Au)層を形成することにより、極めて耐腐食性能が向上すると共に、最上層に金を用いることにより電気伝導率が向上し接触抵抗も低減できる。このことにより、より耐腐食性の優れた充電用のコネクタ接続端子を実現でき、特に、携帯電話の電池パック、充電パットや狭ピッチコネクタ等のコネクタ接続端子としては好適に用いることができる。
【0059】
さらに、ニッケル層またはニッケルを含む合金層中の硫黄成分を抑制することにより、耐腐食性を向上することができると共に、さらにまた、下地のニッケル層の代わりにニッケル(Ni)とリン(P)の合金層(Ni−P層)を導入することによっても耐腐食性を向上することができる。このことにより、さらに耐腐食性の優れた充電用のコネクタ接続端子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態1におけるコネクタ接続端子の概略断面図。
【図2】本発明の実施形態2におけるコネクタ接続端子の概略断面図。
【図3】本発明の実施形態3におけるコネクタ接続端子の概略断面図。
【図4】本発明の実施形態4におけるコネクタ接続端子の概略断面図。
【図5】本発明に使用した耐電解腐食性の評価方法を示す図。
【図6】(a)は上記評価方法にて測定した最上層に金めっきを施さない場合の実施形態1,2と比較例1の20分間の測定データのグラフを示す図、(b)は(a)の最初の5分間の測定データの拡大図。
【図7】(a)は上記評価方法にて測定した最上層に金めっきを施した場合の実施形態3,4と比較例2及び3の測定データのグラフを示す図、(b)は(a)の最初の5分間の測定データの拡大図。
【図8】本発明の一実施形態に係るコネクタ接続端子を用いた携帯電話の斜視図。
【符号の説明】
【0061】
11 銅(Cu)基材
12 ニッケル(Ni)層
13 ロジウム(Rh)層
21 銅(Cu)基材
22 ニッケル(Ni)層
23 パラジウム(Pd)又はパラジウム(Pd)とニッケル(Ni)の合金層(Pd−Ni層)
24 ロジウム(Rh)層
34 銅(Cu)基材
32 ニッケル(Ni)層
33 ロジウム(Rh)層
34 金(Au)層
41 銅(Cu)基材
42 ニッケル(Ni)層
43 パラジウム(Pd)又はパラジウム(Pd)とニッケル(Ni)の合金層(Pd−Ni層)
44 ロジウム(Rh)層
45 金(Au)層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅系基材上にニッケル層が形成され、さらに、このニッケル層を下地層としてその表面にロジウム層を形成したことを特徴とするコネクタ接続端子。
【請求項2】
前記ニッケル層とロジウム層との間に、パラジウム層、又はパラジウムとニッケルとの合金層を形成したことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ接続端子。
【請求項3】
前記ロジウム層の表面に金層を形成したことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ接続端子。
【請求項4】
前記ニッケル層とロジウム層との間にパラジウムとニッケルとの合金層を形成したことを特徴とする請求項3に記載のコネクタ接続端子。
【請求項5】
前記ニッケル層または前記ニッケルを含む合金層中の硫黄成分を抑制したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコネクタ接続端子。
【請求項6】
前記ニッケル層をニッケルとリンとの合金層としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコネクタ接続端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−108057(P2006−108057A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296979(P2004−296979)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】