説明

コネクタ構造

【課題】接続の信頼性の向上を図ることができるコネクタ構造を提供する。
【解決手段】フロアコネクタ10は、その嵌合口を車室内に露呈させることなくフロア30に収納されている。相手側コネクタ42と嵌合する相手側コネクタ用嵌合口14及びフロアコネクタ10と嵌合するフロアコネクタ用嵌合口15を有し、回動可能にフロア30に軸支された中継コネクタ11が、シート40のフロア30への組み付けに伴って回動して、フロアコネクタ用嵌合口15をフロアコネクタ10に嵌合させると共に、相手側コネクタ用嵌合口14を相手側コネクタ42との嵌合方向に向け、その後にシート40の相手側コネクタ42と嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロアに設けられたフロアコネクタと、当該フロアに着脱可能に組付けられるシートやコンソールボックス等の組付体に設けられた相手側コネクタと、の接続にかかるコネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に、例えば携帯型オーディオ機器などの家庭用の電気機器が持ち込まれて車室内でも使用されており、これらの電気機器は、コンソールボックスやシートの脇などに置かれることがある。そこで、コンソールボックスやシートにコンセントがあると、これらの電気機器への給電に便利である。
【0003】
ところで、例えばコンソールボックスは、必要に応じてフロントシートとリアシートとの間のウォークスルーを可能とするべく、車両のフロアに着脱可能に設置される傾向にある。また、シートについても、シートアレンジの自由度を高めるべく、車両のフロアに着脱可能に設置される傾向にある。
【0004】
着脱式のコンソールボックスやシートにコンセントを設ける場合に、その取り付けに伴ってコンソールボックスやシート内の電気系統がフロア側の電気系統に接続されるように構成される。このような接続構造の一例として、図7に示すものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
図7には、シート100がフロア101に着脱可能に設置される構成が示されている。シート100の前端下部にシートコネクタ102が設けられており、これに対応するフロア上の位置に設けられたフロアコネクタ103は、シートコネクタ102との嵌合口を略上方に向けている。シート100の着脱に伴って、両コネクタ102,103が接続・分離されるようになっている。
【0006】
【特許文献1】特表2004−524206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1では、フロアコネクタ103及びその嵌合口は車室内に露呈しており、接続には便利であるが、フロアコネクタ103の破損やフロアコネクタ103への異物の侵入及び浸水などの虞があり、接続の信頼性が低下する。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接続の信頼性の向上を図ることができるコネクタ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、本発明に係る下記(1)〜(3)のコネクタ構造により達成される。
【0010】
(1)車両のフロアに設けられたフロアコネクタと、当該フロアに着脱可能に組み付けられる組付体に設けられた相手側コネクタと、を備え、前記組付体の前記フロアへの組み付けに伴って、前記フロアコネクタと前記相手側コネクタとが自動的に接続されるコネクタ構造であって、前記フロアコネクタ及び前記相手側コネクタとそれぞれ嵌合して両コネクタを電気的に接続する中継コネクタをさらに備え、前記フロアコネクタが、その嵌合口を車室内に露呈させることなく前記フロアに収納されており、前記組付体の前記フロアへの組付けに伴って前記中継コネクタが変位され、それにより当該中継コネクタと前記フロアコネクタとが嵌合すると共に、当該中継コネクタと前記相手側コネクタとが嵌合するよう構成されており、前記フロアコネクタと前記中継コネクタとの嵌合に対し、前記相手側コネクタと前記中継コネクタとの嵌合のタイミングがずらされていることを特徴とするコネクタ構造。
(2)前記中継コネクタが回動可能に前記フロアに軸支されており、前記組付体の前記フロアへの組付けに伴って当該組付体又は前記相手側コネクタに係合して前記中継コネクタが回動され、それにより当該中継コネクタの前記フロアコネクタとの嵌合口が前記フロアコネクタに嵌合すると共に、当該中継コネクタの前記相手側コネクタとの嵌合口が前記相手側コネクタに向くことを特徴とする(1)に記載のコネクタ構造。
(3)前記中継コネクタが、前記組付体又は前記相手側コネクタとの係合以前に前記フロアコネクタ及び前記相手側コネクタとの両嵌合口を車室内に露呈させることなく前記フロアに収納されていることを特徴とする(2)に記載のコネクタ構造。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フロアコネクタと相手側コネクタとの間に中継コネクタを介在させることにより、フロアコネクタの配置の自由度を高めることができる。そこで、嵌合口を車室内に露呈させることなくフロアコネクタをフロアに収納することができる。フロアコネクタをフロアに収納することで、フロアコネクタを保護することができ、さらに、その嵌合口を車室内に露呈させないことで、フロアコネクタへの異物の侵入や浸水を防止することができる。そして、中継コネクタとフロアコネクタ及び相手側コネクタとの嵌合のタイミングを2段階にずらすことで、中継コネクタとフロアコネクタ及び相手側コネクタとの嵌合に要する力の低減を図ることができる。
【0012】
また、中継コネクタを回動可能とし、その回動によってフロアコネクタとの嵌合口をフロアコネクタに嵌合させると共に相手側コネクタとの嵌合口を相手側コネクタに向けるようにすれば、簡素な構造で、車室内に嵌合口を露呈させていないフロアコネクタに中継コネクタを嵌合させることができると共に、フロアコネクタと中継コネクタとの嵌合に対して相手側コネクタと中継コネクタとの嵌合のタイミングをずらすことができる。
【0013】
また、中継コネクタについても、フロアに収納された状態でフロアコネクタ及び相手側コネクタとの両嵌合口を車室内に露呈させず、組付体のフロアへの組み付けに伴い回動して相手側コネクタとの嵌合口を相手側コネクタに向けるように構成すれば、組付体がフロアから取り外されている際の中継コネクタへの異物の侵入や浸水を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0015】
図1は本発明のコネクタ構造の一実施形態の側面図であって組付体であるシートの組み付け前の状態を示す側面図、図2は図1のコネクタ構造のシート組み付け後の状態を示す側面図、図3〜図6は図1のコネクタ構造のシートの組み付けに伴う各部の動作を説明する要部側面図である。なお、以下の説明において、前、後、左、右は、車両の方向に準じて記載するものとし、図1中の左方が車両の前方である。
【0016】
図1、図2に示すように、本発明の一実施形態のコネクタ構造は、車両のフロア30に設けられたフロアコネクタ10と、フロア30に着脱可能に組み付けられるシート40に設けられた相手側コネクタ42と、を備え、シート40のフロア30への組み付けに伴って、フロアコネクタ10と相手側コネクタ42とが自動的に接続されるコネクタ構造である。
【0017】
フロアコネクタ10は、フロア30に直方体形状に凹設されている収納部31に収納されている。そして、フロアコネクタ10は、シート40の4本の足41のうち、後方側の2本がフロア30上の所定位置に載置されて、前方側の2本がフロア30上に離れて配置されてから、シート40が傾動されて前方側の2本の足41がフロア30に向けて下降されることで中継コネクタ11がフロア30上において回動され、中継コネクタ11を介して、シート40の相手側コネクタ42に電気的に接続される。
【0018】
図3に示すように、フロアコネクタ10は、収納部31内において、嵌合口12を相手側コネクタ42の嵌合方向と交差するようにフロア30と平行に配置している。フロアコネクタ10は、不図示のフロアワイヤハーネスに接続されている。
【0019】
相手側コネクタ42は、シート40の前部の下端部においてフロア30の収納部31上に位置する部位に取り付けられており、嵌合口43を下方に向けて配置されている。相手側コネクタ42は、不図示のシートワイヤハーネスに接続されている。
【0020】
シート40は、相手側コネクタ42の嵌合口43からさらに下方に向けて突出した押圧部44を備えている。尚、押圧部44は、相手側コネクタ42と一体に設けられても良い。
【0021】
中継コネクタ11は、フロア30の収納部31に架け渡されている枢軸13によってフロア30に回動可能に組み付けられている。中継コネクタ11は、一端部に相手側コネクタ用嵌合口14が形成されているとともに、他端部にフロアコネクタ用嵌合口15が形成されている。相手側コネクタ用嵌合口14内に収容されている不図示の端子金具は、フロアコネクタ用嵌合口15内に収容されている不図示の端子金具に電気的に接続されている。
【0022】
また、中継コネクタ11は、収納部31の開口を閉塞する天板16を有し、この天板16が設けられている面にU字の凹形状をなす凹形フック17を有している。凹形フック17の一端は、天板16より突出しており、その端部はテーパ状に成形されてガイド18が形成されている。
【0023】
次に、以上のように構成されたコネクタ構造におけるフロアコネクタ10と相手側コネクタ42との接続について、図3〜図6を参照して順次説明する。
【0024】
図3に示すシート取り付け前において、中継コネクタ11は、相手側コネクタ用嵌合口14を前方に向け、フロアコネクタ用嵌合口15を下方に向けて配置されている。このとき、天板16は、フロア30の収納部31を閉塞するように収納部31を覆っており、フロアコネクタ10の嵌合口12は車室内に露呈しておらず、異物の侵入や浸水が防止され、保護されている。また、中継コネクタ11の相手側コネクタ用嵌合口14及びフロアコネクタ用嵌合口15も、フロアコネクタ10と同様にして天板16で遮蔽された収納部31内に配置されているために、異物の侵入や浸水を防止されて保護されている。
【0025】
そして、シート40の4本の足41のうち後方側の2本がフロア30上の所定位置に載置されて、前方側の2本がフロア30上に離れて配置されてから、シート40が傾動されて前方側の2本の足41がフロア30に向けて下降されることで、押圧部44が中継コネクタ11のガイド18に上方から接近してくる。
【0026】
図4に示すように、シート40の傾動が進行することで、押圧部44はガイド18に衝突し、ガイド18に誘導されながら凹形フック17に係合する。そして、シート40の傾動がさらに進行することで、凹形フック17に係合した押圧部44により中継コネクタ11には下方への押圧力が作用し、中継コネクタ11は図4中の時計回転方向に回動を始める。
【0027】
図5に示すように、シート40の傾動がさらに進行することで、中継コネクタ11は、図5中の時計回転方向へさらに回動を続け、フロアコネクタ用嵌合口15が前方を向き、フロアコネクタ10の嵌合口12に嵌合する。このタイミングでは、中継コネクタ11の相手側コネクタ用嵌合口14は上方に向いて車室内に露呈しているが、シート40の相手側コネクタ42との嵌合はまだなされていない。
【0028】
図6に示すように、シート40の傾動がさらに進行することで、相手側コネクタ42の嵌合口43が中継コネクタ11の相手側コネクタ用嵌合口14に嵌合され、フロアコネクタ10と相手側コネクタ42とが、中継コネクタ11を介して電気的に接続されることとなる。このとき、中継コネクタ11の相手側コネクタ用嵌合口14及び相手側コネクタ42はフロア30の表面よりも高い位置に配置されている。
【0029】
シート40がフロア30から取り外される場合、押圧部44が凹形フック17に係合されている間に中継コネクタ11に図4中の反時計回転方向の戻り回動力を与えるために、図6、図5、図4、図3の順に示すように、中継コネクタ11は戻り回動され、天板16により収納部31を覆う。
【0030】
本実施形態によれば、フロアコネクタ10と相手側コネクタ42との間に中継コネクタ11を介在させることにより、フロアコネクタ10の配置の自由度を高めることができる。そこで、嵌合口12を車室内に露呈させることなくフロアコネクタ10をフロア30に収納することができる。フロアコネクタ10をフロア30に収納することにより、フロアコネクタ10を保護することができ、さらに、その嵌合口12を車室内に露呈させないことにより、フロアコネクタ10への異物の侵入や浸水を防止することができる。そして、中継コネクタ11とフロアコネクタ10及び相手側コネクタ42との嵌合のタイミングを2段階にずらすことで、中継コネクタ11とフロアコネクタ10及び相手側コネクタ42との嵌合に要する力の低減を図ることができる。
【0031】
また、中継コネクタ11を回動可能とし、その回動によってフロアコネクタ10との嵌合口15をフロアコネクタ10に嵌合させると共に相手側コネクタ42との嵌合口14を相手側コネクタ42に向けるように構成しており、簡素な構造で、車室内に嵌合口12を露呈させていないフロアコネクタ10に中継コネクタ11を嵌合させることができると共に、フロアコネクタ10と中継コネクタ11との嵌合に対して相手側コネクタ42と中継コネクタ11との嵌合のタイミングをずらすことができ、好ましい。
【0032】
また、中継コネクタ11についても、フロア30に収納された状態でフロアコネクタ10及び相手側コネクタ42との両嵌合口15,14を車室内に露呈させず、シート40のフロア30への組み付けに伴い回動して相手側コネクタ42との嵌合口14を相手側コネクタ42に向けるように構成しており、シート40がフロア30から取り外されている際の中継コネクタ11への異物の侵入や浸水を防止することができ、好ましい。
【0033】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0034】
例えば、中継コネクタに、常時、戻り回動方向に付勢するための付勢手段を組み付けておくことで、シートの取り付け前及び取り外し後に収納部を常に閉塞するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のコネクタ構造の一実施形態の側面図であって組付体であるシートの組み付け前の状態を示す側面図である。
【図2】図1のコネクタ構造のシート組み付け後の状態を示す側面図である。
【図3】図1のコネクタ構造のシートの組み付けに伴う各部の動作を説明する要部側面図である。
【図4】図1のコネクタ構造のシートの組み付けに伴う各部の動作を説明する要部側面図である。
【図5】図1のコネクタ構造のシートの組み付けに伴う各部の動作を説明する要部側面図である。
【図6】図1のコネクタ構造のシートの組み付けに伴う各部の動作を説明する要部側面図である。
【図7】従来のコネクタ構造の概略図である。
【符号の説明】
【0036】
10 フロアコネクタ
11 中継コネクタ
12 嵌合口
14 相手側コネクタ用嵌合口
15 フロアコネクタ用嵌合口
30 フロア
31 収納部
40 シート
42 相手側コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアに設けられたフロアコネクタと、当該フロアに着脱可能に組み付けられる組付体に設けられた相手側コネクタと、を備え、
前記組付体の前記フロアへの組み付けに伴って、前記フロアコネクタと前記相手側コネクタとが自動的に接続されるコネクタ構造であって、
前記フロアコネクタ及び前記相手側コネクタとそれぞれ嵌合して両コネクタを電気的に接続する中継コネクタをさらに備え、
前記フロアコネクタが、前記中継コネクタとの嵌合口を車室内に露呈させることなく前記フロアに収納されており、
前記組付体の前記フロアへの組付けに伴って前記中継コネクタが変位され、それにより当該中継コネクタと前記フロアコネクタとが嵌合すると共に、当該中継コネクタと前記相手側コネクタとが嵌合するよう構成されており、
前記フロアコネクタと前記中継コネクタとの嵌合に対し、前記相手側コネクタと前記中継コネクタとの嵌合のタイミングがずらされていることを特徴とするコネクタ構造。
【請求項2】
前記中継コネクタが回動可能に前記フロアに軸支されており、
前記組付体の前記フロアへの組付けに伴って当該組付体又は前記相手側コネクタに係合して前記中継コネクタが回動され、それにより当該中継コネクタの前記フロアコネクタとの嵌合口が前記フロアコネクタに嵌合すると共に、当該中継コネクタの前記相手側コネクタとの嵌合口が前記相手側コネクタに向くことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項3】
前記中継コネクタが、前記組付体又は前記相手側コネクタとの係合以前に前記フロアコネクタ及び前記相手側コネクタとの両嵌合口を車室内に露呈させることなく前記フロアに収納されていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−204910(P2008−204910A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42581(P2007−42581)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】