説明

コネクタ

【課題】長期に亘る使用によっても2種類のカード型電子部品の挿入が困難になりにくいコネクタを提供する。
【解決手段】第1のメモリカード201が挿入される第1の凹部11の底面11aに第2のメモリカード202が挿入される第2の凹部12を形成する。これにより、第2のメモリカード202をカード挿入方向DIへガイドするガイド面12bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幅や長さの異なる2種類のメモリーカードを使用できるカードコネクタが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
図24〜図29に示すように、ハウジング3は、合成樹脂などの絶縁材料からなり底板1a及び左右側壁1b,1c、後壁部1dを有する絶縁性のボディ1と板金製で天板2a及び左右側板2b,2cを有する導電性のカバー2とで構成される。ハウジング3の前面は開口され、ハウジング3には第1のカード100と第2のカード200とが挿入可能なスロット(カード挿入空間)4が形成されている。
【0004】
ハウジング3内にはカードセレクタ7が収容されている。カードセレクタ7はスロット4に挿入されたカードがいずれのカードかを選別し、第1のカード100をスロット4の下方へ、第2のカード200をスロット4の上方へ振り分けるための部材である。
【0005】
カードセレクタ7は薄板金属を打抜き加工及び曲げ加工することによって形成される。カードセレクタ7は上部カード挿入口形成板部72と導入ガイド部73と突片部74a,74bと押上げガイド部75a,75bとを一体に有する。更に、カードセレクタ7はセレクタ軸76を有する。上部カード挿入口形成板部72の両端部にはL字形の脚部71a,71bが形成されている。脚部71a,71bの間隔は第1のカード100の横幅よりも広い。導入ガイド部73は上部カード挿入口形成板部72の前端に連なっている。導入ガイド部73は前下がりに傾斜している。突片部74a,74bはそれぞれ脚部71a,71bの下端片から互いに近づく方向へ突出している。突片部74a,74bの間隔は第1のカード100の横幅よりも少し狭い。押上げガイド部75a,75bはそれぞれ突片部74a,74bの前端に連なり、カード挿入方向に沿って延びており、前上がりに傾斜している。
【0006】
上部カード挿入口形成板部72の両端部の後端には上軸押え部79a,79bが連なる。脚部71a,71bの下端片の後端には軸受け部77a,77bが連なる。
【0007】
セレクタ軸76は軸受け部77a,77bと上軸押え部79a,79bとで挟まれている。また、セレクタ軸76の両端部はボディ1の左側壁1bと右側壁1cとにそれぞれ形成されたガイド溝33a,33bに挿入されている。これにより、セレクタ軸76はボディ1の幅方向と平行な状態で上下動できる。更に、セレクタ軸76はカバー2の天板2aに形成された左右の板状バネ部10a,10bによって下方へ付勢され、初期位置に戻る。
【0008】
第1のカード100をスロット4に挿入すると、押上げガイド部75a,75bが第1のカード100の先端部によって押し上げられ、上部カード挿入口形成板部72や導入ガイド部73が上方へ移動し、第1のカード100を挿入可能な下部カード挿入口36が形成される。したがって、第1のカード100を更に奥側へ挿入することができる。
【0009】
第2のカード200をスロット4に挿入すると、第2のカード200は押上げガイド部75a,75bに接触しないので、セレクタ軸76は初期位置から動かず、第2のカード200はセレクタ軸76の前方にある導入ガイド部73に乗り上げ、第2のカード200はスロット4の上部へと案内される。したがって、第2のカード200を更に奥側へ挿入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4204523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
スロット4に挿入された第2のカード200の先端部が上部カード挿入口形成板部72の上方の位置に達したとき、なんらかの原因で第2のカード200が傾くと、第2のカード200の先端部によって上部カード挿入口形成板部72が変形するおそれがある。
【0012】
そして、コネクタの長期の使用により上部カード挿入口形成板部72の変形が大きくなるとカード100,200の振り分けの機能が低下し、カード100,200の挿入が困難になるおそれがある。
【0013】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は長期に亘る使用によっても2種類のカード型電子部品の挿入が困難になりにくいコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため請求項1記載の発明のコネクタは、第1のカード型電子部品が挿入される第1の凹部と、前記第1の凹部の底面に形成され、前記第1のカード型電子部品よりも幅が小さい第2のカード型電子部品が挿入される第2の凹部とを有するハウジングと、前記第1の凹部に挿入された前記第1のカード型電子部品の前記ハウジングの高さ方向への移動を規制し、前記第2の凹部に挿入された前記第2のカード型電子部品の前記ハウジングの高さ方向への移動を規制し、前記第1の凹部への前記第1のカード型電子部品の挿入を許容し、前記第1の凹部への前記第2のカード型電子部品の挿入を阻止するカード選別手段とを備え、前記第1の凹部が、前記第1のカード型電子部品をカード挿入方向へガイドするガイド面を有し、前記第2の凹部が、前記第2のカード型電子部品をカード挿入方向へガイドするガイド面を有していることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のコネクタにおいて、前記カード選別手段が、前記第1の凹部を覆うように前記ハウジングに装着されたカバー部材と、前記カバー部材に形成された窓を通じて前記第1の凹部に突出し、前記第2の凹部に挿入された前記第2のカード型電子部品の上方への動きを阻止するとともに前記第1のカード型電子部品の前記第1の凹部への挿入を阻止する突出部を有し、前記カード挿入方向及び前記高さ方向へ移動可能に前記カバー部材に装着された可動部材と、前記カバー部材に対して前記可動部材が前記カード挿入方向へ移動したとき、前記可動部材をカード排出方向へ付勢する付勢部材と、前記カバー部材と前記可動部材とを連結し、前記第1のカード型電子部品の先端部が前記第1の凹部に挿入されたとき前記カバー部材と前記可動部材との連結が解除されて前記可動部材の移動を可能にする連結手段と、前記カバー部材と前記可動部材との連結が解除されて前記第1のカード型電子部品が前記突出部に突き当たり、前記可動部材が前記第1のカード型電子部品とともに前記カード挿入方向へ移動するとき、前記可動部材の前記カード挿入方向の動きを上方への動きに変換して、前記可動部材を上方へ移動させる運動変換手段とで構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のコネクタにおいて、前記連結手段が、前記可動部材に形成され、前記第1の凹部へ突出するように折れ曲がるロックばね部と、前記カバー部材に形成され、前記ロックばね部の先端部に形成された鉤部と係合可能な孔部とを有し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1のカード型電子部品の先端部が前記第1の凹部に挿入されたとき、前記ロックばね部の鉤部と前記孔部との係合が解除されて、前記カバー部材と前記可動部材との連結が解除され、前記第1のカード型電子部品が前記第1の凹部から排出されるとき、前記付勢部材の付勢力によって前記可動部材が前記第1のカード型電子部品を挿入する前の位置にもどり、前記ロックばね部の鉤部と前記孔部とが係合して、前記カバー部材と前記可動部材とが連結されることを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載のコネクタにおいて、前記運動変換手段が、前記カバー部材の両側面部にそれぞれ形成された突起部と、前記可動部材の両側面部にそれぞれ形成され、前記可動部材が移動するとき前記突起部が相対摺動するカム孔部とで構成されることを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載のコネクタにおいて、前記運動変換手段が、前記カバー部材の両側面部にそれぞれ形成されたカム孔と、前記可動部材の両側面部にそれぞれ形成され、前記可動部材が移動するとき前記カム孔部を相対摺動する突起部とで構成されることを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載のコネクタにおいて、前記第1の凹部の底面に前記第1のカード型電子部品の端子部に接触する第1の端子部が配置され、前記第2の凹部の底面に前記第2のカード型電子部品の端子部に接触する第2の端子部が前記第1の端子部の前方に配置されている前記第2の端子部の高さ寸法の値が前記第2の凹部の深さ寸法の値よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、長期に亘る使用によっても2種類のカード型電子部品の挿入が困難になりにくいコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1はこの発明の一実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【図2】図2は図1に示すコネクタの分解斜視図である。
【図3】図3は図1に示すコネクタの平面図である。
【図4】図4は図1に示すコネクタの正面図である。
【図5】図5は図1に示すコネクタに第1のメモリカードを挿入した状態を示す正面図である。
【図6】図6は図1に示すコネクタに第2のメモリカードを挿入した状態を示す正面図である。
【図7】図7は図1に示すコネクタを切断した状態を示す斜視図である。
【図8】図8は図1の部分拡大図である。
【図9】図9は図4の部分拡大図である。
【図10】図10は図1に示すコネクタの第1の凹部に第1のメモリカードを挿入する途中の状態を正面から見たときの部分拡大図である。
【図11】図11は図1の部分拡大図である。
【図12】図12は図1に示すコネクタのハウジングの平面図である。
【図13】図13は図12に示すコネクタに第1のメモリカードを挿入した状態を示す平面図である。
【図14】図14は図12に示すコネクタに第2のメモリカードを挿入した状態を示す平面図である。
【図15】図15は図1に示すコネクタのイジェクトバーの斜視図である。
【図16】図16は図1に示すコネクタのハウジングの斜視図である。
【図17】図17は図16に示すハウジングに組み付けられたイジェクトバーが排出位置にある状態を示す斜視図である。
【図18】図18は図16に示すハウジングに組み付けられたイジェクトバーが嵌合位置にある状態を示す斜視図である。
【図19】図19は図1に示すコネクタの第1の凹部に第1のメモリカードの先端部を挿入した状態を示す断面図である。
【図20】図20は図1に示すコネクタの突出部に第1のメモリカードの先端部が突き当たった状態を示す断面図である。
【図21】図21は図20に示すコネクタの側面図である。
【図22】図22は図1に示すコネクタの可動部材が上昇した状態を示す断面図である。
【図23】図23は図22に示すコネクタの側面図である。
【図24】従来のカードコネクタの外観斜視図である。
【図25】同カードコネクタのカバーを取り外した状態の外観斜視図である。
【図26】セレクタ軸付きのカードセレクタの外観図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図、(d)は右側面図である。
【図27】セレクタ軸付きカードセレクト機構部の平面説明図である。
【図28】同セレクタ軸付きカードセレクト機構部の側面説明図であり、(a)は第2のカードの挿入状態を示し、(b)は第1のカードの挿入状態を示す図である。
【図29】同セレクタ軸付きカードセレクト機構部の正面説明図であり、(a)は第2のカードの挿入状態を示し、(b)は第1のカードの挿入状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図1〜図23に基づいて説明する。
【0023】
図1〜図4に示すように、コネクタ100はハウジング1とカード選別手段3とを備える。
【0024】
コネクタ100は図示しないプリント基板に実装される。コネクタ100は、第1のメモリカード(第1のカード型電子部品)201(図13参照)又は第2のメモリカード(第2のカード型電子部品)202(図14参照)とプリント基板とを電気的に接続する。第2のメモリカード202の厚さは第1のカード201の厚さとほぼ同じであるが、第2のメモリカード202の幅は第1のカード201の幅よりも狭く、第2のメモリカード202の長さは第1のカード201の長さよりも短い。第1のメモリカード201としては例えばSDカードがあり、第2のメモリカード202としては例えばthinカードがある。
【0025】
ハウジング1は合成樹脂製であり、ほぼ矩形の板状である。ハウジング1は第1の凹部11と第2の凹部12とを有する。第1の凹部11には第1のメモリカード201が挿入される(図5参照)。第1の凹部11は底面11aと一対のガイド面11bとを有する。底面11aは第1のメモリカード201の下面を支持する。ガイド面11bは、第1のメモリカード201をカード挿入方向DIへ案内可能なように、所定のすき間を介入して第1のメモリカード201の側面とハウジング1の幅方向DWで対向する。第1の凹部11の深さ寸法の値は第1のメモリカード201の高さ寸法の値よりも少し大きい。
【0026】
第2の凹部12は第1の凹部11の底面11aに形成されている。第2の凹部12には第2のメモリカード202が挿入される(図6参照)。第2の凹部12は底面12aと一対のガイド面12bとを有する。底面12aは第2のメモリカード202の底面を支持する。ガイド面12bは、第2のメモリカード202をカード挿入方向DIへ案内可能なように、所定のすき間を介して第2のメモリカード202の側面とハウジング1の幅方向DWで対向する。第2の凹部12の深さ寸法の値は第2のメモリカード202の厚さ寸法の値よりも小さい。
【0027】
カード選別手段3はカバー部材4と可動部材5とコイルばね(付勢部材)6とを備えている。
【0028】
カバー部材4は金属薄板に打抜き加工及び曲げ加工を施して形成される。カバー部材4はハウジング1の第1の凹部11を覆うようにハウジング1に装着され、固定されている。カバー部材4の上面部には窓41が形成されている。また、カバー部材4の上面部の両端部にはそれぞれ孔部42と孔部45とが形成されている。孔部42と孔部45は後述する突出部51の前側に位置する。コネクタ100の前側は図3に向かってコネクタ100の下側である。孔部42と孔部45とは所定の間隔をおいてカード挿入方向DIへ並ぶ。カバー部材4の両側面部にはそれぞれ2つの突起部43が形成されている。2つの突起部43は所定の間隔をおいてカード挿入方向DIへ並ぶ。また、カバー部材4の左側面部には引掛け部44が形成されている。コネクタ100の左側は図3に向かってコネクタ100の右側である。
【0029】
可動部材5は金属薄板に打抜き加工及び曲げ加工を施して形成される。可動部材5はカード挿入方向DI及びハウジング高さ方向DHへ移動可能にカバー部材4に装着され、図1、図19に示す第1のメモリカード201を挿入する前の初期位置と図22に示す第1のメモリカード201を挿入した後のカード挿入完了位置との間を移動可能である。可動部材5の上面部には下方へ突出する突出部51が形成されている。突出部51は傾斜面51aを有する(図7参照)。図2、図3、図8、図9、図11に示すように、可動部材5の上面部の両端部には1対のロックばね部52が形成されている。1対のロックばね部52は突出部51の前側に位置する。ロックばね部52は舌状であり、カード挿入方向DIへ延びている。1対のロックばね部52の間隔は第1のメモリカード201の幅よりもやや狭い。ロックばね部52は可動部材5の上面部に連なるばね部52cと、ばね部52cに連なる接触部52bと、接触部52bに連なる鉤部52aとを有する。ロックばね部52の先端部に位置する鉤部52aは第1の凹部11へ折れ曲がり、カバー部材4の孔部42を通じて第1の凹部11内に突出する。接触部52bは円弧状であり、下方へ突き出すように湾曲し、カバー部材4の孔部45を通じて第1の凹部11内に突出する。接触部52bはハウジング1の左側壁部14に形成されたキー14aの上方に位置する。キー14aはカード挿入方向DIに沿って延び(図16参照)、キー14aは図10に示すように、第1のメモリカード201の底面部の両端部に形成された切欠き201aに嵌る。
【0030】
可動部材5の両側面部にはそれぞれ2つのカム孔部53が形成されている。カム孔部53の長手方向はカード挿入方向DIに対して所定角度傾斜している。カム孔部53にはカバー部材4の突起部43が相対的に移動可能に挿入されている。可動部材5の左側面部には引掛け部54が形成されている。引掛け部54とカバー部材4の引掛け部44とはカード挿入方向DIで所定間隔離れている。
【0031】
コイルばね6の一端部はカバー部材4の引掛け部44に引っ掛けられ、コイルばね6の他端部は可動部材5の引掛け部54に引っ掛けられている。これにより、コイルばね6は可動部材5が前方へ移動するように可動部材5を付勢し得る。
【0032】
カバー部材4の孔部42,45と可動部材5のロックばね部52とで連結手段31が構成される。
【0033】
カバー部材4の突起部43と可動部材5のカム孔部53とで運動変換手段32が構成される。
【0034】
図12、図13、図14に示すように、ハウジング1にはコンタクト81,82,83,91,92が保持されている。
【0035】
コンタクト81,82,83は第の1メモリカード201用のコンタクトである。コンタクト81,82は信号用のコンタクトである。コンタクト83は電源用のコンタクトである。
【0036】
コンタクト91,92は第2のメモリカード202用のコンタクトである。コンタクト91,92の接触部91a,92aの高さ寸法の値は第2の凹部12の深さ寸法の値よりも小さい。コンタクト91,92の接触部91a,92aはコンタクト81,82,83の接触部81a,82a,83aの前方に位置する。
【0037】
図15〜図18に示すように、イジェクト機構17はイジェクトバー171の一部の形状が下記のように異なる点を除き図示しないロッド、付勢部材等を有する周知のイジェクト機構と同様であるので、周知のイジェクト機構と異なる点だけを説明する。
【0038】
イジェクトバー171は、第1の凹部11に挿入されている第1のメモリカード201や第2の凹部12に挿入されている第2のメモリカード202を排出できるように、第1の突当て部171aと第2の突当て部171bとを有する。第1の突当て部171aと第2の突当て部171bとはカード挿入方向DIで離れている。イジェクトバー171はカード挿入方向DIに沿って往復動できるように(図17、図18参照)、ハウジング1の収容部13(図16参照)に収容されている。イジェクトバー171が収容部13に収容された状態で、第1の突当て部171aは第1の凹部11内に突出し、第2の突当て部171bは第2の凹部12内に突出する。
【0039】
次に、コネクタ100に第1のメモリカード201を挿入するときのコネクタ100の動作を図19〜図23に基づいて説明する。
【0040】
コネクタ100に第1のメモリカード201及び第2のメモリカード202が挿入されていないとき、可動部材5のロックばね部52の鉤部52aはカバー部材4の孔部42と係合し(図3参照)、可動部材5はカバー部材4に連結された状態にあるから移動できない。また、カム孔部53内の突起部43は最も低い位置にあるので、可動部材5はカバー部材4に最も近い位置にある。
【0041】
コイルばね6の付勢力に抗して第1のメモリカード201の先端部を第1の凹部11に挿入すると(図19参照)、その先端部がロックばね部52の接触部52bを第1の凹部11からはね上げ(図20、図21参照)、ロックばね部52の鉤部52aが孔部42から抜ける。その結果、可動部材5とカバー部材4との係合状態(ロック状態)が解除され、可動部材5は移動できる状態になる。
【0042】
第1のメモリカード201の先端部が可動部材5の突出部51に突き当たると、可動部材5は第1のメモリカード201に押されて、後方へ移動する。このとき、カム孔部53内の突起部43が相対的に前方へ移動する。カム孔部53の長手方向はカード挿入方向DIに対して傾斜しているので、可動部材5は上方へ移動する。
【0043】
可動部材5が上方へ移動すると、突出部51が第1の凹部11から上方へ退き、第1のメモリカード201の挿入を妨げるものがなくなり、第1のメモリカード201を第1の凹部11に挿入することができる。第1のメモリカード201の挿入が完了したとき、第1のメモリカード201の先端部は突出部51の下面と第1の凹部11の底面11aとで挟まれ、第1のメモリカード201の平面的な電極部(図示せず)がコンタクト81,82,83の接触部81a,82a,83aに接触し、第1のメモリカード201がプリント基板に電気的に接続される。また、第1のメモリカード201が突出部51の下面と第1の凹部11の底面11aとに挟まれているとき、可動部材5はコイルばね6によって前方へ移動しようとするが、そのときに突起部43が相対的にカム孔部53内を後退し、可動部材5を押し下げようとするが、突出部51の下面が第1のメモリカード201の上面と接触しているので、突出部51が可動部材5を押し下げられず、その結果、突起部43はカム孔部53の傾斜面につかえて動くことができず、可動部材5は動かない。
【0044】
第1のメモリカード201を第1の凹部11に挿入する途中で第1のメモリカード201がなんらかの原因で傾いた場合、下方へ移動しようとする第1のメモリカード201の先端部を第1の凹部11の底面11aが受け止める。上方へ移動しようとする第1のメモリカード201の先端部をカバー部材4の上面部と可動部材5の上面部とが受け止める。
【0045】
第2のメモリカード202をコネクタ100に挿入するには、第2の凹部12を目掛けて第2のメモリカード202の先端部を第2の凹部12に挿入すればよい。
【0046】
このとき、第2のメモリカード202の先端部はロックばね部52の接触部52bに接触できないので、可動部材5のカバー部材4に対するロック状態は維持される。
【0047】
第2のメモリカード202の挿入が完了したとき、第2のメモリカード202は突出部51の下面とハウジング1の底面12aとで挟まれ、第2のメモリカード202の平面的な電極部や立体的な電極部(図示せず)がコンタクト91,92の接触部91a,92aに接触し、第2のメモリカード202がプリント基板に電気的に接続される。
【0048】
第2のメモリカード202を第2の凹部12に挿入する途中で第2のメモリカード202が傾いた場合、下方へ移動しようとする第2のメモリカード202の先端部を第2の凹部12の底面12aが受け止める。上方へ移動しようとする第2のメモリカード202の先端部をカバー部材4の上面部と可動部材5の上面部とが受け止める。但し、第2のメモリカード202の先端部が可動部材5の突出部51に達したときに第2のメモリカード202が傾いていた場合には、第2のメモリカード202の先端部を可動部材5の突出部51が受け止める。
【0049】
第2のメモリカード202の先端部を第1の凹部11に挿入することもできるが、第2のメモリカード202の先端部が突出部51に突き当たり、それ以上の挿入は阻止されるので、使用者は第2のメモリカード202を挿入すべき位置を間違えたことに直ちに気付く。
【0050】
第1のメモリカード201の底面部には切欠き201aが形成されている(図10参照)ので、第1のメモリカード201の両側部はカバー部材4とキー14aとの間の隙間15に入り、ロックばね部52の接触部52bを押し上げて鉤部52aを孔部42から離し、カバー部材4に対する可動部材5の連結状態を解除することができる。これに対し、第2のメモリカード202の底面部には切欠きが形成されていないので、第2のメモリカード202の両側部はカバー部材4とキー14aとの間の隙間15に入ることができない。したがって、第2のメモリカード202の先端部を第1の凹部11に挿入しても、第2のメモリカード202はロックばね部52の接触部52bを押し上げることができないので、第2のメモリカード202のそれ以上の挿入は突出部51によって阻止される。
【0051】
第1の凹部11に挿入された第1のメモリカード201を排出するには、第1のメモリカード201を挿入方向DIへ指で押し込む。そうすると、イジェクトバー171が第1のメモリカード201に押されてハウジング1の収容部13の奥まで後退し、イジェクトバー171のロック状態が解除される。第1のメモリカード201から指を離すと、イジェクト機構17の付勢部材の付勢力によってイジェクトバー171がもとの位置に戻る。そのとき、イジェクトバー171の第1の突当て部171aによって第1のメモリカード201が押し出される。
【0052】
同様に、第2の凹部12に挿入された第2のメモリカード202を排出するときも、第1のメモリカード201を排出するときと同様の操作を行えばよい。第2のメモリカード202はイジェクトバー171の第2の突当て部171bによって押し出される。
【0053】
この実施形態によれば、第1のメモリカード201や第2のメモリカード202をハウジング1に斜めに挿入しても、下方へ移動しようとする第1のメモリカード201や第2のメモリカード202の先端部をハウジング1の第1の凹部11や第2の凹部12の底面11a,12aが受け止めるので、長期に亘って使用しても、第1のメモリカード201や第2のメモリカード202の挿入が困難になりにくい。更に、従来のカードコネクタの変形しやすいセレクタ7を不要にすることができる。
【0054】
また、第2の凹部12の底面12aにコンタクト91の接触部91a,92aを配置し、
接触部91a,92aの高さの値を第2の凹部12の深さの値よりも小さくしたので、第1のメモリカード201を第1の凹部11に挿入したときに、第1のメモリカード201が接触部91a,92aに接触しないので、接触部91a,92aを保護することができる。
【0055】
なお、付勢部材としてはコイルばね6に限られない。
【0056】
また、連結手段31はロックばね部52と孔部42,45とで構成されるものに限られない。
【0057】
なお、上述の実施形態の変形例として、例えば、カバー部材4にカム孔部を設け、可動部材5に突起部を設けて、運動変換手段32を構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1:ハウジング、11:第1の凹部、11a:底面、11b:ガイド面、12:第2の凹部、12a:底面、12b:ガイド面、13:収容部、14:左側壁部、14a:キー、15:隙間、3:カード選別手段、31:連結手段、32:運動変換手段、4:カバー部材、41:窓、42:孔部、43:突起部、44:引掛け部、45:孔部、5:可動部材、51:突出部、51a:傾斜面、52:ロックばね部、52a:鉤部、52b:接触部、52c:ばね部、53:カム孔部、54:引掛け部、6:コイルばね(付勢部材)、81:コンタクト、81a:接触部、82:コンタクト、82a:接触部、83:コンタクト、83a:接触部、91:コンタクト、91a:接触部、92:コンタクト、92a:接触部、17:イジェクト機構、171:イジェクトバー、171a:第1の突当て部、171b:第2の突当て部、100:コネクタ、201:第1のメモリカード(第1のカード型電子部品)、201a:切欠き、202:第2のメモリカード(第2のカード型電子部品)、DH:高さ方向、DI:カード挿入方向、DW:幅方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のカード型電子部品が挿入される第1の凹部と、前記第1の凹部の底面に形成され、前記第1のカード型電子部品よりも幅が小さい第2のカード型電子部品が挿入される第2の凹部とを有するハウジングと、
前記第1の凹部に挿入された前記第1のカード型電子部品の前記ハウジングの高さ方向への移動を規制し、前記第2の凹部に挿入された前記第2のカード型電子部品の前記ハウジングの高さ方向への移動を規制し、前記第1の凹部への前記第1のカード型電子部品の挿入を許容し、前記第1の凹部への前記第2のカード型電子部品の挿入を阻止するカード選別手段とを備え、
前記第1の凹部が、前記第1のカード型電子部品をカード挿入方向へガイドするガイド面を有し、
前記第2の凹部が、前記第2のカード型電子部品を前記カード挿入方向へガイドするガイド面を有している
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記カード選別手段が、
前記第1の凹部を覆うように前記ハウジングに装着されたカバー部材と、
前記カバー部材に形成された窓を通じて前記第1の凹部に突出し、前記第2の凹部に挿入された前記第2のカード型電子部品の上方への動きを阻止するとともに前記第1のカード型電子部品の前記第1の凹部への挿入を阻止する突出部を有し、前記カード挿入方向及び前記高さ方向へ移動可能に前記カバー部材に装着された可動部材と、
前記カバー部材に対して前記可動部材が前記カード挿入方向へ移動したとき、前記可動部材をカード排出方向へ付勢する付勢部材と、
前記カバー部材と前記可動部材とを連結し、前記第1のカード型電子部品の先端部が前記第1の凹部に挿入されたとき前記カバー部材と前記可動部材との連結が解除されて前記可動部材の移動を可能にする連結手段と、
前記カバー部材と前記可動部材との連結が解除されて前記第1のカード型電子部品が前記突出部に突き当たり、前記可動部材が前記第1のカード型電子部品とともに前記カード挿入方向へ移動するとき、前記可動部材の前記カード挿入方向の動きを上方への動きに変換して、前記可動部材を上方へ移動させる運動変換手段と
で構成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記連結手段が、前記可動部材に形成され、前記第1の凹部へ突出するように折れ曲がるロックばね部と、前記カバー部材に形成され、前記ロックばね部の先端部に形成された鉤部と係合可能な孔部とを有し、
前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1のカード型電子部品の先端部が前記第1の凹部に挿入されたとき、前記ロックばね部の鉤部と前記孔部との係合が解除されて、前記カバー部材と前記可動部材との連結が解除され、
前記第1のカード型電子部品が前記第1の凹部から排出されるとき、前記付勢部材の付勢力によって前記可動部材が前記第1のカード型電子部品を挿入する前の位置にもどり、
前記ロックばね部の鉤部と前記孔部とが係合して、前記カバー部材と前記可動部材とが連結される
ことを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記運動変換手段が、前記カバー部材の両側面部にそれぞれ形成された突起部と、前記可動部材の両側面部にそれぞれ形成され、前記可動部材が移動するとき前記突起部が相対摺動するカム孔部とで構成される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項5】
前記運動変換手段が、前記カバー部材の両側面部にそれぞれ形成されたカム孔部と、前記可動部材の両側面部にそれぞれ形成され、前記可動部材が移動するとき前記カム孔部を相対摺動する突起部とで構成される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第1の凹部の底面に前記第1のカード型電子部品に接触する第1の接触部が配置され、
前記第2の凹部の底面に前記第2のカード型電子部品に接触する第2の接触部が前記第1の接触部の前方に配置されている
前記第2の接触部の高さ寸法の値が前記第2の凹部の深さ寸法の値よりも小さい
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−142130(P2012−142130A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292756(P2010−292756)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】