説明

コネクタ

【課題】 沿面距離が短い場合にも確実に短絡を防止できる、小型化に適したコネクタを提供する。
【解決手段】 本発明のコネクタ1は、コンタクト2と、コンタクト2を支持するインシュレータ3と、インシュレータ3の外側に配設されたシェル6と、を備える。インシュレータ3は前インシュレータ4と後インシュレータ5からなる。コンタクト2とシェル6との間に存在するインシュレータ3の沿面(前後インシュレータ4、5の合わせ面4a、5a)に弾性不導体であるOリング10が押し当てられている。沿面にこのような弾性不導体を押し当てると、同沿面上の短絡経路に電流が流れ難くなる。このため、十分な沿面距離を確保できないような場合でも、短絡防止効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給ケーブルや同軸ケーブルの端部に取り付けられるコネクタ(電気コネクタ、同軸コネクタ)に関する。特には、十分な沿面距離を取ることが難しい場合に、コネクタの全長が長くなること及び径が大きくなることや構成が複雑になることなく、確実な短絡防止対策を施したコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給線が結合される電気コネクタにおいては、コネクタの耐電圧を確保するために、導体であるコンタクトとシェルとの間又は複数のコンタクト間に存在するインシュレータの沿面に沿う経路の長さ(沿面距離)をある値以上とするようにJIS規格などに定められている。
【0003】
このような沿面距離を確保するためは、単純に導体間の距離を長くすればよい。しかし、この場合コネクタのサイズが大きくなってしまい、取り付け寸法に制限がある場合に適用できない。そこで、例えば、沿面を凹凸形状にして、沿面距離を長くする方法が一般的に取られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、寸法の大型化は防がれるが、インシュレータの形状が複雑になり加工費がアップする。
【0004】
また、同軸ケーブルの先端に接続する同軸コネクタにおいても、耐電圧を確保するために沿面距離を長くする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
図10は、特許文献2に記載されたコネクタの構造を示す側面断面図である。
同軸ケーブル100は、中心導体101と、その周囲を覆う誘電体102と、その周囲を覆う外部導体103とからなる。外部導体103には、シェル206が嵌合している。同シェル206の外側には、接続ナット212が保持リング213によって取り付けられている。また、シェル206の外周には防水や気密用のガスケット214が配設されている。
【0005】
同軸ケーブル100の先端部においては、外部導体103が先端から所定の長さCだけ剥ぎ取られて、誘電体102が露出している。これにより、中心導体101と外部導体103との間の沿面距離は、誘電体102の端面の厚さと、露出した部分の長さCが加わるので、従来のものより沿面距離を長くすることができる。しかし、この場合でも、十分な沿面距離を確保するには、誘電体102の露出部分の長さCを長くする必要がある。このため、コネクタ全体の長さが長くなり、小型化を図りにくい。
【0006】
他に、結線部を樹脂で充填する方法なども用いられているが、この場合も充填作業が必要になり、組立工程が増加する。また、同軸コネクタにおいては、コネクタ内部を樹脂で充填するとコネクタの性能に悪影響が出てしまう。特に高電圧仕様や医療機器用に使用される場合は問題となる。
【0007】
【特許文献1】実公平6−19127
【特許文献2】特開2001−338731
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、沿面距離が短い場合にも確実に短絡を防止できる、小型化に適したコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1のコネクタは、 複数のコンタクトと、該複数のコンタクトを相互に絶縁して支持するインシュレータと、該インシュレータの外側に配設されたシェルとを備えるコネクタであって、 隣接する前記コンタクト相互間、及び、前記コンタクトと前記シェルとの間に存在する前記インシュレータの沿面に押し当てられた弾性不導体をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
コンタクトとシェルとの間のインシュレータの沿面には、沿面距離が短い場合には沿面放電が生じるおそれがあるが、その沿面に弾性不導体を押し当てると、同沿面上の短絡経路に電流が流れ難くなる。このため、十分な沿面距離を確保できないような場合でも、短絡防止効果を得ることができる。
【0011】
本発明の第1の同軸コネクタは、 中心導体、該中心導体の外周を覆うケーブル絶縁体、及び、該ケーブル絶縁体の外周を覆う外部導体を有する同軸ケーブルの端部に取り付けられる同軸コネクタであって、 前記中心導体に導通するコンタクトと、該コンタクトを支持するインシュレータと、前記外部導体に導通するシェルとを備え、 前記中心導体又はコンタクトと前記外部導体又は前記シェル(シェルに導通する部材を含む)の間に存在する沿面に押し当てられた弾性不導体をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、 前記インシュレータが軸方向に半割りされており、その割り面に、前記弾性不導体が押圧状態で配置されていることとできる。
【0013】
電気コネクタの場合、コンタクトを軸方向に抜け止めして支持するために、インシュレータは軸方向に半割りされている。そして、その合わせ面が、コンタクトとシェル間又は隣接するコンタクト間の短絡経路(沿面)となることが多い。そこで、例えば、一方のインシュレータの合わせ面に、弾性不導体が収容される凹部又は隅部を設けておき、同部に弾性不導体を収容して、もう一方のインシュレータの合わせ面で弾性不導体を同部に押し込むように、前後のインシュレータを合わせると、弾性不導体が合わせ面に押圧されることになる。
【0014】
本発明の同軸コネクタにおいては、 前記弾性不導体が前記ケーブル絶縁体の端部に嵌合されており、 前記インシュレータの後端面に、前記弾性不導体を収容する凹部又は隅部が形成されており、 前記弾性不導体が、前記外部導体の先端面で、前記インシュレータに押圧された状態で収容されていることとできる。
【0015】
同軸コネクタの場合、同軸ケーブルの中心導体に導通するコンタクトと外部導体との間の、ケーブル絶縁体の表面が、コンタクトと外部導体間の短絡経路(沿面)となることが多い。そこで、例えば、コンタクトの外側に配設されているインシュレータに、弾性不導体が収容される凹部又は隅部を設けておき、同部に弾性不導体を収容して、外部導体の先端面で弾性不導体を同部に押し込むと、弾性不導体が沿面(ケーブル絶縁体の露出した部分)に押圧されることになる。
【0016】
本発明においては、 前記弾性不導体が、ゴム製のOリングであることとすれば、寸法に合った市販のOリングを使用できるので、安価で入手できる。
【0017】
本発明のコネクタにおいては、 電力供給ケーブルの先端部に、前記シェル又は該シェルに連結された部材に螺合するナットが取り付けられており、 前記インシュレータの後端面に、前記弾性不導体を収容する凹部又は隅部が形成されており、 前記弾性不導体が、前記ナットの先端面で、前記インシュレータの凹部又は隅部に押圧された状態で収容されていることとできる。
【0018】
本発明の同軸コネクタにおいては、 前記同軸ケーブルの先端部に、前記シェル又は該シェルに連結された部材に螺合するナットが取り付けられており、 前記インシュレータの後端面に、前記弾性不導体を収容する凹部又は隅部が形成されており、 前記弾性不導体が、前記ナットの先端面で、前記インシュレータの凹部又は隅部に押圧された状態で収容されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、沿面に弾性不導体を押し付けることにより電流が流れ難くなる効果を利用して、沿面距離を長くすることなく耐電圧を確保できる小型コネクタを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るコネクタ(電気コネクタ)の構造を示す図であり、図1(A)は側断面図、図1(B)は図1(A)のB部を拡大した図、図1(C)は図1(A)のC部を拡大した図である。
この例のコネクタ1は、電力供給ケーブルの先端に取り付けられる電気コネクタであり、電力供給ケーブルの電力供給線に導通する複数のコンタクト2(2個を図示)、同コンタクト2を取り囲んで支持するインシュレータ3、インシュレータ3の外側に配設されたシェル6等から構成されている。
【0021】
コンタクト2は、メスタイプのピン状のもので、縦孔が形成された嵌合接続部2aと、電力供給線と接続される結線部2bとからなる。結線部2bは、接続部2aより小径である。各コンタクト2は、インシュレータ3に支持されている。各コンタクト2の外側はほとんどの部分がインシュレータ3に覆われており、各コンタクト2間、及び、コンタクト2とシェル6との間は電気的に絶縁されている。
【0022】
インシュレータ3は、例えばエポキシ樹脂で作製された、全体として円筒状の部材であり、軸方向に半割りされた前インシュレータ4と後インシュレータ5とからなる。図1(B)、(C)に示すように、両者は端面4a、5aを合わせるように固定されている。前後インシュレータ4、5には、軸方向に延びる複数の貫通孔4b、5bが形成されており、コンタクト2は各貫通孔に挿入されて、互いに隔離されて支持されている。詳細には、前インシュレータ4の貫通孔4bにはコンタクト2の接続部2aが挿入され、後インシュレータ5の貫通孔5bには結線部2bが挿入されている。
【0023】
このようにインシュレータ3を半割の構成とするのは、コンタクト2を軸方向の前後方向に抜け止めするためである。つまり、前インシュレータ4の貫通孔4b(図1(A)参照)の先端寄りの部分には、内側に張り出した段部4dが形成されており、これにより、コンタクト2は、前方へ抜けないように同インシュレータ4内に固定される。一方、後インシュレータ5の貫通孔5bの径は、コンタクト2の接続部2aの径より小さいので、コンタクト2は後方へ抜けないように支持される。
【0024】
図1(B)、(C)に示すように、前インシュレータ4の後端面4aの貫通孔4bの周囲には、正面形状が円形の凹部4cが形成されている。この凹部4cは、底壁の位置が、コンタクト2の接続部2aと結線部2bとの境と同じ位置となるように形成されている。同凹部4cには、ゴム製のOリング10のような弾性不導体が収容されている。
一方、後インシュレータ5の先端面5aは平坦な面となっている。
【0025】
Oリング10は、先側の面及び後側の面が、各々前インシュレータ4の凹部4cの底壁及び後インシュレータ5の先端面5aに押圧されて、前後方向に押し潰されるような状態で凹部4cに収容されている。このようにOリング10を押圧した状態で収容するために、例えばOリング10の線径が1.6mmの場合、前インシュレータ4の凹部4cの深さは1.2mm程度に設定されている。なお、Oリング10の外側の面と内側の面も、各々凹部4cの側壁とコンタクト2の外周面に当たっている。このOリング10の作用については後述する。
【0026】
図1(A)に示すように、インシュレータ3は、導電性のバレル(シェル)6に嵌合して、止めリング13により抜け止めされて固定されている。シェル6の中央部の外側には、接続ナット14が回転可能に取り付けられている。シェル6の後部には、エンドベル15が螺合している。エンドベル15の後端部には、ビス17で締め付け可能なクランプサドル16が形成されている。電力供給ケーブルはクランプサドル16から挿入されて、ビス17で締め付け固定される。
【0027】
次に、Oリング10の作用について説明する。
上述のような構成のコネクタ1においては、各コンタクト2とシェル6との間及び隣接するコンタクト2間の短絡経路(沿面)は、前後インシュレータ4、5の合わせ面となる。詳しく説明すると、コンタクト2とシェル6との間の沿面は、図1(B)に示すように、後インシュレータ5の先端面5a(図に太い実線で示す)である。また、隣接するコンタクト2間の沿面も、図1(C)で示すように、後インシュレータ5の先端面5a(図に太い実線で示す)である。
【0028】
前述のように、Oリング10はこの沿面(後インシュレータ5の先端面5a)に押し付けられている。沿面にOリング10のような弾性不導体を押し付けると、同面上に電流が流れ難くなるという現象がある。沿面距離が短い場合には沿面放電が生じるおそれがあるので、十分な短絡防止効果を得るには、前述のように沿面距離を長くすることが一般的である。しかし、本発明のような弾性不導体による短絡防止効果を適用すれば、沿面距離を長くしないでも短絡防止効果が得られる。すなわち、沿面距離を可能な限り短くできる。
一例として、JIS C0704によれば、インシュレータがエポキシ樹脂で、直流電圧が500V、汚染度2の場合、沿面距離の必要最小値は5mm、電圧1000Vの場合は10mmとなっている。
【0029】
このOリング10を用いたことによる効果を比較例を参照して説明する。
図2は、比較例のコネクタ(電気コネクタ)の構造を示す図であり、図2(A)は側断面図、図2(B)は図2(A)のB部を拡大した図である。
この比較例のコネクタ1´においては、インシュレータ3が、前インシュレータ4と後インシュレータ5が凹凸嵌合して、止めリング13により固定された構造となっている。つまり、図1の例と同様に、前インシュレータ4の後端面4aの貫通孔4bの周囲には環状の凹部4cが形成されており、後インシュレータ5の先端面5aの貫通孔5bの周囲には環状の凸部5cが形成されている。そして、後インシュレータ5の凸部5cが前インシュレータ4の凹部4cに嵌合している。
図2において、図1と同じ作用・効果を有する部材は図1と同じ符号を付す。
【0030】
前後インシュレータ4、5を凹凸嵌合させたのは以下の理由による。例えば、図2(B)の想像線で示すように、前後インシュレータ4、5を平面で合わせたとする。この場合、コンタクト2とシェル6との間に存在する沿面は、図2の想像線Lで示す、前後インシュレータ4、5の合わせ面となるが、この面の距離はかなり短い。そこで、コネクタ1´の寸法はそのままとして沿面距離を長くするために、上述のような凹凸嵌合させると、沿面距離は、図2(B)の太い実線で示す、凹凸接合面に沿う距離となり比較的長くなる。しかし、このような凹凸嵌合させるには、前後インシュレータ4、5にそれぞれ凹部4c、凸部5cを形成するので、加工工程が増えてしまう。
なお、同様のことが、隣接するコンタクト2間の沿面距離についてもいえる。
【0031】
しかし、本例のコネクタ1の場合は、図1に示すように、後インシュレータ5の先端面5aは凸部のない平坦な面であり、同面が、コンタクト2とシェル6間との間、及び、隣接するコンタクト2間の沿面となっている。これらの沿面距離は、図2に示す比較例より短い。しかし、この沿面(後インシュレータ5の先端面5a)にOリング10が押し付けられているので、短絡防止の効果が得られている。
【0032】
その結果、後インシュレータ5に凸部を形成する工程が不要であるので、インシュレータ3の加工プロセスを、比較例のものに比べて減らすことができる。
【0033】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る同軸コネクタ(SMAコネクタ)の構造を示す図であり、図3(A)は側断面図、図3(B)は図3(A)のB部を拡大した図である。
この例のコネクタ21は、同軸ケーブル100の先端に取り付けられる同軸コネクタである。同軸ケーブル100は、中心導体101、中心導体101の外周を覆うケーブル絶縁体102、ケーブル絶縁体102の外周を覆う外部導体103を有する。外部導体103は、セミリジッドケーブルの場合、例えば、銅パイプで作製される。ケーブル100の先端においては、中心導体101の先端から比較的長い寸法の部分101aが露出しており、さらに、ケーブル絶縁体102も先端から比較的短い寸法の部分102aが露出している。
【0034】
同軸コネクタ21は、同軸ケーブル100の中心導体101に導通するコンタクト22、同コンタクト22を支持するインシュレータ23、同軸ケーブル100の外部導体103に導通して固定される締付けナット31に導通する導電性のシェル26等から構成されている。
【0035】
コンタクト22は、オスタイプのピン状のもので、先端の突出した接続部22aと、同軸ケーブル101の中心導体101と導通する結線部22bとからなる。結線部22bには、同軸ケーブル100の、中心導体101の露出した部分101aが嵌合固定されている。コンタクト22の外径は、同軸ケーブル100のケーブル絶縁体102の外径と等しい。コンタクト22の結線部22bと、同軸ケーブル100のケーブル絶縁体102の露出した部分102aは、インシュレータ23で支持されている。
【0036】
インシュレータ23は、例えばテフロン(登録商標)で作製された、全体として円筒状の部材であり、前インシュレータ24と後インシュレータ25とからなる。図3(B)に示すように、インシュレータ23の軸中心には貫通孔23aが形成されており、同貫通孔23aにコンタクト22が挿入される。
【0037】
図3(B)に示すように、後インシュレータ25の後端面25aの貫通孔23aの周囲には、正面形状が円形の凹部25bが形成されている。凹部25bの長さは、同軸ケーブル100の、ケーブル絶縁体102の露出した部分102aの長さと同じであり、径は外部導体103の径よりやや小さい。同凹部25bには、ゴム製のOリング30のような弾性不導体が収容されている。Oリング30は、外側の面及び内側の面が、各々後インシュレータ25の凹部25bの側壁及びケーブル絶縁体102の露出した部分102aの外周面に押圧されて、内外方向に押し潰されるように凹部25bに収容されている。このようにOリング30を押し潰した状態で収容するために、例えばOリング30の外径が2.2〜2.3mm、内径が1.0mmの場合、凹部25bの内径は2mm程度に設定されている。なお、Oリング30の先側の面と後側の面も、各々凹部25bの底壁と外部導体103の先端面に当たっている。
【0038】
このOリング30は、図1で説明した電気コネクタのOリング10と同様に、沿面を流れる電流を流れにくくする効果がある。上述のような構成の同軸コネクタ21においては、導体であるコンタクト22と同軸ケーブル100の外部導体103との間の、露出したケーブル絶縁体102aの表面(図3(B)に太い実線で示す)が短絡経路(沿面)となる。前述のように、Oリング30はこの沿面(露出したケーブル絶縁体102aの外周面)に押し付けられているので、図1と同様に短絡防止効果を得ることができる。この例におけるOリング30の沿面距離に対する効果は後述する。
【0039】
再び図3(A)を参照して説明する。
前インシュレータ24は、導電性のシェル26に圧入されている。シェル26の後部の内周には、後述する締付けナット31が螺合するネジが形成されている。また、後インシュレータ25は、締付けナット31に圧入され固定されている。この締付けナット31は、シェル26のネジに螺合する。
シェル26の先端部の外周には、接続ナット32が止めリング33により回転可能に連結されている。シェル26の先端部の外周には防水や気密用のガスケット34が配設されている。
【0040】
このOリング30を用いたことによる効果を比較例を参照して説明する。
図4は、比較例のコネクタ(SMAコネクタ)の構造を示す図であり、図4(A)は側断面図、図4(B)は図4(A)のB部を拡大した図である。
この比較例においては、Oリング30が備えられておらず、後インシュレータ25にOリング30を収容するための凹部が形成されていない。
図4において、図3と同じ作用・構成を有する部品は図3と同じ符号を付す。
【0041】
この例のコネクタ21´においては、図4(B)に示すように、コンタクト22と外部導体103との間の、ケーブル絶縁体102の露出した部分102aの表面(図4(B)に太い実線で示す)が、短絡経路(沿面)となる。短絡防止のために十分な長さの沿面距離を確保するには、単純に、ケーブル絶縁体102の露出した部分102aの長さdを長くしなければならない。同部分102aはコネクタ21´の長さ方向の長さなので、同部分102aを長くすると、コネクタ21´全体の長さが長くなってしまうことになる。
【0042】
一方、本実施例のコネクタ21においても、図3に示すように、比較例と同様に、コンタクト22と外部導体103の間の、ケーブル絶縁体102の露出した部分102aが、短絡経路(沿面)となる。しかし、同沿面にOリング30を押し付けているので、同部分102aの長さ長くしなくても、短絡防止効果を得ることができる。例えば、ケーブル絶縁体の露出した部分の長さを1mm程度としても十分に短絡防止できる。
【0043】
次に、このコネクタ21を組み立てる方法を説明する。
まず、同軸ケーブル100の、中心導体101及びケーブル絶縁体102を、所定の長さだけ露出させておき、コンタクト22を中心導体101に挿入し、はんだ106で固定する。次に、ケーブル絶縁体102の露出した部分102aに、Oリング30を取り付ける。また、締付けナット31に、後インシュレータ25を圧入しておく。その後、締付けナット31にケーブル100を図3に示す位置まで挿入し、締付けナット31を外部導体103にはんだ35で固定する。これにより、Oリング30が後インシュレータ25の溝25bに挿入されて押し潰される。最後に、前インシュレータ24をシェル26に圧入し、同シェル26に締付けナット31を螺合させる。ここで、図3(B)に示すように、外部導体103の径は、後インシュレータ25の凹部25bの径よりもやや大きいので、やがて、外部導体103の先端面が後インシュレータ25の後端面25aに当接する。
【0044】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係るコネクタ(SMAコネクタ)の構造を示す図であり、図5(A)は側断面図、図5(B)は図5(A)のB部を拡大した図である。
この例のコネクタ41は、図3のコネクタ21とほぼ同様の構造を有するが、弾性不導体としてOリング30ではなくガスケット45を使用している。図2において、図1と同じ作用・構成を有する部品は図1と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0045】
ガスケット45とは、この例では、断面が方形のシリコンゴムで作製された環状の部材である。このようなガスケット45を使用しても、沿面(ケーブル絶縁体102の露出した部分102a)にガスケットが押し付けられるので、図3と同様の効果が得られる。
なお、弾性不導体としては、沿面に押圧される形状のものであれば、断面が方形のもの以外にも、断面が三角形のものや多角形のものを使用できる。
【0046】
図6は、本発明の第4の実施の形態に係るコネクタ(SMAコネクタ)の構造を示す図であり、図6(A)は側断面図、図6(B)は図6(A)のB部を拡大した図である。
この例のコネクタ51は、図3のコネクタ21とほぼ同様の構造を有するが、Oリング30を装着するための機構が異なる。図6において、図3と同じ作用・構成を有する部品は図3と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0047】
この例のコネクタ51においては、Oリング30を後インシュレータ25の凹部25bに押し込むために、同軸ケーブル100の先端に押し込み用ナット53が備えられている。押し込み用ナット53は、図6(B)に示すように、ケーブル絶縁体102を囲む先端部53aと、外部導体103を囲む基端部53bを有する。また、締付けナット31には、後部の内周に、押し込み用ナット53と螺合するネジが形成されている。
【0048】
このコネクタ51を組み立てる方法を説明する。まず、同軸ケーブル100を加工しておき、中心導体101をコンタクト22に挿入してはんだ106で固定する。次に、押し込み用ナット53に同ケーブル100を挿入してはんだ35で固定し、前方に延びたケーブル絶縁体102にOリング30を取り付ける。一方、締付けナット31に後インシュレータ25を圧入しておく。そして、押し込み用ナット53を締付けナット31に螺合させる。これにより、Oリング30が後インシュレータ25の凹部25bにはまり込んで押し潰される。
最後に、前インシュレータ24をシェル26に圧入し、同シェル26に締付けナット31を螺合させる。
【0049】
このように、Oリング30をインシュレータ25の凹部25bに押し込むためのナット53を別に設けたことにより、Oリング30の挿入性を良くし、作業性を高める効果が得られる。
【0050】
図7は、本発明の第5の実施の形態に係るコネクタ(SMAコネクタ)の構造を示す図であり、図5(A)は側断面図、図5(B)は図5(A)のB部を拡大した図である。
この例のコネクタ61は、図6のコネクタ51とほぼ同様の構造であり、弾性不導体としてOリング30ではなくガスケット45を使用したものである。この例においても、図6の例と同様の効果が得られる。図7において、図6と同じ作用・構成を有する部品は図6と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0051】
図8は、本発明の第6の実施の形態に係る同軸コネクタ(BNCコネクタ)の構造を示す図であり、図8(A)は側断面図、図8(B)は図8(A)のB部を拡大した図である。
この例の同軸コネクタ71も、同軸ケーブル100の端部に取り付けられるもので、同軸ケーブル100の中心導体101に導通するコンタクト72、同コンタクト72を支持するインシュレータ73、同軸ケーブル100の外部導体103に導通する締付けナット77に導通するシェル76等から構成されている。
【0052】
同軸ケーブル100の、中心導体101の露出した部分101aは、コンタクト72にはんだ付けにて固定されている。コンタクト72は、メスタイプのピン状のもので、オスタイプのピン状コンタクトが挿入される縦孔を有する嵌合接続部72aと、同軸ケーブル100の中心導体101と導通する結線部72bとからなる。この例においては、コンタクト72の外径は、同軸ケーブル100のケーブル絶縁体102の外径よりも大きい。コンタクト72、及び、同軸ケーブル100の、ケーブル絶縁体102の露出した部分102aは、インシュレータ73に支持されている。
【0053】
インシュレータ73は、例えばテフロン(登録商標)で作製された、全体として段付きの円筒状の部材であり、軸方向に半割りされた前インシュレータ74と後インシュレータ75とからなり、両者は端面で面している。インシュレータ73の軸中心には、貫通孔が形成されている。図8(B)に示すように、貫通孔は、コンタクト72が挿入される大径の先側貫通穴73aと、ケーブル絶縁体102が挿入される小径の後側貫通孔73bを有する。
【0054】
後インシュレータ75の後端面75aの後側貫通孔73bの周囲には、図3のコネクタ21と同様に、正面形状が円形の凹部75bが形成されている。なお、凹部75bの高さ(深さ)は、ケーブル絶縁体102の露出した部分102aの長さよりも短い。
【0055】
凹部75bには、ゴム製のOリング30のような弾性不導体が収容されている。Oリングは、外側の面及び内側の面が、各々後インシュレータ75の凹部75bの側壁及びケーブル絶縁体102の外周面に押圧されて、内外方向に押し潰されるように凹部75bに収容されている。このようにOリング30を押圧した状態で収容するために、例えばOリング30の外径が2.2〜2.3mm、内径が1.0mmの場合、凹部75bの内径は2mm程度に設定されている。なお、Oリング30の先側の面と後側の面も、各々凹部75bの底壁と外部導体103の先端面に当たっている。
【0056】
このOリング30も、図1で説明した電気コネクタのOリング30と同様に、短絡経路を流れる電流を流れにくくする効果がある。上述のような構成のコネクタ71においては、導体であるコンタクト72と同軸ケーブル100の外部導体103との間の、絶縁物であるケーブル絶縁体102の表面(図8(B)に太い実線で示す)が短絡経路(沿面)となる。前述のように、Oリング30はこの沿面(ケーブル絶縁体102の外周面)に押圧されているので、前述のように短絡防止に効果がある。
【0057】
図8(A)に示すように、前インシュレータ74は、導電性のシェル76に圧入されている。シェル76の後部の内周には、後述する締付けナット77が螺合するネジが形成されている。また、後インシュレータ75は、締付けナット77に圧入され固定されている。締付けナット77はシェル76のネジに螺合する。
【0058】
このコネクタ71は、次のように組み立てる。まず、同軸ケーブル100を加工後、前方に延びたケーブル絶縁体102にOリング30を取り付ける。そして、締付けナット77に後インシュレータ75を圧入し、同インシュレータ75にコンタクト72を圧入する。次に、Oリング30を取り付けたケーブル100を、締付けナット77から、後インシュレータ77とコンタクト72に挿入し、はんだ35で締付けナット77に固定する。これにより、Oリング30は後インシュレータ75の凹部75bにはまり込んで押し潰される。その後、コンタクト72を中心導体101にはんだ106で固定する。最後に、シェル76に前インシュレータ74を圧入し、同シェル76に締付けナット77を螺合させる。
【0059】
図9は、本発明の第7の実施の形態に係るコネクタ(BNCコネクタ)の構造を示す図であり、図9(A)は側断面図、図9(B)は図9(A)のB部を拡大した図である。
この例のコネクタ81は、図8のコネクタ71とほぼ同様の構成を有するが、弾性不導体としてOリング30の替わりにガスケット45を使用したものであり、図8の例と同様の効果が得られる。
【0060】
なお、以上の例では、Oリングやガスケットの弾性不導体は、コンタクトや同軸ケーブルのケーブル絶縁体の周りを一周しているが、必ずしも一周させる必要はない。例えば、沿面の一部に沿面距離が長い部分があれば、同部に弾性不導体を押し付ける処置をとっていなくてもよい。
【0061】
次に、実験結果を述べる。
耐電圧AC3000Vにて通常は短絡してしまう沿面距離が2mm以下の場合に、今回の発明を利用して短絡防止が可能かどうかを確認した。
図11は、試験方法を説明する図である。
まず、絶縁物のプレート300を準備し、同プレート300に所定の内径の凹部300aと、同凹部300aの中心を貫通する孔300bを形成する。凹部300aの径は2.2mm、深さは1.1mm、プレート300の厚さは1.5mmである。そして、同軸ケーブル100を準備し、中心導体101と、ケーブル絶縁体102を露出させ、ケーブル絶縁体102の露出した部分にOリング30を嵌合する。Oリング30としては、外径が2.5mm、線径が1mmのものを使用した。そして、同軸ケーブルに嵌合させたOリング30を、金属製の台301上に設置されたプレート300の凹部300aにはめ込み、上から治具302で押え付ける。これによりOリング30は、凹部300aの側壁と同軸ケーブル100のケーブル絶縁体102間で押し潰されて、ケーブル絶縁体102の外周面に押し当てられる。このとき、同軸ケーブル100の中心導体101はプレート300の孔300bを通って金属製の台301に導通している。なお、沿面距離は1.5mmである。
【0062】
同軸ケーブル100の中心導体101と外部導体103間に各々プローブP1、P2を接続し、両プローブ間に耐電圧AC1000V〜3400Vにて1分間を印加した。
【0063】
全ての試験電圧にて短絡が発生していないことが確認された。
なお、Oリングがなく、沿面距離が1.5mmの場合は、耐電圧3000Vにて短絡が発生した。
【0064】
これらの結果により、Oリングを沿面に押圧することにより、耐電圧が向上することが確認された。Oリングを押圧することによって沿面距離が1.5mmでAC3400Vまで使用可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るコネクタ(電気コネクタ)の構造を示す図であり、図1(A)は側断面図、図1(B)は図1(A)のB部を拡大した図、図1(C)は図1(A)のC部を拡大した図である。
【図2】比較例のコネクタ(電気コネクタ)の構造を示す図であり、図2(A)は側断面図、図2(B)は図2(A)のB部を拡大した図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る同軸コネクタ(SMAコネクタ)の構造を示す図であり、図3(A)は側断面図、図3(B)は図3(A)のB部を拡大した図である。
【図4】比較例のコネクタ(SMAコネクタ)の構造を示す図であり、図4(A)は側断面図、図4(B)は図4(A)のB部を拡大した図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るコネクタ(SMAコネクタ)の構造を示す図であり、図5(A)は側断面図、図5(B)は図5(A)のB部を拡大した図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るコネクタ(SMAコネクタ)の構造を示す図であり、図6(A)は側断面図、図6(B)は図6(A)のB部を拡大した図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係るコネクタ(SMAコネクタ)の構造を示す図であり、図5(A)は側断面図、図5(B)は図5(A)のB部を拡大した図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る同軸コネクタ(BNCコネクタ)の構造を示す図であり、図8(A)は側断面図、図8(B)は図8(A)のB部を拡大した図である。
【図9】本発明の第7の実施の形態に係るコネクタ(BNCコネクタ)の構造を示す図であり、図9(A)は側断面図、図9(B)は図9(A)のB部を拡大した図である。
【図10】特許文献2に記載されたコネクタの構造を示す側面断面図である。
【図11】試験方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0066】
1 コネクタ 2 コンタクト
3 インシュレータ 4 前インシュレータ
5 後インシュレータ 6 シェル
10 Oリング 13 止めリング
14 接続ナット 15 エンドベル
16 クランプサドル 17 ビス
21 同軸コネクタ 22 コンタクト
23 インシュレータ 24 前インシュレータ
25 後インシュレータ 26 シェル
30 Oリング 31 締付けナット
32 接続ナット 33 止めリング
34 ガスケット 35 はんだ
41 コネクタ 45 ガスケット
51 コネクタ 53 押し込み用ナット
61 コネクタ
71 コネクタ 72 コンタクト
73 インシュレータ 74 前インシュレータ
75 後インシュレータ 76 シェル
77 締付けナット
81 コネクタ
100 同軸ケーブル 101 中心導体
102 ケーブル絶縁体 103 外部導体
106 はんだ
300 プレート 301 台
302 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンタクトと、該複数のコンタクトを相互に絶縁して支持するインシュレータと、該インシュレータの外側に配設されたシェルとを備えるコネクタであって、
隣接する前記コンタクト相互間、及び、前記コンタクトと前記シェルとの間に存在する前記インシュレータの沿面に押し当てられた弾性不導体をさらに備えることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
中心導体、該中心導体の外周を覆うケーブル絶縁体、及び、該ケーブル絶縁体の外周を覆う外部導体を有する同軸ケーブルの端部に取り付けられる同軸コネクタであって、
前記中心導体に導通するコンタクトと、該コンタクトを支持するインシュレータと、前記外部導体に導通するシェルとを備え、
前記中心導体又はコンタクトと前記外部導体又は前記シェル(シェルに導通する部材を含む)の間に存在する沿面に押し当てられた弾性不導体をさらに備えることを特徴とする同軸コネクタ。
【請求項3】
前記インシュレータが軸方向に半割りされており、その割り面に、前記弾性不導体が押圧状態で配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ又は同軸コネクタ。
【請求項4】
前記弾性不導体が前記ケーブル絶縁体の端部に嵌合されており、
前記インシュレータの後端面に、前記弾性不導体を収容する凹部又は隅部が形成されており、
前記弾性不導体が、前記外部導体の先端面で、前記インシュレータに押圧された状態で収容されていることを特徴とする請求項3記載の同軸コネクタ。
【請求項5】
前記弾性不導体が、ゴム製のOリングであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
電力供給ケーブルの先端部に、前記シェル又は該シェルに連結された部材に螺合するナットが取り付けられており、
前記インシュレータの後端面に、前記弾性不導体を収容する凹部又は隅部が形成されており、
前記弾性不導体が、前記ナットの先端面で、前記インシュレータの凹部又は隅部に押圧された状態で収容されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項7】
前記同軸ケーブルの先端部に、前記シェル又は該シェルに連結された部材に螺合するナットが取り付けられており、
前記インシュレータの後端面に、前記弾性不導体を収容する凹部又は隅部が形成されており、
前記弾性不導体が、前記ナットの先端面で、前記インシュレータの凹部又は隅部に押圧された状態で収容されていることを特徴とする請求項2記載の同軸コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−269839(P2008−269839A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108314(P2007−108314)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000145183)株式会社七星科学研究所 (14)
【Fターム(参考)】