説明

コネクタ

【課題】コネクタの製造コストや重量の増大を抑えつつ、雌ハウジングと雄ハウジングとの間に生じるガタを防止する。
【解決手段】コネクタの雌ハウジング1は、フード部12の上壁を前端側から後端側にかけて徐々に肉厚に形成することで構成された挟持壁17を備え、フード部12の下壁の内面には噛合部16を備えている。雄ハウジング2は、フード部22の上壁の上面に押圧凸部24を備え、フード部22の下壁の下面に噛合部26を備えている。雄ハウジング2のフード部12への挿入時には、押圧凸部24に挟持壁17が乗り上げて押圧凸部24を下壁側に押し付け、フード部12の下壁と挟持壁17とで雄ハウジング2が挟み込まれる。これにより、雄ハウジング2の噛合部26とフード部12の被噛合部16とが強く噛み合わされ、両ハウジング1,2同士が位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄ハウジング及び雌ハウジングの何れか一方が備えるフード部に他方のハウジングを挿入して両ハウジング同士を装着するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に開示されたコネクタは、雄型コネクタハウジングがアウタハウジングとインナハウジングとから構成されており、インナハウジングとアウタハウジングとの間には金属製のコイルバネが配置されている。インナハウジングの外周面には、傾斜面を有したガタツキ規制部が突設されている。雌型コネクタハウジング内には、雄型コネクタハウジングとの嵌合時にインナハウジングに嵌合してインナハウジングを収容するコネクタ嵌合室が備えられている。コネクタ嵌合室の内周面には規制面が形成されている。
【0003】
雄型コネクタハウジングと雌型コネクタハウジングとの嵌合時に、インナハウジングがコネクタ嵌合室に収容されると、ガタツキ規制部の傾斜面がコネクタ嵌合室の規制面と面接触し、コイルバネがインナハウジングを雌型コネクタハウジングへの嵌合方向に付勢して、傾斜面で規制面を押圧する。これにより、両ハウジング間でのがたつきが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−24458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のコネクタでは、インナハウジングを雌型コネクタハウジングへの嵌合方向に押し付けるために、インナハウジングにガタツキ規制部が、コネクタ嵌合室に規制面が夫々備えられ、更にコイルバネも備えていることから、構成が複雑になり製造コストや重量の増大を招いていた。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明のコネクタは、雄ハウジング及び雌ハウジングの何れか一方が備えるフード部に他方のハウジングを挿入して両ハウジング同士を装着するコネクタであって、前記他方のハウジングが、一側面に形成された押圧凸部と、前記一側面と反対側に位置する他側面に凹凸を設けて構成された噛合部とを備え、前記フード部が、一側壁の内面に凹凸を設けて構成されて前記フード部に挿入された前記他方のハウジングの前記噛合部と噛み合わされる被噛合部と、前記一側壁と向き合う他側壁に形成されて、前記フード部に挿入された前記他方のハウジングの前記押圧凸部に乗り上げて、前記一側壁とで前記他方のハウジングを挟み込む挟持壁とを備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記挟持壁が、前記フード部に挿入された前記他方のハウジングの前記押圧凸部に乗り上げて、前記押圧凸部を前記フード部の奥方に案内する傾斜面を備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記挟持壁が、前記傾斜面よりも先端側に位置する前記フード部を肉薄にして構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コネクタの製造コストや重量の増大を抑えつつ、雌ハウジングと雄ハウジングとの間に生じるガタを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態のコネクタの構成の概略を示す図であり、(a)は雌ハウジング,(b)は雄ハウジングを示している。
【図2】雌ハウジングの構成の概略を示す正面図である。
【図3】雌ハウジングの構成の概略を示す図であり、(a)は図2のC−C線矢視図,(b)は(a)の枠F内の拡大図である。
【図4】雌ハウジングの構成の概略を示す図であり、(a)は図2のA−A線矢視図,(b)は(a)の枠E内の拡大図である。
【図5】コネクタが備える雄ハウジングの構成の概略を示す正面図である。
【図6】雄ハウジングの構成の概略を示す図であり、(a)は図5のB−B線矢視図,(b)は(a)の枠G内の拡大図である。
【図7】雌ハウジングに雄ハウジングを装着する状態を示す図であり、雌ハウジングを図2のC−C線矢視図,雄ハウジングを図5のD−D線矢視図でそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の最良の形態を説明する。図1は、本実施形態のコネクタの構成の概略を示す図であり、(a)は雌ハウジング1,(b)は雄ハウジング2を示している。図2は、雌ハウジング1の構成の概略を示す正面図である。図3は、雌ハウジング1の構成の概略を示す図であり、(a)は図2のC−C線矢視図,(b)は(a)の枠F内の拡大図である。図4は、雌ハウジング1の構成の概略を示す図であり、(a)は図2のA−A線矢視図,(b)は(a)の枠E内の拡大図である。図5は、コネクタが備える雄ハウジング2の構成の概略を示す正面図である。図6は、雄ハウジング2の構成の概略を示す図であり、(a)は図5のB−B線矢視図,(b)は(a)の枠G内の拡大図である。図7は、雌ハウジング1に雄ハウジング2を装着する状態を示す図であり、雌ハウジング1を図2のC−C線矢視図,雄ハウジング2を図5のD−D線矢視図でそれぞれ示している。なお、以下の説明で用いる上下,前後,及び左右の各方向は説明に用いる各図に示している。この上下,前後,左右は説明のために記載したもので、実際の配置と異なってよいことはもちろんである。
【0011】
コネクタは、図1に示すように、雌ハウジング1と雄ハウジング2とを備えており、雌ハウジング1に雄ハウジング2を装着することで、両ハウジング1,2の備える端子同士が接続される。図1(a)に示すように、雌ハウジング1は、略四角ブロック状の雌本体11と、雌本体11の前面から前方に延びた端子収容部13と、略四角筒状を呈して雌本体11から前方に延びて端子収容部13の周囲を囲うフード部12とを備えており、端子収容部13とフード部12との間に前後方向に延びて、フード部12の前端に開口した収容口14に、後述する雄ハウジング2のフード部22を収容する。フード部12の上壁は、左右の両端部から中央部にかけて上方に湾曲しており、その分収容口14が上下方向に拡幅されている。
【0012】
図1(a),図2〜図4に示すように、雌本体11の上面の左右方向の中央部には、雌本体11の上面を下方に窪ませて構成された収容凹部11aが設けられている。収容凹部11aは、雌本体11の前端から後端にかけて雌本体11の前後方向に略矩形の平面形状を有して延びており、フード部12の上壁に形成された開口121と連通している。開口121は、フード部12の上壁の左右方向の中央部に位置して、フード部12の後端からフード部12の前端部まで略矩形の平面形状を有して延びている。図2〜図4に示すように、収容凹部11aの上面には、雌ハウジング1を雄ハウジング2に係止するためのロックアーム15が設けられている。ロックアーム15は、収容凹部11aの底面から上方に延びた基端部151の先端にアーム部152を備えており、基端部151を支点として撓んだアーム部152が上下方向に揺動するようになっている。
【0013】
アーム部152は、雌本体11の収容凹部11aからフード部12の開口121にかけて連なる開口の上縁に沿うように配置されている。基端部151よりも前側に位置するアーム部152の左右方向の中央部には、アーム部152を上下方向に貫通する貫通孔152bが設けられている。貫通孔152bの前側に位置したアーム部152の前端部は、後述する雄ハウジング2の係止凸部23にアーム部152を係止するための被係止部152aとなっている。
【0014】
図3に示すように、開口121の左右の両側に位置するフード部12の上壁には、上壁を前端側から後端側にかけて徐々に肉厚に形成することで構成された挟持壁17が設けられている。挟持壁17の前縁部は、前端側から後端側にかけて端子収容部13側に徐々に傾斜した案内面17aとなっている。従って、開口121の左右の両側に位置するフード部12の上壁は、挟持壁17よりも前側が挟持壁17よりも前側に比べて肉薄となっている。図4に示すように、フード部12の下壁の内面には、左右方向に延びる凹凸を前後方向に複数配設して構成された噛合部16が設けられている。噛合部16が備える凹凸の凹部及び凸部は、円弧状の断面形状を有している。
【0015】
図1(b)に示すように、雄ハウジング2は、前面から端子21a(図6参照)を突出させた雄本体21と、略四角筒状を呈して雌本体21から前方に延びたフード部22とを備えており、フード部22の前面に開口した収容室25に雌ハウジング1の端子収容部13を収容する。フード部22の上壁の上面には、雌ハウジング1のロックアーム15が備える被係止部152aを係止するための係止凸部23が設けられている。係止凸部23は、フード部22の左右方向の中央部に位置しており、下端側から上端側にかけて前面を後方に傾斜させた形状の略四角ブロック体から構成されている。係止凸部23の傾斜した前面は、被係止部152aを雄ハウジング2の後方に導く案内面となっている。
【0016】
係止凸部23の左右の側方に位置するフード部22の上壁には、一対の押圧凸部24が設けられている。押圧凸部24は、下端側から上端側にかけて前面を後方に傾斜させた形状の略四角ブロック体を、フード部22の上壁の上面に設けることで構成されている。押圧凸部24の傾斜した前面は、雌ハウジング1がフード部12に備える挟持壁17を雄ハウジング2の後方に導く案内面となっている。図6に示すように、フード部22の下壁の下面には、左右方向に延びる凹凸を前後方向に複数配設して構成された噛合部26が設けられている。噛合部26が備える凹凸の凹部及び凸部は、円弧状の断面形状を有している。
【0017】
図7(a)に示すように、雌ハウジング1のフード部12に雄ハウジング2が挿入されると、雌ハウジング1がロックアーム15に備える被係止部152aが係止凸部23に乗り上げる。これに伴い、フード部22の下壁がフード部12の下壁に押し付けられて、噛合部16と噛合部26とが互いに摺接し、噛合部16の凹凸と噛合部26の凹凸とが噛み合わされる。
【0018】
その後、図7(b)に示すように、雄ハウジング2がフード部22の上壁に備える押圧凸部24が、雌ハウジング1のフード部12が備える挟持壁17に当接して、傾斜面17aに案内された押圧凸部24に挟持壁17が乗り上げる。これに伴い、フード部22の下壁をフード部12の下壁に押し付ける力が増大し、噛合部16と噛合部26とが互いの凹凸を噛み合わせる力が増大する。その後、貫通孔152bの下方まで係止凸部23が移動してくると、アーム部152の撓みが解けて被係止部152aがフード部22の上壁の上面に落ち込み、アーム部152の被係止部152aがフード部22の係止凸部23に係止される。
【0019】
本実施形態によれば、雄ハウジング2のフード部12への挿入時には、雄ハウジング2の押圧凸部24にフード部12の挟持壁17が乗り上げて、押圧凸部24を下壁側に押し付け、フード部12の下壁と挟持壁17とで雄ハウジング2が挟み込まれる。これにより、雄ハウジング2の噛合部26とフード部12の被噛合部16とが強く噛み合わされ、両ハウジング1,2同士が位置決めされる。このため、雄ハウジング2のフード部22に押圧凸部24及び噛合部26を設け、雌ハウジング1のフード部12に噛合部16及び挟持壁17を設けるという簡単な構成で、雌ハウジング1と雄ハウジング2との間に生じるガタを防止できる。従って、コネクタの製造コストや重量の増大を抑えることができる。
【0020】
また、本実施形態によれば、噛合部16,26が備える凹凸の凹部及び凸部は、円弧状の断面形状を有していることから、噛合部16と噛合部26との噛合時に噛合部16,26の備える凹凸に損傷が生じるのを防止できる。
【0021】
上記実施形態では、雌本体11の上面を下方に窪ませて構成された収容凹部11aにロックアーム15が備えられている場合について説明したが、ロックアーム15の形成位置は任意であり、例えば、フード部12の一側壁からロックアーム15が延びていてもよい。
【0022】
また、開口121の左右の両側に位置するフード部12の上壁を、押圧凸部24からの押圧を受けて上方に撓むように構成してもよい。例えば、開口121の左右の周縁と平行にフード部12の前端まで延びるスリットをフード部12の上壁に設け、挟持壁17が押圧凸部24から押圧を受けると、スリットと開口121との間に位置する挟持壁17が、上方に撓むように構成してもよい。この構成によれば、フード部12に雄ハウジング2を挿脱する際に挟持壁17が上方に撓むことで、フード部12への雌ハウジング1の着脱に必要な力を低減させることができる。しかも、噛合部16と噛合部26との噛合時に噛合部16,26の備える凹凸に損傷が生じるのを効果的に防止できる。
【0023】
また、開口121の左右の周縁と平行にフード部12の後端まで延びるスリットをフード部12の上壁に設け、挟持壁17が押圧凸部24から押圧を受けると、スリットと開口121との間に位置する挟持壁17が上方に撓むように構成してもよい。この構成によっても、フード部12に雄ハウジング2を挿脱する際に挟持壁17が上方に撓むことで、フード部12への雌ハウジング1の着脱に必要な力を低減させることができる。しかも、噛合部16と噛合部26との噛合時に噛合部16,26の備える凹凸に損傷が生じるのを効果的に防止できる。
【符号の説明】
【0024】
1 雌ハウジング
11 雌本体
11a 収容凹部
12 フード部
121 開口
13 端子収容部
14 収容口
15 ロックアーム
151 基端部
152 アーム部
152a 被係止部
152b 貫通孔
16 噛合部(被噛合部)
17 挟持壁
2 雄ハウジング
21a 端子
22 フード部
23 係止凸部
25 収容室
26 噛合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ハウジング及び雌ハウジングの何れか一方が備えるフード部に他方のハウジングを挿入して両ハウジング同士を装着するコネクタであって、前記他方のハウジングは、一側面に形成された押圧凸部と、前記一側面と反対側に位置する他側面に凹凸を設けて構成された噛合部とを備え、前記フード部は、一側壁の内面に凹凸を設けて構成されて前記フード部に挿入された前記他方のハウジングの前記噛合部と噛み合わされる被噛合部と、前記一側壁と向き合う他側壁に形成されて、前記フード部に挿入された前記他方のハウジングの前記押圧凸部に乗り上げて、前記一側壁とで前記他方のハウジングを挟み込む挟持壁とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記挟持壁は、前記フード部に挿入された前記他方のハウジングの前記押圧凸部に乗り上げて、前記押圧凸部を前記フード部の奥方に案内する傾斜面を備えることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記挟持壁は、前記傾斜面よりも先端側に位置する前記フード部を肉薄にして構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−205543(P2010−205543A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49382(P2009−49382)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】