コネクタ
【課題】 製造コストの低減を図る。
【解決手段】 雌側ハウジング20と機器側ハウジング10が正規の組み合わせのときは、雌側ハウジング20のリテーナ24(誤嵌合規制手段)の規制溝24Dが機器側ハウジング10のリブ16(誤嵌合規制手段)と嵌合して両ハウジング10,20の嵌合を許容するが、不正な組み合わせのときはリブ16が雌側ハウジング20に突き当たることで嵌合が規制される。誤嵌合規制手段であるリテーナ24がハウジング本体21とは別体の部品とされているので、両ハウジング10,20の嵌合の組み合わせが複数ある場合でも、ハウジング本体21は共通の部品として1つの金型によって製造することができる。リテーナ24についてはハウジング本体21に比べて簡素な形状だから、リテーナ24の金型コストは低く抑えられる。
【解決手段】 雌側ハウジング20と機器側ハウジング10が正規の組み合わせのときは、雌側ハウジング20のリテーナ24(誤嵌合規制手段)の規制溝24Dが機器側ハウジング10のリブ16(誤嵌合規制手段)と嵌合して両ハウジング10,20の嵌合を許容するが、不正な組み合わせのときはリブ16が雌側ハウジング20に突き当たることで嵌合が規制される。誤嵌合規制手段であるリテーナ24がハウジング本体21とは別体の部品とされているので、両ハウジング10,20の嵌合の組み合わせが複数ある場合でも、ハウジング本体21は共通の部品として1つの金型によって製造することができる。リテーナ24についてはハウジング本体21に比べて簡素な形状だから、リテーナ24の金型コストは低く抑えられる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誤嵌合検知機能を備えたコネクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】誤嵌合検知機能を備えたコネクタとして、従来、米国特許第4,772,229号公報に開示されているものがある。これは、互いに嵌合可能な雄形ハウジングと雌形ハウジングとからなり、雄形ハウジングの嵌合凹部の内周には嵌合方向に沿ったリブが形成されているとともに雌形ハウジングの外周にはリブと整合する溝が形成されている。リブと溝の位置は、雄側と雌側が正しい組み合わせのときにのみ嵌合されるように、各ワイヤーハーネス毎に異なる位置に設定されている。これにより、誤った組み合わせで雄雌両ハウジングを嵌合しようとすると、リブが溝からずれて雌形ハウジングの先端面周縁部に突き当たり、嵌合が阻止される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に、ハウジングは端子金具を挿入するための複数のキャビティ等が形成されているため、形状が複雑であり、このように形状の複雑な樹脂成形品を製造するには、金型コストが高くつくという事情がある。一方、上記従来のコネクタをみると、誤嵌合検知のためのリブと溝がハウジングに直接形成されているので、リブと溝の位置が異なる複数種類のハウジングを用意しなければならない。即ち、ハウジングの製造に際しては、ただでさえコストの高い金型が複数台必要であることから、製造コストが高くつくという問題がある。
【0004】本願発明は上記事情に鑑みて創案され、製造コストの低減を図ることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、互いに嵌合可能とされた一対のハウジングと、この一対のハウジングの双方に設けられ、その両ハウジングが不正な組み合わせである場合にその両ハウジングの嵌合を規制する誤嵌合規制手段とを備えてなるコネクタであって、前記一対のハウジングのうちの少なくとも一方においては、その端子金具が取り付けられるハウジング本体と前記誤嵌合規制手段とが別体部品とされている構成とした。
【0006】請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記誤嵌合規制手段は、前記ハウジングに組み付けられることでそのハウジングに挿入された端子金具を抜止めする機能を備えている構成とした。
【0007】
【発明の作用及び効果】[請求項1の発明]少なくとも一方のハウジングにおいては、そのハウジング本体と誤嵌合規制手段とが別体の部品とされているので、両ハウジングの嵌合の組み合わせが複数ある場合でも、ハウジング本体は共通の部品として1つの金型によって製造することができる。一方、ハウジング本体とは別体の誤嵌合規制手段である部品については、端子金具の挿入空間等が形成されるハウジング本体に比べて簡素な形状とすることが可能だから、その金型のコストをハウジング本体用の金型コストよりも低く抑えることが可能である。よって、総体的には金型コストの低減を図ることができる。
【0008】[請求項2の発明]誤嵌合規制手段はいわゆるリテーナとしての機能を兼ね備えているので、リテーナとは別体にした場合と比べると部品点数が少なくて済む。
【0009】
【発明の実施の形態】[実施形態1]以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図11を参照して説明する。本実施形態のコネクタは、互いに嵌合・離脱が可能な雌側ハウジング20と機器側ハウジング10とを備えて構成される。
【0010】機器側ハウジング10は、機器本体11の外面に設けられ、機器本体11を構成する外壁部を凹ませるとともに、この凹ませた部分の周縁から外方へフード部12を角筒状に突出させたものであり、この凹み部分とフード部12とによって構成された嵌合凹部13内には、雌側ハウジング20のハウジング本体21が嵌合されるようになっている。この機器側ハウジング10は、機器本体11側に嵌合凹部13を形成するための余裕のスペース(図示せず)が確保されていることを前提としたものであり、嵌合凹部13は機器本体11の内部に食い込んだ形態とされている。これにより、機器本体11の外面からのフード部12の突出寸法が小さく抑えられている。かかる機器側ハウジング10の嵌合凹部13内には、壁部を貫通した複数の雄端子金具14の先端部が臨んでおり、雌側ハウジング20が嵌合凹部13に嵌合されると各雄端子金具14に雌端子金具22が接続されるようになっている。
【0011】雌側ハウジング20は、雌端子金具22(図8及び図9に示す)が挿入されるハウジング本体21と、このハウジング本体21に取り付けられる電線カバー23と、ハウジング本体21に取り付けられるリテーナ24(本発明の構成要件である誤嵌合規制手段)とから構成される。ハウジング本体21には、その外周を包囲するように筒形嵌合部25が形成されている。筒形嵌合部25はハウジング本体21の後端から前方へ延出されているが、その延出端はハウジング本体21の前端面よりも後方となるように寸法設定されている。したがって、ハウジング本体21の略前半部分は外部に露出されている。かかる筒形嵌合部25は、両ハウジング10,20の嵌合時に機器側ハウジング10のフード部12の外周に嵌合される。また、ハウジング本体21の外周における筒形嵌合部25で囲まれた部分には、機器側ハウジング10のフード部12の内周面との間をシールするためのリング状のシール部材26が装着されている。
【0012】このハウジング本体21の露出した部分(シール部材26よりも前方の領域)においては、リテーナ24が側方(両ハウジング10,20の嵌合方向と直交する方向)から組み付けられる。リテーナ24は、U字形の取付部24Aと、この取付部24Aから延出する板状の抜止め部24Bとからなり、抜止め部24Bをハウジング本体21内のリテーナ取付孔27内に挿入するようにして組み付けられる。リテーナ24が図9に示す仮係止位置にある状態では、リテーナ24の貫通孔24Cがハウジング本体21内の端子収容部28と整合して雌端子金具22の端子収容部28への挿入動作が許容され、リテーナ24が図8に示す本係止位置に変位すると、貫通孔24Cの孔縁が端子収容部28内に進出して雌端子金具22に係止し、もって雌端子金具22の抜け方向の変位を規制する。
【0013】尚、リテーナ24が仮係止位置にある状態ではリテーナ24の取付部24Aがハウジング本体21の外面から突出するため、両ハウジング10,20を嵌合しようとしても取付部24Aが機器側ハウジング10のフード部12と干渉して嵌合動作を規制される。即ち、両ハウジング10,20の嵌合動作の可否により、リテーナ24の取付け状態の異常を検知することができる。電線カバー23は、雌端子金具22に圧着されてハウジング本体21の背面から延出した電線(図示せず)を所定の方向へ導出させるためのものである。この電線カバー23の側面には、レバー29が取り付けられている。レバー29は、操作部29Aの両端から一対のアーム部29Bを延出してなり、アーム部29Bの軸受孔29Cを電線カバー23の支持軸30に嵌合することで回動可能に支持されている。アーム部29Bには、機器側ハウジング10のフード部12の外面に形成されたカムピン15が係合されるカム溝29Dが形成されており、カム溝29Dにカムピン15を係合させた状態でレバー29を回動することで、両ハウジング10,20の嵌合操作及び離脱操作を小さい操作力でも容易に行うことができるようになっている。尚、筒形嵌合部25には、カムピン15との干渉を回避するための逃がし溝31が形成されている。
【0014】さて、この機器側ハウジング10に嵌合されるべき雌側ハウジング20の極数及びハウジング本体21の形状は、別の機器側ハウジング(図示せず)や別の雄側ハウジング(図示せず)に嵌合すべき他の雌側ハウジング20と共通化されているため、不正な組み合わせで嵌合されるのを回避するための手段が設けられている。即ち、機器側ハウジング10においては、嵌合凹部13の内周に両ハウジング10,20の嵌合方向に沿って延びるリブ16(本発明の構成要件である誤嵌合規制手段)が形成されている。このリブ16の周方向における形成位置は、嵌合すべき雌側ハウジング20側の誤嵌合規制手段と整合するように設定されている。このリブ16の前端は、フード部12の前端よりも後方に位置され、これにより、両ハウジング10,20が嵌合した状態でリブ16が支持部材と干渉しないようになっている。
【0015】一方、雌側ハウジング20においては、雌端子金具22を抜け止めするためのリテーナ24が誤嵌合規制手段として機能する。このリテーナ24は、上述したようにハウジング本体21とは別体部品として成形されたものであり、その取付部24Aの外面には、両ハウジング10,20の嵌合方向に延びる規制溝24Dが形成されている。この規制溝24Dの周方向における形成位置は、嵌合すべき機器側ハウジング10のリブ16と整合するように設定されている。
【0016】また、本実施形態とは極数とハウジング形状は共通するが別の機器側ハウジング10(図示せず)又は他の雄側ハウジング(図示せず)と嵌合される雌側ハウジング20については、その周方向における規制溝24Dの位置は、本実施形態に示す雌側ハウジング20の規制溝24Dとは異なる位置に設定されている。かかる誤嵌合規制手段によれば、正しい組み合わせで機器側ハウジング10と雌側ハウジング20とを嵌合する際には、図10に示すように、リブ16の位置と規制溝24Dの位置とが整合して互いに嵌合するので、両ハウジング10,20の嵌合動作が許容される。これに対し、本実施形態の機器側ハウジング10に対して不正な組み合わせとなる雌側ハウジング20を組み合わせようとした場合には、図11に示すように規制溝24Dの位置がリブ16に対して周方向に外れるため、リブ16はリテーナ24の前端と干渉し、両ハウジング10,20の嵌合が途中で阻止される。このようにして、両ハウジング10,20の嵌合の組み合わせが適正であるか不正であるかを検知することができる。
【0017】本実施形態では、雌側ハウジング20の誤嵌合規制手段であるリテーナ24がハウジング本体21とは別体の部品とされているので、両ハウジング10,20の嵌合の組み合わせが複数想定される場合でも、ハウジング本体21、電線カバー23及びレバー29については共通の部品として1つの金型によって製造することができる。これは、端子収容部28や筒形嵌合部25などが形成されていて形状が複雑であるハウジング本体21の金型コストが高くつく、という事情を考えた場合、金型コストの低減が可能であるということを意味する。一方、リテーナ24については、組み合わせに応じて規制溝24Dの位置が異なる複数種類のものを製造する必要があるが、リテーナはU字形の取付部24Aと貫通孔24Cを開口させた抜止め部24Bだけの比較的簡素な形状であるから、ハウジング本体21用の金型に比べるとリテーナ24の金型はコスト的に有利である。したがって、規制溝24Dを異ならせた複数種類の雌側ハウジング20を製造するに際して、本実施形態は金型コストを全体として低く抑えることが可能となっている。
【0018】また、雌側ハウジング20の誤嵌合規制手段であるリテーナ24は、誤嵌合規制機能の他に雌端子金具22を抜止めする機能も兼ね備えている。したがって、雌側ハウジング20の誤嵌合規制手段をリテーナ24とは別のものにした場合と比べると、部品点数が少なくて済む。また、機器本体11には、雌側ハウジング20のハウジング本体21を嵌合させるための余裕空間があるため、機器側ハウジング10を全体として機器本体11の内側へ凹んだ形状としており、これにより、雌側ハウジング20の筒形嵌合部25に内嵌されるフード部12の突出寸法を小さくすることが実現されている。尚、フード部12に外嵌される雌側ハウジング20の筒形嵌合部25の突出長さも、フード部12の突出長さに合わせて短くなっている。
【0019】[他の実施形態]本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では誤嵌合規制手段をハウジング本体とは別体の部品とする構成を雌側ハウジングのみに適用したが、本発明によれば、誤嵌合規制手段をハウジング本体と別体の部品とする構成は、雌側ハウジングと機器側ハウジングの双方に適用してもよく、機器側ハウジングのみに適用してもよい。
【0020】(2)上記実施形態では誤嵌合規制手段がリテーナの機能を兼ね備えるようにしたが、本発明によれば、リテーナ(端子金具の抜止め)の機能を持たない誤嵌合規制手段としての専用の部品としてもよい。
(3)上記実施形態ではリテーナがハウジング本体に対して嵌合方向と直交する方向に組み付けられるものであったが、本発明によれば、リテーナをハウジング本体の前方から組み付けるものであってもよい。
【0021】(4)上記実施形態では防水タイプのコネクタについて説明したが、本発明は、非防水タイプのコネクタにも適用できる。
(5)上記実施形態ではレバー式のコネクタについて説明したが、本発明は、レバー式以外のコネクタにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1において雌側ハウジングと電線カバーとの分離状態を示す斜視図
【図2】雌側ハウジングに電線カバーを取り付けた状態を示す斜視図
【図3】雌側ハウジングを機器側ハウジングに嵌合した状態を示す一部切欠斜視図
【図4】雌側ハウジングを機器側ハウジングに嵌合した状態を示す平面図
【図5】機器側ハウジングの縦断面図
【図6】機器側ハウジングの水平断面図
【図7】機器側ハウジングの正面図
【図8】雌側ハウジングにおいてリテーナが本係止位置にある状態を示す断面図
【図9】雌側ハウジングにおいてリテーナが仮係止位置にある状態を示す断面図
【図10】機器側ハウジングにおいて正規の組み合わせの雌側ハウジングが嵌合された状態を示す一部切欠正面図
【図11】機器側ハウジングにおいて不正な組み合わせの雌側ハウジングが嵌合されたことを検知している状態を示す正面図
【符号の説明】
10…機器側ハウジング
16…リブ(誤嵌合規制手段)
20…雌側ハウジング
21…ハウジング本体
24…リテーナ(誤嵌合規制手段)
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誤嵌合検知機能を備えたコネクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】誤嵌合検知機能を備えたコネクタとして、従来、米国特許第4,772,229号公報に開示されているものがある。これは、互いに嵌合可能な雄形ハウジングと雌形ハウジングとからなり、雄形ハウジングの嵌合凹部の内周には嵌合方向に沿ったリブが形成されているとともに雌形ハウジングの外周にはリブと整合する溝が形成されている。リブと溝の位置は、雄側と雌側が正しい組み合わせのときにのみ嵌合されるように、各ワイヤーハーネス毎に異なる位置に設定されている。これにより、誤った組み合わせで雄雌両ハウジングを嵌合しようとすると、リブが溝からずれて雌形ハウジングの先端面周縁部に突き当たり、嵌合が阻止される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に、ハウジングは端子金具を挿入するための複数のキャビティ等が形成されているため、形状が複雑であり、このように形状の複雑な樹脂成形品を製造するには、金型コストが高くつくという事情がある。一方、上記従来のコネクタをみると、誤嵌合検知のためのリブと溝がハウジングに直接形成されているので、リブと溝の位置が異なる複数種類のハウジングを用意しなければならない。即ち、ハウジングの製造に際しては、ただでさえコストの高い金型が複数台必要であることから、製造コストが高くつくという問題がある。
【0004】本願発明は上記事情に鑑みて創案され、製造コストの低減を図ることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、互いに嵌合可能とされた一対のハウジングと、この一対のハウジングの双方に設けられ、その両ハウジングが不正な組み合わせである場合にその両ハウジングの嵌合を規制する誤嵌合規制手段とを備えてなるコネクタであって、前記一対のハウジングのうちの少なくとも一方においては、その端子金具が取り付けられるハウジング本体と前記誤嵌合規制手段とが別体部品とされている構成とした。
【0006】請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記誤嵌合規制手段は、前記ハウジングに組み付けられることでそのハウジングに挿入された端子金具を抜止めする機能を備えている構成とした。
【0007】
【発明の作用及び効果】[請求項1の発明]少なくとも一方のハウジングにおいては、そのハウジング本体と誤嵌合規制手段とが別体の部品とされているので、両ハウジングの嵌合の組み合わせが複数ある場合でも、ハウジング本体は共通の部品として1つの金型によって製造することができる。一方、ハウジング本体とは別体の誤嵌合規制手段である部品については、端子金具の挿入空間等が形成されるハウジング本体に比べて簡素な形状とすることが可能だから、その金型のコストをハウジング本体用の金型コストよりも低く抑えることが可能である。よって、総体的には金型コストの低減を図ることができる。
【0008】[請求項2の発明]誤嵌合規制手段はいわゆるリテーナとしての機能を兼ね備えているので、リテーナとは別体にした場合と比べると部品点数が少なくて済む。
【0009】
【発明の実施の形態】[実施形態1]以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図11を参照して説明する。本実施形態のコネクタは、互いに嵌合・離脱が可能な雌側ハウジング20と機器側ハウジング10とを備えて構成される。
【0010】機器側ハウジング10は、機器本体11の外面に設けられ、機器本体11を構成する外壁部を凹ませるとともに、この凹ませた部分の周縁から外方へフード部12を角筒状に突出させたものであり、この凹み部分とフード部12とによって構成された嵌合凹部13内には、雌側ハウジング20のハウジング本体21が嵌合されるようになっている。この機器側ハウジング10は、機器本体11側に嵌合凹部13を形成するための余裕のスペース(図示せず)が確保されていることを前提としたものであり、嵌合凹部13は機器本体11の内部に食い込んだ形態とされている。これにより、機器本体11の外面からのフード部12の突出寸法が小さく抑えられている。かかる機器側ハウジング10の嵌合凹部13内には、壁部を貫通した複数の雄端子金具14の先端部が臨んでおり、雌側ハウジング20が嵌合凹部13に嵌合されると各雄端子金具14に雌端子金具22が接続されるようになっている。
【0011】雌側ハウジング20は、雌端子金具22(図8及び図9に示す)が挿入されるハウジング本体21と、このハウジング本体21に取り付けられる電線カバー23と、ハウジング本体21に取り付けられるリテーナ24(本発明の構成要件である誤嵌合規制手段)とから構成される。ハウジング本体21には、その外周を包囲するように筒形嵌合部25が形成されている。筒形嵌合部25はハウジング本体21の後端から前方へ延出されているが、その延出端はハウジング本体21の前端面よりも後方となるように寸法設定されている。したがって、ハウジング本体21の略前半部分は外部に露出されている。かかる筒形嵌合部25は、両ハウジング10,20の嵌合時に機器側ハウジング10のフード部12の外周に嵌合される。また、ハウジング本体21の外周における筒形嵌合部25で囲まれた部分には、機器側ハウジング10のフード部12の内周面との間をシールするためのリング状のシール部材26が装着されている。
【0012】このハウジング本体21の露出した部分(シール部材26よりも前方の領域)においては、リテーナ24が側方(両ハウジング10,20の嵌合方向と直交する方向)から組み付けられる。リテーナ24は、U字形の取付部24Aと、この取付部24Aから延出する板状の抜止め部24Bとからなり、抜止め部24Bをハウジング本体21内のリテーナ取付孔27内に挿入するようにして組み付けられる。リテーナ24が図9に示す仮係止位置にある状態では、リテーナ24の貫通孔24Cがハウジング本体21内の端子収容部28と整合して雌端子金具22の端子収容部28への挿入動作が許容され、リテーナ24が図8に示す本係止位置に変位すると、貫通孔24Cの孔縁が端子収容部28内に進出して雌端子金具22に係止し、もって雌端子金具22の抜け方向の変位を規制する。
【0013】尚、リテーナ24が仮係止位置にある状態ではリテーナ24の取付部24Aがハウジング本体21の外面から突出するため、両ハウジング10,20を嵌合しようとしても取付部24Aが機器側ハウジング10のフード部12と干渉して嵌合動作を規制される。即ち、両ハウジング10,20の嵌合動作の可否により、リテーナ24の取付け状態の異常を検知することができる。電線カバー23は、雌端子金具22に圧着されてハウジング本体21の背面から延出した電線(図示せず)を所定の方向へ導出させるためのものである。この電線カバー23の側面には、レバー29が取り付けられている。レバー29は、操作部29Aの両端から一対のアーム部29Bを延出してなり、アーム部29Bの軸受孔29Cを電線カバー23の支持軸30に嵌合することで回動可能に支持されている。アーム部29Bには、機器側ハウジング10のフード部12の外面に形成されたカムピン15が係合されるカム溝29Dが形成されており、カム溝29Dにカムピン15を係合させた状態でレバー29を回動することで、両ハウジング10,20の嵌合操作及び離脱操作を小さい操作力でも容易に行うことができるようになっている。尚、筒形嵌合部25には、カムピン15との干渉を回避するための逃がし溝31が形成されている。
【0014】さて、この機器側ハウジング10に嵌合されるべき雌側ハウジング20の極数及びハウジング本体21の形状は、別の機器側ハウジング(図示せず)や別の雄側ハウジング(図示せず)に嵌合すべき他の雌側ハウジング20と共通化されているため、不正な組み合わせで嵌合されるのを回避するための手段が設けられている。即ち、機器側ハウジング10においては、嵌合凹部13の内周に両ハウジング10,20の嵌合方向に沿って延びるリブ16(本発明の構成要件である誤嵌合規制手段)が形成されている。このリブ16の周方向における形成位置は、嵌合すべき雌側ハウジング20側の誤嵌合規制手段と整合するように設定されている。このリブ16の前端は、フード部12の前端よりも後方に位置され、これにより、両ハウジング10,20が嵌合した状態でリブ16が支持部材と干渉しないようになっている。
【0015】一方、雌側ハウジング20においては、雌端子金具22を抜け止めするためのリテーナ24が誤嵌合規制手段として機能する。このリテーナ24は、上述したようにハウジング本体21とは別体部品として成形されたものであり、その取付部24Aの外面には、両ハウジング10,20の嵌合方向に延びる規制溝24Dが形成されている。この規制溝24Dの周方向における形成位置は、嵌合すべき機器側ハウジング10のリブ16と整合するように設定されている。
【0016】また、本実施形態とは極数とハウジング形状は共通するが別の機器側ハウジング10(図示せず)又は他の雄側ハウジング(図示せず)と嵌合される雌側ハウジング20については、その周方向における規制溝24Dの位置は、本実施形態に示す雌側ハウジング20の規制溝24Dとは異なる位置に設定されている。かかる誤嵌合規制手段によれば、正しい組み合わせで機器側ハウジング10と雌側ハウジング20とを嵌合する際には、図10に示すように、リブ16の位置と規制溝24Dの位置とが整合して互いに嵌合するので、両ハウジング10,20の嵌合動作が許容される。これに対し、本実施形態の機器側ハウジング10に対して不正な組み合わせとなる雌側ハウジング20を組み合わせようとした場合には、図11に示すように規制溝24Dの位置がリブ16に対して周方向に外れるため、リブ16はリテーナ24の前端と干渉し、両ハウジング10,20の嵌合が途中で阻止される。このようにして、両ハウジング10,20の嵌合の組み合わせが適正であるか不正であるかを検知することができる。
【0017】本実施形態では、雌側ハウジング20の誤嵌合規制手段であるリテーナ24がハウジング本体21とは別体の部品とされているので、両ハウジング10,20の嵌合の組み合わせが複数想定される場合でも、ハウジング本体21、電線カバー23及びレバー29については共通の部品として1つの金型によって製造することができる。これは、端子収容部28や筒形嵌合部25などが形成されていて形状が複雑であるハウジング本体21の金型コストが高くつく、という事情を考えた場合、金型コストの低減が可能であるということを意味する。一方、リテーナ24については、組み合わせに応じて規制溝24Dの位置が異なる複数種類のものを製造する必要があるが、リテーナはU字形の取付部24Aと貫通孔24Cを開口させた抜止め部24Bだけの比較的簡素な形状であるから、ハウジング本体21用の金型に比べるとリテーナ24の金型はコスト的に有利である。したがって、規制溝24Dを異ならせた複数種類の雌側ハウジング20を製造するに際して、本実施形態は金型コストを全体として低く抑えることが可能となっている。
【0018】また、雌側ハウジング20の誤嵌合規制手段であるリテーナ24は、誤嵌合規制機能の他に雌端子金具22を抜止めする機能も兼ね備えている。したがって、雌側ハウジング20の誤嵌合規制手段をリテーナ24とは別のものにした場合と比べると、部品点数が少なくて済む。また、機器本体11には、雌側ハウジング20のハウジング本体21を嵌合させるための余裕空間があるため、機器側ハウジング10を全体として機器本体11の内側へ凹んだ形状としており、これにより、雌側ハウジング20の筒形嵌合部25に内嵌されるフード部12の突出寸法を小さくすることが実現されている。尚、フード部12に外嵌される雌側ハウジング20の筒形嵌合部25の突出長さも、フード部12の突出長さに合わせて短くなっている。
【0019】[他の実施形態]本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では誤嵌合規制手段をハウジング本体とは別体の部品とする構成を雌側ハウジングのみに適用したが、本発明によれば、誤嵌合規制手段をハウジング本体と別体の部品とする構成は、雌側ハウジングと機器側ハウジングの双方に適用してもよく、機器側ハウジングのみに適用してもよい。
【0020】(2)上記実施形態では誤嵌合規制手段がリテーナの機能を兼ね備えるようにしたが、本発明によれば、リテーナ(端子金具の抜止め)の機能を持たない誤嵌合規制手段としての専用の部品としてもよい。
(3)上記実施形態ではリテーナがハウジング本体に対して嵌合方向と直交する方向に組み付けられるものであったが、本発明によれば、リテーナをハウジング本体の前方から組み付けるものであってもよい。
【0021】(4)上記実施形態では防水タイプのコネクタについて説明したが、本発明は、非防水タイプのコネクタにも適用できる。
(5)上記実施形態ではレバー式のコネクタについて説明したが、本発明は、レバー式以外のコネクタにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1において雌側ハウジングと電線カバーとの分離状態を示す斜視図
【図2】雌側ハウジングに電線カバーを取り付けた状態を示す斜視図
【図3】雌側ハウジングを機器側ハウジングに嵌合した状態を示す一部切欠斜視図
【図4】雌側ハウジングを機器側ハウジングに嵌合した状態を示す平面図
【図5】機器側ハウジングの縦断面図
【図6】機器側ハウジングの水平断面図
【図7】機器側ハウジングの正面図
【図8】雌側ハウジングにおいてリテーナが本係止位置にある状態を示す断面図
【図9】雌側ハウジングにおいてリテーナが仮係止位置にある状態を示す断面図
【図10】機器側ハウジングにおいて正規の組み合わせの雌側ハウジングが嵌合された状態を示す一部切欠正面図
【図11】機器側ハウジングにおいて不正な組み合わせの雌側ハウジングが嵌合されたことを検知している状態を示す正面図
【符号の説明】
10…機器側ハウジング
16…リブ(誤嵌合規制手段)
20…雌側ハウジング
21…ハウジング本体
24…リテーナ(誤嵌合規制手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに嵌合可能とされた一対のハウジングと、この一対のハウジングの双方に設けられ、その両ハウジングが不正な組み合わせである場合にその両ハウジングの嵌合を規制する誤嵌合規制手段とを備えてなるコネクタであって、前記一対のハウジングのうちの少なくとも一方においては、その端子金具が取り付けられるハウジング本体と前記誤嵌合規制手段とが別体部品とされていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】 前記誤嵌合規制手段は、前記ハウジングに組み付けられることでそのハウジングに挿入された端子金具を抜止めする機能を備えていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項1】 互いに嵌合可能とされた一対のハウジングと、この一対のハウジングの双方に設けられ、その両ハウジングが不正な組み合わせである場合にその両ハウジングの嵌合を規制する誤嵌合規制手段とを備えてなるコネクタであって、前記一対のハウジングのうちの少なくとも一方においては、その端子金具が取り付けられるハウジング本体と前記誤嵌合規制手段とが別体部品とされていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】 前記誤嵌合規制手段は、前記ハウジングに組み付けられることでそのハウジングに挿入された端子金具を抜止めする機能を備えていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図10】
【図4】
【図6】
【図7】
【図11】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図5】
【図10】
【図4】
【図6】
【図7】
【図11】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2000−331747(P2000−331747A)
【公開日】平成12年11月30日(2000.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−137699
【出願日】平成11年5月18日(1999.5.18)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成12年11月30日(2000.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成11年5月18日(1999.5.18)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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