説明

コネクタ装置

【課題】バネ性に影響を与えることなく、簡易な装置構成で端子のインピーダンスを適切に調整すること。
【解決手段】コネクタ装置(1)は、カード(81、91)を装着可能なハウジングと、ハウジングに片持ちで支持され、カード(81、91)のパッド(85、93a、93b)に接続可能な複数のコンタクト端子(5a、5b)とを備え、複数のコンタクト端子のうち少なくとも一対の差動信号端子(51)には、延在方向の途中部分から先端に向って開口(54)が形成されており、差動信号端子の端子幅(La)から開口の開口幅(Lb)を除いた残り幅(Lc)が、延在方向の先端に向って小さくなるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ装置に関し、特にデータ伝送の高速化に対応したカード用のコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリカードの記憶容量の増加に伴い、データ伝送の高速化に対応すべく差動伝送方式を採用したコネクタ装置が提案されている。差動伝送方式を採用するコネクタ装置では、伝送効率を高めるために各差動端子のインピーダンス整合を行う必要がある。従来、データ伝送の高速化に対応したコネクタ装置として、ハウジングにグランド板を配設して各差動端子とグランド板との距離を調整することによってインピーダンス整合するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のコネクタ装置では、カード挿入方向に延びる複数の端子がハウジングの底壁部の上面に配設され、各端子に対向するように底壁部の下面にグランド板が設けられている。グランド板は、端子のアーム部の全長以上の縦幅と両端に位置する端子を含む横幅を有している。このように、複数の端子の下方にグランド板を位置させることで、各端子にマイクロストリップライン構造を形成している。また、コネクタ装置として、差動端子の端子幅を調整することによってインピーダンス整合するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−129168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のコネクタ装置では、ハウジングにグランド板が設けられるため部品点数が増加すると共に、製品サイズが大型化するという問題があった。また、差動端子の端子幅を調整する場合には、端子のバネ特性に与える影響が大きくなっていた。さらに、ノイズの影響を減らすために、表面にグランドパターンが形成された基板上にコネクタ装置を設置する場合があるが、差動端子がグランドパターンに近付くことで容量結合が強くなり、インピーダンスが低下するおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、バネ性に影響を与えることなく、簡易な装置構成で端子のインピーダンスを適切に調整できるコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタ装置は、表面に電極を有する被装着部材を装着可能なハウジングと、前記ハウジングに片持ちで支持され、前記被装着部材の電極に接続可能な複数の端子とを備え、前記複数の端子のうち少なくとも一の端子には、延在方向の先端に向って開口が形成されており、前記一の端子の端子幅から前記開口の開口幅を除いた残り幅が、延在方向の先端に向って小さくなることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、端子の先端側では残り幅が小さく、端子の基端側では残り幅が大きく形成される。よって、先端側を大きく撓ませて、基端側の撓みを抑えることができ、端子のバネ性に与える影響を小さくできる。また、グランドパターンが形成された基板上にコネクタ装置が設置される場合には、グランドパターンに対向する端子の面積が先端側に向って小さくなる。このため、端子と基板表面のグランドパターンとの容量結合を抑制して、容量結合によってインピーダンスが受ける影響を低減できる。さらに、ハウジングにグランド基板を設ける構成と比較して、部品点数が増加することなく、製品サイズが大型化することもない。
【0009】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記少なくとも一の端子の端子幅は、基端から先端に向って略一定であり、前記開口の開口幅は延在方向の途中部分から先端に向って幅広である。この構成によれば、端子の端子幅を変えることなく、インピーダンスを調整することができる。
【0010】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記複数の端子のうち少なくとも二つの端子は、差動伝送に対応した、隣接する一対の差動信号端子である。この構成によれば、差動信号端子のインピーダンス整合を適切に行うことができ、伝送効率を高めることができる。
【0011】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記一対の差動信号端子は、当該一対の差動信号端子間の中点を前記差動信号端子の延在方向に通る仮想断面を基準として対称的に形成される。この構成によれば、一対の差動信号端子間のインピーダンスを容易に調整できる。
【0012】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記対称的に形成された差動信号端子は、当該差動信号端子に設けられた開口の形状も前記仮想断面を基準として対称に形成される。この構成によれば、差動信号端子が仮想断面を基準として対称的に変位され、一対の差動信号端子の伝送特性の整合が取り易い。
【0013】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記被装着部材がメモリカードである。この構成によれば、メモリカードと電子機器との間の伝送効率を向上できる。
【0014】
本発明の他のコネクタ装置は、表面に電極を有する被装着部材を装着可能なハウジングと、前記ハウジングに片持ちで支持され、前記被装着部材の電極に接続可能な複数の端子とを備え、前記複数の端子のうち少なくとも一の端子には、延在方向の途中部分よりも先端側に開口が形成されており、前記一の端子は、前記一の端子の端子幅から前記開口の開口幅を除いた残り幅が、前記一の端子の基端側よりも先端側で小さくなるように形成された所定領域を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の他のコネクタ装置において、前記開口は、前記一の端子の途中部分から先端に向かって延在しており、前記開口の開口幅は、前記一の端子の基端寄りの前記開口の一端から前記開口の延在方向の途中部分までは略一定であり、前記開口の延在方向の途中部分から前記開口の他端に向かって幅広である。
【0016】
また、本発明の他のコネクタ装置において、前記開口は、前記一の端子の途中部分から先端に向かって延在しており、前記開口の開口幅は、前記一の端子の基端寄りの前記開口の一端から前記開口の延在方向の途中部分に向かって幅広であり、前記開口の延在方向の途中部分から前記開口の他端までは略一定である。
【0017】
また、本発明の他のコネクタ装置において、前記開口は、前記一の端子の途中部分から先端に向かって延在しており、前記開口の開口幅は、前記一の端子の基端寄りの前記開口の一端から他端に向かって幅広であり、前記開口の他端は、前記一の端子の先端に向かって前記開口幅を狭めるように形成される。
【0018】
また、本発明の他のコネクタ装置において、前記一の端子には、延在方向の途中部分から先端に向かって、開口幅の異なる複数の開口が並んで形成されており、前記複数の開口は、前記一の端子の延在方向の途中部分から先端に向かうほどに、開口幅が広くなる順に並んでいる。
【0019】
これらの構成によれば、端子の先端側では残り幅が小さく、端子の基端側では残り幅が大きく形成される。よって、先端側を大きく撓ませて、基端側の撓みを抑えることができ、端子のバネ性に与える影響を小さくできる。また、グランドパターンが形成された基板上にコネクタ装置が設置される場合には、グランドパターンに対向する端子の面積が先端側に向って小さくなる。このため、端子と基板表面のグランドパターンとの容量結合を抑制して、容量結合によってインピーダンスが受ける影響を低減できる。さらに、ハウジングにグランド基板を設ける構成と比較して、部品点数が増加することなく、製品サイズが大型化することもない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バネ性に影響を与えることなく、端子のインピーダンスを適切に調整できる。また、ハウジングにグランド基板を設ける構成と比較して、部品点数が増加することなく、製品サイズが大型化することもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態に係る差動伝送に非対応のカードの平面図である。
【図2】本実施の形態に係る差動伝送に対応したカードの平面図である。
【図3】本実施の形態に係るコネクタ装置の斜視図である。
【図4】本実施の形態に係るカバーを外したコネクタ装置の斜視図である。
【図5】本実施の形態に係る一対の差動信号端子周辺の模式図である。
【図6】本実施の形態に係る差動信号端子周辺の斜視図である。
【図7】比較例に係る一対の差動信号端子の変位の説明図である。
【図8】本実施の形態に係る一対の差動信号端子の変位の説明図である。
【図9】本実施の形態に係るカードの装着動作の説明図である。
【図10】第1−第5の変形例に係る差動信号端子周辺の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、2種類のカードを挿入可能とするカード用のコネクタ装置を例示して説明する。しかしながら、コネクタ装置は、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、本発明は、基板連結用のコネクタ装置やケーブル用のコネクタ装置にも適用可能である。
【0023】
まず、本実施の形態に係るコネクタ装置について説明する前に被装着部材となる2種類のカードについて説明する。図1は、本実施の形態に係る差動伝送に非対応のカードの平面図である。図2は、本実施の形態に係る差動伝送に対応したカードの平面図である。
【0024】
図1A及び図1Bに示すように、カード81は、いわゆるSDカードであり、上面視略矩形状に形成されている。カード81の一の角部には、切り欠かれて約45度に傾斜した傾斜面82が形成されている。傾斜面82は、カード81の挿入方向を識別するのに用いられ、この傾斜面82が形成されている側が挿入方向における先端側とされ、逆側が挿入方向における後端側とされる。
【0025】
また、カード81の傾斜面82が形成された先端側には、複数の挿入方向に延在する複数の仕切壁83によって溝部84が形成されている。この溝部84には、コネクタ装置1の複数のコンタクト端子5に接触する複数のパッド85が設けられている。さらに、カード81の一の側面には、後述するスライド部材6の係止部64に係止される切欠き86が設けられている。また、カード81の他の側面には、カード内のメモリに対する書き込み禁止用の操作部87が設けられている。
【0026】
図2A及び図2Bに示すように、カード91は、SDカードと略同形に形成されており、SDカードよりもパッド数を増加させた差動伝送に対応したカードである。カード91は、カード81と同様に上面視矩形状の一の角部を約45度に切り欠いた挿入方向識別用の傾斜面92を有している。カード91の裏面には、複数のパッド93a、93bが前後2列に配置されている。後列の一部のパッド93aには、差動信号用のパッドが含まれている。また、カード91は、一の側面にスライド部材6の係止部64に係止される切欠き94が設けられ、他の側面にカード内のメモリに対する書き込み禁止用の操作部95が設けられている。
【0027】
次に、図3及び図4を参照して、コネクタ装置の全体構成について説明する。図3は、本実施の形態に係るコネクタ装置の斜視図である。図4は、本実施の形態に係るカバーを外したコネクタ装置の斜視図である。
【0028】
図3及び図4に示すように、本実施の形態に係るコネクタ装置1は、上面および前面が開口されたハウジング本体2に対して、上方からカバー3を装着することで挿入口4を有する箱状体(ハウジング)を成している。挿入口4は、正面視において2種類のカード81、91と相補的な形状を有している。このコネクタ装置1は、表面にグランドパターンが形成された不図示の基板上に取り付けられる。
【0029】
ハウジング本体2の底壁部21には、例えばリン青銅等によって形成された複数のコンタクト端子5a、5bが幅方向に前後2列で配置されている。前列側のコンタクト端子5aは、ハウジング本体2を幅方向に横切る第1の端子保持部25によって所定の間隔を空けて横並びに保持される。コンタクト端子5aの一端は、底壁部21の窓部27aにおいて奥方に向って延在し、カード91の手前のパッド93aに接続可能となっている。コンタクト端子5aの他端は、前方に突出し、実装基板に半田付けされる。また、コンタクト端子5aの隣接する一部の端子は、差動伝送用の一対の差動信号端子51となっている。
【0030】
後列側のコンタクト端子5bは、第1の端子保持部25の奥方において、ハウジング本体2を幅方向に横切る第2の端子保持部26によって所定の間隔を空けて横並びに保持される。コンタクト端子5bの一端は、底壁部21の窓部27bにおいて奥方に向って延在し、カード81、91のパッド85、93bに対して接続可能となっている。コンタクト端子5bの他端は、底壁部21上の導電ラインを介して奥壁部22からハウジング外に突出し、基板に半田付けされる。コンタクト端子5a、5bは、LCP(Liquid Crystal Polymer)等の合成樹脂で形成されたハウジング本体2に対して、インサート成形により取り付けられる。
【0031】
ハウジング本体2の一の側壁部23には、側面に沿ってスライド可能なスライド部材6と、スライド部材6のスライドに伴って伸縮するコイル状の排出バネ(不図示)とが設けられている。排出バネは、一端が奥壁部22に当接され、他端がスライド部材6に当接されており、スライド部材6を排出方向に付勢している。スライド部材6は、排出バネに付勢された状態で挿入および排出方向にスライド可能に構成されている。
【0032】
ハウジング本体2の他の側壁部24は、一部が切り欠かれて形成されおり、この切欠き部分にカード81、91の書き込み禁止状態を検出するスイッチ端子7が設けられている。スイッチ端子7は、挿入方向に延在する片持ちの金属バネであり、カード81、91の操作部87、95が書き込み禁止位置に設定される場合に、押し下げられるように形成されている。スイッチ端子7の押し下げによって、カード81、91の書き込み禁止状態が検出される。
【0033】
スライド部材6の前端側の上面にはハートカム溝61が形成されており、このハートカム溝61と側壁部23の前端側に設けられたラッチピン62によりスライド部材6の位置が規定される。ラッチピン62は、側壁部23に沿って延在し、両端が下方に向かって略直角に屈曲している。ラッチピン62の一端は、側壁部23の前端側に回動可能に支持され、他端はスライド部材6のハートカム溝61上で摺動される。
【0034】
ハートカム溝61は、複数の段差と傾斜を有して上面視ハート型の環状に形成されており、スライド部材6のスライドに応じてラッチピン62の他端を一方向に摺動させる。スライド部材6が奥壁部22の近傍の装着位置に押し込まれると、ラッチピン62の他端がハートカム溝61の係止部分に係止され、排出バネの付勢によるスライド部材6の復帰が規制される。この状態からさらにスライド部材6が押し込まれると、ラッチピン62とハートカム溝61との係止状態が解除されて、排出バネの付勢によってスライド部材6が復帰される。このように、ラッチピン62とハートカム溝61は、スライド部材6の装着位置における保持機能を有している。
【0035】
スライド部材6には、後端側を基端として前方に延在する金属性の板バネ63が設けられている。板バネ63の前端側には、板面の一部をハウジングの内側に向けて山形に折り曲げた係止部64が形成されている。スライド部材6は、ハウジングに挿入されたカード81、91の切欠き86、94を係止部64が係止することで、カード81、91と一体的にスライドされる。
【0036】
スライド部材6の後端側には、ハウジングの中央に向って突出する突出部65が形成されている。突出部65の先端側は、カード81、91の傾斜面82、92の傾斜に沿うように約45度に傾斜している。また、板バネ63の基端側は、突出部65の傾斜と共にカード81、91の傾斜面82、92に沿うように傾斜されている。この突出部65の傾斜部分と板バネ63の基端側の傾斜部分によって、カード81、91が正挿入時のみ装着位置まで案内されるので、カードの誤装着が防止される。
【0037】
カバー3は、金属板材を折り曲げて形成されており、側壁部23に対応する上板部分にはラッチピン62を押えるピン押え31が形成されている。ピン押え31は、底壁部21側に切り起された片持バネであり、ラッチピン62の中間部分を押圧してラッチピン62の他端をハートカム溝61に押し付けている。また、ピン押え31の後方には、装着位置において板バネ63の外側への開きをロックするロック部32が形成されている。ロック部32は、カード81、91が装着位置に位置付けられた場合に、板バネ63の外側への開きを抑制することで、カード81、91の無理抜きを防止している。
【0038】
図5を参照して、本実施の形態の特徴部分である一対の差動信号端子について説明する。図5は、本実施の形態に係る一対の差動信号端子周辺の模式図である。図6は、本実施の形態に係る一対の差動信号端子周辺の斜視図である。なお、図6は、コネクタ装置を裏面側から見た図である。
【0039】
図5に示すように、一対の差動信号端子51は、隣接する端子間に伝送される信号の電位差を利用して信号(データ)を伝送する差動伝送に対応し、カード91のパッド93a用のコンタクト端子である。また、一対の差動信号端子51は、端子間の中点を端子の延在方向に通る仮想断面Aを基準として対称的に形成されている。各差動信号端子51は、第1の端子保持部25からハウジング奥方に延在する片持ちのバネ部52と、第1の端子保持部25からハウジング前方に引き出された半田付け部53を有している。
【0040】
バネ部52は、第1の端子保持部25に保持された基端から先端に向って略一定の端子幅Laを有するように形成されている。バネ部52には、延在方向の途中部分から先端にかけて開口幅Lbが大きくなるような略三角形状の開口54が形成されている。このため、バネ部52は、端子幅Laから開口幅Lbを除いた残り幅Lcが先端に向って小さくなる。また、バネ部52には、バネ性を持たせるために、延在方向において開口54を略二分する位置で折り曲げて形成されている。このバネ部52の折り曲げ位置が、差動信号端子51が下方に撓んだ状態での最下点となる。
【0041】
また、バネ部52の先端部分は、二股に分けられており、一片部が細長に形成され、他片部が幅広で短く形成されている。バネ部52の一片部は、カード81、91を傷つけないように上向きに湾曲され、カード91のパッド93aに接触する接触部55となっている。バネ部52の他片部は、カード81、91を傷つけないように上向きに湾曲され、差動伝送に非対応のカード81の装着時にカード裏面の仕切壁83に当接する当接部56となっている。
【0042】
図6に示すように、この当接部56は、カード81のパッド85間に配置された仕切壁83に当接することで、差動信号端子51を押し下げている。この結果、接触部55がカード81の裏面から離間方向に移動されて、接触部55とカード81のパッド85との接触が抑制される。また、接触部55の側面と仕切壁83の内側面とが接触しないものとなる。よって、差動伝送に非対応のカード81の装着時に、接触部55とパッド85とが摺動することがなく、接触部55の摩耗を効果的に防止している。さらに、接触部55の側面と仕切壁83の内側面とが接触しないので、接触部55の変形防止とともに、仕切壁83の内側面が傷つくことが防止される。
【0043】
ところで、一対の差動信号端子51では差動伝送が行われるが、端子の入力端から出力端の間でインピーダンスに大幅な変化がある場合にはリターンロスやインサーションロス等によって伝送効率が悪化する。信号損失が大きい場合には、差動信号波形がつぶれてデータを判別することが困難となっていた。本件出願人が調査したところ、グランドパターンが形成された基板上にコネクタ装置1が設置される場合には、端子形状の他に、差動信号端子51とグランドパターンとの容量結合によってインピーダンスが変化することが判明した。
【0044】
インピーダンスを調整するためには、一対の差動信号端子51の端子幅や厚みを変える方法が一般的であるが、差動信号端子51のバネ性に対する影響が大きい。特に、差動信号端子51全体を狭幅に形成すると、差動信号端子51の基端側のバネ圧が低下して変位量が増加するおそれがある。そこで、本実施の形態に係るコネクタ装置1では、差動信号端子51の延在方向の途中部分から先端に向けて開口54を形成することで、基端側のバネ圧の低下を抑えつつ、先端側においてグランドパターンとの容量結合を抑制している。
【0045】
以下、図7及び図8を参照して、差動信号端子のインピーダンスの変化を抑制する構成について説明する。図7は、比較例に係る差動信号端子の変位の説明図である。図8は、本実施の形態に係る差動信号端子の変位の説明図である。なお、図7A、Bには、開口が形成されていない差動信号端子の変位状態を示し、図7C、Dには、上面視長方形状のストレートタイプの開口が形成された差動信号端子の変位状態を示す。
【0046】
差動信号端子51のインピーダンスは、次式(1)で表わされるように、インダクタンスとキャパシタンスとによって求められる。ここで、式(1)では、Zがインピーダンス、Lがインダクタンス、Cがキャパシタンスをそれぞれ示す。
【数1】

【0047】
インダクタンスLは、差動信号端子51の端子長さを変化することで変化し、例えば、端子長さを長くすることで大きくなる。キャパシタンスCは、次式(2)で表わされるように、平行導体の対向する面積と対向間隔とによって求められる。ここで、式(2)では、Aが面積、εが誘電率、Wが対向間隔をそれぞれ示す。キャパシタンスCは、一対の差動信号端子51間だけでなく、差動信号端子51とグランドパターン間等でも発生する。
C=A・ε/W …(2)
【0048】
図7A、Bに示すように、比較例1に係る差動信号端子71は、本実施の形態に係る差動信号端子51とは開口が形成されていない点で異なっている。差動信号端子71は、その板幅が一様なことから、通常の板バネのようにたわみ曲げ位置P2で基板のグランドパターン59と再接近する。
【0049】
差動信号端子71は、バネ圧が高く形成されるため、カード91のパッド93aとの接触安定性が高くなっている。一方で、曲げ位置P2で撓み難くなっているため、曲げ位置P2である最下点の変位量が大きくなっている。差動信号端子71では、最下点の変位量が大きいため、コネクタ装置の薄型化を図ることができない。また、差動信号端子71の先端側は、開口が形成されていない分だけ面積が大きいため、グランドパターン59に強く容量結合される。このため、インピーダンスZは、一対の差動信号端子51間のキャパシタンスCだけでなく、この容量結合の影響を強く受けることで伝送損失が大きくなる。
【0050】
図7C、Dに示すように、比較例2に係る差動信号端子75は、本実施の形態に係る差動信号端子51と長方形状の開口76が形成されている点で異なっている。差動信号端子75は、基端位置P1と曲げ位置P2とを支点として撓むように設計されており、延在方向において開口76を略二分する位置に曲げ位置P2が設けられている。曲げ位置P2は、端子幅Laから開口幅Lbを除いた残り幅Lcが狭く形成されているため、差動信号端子75の先端側を撓み易くしている。
【0051】
差動信号端子75の先端側で撓み易く形成されているため、曲げ位置P2である最下点の変位量が比較例1に係る差動信号端子71よりも抑えられている。差動信号端子75では、最下点の変位量を抑えることで比較例1と比較してコネクタ装置の薄型化を図ることができる。また、比較例1の差動信号端子71の場合に比べ、曲げ位置P2である最下点とグランドパターン59との距離を大きくとれるので、これらの間の容量結合を弱めることができる。なお、基端位置P1よりも先端側に開口76が形成されているため、基端位置P1におけるバネ性に大きな影響がない。
【0052】
また、差動信号端子75の先端側は、開口76が形成された分だけ面積が小さくなっている。このように、差動信号端子75は、比較例1に係る差動信号端子71と比較して、グランドパターン59に対向する先端側の面積が小さくできる。しかしながら、差動信号端子75とグランドパターン59との容量結合を十分に弱めることができず、インピーダンスが受ける影響を十分に小さくできない。
【0053】
これら比較例1、2に対して図8A、Bに示すように、本実施の形態に係る差動信号端子51には、略三角形状の開口54が形成されている。差動信号端子51は、基端位置P1と曲げ位置P2とを支点として撓むように形成されており、延在方向において開口54を略二分する位置に曲げ位置P2が設けられている。曲げ位置P2では、端子幅Laから開口幅Lbを除いた残り幅Lcが狭く形成されているため、差動信号端子51の先端側を撓み易くしている。
【0054】
差動信号端子51は、延在方向の途中部分から先端に向って開口幅Lbが大きくなり、残り幅Lcが小さくなるように形成されている。差動信号端子51は、曲げ位置P2から先端に向けて残り幅Lcが徐々に狭まるため、曲げ位置P2よりも先端側において、さらに撓み易くなっている。このため、差動信号端子51は、比較例1、2に係る差動信号端子71、75と比較して、基端位置P1における変位量が小さくなって、曲げ位置P2である最下点の変位量がさらに抑えられる。差動信号端子51では、最下点の変位量を抑えることで、比較例1、2と比較してさらにコネクタ装置の薄型化を図ることができる。また、比較例2の差動信号端子75の場合と比べても、曲げ位置P2である最下点とグランドパターン59との距離をさらに大きくとれるので、これらの間の容量結合を効果的に弱めることができる。なお、基端位置P1よりも先端側に開口54が形成されているため、基端位置P1におけるバネ性に大きな影響がない。
【0055】
また、差動信号端子51の先端側は、略三角形状に形成された開口54によって、基端から先端に向って徐々に面積が小さくなっている。このように、差動信号端子51は、比較例1、2に係る差動信号端子71、75と比較して、グランドパターン59に対向する先端側の面積がさらに小さくなっている。よって、先に述べた曲げ位置P2の最下点がグランドパターン59からさらに遠ざかった位置に来ることも相俟って差動信号端子51は、グランドパターン59との容量結合が十分に抑制され、インピーダンスが受ける影響をより小さくできる。
【0056】
以下、図9を参照して、各カードの装着動作について説明する。図9は、本実施の形態に係るカードの装着動作の説明図である。なお、図9においては、説明の便宜上、ロック部付近を除いてカバーを省略している。また、図9では、差動伝送に対応したカードを例示して説明するが、差動伝送に非対応のカードも装着動作は同様である。
【0057】
図9Aに示すように、スライド部材6が排出位置にある場合には、板バネ63の基端側がロック部32に位置付けられており、板バネ63の外側への揺動が許容されている。この状態で、コネクタ装置1にカード91が挿入されると、係止部64がカード側面によって押し込まれることで板バネ63が外側に開かれる。カード91がスライド部材6の突出部65に当接されると、係止部64が切欠き94に入り込み、板バネ63が元の状態に復帰される。この排出位置においては、板バネ63がロック部32に規制されることなく揺動可能なため、カード91の抜き差しが許容される。
【0058】
図9Aの状態から、さらにカード91が押し込まれると、図9Bに示すように、カード91とスライド部材6とが一体となって装着位置に移動される。スライド部材6は、装着位置まで移動されると、ラッチピン62の他端がハートカム溝61の係止部分に係止され、カード91と共に装着位置に保持される。このスライド部材6が装着位置にある場合には、板バネ63の前端側がロック部32によってロックされ、板バネ63の外側への揺動が規制される。この状態で、カード91に引き出し方向の力を加えると、板バネ63に対してハウジング外側向きの力が作用するが、ロック部32によって板バネ63の揺動が所定の範囲内に規制される。
【0059】
このように、ロック部32によって板バネ63の揺動が規制されるため、板バネ63の係止部64がカード91の切欠き94から外れることがなく、カード91の無理抜きが防止される。このとき、さらに、強い力でカード91を引き抜こうとした場合には、ロック部32は、カバー3に対して片持ちで設けられているため、板バネ63の上端面に乗り上るように撓んで、カード91が引き抜きを許容する。
【0060】
そして、図9Bの状態から、さらにカード91が押し込まれると、ラッチピン62とハートカム溝61との係止状態が解除されて、スライド部材6が排出バネにより排出位置に押し戻される。
【0061】
以上のように本実施の形態では、差動信号端子51の先端側では残り幅Lcが小さく、差動信号端子51の基端側では残り幅Lcが大きく形成される。よって、先端側を大きく撓ませて、基端側の撓みを抑えることができ、差動信号端子51のバネ性に与える影響を小さくできる。また、グランドパターン59が形成された基板上にコネクタ装置1が設置される場合には、グランドパターン59に対向する差動信号端子51の面積が先端側に向って小さくなる。さらに、差動信号端子51の曲げ位置P2の最下点がグランドパターンから離れた位置となる。このため、差動信号端子51と基板表面のグランドパターン59との容量結合を抑制して、容量結合によってインピーダンスが受ける影響を低減できる。
【0062】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0063】
例えば、本実施の形態では、一対の差動信号端子のインピーダンス整合を行う構成について説明したが、この構成に限定されない。本発明は、差動信号端子に限らず、コネクタ装置の端子のインピーダンス整合を行う構成に適用可能である。
【0064】
また、本実施の形態では、コンタクト端子に略三角形状の開口が形成される構成としたが、この構成に限定されない。開口は、コンタクト端子の端子幅から開口幅を除く残り幅が延在方向の途中部分から先端に向って小さくなる構成であればよい。例えば、コンタクト端子が、途中部分から先端側に向って先細り形状であり、開口が略長方形のストレート形状でもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、一対の差動信号端子が、仮想断面Aを基準として対称的に形成されたが、これに限定されない。一対の差動信号端子は、非対象の場合でもインピーダンスの変化を抑えることが可能である。
【0066】
また、上記した実施形態においては、コネクタ装置に装着される被装着部材としてメモリカードを例示したが、これに限定されない。コネクタ装置は、基板同士を接続するものや基板にケーブルを接続するものでもよい。すなわち、被装着部材としては、メイン基板に接続されるサブ基板のプラグやケーブルのプラグ等が含まれる。
【0067】
また、上記した実施形態においては、基板上にコネクタ装置を設置し、基板上に形成されたグランドパターンと差動信号端子との容量結合を抑制する構成を例示したが、この構成に限定されない。本発明は、基板に対して表裏逆に設置されるリバースタイプのコネクタ装置にも適用可能である。リバースタイプのコネクタ装置では、金属板材で形成されたカバーがグランドとして機能する。よって、本発明をリバースタイプのコネクタ装置に適用することで、カバーと差動信号端子との容量結合を抑制できる。
【0068】
また、本実施の形態では、コンタクト端子の残り幅が、延在方向の途中部分から先端に向かって次第に小さくなるように構成されたが、この構成に限定されない。コンタクト端子は、延在方向の途中部分から先端に向かって残り幅が小さくなるような所定領域を含めばよい。すなわち、コンタクト端子には延在方向の途中部分から先端にかけて全体的に開口が形成される構成に限らず、部分的に開口が形成されてもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、略三角形状の開口が形成された差動信号端子を例示して説明したが、この構成に限定されない。以下の図10A−図10Eに示すような差動信号端子でも、本実施の形態と同様な作用効果を得ることが可能である。以下、図10A−図10Eを参照して、差動信号端子の変形例について説明する。なお、変形例に係る差動信号端子は、本実施の形態に係る差動信号端子と開口の形状についてのみ相違する。したがって、特に相違点についてのみ説明する。
【0070】
図10Aに示すように、第1の変形例に示す一対の差動信号端子101は、端子保持部102に片持ちで保持されており、略一定の端子幅Laのバネ部103を有している。バネ部103には、差動信号端子101の延在方向の途中部分から先端に向かって開口104が形成されている。この場合、開口104において差動信号端子101の基端寄りの略半部は、一定幅のスリット形状に形成されている。また、開口104において差動信号端子101の先端寄りの略半部は、差動信号端子101の先端に向かって開口幅Lbが大きくなるような略三角形状に形成されている。よって、差動信号端子101の基端寄りの開口104の開口幅Lbは、開口104の一端から延在方向の途中部分までは狭幅で略一定に形成され、この途中部分から開口104の他端に向かって幅広に形成される。
【0071】
端子幅Laから開口幅Lbを除いた残り幅Lcは、開口104の一端から延在方向の途中部分までは略一定であり、この途中部分から開口104の他端に向かって小さくなる。これにより、差動信号端子101の先端側が撓み易くなる。よって、差動信号端子101の先端側が撓み易くなった分だけ基端側の撓みを抑えて、差動信号端子101のバネ性に与える影響を小さくできる。また、差動信号端子101の先端側の面積が小さいので、グランドパターンとの容量結合を抑制できる。このように、第1の変形例の差動信号端子101においても、本実施の形態に係る差動信号端子51と同様に、バネ特性に影響を与えることなく、インピーダンスを適切に調整できる。また、一対の差動信号端子101は、端子間の中点を端子の延在方向に通る仮想断面B1を基準として対称的に形成されている。したがって、一対の差動信号端子101が仮想断面B1を基準として対称的に変位し、左右の差動信号端子101の伝送特性の整合が取り易い。
【0072】
図10Bに示すように、第2の変形例に示す一対の差動信号端子106は、端子保持部107に片持ちで保持されており、略一定の端子幅Laのバネ部108を有している。バネ部108には、差動信号端子106の延在方向の途中部分から先端に向かって開口109が形成されている。この場合、開口109において差動信号端子106の基端寄りの略半部は、差動信号端子106の先端に向かって開口幅Lbが大きくなるような略三角形状に形成されている。また、開口109において差動信号端子106の先端寄りの略半部は、一定幅の矩形状に形成されている。よって、開口109の開口幅Lbは、差動信号端子106の基端寄りの開口109の一端から延在方向の途中部分に向かって幅広に形成され、この途中部分から開口109の他端までは広幅で略一定に形成される。
【0073】
端子幅Laから開口幅Lbを除いた残り幅Lcは、開口109の一端から延在方向の途中部分に向かって小さくなり、この途中部分から開口109の他端までは略一定になる。これにより、差動信号端子106の先端側が撓み易くなると共に差動信号端子106の先端側の面積も小さくなる。よって、第2の変形例の差動信号端子106においても、本実施の形態に係る差動信号端子51と同様に、バネ特性に影響を与えることなく、インピーダンスを適切に調整できる。また、一対の差動信号端子106は、端子間の中点を端子の延在方向に通る仮想断面B2を基準として対称的に形成されている。よって、一対の差動信号端子106が変位する場合でも、左右の差動信号端子106の伝送特性の整合が取り易い。
【0074】
図10Cに示すように、第3の変形例に示す一対の差動信号端子111は、端子保持部112に片持ちで保持されており、略一定の端子幅Laのバネ部113を有している。バネ部113には、差動信号端子111の延在方向の途中部分から先端に向かって開口114が形成されている。開口114は、差動信号端子111の延在方向の途中部分から先端付近に向かって開口幅Lbが大きくなるように形成され、差動信号端子111の先端付近において開口幅Lbが小さくなるように形成されている。よって、開口114の開口幅Lbは、開口114の一端から他端に向かって幅広に形成され、開口114の他端において幅狭に形成される。この開口114の他端は、打ち抜き加工で付与される逃げ形状になっている。
【0075】
端子幅Laから開口幅Lbを除いた残り幅Lcは、開口114の一端から他端に向かって小さくなり、他端において大きくなる。これにより、差動信号端子111の先端側が撓み易くなると共に差動信号端子111の先端側の面積も小さくなる。特に第3の変形例の差動信号端子111は、開口114に設けられた加工上の逃げ形状によって、他の変形例と比較して先端側の面積が小さくされているため、グランドパターンとの容量結合をさらに抑制できる。よって、第3の変形例の差動信号端子111においても、本実施の形態に係る差動信号端子51と同様に、バネ特性に影響を与えることなく、インピーダンスを適切に調整できる。また、一対の差動信号端子111は、端子間の中点を端子の延在方向に通る仮想断面B3を基準として対称的に形成されている。よって、一対の差動信号端子111の変位する場合でも、左右の差動信号端子111の伝送特性の整合が取り易い。
【0076】
図10Dに示すように、第4の変形例に示す一対の差動信号端子116は、端子保持部117に片持ちで保持されており、略一定の端子幅Laのバネ部118を有している。バネ部118には、差動信号端子116の延在方向の途中部分から先端に向かって開口119が形成されている。開口119は、差動信号端子116の延在方向の途中部分から先端に向かって開口幅Lbが大きくなるように略直角三角形状に形成されている。すなわち、第4の変形例では、差動信号端子116の中心線に対して左右非対称の開口119が差動信号端子116に形成されている。
【0077】
端子幅Laから開口幅Lbを除いた残り幅Lcは、開口119の一端から他端に向かって小さくなる。これにより、差動信号端子116の先端側が撓み易くなると共に差動信号端子116の先端側の面積も小さくなる。よって、第4の変形例の差動信号端子116においても、本実施の形態に係る差動信号端子51と同様に、バネ特性に影響を与えることなく、インピーダンスを適切に調整できる。また、一対の差動信号端子116は、端子間の中点を端子の延在方向に通る仮想断面B4を基準として対称的に形成されている。このため、各差動信号端子116の中心線に対して左右非対称の開口119が形成されていても、一対の差動信号端子116が仮想断面B4を基準として対称的に変位する。例えば、図10の例では、一対の差動信号端子116が互いに内向きに撓み易くなっている。したがって、一対の差動信号端子116の変位する場合でも、左右の差動信号端子116の伝送特性の整合が取り易い。
【0078】
図10Eに示すように、第5の変形例に示す一対の差動信号端子121は、端子保持部122に片持ちで保持されており、略一定の端子幅Laのバネ部123を有している。バネ部123には、差動信号端子121の延在方向の途中部分から先端に向かって、開口幅Lbの異なる複数(例えば、3つ)の開口124が形成されている。複数の開口124は、差動信号端子121の延在方向の途中部分から先端に向かって、開口幅Lbが狭い順に並んで形成されている。すなわち、第5の変形例では、開口124の開口幅Lbが、差動信号端子121の延在方向の途中部分から先端に向かって断続的に大きくなるように形成されている。
【0079】
端子幅Laから開口幅Lbを除いた残り幅Lcは、開口124の一端から他端に向かって、断続的に小さくなる。これにより、差動信号端子121の先端側が撓み易くなると共に差動信号端子121の先端側の面積も小さくなる。よって、第5の変形例の差動信号端子121においても、本実施の形態に係る差動信号端子51と同様に、バネ特性に影響を与えることなく、インピーダンスを適切に調整できる。また、一対の差動信号端子121は、端子間の中点を端子の延在方向に通る仮想断面B5を基準として対称的に形成されている。よって、一対の差動信号端子121の変位する場合でも、左右の差動信号端子121の伝送特性の整合が取り易い。
【符号の説明】
【0080】
1 コネクタ装置
2 ハウジング本体(ハウジング)
3 カバー(ハウジング)
4 挿入口
5a、5b コンタクト端子(端子)
6 スライド部材
51、101、106、111、116、121 差動信号端子
52、103、108、113、118、123 バネ部
53 半田付け部
54、104、109、114、119、124 開口
55 接触部
56 当接部
59 グランドパターン
81、91 カード(被装着部材)
83 仕切壁
84 溝部
85、93a、93b パッド(電極)
La 端子幅
Lb 開口幅
Lc 残り幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に電極を有する被装着部材を装着可能なハウジングと、
前記ハウジングに片持ちで支持され、前記被装着部材の電極に接続可能な複数の端子とを備え、
前記複数の端子のうち少なくとも一の端子には、延在方向の途中部分から先端に向って開口が形成されており、
前記一の端子の端子幅から前記開口の開口幅を除いた残り幅が、延在方向の先端に向って小さくなることを特徴とするコネクタ装置。
【請求項2】
前記少なくとも一の端子の端子幅は、基端から先端に向って略一定であり、前記開口の開口幅は延在方向の先端に向って幅広であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記複数の端子のうち少なくとも二つの端子は、差動伝送に対応した、隣接する一対の差動信号端子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記一対の差動信号端子は、当該一対の差動信号端子間の中点を前記差動信号端子の延在方向に通る仮想断面を基準として対称的に形成されることを特徴とする請求項3に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記対称的に形成された差動信号端子は、当該差動信号端子に設けられた開口の形状も前記仮想断面を基準として対称に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記被装着部材がメモリカードであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のコネクタ装置。
【請求項7】
表面に電極を有する被装着部材を装着可能なハウジングと、
前記ハウジングに片持ちで支持され、前記被装着部材の電極に接続可能な複数の端子とを備え、
前記複数の端子のうち少なくとも一の端子には、延在方向の途中部分よりも先端側に開口が形成されており、
前記一の端子は、前記一の端子の端子幅から前記開口の開口幅を除いた残り幅が、前記一の端子の基端側よりも先端側で小さくなるように形成された所定領域を含むことを特徴とするコネクタ装置。
【請求項8】
前記開口は、前記一の端子の途中部分から先端に向かって延在しており、
前記開口の開口幅は、前記一の端子の基端寄りの前記開口の一端から前記開口の延在方向の途中部分までは略一定であり、前記開口の延在方向の途中部分から前記開口の他端に向かって幅広であることを特徴とする請求項7に記載のコネクタ装置。
【請求項9】
前記開口は、前記一の端子の途中部分から先端に向かって延在しており、
前記開口の開口幅は、前記一の端子の基端寄りの前記開口の一端から前記開口の延在方向の途中部分に向かって幅広であり、前記開口の延在方向の途中部分から前記開口の他端までは略一定であることを特徴とする請求項7に記載のコネクタ装置。
【請求項10】
前記開口は、前記一の端子の途中部分から先端に向かって延在しており、
前記開口の開口幅は、前記一の端子の基端寄りの前記開口の一端から他端に向かって幅広であり、
前記開口の他端は、前記一の端子の先端に向かって前記開口幅を狭めるように形成されることを特徴とする請求項7に記載のコネクタ装置。
【請求項11】
前記一の端子には、延在方向の途中部分から先端に向かって、開口幅の異なる複数の開口が並んで形成されており、
前記複数の開口は、前記一の端子の延在方向の途中部分から先端に向かうほどに、開口幅が広くなる順に並んでいることを特徴とする請求項7に記載のコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−77544(P2013−77544A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161535(P2012−161535)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【特許番号】特許第5172035号(P5172035)
【特許公報発行日】平成25年3月27日(2013.3.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】