説明

コネクタ用弁体及びコネクタ

【課題】流体の注入を複数回行っても優れた湾曲性及びシール性を発揮するコネクタ用弁体、並びに、優れた注入性及びシール性を発揮するコネクタを提供すること。
【解決手段】栓部22を有する頭部21aと、頭部21aの一端面24との連設部形状の重心が頭部21aの軸線Ch上に位置しないように配置された第1脚部31a、及び第1脚部31aの下流側に配置され、第1脚部31a及び頭部21aと異なる軸線Csを持つ支持脚部33aを有する脚部32aとを備えてなるコネクタ用弁体5A、並びに接続口12〜14、これらを連通する流路15及び接続口12に隣接する弁体収納部16を有するコネクタ管4と、弁体収納部16に収納されたコネクタ用弁体5Aとを備え、栓部22が接続口12を密閉する第1姿勢と、軸線Ch方向に作用する圧力で脚部31aが湾曲して管体81の内腔81aと流路15とを連通させる第2姿勢とに移行可能なコネクタ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタ用弁体及びコネクタに関し、さらに詳しくは、流体の注入を複数回行っても優れた湾曲性及びシール性を発揮するコネクタ用弁体並びに優れた注入性及びシール性を発揮するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2つの管体同士を接続するコネクタには種々のものが知られているが、例えば、医療用コネクタが挙げられる。医療用コネクタは、例えば、患者に留置されたカテーテル等を介して患者に必要な薬液、体液、栄養剤等(この発明において流体と称する。)を投与する静脈内投与又は輸血等に用いられるコネクタ、1つの管体に接続された第1の流体とは異なる種類又は濃度の第2の流体を同様にして患者に静脈内投与する場合に用いられるコネクタ、具体的には混注管等が挙げられる。
【0003】
従来、混注管等の医療用コネクタに第2の流体を注入するのに注射針を備えた注射器等を用いていたが、医療従事者の針刺しによる感染を未然に回避するために、近年、このような注射器に代えて、注射針を備えていない注射器等の管体、例えば、ルアーロック付きシリンジ、ルアーロック付き輸液管等が医療用コネクタに接続する管体として用いられるようになっている。
【0004】
このような注射針を備えていない管体を接続可能又は使用可能な医療用コネクタは、接続口を常時液密にシールする一方、必要時に限って接続口を開いて流体を投与可能にするために、その内部にコネクタ用弁体を備えている。
【0005】
このような医療用コネクタは種々のタイプが知られており、その1つとして、例えば、接続口に付勢されたシール部を押圧することで接続口を開閉させる医療用コネクタが挙げられる。このような医療用コネクタは接続口をシールするシール部とこのシール部を接続口に付勢する付勢手段とを有する弁体を備えている。
【0006】
このようなコネクタ又は弁体として、例えば、特許文献1には「両端に輸液管が連結される主流路と、この主流路から分岐する支流路とを備える分岐管を有する医療用混注管であって、上記支流路の先端部に内栓室を形成し、この内栓室内に、上記支流路の先端開口部を閉塞するための栓部と、この栓部に一体に形成され、外部からの押圧力により開栓可能な程度に上記栓部を上記開口部側に付勢する付勢部材とを備えた内栓を配設し、上記押圧力によって上記付勢部材が縮小すると共に上記栓部が上記内栓室内部に押し込まれて開栓し、上記縮小した付勢部材の伸長力によって上記栓部が上記先端開口部側に移動して付勢されることにより閉栓するように構成すると共に、上記支流路の内栓室と主流路との間に存して、上記内栓室に向かって漸次小径となる縮径部と、上記主流路に向かって漸次大径となる拡径部と、上記縮径部及び拡径部を連絡する連絡部と、上記拡径部から連設され上記拡径部より大径の調整部とからなる弁室を形成し、上記弁室内に、基体部と、外周面が上記弁室の縮径部の周面と同一形状である矢尻部と、外周面が上記弁室の拡径部の周面と同一形状である矢羽部とからなり、上記矢尻部と上記矢羽部とが、上記弁室の縮径部と拡径部との間隔と等距離に離間するように基体部から連設され、上記開口部から上記主流路への流れを許容し、上記主流路から上記開口部への流れを遮断する逆止弁を設け、上記逆止弁が、上記主流路側からの液圧によって、上記逆止弁の矢尻部の外周面が上記弁密着して上記支流路を遮断するように構成されたことを特徴とする医療用混注管」が記載されている(請求項1)。この「医療用混注管」における「内栓2」の「付勢部材(樹脂バネ)22」は「可撓性を有する樹脂で形成されたバネであり、楕円板がつづら折り様に連なった形状のバネ部22a・・・で構成されている」(0023欄及び図2(B))。
【0007】
また、「液体又は気体の流れを調整するための流体流量調整装置」に関するものであって「混注管等のコネクタ」に関するものではないが、引用文献2には「弁本体部分432と複数の間隔を隔てた弾性脚部406と取り付けベース又は支持リング436とを有する弁要素430」が記載されている(0028欄、0029欄及び図14等)。そして、この弁要素430において「各脚部は一対の脚部分で形成され、脚部分は外向きの角度で延び、・・・図12でわかるように、・・・外方に曲がる又は潰れるように外方に向いた頂点で接合されている。このような脚部を4つ示しているが、脚部を2つ位又8つもしくはそれ以上使用してもよい」と記載されており(0025欄及び図12等)、弁要素430の脚部は「弁要素をその軸線に平行に押し下げる」ように構成されている。
【0008】
これらのコネクタ又は弁体は、特許文献1の図4及び図5並びに特許文献2の図12に示されるように、付勢手段又は脚部が伸縮することによってシール部をその軸線方向に沿って移動させるように構成されている。したがって、特許文献1及び特許文献2の医療用コネクタ又は弁体において、管体から流体を医療用コネクタ内に注入するには、流体を医療用コネクタ内に案内する流路をシール部の表面等に形成し、又は、シール部と管体との間に空隙が形成されるほどの高圧で管体から流体を押し出す必要があるから、シール部の表面等を殺菌しにくいうえ取扱性にも劣る場合がある。
【0009】
構造が容易でシール部の表面を殺菌しやすい別のタイプのコネクタ又は弁体として、例えば特許文献3の「バルブ要素10f」等のようにシール部を傾斜させて接続口を開閉させる医療用コネクタが提案されている。具体的には、特許文献3の「バルブ要素10f」において「プラグ92fはハウジング32fと同軸になっているが、シャフト96fは好ましくはハウジング32fの軸36fと同軸ではない軸147の周りに配置されている。このような構成は軸36fに負荷された力を軸線147に作用させない点で有利である。これによって軸96fは傾斜し又は曲がる」と概略説明されている(8欄第45行〜同欄第56行及び第10図)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4433141号公報
【特許文献2】特開平07−190207号公報
【特許文献3】米国特許第5782816号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような医療用コネクタは転用等による感染症の感染を防ぐため、通常第1の流体を投与後に使い捨てにされるが、第1の流体の投与が完了するまでに1つのコネクタを介して第2の流体を複数回注入し、又は複数種の流体を注入しなければならないこともある。したがって、コネクタに内蔵されるコネクタ用弁体には、接続口を液密にシールするシール性はもちろんのこと、流体の複数回注入においても流体の注入が容易となるように毎回同様の姿勢に容易に湾曲変形する湾曲性が求められる。
【0012】
ところが、特許文献3の「バルブ要素10f」のようにプラグ92fとシャフト96fとの軸線をずらしてこれらを配置するとシャフト96fは特定の方向に傾斜しやすくなるものの、「バルブ要素10f」は特許文献3の図2に示されるように通常伸びた状態にあるから、バルブ要素10fに管体からの圧力が作用するとまずバルブ要素10fが軸線方向に収縮し、次いで軸線方向の収縮が極限に達した後にバルブ要素10fが湾曲することになる。したがって、特許文献3の「バルブ要素10f」を湾曲させるには軸線方向の収縮の極限を超えるだけの圧力をバルブ要素10fに作用させる必要があり、この分だけバルブ要素10fを屈曲させにくくなる。
【0013】
この発明は、流体の注入を複数回行っても優れた湾曲性及びシール性を発揮するコネクタ用弁体、並びに、優れた注入性及びシール性を発揮するコネクタを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の発明者らは、複数回湾曲変形させた場合にもコネクタ用弁体が毎回同様にかつ容易に湾曲する特性(この発明において湾曲性と称する。)と湾曲した後の反発力又は復元力によるシール性とに関してコネクタ用弁体の形状及び構造に着目して鋭意検討したところ、接続する管体によって頭部に作用する圧力が脚部の軸線上に作用しないように頭部の一端面に配置される脚部の形状を屈曲形状にすると、高い湾曲性を発揮するうえ、湾曲する前のシール性はもちろん湾曲性もまた湾曲後のシール性も優れることを見出した。
【0015】
前記課題を解決するための第1の手段である、この発明に係るコネクタ用弁体は、管体を接続可能な少なくとも2つの接続口とこれらの接続口を連通する流路と第1の前記接続口の軸線に沿ってこの接続口に隣接するように配置された弁体収納部とを有するコネクタ管に収納され、流体の流通を制御するコネクタ用弁体であって、前記第1の接続口を密閉する栓部を有する頭部と、前記頭部の一端面との連設部形状の重心が前記頭部の軸線上に位置しないように前記一端面に連接された第1脚部、及び、前記第1脚部に対して前記軸線方向の下流側に配置されて前記弁体収納部に当接支持される、前記第1脚部及び前記頭部と異なる軸線を持つ支持脚部を有する1本の脚部とを備えてなることを特徴とする。
【0016】
このコネクタ用弁体における好適な一例は、
(1)脚部は、前記頭部の前記軸線に対して一方の側に偏在しており、
(2)脚部は、前記頭部の前記軸線に対する1回回転対称性を有するように配置されており、
(3)支持脚部は、前記頭部の前記軸線方向に平行で前記重心を通る仮想直線上に位置しない最下点を有しており、
(4)最下点は、前記頭部の前記軸線上に位置しており、
(5)脚部は、前記第1脚部と前記支持脚部との間に前記頭部と異なる軸線を持つ第2脚部を有しており、
(6)第1脚部は、その延在方向の下流側端部に前記脚部の湾曲を補助する湾曲補助部を有しており、
(7)支持脚部は、その延在方向の上流側端部に前記脚部の湾曲を補助する湾曲補助部を有しており、
(8)前記コネクタ用弁体は、弾性材料で作製されており、
(9)コネクタ用弁体は、前記弁体収納部の内面と共に流体を流通させる環状の流通路を前記コネクタ用弁体の外周に形成し、
(10)前記コネクタは、混注管である。
【0017】
前記課題を解決するための第2の手段である、この発明に係るコネクタは、管体を接続可能な少なくとも2つの接続口とこれらの接続口を連通する流路と第1の前記接続口の軸線に沿ってこの接続口に隣接するように配置された弁体収納部とを有するコネクタ管と、前記弁体収納部に当接支持された状態で前記弁体収納部に収納された、この発明に係るコネクタ用弁体とを備え、前記コネクタ用弁体は、前記栓部が前記第1の接続口を密閉する第1姿勢と、その軸線方向に作用する圧力で前記脚部が湾曲して前記管体の内腔と前記流路とを連通させる第2姿勢とに移行可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るコネクタ用弁体は、頭部の一端面との連設部形状の重心が頭部の軸線上に位置しないように一端面に連接された第1脚部、及び、第1脚部に対して軸線方向の下流側に配置された、第1脚部及び頭部と異なる軸線を持つ支持脚部を有する少なくとも1本の脚部を有しているから、複数回の圧力が作用しても、この圧力が脚部の軸線上に作用しないことによって脚部が容易に湾曲して頭部を傾倒させると共にこの圧力が解除されると反発力又は復元力で元の状態に復帰する。したがって、この発明に係るコネクタ用弁体は流体の注入を複数回行っても優れた湾曲性及びシール性を発揮する。
【0019】
また、この発明に係るコネクタは、コネクタ管の弁体収納部に湾曲性及びシール性に優れたこの発明に係るコネクタ用弁体を内蔵している。したがって、この発明に係るコネクタは優れた注入性及びシール性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、この発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略図であり、図1(a)はこの発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略側面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A断面を示す概略断面図である。
【図2】図2は、この発明に係るコネクタ用弁体の別の一例を示す概略側面図である。
【図3】図3は、この発明に係るコネクタの一例を示す概略断面図であり、図3(a)はこの発明に係るコネクタの一例における密閉状態を示す概略断面図であり、図3(b)はこの発明に係るコネクタの一例における開放状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明に係るコネクタ用弁体は、少なくとも2つの管体同士を接続するコネクタ、例えば、患者に留置されたカテーテルに連結されたチューブ等と輸液管等とを接続する医療用コネクタ、特に、前記チューブと、注射針を備えていない注射器等の管体、例えば、ルアーロック付きシリンジ、ルアーロック付き輸液管等(この発明において針無し管体と称する。)を接続する医療用コネクタに、好適に用いられる。以下に医療用コネクタを例に挙げてこの発明を説明する。
【0022】
この発明に係るコネクタについての詳細は後述するが、この発明に係るコネクタ用弁体の理解を容易にするため簡単に説明すると、この発明に係るコネクタの好適な一例である医療用コネクタ1は、図3(a)に示されるように、平面視略Y字状のコネクタ管4とコネクタ管4に内蔵されるコネクタ用弁体5Aとを備えている。このコネクタ管4は、例えば針無し管体81を接続可能な第1の接続口12、患者に留置されたカテーテル等に連結された、図示しない管体が接続される第2の接続口13、及び、患者に投与する流体を収納したバッグ等に連結された、図示しない管体が接続される第3の接続口14と、これらの接続口12〜14を連通させる内部空間としての流路15と、第1の接続口12の軸線に沿ってこの接続口12に隣接するように配置された弁体収納部16とを有している。このコネクタ管4においては、弁体収納部16は流路15の一部になっている。コネクタ用弁体5Aは弁体収納部16の支持部17に後述する支持脚部が当接支持された状態で弁体収納部16に収納される。
【0023】
この発明に係るコネクタ用弁体は、この発明に係るコネクタ、例えばコネクタ1におけるコネクタ管4に設けられた弁体収納部16の支持部17に支持脚部が当接支持された状態で弁体収納部16に収納される。弁体収納部16に収納されたこの発明に係るコネクタ用弁体は弁体収納部16の内面と共に流体を流通させる環状の流通路を自身の外周に形成する。したがって、この発明に係るコネクタ用弁体は弁体収納部16に収納可能で流通路を形成可能な形状及び寸法を有している。
【0024】
まず、この発明に係るコネクタ用弁体の概要を簡単に説明する。この発明に係るコネクタ用弁体は、針無し管体81によって頭部に作用する圧力すなわち荷重が脚部の軸線上に作用すなわち伝達しないように頭部の一端面に脚部が配置されていると共に脚部が屈曲形状に成形されている。この発明に係るコネクタ用弁体は、具体的には、コネクタ管4の1つの接続口12を密閉する栓部を有する頭部と、この頭部の軸線方向の一端面との連設部形状の重心が頭部の軸線上に位置しないように一端面に連接された第1脚部、及び、第1脚部に対して前記軸線方向の下流側に配置されて弁体収納部16に当接支持される、第1脚部及び頭部と異なる軸線を持つ支持脚部を有する1本の脚部とを備えている。換言すると、この発明に係るコネクタ用弁体は、コネクタ管4の1つの接続口12を密閉する栓部を有する頭部と、この頭部の一端面に配置され、頭部の軸線方向に作用する圧力によって湾曲して頭部を傾倒させる1本の脚部とを有し、この脚部は、前記一端面との連設部形状の重心が頭部の軸線上に位置しないように一端面に連接された第1脚部と、この第1脚部に対して前記軸線方向の下流側に配置されて前記弁体収納部に当接支持される、第1脚部及び頭部と異なる軸線を持つ支持脚部とを有している。この脚部は、この発明に係るコネクタ用弁体の軸線方向に作用する圧力によって例えば一半径方向に湾曲し、支持する頭部を傾倒させる。
【0025】
この発明に係るコネクタ用弁体において、脚部は、その第1脚部が頭部の一端面との連設部形状の重心が頭部の軸線上に位置しないように一端面に連接されており、側方から見たときに頭部の軸線に対して一方の側に偏在しているのが好ましい。すなわち、この発明に係るコネクタ用弁体において、脚部は、頭部の軸線を跨いで軸線の両側に存在しないように、例えばジグザグ状又は軸線を囲繞する螺旋状にならないように、配置されているのが好ましい。さらにいうと、脚部は、頭部の軸線に対して線対称となるように配置されてなく、頭部の軸線に対する1回回転対称性を有するように、すなわち、前記軸線に対するn回回転対称性(nは2以上の整数)を有しないように、配置されている。ここで、1回回転対称性は頭部の軸線のまわりに360°すなわち1回転させたときに初めてもとの回転前の形状すなわち脚部及び第1脚部の配置と一致することを意味し、「対称性」は幾何学的に正確な対称性に加えて、この発明の目的を逸脱しない範囲での実質的な対称性をも含む。脚部が頭部の軸線に対してこのように偏在していると、その形状による優れた湾曲性をさらに向上させることができる。
【0026】
後に詳述するように、また図3(b)に示されるように、この脚部は、この発明に係るコネクタ用弁体の軸線方向に作用する圧力によって、例えば前記軸線方向を中心とする1つの半径方向に湾曲する形状を有している。したがって、脚部は流体を複数回注入する場合に前記軸線方向に複数回の圧力が作用したとしても特定の方向すなわち前記一半径方向に容易に湾曲する。このように脚部が方向性を持って湾曲することによって湾曲したこの発明に係るコネクタ用弁体と流体を注入するために接続口12に圧入された略垂直な針無し管体81の先端面83との間を経て流体がコネクタ管4内に注入される。そして、針無し管体81をコネクタ管4から抜脱すると、前記軸線方向に作用する圧力が解除されて、この発明に係るコネクタ用弁体は自身の反発力又は復元力で元の状態に復帰して接続口12をシールする。この発明に係るコネクタ用弁体のこのような湾曲及び復元は針無し管体81の挿脱が複数回であっても同様に再現性よく繰り返されてこの発明に係るコネクタ用弁体は高い湾曲性及びシール性を発揮する。なお、後述するように、この発明に係るコネクタ用弁体は脚部によって自ら積極的に湾曲するように構成されているのが好ましく、他の部材又は要素と協働することなく、また頭部形状による頭部の偏倚変形によらずに、湾曲するのが好ましく、ある程度湾曲した後は他の部材例えば弁体収納部の内面に接触した状態でさらに湾曲してもよい。コネクタ1のデッドスペースを縮小すると弁体収納部の容積が必然的に小さくなるから弁体はまず自ら積極的に湾曲するが、ある程度湾曲した後は弁体収納部の内面に接触した状態でさらに湾曲することになる。この発明において、「湾曲」とはこの発明に係るコネクタ用弁体及び/又は脚部が圧力の作用する軸線方向に対して例えば1つの半径方向に弓状に曲がることを意味し、撓み曲がることを表す撓曲、座屈、湾屈、屈曲又は斜倒とも別言できる。
【0027】
この発明に係るコネクタ用弁体において、頭部の一端面に連設される脚部の数は、構造上及び取扱性の観点から、1本である。この発明に係るコネクタ用弁体において、脚部は、第1脚部と支持脚部とで構成されていてもよく、また、これらの間に、第1脚部、支持脚部及び頭部と異なる軸線を持つ第2脚部、所望により第3脚部を有していてもよい。また、この脚部は前記のように屈曲形状、例えば、L字形状、弓形形状等をしていればよく、その軸線に垂直な断面形状は特に限定されないが、湾曲性とシール性とを高い水準で両立できる点で円形、楕円形又は多角形であるのが好ましい。
【0028】
この発明に係るコネクタ用弁体において、支持脚部は、前記頭部の軸線方向に平行で前記重心を通る仮想直線上に位置しない最下点を有しているのが脚部の湾曲性をより一層高めることができる点で好ましい。この最下点は、頭部の軸線方向における支持脚部の最下流点とも称することができる。この最下点は、頭部の軸線上に位置していると、この発明に係るコネクタ用弁体の弁体収納部16内での収納状態すなわち支持状態がより一層安定してシール性がより一層向上する点で、さらに好ましい。
【0029】
この発明に係るコネクタ用弁体において、第1脚部の延在方向の下流側端部、及び/又は、支持脚部の延在方向の上流側端部に、すなわち、脚部を構成する第1脚部、支持脚部、第2脚部等が接続する接続部(屈曲部とも称する。)に脚部の湾曲を補助又は促進する湾曲補助部を有しているのが好ましい。この湾曲補助部は、脚部の湾曲を補助又は促進できる形状であればよく、例えば、軸線の垂直な断面の断面積が縮小した縮径部、外周面における湾曲方向に開口する溝又は凹部、中空構造とされた中空部、複数の環状体を積層してなる例えば蛇腹状又はコイル状の積層部等が挙げられる。
【0030】
この発明に係るコネクタ用弁体は、湾曲性及びシール性を効率よく発現できる点で、弾性材料で作製され、弾性を有しているのが好ましい。例えば、この発明に係るコネクタ用弁体は30〜70のJIS A硬度を発現させる弾性を有しているのが好ましい。このような硬度を発現させる弾性材料として、例えば、各種ゴム、各種エラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。この発明に係るコネクタ用弁体はこれら弾性部材を定法によって成形又は加工することで製造できる。
【0031】
この発明に係るコネクタ用弁体を、図面を参照して、具体的に説明する。この発明に係るコネクタ用弁体の一例であるコネクタ用弁体(以下、弁体と称することがある。)5Aは、前記範囲のJIS A硬度を発現するように弾性材料で形成され、図1(a)及び図1(b)に示されるように、コネクタ管、例えば図3に示される、管体を接続可能な3つの接続口12〜14とこれらの接続口12〜14を連通する流路15と第1の接続口12の軸線に沿ってこの接続口12に隣接するように配置された弁体収納部16とを有するコネクタ管4に収納され、コネクタ管4内を流通する流体の流通を制御、換言すると、第1の接続口12を針無し管体81の挿脱によって開閉する。
【0032】
この弁体5Aは、第1の接続口12を密閉する栓部22を有する頭部21aと、頭部21aの軸線Ch方向における栓部22と反対側の一端面24との連設部形状の重心Gが頭部21aの軸線Ch上に位置しないようにこの一端面24に連接された第1脚部32a、及び、この第1脚部32aに対して軸線Ch方向の下流側に連設配置された、第1脚部32a及び頭部21aと異なる軸線Csを持つ支持脚部33aを有する1本の脚部31aとを備えている。この脚部31aは、弁体収納部16の支持部17に、特に圧力が作用したときに、当接支持される。弁体5A、特に頭部21aと支持脚部33aとに、栓部22及び弁体5Aの軸線と一致する頭部21aの軸線Ch方向に作用する圧力がかかると、脚部31aは自身の軸線、具体的には第1脚部32aの軸線C1上に作用しないように伝達された圧力によって容易に湾曲して頭部21aを傾倒させる。
【0033】
頭部21aは、図1(a)に示されるように、コネクタ管4の第1の接続口12を液密にシールできる形状及び寸法を有していればよく、コネクタ1に収納されたときに第1の接続口12に露出する先端側に半径方向に張り出した栓部22を有している。この栓部22は第1の接続口12の内周面に密着するように、外径が内周面の内径よりも僅かに大きくなっており、シール部とも称される。この栓部22は、第1の接続口12に露出する表面すなわちその頂面23に流体を案内する溝又はスリット等の形成されていない平坦面になっている。このように頭部21aすなわち栓部22の頂面23が平坦面になっていると、第1の接続口12及び頂面23を清掃しやすく、バクテリア等の繁殖を抑制できる。弁体5Aにおいて、頂面23は弁体5Aの軸線Cに対して水平になっているがこの軸線Cに対して傾斜していてもよく、また、溝又はスリット等の形成されていない外側に膨出する湾曲面であってもよい。
【0034】
この頭部21aは栓部22を含めて、自身の軸線Ch方向に作用する圧力によって、この軸線Ch方向に圧縮されても軸線Ch方向に対して半径方向に湾曲しない形状になっている。具体的には、頭部21aは、周方向に延在する溝又は凹部(notchとも称する。)を有していない平坦な外周面を有する中実の円筒状になっている。頭部21aがこのような形状を有していると、弁体5Aの軸線Ch方向に作用する針無し管体81による圧力を脚部31aに軸線C1上以外にロスなく伝達することができ、脚部31aの特定の方向への湾曲がより一層速やかかつ容易になる。
【0035】
脚部31aは、図1(a)及び図1(b)に示されるように、頭部21aの一端面24に連接されて軸線Chに沿って延在する第1脚部32aを有している。この第1脚部32aは、図1(b)に明確に示されるように、脚部31aと同様に弁体5Aを側方から見たときに頭部21aの軸線Chに対して一方の側に偏在しており、具体的には、一端面24と連接する連接部である平面における略円形形状の重心Gが頭部21aの軸線Ch上に位置しないように、すなわち一端面24の重心と連接部の重心Gとが一致しないように、一端面24上に連接配置されている。このように脚部31aが頭部21aの軸線Chに対する1回回転対称性を有するように配置されていると、脚部31a特に連接部には頭部21aに作用する圧力が均一に作用しなくなるから脚部31aは重心Gから軸線Chに向かう一半径方向により一層容易に湾曲しやすくなる。第1脚部32aは、軸線C1に垂直な断面が略円形であって軸線Chに対して略平行に延在する中実体になっている。この脚部31aの軸線C1方向の長さ及び外径等は特に限定されず、弁体5Aを形成する弾性部材及び硬度、着目する特性例えば湾曲性又はシール性、用途等に応じて、決定される。具体的には、第1脚部32aは、一端面24の半径よりも小さな外径を有しており、その母線が軸線Ch上に位置している。
【0036】
支持脚部33aは、第1脚部32aの軸線C1方向の下流側端面に連接され、頭部21aの軸線Ch及び第1脚部32aの軸線C1と異なり、軸線C1から軸線Chに向かうように傾斜する軸線Csを有している。また、この支持脚部33aも頭部21aの軸線Chに対する1回回転対称性を有するように配置されている。したがって、第1脚部32a及び支持脚部33aで形成される脚部31aは第1脚部32aと支持脚部33aとの接続部で屈曲する略L字形状の屈曲形状になっており、軸線Ch方向における支持脚部33aの最下点Pは頭部21aの軸線Ch方向に平行で重心Gを通る仮想直線上すなわち軸線C1上に位置することはなく、この例においては頭部21aの軸線Ch上に位置している。支持脚部33aは、軸線Csに垂直な断面が略円形であって中実体になっている。この支持脚部33aの軸線Cs方向の長さ及び外径等は特に限定されず、弁体5Aを形成する弾性部材及び硬度、着目する特性例えば湾曲性又はシール性、用途等に応じて、決定される。具体的には、支持脚部33aは、第1脚部32aの外径と同じ外径を有しており、その先端が半球状になっている。
【0037】
このように第1脚部32aと支持脚部33aとで構成された脚部31aは、弁体収納部16の底部すなわち支持部17に当接支持され、中実円筒状の頭部21aを支持する。この脚部31aは頭部21aの軸線Chに対する1回回転対称性のみを有しており、n回回転対称性(nは2以上の整数)を有していない。このような頭部21a及び脚部31aを有する弁体5Aに、その軸線Ch方向の圧力が作用すると、この圧力は軸線C1上に位置する第1脚部32aの母線側に優先的又は重点的に作用するうえ、第1脚部32aと支持脚部33aとの接続部に集中する。したがって、脚部31aは、その接続部が大きく屈曲すると共に第1脚部32aも湾曲して脚部31aの中央近傍が軸線Chから遠ざかるように湾曲し、その結果、弁体5Aは弁体収納部16の内面に接することなく全体的に同様にかつ容易に湾曲する。なお、弁体5Aはこのように弁体収納部16の内面に接することなく湾曲するが、ある程度湾曲した後に弁体収納部16の内面に接し、この接触状態を保持したままさらに湾曲してもよい。
【0038】
この弁体5Aは、高い湾曲性を発揮するから、弁体5Aに過大な圧力を負荷させなくても弁体5Aを湾曲させて流体を注入することができ、過大な圧力が作用することによる弁体5Aの疲労又は損傷を回避できて、弁体5Aの耐久性も高くなる。また、この弁体5Aは、特許文献3の「弁要素10f」に比較して構造が簡潔であるから、湾曲部すなわち脚部31a近傍に流体が残りにくくなる。
【0039】
この発明に係るコネクタ用弁体の別の一例である弁体5Bは、図2(a)に示されるように、脚部31bが異なること以外は弁体5Aと基本的に同様である。すなわち、この弁体5Bは、頭部21aと脚部31bとを有している。弁体5Aと同様の構成についての説明は省略し、図2(a)中同じ符号を付与する。
【0040】
脚部31bは、図2(a)に示されるように、その形態が異なること以外は脚部31aと基本的に同様である。具体的には、脚部31bは、図2(a)に示されるように、一端面24に連接された第1脚部32bと、第1脚部32bの軸線C1方向の下流側端面に連接された第2脚部34bと、第2脚部34bの軸線C2方向の下流側端面に連接された支持脚部33bとを有し、軸線Chに対する1回回転対称性のみを持っている。第1脚部32bは延在方向すなわち軸線C1方向及びその長さが異なること以外は第1脚部32aと基本的に同様であり、支持脚部33bは軸線Cs方向の長さが異なること以外は支持脚部33aと基本的に同様である。第2脚部34bは、軸線C1、軸線Cs及び軸線Chと異なり、軸線Chと平行な軸線C2を持つ、軸線C2に垂直な断面形状が第1脚部32aと同一の外径を有する略円形の中実体になっている。第1脚部32bの軸線C1方向及びその長さ、第2脚部34bの軸線C2方向の長さ並びに支持脚部33bは軸線Cs方向の長さは特に限定されず、弁体5Bを形成する弾性部材及び硬度、着目する特性例えば湾曲性又はシール性、用途等に応じて、決定される。
【0041】
このように第1脚部32bと第2脚部34bと支持脚部33bとで構成された脚部31bは、弁体収納部16の底部すなわち支持部17に当接支持され、中実円筒状の頭部21aを支持する。この脚部31bは頭部21aの軸線Chに対する1回回転対称性のみを有しており、n回回転対称性(nは2以上の整数)を有していない。したがって、このような頭部21a及び脚部31bを有する弁体5Bにその軸線Ch方向の圧力が作用すると、この圧力は第1脚部32bの軸線Ch側に優先的又は重点的に作用するうえ、第1脚部32bと第2脚部34bとの接続部及び第2脚部34bと支持脚部33bとの接続部に集中する。したがって、脚部31bの第2脚部34b近傍が軸線Chから遠ざかるように湾曲し、弁体5Bは弁体収納部16の内面に接することなく全体的に同様にかつ容易に湾曲する。なお、弁体5Bがある程度湾曲した後に弁体収納部16の内面に接してもよく、高い耐久性をも発揮する点及び流体が残りにくくなる点も弁体5Aと同様である。
【0042】
この発明に係るコネクタ用弁体のまた別の一例である弁体5Cは、図2(b)に示されるように、脚部31cが異なること以外は弁体5Aと基本的に同様である。すなわち、この弁体5Cは、頭部21aと脚部31cとを有している。弁体5Aと同様の構成についての説明は省略し、図2(b)中同じ符号を付与する。
【0043】
脚部31bは、図2(a)に示されるように、その形態、すなわち、第1脚部と支持脚部との配置位置が異なること以外は脚部31aと基本的に同様である。具体的には、脚部31cは、図2(b)に示されるように、一端面24に連接された第1脚部32cと、第1脚部32cの軸線C1方向の下流側端面に連接された支持脚部33cとを有し、軸線Chに対する1回回転対称性のみを持っている。第1脚部32cは延在方向すなわち軸線C1方向及びその長さが異なること以外は第1脚部32aと基本的に同様であり、支持脚部33cは延在方向すなわち軸線Cs方向及びその長さが異なること以外は支持脚部33aと基本的に同様である。第1脚部32cの軸線C1方向及びその長さ並びに支持脚部33cの軸線Cs方向及びその長さは特に限定されず、弁体5Cを形成する弾性部材及び硬度、着目する特性例えば湾曲性又はシール性、用途等に応じて、決定される。
【0044】
このように第1脚部32cと支持脚部33cとで構成された脚部31cは、弁体収納部16の底部すなわち支持部17に当接支持され、中実円筒状の頭部21aを支持する。この脚部31cは頭部21aの軸線Chに対する1回回転対称性のみを有しており、n回回転対称性(nは2以上の整数)を有していない。したがって、このような頭部21a及び脚部31cを有する弁体5Cに、その軸線Ch方向の圧力が作用すると、この圧力は第1脚部32cの軸線Ch側に優先的又は重点的に作用するうえ、第1脚部32cと支持脚部33cとの接続部に集中する。したがって、脚部31cの中央近傍が軸線Chから遠ざかるように湾曲し、弁体5Cは弁体収納部16の内面に接することなく全体的に同様にかつ容易に湾曲する。なお、弁体5Cがある程度湾曲した後に弁体収納部16の内面に接してもよく、高い耐久性をも発揮する点及び流体が残りにくくなる点も弁体5Aと同様である。
【0045】
この発明に係るコネクタ用弁体のさらにまた別の一例である弁体5Dは、図2(c)に示されるように、脚部31dが異なること以外は弁体5Aと基本的に同様である。すなわち、この弁体5Dは、頭部21aと脚部31dとを有している。弁体5Aと同様の構成についての説明は省略し、図2(c)中同じ符号を付与する。
【0046】
脚部31dは、図2(c)に示されるように、その形態が異なること、すなわち湾曲補助部を有していること以外は脚部31aと基本的に同様である。具体的には、脚部31dは、図2(c)に示されるように、一端面24に連接された第1脚部32dと、第1脚部32dの軸線C1方向の下流側端面に湾曲補助部35dを介して連接された支持脚部33dと、第1脚部32d及び支持脚部33dの接続部に配置された湾曲補助部35dとを有し、軸線Chに対する1回回転対称性のみを持っている。第1脚部32cは下流側に向かって外径が徐々に小さくなる概略円錐台形状になっていること以外は第1脚部32aと基本的に同様であり、支持脚部33bは下流側に向かって外径が徐々に大きくなる形状になっていること以外は支持脚部33aと基本的に同様である。湾曲補助部35dは、軸線Chに対して傾斜した軸線を有する3つの環状体が積層された蛇腹状又はコイル状の積層部であって、軸線Chに沿って作用する圧力によって積層された環状体同士が積層方向にずれることによって湾曲補助部35dすなわち接続部がより一層容易に湾曲しやすくなる。なお、弁体5Dにおいて、湾曲補助部35dは2つの環状体の積層体であってもよく、また4以上の環状体の積層体であってもよい。
【0047】
このように第1脚部32dと湾曲補助部35dと支持脚部33dとで構成された脚部31dは、弁体収納部16の底部すなわち支持部17に当接支持され、中実円筒状の頭部21aを支持する。この脚部31dは頭部21aの軸線Chに対する1回回転対称性のみを有しており、n回回転対称性(nは2以上の整数)を有していない。したがって、このような頭部21a及び脚部31cを有する弁体5Dに、その軸線Ch方向の圧力が作用すると、この圧力は第1脚部32dの軸線Ch側に優先的又は重点的に作用するうえ、第1脚部32dと支持脚部33dとの接続部に配置された湾曲補助部35dに集中する。したがって、環状体がずれることによって湾曲補助部35d近傍の脚部31dが軸線Chから遠ざかるように湾曲し、弁体5Dは弁体収納部16の内面に接することなく全体的に同様にかつ容易に湾曲する。なお、弁体5Dがある程度湾曲した後に弁体収納部16の内面に接してもよく、高い耐久性をも発揮する点及び流体が残りにくくなる点も弁体5Aと同様である。
【0048】
この発明に係るコネクタ用弁体のまた別の一例である弁体5Eは、図2(d)に示されるように、頭部21bが異なること以外は弁体5Aと基本的に同様である。すなわち、この弁体5Eは、頭部21bと脚部31aとを有している。弁体5Aと同様の構成についての説明は省略し、図2(d)中同じ符号を付与する。
【0049】
頭部21bは、第1の接続口12を密閉する栓部として全体が機能するように形成されていること以外は頭部21aと基本的に同様である。具体的には、頭部21bは、その外周面が接続口12の内周面に密着するように接続口12の内径よりも僅かに大きな一定の外径を有する中実円筒状として構成されている。
【0050】
このような頭部21bと脚部31aとを有する弁体5Eは、弁体5Aと基本的に同様に、脚部31aの中央近傍が軸線Chから遠ざかるように湾曲するから、弁体収納部16の内面に接することなく全体的に同様にかつ容易に湾曲する。なお、弁体5Eがある程度湾曲した後に弁体収納部16の内面に接してもよく、高い耐久性をも発揮する点及び流体が残りにくくなる点も弁体5Aと同様である。
【0051】
この発明に係る弁体は前記した例に限定されることはなくこの発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記した各種の頭部及び脚部を適宜に組み合わせることができる。
【0052】
また、コネクタ用弁体5A〜5Eはいずれも、頂面23が平坦な表面又は湾曲面になっているが、この発明において、例えば流体を1回しか注入しない用途に用いられる場合等、頂面の汚染等が重要視されない場合には、半径方向に延在して流体を案内する溝又はスリット等を頂面に有していてもよい。
【0053】
この発明に係るコネクタは、少なくとも2つの管体同士を接続するコネクタ、例えば、前記医療用コネクタ、特に、前記チューブと針無し管体とを接続する医療用コネクタすなわち混注管等として好適に用いられる。そして、この発明に係るコネクタは、コネクタ管とこの発明に係るコネクタ用弁体とを備えており、この発明に係るコネクタ用弁体は、前記したように、栓部が第1の接続口を密閉する第1姿勢(密閉状態とも称する。)と、コネクタ用弁体の軸線方向に作用する圧力で脚部が湾曲して管体の内腔と流路とを連通させる第2姿勢(開放状態とも称する。)とに移行可能になっている。この発明に係るコネクタ用弁体が第1姿勢にあるとその頭部又は栓部の周側面が第1の接続口の内面に密接してこの接続口を液密にシールする。一方、この発明に係るコネクタ用弁体が前記のように湾曲すると、第1姿勢から第2姿勢に移行して、その頭部の頂面が傾斜して管体の内腔とコネクタ管の流路とが弁体収納部又は第1の接続口内で連通して管体の内腔からコネクタ管内に流体が供給される。流体の供給が終了した後に管体を第1の接続口から抜脱すなわち退避させると、この発明に係るコネクタ用弁体にかかっていた圧力が解除されて自身の反発力又は復元力で元の状態に復帰して、すなわち第2姿勢から第1姿勢に移行して、第1の接続口を液密にシールする。このようにしてこの発明に係るコネクタは優れた注入性及びシール性を発揮する。
【0054】
この発明に係るコネクタの一例であるコネクタ1は、図3(a)に示されるように、針無し管体81を接続可能な第1の接続口12、患者に留置されたカテーテル等に連結された、図示しない管体が接続される第2の接続口13、及び、患者に投与する流体を収納したバッグ等に連結された、図示しない管体が接続される第3の接続口14、これらの接続口12〜14を連通させる流路15、並びに、第1の接続口12の軸線に沿ってこの接続口12に隣接するように配置された弁体収納部16を有するコネクタ管4と、コネクタ管4の弁体収納部16又は流路15内に内蔵されるコネクタ用弁体5Aとを備えている。
【0055】
このようなコネクタ管4は弁体5Aを内蔵できる限り従来公知のコネクタ管を限定されることなく用いることができ、例えば、図3に示されるように平面視略Y字状のコネクタ管4、平面視略T字状のコネクタ管、平面視略十字状のコネクタ管等が挙げられる。コネクタ管4は、その軸線方向の一端側に針無し管体81が接続される第1の接続口12が配置され、他端側にカテーテル等に連結された管体が接続される第2の接続口13が配置され、前記軸線方向に交差する方向に突出し、流体を収納したバッグ等に連結された管体が接続される第3の接続口14が配置されている。そして、第1の接続口12と第2の接続口13との間に軸線方向に沿って弁体5Aを収納可能な弁体収納部16が配置されており、弁体収納部16がもっとも大径の中空構造になっており、第1の接続口12が弁体収納部16よりも小さな径の管体構造になっており、第2の接続口13及び第3の接続口14がもっとも小径の管体構造になっている。コネクタ管4の各接続口12〜14には必要に応じて、後述する針無し管体と接続可能な構造又は接続を一時的に保持可能な構造、例えば、ルアーロックネジ等が形成されている。
【0056】
コネクタ管4の弁体収納部16は、第2の接続部13側が先細の尖形部を有する中空の円筒形になっており、尖形部の内面に互いに間隔をあけて放射状に延在する複数の突条からなる支持部17が配置されている。この支持部17は弁体5Aの脚部31aを構成する支持脚部33aが載置されて弁体5Aを支持すると共に支持脚部33aとの間に形成される間隙から流体を第2の接続口13に流通させる。
【0057】
コネクタ1に接続される針無し管体81は、内腔81aすなわち流体を流通させる流路を内部に有していれば特に限定されず、前記した各種の管体が挙げられる。図3(a)に示されるように、この管体の先端部82は第1の接続口12に接続可能な形状になっており、通常、第1の接続口12の内径よりも僅かに小さな外径を有する小径環状構造になっている。この先端部82の外周面には第1の接続口12に所望により形成されたルアーロックに螺合するルアー溝を有していてもよい。
【0058】
コネクタ管4及び針無し管体81は通常剛性のある材料、例えば、各種樹脂、各種ガラス、各種セラミックス、各種金属で形成される。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系樹脂、又はこれら樹脂を1種以上含むブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。
【0059】
コネクタ1は、図3(a)に示されるように、針無し管体81が第1の接続口12に接続されていないとき、すなわち密閉状態にあるときは、弁体収納部16に収納された弁体5Aはその軸線C方向に伸びてその軸線方向にわずかに圧縮された第1姿勢をとっており、頭部21aすなわち栓部22の周側面全体が第1の接続口12の内面に密接して栓部22が第1の接続口12を液密に密閉すなわちシールしている。弁体5Aはこのように第1の接続口12を密閉しているから第3の接続口13を通過した患者の血液又は第2の接続口12から注入された流体等が第1の接続口12から流出することがなく、この弁対5Aは逆止弁、止血弁等としても機能する。栓部22が第1の接続口12をシールしているとき頭部21aの平坦な頂面23は第1の接続口12から露出しているから容易に清掃することができる。また、弁体収納部16に収納された弁体5Aは弁体収納部16の内面と共に流体を流通させる環状の流通路を自身の外周に形成する。したがって、弁体収納部16の内径は弁体5A、特に脚部31aの外径よりも大きな寸法に設定されている。このとき弁体収納部16の内径は、弁体5Aが第2姿勢となっても接触しないように設定されてもよく、また弁体5Aがある程度湾曲したとき又は例えば図3(b)に示されるように第2姿勢となったときに接するように設定されていてもよい。このコネクタ管4において弁体収納部16の内径は弁体5Aが第2姿勢となったときに接するように設定されている。
【0060】
コネクタ1を介して患者に流体を供給するには、図3(b)に示されるように、管体81の先端部82を弁体5Aの弾発力に反して第1の接続口12に圧入する。そうすると、弁体5Aは特定の方向に湾曲する脚部31aを有しているから、第1の接続口12に接続された針無し管体81による弁体5Aの軸線C方向に作用した押圧力によって脚部31aの中央近傍が軸線Chから遠ざかるように湾曲し、それに伴って弁体5A自体も同様にかつ容易に湾曲して、第1の接続口12をシールしていた頭部21が傾斜するように弁体収納部16内に埋没されて、脚部31aが弁体収納部16の内面に接触する。一方、軸線Cに沿って第1の接続口12に圧入された針無し管体81の先端面83は軸線Chに対して垂直になっている。このように湾曲した弁体5Aは、頭部21aの傾斜と共にその頂面23も軸線Chに対して傾斜し、先端面83は軸線Chに対して垂直になっているから、頂面23と先端面83との間に空間84が形成され、流体はこの空間84を経て針無し管体81からコネクタ管4に注入される。このように管体81の先端部82を第1の接続口12に圧入すると針無し管体81の内腔81aと流路15とが連通した、コネクタ1すなわち第1の接続口12が開放された第2姿勢になる。そして、注入された流体は弁体5Aの外周に形成された環状の流通路を流通して第2の接続口13に流入する。
【0061】
このようにして所望の流体を注入した後に針無し管体81を第1の接続口12から抜脱すると、針無し管体81により負荷された押圧力が解除されて、弁体5Aは自身の反発力又は復元力で第1姿勢に復帰して、栓体22の外周面が第1の接続口12を液密にシールする。このように弁体5Aを備えたコネクタ1は、たとえ流体を複数回注入する場合であっても、弁体5Aが作用する圧力によって特定の一方向に容易に湾曲すると共に圧力が解除されると第1姿勢に復帰するから、弁体5Aの湾曲及び復元すなわち第1姿勢と第2姿勢との移行は毎回同様に再現性よく繰り返される。したがって、コネクタ1は湾曲性及びシール性に優れる。
【0062】
コネクタ1は、高い湾曲性を発揮する弁体5Aを備えているから、過大な圧力が作用することによる弁体5Aの疲労又は損傷を回避でき、高い耐久性を発揮する。また、この弁体5Aは構造が簡潔であるから、コネクタ1はその内部に流体が残りにくくなる。
【0063】
なお、弁体5Aを備えたコネクタ1についてその構造及び作用を説明したが、弁体5Aに代えて弁体5B〜5Eを備えたコネクタであっても同様に機能する。
【0064】
この発明に係るコネクタは前記した例に限定されることはなく、この発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 コネクタ
4 コネクタ管
5A〜5 コネクタ用弁体(弁体)
12 第1の接続口
13 第2の接続口
14 第3の接続口
15 流路
16 弁体収納部
17 支持部
21a、21b 頭部
22 栓部
23 頂面
24 一端面
31a〜31d 脚部
32a〜32d 第1脚部
33a〜33d 支持脚部
34b 第2脚部
35d 湾曲補助部
81 針無し管体
81a 内腔
82 先端部
83 先端面
84 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体を接続可能な少なくとも2つの接続口とこれらの接続口を連通する流路と第1の前記接続口の軸線に沿ってこの接続口に隣接するように配置された弁体収納部とを有するコネクタ管に収納され、流体の流通を制御するコネクタ用弁体であって、
前記第1の接続口を密閉する栓部を有する頭部と、
前記頭部の一端面との連設部形状の重心が前記頭部の軸線上に位置しないように前記一端面に連接された第1脚部、及び、前記第1脚部に対して前記軸線方向の下流側に配置されて前記弁体収納部に当接支持される、前記第1脚部及び前記頭部と異なる軸線を持つ支持脚部を有する1本の脚部と
を備えてなるコネクタ用弁体。
【請求項2】
前記脚部は、前記頭部の前記軸線に対して一方の側に偏在している請求項1に記載のコネクタ用弁体。
【請求項3】
前記脚部は、前記頭部の前記軸線に対する1回回転対称性を有するように配置されている請求項1又は2に記載のコネクタ用弁体。
【請求項4】
前記支持脚部は、前記頭部の前記軸線方向に平行で前記重心を通る仮想直線上に位置しない最下点を有している請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項5】
前記最下点は、前記頭部の前記軸線上に位置している請求項4に記載のコネクタ用弁体。
【請求項6】
前記脚部は、前記第1脚部と前記支持脚部との間に前記頭部と異なる軸線を持つ第2脚部を有している請求項1〜5のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項7】
前記第1脚部は、その延在方向の下流側端部に前記脚部の湾曲を補助する湾曲補助部を有している請求項1〜6のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項8】
前記支持脚部は、その延在方向の上流側端部に前記脚部の湾曲を補助する湾曲補助部を有している請求項1〜7のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項9】
前記湾曲補助部は、複数の環状体を積層してなる請求項7又は8に記載のコネクタ用弁体。
【請求項10】
前記脚部は、その軸線に垂直な断面形状が円形、楕円形又は多角形である請求項1〜9のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項11】
前記脚部は、前記頭部の軸線方向に作用する圧力によって湾曲して前記頭部を傾倒させる請求項1〜10のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項12】
前記頭部は、前記第1の接続口に露出する先端側に半径方向に張り出した栓部を有している請求項1〜11のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項13】
前記栓部は、前記第1の接続口に露出する頂面が平坦な表面、又は、外側に膨出する湾曲面である請求項1〜12のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項14】
前記頭部は、その軸線方向に作用する圧力によって一半径方向に湾曲しない形状を有している請求項1〜13のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項15】
前記形状は、周方向に延在する溝又は凹部を有していない平坦な外周面を有する形状である請求項14に記載のコネクタ用弁体。
【請求項16】
前記コネクタ用弁体は、弾性材料で作製されている請求項1〜15のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項17】
前記コネクタ用弁体は、前記弁体収納部の内面と共に流体を流通させる環状の流通路を前記コネクタ用弁体の外周に形成する請求項1〜16のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項18】
前記コネクタは、混注管である請求項1〜17のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項19】
管体を接続可能な少なくとも2つの接続口とこれらの接続口を連通する流路と第1の前記接続口の軸線に沿ってこの接続口に隣接するように配置された弁体収納部とを有するコネクタ管と、
前記弁体収納部に当接支持された状態で前記弁体収納部に収納された、請求項1〜18のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体とを備え、
前記コネクタ用弁体は、前記栓部が前記第1の接続口を密閉する第1姿勢と、その軸線方向に作用する圧力で前記脚部が湾曲して前記管体の内腔と前記流路とを連通させる第2姿勢とに移行可能なコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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