説明

コネクタ用弁体及びコネクタ

【課題】密閉性、注入容易性及び衛生面を兼備するコネクタ1及びこのコネクタ1に用いられるコネクタ用弁体5を提供すること。
【解決手段】接続口12に密接する外周面32及び接続口12に露出する平坦な頂面36を有する筒状中空頭部21と、頂面36と反対側に配置され、3つの貫通孔52〜54を有する胴部23と、筒状中空頭部21と胴部23との間に配置された第2のシール部41を有する頭部支持部22とを備えたコネクタ用弁体7、並びに、3つの接続口12〜14及びこれら接続口12〜14を連通する内部空間15を有するコネクタ管5とコネクタ用弁体7とを備え、外周面32が接続口12の内周面を密閉し、第2シール部41が内周段差19に圧接する第1姿勢と、軸線C方向に作用する圧力で軸線C方向に収縮して管体81の内腔81aと内部空間15とを連通させる第2姿勢とに移行可能なコネクタ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタ用弁体及びコネクタに関し、さらに詳しくは、接続口を高い密閉性で密閉できるにもかかわらず流体の注入が容易でしかも接続口近傍の衛生面にも優れるコネクタ及びコネクタの密閉性、注入容易性及び衛生面の兼備に貢献するコネクタ用弁体に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2つの管体同士を接続するコネクタには種々のものが知られているが、例えば、医療用コネクタが挙げられる。医療用コネクタは、例えば、患者に留置されたカテーテル等を介して患者に必要な薬液、体液、栄養剤等(この発明において流体と称する。)を投与する静脈内投与又は輸血等に用いられるコネクタ、具体的には注入管、1つの管体に接続された第1の流体とは異なる種類又は濃度の第2の流体を同様にして患者に静脈内投与する場合に用いられるコネクタ、具体的には混注管等が挙げられる。
【0003】
従来、混注管等の医療用コネクタに第2の流体を注入するのに注射針を備えた注射器等を用いていたが、医療従事者の針刺しによる感染を未然に回避するために、近年、このような注射器に代えて、注射針を備えていない注射器等の管体、例えば、ルアーロック付きシリンジ、ルアーロック付き輸液管等が医療用コネクタに接続する管体として用いられるようになっている。
【0004】
このような注射針を備えていない管体を接続可能又は使用可能な医療用コネクタは、接続口を常時液密にシールする一方、必要時に限って接続口を開いて流体を投与可能にするために、その内部にコネクタ用弁体を備えている。
【0005】
このような医療用コネクタは種々のタイプが知られており、その1つとして、例えば、接続口を閉塞するシール部をその軸線方向に前後進させることで接続口を開閉させる医療用コネクタが挙げられる。このようなタイプの医療用コネクタとして、特許文献1の「コネクタ」及び特許文献2の「無針接続ポート」が挙げられる。
【0006】
特許文献1の「コネクタ」は「管体を接続する接続口と、流体通路とを有するコネクタ本体と、弁体と、前記弁体を、前記コネクタ本体に対し、該コネクタ本体の軸方向に移動可能に支持する支持部と、前記弁体を前記接続口側に向って付勢する付勢手段とを備え、前記弁体の移動により、前記接続口が開閉するよう構成されていることを特徴とする」(請求項5等)。この「コネクタ」において、「前記付勢手段は、螺旋状バネ、蛇腹状バネまたは階段状バネで構成されて」おり(請求項7等)、「前記弁体の、前記管体の先端面が接触する側に、凹部および/または凸部が形成されて」おり(請求項11等)、「弁体5は、略円柱状の基体部52と、この基体部52の軸方向の一端側(基端側)に設けられた被押圧部51とで構成されている」こと(0060欄、図1及び図2等)が記載されている。
【0007】
また、特許文献2の「無針接続ポート」は、概略、「インレット、アウトレット及び内部空間を有するバルブハウジングと、中実の上部、首部及び中間部を有する弾性ピストンとを備え、首部が内部空間の上肩に圧接し、かつ中間部が内部空間の下肩に圧接してインレットとアウトレットとの流通を遮断する無針接続ポート」(請求項1、図1等)である。この「無針接続ポート」において、「ピストン24の上部42はピストン24と医療器具の周端部との間に流体空間を画成する傾斜面40を有している」こと等が記載されている(0021欄、0026欄、図1〜図3等)。
【0008】
別のタイプのコネクタ又は弁体として、例えば、接続口を閉塞するシール部を軸線方向に前後進させると共に傾斜させて接続口を開閉させる医療用コネクタが挙げられる。このような医療用コネクタとして、例えば、特許文献3の「コネクタ」が挙げられる。
【0009】
特許文献3の「コネクタ」は、概略、「軸線に沿って延在するハウジングと、このハウジングに内蔵され、ハウジングの基端に配置された弁座を密閉する第1姿勢及び自身の軸線がハウジングの軸線からずれた第2姿勢に変形する弁要素と」を含んでいる(請求項1、第9欄第19行〜同第34行、図12等)。
【0010】
このような医療用コネクタにおいては、接続口を液密に密閉する密閉性を確保しつつ、バクテリア等の細菌の進入及び感染症の感染等を防ぐため接続口は清掃しやすく高度に衛生的であることが重要である。
【0011】
また、医療用コネクタは感染症の感染を防ぐため、第1の流体を投与後に使い捨てにされることもあるが、第1の流体の投与が完了するまでに1つのコネクタを介して第2の流体を複数回注入することも、また複数種の流体を注入しなければならないこともある。さらに、近年は感染症の感染対策も講じられており、1つのコネクタを用いて流体を例えば数日間にわたって多数回注入することもある。したがって、コネクタに内蔵されるコネクタ用弁体には、接続口を液密に密閉する密閉性はもちろんのこと、流体の複数回注入においても流体の注入が容易となるように毎回同様の姿勢に前後進又は変形する特性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−170188号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0105666号明細書
【特許文献3】米国特許第5782816号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1の「コネクタ」及び特許文献2の「無針接続ポート」ような、弁体がその軸線方向に伸縮するタイプの医療用コネクタにおいては、一般に、弁体はその伸縮一様性に優れるからコネクタ又は無針接続ポートへの流体の注入容易性が高いのに対して、頂面と管体の先端部との間に流体が流通する間隙を形成するために弁体の頂面に凸部又は凹部が設けられているから弁体の頂面すなわち医療用コネクタの接続口近傍を清掃しにくく、バクテリア等の繁殖を十分に抑制できず衛生面に問題がある。
【0014】
一方、特許文献3のような弁体がその軸線に対して傾斜するタイプの医療用コネクタにおいては、一般に、弁体の頂面が平坦であるので清掃性が優れるのに対して、例えば特許文献3の「バルブ要素90」は注射針を備えていない管体からの圧力の大きさや方向によってその変形姿勢又は変形具合が異なることもあってプラグ92が毎回同様に陥没変形せずに変形一様性及び復元一様性に劣りコネクタへの流体の注入容易性が低くなることがある。
【0015】
このように、従来の弁体及び医療用コネクタにおいては、密閉状態においては密閉性を保持していたとしても、コネクタへの流体の注入容易性と衛生面とを両立できないことが多く、その改善が望まれていた。
【0016】
したがって、この発明は、接続口を高い密閉性で密閉できるにもかかわらず流体の注入が容易でしかも接続口近傍の衛生面にも優れるコネクタ、及び、コネクタの密閉性、注入容易性及び衛生面の兼備に貢献するコネクタ用弁体を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明の発明者らは、コネクタ用弁体の構造及び変形状態等を詳細かつ具体的に検討したところ、頭部、頭部支持部及び胴部を有するコネクタ用弁体において、頭部支持部に頭部の密閉性を補強する第2シール部を配置すると共に、頭部を清掃しやすい筒状中空体にし、胴部に貫通孔を形成して自身の軸線方向に沿って伸縮するようにすると、コネクタ用弁体に作用する圧力によって頭部、頭部支持部及び胴部が一体的かつ有機的に機能して密閉性及び伸縮一様性を高い水準で両立できることを見出した。
【0018】
前記課題を解決するための手段であるこの発明に係るコネクタ用弁体は、管体を接続可能な少なくとも2つの接続口及びこれらの接続口を連通する内部空間を有するコネクタ管の前記内部空間に収納されるコネクタ用弁体であって、第1の前記接続口の内周面に密接する外周面、及び、前記第1の接続口に露出する平坦な又は外側に膨出する頂面を有する筒状中空頭部と、前記筒状中空頭部における前記頂面と反対側に配置され、前記筒状中空頭部の軸線に沿って延在する胴部と、前記筒状中空頭部と前記胴部との間に配置されると共に、前記筒状中空頭部における前記反対側に連接された錐台形の第2のシール部を有する頭部支持部とを備え、前記胴部は、前記軸線に対して垂直方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有し、前記貫通孔が前記軸線方向に圧縮されることで自身の軸線方向に沿って伸縮することを特徴とする。
【0019】
このコネクタ用弁体における好適な一例は、
(1)前記筒状中空頭部はその軸線に対して垂直方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有しており、
(2)前記筒状中空頭部はその軸線に対する2回回転対称性を有しており、
(3)前記筒状中空頭部は前記頂面を有する中実の盤状シール部と、前記盤状シール部における前記頂面と反対側にその周方向に間隔を空けて配置され、前記軸線に沿って延在する複数の頭部側壁と、前記盤状シール部及び前記頭部側壁で包囲される前記貫通孔としての空間とを有しており、
(4)前記筒状中空頭部は前記第1の接続口の外側に向かうテーパ状を成し、前記頂面を囲繞する周縁面を有しており、
(5)前記胴部は前記コネクタ用弁体の軸線に対する2回回転対称性を有しており、
(6)前記胴部は扇形の垂直断面を有する一対の柱状本体がそれらの中心稜線で互いに連結されており、
(7)前記貫通孔は前記胴部の延在方向に沿って中心が前記コネクタ用弁体の軸線上に存在するように複数が配置されており、
(8)前記複数の貫通孔のうち前記筒状中空頭部側に配置された貫通孔は他の貫通孔よりも寸法が小さく、
(9)前記胴部は、前記コネクタ用弁体の軸線に対して対称となるようにその外周面に凹部又は溝を有しており、
(10)前記凹部又は溝は前記延在方向に沿って配置された2つの前記貫通孔の間の少なくとも1箇所に配置されており、
(11)前記胴部は、一対の前記柱状本体の互いに対面する2組の側面同士を連結する補強部を、前記コネクタ用弁体の軸線に沿って配置された2つの前記貫通孔の間の少なくとも1箇所に有しており、
(12)前記コネクタ用弁体はその軸線に対する2回回転対称性を有しており、
(13)前記コネクタ用弁体は弾性材料で作製されており、
(14)前記コネクタ用弁体は前記内部空間の内面と共に流体を流通させる流通路を前記コネクタ用弁体の外周及び前記貫通孔に形成する。
【0020】
前記課題を解決するための第2の手段であるこの発明に係るコネクタは、管体を接続可能な少なくとも2つの接続口及びこれらの接続口を連通する内部空間を有するコネクタ管と、弁座に載置されて前記内部空間に収納された請求項1〜22のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体とを備え、前記コネクタ用弁体は、前記外周面が前記第1の接続口の内周面を密閉すると共に前記第2シール部が前記第1の接続口に隣接する内周段差に圧接する第1姿勢と、その軸線方向に作用する圧力で自身の軸線方向に収縮して前記管体の内腔と前記内部空間とを連通させる第2姿勢とに移行可能なことを特徴とする。
【0021】
このコネクタにおける好適な一例は、
(1)前記コネクタは2つの前記接続口を有する前記コネクタ管を備えた注入管であり、
(2)前記コネクタは少なくとも3つの前記接続口を有する前記コネクタ管を備えた混注管である。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係るコネクタ用弁体は、平坦な又は外側に膨出する頂面を有する筒状中空頭部と、筒状中空頭部の軸線に対して垂直方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有し、自身の軸線方向に伸縮可能な胴部と、筒状中空頭部と胴部との間に配置されると共に筒状中空頭部における頂面と反対側に連接された錐台形の第2シール部を有する頭部支持部とを備えているから、第1の接続口を高い密閉性で密閉できるにもかかわらず、頭部、胴部及び頭部支持部がそれぞれ一体的かつ有機的に機能することによって軸線方向の高い伸縮一様性を発揮する。
【0023】
また、この発明に係るコネクタは、この発明に係るコネクタ用弁体を備えているから、第1の接続口に露出する頂面及びこの接続口を容易に清掃できるうえ、第1の接続口への管体の挿脱すなわちこの発明に係るコネクタ用弁体への押圧及び押圧解除によってこの発明に係るコネクタ用弁体が軸線方向の高い伸縮一様性を発揮する。そして、この発明に係るコネクタは、管体が接続されていないときにはコネクタ管の第1の接続口がこの発明に係るコネクタ用弁体の外周面及び第2シール部で液密に密閉され、一方、管体が接続されているときにはこの発明に係るコネクタ用弁体の頂面が中空内部に陥没変形してその頂面と管体の先端面との間に管体内の流体をコネクタ内に流通させる間隙を形成する。
【0024】
したがって、この発明によれば、接続口を高い密閉性で密閉できるにもかかわらず流体の注入が容易でしかも接続口近傍の衛生面にも優れるコネクタ、及び、コネクタの密閉性、注入容易性及び衛生面の兼備に貢献するコネクタ用弁体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、この発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略図であり、図1(a)はこの発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略正面図であり、図1(b)はこの発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略側面図であり、図1(c)はこの発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略底面図である。
【図2】図2は、この発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略図であり、図2(a)はこの発明に係るコネクタ用弁体の一例を上方から見たときの概略斜視図であり、図2(b)はこの発明に係るコネクタ用弁体を下方から見たときの概略斜視図である。
【図3】図3は、この発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略図であり、図3(a)はこの発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略正面図であり、図3(b)は図3(a)におけるA−A断面を示す概略断面図であり、図3(c)〜(f)はそれぞれ図3(a)におけるC−C断面、D−D断面、E−E断面、及びF−F断面を示す概略断面図である。
【図4】図4は、この発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略図であり、図4(a)はこの発明に係るコネクタ用弁体の一例を示す概略側面図であり、図4(b)は図4(a)におけるB−B断面を示す概略断面図である。
【図5】図5は、この発明に係るコネクタ用弁体の変形例を示す概略図であり、図5(a)はこの発明に係るコネクタ用弁体の別の一例を示す概略正面図であり、図5(b)はこの発明に係るコネクタ用弁体のまた別の一例を示す概略正面図であり、図5(c)はこの発明に係るコネクタ用弁体のさらにまた別の一例を示す概略正面図であり、図5(d)はこの発明に係るコネクタ用弁体のまた別の一例を示す概略正面図である。
【図6】図6は、この発明に係るコネクタの一例を示す概略図であり、図6(a)はこの発明に係るコネクタの一例を示す概略右側面図であり、図6(b)はこの発明に係るコネクタの一例を示す概略正面図である。
【図7】図7は、この発明に係るコネクタの一例を示す概略断面図であり、図7(a)は図6(a)におけるB−B断面を示す概略断面図であり、図7(b)は図6(b)におけるA−A断面を示す概略断面図である。
【図8】図8は、この発明に係るコネクタの一例における開放状態を、この発明に係るコネクタ用弁体及び第1の接続口に挿入された針無し管体を抜粋して示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明に係るコネクタ用弁体は、少なくとも2つの管体同士を接続するコネクタ、例えば、患者に留置されたカテーテルに連結されたチューブ等と輸液管等とを接続する医療用コネクタすなわち注入管等、特に、前記チューブと、注射針を備えていない注射器等の管体、例えば、ルアーロック付きシリンジ、ルアーロック付き輸液管等(この発明において針無し管体と称する。)を接続する医療用コネクタすなわち混注管等に、好適に用いられる。以下に医療用コネクタを例に挙げてこの発明を説明する。
【0027】
この発明に係るコネクタについての詳細は後述するが、この発明に係るコネクタ用弁体の理解を容易にするため簡単に説明すると、この発明に係るコネクタの好適な一例であるコネクタ1は、図6及び図7に示されるように、平面視略Y字状のコネクタ管5とコネクタ管5に内蔵されるコネクタ用弁体7とを備えている。このコネクタ管5は、図示しない例えば針無し管体81を接続可能な第1の接続口12、患者に留置されたカテーテル等に連結された、図示しない管体が接続される第2の接続口13、及び、患者に投与する流体を収納したバッグ等に連結された、図示しない管体が接続される第3の接続口14と、これらの接続口12〜14を連通させる内部空間15とを有している。このコネクタ管5において、内部空間15は、図7に示されるように、これらの接続口12〜14を接続する流路17と、第1の接続口12の軸線Cに沿ってこの接続口12に隣接するように第1の接続口12と第2の接続口13との間に配置され、コネクタ用弁体7を収納する弁体収納部16とからなっている。したがって、この内部空間15は弁体収納部16及び流路17として機能する。
【0028】
この発明に係るコネクタ用弁体は弁体収納部16の弁座18に載置支持された状態で弁体収納部16に、すなわち内部空間15における第1の接続口12近傍に収納されて、コネクタ内を流通する流体又はコネクタ内に注入される流体の流通を制御する。弁体収納部16に収納されたこの発明に係るコネクタ用弁体は内部空間15の内面と共に流体を流通させる環状の流通路を自身の外周及び後述する貫通孔52〜54等に形成する。したがって、この発明に係るコネクタ用弁体は弁体収納部16に収納可能で流通路を形成可能な形状及び寸法を有している。
【0029】
この発明に係るコネクタ用弁体は第1の接続口12の内周面に密接する外周面及び第1の接続口12に露出する平坦な又は外側に膨出する頂面を有する筒状中空頭部と、この筒状中空頭部における頂面と反対側に配置され、筒状中空頭部の軸線に沿って延在する胴部と、筒状中空頭部と胴部との間に配置されると共に筒状中空頭部における反対側に連接された錐台形の第2のシール部を有する頭部支持部とを備え、この胴部は軸線に対して垂直方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有し、貫通孔が軸線方向に圧縮されることで自身の軸線方向に沿って伸縮することを特徴とする。このような特徴を有するこの発明に係るコネクタ用弁体は後述するようにコネクタの密閉性、注入容易性及び衛生面の兼備に貢献できる。
【0030】
この発明に係るコネクタ用弁体の一例を、図面を参照して、説明する。一例としてのコネクタ用弁体7は、図1〜図4並びに図6及び図7に示されるように、筒状中空頭部21の軸線Cに沿って、筒状中空頭部21と頭部支持部22と胴部23と脚部24とを備え、軸線Cに垂直な断面又はその輪郭が略円形になっている。この筒状中空頭部21は第1の接続口12の内周面に密接する外周面32及び第1の接続口12に露出する平坦な頂面36を有しており、胴部23は筒状中空頭部21における頂面36と反対側に配置され、筒状中空頭部21の軸線Cに沿って延在しており、頭部支持部22は筒状中空頭部21と胴部23との間に配置されると共に筒状中空頭部21における反対側に連接された錐台形の第2のシール部41を有しており、脚部24は胴部23の延在方向Cの端部にその周方向に間隔を空けて配置されると共にこの延在方向Cに伸びる2本の脚部である。このコネクタ用弁体7において、コネクタ用弁体7、筒状中空頭部21、頭部支持部22、胴部23、脚部24は共通する軸線Cを有しており、胴部23の延在方向はこの軸線Cに平行で一致している。
【0031】
筒状中空頭部21は、第1の接続口12の内周面に密接する外周面32と、第1の接続口12に露出する平坦な頂面36とを有する中空の筒状になっている。ここで、中空とは、中空空間が筒状中空頭部21の内部に閉塞状態に画成された内部中空構造であってもよく、例えばコネクタ用弁体7のように筒状中空頭部21を貫通する貫通孔又は空隙部が形成された切欠中空構造であってもよい。筒状中空頭部21がこのように中空に構成されていると、外周面32で第1の接続口12の内周面に密接すると共に、例えば図8に示されるようにその中空内部例えば貫通孔35に頂面36が陥没するように湾曲変形し、筒状中空頭部21全体が軸線Cに垂直方向に膨張して軸線C方向に圧縮変形する。筒状中空頭部21の外径は軸線C方向に一定でも徐々に減少又は増大してもよく、この例においては、第1の接続口12に密接するように頂面36に向かって徐々に増大する逆円錐台形状になっており、その外周面32は環状シール面とも称することができる。
【0032】
この筒状中空頭部21は、コネクタ用弁体7の軸線C方向における伸縮一様性を向上させてコネクタの注入容易性と密閉性とを高い水準で両立できる点で、その軸線Cに対する2回回転対称性を有しているのが好ましい。すなわち、筒状中空頭部21は、軸線Cのまわりに180°すなわち0.5回転させたときに初めて回転前の形状と一致するのが好ましい。さらにいうと、筒状中空頭部21は、軸線Cを含む平面に対して面対称になっている。ここで、「対称性」及び「対称」は幾何学的に正確な対称性及び対称に加えて、この発明の目的を逸脱しない範囲での実質的な対称性及び対称をも含む。
【0033】
コネクタ用弁体7において、2回回転対称性を有する筒状中空頭部21は、その軸線に対して垂直方向に貫通する1つの貫通孔35を有していることによって、中空になっている。より具体的には、筒状中空頭部21は、頂面36を有する中実の盤状シール部31と、盤状シール部31における頂面36と反対側にその周方向に間隔を空けて配置され、筒状中空頭部21の軸線Cに沿って延在する2つの頭部側壁33と、頭部側壁33が立設された底部34と、盤状シール部31、頭部側壁33及び底部34とで包囲される貫通孔35としての空間とを有している。筒状中空頭部21がこのように形成されていると、その軸線C方向に伸縮して盤状シール部31が後述する胴部23方向に、すなわち貫通孔35内に陥没変形しやすくなって流体の注入容易性が高くなる。この貫通孔35の形状は特に限定されないが、盤状シール部31が貫通孔35内に容易に陥没変形する点で、盤状シール部31の底面が平面になる形状、若しくは、貫通孔35の貫通方向に垂直な断面形状において盤状シール部31に接する線が直線になる形状、又は、軸線C近傍の盤状シール部31の厚さが薄くなる形状であるのが好ましい。このような形状としては、例えば、前記断面形状が、図1に示される矩形、逆三角形、逆五角形等、又は、1つの角が盤状シール部31に向かう例えば図5に示される凹四角形、凧型四角形、五角形等の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。このコネクタ用弁体7においては盤状シール部31の底面が平面となるように配置された矩形になっている。この貫通孔35は、その貫通方向の両側から貫通方向に垂直で軸線Cを含む平面、具体的には図4(a)に示されるB−B線に相当する平面に向かって徐々に断面が小さくなるのが、貫通孔35内に進入した流体が自重でその外部に容易に流出する点で、また金型成型におけるPL面(分割面)の設計容易性及び駒の離型性に優れる点で、好ましい。
【0034】
このときの盤状シール部31の厚さは、特に限定されないが、例えば0.5〜2mmであるのが速やかに陥没変形及び復元して密閉性及び注入容易性を確保できる。
【0035】
筒状中空頭部21において、盤状シール部31は、頂面36と、第1の接続口12の外側に向かうテーパ状を成し、頂面36を囲繞する周縁面37を有している。すなわち、盤状シール部31は扁平な円錐台形状を有しており、その周面が周縁面37で平坦な先端面が頂面36になっている。盤状シール部31がこのように頂面36と周縁面37とを有していると、第1の接続口12に挿脱される針無し管体81の先端部82の外径が頂面36の外径よりも大きくても小さくても、また盤状シール部31の陥没変形量が小さくても針無し管体81中の流体をコネクタ内に容易に注入できる。
【0036】
頭部支持部22は、筒状中空頭部21の頂面36とは反対側(この例において軸線C方向の下流側とも称する。)すなわち筒状中空頭部21の底部34に連接され、筒状中空頭部21と胴部23との間に配置されている。この頭部支持部22は、底部34に連接された錐台形の第2のシール部41を有し、筒状中空頭部21を支持する。したがって、この第2のシール部41は中実体であるのが好ましく、第1の支持部とも称することができる。この第2のシール部41は、軸線C長さが短い扁平な錐台形であり、その寸法はコネクタ管5に収納されたときに内部空間15における第1の接続部12側の内周段差19に第2のシール部41の外周面が密接又は圧接するように設定されている。
【0037】
この頭部支持部22は、具体的には、軸線C方向の下流側に沿って、第2のシール部41、逆錐台形の第2の支持部42、R形状の湾曲外周面を有する第3の支持部43及び扁平な円筒状の第4の支持部44が連接されている。これらの第2の支持部42、第3の支持部43及び第4の支持部44はいずれも中実になっており、互いの接続部は同一外径で第4の支持部44が最も大きな外径になっている。このように頭部支持部22が中実体の第2のシール部41を少なくとも有していると、筒状中空頭部21による第1の接続口12の密閉を補強できると共に、筒状中空頭部21に作用する圧力を胴部23に大きくロスすることなく伝達して筒状中空頭部21及び胴部23の高い伸縮一様性に貢献できる。
【0038】
胴部23は、頭部支持部22の第4の支持部44に連接され、筒状中空頭部21における頂面36と反対側、すなわち頭部支持部22の軸線C方向の下流側に配置されている。この胴部23は筒状中空頭部21の軸線Cに沿ってその下流側に延在している。この胴部23は、その具体的な形状及び寸法にかかわらず、筒状中空頭部21の軸線Cに対する2回回転対称性を有しているのが軸線C方向の高い伸縮一様性を達成できる点で好ましい。
【0039】
胴部23の基本骨格は、2回回転対称性を有し、具体的には、図1(c)、図3(d)〜(f)に明確に示されるように、延在方向Cの垂直断面が扇形である一対の柱状本体51a及び51bがそれらの中心稜線51cで互いに連結された形状を有している。この形状は図3(d)に示されるように垂直断面において互いに向き合うV字状の切欠き又は溝を有する円形ということもできる。このような基本骨格を有する胴部23は軸線C方向に対して湾曲も傾倒も実質的にすることなく軸線C方向に沿って収縮する。この胴部23の寸法は適宜に設定されるが、例えば、軸線C方向に収縮したときに内部空間15の内面に接触する外径を有しているのが好ましい。ここで、外径とは胴部23が一対の柱状本体51a及び51bを有している場合にはこれらに外接する外接円の直径をいう。胴部23がこのような外径を有していると、コネクタ用弁体7の収縮時の湾曲を効果的に防止して軸線C方向における高い伸縮一様性を達成できる。
【0040】
胴部23は、筒状中空頭部21の軸線Cに対して垂直方向に貫通する3つの貫通孔、すなわち軸線C方向の下流側に沿って配列された第1の貫通孔52、第2の貫通孔53及び第3の貫通孔54を有し、胴部23の2回回転対称性を保持している。これらの貫通孔52、53及び54の少なくとも1つが軸線C方向に圧縮されることで胴部23が自身の軸線C方向に沿って一様に伸縮する。これら3つの貫通孔52〜54は、胴部23の延在方向Cに沿って中心が軸線C上に存在し、かつそれらの軸線が互いに略平行になるように、配置されている。3つの貫通孔52〜54がこのように配置されていると軸線C方向における伸縮が速やかになるうえ伸縮一様性がより一層向上する。筒状中空頭部21側に配置された第1の貫通孔52は第2の貫通孔53及び第3の貫通孔54よりも小さな寸法を有し、第2の貫通孔53及び第3の貫通孔54は同一の寸法例えば直径を有している。このように第1の貫通孔52が他の貫通孔74及び75よりも小さくなっていると、寸法の大きな第2の貫通孔53及び第3の貫通孔54が軸線C方向に作用する圧力で優先的に圧縮され、筒状中空頭部21を軸線方向に対して湾曲も傾倒も実質的にさせることなく胴部23引いてはコネクタ用弁体7が軸線C方向に沿って高い一様性で伸縮する。
【0041】
貫通孔52〜54それぞれは、その貫通方向の両側から貫通方向に垂直で軸線Cを含む平面、具体的には図4(a)に示されるB−B線に相当する平面に向かって徐々に断面形状が小さくなるのが、貫通孔52〜54内に進入した流体が自重でその外部に容易に流出する点で、また金型成型におけるPL面(分割面)の設計容易性及び駒の離型性に優れる点で、好ましい。
【0042】
胴部23は、全体的な弾力を高めて軸線C方向により一層すみやかかつ一様に収縮及び延伸すなわち復元させる点で、胴部23の延在方向に対して対称となるように、すなわち前記2回回転対称となるように、その外周面に凹部又は溝56を有しているのが好ましい。この凹部又は溝56は胴部23の延在方向に沿って隣接配置された2つの貫通孔52〜54の間それぞれに合計4つ配置されている。凹部又は溝56がこのように配置されていると貫通孔52〜54が配置された胴部23の圧縮変形すなわち拡径変形を促進して胴部23の伸縮性を高めることができる。これらの凹部又は溝56は適宜の形状及び寸法に設定され、この例においては、すべてが同一の寸法を有しており、軸線C方向の圧力が均一に作用するように正面視略円弧状になっている。また、凹部又は溝56それぞれは、その貫通方向の両側から貫通方向に垂直で軸線Cを含む平面、具体的には図4(a)に示されるB−B線に相当する平面に向かって徐々に断面形状が小さくなるのが、凹部又は溝56に付着した流体が自重でその外部に容易に落下する点で、また金型成型におけるPL面(分割面)の設計容易性及び駒の離型性に優れる点で、好ましい。
【0043】
胴部23は、一対の柱状本体51a及び51bの互いに対面する2組の側面同士を連結する補強部55a、55b及び55cを、第1の貫通孔52と第2の貫通孔53との間、第2の貫通孔53と第3の貫通孔54との間及び第3の貫通孔54と脚部24との間に有している。この補強部55a、55b及び55cはいずれも柱状本体51a及び51bの半径よりも小さな半径を有する扇形になっている。このように胴部23における少なくとも貫通孔52〜54の間に補強部55a及び76bが配置形成されていると、柱状本体51a及び51bを強固に連結して胴部23を軸線C方向に対して湾曲も傾倒も実質的にすることなく軸線C方向に沿って収縮させることができる。特に、補強部55a、55b及び55cが柱状本体51a及び51bの側面に連結する扇形であるとこの効果に優れる。補強部55a〜55cのうち、第2の貫通孔53及び第3の貫通孔54の間に配置された補強部55bは第2の貫通孔53及び第3の貫通孔54の圧縮変形を阻害しなうように補強部55a及び55cよりも小さな半径を有している。
【0044】
脚部24は、胴部23の延在方向Cの端部にその周方向に間隔を空けて配置され、この延在方向に伸びている。このように脚部24が間隔を空けて配置されていると、コネクタ管5に収納されたときに脚部24同士の間に流路が形成されて流体が第2の接続口13に流通する。この例において、2つの脚部24は、一対の柱状本体51a及び51bと一体的に形成されており、一対の柱状本体51a及び51bの延在方向に向かって末広がりとなるように内面が面取りされている。
【0045】
筒状中空頭部21と頭部支持部22と胴部23と脚部24とを有するコネクタ用弁体7は、全体として、その軸線Cに対する2回回転対称性を有している。このように、コネクタ用弁体7が全体として2回回転対称性を有していると、軸線C方向に対して湾曲も傾倒も実質的にすることなく高い伸縮一様性で軸線C方向に沿って伸縮する。
【0046】
そして、コネクタ用弁体7において、密閉性、注入容易性及び衛生面に関与する筒状中空頭部21と注入容易性に関与する胴部23と密閉性及び注入容易性に関与する頭部支持部22とがそれぞれ一体的かつ有機的に機能して、第1の接続口21を高い密閉性で密閉できるコネクタ用弁体7は軸線C方向の高い伸縮一様性を発揮するから、コネクタ用弁体7が収納されたコネクタが高い密閉性、注入容易性及び衛生面を兼ね備えることに対して十分に貢献できる。特に周縁面37を有するコネクタ用弁体7は、規定寸法径よりも小さな先端部82を有する針無し管体81を第1の接続口12に挿入しても、流体を容易に注入できるうえ注入時に流体がコネクタ1から漏出することもなく、流体を所望のようにコネクタ1に注入できる。
【0047】
コネクタ用弁体7は、伸縮性及び筒状中空頭部21の陥没変形を効率よく発現できる点で、弾性材料で作製され、弾性を有しているのが好ましい。例えば、コネクタ用弁体7は30〜70のJIS A硬度を発現させる弾性を有しているのが好ましい。このような硬度を発現させる弾性材料として、例えば、各種ゴム、各種エラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。この発明に係るコネクタ用弁体はこれら弾性部材を定法によって成形又は加工することで製造できる。
【0048】
この発明に係るコネクタ用弁体の変形例を、図面を参照して、説明する。この発明に係るコネクタ用弁体の別の一例としてのコネクタ用弁体8Aは、図5(a)に示されるように、貫通孔39Aの形状が異なること以外はコネクタ用弁体7と基本的に同様であって、コネクタ用弁体7と基本的に同様の作用・機能を有し、基本的に同様の効果を奏する。すなわち、コネクタ用弁体8Aは軸線Cに対して垂直方向に貫通する1つの貫通孔39Aを有する筒状中空頭部26Aを備えている。この貫通孔39Aは、自身の軸線に垂直な断面形状が4つの角のうちの1つの鋭角が盤状シール部31Aに向かう凹四角形(矢印形ともいう。)であって軸線C近傍の盤状シール部31Aの厚さを薄くしている。より具体的には、筒状中空頭部26Aは、頂面36を有する中実の盤状シール部31Aと、盤状シール部31Aにおける頂面36と反対側にその周方向に間隔を空けて配置され、軸線Cに沿って延在する2つの頭部側壁33Aと、頭部側壁33Aが立設された底部34Aと、盤状シール部31A、頭部側壁33A及び底部34Aとで包囲される貫通孔39Aとしての空間とを有している。このような貫通孔39Aを有するコネクタ用弁体8Aは軸線Cに対する2回回転対称性を有している。
【0049】
この発明に係るコネクタ用弁体のまた別の一例としてのコネクタ用弁体8Bは、図5(b)に示されるように、貫通孔39Bの形状が異なること以外はコネクタ用弁体7と基本的に同様であって、コネクタ用弁体7と基本的に同様の作用・機能を有し、基本的に同様の効果を奏する。すなわち、コネクタ用弁体8Bは軸線Cに対して垂直方向に貫通する1つの貫通孔39Bを有する筒状中空頭部26Bを備えている。この貫通孔39Bは自身の軸線に垂直な断面形状が円形であって軸線C近傍の盤状シール部31Bの厚さを薄くしている。より具体的には、筒状中空頭部26Bは、頂面36を有する中実の盤状シール部31Bと、盤状シール部31Bにおける頂面36と反対側にその周方向に間隔を空けて配置され、軸線Cに沿って延在する2つの頭部側壁33Bと、頭部側壁33Bが立設された底部34Bと、盤状シール部31B、頭部側壁33B及び底部34Bとで包囲される貫通孔39Bとしての空間とを有している。このような貫通孔39Bを有するコネクタ用弁体8Bは軸線Cに対する2回回転対称性を有している。
【0050】
この発明に係るコネクタ用弁体のさらにまた別の一例としてのコネクタ用弁体8Cは、図5(c)に示されるように、貫通孔39Cの形状が異なること以外はコネクタ用弁体7と基本的に同様であって、コネクタ用弁体7と基本的に同様の作用・機能を有し、基本的に同様の効果を奏する。すなわち、コネクタ用弁体8Cは軸線Cに対して垂直方向に貫通する1つの貫通孔39Cを有する筒状中空頭部26Cを備えている。この貫通孔39Cは自身の軸線に垂直な断面形状が円弧状に形成された1つの角が盤状シール部31Cに向かう三角形であって軸線C近傍の盤状シール部31Cの厚さを薄くしている。より具体的には、筒状中空頭部26Cは、頂面36を有する中実の盤状シール部31Cと、盤状シール部31Cにおける頂面36と反対側にその周方向に間隔を空けて配置され、軸線Cに沿って延在する2つの頭部側壁33Cと、頭部側壁33Cが立設された底部34Cと、盤状シール部31C、頭部側壁33C及び底部34Cとで包囲される貫通孔39Cとしての空間とを有している。このような貫通孔39Cを有するコネクタ用弁体8Aは軸線Cに対する2回回転対称性を有している。
【0051】
この発明に係るコネクタ用弁体のまた別の一例としてのコネクタ用弁体8Dは、図5(d)に示されるように、貫通孔39Dの形状が異なること以外はコネクタ用弁体7と基本的に同様であって、コネクタ用弁体7と基本的に同様の作用・機能を有し、基本的に同様の効果を奏する。すなわち、コネクタ用弁体8Dは軸線Cに対して垂直方向に貫通する1つの貫通孔39Dを有する筒状中空頭部26Dを備えている。この貫通孔39Dは自身の軸線に垂直な断面形状が4つの角のうちの1つの鋭角が盤状シール部31Dに向かう菱形又は凧型四角形であって軸線C近傍の盤状シール部31Dの厚さを薄くしている。より具体的には、筒状中空頭部26Dは、頂面36を有する中実の盤状シール部31Dと、盤状シール部31Dにおける頂面36と反対側にその周方向に間隔を空けて配置され、軸線Cに沿って延在する2つの頭部側壁33Dと、頭部側壁33Dが立設された底部34Dと、盤状シール部31D、頭部側壁33D及び底部34Dとで包囲される貫通孔39Dとしての空間とを有している。このような貫通孔39Dを有するコネクタ用弁体8Dは軸線Cに対する2回回転対称性を有している。
【0052】
この発明に係るコネクタは、前記例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、コネクタ用弁体7、8A〜8Dにおいて筒状中空頭部21、26A〜26Dは高い伸縮一様性を達成するために1つの貫通孔35、39A〜39Dを有する筒状中空体になっているが、この発明において筒状中空頭部は貫通孔を有せず中空空間が筒状中空頭部の内部に閉塞状態に画成された内部中空構造を有する中空体であってもよい。また筒状中空頭部21、26A〜26Dは1つの貫通孔35、39A〜39Dを有しているが、この発明において筒状中空頭部は、好ましくはその軸線に対する2回回転対称性を有するように2以上の貫通孔を有していてもよい。さらに筒状中空頭部21、26A〜26Dは2つの頭部側壁33、33A〜33Dを有しているが、この発明において筒状中空頭部は、好ましくはその軸線に対する2回回転対称性を有するように、複数、好ましくは偶数(4以上)個の頭部側壁を有していてもよい。この頭部側壁33、33A〜33Dは底部34、34A〜34Dに立設されているが、この発明において筒状中空頭部が底部を備えず頭部側壁が頭部支持部に直接立設されていてもよい。筒状中空頭部21、26A〜26Dは平坦な頂面36と周縁面37とを有しているが、この発明において筒状中空頭部は第1の接続口から外側に膨出する湾曲面となる頂面を有していてもよく、周縁面を備えず、全体が頂面になっていてもよい。筒状中空頭部21、26A〜26Dにおいて頂面36は平坦な表面すなわち突起等の凸部及び凹条又は溝等の凹部のない平面を有していないが、この発明において頂面は第1の接続口の外側に向かって突出する突起又は凸条若しくは溝を有していてもよい。頂面がこのような突起等を有していると、流体の注入容易性が高くなるうえ、針無し管体81からコネクタ1に流体を注入した後に流体が頂面近傍に残存しにくくなる突起等による表面積の増加によって頂面に流体が付着しても頂面が乾燥し易く、衛生面に優れる。筒状中空頭部21、26A〜26Dにおいて、貫通孔35、39A〜39Dはその貫通方向の両側から貫通方向に垂直で軸線Cを含む平面に向かって徐々に断面が小さくなっているが、この発明において貫通孔はその貫通方向に同寸の断面になっていてもよい。
【0054】
コネクタ管5に収納されたコネクタ用弁体7、8A〜8Dの筒状中空頭部21、26A〜26Dは、ルアーロックが形成された所定外径の先端部82を有する針無し管体81が第1の接続口12に接続されたときに基本的には全体が軸線C方向に圧縮変形するようになっているが、ルアーロックのない所定外径よりも小さな外径の先端部82を有する針無し管体81が第1の接続口12にマニュアルで挿入されたときには軸線Cに対してある程度傾斜又は傾倒するように、概略菱形(平行四辺形を含む。)に変形することもある。また、筒状中空頭部21、26A〜26Dはルアーロックが形成された所定外径の先端部82を有する針無し管体81が第1の接続口12に接続されたときには通常軸線Cに対して傾斜又は傾倒することはないが、針無し管体81を過度に挿入すると軸線Cに対してある程度傾斜又は傾倒することもある。
【0055】
コネクタ用弁体7、8A〜8Dにおいて胴部23は垂直断面が扇形の一対の柱状本体51a及び51bを有しているが、この発明において胴部は好ましくはその軸線に対する2回回転対称性を有するように3以上、好ましくは偶数(4以上)の柱状本体を有していてもよく、また垂直断面が円形、楕円形の1つの柱状本体を有していてもよい。コネクタ用弁体7、8A〜8Dにおいて胴部23は3つの貫通孔52〜54を有しているが、この発明において胴部は好ましくはその軸線に対する2回回転対称性を有するように1つ若しくは2つ又は4以上の貫通孔を有していてもよい。また、これら3つの貫通孔52〜54は軸線C上に存在するように配置されているが、この発明において胴部は軸線に対して対称となるように複数列に配置された複数の貫通孔を有していてもよい。さらに、胴部23において貫通孔52〜54はその貫通方向の両側から貫通方向に垂直で軸線Cを含む平面に向かって徐々に断面が小さくなっているが、この発明において貫通孔はその貫通方向に同寸の断面になっていてもよい。
【0056】
コネクタ用弁体7、8A〜8Dにおいて胴部23は隣接配置された2つの貫通孔52〜54の間それぞれに凹部又は溝56を有しているが、この発明において胴部は好ましくはその軸線に対する2回回転対称性を有するように隣接配置された2つの貫通孔の間すべてではなく少なくとも1箇所に配置されていてもよい。また、4つの凹部又は溝56はすべて同一の寸法を有しているが、この発明において複数の凹部又は溝は異なる寸法を有していてもよい。
【0057】
コネクタ用弁体7、8A〜8Dにおいて胴部23は隣接配置された2つの貫通孔52〜54の間及び第3の貫通孔54と脚部24との間それぞれに補強部55a〜55cを有しているが、この発明において隣接配置された2つの貫通孔の間すべてではなく少なくとも1箇所に配置されていてもよく、脚部側の貫通孔と脚部との間に配置されていなくてもよい。補強部55a〜55cはいずれも扇形をなしているが、この発明において補強部は一対の柱状本体の側面同士を連結できればよく、例えば、棒状体、矩形等でもよい。また補強部55bは補強部55a及び55cよりも小さな半径を有しているが、この発明において貫通孔の圧縮変形を阻害しない範囲でそれぞれ同一又は異なる寸法例えば半径とすることができる。
【0058】
コネクタ用弁体7、8A〜8Dにおいて頭部支持部22は第2のシール部41、第2の支持部42、第3の支持部43及び第4の支持部44を有しているが、この発明において頭部支持部は少なくとも第2のシール部を有していればよく、第2の支持部、第3の支持部及び第4の支持部は所望により適宜に配置することができる。
【0059】
コネクタ用弁体7、8A〜8Dにおいて脚部24は一対の柱状本体51a及び51bと一体的に形成されているが、この発明において脚部は一対の柱状本体と別体に形成されていてもよく、また脚部自体が形成されていなくてもよい。また脚部24それぞれは内面が面取りされているが、この発明においては内面が面取りされずに一対の柱状本体と同様の垂直断面形状であってもよい。
【0060】
この発明に係るコネクタは、密閉性、注入容易性及び衛生面に貢献できるこの発明に係るコネクタ用弁体、例えばコネクタ用弁体7を備えているから、少なくとも2つの管体同士を接続するコネクタ、特に医療用コネクタとして好適に用いられる。
【0061】
この発明に係るコネクタは、管体を接続可能な少なくとも2つの接続口及びこれらの接続口を連通する内部空間を有するコネクタ管と、弁座に載置されて内部空間に収納されたこの発明に係るコネクタ用弁体とを備えている。この発明に係るコネクタにおいて、コネクタ管の接続口は例えば針無し管体が接続可能になっているのが好ましく、コネクタ管の内部空間は流体の流路と弁体を収納する弁体収納部とを兼ねている。
【0062】
このコネクタは、筒状中空頭部の外周面が第1の接続口の内周面を密閉すると共に頭部支持部の第2シール部が第1の接続口に隣接する内周段差に圧接する第1姿勢(密閉状態とも称する。)と、その軸線方向に作用する圧力で自身の軸線方向に収縮して管体の内腔と内部空間とを連通させる第2姿勢(開放状態とも称する。)とに移行可能になっている。このように弁体の弾性変形によって密閉状態と開放状態とに移行してコネクタが開閉する。すなわち、この発明に係るコネクタにおいて、接続口に針無し管体等が接続されていない状態ではこの発明に係るコネクタ用弁体が第1の接続口を密閉し、一方、接続口に針無し管体等が接続された状態ではこの発明に係るコネクタ用弁体が弾性変形して第1の接続口を開放する。
【0063】
この発明に係るコネクタのコネクタ管は、コネクタ用弁体を内蔵できる限り従来公知のコネクタ管を限定されることなく用いることができ、例えば、図6及び図7に示されるように平面視略Y字状のコネクタ管5、平面視略T字状のコネクタ管、平面視略十字状のコネクタ管等が挙げられる。
【0064】
この発明に係るコネクタにおいて、この発明に係るコネクタ用弁体は弁体収納部内に配置され、好ましくは軸線C方向にわずかに圧縮した状態で収納配置されている。このとき、この発明に係るコネクタ用弁体は、胴部に設けられた少なくとも1つの貫通孔が例えば図7(a)に示されるように第3の接続口14に向かっていてもよく、内部空間の内面に向かっていてもよい。
【0065】
この発明に係るコネクタに接続される針無し管体について説明する。この針無し管体は、内腔すなわち流体を収容する空間を内部に有していれば各種の管体が特に限定されず使用でき、その一例として、例えば、図8に示される針無し管体81が挙げられる。この針無し管体81の先端部82は第1の接続口12に接続可能な形状になっており、通常、第1の接続口12の内径よりも僅かに小さな外径を有する小径環状構造になっている。この先端部82の外周面には第1の接続口12に所望により形成されたルアーロックに螺合するルアー溝を有していてもよい。
【0066】
コネクタ管及び針無し管体は通常剛性のある材料、例えば、各種樹脂、各種ガラス、各種セラミックス、各種金属で形成される。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系樹脂、又はこれら樹脂を1種以上含むブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。
【0067】
この発明に係るコネクタの一例であるコネクタ1を説明する。このコネクタ1は、図6及び図7に示されるように、コネクタ管5とコネクタ用弁体7とを備えている。コネクタ用弁体7は、図7(a)に示されるように、3つの貫通孔52〜54すべてが第3の接続口14に向かうように弁体収納部16に収納配置されている。
【0068】
コネクタ管5は、前記したように、その軸線方向の一端側に配置された第1の接続口12と、他端側に配置された第2の接続口13と、前記軸線方向に交差する方向に突出するように配置された第3の接続口14と、これらの接続口12〜14を連通させる内部空間15とを有している。弁体収納部16は、第1の接続口12内部と第1の接続口12及び第2の接続口13を結ぶ大径の管状中空構造になっている。したがって、第1の接続口12の軸線C方向の下流側には管状中空構造との境界に内周段差19が形成されており、また弁体収納部16は第2の接続口13との境界にコネクタ用弁体7を載置可能な環状の段差部である弁座18が形成されている。このコネクタ管5は、図7に示されるように、第1の接続口12を有する蓋体5aと、第2の接続口13及び第3の接続口14を有する管本体5bとからなり、蓋体5aと管本体5bとは、例えば、接着剤、超音波溶着等で固着されている。
【0069】
コネクタ1において、コネクタ用弁体7は弁体収納部16内で軸線C方向にわずかに圧縮した状態で収納配置されており、図7に示されるように、針無し管体81が第1の接続口12に接続されていないとき、筒状中空頭部21の外周面32が第1の接続口12の内周面に密接すると共に頭部支持部22の第2シール部41が第1の接続口12に隣接する内周段差19に第1の接続口12に向かって圧接する第1姿勢にある。このようにして第1の接続口12は液密に密閉されているから、コネクタ1の外部と内部とが遮断されており、第3の接続口13を通過した患者の血液又は第2の接続口14から注入された流体等が第1の接続口12から流出することがなく、このコネクタ用弁体7は逆止弁、止血弁等としても機能する。また、この第1姿勢にあるとき、第1の接続口12から露出する頂面36は平坦で、さらに頂面36及び周縁面37は図6に示されるように第1の接続口12から外側に向かって突出しているから、頂面36及び周縁面37並びに第1の接続口12を容易に清掃することができる。
【0070】
コネクタ1を介して患者に流体を供給するには、例えば図8に示されるように、針無し管体81の先端部82をコネクタ用弁体7の弾力に反して第1の接続口12に圧入する。そうすると、コネクタ用弁体7は針無し管体81によって作用するコネクタ用弁体7の軸線C方向の押圧力で圧縮変形する。このとき、外周面32及び頂面36を有する筒状中空頭部21と3つの貫通孔52〜54を有する胴部23と第2のシール部41を有する頭部支持部22とがそれぞれ一体的かつ有機的に機能して、コネクタ用弁体7が軸線C方向に対して湾曲も傾倒も実質的にすることなく軸線C方向に沿って全体的に圧縮変形する。具体的には、頭部支持部22より伝達された押圧力によって胴部23が圧縮されると共に、針無し管体81の挿入圧力及び場合によっては針無し管体81からの流体の注入圧力によって盤状シール部31が貫通孔35内に陥没変形して筒状中空頭部21も軸線C方向に圧縮変形する。このとき、前記構成を有する胴部23の圧縮は、図8に示されるように第2の貫通孔53近傍の胴部23が優先的かつ大きく圧縮されることになるが、場合によっては貫通孔52〜54近傍の胴部23がそれぞれ同程度に圧縮されることもある。このように胴部23が圧縮され、かつ盤状シール部31が陥没変形すると、筒状中空頭部21が内部空間15内に後退すなわち進入して外周面32の密接状態と第2シール部41の圧接状態が共に解除される。一方、軸線Cに沿って第1の接続口12に圧入された針無し管体81の先端面83は軸線Cに対して垂直になっているから、先端面83と陥没変形した盤状シール部31との間に空間84が形成される。このようにして内腔81aと内部空間15とが連通して第1の接続口12が開放状態になる。そして、流体はこの空間84を経て針無し管体81からコネクタ管5に注入され、次いで流路17及び弁座18を経て第2の接続口14に流入する。この開放状態において胴部23はその外面が内部空間15の内面に接触している。
【0071】
このようにして所望の流体をコネクタ1に注入した後に針無し管体81を第1の接続口12から抜脱すなわち退避すると、針無し管体81により負荷された押圧力が解除されて、コネクタ用弁体7は自身の反発力又は復元力で復元して第1の接続口12を密閉する密閉状態に移行する。このとき又は針無し管体81を抜脱した後に、貫通孔35及び貫通孔52〜54内に進入した流体は自重でその外部に容易に流出し、また凹部又は溝56に付着した流体が自重でその外部に容易に落下し、コネクタ1、特にコネクタ用弁体7に多量の流体が残留することを回避できる。
【0072】
このようにコネクタ1は、針無し管体81が第1の接続口12に接続されていないときは密閉状態を保持し、針無し管体81が第1の接続口12に接続されているときは開放状態を保持すると共に、針無し管体81が第1の接続口12から抜脱された押圧力が解除されると密閉状態に移行する。具体的には、コネクタ1は、図6及び図7に示されるように、コネクタ用弁体7が弁体収納部16にわずかに圧縮した状態で収納された密閉状態にあるときは、外周面32による第1の接続口12の密接と共に第2シール部41による内周段差19の圧接とによって第1の接続口12を高い密閉性で密閉している。一方、針無し管体81を第1の接続口12に挿入した開放状態にあるときは、その状態が抜粋された図8に示されるように、コネクタ用弁体7の軸線C方向の圧縮変形による密閉状態の解消と盤状シール部31の貫通孔35内への陥没変形とによって第1の接続口12が開放される。そして、この針無し管体81を第1の接続口12から抜脱すると、軸線C方向に圧縮変形していたコネクタ用弁体7は特に胴部23及び筒状中空頭部21の反発力等で軸線C方向に延伸して初期状態すなわち密閉状態に復帰する。このときのコネクタ用弁体7の圧縮変形及び延伸は軸線C方向に対して湾曲も傾倒も実質的にすることなく軸線C方向に沿う。したがって、コネクタ1は第1の接続口12を高い密閉性で密閉できるにもかかわらず流体の注入が容易でしかも第1の接続口12近傍の衛生面にも優れる。また、コネクタ1に収納されたコネクタ用弁体7はコネクタ1の密閉性、注入容易性及び衛生面の兼備に大きく貢献する。
【0073】
この発明に係るコネクタとして、コネクタ管5とコネクタ用弁体7とを備えたコネクタ1を例に挙げて説明したが、コネクタ用弁体7に代えてこの発明に係るコネクタ用弁体の変形例であるコネクタ用弁体8A〜8Dを備えたコネクタであっても、コネクタ1と基本的に同様に機能し、同様の効果を奏する。
【0074】
この発明に係るコネクタは、前記一例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、コネクタ1は3つの接続口12〜14を有する混注管であるが、この発明においてコネクタは2つの接続口を有する注入管であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 コネクタ
5 コネクタ管
5a 蓋体
5b 管本体
7、8A〜8D コネクタ用弁体
12 第1の接続口
13 第2の接続口
14 第3の接続口
15 内部空間
16 弁体収納部
17 流路
18 弁座
19 内周段差(内周面)
21、26A〜26D 筒状中空頭部
22 頭部支持部
23 胴部
24 脚部
31、31A〜31D 盤状シール部
32 外周面(環状シール面)
33、33A〜33D 頭部側壁
34、34A〜34D 底部
35、39A〜39D 貫通孔
36 頂面
37 周縁面
41 第2のシール部(第2の支持部)
42 第2の支持部
43 第3の支持部
44 第4の支持部
51a、51b 柱状本体
51c 中心稜線
52 第1の貫通孔
53 第2の貫通孔
54 第3の貫通孔
55a、55b、55c 補強部
56 凹部又は溝
81 針無し管体
81a 内腔
82 先端部
83 先端面
84 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体を接続可能な少なくとも2つの接続口及びこれらの接続口を連通する内部空間を有するコネクタ管の前記内部空間に収納されるコネクタ用弁体であって、
第1の前記接続口の内周面に密接する外周面、及び、前記第1の接続口に露出する平坦な又は外側に膨出する頂面を有する筒状中空頭部と、
前記筒状中空頭部における前記頂面と反対側に配置され、前記筒状中空頭部の軸線に沿って延在する胴部と、
前記筒状中空頭部と前記胴部との間に配置されると共に、前記筒状中空頭部における前記反対側に連接された錐台形の第2のシール部を有する頭部支持部とを備え、
前記胴部は、前記軸線に対して垂直方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有し、前記貫通孔が前記軸線方向に圧縮されることで自身の軸線方向に沿って伸縮することを特徴とするコネクタ用弁体。
【請求項2】
前記筒状中空頭部は、その軸線に対して垂直方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有している請求項1に記載のコネクタ用弁体。
【請求項3】
前記筒状中空頭部は、その軸線に対する2回回転対称性を有している請求項1又は2に記載のコネクタ用弁体。
【請求項4】
前記筒状中空頭部は、前記頂面を有する中実の盤状シール部と、前記盤状シール部における前記頂面と反対側にその周方向に間隔を空けて配置され、前記軸線に沿って延在する複数の頭部側壁と、前記盤状シール部及び前記頭部側壁で包囲される前記貫通孔としての空間とを有している請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項5】
前記盤状シール部は、0.5〜2mmの厚さを有している請求項4に記載のコネクタ用弁体。
【請求項6】
前記筒状中空頭部は、前記第1の接続口の外側に向かうテーパ状を成し、前記頂面を囲繞する周縁面を有している請求項1〜5のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項7】
前記胴部は、前記コネクタ用弁体の軸線に対する2回回転対称性を有している請求項1〜6のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項8】
前記胴部は、扇形の垂直断面を有する一対の柱状本体がそれらの中心稜線で互いに連結されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項9】
前記貫通孔は、前記胴部の延在方向に沿って中心が前記コネクタ用弁体の軸線上に存在するように複数が配置されている請求項1〜8のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項10】
前記貫通孔は、前記コネクタ用弁体の軸線に対して対称となるように複数列に配置されている請求項1〜9のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項11】
前記複数の貫通孔のうち前記筒状中空頭部側に配置された貫通孔は、他の貫通孔よりも寸法が小さい請求項9又は10に記載のコネクタ用弁体。
【請求項12】
前記複数の貫通孔は、それらの軸線が略平行に配置されている請求項9〜11のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項13】
前記胴部は、その軸線方向に収縮したときに前記内部空間の内面に接触する外径を有している請求項1〜12のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項14】
前記胴部は、前記コネクタ用弁体の軸線に対して対称となるようにその外周面に凹部又は溝を有している請求項1〜13のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項15】
前記凹部又は溝は、前記延在方向に沿って配置された2つの前記貫通孔の間の少なくとも1箇所に配置されている請求項14に記載のコネクタ用弁体。
【請求項16】
前記胴部は、一対の前記柱状本体の互いに対面する2組の側面同士を連結する補強部を、前記コネクタ用弁体の軸線に沿って配置された2つの前記貫通孔の間の少なくとも1箇所に有している請求項9〜15のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項17】
前記補強部は、前記柱状本体の半径よりも小さな寸法を有している請求項16に記載のコネクタ用弁体。
【請求項18】
前記頭部支持部は、中実である請求項1〜17のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項19】
前記コネクタ用弁体は、その軸線に対する2回回転対称性を有している請求項1〜18のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項20】
前記コネクタ用弁体は、弾性材料で作製されている請求項1〜19のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項21】
前記コネクタ用弁体は、前記内部空間の内面と共に流体を流通させる流通路を前記コネクタ用弁体の外周及び前記貫通孔に形成する請求項1〜20のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体。
【請求項22】
管体を接続可能な少なくとも2つの接続口及びこれらの接続口を連通する内部空間を有するコネクタ管と、
弁座に載置されて前記内部空間に収納された請求項1〜21のいずれか1項に記載のコネクタ用弁体とを備え、
前記コネクタ用弁体は、前記外周面が前記第1の接続口の内周面を密閉すると共に前記第2シール部が前記第1の接続口に隣接する内周段差に圧接する第1姿勢と、その軸線方向に作用する圧力で自身の軸線方向に収縮して前記管体の内腔と前記内部空間とを連通させる第2姿勢とに移行可能なコネクタ。
【請求項23】
前記コネクタは、2つの前記接続口を有する前記コネクタ管を備えた注入管である請求項22に記載のコネクタ。
【請求項24】
前記コネクタは、少なくとも3つの前記接続口を有する前記コネクタ管を備えた混注管である請求項22に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−59390(P2013−59390A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198337(P2011−198337)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】