説明

コネクタ

【課題】 端子の狭ピッチ化をより効果的に達成することによりコネクタの小型化を図る。
【解決手段】 ディスクリート線3の末端に装着された端子5をハウジング20内に複数並べて収納した配線材側コネクタC1と、各端子5の相手側端子12をハウジング10内に保持した基板側コネクタC2とを有し、両ハウジング10,20を嵌合させることにより各コネクタC1,C2の端子同士を接触させるコネクタ。配線材側コネクタC1に関し、端子5は、インシュレーションバレル34のクリンプワイドがクリンプハイトよりも大きい扁平状態となるようにディスクリート線に対して装着(圧着)され、隣接する端子5同士がインシュレーションバレル34のクリンプハイトの方向に並ぶように前記ハウジング20に対して収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクリート線を回路基板に対して電気的に接続するためのコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、先端にタブ状の接触片を持つ雄型端子をディスクリート線の末端に装着し、複数の端子収納室を並列に備えた雌型コネクタハウジングの各端子収納室に前記雄型端子を収納することにより雌型コネクタを構成する一方、雌型端子を収納した雄型コネクタハウジングをプリント基板上に実装することにより雄型コネクタを構成し、これらコネクタを互いに結合させることにより前記両端子を介してディスクリート線をプリント基板上の回路に電気的に接続するようにしたコネクタが一般に知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種のコネクタにおいて、例えば車載用の各種電気機器では省スペース化の要請からコネクタの小型化がより一層求められている。
【0004】
そこで、端子配列をより狭ピッチ化すべく端子自体の小型化が従来から進められているが、小型化が進むに伴いディスクリート線の線径との関係で狭ピッチ化が困難なケースが生じている。すなわち、ディスクリート線に装着される端子(雄型端子の場合)は、例えば、図13に示すようにタブ状の接触片51の後方に一対のワイヤーバレル52と一対のインシュレーションバレル54とが並べて設けられ、ワイヤーバレル52がディスクリート線先端に露出した導体部分50aに、インシュレーションバレル54がその後方の被覆部分にそれぞれ圧着される(加締める)ように構成されているが、ここで、インシュレーションバレル54はディスクリート線50に作用する引張力の一部を負担し得る程度にディスクリート線50をその被覆の外側から抱え込むように圧着されるため、図14に示すように、その圧着成形幅(クリンプワイドw)はディスクリート線50の線径よりもさらに大きなものとなる。従って、端子自体を小型化しても、結局このクリンプワイドwの制約を受けることとなり狭ピッチ化を進めることが困難なケースが生じている。
【0005】
なお、圧着成形幅(クリンプワイドw)が小さくなるようにインシュレーションバレル54を圧着することも考えられるが、この場合にはディスクリート線50が圧着成形高さ(クリンプハイトh)方向に変形してインシュレーションバレル54が開き易くなるため、ディスクリート線50に対してインシュレーションバレル54を適切に圧着することが難しくなるという弊害がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、上記のような端子配列の狭ピッチ化をより効果的に達成することによりコネクタの小型化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するために、本発明の請求項1に係るコネクタは、ディスクリート線にインシュレーションバレルを圧着することにより当該ディスクリート線の末端に装着した第1端子をハウジング内に複数並べた状態で収納してなる第1コネクタと、前記第1端子に接触可能な第2端子をハウジング内に収納してなる第2コネクタとを有し、前記ハウジング同士の嵌合により各コネクタの端子同士を接触させるコネクタにおいて、前記インシュレーションバレルのクリンプワイド(圧着成型幅)がクリンプハイト(圧着成型高さ)よりも大きい扁平状態となるように前記ディスクリート線に対してインシュレーションバレルが圧着された状態で前記第1端子がディスクリート線に装着され、かつ隣接する端子同士が前記インシュレーションバレルのクリンプハイトの方向に並ぶように前記1コネクタのハウジングに対して各第1端子が収納されているものである。
【0008】
このコネクタによると、ディスクリート線を保持する第1コネクタについて、上記のようにインシュレーションバレルのクリンプハイトの方向に第1端子を並べた状態で該第1端子をハウジング内に収納しているので、端子間ピッチの設定に際して従来のようにインシュレーションバレルのクリンプワイドによる制約を受けることが無く、しかもクリンプワイドがクリンプハイトよりも大きい扁平状態となるようにインシュレーションバレルがディスクリート線に対して圧着されているので、同圧着部分の端子配列方向の占有スペースが縮小される。従って、効果的に端子配列の狭ピッチ化を図ることができる。その上、クリンプワイドがクリンプハイトよりも大きい扁平状態となるようにインシュレーションバレルをディスクリート線に対して圧着するので、ディスクリート線に対するインシュレーションバレルの圧着も適切に行うことができる。
【0009】
なお、上記第1コネクタについては、前記インシュレーションバレルのクリンプワイドがクリンプハイトよりも大きい扁平状態で、かつ前記ディスクリート線の線径よりもクリンプハイトが小さくなるようにインシュレーションバレルが該ディスクリート線に対して圧着されているのが好ましい(請求項2)。
【0010】
この構成によると、インシュレーションバレルの圧着部分がディスクリート線の線径よりも小さい扁平状態となるので、より効果的に狭ピッチ化を図ることができる。
【0011】
なお、このコネクタにおいて、上記第1コネクタのハウジングは、前記第1端子のうち前記ディスクリート線を保持している側が端子配列方向における一方側を向く姿勢、又はこれと反対側を向く姿勢の何れの姿勢でも前記第1端子を収納し得るように構成され、前記第1端子は、上記何れの姿勢でハウジング内に収納されても第2端子に接触し得るように第2端子に対する接触部分が形成されているのが好ましい(請求項3)。
【0012】
この構成によると、第1コネクタのハウジングに対する第1端子の収納方向の自由度が向上するため、第1コネクタの組立作業性を向上させる一方で誤作業を有効に防止することができるようになる。
【0013】
この場合、前記第1端子の先端に前記接触部分としてタブ状接触片を有するものでは、このタブ状接触片は、第1端子を前記ハウジングに収納した状態で端子配列方向と直交する方向に並ぶ互いに平行な一対の単位接触片を有するものであってもよい(請求項4)。
【0014】
つまり、ハウジングに対する第1端子の挿入姿勢の自由度を上記のように高めると、例えば第1端子に対する第2端子の接触高さ位置がコネクタ中心からずれているような場合には第1端子の収納姿勢によっては第1端子と第2端子との間にギャップが生じて両端子の接触が上手くいかない場合が考えられる。このような場合、上記のように接触片として一対の単位接触片を設けておくことで、何れの姿勢で第1端子がハウジングに収納されても上記ギャップを解消して第1端子を適切に第2端子に接触させることが可能となる。
【0015】
なお、この場合、前記タブ状接触片は、前記一対の単位接触片とこれら単位接触片同士をそれらの並び方向に連結する連結部とをもつ断面コ字型に形成され、前記第1コネクタのハウジングには、第1端子が収納された状態で前記一対の単位接触片の間に介挿されて前記タブ状接触片を各単位接触片の並び方向に拘束する拘束部分を備えているのが好ましい(請求項5)。
【0016】
このコネクタによれば、コネクタ接続時のタブ状接触片の浮き上がりを防止することが可能となり、第1端子と第2端子との接触信頼性を高めることが可能となる。
【0017】
この場合、前記拘束部分は、前記タブ状接触片の先端側から前記一対の単位接触片の間に介挿されることにより前記第1端子が上記何れの姿勢で前記第1コネクタのハウジング内に収納されても前記タブ状接触片を各単位接触片の並び方向に拘束し得るように構成されているのが好ましい(請求項6)。
【0018】
この構成によれば、第1端子が上記の何れの姿勢でハウジング内に収納された場合でも、コネクタ接続時のタブ状接触片の浮き上がりを確実に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1〜6に係るコネクタによると、ディスクリート線を保持する第1コネクタの端子配列のピッチ設定に関して、従来のようにインシュレーションバレルのクリンプワイドによる制約を受けることが無くなるため、端子配列の狭ピッチ化をより効果的に図ることができる。そして、このように第1コネクタの端子配列の狭ピッチ化を通じてコネクタ全体の前記端子配列方向における小型化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るコネクタの実施形態を説明する斜視概略図であり、端子等を一部引き出した状態で示している。この図において、C2は基板側コネクタ(第2コネクタ)で、回路基板Pの表面に実装された状態で固定されている。また、C1は配線材側コネクタ(第1コネクタ)で、前記基板側コネクタC2に結合されることによりディスクリート線5を回路基板Pに接続するように構成されている。
【0022】
基板側コネクタC2は、配線材側コネクタC1の嵌合用凹部10aを具備した幅方向に細長のコネクタハウジング10(以下、ハウジング10と略す)を有している。
【0023】
このハウジング10には、図2および図3に示すように、多数の端子収納室13が幅方向(図2では左右方向)に並列に、かつ上下2段に形成されている。同図に示すように、上下の端子収納室13は互いに半ピッチずれた状態で交互に設けられており、これによってハウジング全体として端子収納室13が千鳥状の配列となっている。
【0024】
各端子収納室13には端子12(第2端子)がそれぞれ収納されている。端子12は、上下に撓み変位可能な接続用撓み片14aとその下側の支持部14bとからなるフォーク状(コ字型)の接続部分をその前側(図3では左端)に有する一方、後側に脚部14cを備えた雌型の端子で、端子収納室13に対してハウジング10の後側から差し込まれることにより収納されており、さらに脚部14cが回路基板Pの固定用ランドに半田付けされることにより基板上回路(パターン)にそれぞれ電気的に接続されている。なお、上下2段の端子収納室13のうち上段に収納される端子12は下段に収納されるものよりも脚部14cが上下に長く形成され、これにより回路基板Pへの半田付けが可能となっている。
【0025】
ハウジング10の幅方向両端部分には、さらに基板側コネクタC2(ハウジング10)を回路基板Pに固定するための固定金具15A,15Bが挿着されている。
【0026】
これらの固定金具15A,15Bは、図1、図2および図4(固定金具15Aのみ図示)に示すように脚部16を有しており、これら脚部16が回路基板Pに半田付けされることにより回路基板Pに対してハウジング10が固定されている。
【0027】
各固定金具15A,15Bには、フック17aを前端に具備し、かつハウジング10内でその幅方向に撓み変位可能な係止片17(図4参照)がそれぞれ一体に形成されており、コネクタ嵌合時にはこの係止片17が配線材側コネクタC1の後記ハウジング20に係合することによって両コネクタを嵌合状態にロックするように構成されている。つまり、これら固定金具15A,15Bがコネクタのロック機能を兼ね備えた構成となっている。
【0028】
なお、固定金具15A,15Bの各係止片17は、図2に示すように上下にオフセットされている。これはハウジング10内に各固定金具15A,15Bをコンパクトに収めるための工夫であり、これにより後述するように基板側コネクタC2の幅方向の省スペース化が達成されている。
【0029】
一方、配線材側コネクタC1は、図1および図5に示すように幅方向に細長のコネクタハウジング20(以下、ハウジング20と略す)を有している。このハウジング20には、複数の端子収納室22が幅方向に並列に、かつ上下二段に設けられており、ディスクリート線3の先端に装着された端子5(第1端子)が各端子収納室22に収納されている。
【0030】
端子収納室22は、上下のものが幅方向に半ピッチずれた状態で交互に設けられており、これにより基板側コネクタC2の前記ハウジング10と同様にハウジング全体として端子収納室22が千鳥状の配列となっている。
【0031】
ハウジング20の前側、すなわちコネクタ接続方向の前端面には、上下の端子収納室22の並びに対応して一対の舌片状の端子支持部24が突設されている。
【0032】
これらの端子支持部24は、各端子収納室22に収納される端子5の後記接触片5bを支持するもので、各端子支持部24の上面側には、図5および図6に示すようにそれぞれ上向きに開き、かつ端子収納室22内と連通する複数の支持溝26が幅方向に並設されている。また、各支持溝26の前端壁26aには、端子5の接触片5bの浮き上がりを防止するための突起27が後向き(図6では左向き)に突設されている。
【0033】
ディスクリート線3は、例えば撚線の外周に被覆(絶縁層)が形成された単線で、上述のようにその先端には端子5が装着されている。
【0034】
端子5は、図7(a)に示すように、ディスクリート線3を保持するための電線保持部5aとその先端側に設けられるタブ状の接触片5bとを備えた雄型端子である。
【0035】
電線保持部5aには、端子5の底板30の両側に立ち上がる一対のワイヤーバレル32と一対のインシュレーションバレル34とが前後に並べて設けられている。
【0036】
接触片5bは、前記底板30に連続して前後方向に延びる連結部37と、その両側から立ち上がって前記各バレル32,34にそれぞれ並ぶ前後方向に細長の互いに平行な一対の単位接触片36a,36bとを備えた断面コ字型の形状に形成されている。また、各単位接触片36a,36bの外側であって、その基端部には端子5を前記ハウジング20に係止するためのフック38が一体形成されている。
【0037】
ディスクリート線3への端子5の装着は、同図に示すようにディスクリート線3の末端部分において被覆が除去されることにより導体3aが外部露出され、この導体3aの部分に対してワイヤーバレル32が、その後側の被覆部分にインシュレーションバレル34がそれぞれ圧着されることにより行われている。ここで、ワイヤーバレル32については、導通性能および保持力を確保するためにワイヤーバレル32の先端が導体3aに食い込むように強固に圧着されている(加締される)。一方、インシュレーションバレル34は、その先端同士が向かい合うように被覆部分の外側からディスクリート線3を抱え込ませ、その圧着部分が扁平になるように圧着されている。具体的には、図8(a)に示すように、クリンプハイトh(圧着成型高さ)よりもクリンプワイドw(圧着成型幅)が十分に大きくなり、かつクリンプハイトhがディスクリート線3の直径d(図8(b)参照)よりも小さくなるようにディスクリート線3に対してインシュレーションバレル34が圧着されている。これによりディスクリート線3を含む電線保持部5aの全体が扁平にされている。
【0038】
そして、このようにディスクリート線3の先端に装着された端子5が各端子収納室22に収納されている。端子収納室22への端子5の収納は、図7(b)に示すように端子5を横向き、すなわち図1および図6に示すようにインシュレーションバレル34のクリンプハイトhの方向が端子収納室22の並び方向(幅方向)に向くように端子5を横向きにし、この状態で端子5をハウジング20の後方から端子収納室22に挿入することにより行われている。詳細には、端子5を端子収納室22に挿入しつつその先端(接触片5b)を端子収納室22から前方に突出させて端子支持部24の支持溝26に介挿し、さらに接触片5bの先端が支持溝26の前端壁26aに当接する位置まで端子5をハウジング20に対して差込む。このようにすると、図6(b)に示すように、支持溝26の前端壁26aに形成された突起27が接触片5bの両単位接触片36a,36bの間に挿入されるとともに、各単位接触片36a,36bに形成されたフック38が端子収納室22の出口(前方側開口)縁部に係合する。これによって端子5のうち接触片5bが外部露出され、かつ突起27により接触片5bの先端が上下方向に拘束された状態で、端子5がディスクリート線3と共にハウジング20に収納、保持される。
【0039】
なお、このハウジング20の端子収納室22は、ほぼ上下、左右が対称な断面形状となっており、端子5が左右何れの向き、つまり端子5におけるディスクリート線3の保持面側が端子収納室22(支持溝26)の並び方向の一方側又は他方側(図9、図10では左側又は右側)の何れを向いた状態でも端子5を挿着し得るようになっている。また、端子支持部24も、同図に示すように、端子収納室22に対して端子5が上記の何れの向きで挿入された場合でも接触片5bの上下方向の変位を適切に拘束して、単位接触片36a,36bのうち上側に位置するものの高さ位置を一定に保ち得るように突起27等が形成されている。つまり、これによって何れの向きで端子5が挿着された場合でも、単位接触片36a,36bの何れか一方に対して相手側の端子12が確実に接触し得るようになっている。
【0040】
なお、ハウジング20の幅方向両端には、図1および図5に示すようにその側面に、基板側コネクタC2の前記係止片17に対応する係止部28が一体形成されている。
【0041】
上記のようなコネクタC1、C2の構成において、両コネクタC1、C2を結合させてディスクリート線3を回路基板Pに接続するには、図11(a),図12(b)に示すように、配線材側コネクタC1を基板側コネクタC2の前記嵌合用凹部10aに対向させ、配線材側コネクタC1の両端子支持部24の部分をその先端側から嵌合用凹部10aに差し込む。より詳しくは、基板側コネクタC2に収納された上下二段の端子12のうち、上段の端子12の接続用撓み片14aと支持部14bとの間に配線材側コネクタC1の上側の端子支持部24を、同じく下段の端子12の接続用撓み片14aと支持部14bとの間に配線材側コネクタC1の下側の端子支持部24を差し込みながら両コネクタC1,C2のハウジング同士を嵌合させる。このようにすると、ハウジング20が差し込まれるに伴い基板側コネクタC2の前記係止片17が外側に押し広げられ、両コネクタC1,C2が完全な嵌合状態となると、図12(b)に示すように係止片17のフック17aがハウジング20の係止部28に係合し、その結果、両コネクタC1,C2が嵌合状態にロックされる。そして、このようにコネクタC1,C2が完全な嵌合状態となると、図11(b)に示すように、各ディスクリート線3に装着された端子5の接触片5bに対して相手側端子12の接続用撓み片14aがそれぞれ接触し、正確には単位接触片36a,36bのうち上側に位置する単位接触片36a(又は36b)に対して相手側端子12の接続用撓み片14aがそれぞれ接触し、この接触により、各ディスクリート線3がそれぞれ対応する相手側端子12を介して回路基板Pの回路に接続されることとなる。
【0042】
以上のような本発明に係るコネクタの構成によると、配線材側コネクタC1に関し、上記のようにインシュレーションバレル34のクリンプハイトhがクリンプワイドwよりも小さい(ディスクリート線3の直径dよりも小さい)扁平状態となるように端子5をディスクリート線3に装着し、さらにインシュレーションバレル34のクリンプハイトhが端子収納室22の並び方向に向くように端子5を横向きにした状態でハウジング20に収納するように構成しているので、換言すればインシュレーションバレル34のクリンプハイトhの方向に端子5を並べた状態でハウジング20に対して該端子5を収納するように配線材側コネクタC1を構成しているので、複数の端子をインシュレーションバレルのクリンプワイドの方向に並べて収納する従来のこの種のコネクタと比べると端子配列を効果的に狭ピッチ化することができるという効果がある。
【0043】
すなわち、従来のコネクタでは、端子のインシュレーションバレルはディスクリート線の断面形状をほぼ維持しつつその被覆外側から抱え込むように圧着されており、そのため端子間ピッチの設定に際してはインシュレーションバレルのクリンプワイド(つまりディスクリート線3の線径)による制約を受けることとなり効果的な狭ピッチ化が難しいが、上記の配線材側コネクタC1では、インシュレーションバレル34のクリンプハイトhの方向に端子5を並べる構成となっているため端子間ピッチの設定に際してクリンプワイドwによる制約を受けることがない。しかも、クリンプハイトhがクリンプワイドwよりも小さくなる、具体的にはディスクリート線3の線径よりも小さくなる扁平な状態でインシュレーションバレル34がディスクリート線3に対して圧着されることにより、同圧着部分の端子配列方向の占有スペースが縮小される。従って、効果的に端子配列の狭ピッチ化が達成される。その上、クリンプワイドwがクリンプハイトhよりも大きい扁平状態となるようにインシュレーションバレル34が圧着されているので、ディスクリート線3に対するインシュレーションバレル34の圧着も適切に行われることとなる。
【0044】
従って、同じ数のディスクリート線3を保持する場合であれば、従来のこの種のコネクタに比べて端子配列を狭ピッチ化することができるため、その分、配線材側コネクタC1および基板側コネクタC2を小型化することが可能となる。
【0045】
また、この配線材側コネクタC1では、図9および図10に示したように、端子5が左右何れの何れの向き、つまり端子5のうちディスクリート線3の保持面側が端子収納室22(支持溝26)の並び方向の一方側又は他方側の何れを向いた状態であっても端子5を端子収納室22に収納でき、また、接触片5bの上下方向の変位を適切に拘束して、単位接触片36a,36bのうち上側に位置するもの高さ位置を一定に保ち得るように、つまり端子12に対して端子5を適切に接触させ得るようにハウジング20が形成されているので、配線材側コネクタC1の組立に際してその作業性を向上させることができるとともに誤作業の発生を効果的に防止することができるという効果もある。
【0046】
さらに、端子5の接触片5bが上記のように一対の単位接触片36a,36bを備えた断面コ字型の形状である点を利用し、端子支持部24に突起27を設けてこれを単位接触片36a,36bの間に挿入させることにより接触片5bを上下方向に拘束してその浮き上がりを防止するように構成しているで、コネクタ嵌合時には相手側端子12の接続用撓み片14aと支持部14bとの間にスムーズ、かつ確実に接触片5bを差し込んで接触片5bを接続用撓み片14aに接触させることができる。従って、端子同士の接触信頼性を高めることができるという効果もある。
【0047】
また、基板側コネクタC2についても次のような効果がある。すなわち、上記の基板側コネクタC2では、固定金具15A,15Bにそれぞれ係止片17を設け、これら係止片17を配線材側コネクタC1のハウジング20に係合させるように構成しているが、当実施形態では、図2に示すように各係止片17が上下にオフセットされている結果、基板側コネクタC2の省スペース化が達成されるという効果がある。詳しく説明すると、基板側コネクタC2のハウジング10では、同図に示すように上段の端子収納室13の並びが下段の端子収納室13の並びに対して左側にずれた配列となっており、このずれに応じて、左側の固定金具15Aでは下段の端子収納室13の並びに係止片17が設けられ、右側の固定金具15Bの係止片17では上段の端子収納室13の並びに係止片17が設けられている。つまり、上記のような端子収納室13の左右方向のずれにより上段の端子収納室13の並びではハウジング10の右方端部に、下段の端子収納室13の並びではハウジング10の左方端部にそれぞれデッドスペースができる。そこで、この配線材側コネクタC1では、このデッドスペースに係止片17が位置するように各固定金具15A,15Bに係止片17を設けることによって、係止片17の撓み代を十分に確保しながら両固定金具15A,15Bをハウジング内にコンパクトに収納し得るようになっている。従って、この点で基板側コネクタC2の省スペース化が達成されている。
【0048】
なお、以上説明した基板側コネクタC2および配線材側コネクタC1は、本発明に係るコネクタの実施形態の一例であって、その具体的な構成は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0049】
例えば、上記の実施形態では、ディスクリート線3を回路基板Pに接続する場合のコネクタ構成として本発明を適用しているが、勿論、ディスクリート線同士を接続するコネクタ構成として本発明を適用することもできる。
【0050】
また、上記の実施形態では、配線材側コネクタC1の端子5は、接触片5bに一対の単位接触片36a,36bが設けられた構成となっているが、勿論、接触片5bの形状はこれ以外の形状であってもよく、要は、端子収納室22に対して端子5が何れの向きで収納されても接触片5bが相手側端子12に対して適切に接触し得る形状であればよい。
【0051】
なお、この実施形態において「ディスクリート線」とは、単芯線、撚線、丸線、角線等、あらゆる独立した形態の電線であればよく、また導電性メッキ処理等の有無も問わないものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係るコネクタを示す斜視図(一部分解図)である。
【図2】基板側コネクタの断面図である。
【図3】基板側コネクタの断面図である((a)は図2のA−A線断面図で、(b)は図2のB−B線断面図である)。
【図4】基板側コネクタに挿着される固定金具を示す斜視図である。
【図5】配線材側コネクタのハウジングを示す図である((a)は正面図で、(b)は(a)のC−C線断面図である)。
【図6】配線材側コネクタのハウジングとこれに到着される端子(ディスクリート線に装着されたもの)を示した断面図である((a)はハウジングに端子が挿着前、(b)はハウジングに端子が挿着された状態を示している)。
【図7】ディスクリート線とその末端に装着される端子を示す斜視図である((a)は装着前、(b)は装着後の状態である)。
【図8】(a)はディスクリート線に装着された端子のうちインシュレーションバレルの圧着部分を示す断面模式図で、(b)は端子装着前のディスクリート線を示す断面模式図である。
【図9】配線材側コネクタにおける端子支持部の縦断面図である。
【図10】図9の要部拡大図である。
【図11】基板側コネクタと配線材側コネクタとの接続過程を説明する縦断面図である((a)は接続前の状態、(b)は接続完了状態をそれぞれ示している)。
【図12】基板側コネクタと配線材側コネクタとの接続過程を説明する平断面図である((a)は接続前の状態、(b)は接続完了状態をそれぞれ示している)。
【図13】従来の一般的な雄型端子とディスクリート線とをを示す斜視図である。
【図14】ディスクリート線に装着された端子のうちインシュレーションバレルの圧着部分を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0053】
C1 配線材側コネクタ(第1コネクタ)
C2 基板側コネクタ(第2コネクタ)
P 回路基板
3 ディスクリート線
5 端子(第1端子)
10,20 コネクタハウジング
12 端子(第2端子)
34 インシュレーションバレル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクリート線にインシュレーションバレルを圧着することにより当該ディスクリート線の末端に装着した第1端子をハウジング内に複数並べた状態で収納してなる第1コネクタと、前記第1端子に接触可能な第2端子をハウジング内に収納してなる第2コネクタとを有し、前記ハウジング同士の嵌合により各コネクタの端子同士を接触させるコネクタにおいて、
前記インシュレーションバレルのクリンプワイドがクリンプハイトよりも大きい扁平状態となるように前記ディスクリート線に対してインシュレーションバレルが圧着された状態で前記第1端子がディスクリート線に装着され、かつ隣接する端子同士が前記インシュレーションバレルのクリンプハイトの方向に並ぶように前記1コネクタのハウジングに対して各第1端子が収納されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記インシュレーションバレルのクリンプワイドがクリンプハイトよりも大きい扁平状態で、かつ前記ディスクリート線の線径よりもクリンプハイトが小さくなるようにインシュレーションバレルが該ディスクリート線に対して圧着されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
前記第1コネクタのハウジングは、前記第1端子のうち前記ディスクリート線を保持している側が端子配列方向における一方側を向く姿勢、又はこれと反対側を向く姿勢の何れの姿勢でも前記第1端子を収納し得るように構成され、
前記第1端子は、上記何れの姿勢でハウジング内に収納されても第2端子に接触し得るように第2端子に対する接触部分が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタにおいて、
前記第1端子はその先端に前記接触部分としてタブ状接触片を有し、
このタブ状接触片は、第1端子を前記ハウジングに収納した状態で端子配列方向と直交する方向に並ぶ互いに平行な一対の単位接触片を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタにおいて、
前記タブ状接触片は、前記一対の単位接触片とこれら単位接触片同士をそれらの並び方向に連結する連結部とをもつ断面コ字型に形成され、
前記第1コネクタのハウジングには、第1端子が収納された状態で前記一対の単位接触片の間に介挿されて前記タブ状接触片を各単位接触片の並び方向に拘束する拘束部分を備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
請求項5に記載のコネクタにおいて、
前記拘束部分は、前記タブ状接触片の先端側から前記一対の単位接触片の間に介挿されることにより前記第1端子が上記何れの姿勢で前記第1コネクタのハウジング内に収納されても前記タブ状接触片を各単位接触片の並び方向に拘束し得るように構成されていることを特徴とするコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−12716(P2006−12716A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191283(P2004−191283)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】