説明

コネクタ

【課題】両端子金具間の摩耗を確実に防ぐことができるコネクタを提供する。
【解決手段】本発明のコネクタは互いに嵌合可能なコネクタF,Mを備え、雌コネクタFには、両コネクタF,Mの嵌合方向に貫通するキャビティ13を有する雌ハウジング10と、キャビティ13内に挿入された雌端子金具40と、雌端子金具40の後部に接続されたワイヤハーネスWとキャビティ13の内周面との間をシールするシール部材90と、雌端子金具40に設けられ、雄コネクタMに設けられた雄端子金具70と嵌合方向に突き当て可能な突当部44と、雌ハウジング10の後部にシール部材90を介して雌端子金具40を前方に付勢した状態で装着され、両コネクタF,Mの嵌合状態において雄端子金具70と突当部44とを当接状態に保持する保持部材100とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両コネクタの嵌合状態におけるガタツキを防ぐコネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のコネクタが知られている。このコネクタは、コネクタ嵌合室を備える相手側ハウジングと、コネクタ嵌合室の内部に嵌合するインナハウジングとを備えている。コネクタ嵌合室内の奥壁には、タブ状をなす雄端子金具が前方に突出して設けられ、インナハウジングの内部には前後方向に貫通するキャビティが形成され、このキャビティ内に雌端子金具が挿入されている。コネクタ嵌合室の内周面とインナハウジングの外周面とは、互いにテーパ状に形成されており、インナハウジングはコイルバネにより常時前方に付勢されている。このため、両ハウジングを嵌合させると、インナハウジングの外周面がコネクタ嵌合室の内周面に面接触した状態となり、両ハウジング間のガタツキが規制される。
【特許文献1】特開2006−24456公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ハウジングは一般に樹脂成形品であり、仕上がり寸法のバラツキが大きいため、雌端子金具とキャビティ内壁との間には所定のクリアランスが設定されている。このため、雌端子金具とキャビティ内壁との間には上記クリアランスに基づくガタツキが発生することになる。その結果、例えば自動車に搭載された状態では微振動が発生するため、両ハウジング間のガタツキが規制されていても、両端子金具間においては依然として微振動が発生し、両端子金具の接触部同士が互いに摺接することによって摩耗してしまう。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、両端子金具間の摩耗を確実に防ぐことができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、相手側ハウジングとの嵌合方向に貫通するキャビティを有するハウジングと、キャビティ内に挿入された端子金具と、端子金具の後部に接続された電線とキャビティの内周面との間をシールするシール部材と、端子金具に設けられ、相手側ハウジングに設けられた相手側端子金具と嵌合方向に突き当て可能な突当部と、ハウジングの後部にシール部材を介して端子金具を前方に付勢した状態で装着され、両ハウジングの嵌合状態において相手側端子金具と突当部とを当接状態に保持する保持部材とを備える構成としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、端子金具は、本体部と、端子金具の前方から本体部の内部に進入した相手側端子金具に弾性的に接触する接触片とを有し、突当部は、相手側端子金具の先端部を接触片の撓み方向と交差する方向から挟むようにして一対設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のものにおいて、突当部は、端子金具の内部に進入した相手側端子金具の先端部と突き当て可能に端子金具の一部を内側に切り起こして設けた構成としたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
両ハウジングの嵌合状態では、保持部材により突当部が相手側端子金具に当接した状態に保持されているから、両端子金具間の嵌合方向におけるガタツキが規制され、両端子金具の接触部分における摩耗が規制される。
【0009】
<請求項2の発明>
端子金具が接触片の撓み方向に沿って移動しようとすると、相手側端子金具が接触片と弾性的に接触しているため、接触片の撓む方向におけるガタツキが規制される。また、端子金具が接触片の撓み方向と交差する方向に移動しようとすると、突当部が相手側端子金具の先端部に接触しているため、接触片の撓み方向と交差する方向におけるガタツキも規制される。
【0010】
<請求項3の発明>
突当部は、端子金具の一部を内側に切り起こして設けているから、別部材として突当部を構成する必要がなく、端子金具の構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8によって説明する。
本実施形態のコネクタは、図1に示すように、互いに嵌合可能な雌コネクタFと雄コネクタMとを備えている。本実施形態において雄コネクタMは機器用コネクタであって、機器側に固定されているものの、本実施形態においては図面の簡略化のため機器側との接続構造を省略してある。また、雌コネクタFは、自動車(図示せず)の内部に配策されたワイヤハーネスWの端末に接続されている。そして、両コネクタF,Mを嵌合させることにより、ワイヤハーネスW側と機器側とが電気的に接続される。なお、以下の説明において前後方向とは両コネクタF,Mの嵌合方向を基準とし、嵌合面側を前方とする。
【0012】
<雄コネクタMの構造>
まず、雄コネクタMの構造について説明する。
雄コネクタMは、図1に示すように、前方に開口するフード部51を備えた雄ハウジング50を有している。雄ハウジング50は合成樹脂製で、フード部51の奥壁52にはタブ状をなす雄端子金具70が圧入により固定されている。雄端子金具70の一端側は端子接触部とされ、この端子接触部がフード部51の奥壁52から前方に突出しており、両コネクタF,Mが嵌合すると雌コネクタF側の後述する雌端子金具40と電気的に接続される。一方、雄端子金具70の他端側は奥壁52の後方で機器側の配線と電気的に接続されている。フード部51の外周面における上側には、雌コネクタF側の後述するロックアーム17と係止して両コネクタF,Mを嵌合状態に保持するロック突部53が上方に突出して設けられている。
【0013】
<雌コネクタFの構造>
次に、雌コネクタFの構造について説明する。
雌コネクタFは、合成樹脂製の雌ハウジング10を有している。雌ハウジング10は、雄コネクタMのフード部51内に嵌合する内筒部11と、その内筒部11の径方向外側に配された外筒部12とを備えている。内筒部11の内部には、前後方向に貫通するキャビティ13が幅方向に一対形成されており、キャビティ13内には後方から雌端子金具40が挿入可能である。キャビティ13のうち略前半部分は略方形の角孔をなす端子収容孔とされているものの、略後半部分は、後述するシール部材90を収容し、円孔をなすシール部材収容孔とされている。また、内筒部11の前端には、キャビティ13内に挿入された雌端子金具40の前止まりを行うフロントカバー30が冠着されている。
【0014】
フロントカバー30は、内筒部11の外周面に沿った筒状をなす装着筒部31と、装着筒部31の一端側と一体に形成されキャビティ13の内壁の一部を構成する前止まり構成部32とを備えている。このため、雌端子金具40がキャビティ13内の正規の挿入位置に挿入されフロントカバー30が装着される前では、雌端子金具40の前端部が内筒部11の前面から前方に突出した状態となる。すなわち、正規の挿入位置にある雌端子金具40のうち内筒部11の前面から前方に突出した部分を収容する空間が前止まり構成部32によって構成されている。
【0015】
装着筒部31の内周面には、内方に突出する装着突部33が上下一対形成されている。一方、内筒部11の外周面には、正規の装着位置にあるフロントカバー30の装着突部33が嵌り込む一対の装着凹部14が凹設されている。フロントカバー30は、内筒部11に対して正規の装着位置に装着されると、装着突部33の前面33Aと装着凹部14の内面における前面14Aとが係止することで、内筒部11に対して抜止状態に保持される。
【0016】
内筒部11の外周面のうち、正規の装着位置にあるフロントカバー30の装着筒部31の先端より奥側には、O形の防水ゴム栓60が嵌着されている。また、正規装着位置にあるフロントカバー30の外周面と外筒部12の内周面との間には、雄コネクタMのフード部51が進入する進入空間Sが形成されている。これにより、両コネクタF,Mを嵌合させると、雄コネクタMのフード部51が進入空間Sに進入し、防水ゴム栓60がフード部51の内周面と内筒部11の外周面との双方に密着する。したがって、防水ゴム栓60により両コネクタF,Mの嵌合部分からキャビティ13内に浸水することが規制される。
【0017】
雌ハウジング10の上部には、外筒部12と連続しつつ上方に立ち上がる一対の保護壁15が対向状態で形成されている。両保護壁15間には、図4に示すように、その前端上縁同士を架設した架設部16が形成され、さらに架設部16の後方には、内筒部11の上面と平行状態で前後方向に延びる形態をなし、両コネクタF,Mを嵌合状態に保持するロックアーム17とが配されている。
【0018】
ロックアーム17は、その後端側において撓み片17Aを介して雌ハウジング10と連結され、撓み片17Aを基端部として前端側が上下に撓み可能である。ロックアーム17の前端側には、上下に貫通する嵌合孔18が設けられている。一方、ロックアーム17の後端部には、ロックアーム17の解除操作を行うための解除操作部19が幅方向両側に張り出し形成されている。雌コネクタFは、嵌合孔18のロック係止面(嵌合孔18を構成する内周面のうち前端面)18Aとロック突部53のロック受け面(ロック突部18の外面のうち後端面)53Aとが係止することで、雄コネクタMに対して抜止状態に保持される。
【0019】
雌ハウジング10の内部には、リテーナ80を装着するためのリテーナ装着孔21が幅方向に貫通して形成されている。リテーナ80は前後方向に貫通する一対の端子挿通孔を有し、リテーナ装着孔21内において仮係止位置と本係止位置との間を移動可能である。リテーナ80が仮係止位置にあるときには、前記端子挿通孔を通じてキャビティ13内への雌端子金具40の挿入を許容するものの、リテーナ80が本係止位置にあるときには、前記端子挿通孔の周縁部が雌端子金具40に係止することにより、正規挿入位置にある雌端子金具40が抜止状態に保持される。
【0020】
雌端子金具40は、角筒状をなす本体部41と、本体部41の後端から後方に延びる形態をなしワイヤハーネスWの端末をかしめ付けて固着するバレル部42とを備えている。雌端子金具40は、金属平板を打ち抜いて折り曲げ加工を行うことにより形成されている。すなわち、本体部41は、底壁と、その底壁の両側縁から上方に立ち上がる一対の側壁と、底壁と対向するように一方の側壁の上縁から他方の側壁の上縁に向けて互いに折り曲げ形成された天井壁とから構成されている。本体部41の内部には、上下に撓み可能な接触片45が本体部41の底壁の前縁から後方に折り返すことにより形成されている。これにより、本体部41の前端開口から内部に進入した雄端子金具70が接触片45と本体部41の天井壁内側との間で弾性的に挟持される。
【0021】
本体部41の天井壁外側には、その一部を叩き出して上方に突出させたランス係止部43が形成されている。一方、キャビティ13の内壁の上面には、前方内側に向けて片持ち状に突出するランス19が上下に撓み可能に形成されている。これにより、正規挿入位置にある雌端子金具40は、ランス19がランス係止部43の後端に係止することにより、リテーナ80による抜止と併せて二重で抜止状態に保持される。
【0022】
バレル部42は、本体部41の後方に位置してワイヤハーネスWの心線部分をかしめ付けるワイヤバレル部42Aと、そのワイヤバレル部42Aの後方に位置してワイヤハーネスWの被覆部分をかしめ付けるインシュレーションバレル部42Bとから構成されている。ワイヤハーネスWの被覆部分には、ゴム製で円筒状をなすシール部材90が装着されている。インシュレーションバレル部42Bは、シール部材90の一端側をかしめ付けることにより、シール部材90とワイヤハーネスWの被覆部分との双方を同時に固着する。
【0023】
シール部材90は、ワイヤハーネスWの外周面に沿うシール本体部91と、シール本体部91の他端側において径方向に張り出し形成されたフランジ部92とから構成されている。シール本体部91の一端側には、インシュレーションバレル部42Bによってかしめ付けられる被圧着部93が薄肉に形成されている。シール部材90の外周面のうち被圧着部93よりも後方には、前後方向に並んだ一対のリップ部94が周方向に形成されている。リップ部94は、径方向外向きに突出する形態とされ、シール部材90がシール部材収容孔内に挿入されたときに、シール部材収容孔の内周面に密着するようになっている。さらに、被圧着部93とリップ部94との間には、段差95が形成され、リップ部94側が一段高くなるように形成されている。
【0024】
シール部材90は、雌端子金具40が正規の挿入位置に挿入された状態では、図2に示すように、フランジ部92がキャビティ13の後端より後方に所定長さだけ突出するように、前後長さが設定されている。この状態からフランジ部92を前方に押し込むと、リップ部94がワイヤハーネスWの外周面とシール部材収容孔の内周面とに密着した状態となり、キャビティ13の内部に浸水することが規制される。さらに、段差95が雌端子金具90のバレル部42の後端に当接することで、バレル部42による固着と共に雌端子金具40を前方に付勢した状態(以下「前方付勢状態」という。)にすることができる。
【0025】
本実施形態では、雌端子金具40を前方付勢状態に保持するための部材として、保持部材100が雌ハウジング10の後面に装着可能である。保持部材100は、フランジ部92を前方に押圧する押圧板101と、押圧板101の幅方向両側縁から立ち上がる一対の側板とから構成されている。押圧板101には、ワイヤハーネスWを挿通させる一対の挿通孔が設けられ、この挿通孔内にワイヤーハーネズWを挿通させた状態でフランジ部92の押し込みが行われる。前記側板には、略方形の引掛け孔102が板厚方向に貫通形成され、この引掛け孔102を構成する周壁が雌ハウジング10の後端に設けられた保持突部20と係止することで保持部材100の抜止が行われ、雌端子金具40が前方付勢状態に保持される。尚、保持突部20は、図6に示すように、引掛け孔102内において上下に所定の間隔を空けて配された一対の突部から構成されている。
【0026】
ところで、雌端子金具40の本体部41の内部には、図8に示すように、側壁の一部を板厚分だけ内側に切り起こすことにより、対向状態をなす一対の突当部44が形成されている。突当部44は、斜め後方に延びる片持ち状に形成され、本体部41の側壁に対して接近及び離間する方向に撓み可能である。一方、雄端子金具70の端子接触部は、前後方向に沿って同一幅に形成されたタブ部を有し、タブ部の先端は先窄み状をなしている。保持部材100の装着前における両コネクタF,Mの嵌合状態では、雄端子金具70の先端が突当部44に当接して雌端子金具40を後方に押し下げるから、図2に示すように、雌端子金具40の前端面とこれに対面する前止まり壁(前止まり構成部32)との間には、所定の隙間が形成される。この後、保持部材100を雌ハウジング10の後面に装着して雌端子金具40を前方付勢状態にすると、雄端子金具70の先端が両突当部44間を押し広げつつ割って入った状態となる。この結果、雄端子金具70は、突当部44によって幅方向及び前後方向への移動が規制され、微振動により両端子金具40,70のタブ部及び接触片45が摩耗により損傷することを規制可能である。
【0027】
<本実施形態の作用>
まず、雌コネクタFの組み立て作業について説明する。雌ハウジング10に、防水ゴム栓60及びフロントカバー30を取り付け、リテーナ80を仮係止位置に組み付ける。一方、雌端子金具40には、シール部材90が装着されたワイヤハーネスWの端末をバレル部42により固着しておく。そして、雌端子金具40をキャビティ13の後方から内部に挿入すると、雌端子金具40の本体部41によってランス19が撓み変形する。雌端子金具40が正規の挿入位置に至ると、ランス19が弾性復帰してランス係止部43の後端に係止することで雌端子金具40がキャビティ13内で後方に抜止状態に保持される。この後、リテーナ80を本係止位置まで押し込んで雌端子金具40本体部41の後端に係止させると、雌端子金具40がランス19による係止と共に二重で係止される。
【0028】
次に、両コネクタF,Mの嵌合を行う。雄コネクタMのフード部51が雌コネクタFの進入空間S内に進入させると、雄端子金具70の先端が雌端子金具40の前端開口から本体部41内部に進入する。これと並行して、ロックアーム17は、その先端がロック突部53に乗り上げるようにして撓み変形する。両コネクタF,Mが正規の嵌合状態に至ると、ロックアーム17が弾性復帰してロック突部53が嵌合孔18内に嵌り込むと同時に、ロック突部53のロック受け面53Aが嵌合孔18内のロック係止面18Aに係止することで、両コネクタF,Mは正規の嵌合状態に保持される。
【0029】
一方、雄端子金具70のタブ部は、雌端子金具40の本体部41内部において接触片45と天井壁の内面との間で弾性的に挟まれた状態で奥方へと進入する。そして、雄端子金具70の先端が本体部41内の突当部44に当接すると、雌端子金具40がキャビティ13内において後方に押し下げられて本体部41の前端と前止まり壁(前止まり構成部32)との間に隙間が形成される。この後、雌ハウジング10の後面に保持部材100を装着する。保持部材100の押圧板101は、キャビティ13後端から後方に突出したフランジ部91の後面側に当接し、フランジ部91を前方に押し込むことにより、段差部95がバレル部42の後端に当接して、雌端子金具40が前方付勢状態となる。このとき、雄端子金具70の先端は、両突当部44間を押し広げながら割って入ることにより両突当部44の弾性力によって幅方向および前後方向への移動が規制された状態となる。したがって、両コネクタF,Mが正規の嵌合状態において自動車内部の微振動により振動したとしても、両端子金具40,70間のガタツキが規制されるため、両端子金具40,70のタブ部及び接触片45が摩耗することが規制される。
【0030】
以上のように、本実施形態では、雌端子金具40の突当部45を設けたから、雄端子金具Mの先端が突当部45に当接した状態に保持することができる。よって、両端子金具40,70の前後方向におけるガタツキが規制され、両端子金具40,70のタブ部及び接触片45の摩耗が規制される。また、雄端子金具70は、接触片45と天井壁の内側との間で挟持され、かつ、両突当部44間で挟持されているから、上下方向及び幅方向におけるガタツキも規制可能である。さらに、突当部44は、雌端子金具40の一部を内側に切り起こして設けているから、雌端子金具40の構成を全体として簡素化することができる。
【0031】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図9及び図10によって説明する。実施形態2の雌端子金具40は、実施形態1における突当部44の代わりに、本体部41の天井壁の後縁から前方に折り返すことにより形成した突当部46を備えている。尚、その他の重複する構造及びその作用説明については省略する。両コネクタF,Mを嵌合すると、雄端子金具70の先端が突当部46に当接して雌端子金具40がキャビティ13内において後方に押し下げられる。この後、保持部材100を雌ハウジング100の後面に装着すると、雌端子金具40が前方付勢状態に保持されると共に、雄端子金具70の先端が突当部46に当接した状態に保持される。すなわち、保持部材100の弾性力により雄端子金具70の先端と突当部46とが当接状態に保持され、雄端子金具70が雌端子金具40に対して相対的に前後方向に移動することが規制される。したがって、両コネクタF,Mが正規の嵌合状態において自動車内部の微振動により振動したとしても、両端子金具40,70間のガタツキが規制されるため、両端子金具40,70のタブ部及び接触片45が摩耗することが規制される。
【0032】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では、雄コネクタMとして機器用コネクタを例示しているものの、本発明によると、雄コネクタMは、ワイヤハーネスWの端末に接続されたものとしてもよい。
【0033】
(2)本実施形態では、雌端子金具40を前方付勢状態に保持するものを例示しているものの、本発明によると、角筒状をなす本体部を有する雄端子金具70を挿入可能なキャビティを雄ハウジング50側に貫通形成し、このキャビティ内に挿入された雄端子金具70をシール部材90及び保持部材100を用いて前方付勢状態に保持してもよい。また、そのような場合、雌端子金具40及び雄端子金具70の双方を前方付勢状態に保持してもよい。
【0034】
(3)本実施形態では、シール部材90とは別体に設けた保持部材100を押し込むことにより雌端子金具40を前方付勢状態に保持しているものの、本発明によると、シール部材90のフランジ部92に保持部材100を一体に設けてもよい。
【0035】
(4)本実施形態では、両コネクタF,Mを嵌合状態とした後に保持部材100を装着するものを例示しているものの、本発明によると、保持部材100を装着した後に両コネクタF,Mを嵌合してもよい。
【0036】
(5)本実施形態では、雌端子金具40の本体部41の一部を切り起こして突当部44を設けているものの、本発明によると、雌端子金具40の本体部41とは別に設けた突当部44を本体部41内部に組み付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態1における両コネクタの嵌合前の状態を示す断面図
【図2】その両コネクタの嵌合後であって保持部材を装着する前の状態を示す断面図
【図3】その両コネクタの嵌合後であって保持部材を装着した後の状態を示す断面図
【図4】その保持部材の装着前の状態を示す一部切り欠き平面図
【図5】その保持部材の装着後の係止状態を示す一部切り欠き平面図
【図6】その保持部材の装着後の係止状態を示す側面図
【図7】その保持部材の装着後の係止状態を示す背面図
【図8】その保持部材の装着後における雌端子金具の突当部と雄端子金具とが当接状態に保持されている様子を示した水平断面図
【図9】実施形態2における保持部材の装着後における雌端子金具の突当部と雄端子金具とが当接状態に保持されている様子を示した水平断面図
【図10】その保持部材の装着後における雌端子金具の突当部と雄端子金具とが当接状態に保持されている様子を示した垂直断面図
【符号の説明】
【0038】
10…雌ハウジング(ハウジング)
13…キャビティ
40…雌端子金具
41…本体部
44…突当部
45…接触片
50…雄ハウジング(相手側ハウジング)
70…雄端子金具
90…シール部材
100…保持部材
F…雌コネクタ
M…雄コネクタ
W…ワイヤハーネス(電線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側ハウジングとの嵌合方向に貫通するキャビティを有するハウジングと、
前記キャビティ内に挿入された端子金具と、
前記端子金具の後部に接続された電線と前記キャビティの内周面との間をシールするシール部材と、
前記端子金具に設けられ、前記相手側ハウジングに設けられた相手側端子金具と前記嵌合方向に突き当て可能な突当部と、
前記ハウジングの後部に前記シール部材を介して前記端子金具を前方に付勢した状態で装着され、前記両ハウジングの嵌合状態において前記相手側端子金具と前記突当部とを当接状態に保持する保持部材とを備えるコネクタ。
【請求項2】
前記端子金具は、本体部と、前記端子金具の前方から前記本体部の内部に進入した前記相手側端子金具に弾性的に接触する接触片とを有し、前記突当部は、前記相手側端子金具の先端部を前記接触片の撓み方向と交差する方向から挟むようにして一対設けられている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記突当部は、前記端子金具の内部に進入した前記相手側端子金具の先端部と突き当て可能に前記端子金具の一部を内側に切り起こして設けた請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−226539(P2008−226539A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60179(P2007−60179)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】