説明

コネクタ構造及びツイスト線

【課題】ツイスト線同士の接続部での撚り戻し、導体直径、誘電体材質の変化を抑制して伝送損失の増加を防いだコネクタ構造を提供する。
【解決手段】雌型、雄型ハウジング31、32は各々、ツイスト線21、22の端面を露出するように、ツイスト線21、22を構成する複数の被覆電線23の端末が撚り合わされた状態のままツイスト線21、22の端末を収容する。絶縁シート及び該絶縁シートの厚さ方向に貫通した複数の針状導体から構成されたインターコネクタ4が、ツイスト線21の端面に設けられることにより、ツイスト線21、22の雌、雄型ハウジング31、32同士を係止させるとツイスト線21、22の端面間に挟まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ構造及びツイスト線に係り、特に、複数の電線が撚り合わされたツイスト線同士を電気的に接続するコネクタ構造及び当該コネクタ構造に用いられるツイスト線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載機器に電気的信号を与える電線としては、一対の被覆電線を撚り合わせたツイスト線が広く使用されている。このようなツイスト線同士を電気的に接続するコネクタとしては、図8に示すものが知られている(例えば、特許文献1)。同図に示すように、コネクタ10は、ツイスト線20端末の芯線に接続された複数の端子金具11と、これら端子金具11を収容するハウジング12と、から構成されている。
【0003】
上述した従来のコネクタ10では、ツイスト線20の芯線に端子金具11を接続し、これら端子金具11を、ハウジング12内に互いに平行に並べて収容している。このため、この端子金具11に接続されるツイスト線20の端末も撚り戻して互いに平行に並べる必要がある。このツイスト線20の撚り戻しに起因してコネクタ10とツイスト線20との接続部でインピーダンスの不整合が生じ伝送損失が増加してしまう、という問題があった。
【0004】
また、端子金具11は、ツイスト線20の芯線を接続する電線接続部や、相手コネクタの端子金具と接続する端子接続部、ハウジング12に係止させる係止部などを設ける必要があるため、ツイスト線20の芯線よりも大きく設ける必要がある。このため、端子金具11とツイスト線20との接続部で導体(=ツイスト線20の芯線、コネクタ10の端子金具11)の直径が変化してしまい、これによってもインピーダンスの不整合が生じ伝送損失が増加してしまう、という問題が生じていた。
【0005】
さらに、ツイスト線20において導体である芯線は誘電体である被覆部で覆われているのに対して、コネクタ10において導体である端子金具11(=導体)は誘電体であるハウジング12で覆われている。ツイスト線20の被覆部は柔軟性が求められ、ハウジング12は硬い必要があるため、これらを同一の材質で設けることはできない。このため、コネクタ10とツイスト線20との接続ぶでは、誘電体(ツイスト線20の被覆部、コネクタ10のハウジング12)の材質も変わってしまい、これによってもインピーダンスの不整合が生じ伝送損失が増加してしまう、という問題が生じていた。
【0006】
上述したツイスト線20の撚り戻しに起因する伝送損失の増加を防止するために、例えば、図9に示すように、コネクタ10の端子金具11をスパイラル構造に設けることも考えられているが、コネクタ10とツイスト線20との接続部で、導体の直径や誘電体の材質が変わってしまうことに起因して伝送損失が増加してしまう、という問題点は解決できていなかった。しかも、コネクタ10同士をねじりながら接続する必要があり、接続作業が煩雑である、という問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−103396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、ツイスト線同士の接続部での撚り戻し、導体直径、誘電体材質の変化を抑制して伝送損失の増加を防いだコネクタ構造及び当該コネクタ構造に用いられるツイスト線を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、複数の電線が撚り合わされたツイスト線同士に接続するコネクタ構造において、前記ツイスト線の端面を露出するように、前記ツイスト線を構成する複数の電線の端末が撚り合わされた状態のまま前記ツイスト線の端末を収容するハウジングと、絶縁シート及び該絶縁シートの厚さ方向に貫通した複数の針状導体から構成されたインターコネクタと、を備え、前記インターコネクタが、互いに接続される一対のツイスト線の何れか一方の端面に設けられることにより、前記一対のツイスト線のハウジング同士を係止させると前記一対のツイスト線の端面間に挟まれることを特徴とするコネクタ構造に存する。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記一対のツイスト線の何れか一方に設けられたハウジングには、前記ツイスト線の他方に設けたハウジングが嵌合される筒部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ構造に存する。
【0011】
請求項3記載の発明は、複数の電線が撚り合わされたツイスト線において、前記ツイスト線の端面を露出するように、前記ツイスト線の端末を収容するハウジングと、絶縁シート及び該絶縁シートの厚さ方向に貫通した複数の針状導体から構成されたインターコネクタと、を備え、前記インターコネクタが、前記ハウジングから露出したツイスト線の端面に設けられていることを特徴とするツイスト線に存する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、一対のツイスト線の端面間にインターコネクタを挟むことにより、インターコネクタの針状導体を介してツイスト線の芯線同士が電気的に接続される。これにより、一対のツイスト線の端末を撚り戻す必要がなく、一対のツイスト線を接続部のない一本のツイスト線とほぼ同じ状態になるように接続することができる。このため、ツイスト線同士の接続部での撚り戻し、導体直径、誘電体材質の変化を抑制して伝送損失の増加を防ぐことができる。しかも、複数の針状導体を介してツイスト線の芯線同士が接続されるため、針状導体とツイスト線芯線との接触抵抗を小さくすることができ、針状導体とツイスト線芯線との接続部での反射がほとんど生じることがない。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、一対のツイスト線の何れか一方に設けられたハウジングには、ツイスト線の他方に設けたハウジングが嵌合される筒部が形成されているので、ツイスト線の一方に設けたハウジングに形成された筒部内にツイスト線の他方に設けたハウジングを嵌合させるだけで簡単にツイスト線同士を接続することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、ツイスト線の端部にハウジングが設けられ、そのハウジングから露出したツイスト線の端部にインターコネクタが設けられているので、上記ハウジングを他のツイスト線に設けたハウジングに係止すると他のツイスト線の端面との間にインターコネクタが挟まれる。一対のツイスト線の端面間にインターコネクタを挟むことにより、インターコネクタの針状導体を介してツイスト線の芯線同士が電気的に接続される。これにより、ツイスト線同士の接続部での撚り戻し、導体直径、誘電体材質の変化を抑制して伝送損失の増加を防ぐことができる。しかも、複数の針状導体を介してツイスト線の芯線同士が接続されるため、針状導体とツイスト線芯線との接触抵抗を小さくすることができ、針状導体とツイスト線芯線との接続部での反射がほとんど生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のコネクタ構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す雌型ハウジングの部分拡大斜視図である。
【図3】図1に示す雄型ハウジングの部分拡大斜視図である。
【図4】図2に示す雌型ハウジングのI−I線断面図である。
【図5】図3に示す雄型ハウジングのII−II線断面図である。
【図6】(A)及び(B)は図4に示すインターコネクタの断面図及び上面図である。
【図7】図2及び図3に示す雌型ハウジング及び雄型ハウジングが互いに係止したときの断面図である。
【図8】従来のコネクタ構造の一例を示す斜視図である。
【図9】従来のコネクタ構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のコネクタ構造について図1〜図7を参照して説明する。図1は、本発明のコネクタ構造の一実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す雌型ハウジングの部分拡大斜視図である。図3は、図1に示す雄型ハウジングの部分拡大斜視図である。図4は、図2に示す雌型ハウジングのI−I線断面図である。図5は、図2に示す雄型ハウジングのII−II線断面図である。図6(A)及び(B)は、図4に示すインターコネクタの断面図及び上面図である。図7は、図2及び図3に示す雌型ハウジング及び雄型ハウジングが互いに係止したときの断面図である。なお、図4、図5及び図7においては、ツイスト線の断面図を省略している。
【0017】
図1に示すように、コネクタ構造1は、一対のツイスト線21、22と、ツイスト線21の端末を収容するハウジングとしての雌型ハウジング31と、ツイスト線22の端末を収容するハウジングとしての雄型ハウジング32と、これら一対のツイスト線21、22の端面間に挟まれるインターコネクタ4(図2、図4及び図7参照)と、を備えている。
【0018】
上記ツイスト線21、22は各々、互いに撚られた一対の電線としての被覆電線23から構成されている。被覆電線23は各々、図3に示すように、導電性の芯線24と、この芯線24を被覆した絶縁性の被覆部25と、を有している。芯線24は、導電性の金属で構成された複数の素線が螺旋状に撚られて構成されている。被覆部25は、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂で構成されている。
【0019】
上記雌型、雄型ハウジング31、32は、ツイスト線21、22の端末回りにインサート成形されている。即ち、雌型、雄型ハウジング31、32の成形型にツイスト線21、22の端末を挿入した状態で加熱溶融させた合成樹脂をその成形型内に射出注入し、その合成樹脂を冷却、固化することによって、ツイスト線21、22の端末回りに雌型、雄型ハウジング31、32を成形している。
【0020】
このとき、ツイスト線21、22の端末は、寄り戻さないで、撚り合わされた状態のまま成形型に挿入される。これにより、ツイスト線21、22の端末は撚り合わされた状態のまま雌型、雄型ハウジング31、32に収容される。
【0021】
上記雌型ハウジング31は、図2及び図4に示すように、ツイスト線21の端末を覆う本体部31aと、後述する雄型ハウジング32を嵌合する筒部31bと、から構成されている。本体部31aは、略円柱状に形成されていて、その長手方向Y1端末側の端面からツイスト線21の端面が露出されるように形成されている。即ち、本体部31aの端面とツイスト線21との端面が同一平面上に形成されている。筒部31bは、本体部31aの長手方向Y1端末側に設けられていて、後述するインターコネクタ4が設けられていない状態ではその開口からツイスト線21の端面が見える。
【0022】
上記雄型ハウジング32は、図3に示すように、略円柱状に形成されていて、その長手方向Y1端末側の端面からツイスト線22の端面が露出されるように形成されている。即ち、雄型ハウジング32の端面とツイスト線21の端面とが同一平面上に形成されている。また、雄型ハウジング32は、雌型ハウジング31の筒部31b内に挿入され、筒部31bに嵌合するように設けられている。
【0023】
上述した雌型、雄型ハウジング31、32には、雌型ハウジング31の筒部31b内に雄型ハウジング32を挿入して嵌合させたときに互いに係止する図示しない係止部がそれぞれ設けられている。この係止部としては、コネクタのハウジング同士の係止に用いられる一般的なものでよく、例えば、雌型ハウジング31の筒部31bにツイスト線21、22の径方向Y2に撓む筒部31b内側に向かって突出する係止アームと、雄型ハウジング32の外側面に設けた係止アームの先端が挿入されて嵌合する係止穴と、から構成することなど考えられる。
【0024】
上記インターコネクタ4は、図6に示すように、シリコーンなどから構成された弾力性がある絶縁シート41と、この絶縁シート41の厚さ方向Y2に貫通した複数の針状導体42と、から構成されている。上述した複数の針状導体42は、絶縁シート41内に互いに離間した状態でマトリクス状に並べて配置されている。このインターコネクタ4は、ツイスト線21、22の何れか一方の端面に貼り付けられている。本実施形態では、図4に示すように、雌型ハウジング31から露出したツイスト線21の端面に貼り付けられている。
【0025】
上述したコネクタ構造1によれば、図7に示すように、雌型ハウジング31の筒部31b内に雄型ハウジング32を挿入して、雌型、雄型ハウジング31、32を互いに係止させると、一対のツイスト線21、22の端面間にインターコネクタ4が挟まれる。
【0026】
このように、一対のツイスト線21、22の端面間にインターコネクタ4を挟むことにより、インターコネクタ4の針状導体42を介してツイスト線21、22の芯線24同士が電気的に接続される。これにより、図7に示すように、ツイスト線21、22の端末を撚り戻す必要がなく、ツイスト線21、22を接続部のない一本のツイスト線とほぼ同じ状態になるように接続することができる。
【0027】
このため、ツイスト線21、22同士の接続部での撚り戻し、導体直径、誘電体材質の変化を抑制して伝送損失の増加を防ぐことができる。例えば、ツイスト線21、22の芯線間に平板状の導体を介して接続した場合、ツイスト線21、22の芯線24と平板状の導体との接触抵抗が大きくなり、ツイスト線21、22の芯線24と平板状の導体との接続部でインピーダンスが不整合となり、反射してしまう。
【0028】
これに対して、複数の針状導体42を介してツイスト線21、22の芯線24同士が接続されるため、平板状の導体を介す場合に比べて、針状導体42とツイスト線21、22芯線24との接触圧力を高くして、接触抵抗を小さくすることができ、針状導体42とツイスト線21、22の芯線24との接続部での反射がほとんど生じることがない。
【0029】
また、上述したコネクタ構造1によれば、ツイスト線21に設けられた雌型ハウジング31には、ツイスト線22に設けた雄型ハウジング32が嵌合される筒部31bが形成されているので、雌型ハウジング31に形成された筒部31b内に雄型ハウジング32を嵌合させるだけで簡単にツイスト線21、22同士を接続することができる。
【0030】
なお、上述した実施形態によれば、インターコネクタ4は、雌型ハウジング31から露出されたツイスト線21の端面に貼り付けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、雌型ハウジング31から露出されたツイスト線22の端面に貼り付けられていてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態によれば、雌型、雄型ハウジング31、32には各々、一本のツイスト線21、22の端末しか収容されていないが、従来と同様に二本以上のツイスト線の端末を収容するようにしてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態によれば、雌型ハウジング31には、雄型ハウジング32を嵌合する筒部31bを設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。ハウジング31、32としては、ツイスト線21、22を収容して、互いに係止できる構造のものであればよく、その形状は本実施形態に限られるものではない。
【0033】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 コネクタ構造
4 インターコネクタ
21 ツイスト線
22 ツイスト線
23 被覆電線(電線)
31 雌型ハウジング(ハウジング)
32 雄型ハウジング(ハウジング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線が撚り合わされたツイスト線同士に接続するコネクタ構造において、
前記ツイスト線の端面を露出するように、前記ツイスト線を構成する複数の電線の端末が撚り合わされた状態のまま前記ツイスト線の端末を収容するハウジングと、
絶縁シート及び該絶縁シートの厚さ方向に貫通した複数の針状導体から構成されたインターコネクタと、を備え、
前記インターコネクタが、互いに接続される一対のツイスト線の何れか一方の端面に設けられることにより、前記一対のツイスト線のハウジング同士を係止させると前記一対のツイスト線の端面間に挟まれる
ことを特徴とするコネクタ構造。
【請求項2】
前記一対のツイスト線の何れか一方に設けられたハウジングには、前記ツイスト線の他方に設けたハウジングが嵌合される筒部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項3】
複数の電線が撚り合わされたツイスト線において、
前記ツイスト線の端面を露出するように、前記ツイスト線を構成する複数の電線の端末が撚り合わされた状態のまま前記ツイスト線の端末を収容するハウジングと、
絶縁シート及び該絶縁シートの厚さ方向に貫通した複数の針状導体から構成されたインターコネクタと、を備え、
前記インターコネクタが、前記ハウジングから露出したツイスト線の端面に設けられている
ことを特徴とするツイスト線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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