説明

コネクタ

【課題】接続対象物の貫通孔の間隔よりも高密度な導体パターンへの接続が可能であると共に、コンタクトの電気的な短絡や接触不良の危険性が極めて少なく、安定して信頼性高く接続し得るコネクタを提供すること。
【解決手段】このコネクタ10は、配線基板の貫通孔をインシュレータ11側に設けた圧入用突起14の圧入固定により配線基板へ固定する用途とした上、各コンタクト12を部材支持及び係止用の棒状片12cの両端以外の中途部分にゲル12bの表面上に金属薄膜12aがゲル12bに挟まれるように直線状に連設されて成る高密度な構造としてインシュレータ11の保持部に並設すると共に、インシュレータ11には圧入用突起14と各コンタクト12の弾性変位量を規定する圧入用突起14よりも低背の係止用突起13とを直線状に交互に所定の間隔で配設し、且つ各コンタクト2の配列を挟むように並設する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として導体パターンが配設された配線基板等の接続対象物間を複数のコンタクトを介在した導体パターンの接続により導通させる構造のコネクタであって、詳しくは接続対象物に設けられた複数の貫通孔を接続対象物の固定用とした上で貫通孔の間隔よりも高密度な間隔で形成された導体パターンを高密度で配備されたコンタクトにより接続する構造を持つコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコネクタに関連する技術(インターポーザ)としては、マザーボードのスルーホールを通して半田により固定したコネクタピンに対して別の基板の導体パターンを半田により接続固定し、基板の反対の面には半田によりパッド電極にピン型プローブを接続固定した構成とすることにより、プローブ先端で半導体装置に設けられた半田ボールを介して半導体装置の電気特性を検査できるようにした半導体装置の電気特性検査装置(特許文献1参照)が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平10−132895号公報(第3頁乃至第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に係る貫通孔(スルーホール)を利用したインターポーザの場合、マザーボードの貫通孔に電極端子(コネクタピン)を挿入するタイプであるため、貫通孔の間隔(ピッチ)でしか接続相手側の基板の導体パターンとの接続を行うことができないという構造上の制約があり、これが昨今の高密度化接続の要求が顕著なコネクタとしての基本機能(性能)の限度となっているという問題があり、その他にも貫通孔から露呈した端子部(コンタクト)が剥き出しになっていることにより異物等が付着すると接触不良になったり、或いは他の導電性部材と接触すると短絡を起こす危険性がある等、基本構造的にも安定して信頼性高く接続し得る構造でないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、接続対象物の貫通孔の間隔よりも高密度な導体パターンへの接続が可能であると共に、コンタクトの電気的な短絡や接触不良の危険性が極めて少なく、安定して信頼性高く接続し得るコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、複数のコンタクトがインシュレータに設けられて成ると共に、導体パターンが配設された接続対象物間を該複数のコンタクトを介在した該導体パターンの接続により導通させる構造を持つコネクタにおいて、複数のコンタクトは、弾性部材の表面上に導体部が設けられて成り、インシュレータは、複数のコンタクトを固定保持するための保持部と、接続対象物との圧入固定に供される圧入部と、複数のコンタクトにおける弾性変位量を規定するための係止部とを有するコネクタが得られる。
【0007】
又、本発明によれば、上記コネクタにおいて、複数のコンタクトにおける導体部及び弾性部材は、該導体部が該弾性部材に挟まれるように直線状に交互に連設され、インシュレータにおける圧入部及び係止部は、直線状に交互に所定の間隔を有して配設されると共に、複数のコンタクトの配列方向と平行して該複数のコンタクトの配列を挟むように並設されたコネクタが得られる。
【0008】
更に、本発明によれば、上記コネクタにおいて、複数のコンタクトは、それぞれ接続対象物における導体パターンに対して該接続対象物の延在方向に沿って接続されると共に、該延在方向とは同一平面上の垂直な方向に沿って2列のものが並設されており、圧入部及び係止部は、複数のコンタクトにおける2列構成をそれぞれ間に挟むように3列のものが並設されたコネクタが得られる。
【0009】
加えて、本発明によれば、上記何れか一つのコネクタにおいて、圧入部は、接続対象物の導体パターンにおける端部側に所定の間隔で設けられた貫通孔に圧入される圧入用突起であり、係止部は、圧入用突起よりも低背で接続対象物の表面に当接される係止用突起であるコネクタが得られる。
【0010】
一方、本発明によれば、上記何れか一つのコネクタにおいて、弾性部材は、ゲルであり、導体部は、ゲルの表面に成膜された金属薄膜であり、複数のコンタクトは、部材支持及び係止用の棒状片の両端以外の中途部分に弾性部材及び導体部を設けて成り、インシュレータにおける保持部は、棒状片の両端を装着して係止するための係止用溝を含むコネクタが得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコネクタの場合、特許文献1の従来品のように接続対象物である配線基板等に設けられた貫通孔をコンタクトを挿入するための用途とはせず、インシュレータ側に設けた圧入部(慣用的には圧入用突起)の圧入固定により接続対象物へ固定するための用途とした上、複数のコンタクトを弾性部材の表面上に導体部が弾性部材に挟まれるように直線状に交互に連設される高密度な構造(慣用的にはゲルの表面上に金属薄膜が成膜された構造)としてインシュレータの保持部に並設すると共に、インシュレータには圧入部と各コンタクトの弾性変位量を規定するための係止部(慣用的には圧入用突起よりも低背の係止用突起)とを直線状に交互に所定の間隔で配設し、且つ各コンタクトの配列を挟むように並設することにより、全体的に低背な略薄板状の構造としているので、従来の接続対象物の貫通孔の間隔よりも高密度な導体パターンを持つ接続対象物への接続が可能となると共に、各コンタクトの大部分が接続対象物間に覆われて露呈されることが無いため、電気的な短絡や接触不良の危険性が極めて少なく、結果として安定した信頼性高い接続が具現されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の最良の形態に係るコネクタは、複数のコンタクトがインシュレータに設けられて成ると共に、導体パターンが配設された接続対象物間を複数のコンタクトを介在した導体パターンの接続により導通させる構造を持つものにおいて、複数のコンタクトは、弾性部材の表面上に導体部が設けられて成り、インシュレータは、複数のコンタクトを固定保持するための保持部と、接続対象物との圧入固定に供される圧入部と、複数のコンタクトにおける弾性変位量を規定するための係止部とを有するものである。但し、このコネクタにおいて、各コンタクトにおける導体部及び弾性部材は、導体部が弾性部材に挟まれるように直線状に交互に連設された高密度な間隔を持つもので、インシュレータにおける圧入部及び係止部は、直線状に交互に所定の間隔を有して配設されると共に、各コンタクトの配列方向と平行して各コンタクトの配列を挟むように並設されたものであることが好ましい。
【0013】
このコネクタの慣用的な細部構成として、インシュレータにおける圧入部は接続対象物の導体パターンにおける端部側に所定の間隔を有して設けられた貫通孔に圧入される圧入用突起であり、且つ係止部は圧入用突起よりも低背で接続対象物の表面に当接される係止用突起であることが好ましく、各コンタクトにおける弾性部材はゲルであり、導体部はゲルの表面に成膜された金属薄膜であることが好ましい。又、各コンタクトは、部材支持及び係止用の棒状片の両端以外の中途部分に弾性部材及び導体部を設けて成ること、インシュレータにおける保持部は、棒状片の両端を装着して係止するための係止用溝を含むものであることが好ましい。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る配線基板20,30間の接続に供されるコネクタ10の外観構成を一部破断して透視して示した斜視図である。図2は、コネクタ10の図1中に示される局部領域E近傍を拡大して示した外観斜視図である。図3は、コネクタ10の細部構成を一部分解して示した外観斜視図である。
【0015】
このコネクタ10の場合、複数のコンタクト12がインシュレータ11に設けられて成るもので、図1を参照すれば、第1の接続対象物として、長さ方向に延びて平行に高密度な間隔で配設された配線パターンにおける先端にあっての幅方向へ2段で配列され、且つ長さ方向における同一直線上で対向するように配置された太線パターンに係るパッド部21と細線パターンに係るパッド部22との略中心位置及びそれらの中間位置に貫通孔が設けられた配線基板20と、第2の接続対象物として、長さ方向に延びて平行に高密度な間隔で配設された配線パターンにおける先端にあっての幅方向へ段差を成して配列され、且つ幅方向で隣接するもの同士が長さ方向における同一直線上で対向するように配置されたパッド部31,32のうちの一方側の対向するパッド部32の略中心位置及びそれらの中間位置に貫通孔が設けられた配線基板30との間を各コンタクト12を介在したパッド部21,31に繋がる配線パターン同士とパッド部22,32に繋がる配線パターン同士との接続(導体パターンの接続)により導通させる構造を持つものである。
【0016】
このような配線基板20,30間の接続に供されるコネクタ10の細部構成として、各コンタクト12は、部材支持及び係止用の棒状片12cの両端以外の中途部分に弾性部材としてのゲル12bの表面上に導体部としての金属薄膜12aがゲル12bに挟まれるように直線状に連設されて成るもので、配線基板20のパッド21,22と配線基板30のパッド部31,32とに対してそれぞれ配線基板20,30の長さ方向で接続されると共に、幅方向で直線状に並設される2列構成となっている。
【0017】
インシュレータ11は、2列構成の各コンタクト12を固定保持するための保持部として、平行する2段の切り込まれたフレーム形における切り込み部でそれぞれ直線状に高密度で配列された各コンタクト12を収納し、各切り込み部の両側に総計4箇所設けられた係止用溝15で棒状片12cの両端を装着して係止する構造を持つ他、配線基板20,30の長さ方向でパッド部21,22とパッド部32とに設けられた貫通孔への圧入固定に供される圧入部としての圧入用突起14と、この圧入用突起14よりも低背で配線基板20,30の表面に当接されると共に、各コンタクト12における弾性変位量を規定するための係止部としての係止用突起13とが直線状に交互に所定の間隔を有して高密度で配線基板20,30の幅方向に配設された上、これらの圧入用突起14及び係止用突起13が各コンタクト12の配列方向と平行して各コンタクト12の2列構成をそれぞれ間に挟むように並設された3列構成となっている。因みに、ここでのインシュレータ11自体は絶縁性の樹脂等から成り、圧入用突起14及び係止用突起13が一体的に形成されているものである。
【0018】
このコネクタを用いれば、図1に示したように、高密度に配線パターンが配設された配線基板20,30を接続対象としても、配線基板20の配線パターンにおけるパッド部21,22及びそれらの中間位置と配線基板30の配線パターンにおけるパッド部32の略中心位置及びそれらの中間位置に設けられた貫通孔に対してインシュレータ11の3段配列の圧入用突起14をそれぞれ上下方向で圧入して圧着し、各コンタクト12を配線基板20,30の表面に押圧する状態で嵌合させることにより、各コンタクト12が弾性変形してパッド部21,31に繋がる配線パターン同士とパッド部22,32に繋がる配線パターン同士とを介在接続し、導体パターンの接続による導通機能が得られる。このとき、コネクタにおいては、全体的に低背な略薄板状の構造であり、貫通孔の間隔よりも高密度な導体パターンを持つ配線基板20,30を接続対象としても、各コンタクト12の大部分が配線基板20,30間に覆われて特許文献1の構成のように露呈されることが無いため、電気的な短絡や接触不良の危険性が極めて少なく、結果として安定して信頼性高く接続を行うことができる。
【0019】
尚、上述した実施例1に係るコネクタでは、2つの接続対象物として、通常のボード板にプリント配線された構成の配線基板20,30を説明したが、その他にも例えばフレキシブルな形態のものを対象にすることが可能である。この場合、配線パターン及びその先端のパッド部が略細棒状導体の端子部を有した形態のものに置き換えられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1に係る配線基板間の接続に供されるコネクタの外観構成を一部破断して透視して示した斜視図である。
【図2】図1に示されるコネクタの局部領域近傍を拡大して示した外観斜視図である。
【図3】図1に示されるコネクタの細部構成を一部分解して示した外観斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
10 コネクタ
11 インシュレータ
12 コンタクト
12a 金属薄膜
12b ゲル
12c 棒状片
13 係止用突起
14 圧入用突起
15 係止用溝
20,30 配線基板
21,22,31,32 パッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンタクトがインシュレータに設けられて成ると共に、導体パターンが配設された接続対象物間を該複数のコンタクトを介在した該導体パターンの接続により導通させる構造を持つコネクタにおいて、前記複数のコンタクトは、弾性部材の表面上に導体部が設けられて成り、前記インシュレータは、前記複数のコンタクトを固定保持するための保持部と、前記接続対象物との圧入固定に供される圧入部と、前記複数のコンタクトにおける弾性変位量を規定するための係止部とを有することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタにおいて、前記複数のコンタクトにおける前記導体部及び前記弾性部材は、該導体部が該弾性部材に挟まれるように直線状に交互に連設され、前記インシュレータにおける前記圧入部及び前記係止部は、直線状に交互に所定の間隔を有して配設されると共に、前記複数のコンタクトの配列方向と平行して該複数のコンタクトの配列を挟むように並設されたことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のコネクタにおいて、前記複数のコンタクトは、それぞれ前記接続対象物における前記導体パターンに対して該接続対象物の延在方向に沿って接続されると共に、該延在方向とは同一平面上の垂直な方向に沿って2列のものが並設されており、前記圧入部及び前記係止部は、前記複数のコンタクトにおける前記2列構成をそれぞれ間に挟むように3列のものが並設されたことを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載のコネクタにおいて、前記圧入部は、前記接続対象物の前記導体パターンにおける端部側に所定の間隔で設けられた貫通孔に圧入される圧入用突起であり、前記係止部は、前記圧入用突起よりも低背で前記接続対象物の表面に当接される係止用突起であることを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一つに記載のコネクタにおいて、前記弾性部材は、ゲルであり、前記導体部は、前記ゲルの表面に成膜された金属薄膜であり、前記複数のコンタクトは、部材支持及び係止用の棒状片の両端以外の中途部分に前記弾性部材及び前記導体部を設けて成り、前記インシュレータにおける前記保持部は、前記棒状片の両端を装着して係止するための係止用溝を含むことを特徴とするコネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−147469(P2006−147469A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339046(P2004−339046)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】