コネクタ
【課題】キャビティに収容される端子金具の極数が変更された場合において、金型の製造コストの低減を図る。
【解決手段】コネクタMは、複数の端子金具30が収容される合成樹脂製の端子収容部材20と、端子収容部材20とは別体部品であって、前端部がパネルPの取付孔Hに取り付けられるようになっている筒状部材10とを備えて構成される。コネクタMは、端子収容部材20と筒状部材10とを組み付けて構成されている。
【解決手段】コネクタMは、複数の端子金具30が収容される合成樹脂製の端子収容部材20と、端子収容部材20とは別体部品であって、前端部がパネルPの取付孔Hに取り付けられるようになっている筒状部材10とを備えて構成される。コネクタMは、端子収容部材20と筒状部材10とを組み付けて構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のキャビティが形成された端子収容部と端子収容部から前方へ突出するフード部とを有し、各キャビティ内に端子金具が収容された合成樹脂製のコネクタが開示されている。このコネクタはワイヤーハーネスの端末部に取り付けられ、フード部の前端部がパネルの取付孔に取り付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,090,533 B1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のコネクタでは、ワイヤーハーネスを構成する電線の本数が変更されると、それに応じて、端子収容部に収容される端子金具の極数も変更されるため、端子収容部に関してキャビティの数と配置を変更した新たなコネクタを製造する必要がある。この場合、コネクタを成形するための金型も新たに製造することになる。したがって、端子金具の極数変更形態の種類数が増えると、その分、製造する金型の数も増え、金型の製造コストも嵩んでいく。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、キャビティに収容される端子金具の極数が変更された場合において、金型の製造コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、複数の端子金具が収容される合成樹脂製の端子収容部材と、前記端子収容部材とは別体部品であって、前端部がパネルの取付孔に取り付けられるようになっている筒状部材とを備え、前記筒状部材の後端部に対し、前記端子収容部材を組み付けて構成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記筒状部材内においては、前記端子金具の前端部のタブが前記端子収容部材の前端面から突出しており、前記筒状部材内には、その前方から雌ハウジングが嵌合し、この雌ハウジングに収容した雌端子金具が前記タブと接続されるようになっており、前記筒状部材に対する前記端子収容部材の組付け方向が、前記雌ハウジングの嵌合方向と交差する方向であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記筒状部材には、前記端子収容部材の前記筒状部材への組付け動作を許容するが、前記端子収容部材の前後方向への変位を規制する規制部が形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記筒状部材と前記端子収容部材には、前記端子収容部材が正しい組付け位置にある状態において、互いに係合することにより前記端子収容部材の離脱方向への変位を規制するロック部が形成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記筒状部材には、前記端子収容部材が正しい組付け位置にある状態において前記端子収容部材のそれ以上の組付け方向への変位を規制する前止まり部が形成されているところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載のものにおいて、前記端子収容部材には、前記端子金具が前記端子収容部材内に正しく収容されているか否かを検知するための検知部材が組み付けられるようになっており、前記検知部材と前記筒状部材には、前記検知部材が前記端子収容部材に組み付けられた状態で互いに当接可能な当接部が形成され、前記当接部同士の当接により、前記検知部材が前記端子収容部材を前記前止まり部側へ押圧するようになっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
端子金具の極数が変更された場合は、端子収容部材を新たに製造し、それを既存の筒状部材に取り付けて使用する。つまり、端子金具の極数変更の際には、筒状部材を共用部品として流用し、端子収容部材用の金型を新たに製造する。この金型は、筒状部材を成形するための成形部を有していないので、その分、形状がシンプルとなっている。金型は、形状がシンプルであるほど製造コストが低いので、本発明によれば、金型の製造コストを低減することが可能である。
【0013】
<請求項2の発明>
筒状部材と端子収容部材との間には、組付け動作の円滑化を図るためのクリアランスが空けられるため、端子収容部材と筒状部材との組付け方向に僅かではあるがガタ付きが生じることが懸念される。この点に鑑み、本発明は、筒状部材に対する端子収容部材の組付け方向を、雌ハウジングの嵌合方向と交差する方向としている。したがって、筒状部材と端子収容部材との間で組付方向のガタ付きが生じても、タブと雌端子金具との接続代が不安定になる虞はない。
【0014】
<請求項3の発明>
筒状部材に対し前方から雌ハウジングが嵌合して雌端子金具とタブが接続するときには、雌端子金具とタブとの間の接続抵抗のために、端子収容部材が後方へ押圧される。しかし、端子収容部材は規制部によって前後方向の変位を規制されているので、タブと雌端子金具との接続代が確保される。
【0015】
<請求項4の発明>
筒状部材に組み付けられた端子収容部材は、ロック部同士の係合によって正しい組付け位置に保持される。
【0016】
<請求項5の発明>
筒状部材に組み付けられた端子収容部材は、前止まり部によって正しい組付け位置に保持される。
【0017】
<請求項6の発明>
検知部材を端子収容部材に組み付けると、当接部同士の当接により、検知部材が端子収容部材を前止まり部側へ押圧するので、端子収容部材を筒状部材に対して正しい位置に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1の筒状部材の背面図
【図2】端子収容部材の正面図
【図3】端子収容部材の側面図
【図4】検知部材の正面図
【図5】検知部材の押圧突起をあらわす部分拡大正面図
【図6】筒状部材に対する端子収容部材の組付け途中の状態をあらわす背面図
【図7】筒状部材に端子収容部材を組み付けた状態をあらわす背面図
【図8】図6のA−A線断面図
【図9】図7のB−B線断面図
【図10】図7のC−C線断面図
【図11】端子収容部材に雄端子金具を挿入した状態をあらわす部分拡大断面図
【図12】雄端子金具が挿入されている端子収容部材に対して検知部材を組み付けた状態をあらわす部分拡大断面図
【図13】端子収容部材に検知部材を組み付けた状態をあらわす正面図
【図14】端子収容部材に検知部材を組み付けた状態をあらわす部分拡大正面図
【図15】雌ハウジングの斜視図
【図16】端子収容部材と雌ハウジングを嵌合して端子金具同士を接続した状態をあらわす部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図16を参照して説明する。本実施形態のコネクタMは、筒状部材10と、筒状部材10とは別体の部品として製造された端子収容部材20と、複数の雄端子金具30(本発明の構成要件である端子金具)と、検知部材40とを備えて構成されている。かかるコネクタMは、図8及び図10に示すよう、パネルPの取付孔Hに取り付けられ、パネルPに取り付けられたコネクタMには、このコネクタMの前方から雌ハウジングFが嵌合されるようになっている。雌ハウジングFは、全体としてブロック状をなし、その内部には複数の雌端子金具Tが収容されている。
【0020】
筒状部材10は、合成樹脂製であり、図8〜図10に示すように、前方に向かって次第に拡径するようなテーパ状をなしていて、前後方向に貫通する形態である。筒状部材10の前端縁部は、取付孔Hに嵌合させるための嵌合用縁部11となっていて、取付孔Hと同じく概ね円形をなす。筒状部材10の後端縁部は、全体として縦長の方形をなす嵌合孔12となっている。
【0021】
筒状部材10には、嵌合孔12の左側縁から後方へ突出して更に内側(右方)へ屈曲した形態の3つの突部13が、上下に間隔を空けて並ぶように形成されているとともに、嵌合孔12の右側縁から後方へ突出して更に内側(左方)へ突出した形態の3つの突部13が、上下に間隔を空けて並ぶように形成されている。各突部13の突出端部は、前後方向に対して直角(即ち、筒状部材10に対する端子収容部材20の組付け方向と平行)な板状の規制部14となっている。
【0022】
筒状部材10の後端面における嵌合孔12の下縁部には、後方へ突出するロック突起15(本発明の構成要件であるロック部)が形成されている。ロック突起15の下面は、上下方向(即ち、筒状部材10に対する端子収容部材20の組付け方向と平行な方向)に対して直角なロック面16となっている。ロック突起15の上面は、上下方向に対して傾斜した誘導面17となっている。
【0023】
筒状部材10の後端面には、前止まり部18が形成されている。前止まり部18は、上下方向に対して直角な左右方向に延びるリブ状に突出した形態であり、ロック突起15よりも下方(即ち、筒状部材10に対する端子収容部材20の組付け方向においては前方)の位置に配置されている。
【0024】
嵌合孔12の内周面のうち上面(つまり、下方に臨む面)は、当接面19(本発明の構成要件である当接部)となっている。この当接面19は、筒状部材10に対する端子収容部材20の組付け方向と直角な平面である。
【0025】
端子収容部材20は、合成樹脂製であり、全体としてブロック状をなしている。端子収容部材20の内部には、前後方向に貫通する複数の端子挿入空間21が形成されている。端子収容部材20には、各端子挿入空間21の内壁に沿って前方へ片持ち状に延出する形態であって、雄端子金具30の挿入方向と交差する方向へ弾性撓み可能なランス22が形成されている。同じく端子収容部材20には、ランス22の弾性撓みを許容するための撓み空間23が、端子収容部材20の前面に開口する形態で形成されている。
【0026】
各端子挿入空間21内には、後方から複数の雄端子金具30が挿入されている。図11及び図12に示すように、雄端子金具30は、端子本体31と、端子本体31から前方へ突出するタブ32とを備えている。雄端子金具30を挿入する過程では、ランス22が雄端子金具30との干渉により弾性撓みさせられて撓み空間23側に進出する。雄端子金具30が正規の挿入位置に到達すると、ランス22が弾性復帰して雄端子金具30の抜止孔33に係止し、この係止作用により雄端子金具30が抜止め状態に保持される。
【0027】
図2及び図3に示すように、端子収容部材20の左側面には、3つの前部突起24が上下に間隔を空けて並ぶように形成されているとともに、3つの後部突起25が、3つの前部突起24よりも後方の位置において上下に間隔を空けて並ぶように形成されている。また、端子収容部材20の右側面にも、3つの前部突起24が上下に間隔を空けて並ぶように形成されているとともに、3つの後部突起25が、3つの前部突起24よりも後方の位置において上下に間隔を空けて並ぶように形成されている。
【0028】
各側面において、上下に並ぶ3つの前部突起24のうち最も上に位置する前部突起24は、上下に並ぶ3つの後部突起25のうち最も上に位置する後部突起25よりも少し上方にずれて位置する。同様に、上下に並ぶ3つの前部突起24のうち中央に位置する前部突起24は、上下に並ぶ3つの後部突起25のうち中央に位置する後部突起25よりも少し上方にずれて位置し、上下に並ぶ3つの前部突起24のうち最も下に位置する前部突起24は、上下に並ぶ3つの後部突起25のうち最も下に位置する後部突起25よりも少し上方にずれて位置する。
【0029】
端子収容部材20には、その下端面に沿った形態のロックバー26(本発明の構成要件であるロック部)が形成されている。ロックバー26は左右方向に延びていて、ロックバー26の左右両端部が端子収容部材20の下面に連なって支持されている。このロックバー26は、その左右方向における中央部分が後方へ変位するように形態で弾性的に湾曲変形することが可能となっている。
【0030】
検知部材40は、合成樹脂製であって、全体としてブロック状をなしている。検知部材40には、後方へ片持ち状に延出する形態の複数の検知突起41が形成されている。この複数の検知突起41は、端子収容部材20に形成されている複数の撓み空間23と対応する配置で形成されている。検知部材40の上端面には、左右に間隔を空けた3つの押圧突起42が形成されている。各押圧突起42は、前後方向に細長いリブ状に突出している。
【0031】
次に、本実施形態のコネクタMの組付け手順を説明する。組付けに際しては、まず、端子収容部材20に雄端子金具30を挿入する前に、端子収容部材20を筒状部材10に対し後方から組み付ける。このとき、図6及び図8に示すように、端子収容部材20は、前部突起24が規制部14と干渉しないように、正規の組み付け高さよりも少し高い位置で筒状部材10に接近させ、前部突起24を規制部14よりも前方に位置させるとともに、後部突起25を規制部14の後面に当接させる。この状態では、規制部14の内側の側縁が端子収容部材20の左右両側面に当接することにより、端子収容部材20が、筒状部材10に対し、左右方向において位置決めされる。また、ロックバー26はロック突起15の上方に位置するが、端子収容部材20は、後述するようにロックバー26を弾性撓みさせながら、筒状部材10に対して相対的に下方へ移動することを許容されている。
【0032】
この後、端子収容部材20を筒状部材10に対して相対的に下方へスライドさせる。スライドさせる過程では、ロックバー26が弾性撓みすることにより、ロック突起15に乗り上がる。このとき、ロックバー26は端子収容部材20の移動方向に対して傾斜した誘導面17上を摺動するので、端子収容部材20の下方へのスライド動作とロックバー26の弾性撓みが支障なく行われる。
【0033】
端子収容部材20が移動する過程では、弾性撓みするロックバー26の弾性復元力により、端子収容部材20は筒状部材10に対して相対的に後方へ変位しようとするのであるが、前部突起24の後面が規制部14の前面に当接しているので、端子収容部材20の後方への相対移動は規制される。また、後部突起25が規制部14の後面に摺接するので、端子収容部材20は、筒状部材10に対して前後方向へ相対移動することなく所定経路に沿って下方へ移動する。
【0034】
そして、端子収容部材20が筒状部材10に対して正規の組付位置に到達すると、図7及び図9に示すように、ロックバー26が、ロック突起15を乗り越えて弾性復帰し、ロック突起15のロック面16に対して下から係止することにより、端子収容部材20は上方(筒状部材10から外れる方向)への戻りを規制された状態にロックされる。また、ロックバー26がロック突起15を乗り越えると同時に、ロックバー26が、前止まり部18に対して上から突き当たり、この突き当たりにより、端子収容部材20は下方への移動(正規位置よりも更に組付け方向へ進むこと)を規制された前止まり状態に保持される。
【0035】
また、端子収容部材20が正規位置に組み付けられた状態では、が10に示すように、前部突起24が規制部14に対して前方から当接することにより、端子収容部材20が筒状部材10に対して後方へ離脱することを規制される。また、後部突起25が規制部14に対して後方から当接することにより、端子収容部材20が筒状部材10に対して前方へ変位することも規制される。以上により、端子収容部材20は、筒状部材10に対して前後方向において位置決めされる。
【0036】
筒状部材10に端子収容部材20を組み付けた後、端子収容部材20の各端子挿入空間21に対し後方から雄端子金具30を取り付ける。全ての雄端子金具30を取り付けた状態では、各雄端子金具30の先端のタブ32が、端子収容部材20の前端面から前方へ突出し、筒状部材10で囲まれた空間内に収容されることにより、異物の干渉から保護される。
【0037】
全ての雄端子金具30を取り付けた後、端子収容部材20に対し前方から検知部材40を組み付ける。検知部材40を組み付けた状態では、図12に示すように、検知突起41が撓み空間23内に進入し、この検知突起41の進入により、ランス22は、雄端子金具30から解離する方向への弾性撓みを阻止される。このように、雄端子金具30は、ランス22と検知突起41とによって確実に抜止め状態に保持される。
【0038】
また、複数の雄端子金具30のうちいずれかの雄端子金具30の挿入状態が不完全である場合には、その不完全挿入状態の雄端子金具30に押されたランス22が撓み空間23内に進出した状態となる。このような状態で検知部材40を組み付けた場合には、撓み空間23内に進入しているランス22に対し検知突起41が突き当たるので、検知部材40を組み付けることができなくなる。これに対し、全ての雄端子金具30が正しく取り付けられていて、全てのランス22が撓み空間23外へ退避している場合には、検知突起41を支障なく組み付けることができる。したがって、検知部材40を端子収容部材20に対して組み付けることができるか否かに基づいて、雄端子金具30の取り付け状態を検知することができる。
【0039】
また、嵌合検知部材40を端子収容部材20に組み付けると、図14に示すように、検知部材40の上面の押圧突起42が、嵌合孔12の内面の当接面19に対して下方から当接し、この当接作用により、検知部材40が筒状部材10に対して相対的に下方へ押圧される。これに伴い、検知部材40が組み付けられている端子収容部材20も、筒状部材10に対して下方へ押圧される。この押圧作用により、ロックバー26が前止まり部18に対して押し付けられ、この押し付け作用により、端子収容部材20は、筒状部材10に対して上下方向へのがたつきを規制され、上下方向において確実に位置決めされる。以上により、本実施形態のコネクタMの組付けが完了する。
【0040】
このコネクタMに対しては、前方から嵌合孔12内に雌ハウジングFが嵌合される。雌ハウジングFが嵌合されると、図16に示すように、雄端子金具30のタブ32が雌ハウジングF内に進入して雌端子金具Tに対して電気的導通可能に接続される。このとき、端子収容部材20は、筒状部材10とその嵌合孔12に対して位置決めされているので、雄端子金具30と雌端子金具Tとが支障なく接続される。
【0041】
本実施形態のコネクタMは、互いに別体に部品である筒状部材10と端子収容部材20とを組み付けて構成されているので、雄端子金具30の極数が変更された場合は、端子収容部材20を新たに製造し、それを既存の筒状部材10に取り付けて使用することができる。つまり、雄端子金具30の極数変更の際には、筒状部材10を共用部品として流用し、端子収容部材20用の金型を新たに製造する。この金型は、筒状部材10を成形するための成形部を有していないので、その分、形状がシンプルとなっている。金型は、形状がシンプルであるほど製造コストが低いので、本実施形態のコネクタMによれば、金型の製造コストを低減することが可能である。
【0042】
また、筒状部材10と端子収容部材20との間には、組付け動作の円滑化を図るためのクリアランスが空けられるため、端子収容部材20と筒状部材10との組付方向に僅かではあるがガタ付きが生じることが懸念される。この点に鑑み、本実施形態は、筒状部材10に対する端子収容部材20の組付け方向(即ち、上下方向)を、雌ハウジングFの嵌合方向と交差する方向(即ち、前後方向)としている。したがって、筒状部材10と端子収容部材20との間で組付け方向のガタ付きが生じても、タブ32と雌端子金具Tとの接続代が不安定になる虞はない。
【0043】
また、筒状部材10に対し前方から雌ハウジングFが嵌合して雌端子金具Tとタブ32が接続するときには、雌端子金具Tとタブ32との間の接続抵抗のために、端子収容部材20が後方へ押圧される。しかし、端子収容部材20は、前部突起24と規制部14との当接作用によって前後方向の変位を規制されているので、タブ32と雌端子金具Tとの接続代が確保される。
【0044】
また、検知部材40を端子収容部材20に組み付けると、押圧突起42と当接面19との当接作用により、検知部材40が端子収容部材20を前止まり部18側へ押圧するので、端子収容部材20を筒状部材10に対して正しい位置に保持することができる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
(1)筒状部材は、合成樹脂製に限らず、金属製であってもよい。
【0047】
(2)筒状部材に対する端子収容部材の組付方向は、筒状部材に対する雌ハウジングの嵌合方向と平行な方向(前後方向)であってもよい。
【0048】
(3)端子収容部材に検知部材を取り付けない形態としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
M…コネクタ
30…雄端子金具(端子金具)
20…端子収容部材
10…筒状部材
P…パネル
H…取付孔
32…タブ
F…雌ハウジング
T…雌端子金具
14…規制部
15…ロック突起(ロック部)
26…ロックバー(ロック部)
18…前止まり部
19…当接面(当接部)
42…押圧突起(当接部)
40…検知部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のキャビティが形成された端子収容部と端子収容部から前方へ突出するフード部とを有し、各キャビティ内に端子金具が収容された合成樹脂製のコネクタが開示されている。このコネクタはワイヤーハーネスの端末部に取り付けられ、フード部の前端部がパネルの取付孔に取り付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,090,533 B1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のコネクタでは、ワイヤーハーネスを構成する電線の本数が変更されると、それに応じて、端子収容部に収容される端子金具の極数も変更されるため、端子収容部に関してキャビティの数と配置を変更した新たなコネクタを製造する必要がある。この場合、コネクタを成形するための金型も新たに製造することになる。したがって、端子金具の極数変更形態の種類数が増えると、その分、製造する金型の数も増え、金型の製造コストも嵩んでいく。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、キャビティに収容される端子金具の極数が変更された場合において、金型の製造コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、複数の端子金具が収容される合成樹脂製の端子収容部材と、前記端子収容部材とは別体部品であって、前端部がパネルの取付孔に取り付けられるようになっている筒状部材とを備え、前記筒状部材の後端部に対し、前記端子収容部材を組み付けて構成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記筒状部材内においては、前記端子金具の前端部のタブが前記端子収容部材の前端面から突出しており、前記筒状部材内には、その前方から雌ハウジングが嵌合し、この雌ハウジングに収容した雌端子金具が前記タブと接続されるようになっており、前記筒状部材に対する前記端子収容部材の組付け方向が、前記雌ハウジングの嵌合方向と交差する方向であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記筒状部材には、前記端子収容部材の前記筒状部材への組付け動作を許容するが、前記端子収容部材の前後方向への変位を規制する規制部が形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記筒状部材と前記端子収容部材には、前記端子収容部材が正しい組付け位置にある状態において、互いに係合することにより前記端子収容部材の離脱方向への変位を規制するロック部が形成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記筒状部材には、前記端子収容部材が正しい組付け位置にある状態において前記端子収容部材のそれ以上の組付け方向への変位を規制する前止まり部が形成されているところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載のものにおいて、前記端子収容部材には、前記端子金具が前記端子収容部材内に正しく収容されているか否かを検知するための検知部材が組み付けられるようになっており、前記検知部材と前記筒状部材には、前記検知部材が前記端子収容部材に組み付けられた状態で互いに当接可能な当接部が形成され、前記当接部同士の当接により、前記検知部材が前記端子収容部材を前記前止まり部側へ押圧するようになっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
端子金具の極数が変更された場合は、端子収容部材を新たに製造し、それを既存の筒状部材に取り付けて使用する。つまり、端子金具の極数変更の際には、筒状部材を共用部品として流用し、端子収容部材用の金型を新たに製造する。この金型は、筒状部材を成形するための成形部を有していないので、その分、形状がシンプルとなっている。金型は、形状がシンプルであるほど製造コストが低いので、本発明によれば、金型の製造コストを低減することが可能である。
【0013】
<請求項2の発明>
筒状部材と端子収容部材との間には、組付け動作の円滑化を図るためのクリアランスが空けられるため、端子収容部材と筒状部材との組付け方向に僅かではあるがガタ付きが生じることが懸念される。この点に鑑み、本発明は、筒状部材に対する端子収容部材の組付け方向を、雌ハウジングの嵌合方向と交差する方向としている。したがって、筒状部材と端子収容部材との間で組付方向のガタ付きが生じても、タブと雌端子金具との接続代が不安定になる虞はない。
【0014】
<請求項3の発明>
筒状部材に対し前方から雌ハウジングが嵌合して雌端子金具とタブが接続するときには、雌端子金具とタブとの間の接続抵抗のために、端子収容部材が後方へ押圧される。しかし、端子収容部材は規制部によって前後方向の変位を規制されているので、タブと雌端子金具との接続代が確保される。
【0015】
<請求項4の発明>
筒状部材に組み付けられた端子収容部材は、ロック部同士の係合によって正しい組付け位置に保持される。
【0016】
<請求項5の発明>
筒状部材に組み付けられた端子収容部材は、前止まり部によって正しい組付け位置に保持される。
【0017】
<請求項6の発明>
検知部材を端子収容部材に組み付けると、当接部同士の当接により、検知部材が端子収容部材を前止まり部側へ押圧するので、端子収容部材を筒状部材に対して正しい位置に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1の筒状部材の背面図
【図2】端子収容部材の正面図
【図3】端子収容部材の側面図
【図4】検知部材の正面図
【図5】検知部材の押圧突起をあらわす部分拡大正面図
【図6】筒状部材に対する端子収容部材の組付け途中の状態をあらわす背面図
【図7】筒状部材に端子収容部材を組み付けた状態をあらわす背面図
【図8】図6のA−A線断面図
【図9】図7のB−B線断面図
【図10】図7のC−C線断面図
【図11】端子収容部材に雄端子金具を挿入した状態をあらわす部分拡大断面図
【図12】雄端子金具が挿入されている端子収容部材に対して検知部材を組み付けた状態をあらわす部分拡大断面図
【図13】端子収容部材に検知部材を組み付けた状態をあらわす正面図
【図14】端子収容部材に検知部材を組み付けた状態をあらわす部分拡大正面図
【図15】雌ハウジングの斜視図
【図16】端子収容部材と雌ハウジングを嵌合して端子金具同士を接続した状態をあらわす部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図16を参照して説明する。本実施形態のコネクタMは、筒状部材10と、筒状部材10とは別体の部品として製造された端子収容部材20と、複数の雄端子金具30(本発明の構成要件である端子金具)と、検知部材40とを備えて構成されている。かかるコネクタMは、図8及び図10に示すよう、パネルPの取付孔Hに取り付けられ、パネルPに取り付けられたコネクタMには、このコネクタMの前方から雌ハウジングFが嵌合されるようになっている。雌ハウジングFは、全体としてブロック状をなし、その内部には複数の雌端子金具Tが収容されている。
【0020】
筒状部材10は、合成樹脂製であり、図8〜図10に示すように、前方に向かって次第に拡径するようなテーパ状をなしていて、前後方向に貫通する形態である。筒状部材10の前端縁部は、取付孔Hに嵌合させるための嵌合用縁部11となっていて、取付孔Hと同じく概ね円形をなす。筒状部材10の後端縁部は、全体として縦長の方形をなす嵌合孔12となっている。
【0021】
筒状部材10には、嵌合孔12の左側縁から後方へ突出して更に内側(右方)へ屈曲した形態の3つの突部13が、上下に間隔を空けて並ぶように形成されているとともに、嵌合孔12の右側縁から後方へ突出して更に内側(左方)へ突出した形態の3つの突部13が、上下に間隔を空けて並ぶように形成されている。各突部13の突出端部は、前後方向に対して直角(即ち、筒状部材10に対する端子収容部材20の組付け方向と平行)な板状の規制部14となっている。
【0022】
筒状部材10の後端面における嵌合孔12の下縁部には、後方へ突出するロック突起15(本発明の構成要件であるロック部)が形成されている。ロック突起15の下面は、上下方向(即ち、筒状部材10に対する端子収容部材20の組付け方向と平行な方向)に対して直角なロック面16となっている。ロック突起15の上面は、上下方向に対して傾斜した誘導面17となっている。
【0023】
筒状部材10の後端面には、前止まり部18が形成されている。前止まり部18は、上下方向に対して直角な左右方向に延びるリブ状に突出した形態であり、ロック突起15よりも下方(即ち、筒状部材10に対する端子収容部材20の組付け方向においては前方)の位置に配置されている。
【0024】
嵌合孔12の内周面のうち上面(つまり、下方に臨む面)は、当接面19(本発明の構成要件である当接部)となっている。この当接面19は、筒状部材10に対する端子収容部材20の組付け方向と直角な平面である。
【0025】
端子収容部材20は、合成樹脂製であり、全体としてブロック状をなしている。端子収容部材20の内部には、前後方向に貫通する複数の端子挿入空間21が形成されている。端子収容部材20には、各端子挿入空間21の内壁に沿って前方へ片持ち状に延出する形態であって、雄端子金具30の挿入方向と交差する方向へ弾性撓み可能なランス22が形成されている。同じく端子収容部材20には、ランス22の弾性撓みを許容するための撓み空間23が、端子収容部材20の前面に開口する形態で形成されている。
【0026】
各端子挿入空間21内には、後方から複数の雄端子金具30が挿入されている。図11及び図12に示すように、雄端子金具30は、端子本体31と、端子本体31から前方へ突出するタブ32とを備えている。雄端子金具30を挿入する過程では、ランス22が雄端子金具30との干渉により弾性撓みさせられて撓み空間23側に進出する。雄端子金具30が正規の挿入位置に到達すると、ランス22が弾性復帰して雄端子金具30の抜止孔33に係止し、この係止作用により雄端子金具30が抜止め状態に保持される。
【0027】
図2及び図3に示すように、端子収容部材20の左側面には、3つの前部突起24が上下に間隔を空けて並ぶように形成されているとともに、3つの後部突起25が、3つの前部突起24よりも後方の位置において上下に間隔を空けて並ぶように形成されている。また、端子収容部材20の右側面にも、3つの前部突起24が上下に間隔を空けて並ぶように形成されているとともに、3つの後部突起25が、3つの前部突起24よりも後方の位置において上下に間隔を空けて並ぶように形成されている。
【0028】
各側面において、上下に並ぶ3つの前部突起24のうち最も上に位置する前部突起24は、上下に並ぶ3つの後部突起25のうち最も上に位置する後部突起25よりも少し上方にずれて位置する。同様に、上下に並ぶ3つの前部突起24のうち中央に位置する前部突起24は、上下に並ぶ3つの後部突起25のうち中央に位置する後部突起25よりも少し上方にずれて位置し、上下に並ぶ3つの前部突起24のうち最も下に位置する前部突起24は、上下に並ぶ3つの後部突起25のうち最も下に位置する後部突起25よりも少し上方にずれて位置する。
【0029】
端子収容部材20には、その下端面に沿った形態のロックバー26(本発明の構成要件であるロック部)が形成されている。ロックバー26は左右方向に延びていて、ロックバー26の左右両端部が端子収容部材20の下面に連なって支持されている。このロックバー26は、その左右方向における中央部分が後方へ変位するように形態で弾性的に湾曲変形することが可能となっている。
【0030】
検知部材40は、合成樹脂製であって、全体としてブロック状をなしている。検知部材40には、後方へ片持ち状に延出する形態の複数の検知突起41が形成されている。この複数の検知突起41は、端子収容部材20に形成されている複数の撓み空間23と対応する配置で形成されている。検知部材40の上端面には、左右に間隔を空けた3つの押圧突起42が形成されている。各押圧突起42は、前後方向に細長いリブ状に突出している。
【0031】
次に、本実施形態のコネクタMの組付け手順を説明する。組付けに際しては、まず、端子収容部材20に雄端子金具30を挿入する前に、端子収容部材20を筒状部材10に対し後方から組み付ける。このとき、図6及び図8に示すように、端子収容部材20は、前部突起24が規制部14と干渉しないように、正規の組み付け高さよりも少し高い位置で筒状部材10に接近させ、前部突起24を規制部14よりも前方に位置させるとともに、後部突起25を規制部14の後面に当接させる。この状態では、規制部14の内側の側縁が端子収容部材20の左右両側面に当接することにより、端子収容部材20が、筒状部材10に対し、左右方向において位置決めされる。また、ロックバー26はロック突起15の上方に位置するが、端子収容部材20は、後述するようにロックバー26を弾性撓みさせながら、筒状部材10に対して相対的に下方へ移動することを許容されている。
【0032】
この後、端子収容部材20を筒状部材10に対して相対的に下方へスライドさせる。スライドさせる過程では、ロックバー26が弾性撓みすることにより、ロック突起15に乗り上がる。このとき、ロックバー26は端子収容部材20の移動方向に対して傾斜した誘導面17上を摺動するので、端子収容部材20の下方へのスライド動作とロックバー26の弾性撓みが支障なく行われる。
【0033】
端子収容部材20が移動する過程では、弾性撓みするロックバー26の弾性復元力により、端子収容部材20は筒状部材10に対して相対的に後方へ変位しようとするのであるが、前部突起24の後面が規制部14の前面に当接しているので、端子収容部材20の後方への相対移動は規制される。また、後部突起25が規制部14の後面に摺接するので、端子収容部材20は、筒状部材10に対して前後方向へ相対移動することなく所定経路に沿って下方へ移動する。
【0034】
そして、端子収容部材20が筒状部材10に対して正規の組付位置に到達すると、図7及び図9に示すように、ロックバー26が、ロック突起15を乗り越えて弾性復帰し、ロック突起15のロック面16に対して下から係止することにより、端子収容部材20は上方(筒状部材10から外れる方向)への戻りを規制された状態にロックされる。また、ロックバー26がロック突起15を乗り越えると同時に、ロックバー26が、前止まり部18に対して上から突き当たり、この突き当たりにより、端子収容部材20は下方への移動(正規位置よりも更に組付け方向へ進むこと)を規制された前止まり状態に保持される。
【0035】
また、端子収容部材20が正規位置に組み付けられた状態では、が10に示すように、前部突起24が規制部14に対して前方から当接することにより、端子収容部材20が筒状部材10に対して後方へ離脱することを規制される。また、後部突起25が規制部14に対して後方から当接することにより、端子収容部材20が筒状部材10に対して前方へ変位することも規制される。以上により、端子収容部材20は、筒状部材10に対して前後方向において位置決めされる。
【0036】
筒状部材10に端子収容部材20を組み付けた後、端子収容部材20の各端子挿入空間21に対し後方から雄端子金具30を取り付ける。全ての雄端子金具30を取り付けた状態では、各雄端子金具30の先端のタブ32が、端子収容部材20の前端面から前方へ突出し、筒状部材10で囲まれた空間内に収容されることにより、異物の干渉から保護される。
【0037】
全ての雄端子金具30を取り付けた後、端子収容部材20に対し前方から検知部材40を組み付ける。検知部材40を組み付けた状態では、図12に示すように、検知突起41が撓み空間23内に進入し、この検知突起41の進入により、ランス22は、雄端子金具30から解離する方向への弾性撓みを阻止される。このように、雄端子金具30は、ランス22と検知突起41とによって確実に抜止め状態に保持される。
【0038】
また、複数の雄端子金具30のうちいずれかの雄端子金具30の挿入状態が不完全である場合には、その不完全挿入状態の雄端子金具30に押されたランス22が撓み空間23内に進出した状態となる。このような状態で検知部材40を組み付けた場合には、撓み空間23内に進入しているランス22に対し検知突起41が突き当たるので、検知部材40を組み付けることができなくなる。これに対し、全ての雄端子金具30が正しく取り付けられていて、全てのランス22が撓み空間23外へ退避している場合には、検知突起41を支障なく組み付けることができる。したがって、検知部材40を端子収容部材20に対して組み付けることができるか否かに基づいて、雄端子金具30の取り付け状態を検知することができる。
【0039】
また、嵌合検知部材40を端子収容部材20に組み付けると、図14に示すように、検知部材40の上面の押圧突起42が、嵌合孔12の内面の当接面19に対して下方から当接し、この当接作用により、検知部材40が筒状部材10に対して相対的に下方へ押圧される。これに伴い、検知部材40が組み付けられている端子収容部材20も、筒状部材10に対して下方へ押圧される。この押圧作用により、ロックバー26が前止まり部18に対して押し付けられ、この押し付け作用により、端子収容部材20は、筒状部材10に対して上下方向へのがたつきを規制され、上下方向において確実に位置決めされる。以上により、本実施形態のコネクタMの組付けが完了する。
【0040】
このコネクタMに対しては、前方から嵌合孔12内に雌ハウジングFが嵌合される。雌ハウジングFが嵌合されると、図16に示すように、雄端子金具30のタブ32が雌ハウジングF内に進入して雌端子金具Tに対して電気的導通可能に接続される。このとき、端子収容部材20は、筒状部材10とその嵌合孔12に対して位置決めされているので、雄端子金具30と雌端子金具Tとが支障なく接続される。
【0041】
本実施形態のコネクタMは、互いに別体に部品である筒状部材10と端子収容部材20とを組み付けて構成されているので、雄端子金具30の極数が変更された場合は、端子収容部材20を新たに製造し、それを既存の筒状部材10に取り付けて使用することができる。つまり、雄端子金具30の極数変更の際には、筒状部材10を共用部品として流用し、端子収容部材20用の金型を新たに製造する。この金型は、筒状部材10を成形するための成形部を有していないので、その分、形状がシンプルとなっている。金型は、形状がシンプルであるほど製造コストが低いので、本実施形態のコネクタMによれば、金型の製造コストを低減することが可能である。
【0042】
また、筒状部材10と端子収容部材20との間には、組付け動作の円滑化を図るためのクリアランスが空けられるため、端子収容部材20と筒状部材10との組付方向に僅かではあるがガタ付きが生じることが懸念される。この点に鑑み、本実施形態は、筒状部材10に対する端子収容部材20の組付け方向(即ち、上下方向)を、雌ハウジングFの嵌合方向と交差する方向(即ち、前後方向)としている。したがって、筒状部材10と端子収容部材20との間で組付け方向のガタ付きが生じても、タブ32と雌端子金具Tとの接続代が不安定になる虞はない。
【0043】
また、筒状部材10に対し前方から雌ハウジングFが嵌合して雌端子金具Tとタブ32が接続するときには、雌端子金具Tとタブ32との間の接続抵抗のために、端子収容部材20が後方へ押圧される。しかし、端子収容部材20は、前部突起24と規制部14との当接作用によって前後方向の変位を規制されているので、タブ32と雌端子金具Tとの接続代が確保される。
【0044】
また、検知部材40を端子収容部材20に組み付けると、押圧突起42と当接面19との当接作用により、検知部材40が端子収容部材20を前止まり部18側へ押圧するので、端子収容部材20を筒状部材10に対して正しい位置に保持することができる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
(1)筒状部材は、合成樹脂製に限らず、金属製であってもよい。
【0047】
(2)筒状部材に対する端子収容部材の組付方向は、筒状部材に対する雌ハウジングの嵌合方向と平行な方向(前後方向)であってもよい。
【0048】
(3)端子収容部材に検知部材を取り付けない形態としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
M…コネクタ
30…雄端子金具(端子金具)
20…端子収容部材
10…筒状部材
P…パネル
H…取付孔
32…タブ
F…雌ハウジング
T…雌端子金具
14…規制部
15…ロック突起(ロック部)
26…ロックバー(ロック部)
18…前止まり部
19…当接面(当接部)
42…押圧突起(当接部)
40…検知部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子金具が収容される合成樹脂製の端子収容部材と、
前記端子収容部材とは別体部品であって、前端部がパネルの取付孔に取り付けられるようになっている筒状部材とを備え、
前記筒状部材の後端部に対し、前記端子収容部材を組み付けて構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記筒状部材内においては、前記端子金具の前端部のタブが前記端子収容部材の前端面から突出しており、
前記筒状部材内には、その前方から雌ハウジングが嵌合し、この雌ハウジングに収容した雌端子金具が前記タブと接続されるようになっており、
前記筒状部材に対する前記端子収容部材の組付け方向が、前記雌ハウジングの嵌合方向と交差する方向であることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記筒状部材には、前記端子収容部材の前記筒状部材への組付け動作を許容するが、前記端子収容部材の前後方向への変位を規制する規制部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記筒状部材と前記端子収容部材には、前記端子収容部材が正しい組付け位置にある状態において、互いに係合することにより前記端子収容部材の離脱方向への変位を規制するロック部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記筒状部材には、前記端子収容部材が正しい組付け位置にある状態において前記端子収容部材のそれ以上の組付け方向への変位を規制する前止まり部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記端子収容部材には、前記端子金具が前記端子収容部材内に正しく収容されているか否かを検知するための検知部材が組み付けられるようになっており、
前記検知部材と前記筒状部材には、前記検知部材が前記端子収容部材に組み付けられた状態で互いに当接可能な当接部が形成され、
前記当接部同士の当接により、前記検知部材が前記端子収容部材を前記前止まり部側へ押圧するようになっていることを特徴とする請求項5記載のコネクタ。
【請求項1】
複数の端子金具が収容される合成樹脂製の端子収容部材と、
前記端子収容部材とは別体部品であって、前端部がパネルの取付孔に取り付けられるようになっている筒状部材とを備え、
前記筒状部材の後端部に対し、前記端子収容部材を組み付けて構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記筒状部材内においては、前記端子金具の前端部のタブが前記端子収容部材の前端面から突出しており、
前記筒状部材内には、その前方から雌ハウジングが嵌合し、この雌ハウジングに収容した雌端子金具が前記タブと接続されるようになっており、
前記筒状部材に対する前記端子収容部材の組付け方向が、前記雌ハウジングの嵌合方向と交差する方向であることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記筒状部材には、前記端子収容部材の前記筒状部材への組付け動作を許容するが、前記端子収容部材の前後方向への変位を規制する規制部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記筒状部材と前記端子収容部材には、前記端子収容部材が正しい組付け位置にある状態において、互いに係合することにより前記端子収容部材の離脱方向への変位を規制するロック部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記筒状部材には、前記端子収容部材が正しい組付け位置にある状態において前記端子収容部材のそれ以上の組付け方向への変位を規制する前止まり部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記端子収容部材には、前記端子金具が前記端子収容部材内に正しく収容されているか否かを検知するための検知部材が組み付けられるようになっており、
前記検知部材と前記筒状部材には、前記検知部材が前記端子収容部材に組み付けられた状態で互いに当接可能な当接部が形成され、
前記当接部同士の当接により、前記検知部材が前記端子収容部材を前記前止まり部側へ押圧するようになっていることを特徴とする請求項5記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−182663(P2010−182663A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142156(P2009−142156)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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