コネクタ
【課題】コネクタの大型化を回避した上で、レバーを支持する支持壁の変形を防止する。
【解決手段】コネクタは、フード部12及びブラケットに対するロック部22を有する雄ハウジング10と、フード部12内に移動可能に組み込まれるムービングプレート70と、雄ハウジング10の外面に突成された支軸29に回動可能に取り付けられるレバー50とを備える。雄ハウジング10における支軸29の内側には、ロック部22の成形に伴って型抜き孔31が形成され、支軸29と型抜き孔31との間には、支軸29を支持する支持壁32が形成されている。ムービングプレート70には、型抜き孔31に挿入されて支持壁32の内側に配置される突片78が形成されている。
【解決手段】コネクタは、フード部12及びブラケットに対するロック部22を有する雄ハウジング10と、フード部12内に移動可能に組み込まれるムービングプレート70と、雄ハウジング10の外面に突成された支軸29に回動可能に取り付けられるレバー50とを備える。雄ハウジング10における支軸29の内側には、ロック部22の成形に伴って型抜き孔31が形成され、支軸29と型抜き孔31との間には、支軸29を支持する支持壁32が形成されている。ムービングプレート70には、型抜き孔31に挿入されて支持壁32の内側に配置される突片78が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタが特許文献1に開示されている。このものは、雄ハウジングと、雄ハウジングに回動可能に装着されるレバーとを備えている。雄ハウジングは四角筒状のフード部を有している。フード部内には、雄端子金具が突出して配置され、かつ、ムービングプレートが初期位置と嵌合位置との間を移動可能に組み込まれている。ムービングプレートは、雄端子金具の先端部を位置決めして挿入可能な挿入孔が開口されたプレート本体を有している。初期位置では、プレート本体がフード部の開口側に位置することで雄端子金具の挿入孔からの突出量が抑えられ、嵌合位置では、プレート本体がフード部の奥側に位置することで雄端子金具の挿入孔からの突出量が増加するようになっている。
【0003】
雄ハウジングの左右の側面には、一対の支軸が突出して形成されている。レバーは、両支軸を中心として回動可能とされている。また、雄ハウジングの下面には、取付対象となるブラケットに係止されるロック部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−352907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のコネクタにおいて、事情に応じて、ロック部の形成位置を、支軸の形成面となる雄ハウジングの側面に変更しなければならないことがある。その場合、雄ハウジングの側面にロック部のみが突出して形成されると、コネクタが大型になってしまうため、ロック部を雄ハウジングの側面の最外位置よりも内側へ引っ込めた位置で形成することが望まれる。しかし、かかる構成にすると、ロック部を成形する際に使用する金型の引き抜きに起因する型抜き孔が雄ハウジング内に余儀なく形成されてしまい、さらに、この型抜き孔が支軸の内側に形成されることもある。このため、支軸と型抜き孔の間に位置して支軸を支持する支持壁の厚みが薄くなり、レバーの回動に伴って両ハウジングの嵌合力が大きくなる等したときに、支持壁が変形するおそれがある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタの大型化を回避した上で、レバーを支持する支持壁の変形を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、雄端子金具が突出して配置される筒状のフード部を有するとともに、取付対象に係止されるロック部を有する雄ハウジングと、前記フード部内に移動可能に組み込まれ、前記雄端子金具の先端部を位置決めして挿入させる挿入孔が開口されたプレート本体を有し、前記雄ハウジングが相手側の雌ハウジングとの嵌合を進めるに従い、前記プレート本体が前記フード部の奥側へ移動して、前記雄端子金具の前記挿入孔からの突出量を増加させるムービングプレートと、前記雄ハウジングの外面に突成された支軸に取り付けられ、前記雌ハウジングと係合した状態で前記支軸を中心として回動されることにより、前記雌ハウジングとの間にカム作用を発揮して、前記両ハウジングを正規嵌合状態に至らすレバーとを備え、前記雄ハウジングにおける前記支軸の内側には、前記ロック部の成形に伴って型抜き孔が形成され、前記支軸と前記型抜き孔との間には、前記支軸を支持する支持壁が形成され、前記ムービングプレートには、前記型抜き孔に挿入されて前記支持壁の内側に配置される突片が形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記突片の外面と前記型抜き孔の内面のいずれか一方には凸部が形成され、他方には凹部が形成されており、前記凹部と前記凸部が、前記突片と前記支持壁の並び方向で互いに対向しつつ嵌合されるところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記雄ハウジングの外面には窓部が開口して形成され、前記両ハウジングの正規嵌合時に、前記突片の先端が前記窓部を通して視認可能とされるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
雄ハウジングにおける支軸の内側には、ロック部の成形に伴って型抜き孔が形成されるから、雄ハウジングの外側にロック部のみが突出することがなく、コネクタの大型化が回避される。一方、支軸と型抜き孔との間に支持壁が形成されるため、支持壁の厚みが薄くなり勝ちであり、支持壁にレバーが取り付けられることもあって、支持壁が変形し易いという事情がある。しかるに本発明によれば、フード部内に組み込まれるムービングプレートに突片が形成され、突片が型抜き孔に挿入されて支持壁の内側に配置されるから、突片の補強によって支持壁の変形が防止される。
【0011】
<請求項2の発明>
凹部と凸部が突片と支持壁の並び方向で互いに対向しつつ嵌合されるから、突片が支持壁側へ倒れるのが阻止される。その結果、突片の倒れ込みに起因する支持壁の変形が防止される。
【0012】
<請求項3の発明>
両ハウジングの正規嵌合時に、窓部を通して突片の先端位置を視認することにより、突片及びムービングプレートが正規位置に至っているのか否かを検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る雄コネクタの一部破断した正面図である。
【図2】ムービングプレートが初期位置にあるときのコネクタの横断面図である。
【図3】ムービングプレートが嵌合位置にあるときのコネクタの横断面図である。
【図4】嵌合前の両コネクタの縦断面図である。
【図5】正規嵌合された両コネクタの縦断面図である。
【図6】ムービングプレートの背面図である。
【図7】ムービングプレートの側面図である。
【図8】ムービングプレートの平面図である。
【図9】雄コネクタの縦断面図である。
【図10】雄コネクタの側面図である。
【図11】ムービングプレートが組み付けられる前の雄コネクタの正面図である。
【図12】ムービングプレートが組み付けられた後の雄コネクタの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図12によって説明する。実施形態1に係るコネクタは、いわゆる雄コネクタであって、雄端子金具90、雄ハウジング10、レバー50、及びムービングプレート70を備えて構成されている。雄ハウジング10は相手側の雌コネクタに備わる雌ハウジング100に嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については両ハウジング10、100の互いの嵌合面側を前方とする。
【0015】
雌ハウジング100は合成樹脂製であって、全体として高さ方向に長い角枠状の雌ハウジング本体101を有している。雌ハウジング本体101には、図4に示すように、複数の雌ハウジング収容凹部102が高さ方向に並んで形成されている。各雌ハウジング収容凹部102間は、高さ方向に複数の隔壁103によって仕切られている。そして、各雌ハウジング収容凹部102内には、それぞれ雌サブハウジング110が挿入されるようになっている。雌サブハウジング110は、やや扁平な角ブロック状をなし、その内部に、雌端子金具120が収容されている。雌端子金具120は導電金属製であって電線130の端末に接続され、筒状の箱部121を有している。雌ハウジング本体101の両側外面(長辺側の外面)の高さ方向中央部には、左右一対のカムピン105が突出して形成されている。
【0016】
雄ハウジング10は合成樹脂製であって全体として高さ方向に長い形状とされ、角枠状の雄ハウジング本体11と、雄ハウジング本体11の前端に連なる角筒状のフード部12とを有している。雄ハウジング本体11には、複数の雄ハウジング収容凹部13が高さ方向に並んで形成されている。各雄ハウジング収容凹部13間は、高さ方向に複数の隔壁14によって仕切られている。各雄ハウジング収容凹部13内には、それぞれ雄サブハウジング15が挿入されるようになっている。雄サブハウジング15は、やや扁平な角ブロック状をなし、その内部に、雄端子金具90を収容可能なキャビティ16が形成されている。雄端子金具90は導電金属製であって電線150の端末に接続され、雄サブハウジング15内に収容される筒状の端子本体91と、端子本体91の前端から前方へ突出する棒状の雄タブ92とを有する。雄タブ92はフード部12内に突出して配置されている。
【0017】
雄ハウジング本体11の上面の後端部には、門型板状のレバーロック受け部17が形成されている。レバーロック受け部17は、左右一対の脚部18と、両脚部18間に架橋された天井部19とからなる。両脚部18の前縁は、後方へ向けてテーパ状に傾く斜面20とされている。天井部19の内側面には、後述するレバーロック突起57と係止可能なリブ状のレバーロック受け突起21が形成されている。
【0018】
雄ハウジング本体11の両側外面(長辺側の外面)の高さ方向中央部は、図10に示すように、高さ方向両端部よりも一段落ちて配置され、ここに、取付対象となるブラケット(図示せず)に係止可能な左右一対のロック部22が形成されている。ロック部22は、ブラケットが挿入可能な挿入空間を有する扁平枠状のカセット部23を有する。カセット部23は、上下一対のレール部24と、両レール部24間に架橋された梁部25とからなる。図2に示すように、梁部25の前端からはロック本体部26が後方へ突出して形成されている。ロック本体部26の先端側には、ロック爪27が挿入空間側(内側)へ突出して形成されている。カセット部23の挿入空間に後方から挿入されたブラケットは、レール部24に沿って前方へスライドさせられ、正規の装着位置に至るに伴い、ロック爪27に弾性的に引っ掛け係止される。これにより、雄ハウジング10がブラケットに固定される。なお、ロック部22の外面はほぼ凹凸なく連続する垂直面とされている。
【0019】
フード部12は、雄ハウジング本体11の前端に段差28を介することによって雄ハウジング本体11よりも一回り大きくされている。フード部12の両側壁(長辺側の壁)の外面は、ほぼ凹凸なく連続する垂直面とされ、その後端部(奥端部)の高さ方向中央部に、左右一対の支軸29が突出して形成されている。両支軸29は、円柱状をなし、その先端部に抜け止め片30が周方向に張り出して形成されている。そして、両支軸29の内側には、ロック部22のロック爪27を成形する際に使用する金型の引き抜き跡となる左右一対の型抜き孔31が形成されている。型抜き孔31は、高さ方向に細長い形状とされ、段差28を貫通するとともに、フード部12の内側面を溝状に切り欠くようにして、前後方向に延びる形態とされている。フード部12の両側壁のうち、型抜き孔31と両支軸29との間に挟まれる部分は、型抜き孔31によって上下領域よりも薄肉となる支持壁32とされている。
【0020】
図10及び図11に示すように、支持壁32には、型抜き孔31と重なり合う位置に、左右一対の導入溝33が切り欠いて形成されている。導入溝33は、前後方向に延びるとともに、フード部12の前縁に開口する形態とされ、ここに、相手側のカムピン105及び後述するムービングプレート70のカムフォロア77が前方から挿入されるようになっている。なお、支軸29は、導入溝33の後縁の直後方に位置している。
【0021】
フード部12の内側面には、ムービングプレート70を案内可能な複数のアリ溝34が前後方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて形成されている。また、フード部12の両側壁の前端縁には、レバー50を当て止め可能な左右一対の当て止め片35が幅方向に張り出して形成されている。
【0022】
レバー50は合成樹脂製であって、全体として門型板状をなし、幅方向に延びる操作部51と、操作部51の両端から互いに略平行に突出する左右一対のアーム部52とからなる。アーム部52には、支軸29を受ける軸孔53が貫通して形成されている。また、アーム部52の内側面には、図9に示すように、有底のカム溝54が所定方向に延出して形成されている。
【0023】
操作部51の幅方向中央部には、レバーロック部55が形成されている。レバーロック部55は、操作部51の後縁に開口する凹所56内に撓み可能に配置され、その後縁から前方へ向けて折り返し状に延びる形態とされている。レバーロック部55の上面には、リブ状のレバーロック突起57が形成されている。また、レバーロック部55の上面前端には、起立片58が立ち上げ形成されている。操作部51における起立片58の後方には、後方へ向かって上り勾配となるテーパ状の操作面59が全幅に亘って形成されている。
【0024】
また、操作部51の幅方向中央部の上端には、凹所56と連続する切欠部60が形成されている。起立片58の上端部は、切欠部60内に臨むように配置され、正面視によって視認可能とされている。一方、起立片58を挟む両側には、操作部51の幅方向両端部が位置しているため、側面視によって起立片58を視認することはできない。また、起立片58の上端は操作部51の上端とほぼ同じかそれよりも低い位置に配置されており、起立片58を含むレバーロック部55の全体が凹所56内に収容されている。
【0025】
かかるレバー50は、軸孔53に支軸29を嵌入させた状態で、支軸29を中心として回動初期位置と回動完了位置との間を回動可能とされている。このとき、アーム部52の外面が抜け止め片30に当接することにより、レバー50が雄ハウジング10から抜け止めされるようになっている。回動初期位置では、操作部51がフード部12の前端部上方に配置されるとともに、カム溝54の入り口が導入溝33と重なりかつ前方に開口して配置される。また、回動初期位置では、アーム部52の前端が当て止め片35に当接することで、レバー50のフード部12よりも前方への回動操作が規制される。この状態で、フード部12内に雌ハウジング100を浅く嵌合すると、カムピン105が導入溝33及びカム溝54の入り口に進入する。
【0026】
回動初期位置から回動完了位置へは、操作部51の操作面59を押圧することにより、操作力をレバー50に効率よく伝達することが可能となる。この場合、操作部51に操作面59がテーパ状に切り欠いて形成されているという事情があるものの、起立片58の全体が操作部51の凹所56内に収容されているため、作業者の指が起立片58に触れることがなく、起立片58への不用意な干渉が回避される。また、操作面59が切り欠かれることによって操作部51の大型化が回避される。さらに、回動途中では、カムピン105がカムフォロア77と合体した状態でカム溝54の溝面を摺動することにより、レバー50と雌ハウジング100との間にカム作用が発揮され、両ハウジング10、100の嵌合動作が進行する。
【0027】
回動完了位置では、図5に示すように、操作部51の凹所56内にレバーロック受け部17が嵌合されるとともに、起立片58の後面が天井部19の前端に当接可能に配置され、かつレバーロック受け部17の斜面20が凹所56の内側面に沿って当接可能に配置される。また、回動完了位置では、レバーロック突起57がレバーロック受け突起21を弾性的に係止し、これによってレバー50が回動規制状態に保持される。そして回動完了位置では、両ハウジング10、100が正規嵌合状態に保持され、雄タブ92が雌端子金具120の箱部121内に正規深さで挿入されて、両端子金具90、120同士の導通がとられる。
【0028】
ムービングプレート70は合成樹脂製であって全体として高さ方向に長いキャップ状をなし、フード部12内に組み込まれる。詳しくはムービングプレート70は、図6ないし図8に示すように、フード部12内を覆う平板状のプレート本体71と、プレート本体71の周縁から前方へ突出する角筒状のプレートガイド部72とを有している。そして、ムービングプレート70は、プレート本体71がフード部12の開口側(前方)に位置する嵌合初期位置(図4を参照)と、プレート本体71がフード部12の奥側(後方)に位置する嵌合完了位置(図5を参照)との間を前後方向に移動可能とされている。プレート本体71には、雄タブ92の先端部を位置決め状態で挿入可能な複数の挿入孔73が整列して形成されている。プレート本体71の前面には、雌ハウジング100の各隔壁103と対応する位置毎に、高さ方向に複数の仕切り壁74が形成されている(図12を参照)。仕切り壁74は、両ハウジング10、100の嵌合時に、隔壁103と前後方向で連続して、雌サブハウジング110の前端部を下方から支持可能とされている。
【0029】
プレートガイド部72は、フード部12の内側面を摺動可能とされている。プレートガイド部72の外周面には、複数のアリ部75が前後方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて形成されている。アリ部75がアリ溝34に嵌合して摺動することにより、フード部12内におけるムービングプレート70の移動動作をスムーズに行うことが可能となっている。
【0030】
プレートガイド部72の両側壁(長辺側の壁)の高さ方向中央部には、左右一対の嵌合溝76が前後方向に延びるとともに前端に開口して形成されている。嵌合溝76は、ムービングプレート70の組付時に導入溝33と連通して、雌ハウジング100のカムピン105を受け入れ可能とされている。そして、プレートガイド部72の両側壁の外面には、門型のカムフォロア77が導入溝33に跨りつつ突出して形成されている。カムフォロア77は、ムービングプレート70の組付時に、その内側にカムピン105を被包した状態で、カムピン105ともどもレバー50のカム溝54に進入して係合可能とされている。
【0031】
さて、プレートガイド部72の両側壁には、左右一対の突片78がカムフォロア77の直後方位置から後方へ突出して形成されている。突片78は、側面視略矩形の平板状をなし、ムービングプレート70の組付時に、雄ハウジング10の型抜き孔31に嵌合して挿入されるようになっている。また、突片78は、ムービングプレート70の組付時に、支持壁32の内側に配置され、その外面を支持壁32の内面に対面させることで、支持壁32との間に幅方向(厚み方向)で二重板構造を構成している。
【0032】
突片78の上下両縁には、三角溝状の凹部79が全長に亘って切り欠いて形成されている。ここで、雄ハウジング本体11における両型抜き孔31の内側面の上下両縁には、図1に示すように、凹部79と嵌合可能な断面三角形状の凸部39が突出して形成されている。凸部39の外側面と凹部79の内側面は幅方向で互いに対面して配置され、これにより、雌ハウジング100に対する突片78の幅方向への遊動が規制される。この場合、凹部79の内側面と凸部39の外側面には高さ方向に沿った対向面80が形成され、両対向面80が互いに当たり合うことにより、突片78の支持壁32側への倒れ込みが規制される。そして、凹部79の他の一面は斜面85とされ、これにより、凹部79が突片78の厚み範囲で形成されるという事情があっても、突片78の上下両縁の剛性を確保できるようになっている。
【0033】
本実施形態に係るコネクタの構造は上述の通りであり、続いて、コネクタの組付動作及び作用効果について説明する。
レバー50を回動初期位置に留め置き、雄ハウジング10のフード部12内にムービングプレート70を嵌合初期位置に組み付ける(図4を参照)。嵌合初期位置では、雄タブ92の先端部が挿入孔73を貫通してプレート本体71の前方に少し突出する。このとき、突片78の先端部が、雄ハウジング本体11の型抜き孔31の入り口を臨むように配置され、支軸29の内側には、突片78が位置している(図2を参照)。続いて、フード部12内に雌ハウジング100を浅く嵌合させ、その状態でレバー50を回動完了位置へ向けて図示反時計周りに回動させる。すると、カムピン105とカムフォロア77が合体した状態でカム溝54の溝面を摺動し、レバー50の回動動作に連動して、ムービングプレート70が嵌合完了位置側へ後退して、雄タブ92のプレート本体71からの突出量が徐々に増加する。また、両ハウジング10、100の嵌合深さが増加するに従って、突片78の型抜き孔31への挿入深さも増加する。さらに、凹部79に凸部39が挿入嵌合されることで、突片78が位置決め状態に案内される。
【0034】
レバー50が回動完了位置に至ると、ムービングプレート70も嵌合完了位置に至って、両ハウジング10、100が正規嵌合状態となる(図5を参照)。このとき、プレート本体71が両ハウジング10、100間に厚み方向に挟持させられ、突片78の先端が型抜き孔31の奥端側に到達する。ここで、雄ハウジング本体11の両側外面には、段差28とカセット部23との間に、窓部40が開口して形成されており、この窓部40によって型抜き孔31の奥端部が構成されている。これにより、両ハウジング10、100の嵌合前は、突片78が窓部40から退避して配置されることで外部から視認不能とされるが、両ハウジング10、100が正規嵌合状態に至った状態では、突片78の先端部が窓部40に進入して外部から視認可能となっている(図3を参照)。
【0035】
上記の場合に、ムービングプレート70がフード部12内に組み付けられると、嵌合初期位置と嵌合完了位置のいずれにおいても、支持壁32の内側に突片78が当接可能に配置される。このため、型抜き孔31の成形に起因して、薄肉の支持壁32が余儀なく形成されるという事情があっても、突片78によって支持壁32の補強がなされる。このため、支持壁32の変形が防止される。また、雄ハウジング10に型抜き孔31を形成することでロック部22のロック爪27を成形しているため、雄ハウジング10の外面にロック部22を単に突成する場合と違って、雄ハウジング10が大型になるのを回避できる。
【0036】
また、凹部79と凸部39が突片78と支持壁32の並び方向で互いに対向しつつ嵌合されるから、突片78が支持壁32側へ倒れるのが阻止される。その結果、突片78の倒れ込みに起因する支持壁32の変形も防止される。
さらに、両ハウジング10、100の正規嵌合時に、窓部40を通して突片78の先端位置を視認することにより、突片78ひいてはムービングプレート70が正規位置に至っているのか否かを検知することができる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)凸部が突片の外面に形成され、凹部が型抜き孔の内面に形成されるものであってもよい。また、凸部及び凹部の形状は任意である。場合によっては、凸部及び凹部を省略しても構わない。
(2)ムービングプレートは、カムフォロアを有さず、レバーの回動動作に連動しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…雄ハウジング
12…フード部
22…ロック部
29…支軸
31…型抜き孔
32…支持壁
39…凸部
40…窓部
50…レバー
70…ムービングプレート
71…プレート本体
73…挿入孔
78…突片
79…凹部
90…雄端子金具
92…雄タブ
100…雌ハウジング
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタが特許文献1に開示されている。このものは、雄ハウジングと、雄ハウジングに回動可能に装着されるレバーとを備えている。雄ハウジングは四角筒状のフード部を有している。フード部内には、雄端子金具が突出して配置され、かつ、ムービングプレートが初期位置と嵌合位置との間を移動可能に組み込まれている。ムービングプレートは、雄端子金具の先端部を位置決めして挿入可能な挿入孔が開口されたプレート本体を有している。初期位置では、プレート本体がフード部の開口側に位置することで雄端子金具の挿入孔からの突出量が抑えられ、嵌合位置では、プレート本体がフード部の奥側に位置することで雄端子金具の挿入孔からの突出量が増加するようになっている。
【0003】
雄ハウジングの左右の側面には、一対の支軸が突出して形成されている。レバーは、両支軸を中心として回動可能とされている。また、雄ハウジングの下面には、取付対象となるブラケットに係止されるロック部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−352907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のコネクタにおいて、事情に応じて、ロック部の形成位置を、支軸の形成面となる雄ハウジングの側面に変更しなければならないことがある。その場合、雄ハウジングの側面にロック部のみが突出して形成されると、コネクタが大型になってしまうため、ロック部を雄ハウジングの側面の最外位置よりも内側へ引っ込めた位置で形成することが望まれる。しかし、かかる構成にすると、ロック部を成形する際に使用する金型の引き抜きに起因する型抜き孔が雄ハウジング内に余儀なく形成されてしまい、さらに、この型抜き孔が支軸の内側に形成されることもある。このため、支軸と型抜き孔の間に位置して支軸を支持する支持壁の厚みが薄くなり、レバーの回動に伴って両ハウジングの嵌合力が大きくなる等したときに、支持壁が変形するおそれがある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタの大型化を回避した上で、レバーを支持する支持壁の変形を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、雄端子金具が突出して配置される筒状のフード部を有するとともに、取付対象に係止されるロック部を有する雄ハウジングと、前記フード部内に移動可能に組み込まれ、前記雄端子金具の先端部を位置決めして挿入させる挿入孔が開口されたプレート本体を有し、前記雄ハウジングが相手側の雌ハウジングとの嵌合を進めるに従い、前記プレート本体が前記フード部の奥側へ移動して、前記雄端子金具の前記挿入孔からの突出量を増加させるムービングプレートと、前記雄ハウジングの外面に突成された支軸に取り付けられ、前記雌ハウジングと係合した状態で前記支軸を中心として回動されることにより、前記雌ハウジングとの間にカム作用を発揮して、前記両ハウジングを正規嵌合状態に至らすレバーとを備え、前記雄ハウジングにおける前記支軸の内側には、前記ロック部の成形に伴って型抜き孔が形成され、前記支軸と前記型抜き孔との間には、前記支軸を支持する支持壁が形成され、前記ムービングプレートには、前記型抜き孔に挿入されて前記支持壁の内側に配置される突片が形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記突片の外面と前記型抜き孔の内面のいずれか一方には凸部が形成され、他方には凹部が形成されており、前記凹部と前記凸部が、前記突片と前記支持壁の並び方向で互いに対向しつつ嵌合されるところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記雄ハウジングの外面には窓部が開口して形成され、前記両ハウジングの正規嵌合時に、前記突片の先端が前記窓部を通して視認可能とされるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
雄ハウジングにおける支軸の内側には、ロック部の成形に伴って型抜き孔が形成されるから、雄ハウジングの外側にロック部のみが突出することがなく、コネクタの大型化が回避される。一方、支軸と型抜き孔との間に支持壁が形成されるため、支持壁の厚みが薄くなり勝ちであり、支持壁にレバーが取り付けられることもあって、支持壁が変形し易いという事情がある。しかるに本発明によれば、フード部内に組み込まれるムービングプレートに突片が形成され、突片が型抜き孔に挿入されて支持壁の内側に配置されるから、突片の補強によって支持壁の変形が防止される。
【0011】
<請求項2の発明>
凹部と凸部が突片と支持壁の並び方向で互いに対向しつつ嵌合されるから、突片が支持壁側へ倒れるのが阻止される。その結果、突片の倒れ込みに起因する支持壁の変形が防止される。
【0012】
<請求項3の発明>
両ハウジングの正規嵌合時に、窓部を通して突片の先端位置を視認することにより、突片及びムービングプレートが正規位置に至っているのか否かを検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る雄コネクタの一部破断した正面図である。
【図2】ムービングプレートが初期位置にあるときのコネクタの横断面図である。
【図3】ムービングプレートが嵌合位置にあるときのコネクタの横断面図である。
【図4】嵌合前の両コネクタの縦断面図である。
【図5】正規嵌合された両コネクタの縦断面図である。
【図6】ムービングプレートの背面図である。
【図7】ムービングプレートの側面図である。
【図8】ムービングプレートの平面図である。
【図9】雄コネクタの縦断面図である。
【図10】雄コネクタの側面図である。
【図11】ムービングプレートが組み付けられる前の雄コネクタの正面図である。
【図12】ムービングプレートが組み付けられた後の雄コネクタの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図12によって説明する。実施形態1に係るコネクタは、いわゆる雄コネクタであって、雄端子金具90、雄ハウジング10、レバー50、及びムービングプレート70を備えて構成されている。雄ハウジング10は相手側の雌コネクタに備わる雌ハウジング100に嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については両ハウジング10、100の互いの嵌合面側を前方とする。
【0015】
雌ハウジング100は合成樹脂製であって、全体として高さ方向に長い角枠状の雌ハウジング本体101を有している。雌ハウジング本体101には、図4に示すように、複数の雌ハウジング収容凹部102が高さ方向に並んで形成されている。各雌ハウジング収容凹部102間は、高さ方向に複数の隔壁103によって仕切られている。そして、各雌ハウジング収容凹部102内には、それぞれ雌サブハウジング110が挿入されるようになっている。雌サブハウジング110は、やや扁平な角ブロック状をなし、その内部に、雌端子金具120が収容されている。雌端子金具120は導電金属製であって電線130の端末に接続され、筒状の箱部121を有している。雌ハウジング本体101の両側外面(長辺側の外面)の高さ方向中央部には、左右一対のカムピン105が突出して形成されている。
【0016】
雄ハウジング10は合成樹脂製であって全体として高さ方向に長い形状とされ、角枠状の雄ハウジング本体11と、雄ハウジング本体11の前端に連なる角筒状のフード部12とを有している。雄ハウジング本体11には、複数の雄ハウジング収容凹部13が高さ方向に並んで形成されている。各雄ハウジング収容凹部13間は、高さ方向に複数の隔壁14によって仕切られている。各雄ハウジング収容凹部13内には、それぞれ雄サブハウジング15が挿入されるようになっている。雄サブハウジング15は、やや扁平な角ブロック状をなし、その内部に、雄端子金具90を収容可能なキャビティ16が形成されている。雄端子金具90は導電金属製であって電線150の端末に接続され、雄サブハウジング15内に収容される筒状の端子本体91と、端子本体91の前端から前方へ突出する棒状の雄タブ92とを有する。雄タブ92はフード部12内に突出して配置されている。
【0017】
雄ハウジング本体11の上面の後端部には、門型板状のレバーロック受け部17が形成されている。レバーロック受け部17は、左右一対の脚部18と、両脚部18間に架橋された天井部19とからなる。両脚部18の前縁は、後方へ向けてテーパ状に傾く斜面20とされている。天井部19の内側面には、後述するレバーロック突起57と係止可能なリブ状のレバーロック受け突起21が形成されている。
【0018】
雄ハウジング本体11の両側外面(長辺側の外面)の高さ方向中央部は、図10に示すように、高さ方向両端部よりも一段落ちて配置され、ここに、取付対象となるブラケット(図示せず)に係止可能な左右一対のロック部22が形成されている。ロック部22は、ブラケットが挿入可能な挿入空間を有する扁平枠状のカセット部23を有する。カセット部23は、上下一対のレール部24と、両レール部24間に架橋された梁部25とからなる。図2に示すように、梁部25の前端からはロック本体部26が後方へ突出して形成されている。ロック本体部26の先端側には、ロック爪27が挿入空間側(内側)へ突出して形成されている。カセット部23の挿入空間に後方から挿入されたブラケットは、レール部24に沿って前方へスライドさせられ、正規の装着位置に至るに伴い、ロック爪27に弾性的に引っ掛け係止される。これにより、雄ハウジング10がブラケットに固定される。なお、ロック部22の外面はほぼ凹凸なく連続する垂直面とされている。
【0019】
フード部12は、雄ハウジング本体11の前端に段差28を介することによって雄ハウジング本体11よりも一回り大きくされている。フード部12の両側壁(長辺側の壁)の外面は、ほぼ凹凸なく連続する垂直面とされ、その後端部(奥端部)の高さ方向中央部に、左右一対の支軸29が突出して形成されている。両支軸29は、円柱状をなし、その先端部に抜け止め片30が周方向に張り出して形成されている。そして、両支軸29の内側には、ロック部22のロック爪27を成形する際に使用する金型の引き抜き跡となる左右一対の型抜き孔31が形成されている。型抜き孔31は、高さ方向に細長い形状とされ、段差28を貫通するとともに、フード部12の内側面を溝状に切り欠くようにして、前後方向に延びる形態とされている。フード部12の両側壁のうち、型抜き孔31と両支軸29との間に挟まれる部分は、型抜き孔31によって上下領域よりも薄肉となる支持壁32とされている。
【0020】
図10及び図11に示すように、支持壁32には、型抜き孔31と重なり合う位置に、左右一対の導入溝33が切り欠いて形成されている。導入溝33は、前後方向に延びるとともに、フード部12の前縁に開口する形態とされ、ここに、相手側のカムピン105及び後述するムービングプレート70のカムフォロア77が前方から挿入されるようになっている。なお、支軸29は、導入溝33の後縁の直後方に位置している。
【0021】
フード部12の内側面には、ムービングプレート70を案内可能な複数のアリ溝34が前後方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて形成されている。また、フード部12の両側壁の前端縁には、レバー50を当て止め可能な左右一対の当て止め片35が幅方向に張り出して形成されている。
【0022】
レバー50は合成樹脂製であって、全体として門型板状をなし、幅方向に延びる操作部51と、操作部51の両端から互いに略平行に突出する左右一対のアーム部52とからなる。アーム部52には、支軸29を受ける軸孔53が貫通して形成されている。また、アーム部52の内側面には、図9に示すように、有底のカム溝54が所定方向に延出して形成されている。
【0023】
操作部51の幅方向中央部には、レバーロック部55が形成されている。レバーロック部55は、操作部51の後縁に開口する凹所56内に撓み可能に配置され、その後縁から前方へ向けて折り返し状に延びる形態とされている。レバーロック部55の上面には、リブ状のレバーロック突起57が形成されている。また、レバーロック部55の上面前端には、起立片58が立ち上げ形成されている。操作部51における起立片58の後方には、後方へ向かって上り勾配となるテーパ状の操作面59が全幅に亘って形成されている。
【0024】
また、操作部51の幅方向中央部の上端には、凹所56と連続する切欠部60が形成されている。起立片58の上端部は、切欠部60内に臨むように配置され、正面視によって視認可能とされている。一方、起立片58を挟む両側には、操作部51の幅方向両端部が位置しているため、側面視によって起立片58を視認することはできない。また、起立片58の上端は操作部51の上端とほぼ同じかそれよりも低い位置に配置されており、起立片58を含むレバーロック部55の全体が凹所56内に収容されている。
【0025】
かかるレバー50は、軸孔53に支軸29を嵌入させた状態で、支軸29を中心として回動初期位置と回動完了位置との間を回動可能とされている。このとき、アーム部52の外面が抜け止め片30に当接することにより、レバー50が雄ハウジング10から抜け止めされるようになっている。回動初期位置では、操作部51がフード部12の前端部上方に配置されるとともに、カム溝54の入り口が導入溝33と重なりかつ前方に開口して配置される。また、回動初期位置では、アーム部52の前端が当て止め片35に当接することで、レバー50のフード部12よりも前方への回動操作が規制される。この状態で、フード部12内に雌ハウジング100を浅く嵌合すると、カムピン105が導入溝33及びカム溝54の入り口に進入する。
【0026】
回動初期位置から回動完了位置へは、操作部51の操作面59を押圧することにより、操作力をレバー50に効率よく伝達することが可能となる。この場合、操作部51に操作面59がテーパ状に切り欠いて形成されているという事情があるものの、起立片58の全体が操作部51の凹所56内に収容されているため、作業者の指が起立片58に触れることがなく、起立片58への不用意な干渉が回避される。また、操作面59が切り欠かれることによって操作部51の大型化が回避される。さらに、回動途中では、カムピン105がカムフォロア77と合体した状態でカム溝54の溝面を摺動することにより、レバー50と雌ハウジング100との間にカム作用が発揮され、両ハウジング10、100の嵌合動作が進行する。
【0027】
回動完了位置では、図5に示すように、操作部51の凹所56内にレバーロック受け部17が嵌合されるとともに、起立片58の後面が天井部19の前端に当接可能に配置され、かつレバーロック受け部17の斜面20が凹所56の内側面に沿って当接可能に配置される。また、回動完了位置では、レバーロック突起57がレバーロック受け突起21を弾性的に係止し、これによってレバー50が回動規制状態に保持される。そして回動完了位置では、両ハウジング10、100が正規嵌合状態に保持され、雄タブ92が雌端子金具120の箱部121内に正規深さで挿入されて、両端子金具90、120同士の導通がとられる。
【0028】
ムービングプレート70は合成樹脂製であって全体として高さ方向に長いキャップ状をなし、フード部12内に組み込まれる。詳しくはムービングプレート70は、図6ないし図8に示すように、フード部12内を覆う平板状のプレート本体71と、プレート本体71の周縁から前方へ突出する角筒状のプレートガイド部72とを有している。そして、ムービングプレート70は、プレート本体71がフード部12の開口側(前方)に位置する嵌合初期位置(図4を参照)と、プレート本体71がフード部12の奥側(後方)に位置する嵌合完了位置(図5を参照)との間を前後方向に移動可能とされている。プレート本体71には、雄タブ92の先端部を位置決め状態で挿入可能な複数の挿入孔73が整列して形成されている。プレート本体71の前面には、雌ハウジング100の各隔壁103と対応する位置毎に、高さ方向に複数の仕切り壁74が形成されている(図12を参照)。仕切り壁74は、両ハウジング10、100の嵌合時に、隔壁103と前後方向で連続して、雌サブハウジング110の前端部を下方から支持可能とされている。
【0029】
プレートガイド部72は、フード部12の内側面を摺動可能とされている。プレートガイド部72の外周面には、複数のアリ部75が前後方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて形成されている。アリ部75がアリ溝34に嵌合して摺動することにより、フード部12内におけるムービングプレート70の移動動作をスムーズに行うことが可能となっている。
【0030】
プレートガイド部72の両側壁(長辺側の壁)の高さ方向中央部には、左右一対の嵌合溝76が前後方向に延びるとともに前端に開口して形成されている。嵌合溝76は、ムービングプレート70の組付時に導入溝33と連通して、雌ハウジング100のカムピン105を受け入れ可能とされている。そして、プレートガイド部72の両側壁の外面には、門型のカムフォロア77が導入溝33に跨りつつ突出して形成されている。カムフォロア77は、ムービングプレート70の組付時に、その内側にカムピン105を被包した状態で、カムピン105ともどもレバー50のカム溝54に進入して係合可能とされている。
【0031】
さて、プレートガイド部72の両側壁には、左右一対の突片78がカムフォロア77の直後方位置から後方へ突出して形成されている。突片78は、側面視略矩形の平板状をなし、ムービングプレート70の組付時に、雄ハウジング10の型抜き孔31に嵌合して挿入されるようになっている。また、突片78は、ムービングプレート70の組付時に、支持壁32の内側に配置され、その外面を支持壁32の内面に対面させることで、支持壁32との間に幅方向(厚み方向)で二重板構造を構成している。
【0032】
突片78の上下両縁には、三角溝状の凹部79が全長に亘って切り欠いて形成されている。ここで、雄ハウジング本体11における両型抜き孔31の内側面の上下両縁には、図1に示すように、凹部79と嵌合可能な断面三角形状の凸部39が突出して形成されている。凸部39の外側面と凹部79の内側面は幅方向で互いに対面して配置され、これにより、雌ハウジング100に対する突片78の幅方向への遊動が規制される。この場合、凹部79の内側面と凸部39の外側面には高さ方向に沿った対向面80が形成され、両対向面80が互いに当たり合うことにより、突片78の支持壁32側への倒れ込みが規制される。そして、凹部79の他の一面は斜面85とされ、これにより、凹部79が突片78の厚み範囲で形成されるという事情があっても、突片78の上下両縁の剛性を確保できるようになっている。
【0033】
本実施形態に係るコネクタの構造は上述の通りであり、続いて、コネクタの組付動作及び作用効果について説明する。
レバー50を回動初期位置に留め置き、雄ハウジング10のフード部12内にムービングプレート70を嵌合初期位置に組み付ける(図4を参照)。嵌合初期位置では、雄タブ92の先端部が挿入孔73を貫通してプレート本体71の前方に少し突出する。このとき、突片78の先端部が、雄ハウジング本体11の型抜き孔31の入り口を臨むように配置され、支軸29の内側には、突片78が位置している(図2を参照)。続いて、フード部12内に雌ハウジング100を浅く嵌合させ、その状態でレバー50を回動完了位置へ向けて図示反時計周りに回動させる。すると、カムピン105とカムフォロア77が合体した状態でカム溝54の溝面を摺動し、レバー50の回動動作に連動して、ムービングプレート70が嵌合完了位置側へ後退して、雄タブ92のプレート本体71からの突出量が徐々に増加する。また、両ハウジング10、100の嵌合深さが増加するに従って、突片78の型抜き孔31への挿入深さも増加する。さらに、凹部79に凸部39が挿入嵌合されることで、突片78が位置決め状態に案内される。
【0034】
レバー50が回動完了位置に至ると、ムービングプレート70も嵌合完了位置に至って、両ハウジング10、100が正規嵌合状態となる(図5を参照)。このとき、プレート本体71が両ハウジング10、100間に厚み方向に挟持させられ、突片78の先端が型抜き孔31の奥端側に到達する。ここで、雄ハウジング本体11の両側外面には、段差28とカセット部23との間に、窓部40が開口して形成されており、この窓部40によって型抜き孔31の奥端部が構成されている。これにより、両ハウジング10、100の嵌合前は、突片78が窓部40から退避して配置されることで外部から視認不能とされるが、両ハウジング10、100が正規嵌合状態に至った状態では、突片78の先端部が窓部40に進入して外部から視認可能となっている(図3を参照)。
【0035】
上記の場合に、ムービングプレート70がフード部12内に組み付けられると、嵌合初期位置と嵌合完了位置のいずれにおいても、支持壁32の内側に突片78が当接可能に配置される。このため、型抜き孔31の成形に起因して、薄肉の支持壁32が余儀なく形成されるという事情があっても、突片78によって支持壁32の補強がなされる。このため、支持壁32の変形が防止される。また、雄ハウジング10に型抜き孔31を形成することでロック部22のロック爪27を成形しているため、雄ハウジング10の外面にロック部22を単に突成する場合と違って、雄ハウジング10が大型になるのを回避できる。
【0036】
また、凹部79と凸部39が突片78と支持壁32の並び方向で互いに対向しつつ嵌合されるから、突片78が支持壁32側へ倒れるのが阻止される。その結果、突片78の倒れ込みに起因する支持壁32の変形も防止される。
さらに、両ハウジング10、100の正規嵌合時に、窓部40を通して突片78の先端位置を視認することにより、突片78ひいてはムービングプレート70が正規位置に至っているのか否かを検知することができる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)凸部が突片の外面に形成され、凹部が型抜き孔の内面に形成されるものであってもよい。また、凸部及び凹部の形状は任意である。場合によっては、凸部及び凹部を省略しても構わない。
(2)ムービングプレートは、カムフォロアを有さず、レバーの回動動作に連動しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…雄ハウジング
12…フード部
22…ロック部
29…支軸
31…型抜き孔
32…支持壁
39…凸部
40…窓部
50…レバー
70…ムービングプレート
71…プレート本体
73…挿入孔
78…突片
79…凹部
90…雄端子金具
92…雄タブ
100…雌ハウジング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子金具が突出して配置される筒状のフード部を有するとともに、取付対象に係止されるロック部を有する雄ハウジングと、
前記フード部内に移動可能に組み込まれ、前記雄端子金具の先端部を位置決めして挿入させる挿入孔が開口されたプレート本体を有し、前記雄ハウジングが相手側の雌ハウジングとの嵌合を進めるに従い、前記プレート本体が前記フード部の奥側へ移動して、前記雄端子金具の前記挿入孔からの突出量を増加させるムービングプレートと、
前記雄ハウジングの外面に突成された支軸に取り付けられ、前記雌ハウジングと係合した状態で前記支軸を中心として回動されることにより、前記雌ハウジングとの間にカム作用を発揮して、前記両ハウジングを正規嵌合状態に至らすレバーとを備え、
前記雄ハウジングにおける前記支軸の内側には、前記ロック部の成形に伴って型抜き孔が形成され、前記支軸と前記型抜き孔との間には、前記支軸を支持する支持壁が形成され、
前記ムービングプレートには、前記型抜き孔に挿入されて前記支持壁の内側に配置される突片が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記突片の外面と前記型抜き孔の内面のいずれか一方には凸部が形成され、他方には凹部が形成されており、前記凹部と前記凸部が、前記突片と前記支持壁の並び方向で互いに対向しつつ嵌合されることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記雄ハウジングの外面には窓部が開口して形成され、前記両ハウジングの正規嵌合時に、前記突片の先端が前記窓部を通して視認可能とされることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項1】
雄端子金具が突出して配置される筒状のフード部を有するとともに、取付対象に係止されるロック部を有する雄ハウジングと、
前記フード部内に移動可能に組み込まれ、前記雄端子金具の先端部を位置決めして挿入させる挿入孔が開口されたプレート本体を有し、前記雄ハウジングが相手側の雌ハウジングとの嵌合を進めるに従い、前記プレート本体が前記フード部の奥側へ移動して、前記雄端子金具の前記挿入孔からの突出量を増加させるムービングプレートと、
前記雄ハウジングの外面に突成された支軸に取り付けられ、前記雌ハウジングと係合した状態で前記支軸を中心として回動されることにより、前記雌ハウジングとの間にカム作用を発揮して、前記両ハウジングを正規嵌合状態に至らすレバーとを備え、
前記雄ハウジングにおける前記支軸の内側には、前記ロック部の成形に伴って型抜き孔が形成され、前記支軸と前記型抜き孔との間には、前記支軸を支持する支持壁が形成され、
前記ムービングプレートには、前記型抜き孔に挿入されて前記支持壁の内側に配置される突片が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記突片の外面と前記型抜き孔の内面のいずれか一方には凸部が形成され、他方には凹部が形成されており、前記凹部と前記凸部が、前記突片と前記支持壁の並び方向で互いに対向しつつ嵌合されることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記雄ハウジングの外面には窓部が開口して形成され、前記両ハウジングの正規嵌合時に、前記突片の先端が前記窓部を通して視認可能とされることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−124018(P2011−124018A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278609(P2009−278609)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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