説明

コネクタ

【課題】測定精度を高める。
【解決手段】コネクタ10は、端子金具80が装着される奥壁21、及び奥壁21の周縁部からほぼ直交する方向に突出し、端子金具80の先端部が内部に配置される周壁22を有するフード部20を備えている。フード部20内には、相手コネクタが嵌合される。奥壁21は、この奥壁21の背面から正面に向けて延出し、延出端の一部が奥壁21の正面に開口するとともに、延出端の他部が周壁22の内部に形成された段差面35に臨む孔33を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のコネクタが開示されている。このコネクタは、プリント回路基板に固定される筒状のフード部を備えている。フード部は、高さ方向に沿った奥壁と、奥壁の周縁部から前方に突出する周壁とを有している。奥壁には、端子金具が貫通して装着され、周壁の内部には、端子金具の先端部が配置されている。そして、フード部内には前方から相手コネクタが嵌合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−60067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなフード部を備えるコネクタの場合、フード部の開口側から奥側へ向けて光を照射させ、奥壁の正面で反射される反射光をよみとって奥壁の正面(フード部の奥面)の高さ寸法を測定し、その測定値をフード部の開口端における高さ寸法と比較することにより、フード部の周壁の歪み具合が検査されるようになっている。しかし、フード部の内面のうち、奥壁と周壁とをつなぐ連結部が、例えば、断面アール状に形成されていたりすると、照射光の焦点が合わないため、測定精度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、測定精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、端子金具と、前記端子金具が突出して配置される筒状のフード部とを備え、前記フード部が、高さ方向にほぼ沿った奥壁と、前記奥壁の周縁部から前方に突出する周壁とを有しているコネクタであって、前記奥壁は、その背面から正面に向けて延出する孔を有し、前記孔が、少なくとも前記奥壁の高さ方向両端部に配置され、その延出端の一部が前記奥壁の正面に開口するとともに、その延出端の他部が前記周壁の内部に形成された段差面に臨んでいるところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記フード部の内面のうち、前記奥壁と前記周壁とをつなぐ連結部が、断面アール状に形成され、前記段差面が、前記連結部の前記周壁への連結端より前方に配置されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記フード部が四角筒状に形成され、前記孔が前記フード部の四隅部に配置されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
フード部の奥面高さを測定するに際し、フード部の背面側から孔内に光を照射すると、照射光の一部が奥壁の正面開口を通過して明状態として検知される一方、照射光の他部が段差面に遮られて暗状態として検知される。したがって、フード部の正面側から光を照射する場合と違って、明暗状態をはっきりと区別できる。その結果、フード部の奥面高さを正確に測定することができ、測定精度を高めることができる。
【0010】
<請求項2の発明>
段差面が連結部の周壁との連結端より前方に配置されるため、連結部が断面アール状に形成されているという事情があっても、フード部の奥面高さを正確に測定することができる。
【0011】
<請求項3の発明>
孔がフード部の四隅部に配置されているため、フード部の奥面幅を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るコネクタの背面図である。
【図2】コネクタの正面図である。
【図3】図2のX−X線断面図である。
【図4】コネクタの一部破断平面図である。
【図5】端子金具の平面図である。
【図6】端子金具が装着された奥壁の拡大断面図である。
【図7】他の端子金具の平面図である。
【図8】他のコネクタの図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図9によって説明する。
コネクタ10は、角棒状の端子金具80と、筒状のフード部20とを備えている。フード部20内には、前方から図示しない相手コネクタが嵌合可能とされている。
【0014】
端子金具80は導電性の金属板からなり、図5に示すように、前後方向に細長く延びる形態とされている。端子金具80の前端部は、フード部20内に突出して配置され、相手コネクタとの嵌合時に、相手コネクタに装着された相手端子金具に電気的に接続される端子接続部81を有している。端子金具80の後端部は、フード部20から外部に突出して配置され、図示しないプリント回路基板等と電気的に接続される外部接続部82を有している。端子接続部81の前端及び外部接続部82の後端には、テーパ状の誘い込み部83が窄み形成されている。
【0015】
端子金具80の中間部には、外部接続部82寄りの位置に、一対の張出片84が両側方に張り出して形成されている。両張出片84は、矩形板状をなし、端子金具80の中心軸(幅方向中央)を挟んで左右対称に配置されている。また、端子金具80の中間部には、両張出片84の直後方に、フード部20の奥壁21に貫設された圧入孔31(後述する)に圧入して装着される装着部85が形成されている。
【0016】
装着部85は、端子接続部81寄りの位置で、かつ前後方向(端子金具80の圧入孔31への装着方向)について圧入孔31の開口端と同じ位置に、基準部86を有している。基準部86は、端子接続部81及び外部接続部82における誘い込み部83を除く部分と同幅で連続して形成されている。基準部86の幅方向両側縁は、前後方向に沿って互いに平行に配置されている。
【0017】
また、装着部85における基準部86と両張出片84との間には、複数の凹部87及び複数の凸部88が形成されている。凹部87は、装着部85の幅方向一側端において基準部86の幅領域Wより内側へ凹む形態とされている。言い換えれば、凹部87は、幅方向に関して、基準部86の幅方向一側端より他側へ凹む形態とされている。
そして、凹部87は、図6に示すように、前後方向に複数(図示する場合は2つ)並んで配置され、相互に同形同大とされている。凹部87の内前面には、内側へ行くに従って後退する直線状の第1凹面88が形成され、凹部87の内後面には、外側へ行くに従って後退する曲線状の第2凹面89が形成されている。第1凹面88と第2凹面89とは、曲線状の曲面部94を介して互いに連結されている。 また、第1凹面88は、第2凹面89に比べ前後方向に対して緩い傾斜角とされ、かつ第2凹面89より長くされている。
【0018】
凸部88は、装着部85の幅方向他側端において基準部86の幅領域Wより外側へ突出する形態とされている。言い換えれば、凸部88は、幅方向に関して、基準部86の幅方向他側端より外側方へ突出する形態とされている。そして、凸部88は、前後方向に複数(図示する場合は2つ)並んで配置され、互いに近似する形態とされている。後側の凸部88Rは、前側の凸部88Fより小さいサイズとされ、圧入孔31への挿入時に、挿入抵抗が過大とならないようにされている。
【0019】
凸部88の前面には、ほぼ水平方向に向けられる第1凸面90が形成され、凸部88の後面には、外側へ行くに従って後退する直線状の第2凸面91が形成されている。また、第1凸面90と第2凸面91との間には、前後方向に延びるストレート面92が形成されている。ストレート面92と第2凸面91との連結位置には、先鋭なエッジ部93が形成されている。そして、第1凸面90は、第2凸面91より短くされている。
【0020】
また、前後の凸部88間、及び前側の凸部88の直前方には、基準部86の幅領域Wより内側へ凹む凹所95が形成されている。凹所95は、ほぼU字状をなし、後側のほうが前側より深くされている。
そして、凸部88と凹部87とは、前後方向(端子金具80の長さ方向であって、装着部85の圧入孔31への挿入方向)に関して互いに重なり合う位置に配置されている。つまり、凸部88と凹部87とは、端子金具80の軸中心を挟んだ両側の対向位置に配置されている。
【0021】
続いて、フード部20について説明すると、フード部20は合成樹脂製であって、図1ないし図3に示すように、全体として幅方向に細長い扁平な四角筒状をなしている。そして、フード部20は、上下方向(高さ方向)にほぼ沿って配置される奥壁21と、奥壁21の周縁部から前方に突出して配置される周壁22とを有している。周壁22は、下壁23、上壁24、左右一対の側壁25からなる。また、フード部20の内面には、奥壁21と周壁22とをつなぐ断面アール状(曲面状)の連結部26が形成されている。
【0022】
両側壁25の外面後端部には、図示しないプリント回路基板等の取付対象に固定する一対の固定部27が両側外方に突出して形成されている。両固定部27には図示しないボルトを挿入可能な円形の挿入孔28が開口して形成され、コネクタ10はボルトを介して取付対象に固定されるようになっている。
フード部20の上壁24内面の幅方向中央部には、ロック部29が突出して形成されている。ロック部29は、フード部20内に相手コネクタが嵌合されたときに、相手コネクタを係止して、両コネクタを嵌合状態に保持する役割を有している。また、奥壁21の下壁23寄りの幅方向中央部には、ロック部29と対向する位置に、スリット状の肉抜き孔30が形成されている。この肉抜き孔30によってフード部20の反りが低減されるようになっている。
【0023】
奥壁21には、図4に示すように、複数の圧入孔31が形成されている。圧入孔31は、上下2段でかつ幅方向に多数列となって配置されている。圧入孔31の前方には、両張出片84を受ける一対の受け溝32が幅方向両側に拡開して形成されている。受け溝32は、張出片84と対応する矩形状をなし、奥壁21の前面(正面であってフード部20の奥面)に開口している。なお、圧入孔31の開口端は、装着部85による圧入動作が開始される始端位置に相当し、受け溝32の直後方に位置している。
【0024】
ここで、奥壁21の圧入孔31には端子金具80が前方から圧入される。圧入の過程では、凸部88が圧入孔31の内面を摺動するものの、凹部87が圧入孔31の内面に接触することは実質的にない。このとき、端子金具80は、凸部88側からの圧入反力を受けて幅方向一側へ押圧される。
【0025】
装着部85が圧入孔31内に正規挿入されると、図6に示すように、両張出片84が受け溝32内に嵌合されるとともに、基準部86が圧入孔31の開口端に配置される。また、装着部85が圧入孔31内に正規挿入されると、エッジ部93が圧入孔31の内面に食い込み、凸部88が圧入孔31の内面に係止される。また、凸部88からの圧入反力を受けて、装着部85の幅方向一側端が圧入孔31の内面に緊密に圧着し、圧入孔31の内面が凹部87内に入り込むように弾性的に変形する。これにより、装着部85は幅方向両側で圧入孔31の内面に係止される。
【0026】
また、フード部20の四隅部には、それぞれ、奥壁21を厚み方向(前後方向)に貫通する孔33が形成されている。各孔33は、図1ないし図3に示すように、断面矩形状、詳細には断面正方形状をなし、奥壁21の後面(背面)から前方へほぼ水平に延出して形成されている。そして、各孔33の延出端は、奥壁21の前面に開口する開口部34と、周壁22の内部に形成された段差面35に臨む閉止部36とからなる。閉止部36(段差面35)は、上壁24又は下壁23と側壁25とに跨って配置され、背面視L字状をなし(図1を参照)、開口部34は、閉止部36を除く部分で、正面視矩形状、詳細には正面視正方形状をなしている(図2を参照)。正面から見れば、開口部34のみが視認され、閉止部36は周壁22によって隠蔽される。また、閉止部36は、連結部26が周壁22の内面に連なる連結端37より少し前方に配置されている。したがって、閉止部36が連結部26に連なることはない。
【0027】
さて、本実施形態の場合、フード部20の奥面高さH1と開口高さH2とが測定され、両測定値の比較に基づいて、フード部20の歪み具合が検査される。フード部20の奥面高さH1を測定する際には、光学的な手法が用いられる。
【0028】
この場合、フード部20の後方に図示しない測定器の光源が設置され、フード部20に対して後方から光100が照射される。光100は、孔33内を通り、一部は開口部34を通過してフード部20の正面側で明状態として検知され、他部は段差面35に干渉して暗状態として検知される。したがって、フード部20の高さ方向両側に位置する孔33の明暗状態を確認することにより、フード部20の奥面高さH1を測定することが可能となる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係るコネクタ10によれば、次の効果を奏し得る。
【0030】
フード部20の奥面高さH1を測定するに際し、フード部20の背面側から孔33内に光100を照射すると、光100の一部が開口部34を通過して明状態として検知される一方、光100の他部が段差面35に遮られて暗状態として検知される。したがって、フード部20の正面側から光100を照射する場合と違って、明暗状態をはっきりと区別できる。その結果、フード部20の奥面高さH1を正確に測定することができ、測定精度が高められる。
【0031】
また、段差面35が連結部26の周壁22との連結端37より前方に配置されるため、連結部26が断面アール状に形成されているという事情があっても、フード部20の奥面高さH1を正確に測定することができる。
【0032】
さらに、孔33がフード部20の四隅部のそれぞれに配置されているため、フード部20の奥面幅を測定することもできる。
【0033】
なお、図8に示すように、フード部20Aの内面に、断面アール状の連結部26に代わって、奥壁21Aと周壁22Aとがほぼ直交してなる断面L字状の連結部26Aを有していてもよい。この場合、段差面35Aが、奥壁21Aの前面と面一で段差なく連続する形態とされる。
【0034】
また、本実施形態に係る端子金具80によれば、次の効果を奏し得る。
装着部85の幅方向他側端には、基準部86の幅領域Wより外側へ突出する凸部88が形成されているため、凸部88が圧入孔31の内面にしっかりと係止される。一方、装着部85の幅方向一側端には、基準部86の幅領域Wより内側へ凹む凹部87が形成されているため、凸部88の係止に伴う圧入反力によって凹部87内に圧入孔31の内面が食い込み可能となる。したがって、凸部88と凹部87とで装着部85が圧入孔31内に確実に係止され、コネクタ10に対する端子金具80の保持力が高められる。また、凹部87が基準部86の幅領域Wより内側へ凹む形態とされているため、端子金具80の大型化が回避される。
【0035】
さらに、凸部88と凹部87とが、前後方向について互いに重なり合う位置に配置されているため、凸部88の係止に伴う圧入反力が凹部87側に効率良く伝わり、凹部87内に圧入孔31の内面を大きく食い込ませることができる。
【0036】
なお、図7に示すように、端子金具80Aの凹部87Aは、装着部85Aの幅方向一側端に一つだけ形成されるものであってもよい。図示する凹部87Aは、断面円弧状をなし、装着部85の幅方向他側端に形成された前側の凸部88と前後方向について重なり合う位置に配置されている。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)端子金具は、長さ方向途中でほぼ直角に屈曲され、全体としてほぼL字状をなすものであってもよい。
(2)端子金具は、奥壁の圧入孔に後方から圧入して装着されるものであってもよい。
(3)孔の形状は任意であり、例えば、断面円形状であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…コネクタ
20…フード部
21…奥壁
22…周壁
26…連結部
31…圧入孔
33…孔
35…段差面
37…連結端
80…端子金具
85…装着部
86…基準部
87…凹部
88…凸部
W…幅領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具と、前記端子金具が突出して配置される筒状のフード部とを備え、前記フード部が、高さ方向にほぼ沿った奥壁と、前記奥壁の周縁部から前方に突出する周壁とを有しているコネクタであって、
前記奥壁は、その背面から正面に向けて延出する孔を有し、
前記孔が、少なくとも前記奥壁の高さ方向両端部に配置され、その延出端の一部が前記奥壁の正面に開口するとともに、その延出端の他部が前記周壁の内部に形成された段差面に臨んでいることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記フード部の内面のうち、前記奥壁と前記周壁とをつなぐ連結部が、断面アール状に形成され、前記段差面が、前記連結部の前記周壁との連結端より前方に配置されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記フード部が四角筒状に形成され、前記孔が前記フード部の四隅部に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−146410(P2012−146410A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2035(P2011−2035)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)