説明

コネクタ

【課題】小型化を図る。
【解決手段】リテーナ40は、片持ち状の仮係止用アーム部43と本係止用アーム部48を有する。仮係止位置のリテーナ40は、本係止用アーム部48がハウジング10の突起部20に当接することにより、本係止位置側への移動を規制され、リテーナ40が仮係止位置から本係止位置へ移動する過程では、本係止用アーム部48が突起部20と干渉して仮係止用アーム部43に接近するように弾性変形する。本係止用アーム部48と仮係止用アーム部43は、本係止用アーム部48が突起部20と干渉して弾性撓みしたときに互いに当接することで、それ以上の本係止用アーム部48の弾性撓みを抑制する撓み抑制部としての当接部52と受け部47を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、端子金具が挿入されるハウジングと、ハウジングに取り付けられるリテーナとを備え、ハウジングに取り付けられたリテーナが、端子金具の挿抜を許容する仮係止位置と、挿入済みの端子金具を抜止めする本係止位置との間で移動可能とされたコネクタが開示されている。リテーナには、移動方向と略平行に延出する仮係止用アーム部と本係止用アーム部とが並ぶように形成され、両アーム部の間は各アーム部が弾性撓みするための撓み空間となっている。
【0003】
リテーナが仮係止位置にある状態では、仮係止用アーム部がハウジングに係止することにより、リテーナの本係止位置とは反対方向への移動が規制されるとともに、本係止用アーム部がハウジングの突起部に当接することにより、リテーナの本係止位置側への移動が規制される。また、リテーナが仮係止位置から本係止位置へ移動する過程では、本係止用アーム部が突起部と干渉して仮係止用アーム部に接近するように弾性変形し、リテーナが本係止位置に到達すると、本係止用アーム部が弾性復帰して突起部に係止することにより、リテーナが本係止位置に保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−123029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このコネクタは、組み付けの際に、予めリテーナを仮係止位置に保持しておき、端子金具を挿入した後で、リテーナを本係止位置へ移動させるようになっているため、リテーナが不用意に本係止位置へ移動してしまうのを防止する手段として、本係止用アーム部の延出端部を仮係止用アーム部の延出端部に連結した形態としている。このように本係止用アーム部を両持ち梁形態にすれば、片持ち梁状の本係止用アーム部に比べて、本係止用アーム部の撓み剛性が高められるので、その分、弾性撓みし難くなり、不用意にリテーナが本係止位置へ移動させられるのを回避することが可能となる。
【0006】
しかしながら、本係止用アーム部は、両持ち梁形態にすると剛性が極端に高くなるので、本係止用アーム部の延出長が短いと、リテーナを仮係止位置から本係止位置へ移動させる過程で、本係止用アーム部が、その弾性限度を超えて塑性変形を来すことが懸念される。そのため、塑性変形を回避するためには、本係止用アーム部の延出長を長くする必要があり、その分、ハウジング内におけるリテーナの収容空間を大きく確保しなければならず、ひいては、ハウジングの大型化を来すことになる。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、端子金具が挿入されるハウジングと、前記ハウジングに取り付けられるリテーナとを備え、前記ハウジングに取り付けられた前記リテーナが、前記端子金具の挿抜を許容する仮係止位置と、挿入済みの前記端子金具を抜止めする本係止位置との間で移動可能とされており、前記リテーナには、仮係止位置から本係止位置への移動方向と略同方向へ片持ち状に延出する仮係止用アーム部と本係止用アーム部とがスペースを空けて並ぶように形成されており、前記リテーナが仮係止位置にある状態では、前記仮係止用アーム部と前記ハウジングとの係止によって前記リテーナの本係止位置とは反対方向への移動が規制されるとともに、前記本係止用アーム部が前記ハウジングの突起部に当接することによって、前記リテーナの本係止位置側への移動が規制され、前記リテーナが仮係止位置から本係止位置へ移動する過程では、前記本係止用アーム部が前記突起部と干渉して前記仮係止用アーム部に接近するように弾性変形して、前記リテーナが本係止位置に到達すると、前記本係止用アーム部が弾性復帰して前記突起部に係止することによって前記リテーナが本係止位置に保持されるようになっているコネクタにおいて、前記本係止用アーム部と前記仮係止用アーム部は、前記本係止用アーム部が前記突起部と干渉して弾性撓みしたときに互いに当接することで、それ以上の前記本係止用アーム部の弾性撓みを抑制する撓み抑制部を有しているところに特徴を有する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記本係止用アーム部には、前記突起部と干渉する干渉部が形成され、前記撓み抑制部が、前記干渉部に対し、前記本係止用アーム部の延出方向にずれた位置に配置されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
リテーナが仮係止位置から本係止位置へ移動する過程では、本係止用アーム部が仮係止用アーム部に接近して撓み抑制部同士が当接することにより、本係止用アーム部が、見かけ上両持ち梁形態となって撓み剛性が高まる。これにより、それ以上の本係止用アーム部の弾性撓みが抑制されるので、リテーナが不用意に本係止位置へ移動してしまうことを防止できる。
【0011】
本係止用アーム部の延出端部を仮係止用アーム部に連結した場合には、突起部との干渉時における本係止用アーム部の最大変位部位が、延出方向における略中央部となるため、本係止用アーム部の塑性変形を回避するためには、本係止用アーム部の延出長を長くする必要がある。これに対し本発明では、本係止用アーム部が片持ち梁形態であってもその撓み剛性を高めることができるので、両持ち梁形態に比べて本係止用アーム部の延出長を短くすることができる。
【0012】
<請求項2の発明>
リテーナが仮係止位置から本係止位置へ移動する過程では、干渉部が突起部と干渉して本係止用アーム部が弾性撓みを開始した後に、撓み抑制部同士が当接して本係止用アーム部の見かけ上の撓み剛性が高まり、それ以降は、干渉部と突起部との干渉によって本係止用アーム部が更に弾性撓みする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の第1コネクタの断面図
【図2】第1コネクタにおいてリテーナを仮係止位置に組み付けられた状態をあらわす断面図
【図3】リテーナの平面図
【図4】リテーナの側面図
【図5】リテーナの背面図
【図6】リテーナが仮係止位置に保持されている状態をあらわす断面図
【図7】リテーナが仮係止位置から本係止位置へ移動する過程をあらわす断面図
【図8】リテーナが本係止位置に保持されている状態をあらわす断面図
【図9】第1コネクタと第2コネクタの嵌合状態をあらわす断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図9を参照して説明する。図9は、第1コネクタF(本発明のコネクタ)と第2コネクタMを嵌合した状態を示す。第1コネクタFは、ブロック状をなす合成樹脂製のハウジング10と、ハウジング10内に挿入される複数の雌端子金具30(本発明の構成要件である端子金具)と、挿入済みの複数の雌端子金具30を抜止めするための合成樹脂製のリテーナ40とを備えている。
【0015】
ハウジング10には、その上面に沿って後方(第2コネクタMに対する嵌合方向と反対の方向)へ片持ち状に延出した形態のロックアーム11が形成されている。ロックアーム11の上面には、ロック突起12が形成されている。ロック突起12は、後方に面するロック用係止面13と、第2コネクタMへの嵌合方向に対して傾斜した摺動面14が形成されている。摺動面14には、ロックアーム11の外面のうち摺動面14以外の領域に比べて表面粗さを低下させた鏡面加工が施されている。
【0016】
第2コネクタMは、合成樹脂製の端子保持部60と、端子保持部60から前方へ突出する合成樹脂製のフード部61と、端子保持部60に取り付けられる雄端子金具(図示省略)とを備えている。フード部61を構成する上壁部には、フード部61の内面側(下方)へ突出した形態のロック用突部62が形成されている。ロック用突部62の突出端面(下端面)には、両コネクタF,Mの嵌合方向に対して傾斜したガイド斜面63が形成されている。ガイド斜面63の表面粗さは、鏡面処理された摺動面14よりも粗くなっている。
【0017】
両コネクタF,Mを嵌合する過程では、ハウジング10がフード部61内に進入し、ロック突起12の摺動面14がガイド斜面63に摺接するのに伴ってロックアーム11が下方(ハウジング10の上面に接近する方向)へ弾性撓みする。この間、摺動面14とガイド斜面63との間には、ロックアーム11の弾性復元力に起因する摺動抵抗が生じるのであるが、本実施形態では、摺動面14に鏡面処理を施しているので、摺動面14とガイド斜面63(ロック用突部62)との間の摺動抵抗が低減され、嵌合作業性の向上が図られている。そして、両コネクタF,Mが正規の嵌合状態に至ると、ロック突起12がロック用突部62を通過し終わるので、ロックアーム11が弾性復帰し、ロック突起12のロック用係止面13がロック用突部62に係止し、この係止作用により、正規嵌合されている両コネクタF,Mが離脱規制状態にロックされる。
【0018】
図1,2に示すように、第1コネクタFのハウジング10には、雌端子金具30を後方から挿入するための複数の端子収容室15が上下2段に分かれて形成されている。上段側の端子収容室15には、その上面壁に沿って前方へ片持ち状に延出するランス16が形成され、下段側の端子収容室15には、その下面壁に沿って前方へ片持ち状に延出するランス16が形成されている。上段側の端子収容室15内に後方から雌端子金具30が挿入する過程では、ランス16が雌端子金具30との干渉によって上方(後述する上段側の第1収容部18内)へ弾性撓みし、下段側の端子収容室15内に後方から雌端子金具30が挿入する過程では、ランス16が雌端子金具30との干渉によって下方(後述する下段側の第1収容部18内)へ弾性撓みする。そして、図1に示すように、雌端子金具30が正規位置まで挿入されると、ランス16が弾性復帰して雌端子金具30と係止することにより、雌端子金具30が後方への移動を規制された抜止め状態に保持される。
【0019】
ハウジング10には、リテーナ40を前方から収容するためにハウジング10の前端面に開放された収容空間17が形成されている。収容空間17は、図1,2に示すように、上段側のランス16の上面に望む上段側の第1収容部18と、下段側のランス16の上面に望む下段側の第1収容部18と、高さ方向においてハウジング10の略中央部に位置する第2収容部19(図6〜8を参照)とから構成されている。上下両第1収容部18は、ランス16が雌端子金具30との係止を解除する方向へ弾性撓みするのを許容するための撓み空間としての機能も兼ね備えている。
【0020】
図6〜8に示すように、第2収容部19の内壁面における一方の側面には、突起部20が形成され、他方の側面には、抜止部23が形成されている。突起部20と抜止部23は、ほぼ同じ高さに配置されて、互いに対向するように突出している。突起部20の前面は、前後方向(ハウジング10に対するリテーナ40の組付け方向と平行な方向)に対して傾斜した仮係止用受け面21となっており、突起部20の後面は、前後方向に対して傾斜した本係止用受け面22となっている。抜止部23の前面は、前後方向に対して傾斜した組付用案内面24となっており、抜止部23の後面は、前後方向に対して略直角な抜止め用当接面25となっている。尚、ハウジング10に対するリテーナ40の組付け方向は、ハウジング10に対する雌端子金具30の挿入方向とは前後逆向きの方向である。
【0021】
図3〜5に示すように、リテーナ40は、左右方向に長い板状をなす本体部41と、本体部41の後面から上下2段に分かれて各端子収容室15のランス16(第1収容部18)と対応するように板状に突出した形態の複数の撓み規制部42と、本体部41の後面から第2収容部19と対応するように片持ち状に突出した形態の仮係止用アーム部43と、同じく本体部41の後面から第2収容部19と対応するように片持ち状に突出した形態の本係止用アーム部48とを備えて構成されている。
【0022】
仮係止用アーム部43と本係止用アーム部48の突出方向は、いずれも、ハウジング10に対するリテーナ40の組付け方向と略同じ方向である。また、仮係止用アーム部43と本係止用アーム部48は、ほぼ同じ高さ(つまり、突起部20及び係止突起44と対応する高さ)に配置され、左右方向(ハウジング10に対するリテーナ40の組付け方向と略直角な方向)に撓み用スペース53を空けて並ぶように配置されている。この撓み用スペース53は、仮係止用アーム部43と本係止用アーム部48の弾性撓みを許容するための空間である。
【0023】
仮係止用アーム部43は、その基端部(本体部41に連なる前端部)を支点として撓み用スペース53内へ進出するように左右方向へ弾性撓みし得るようになっている。仮係止用アーム部43が弾性撓みするとき、仮係止用アーム部43の変位量は、延出端部43E(後端部)において最大となる。本係止用アーム部48は、その基端部(本体部41に連なる前端部)を支点として撓み用スペース53内へ進出するように左右方向へ弾性撓みし得るようになっている。本係止用アーム部48が弾性撓みするとき、本係止用アーム部48の変位量は、延出端部48E(後端部)において最大となる。
【0024】
図3,6〜8に示すように、仮係止用アーム部43の延出端部43Eには、その本係止用アーム部48とは反対側の側面から突出する係止突起44が形成されている。係止突起44の前面は、リテーナ40の組付け方向に対して略直角な抜止め用係止面45となっており、係止突起44の後面は、リテーナ40の組付け方向に対して傾斜した組付用傾斜面46となっている。仮係止用アーム部43の左右両側面のうち本係止用アーム部48と対向する側の側面の延出端部43Eは、受け部47(本発明の構成要件である仮係止用アーム部の撓み抑制部)となっている。
【0025】
本係止用アーム部48の延出端部48Eよりも基端側の位置には、その仮係止用アーム部43とは反対側の側面から突出する干渉部49が形成されている。干渉部49の前面は、リテーナ40の組付け方向に対して傾斜した本係止用当接面50となっており、干渉部49の後面は、リテーナ40の組付け方向に対して傾斜した仮係止用当接面51となっている。本係止用アーム部48の左右両側面のうち仮係止用アーム部43と対向する側の側面の延出端部48Eは、当接部52(本発明の構成要件である本係止用アーム部の撓み抑制部)となっている。
【0026】
次に、本実施形態の作用を説明する。第1コネクタFを組み付ける際には、まず、リテーナ40をハウジング10に対して前方から組付け、仮係止位置(図2,6を参照)に保持する。組付ける際には、撓み規制部42を第1収容部18内に進入させるとともに、仮係止用アーム部43と本係止用アーム部48を第2収容部19内に進入させる。組付けの過程では、仮係止用アーム部43の係止突起44の組付用傾斜面46が、ハウジング10の抜止部23の組付用案内面24に摺接し、これに伴って仮係止用アーム部43が撓み用スペース53内に進入するように弾性撓みする。そして、リテーナ40が仮係止位置に到達すると、係止突起44が抜止部23を通過し終わるので、仮係止用アーム部43が弾性復帰し、仮係止用アーム部43の抜止め用係止面45が抜止部23の抜止め用当接面25に係止し、この係止作用により、リテーナ40は、前方へ外れる方向の移動を規制される。
【0027】
また、リテーナ40が仮係止位置に到達すると、本係止用アーム部48の干渉部49の仮係止用当接面51が、ハウジング10の仮係止用受け面21に当接又は接近して対向し、これにより、リテーナ40が仮係止位置よりも奥側(後方)へ押し込まれることを規制される。この仮係止用当接面51と仮係止用受け面21は、いずれも、リテーナ40の組付け方向に対して傾斜しているので、このリテーナ40の移動規制はセミロック構造によって行われていることになる。以上により、リテーナ40が仮係止位置に保持される。また、リテーナ40が仮係止位置にあるときは、図2に示すように、撓み規制部42がランス16の前端(延出端)よりも前方へ退避しているので、ランス16の弾性撓みが可能となっている。リテーナ40を仮係止位置に組み付けた後、各端子収容室15に、夫々、雌端子金具30を挿入する。挿入された雌端子金具30は、ランス16の一次係止作用によって抜止め状態に保持される。
【0028】
雌端子金具30の挿入が完了した後は、仮係止位置のリテーナ40を本係止位置へ押し込むように後方へ移動させる。リテーナ40が本係止位置に移動すると、図1に示すように、撓み規制部42が第2収容部19のうちランス16と対向する位置まで深く進入し、この撓み規制部42により、ランス16は、雌端子金具30から解離する方向への弾性撓みを規制される。このリテーナ40の二次係止作用とランス16の一次係止作用とにより、雌端子金具30は、確実に抜止め状態にロックされる。
【0029】
リテーナ40が本係止位置へ移動する過程では、本係止用アーム部48の干渉部49がハウジング10の突起部20と干渉し、本係止用アーム部48の仮係止用当接面51とハウジング10の仮係止用受け面21とが干渉することによって、本係止用アーム部48が撓み用スペース53内に進入するように(仮係止用アーム部43に接近するように)弾性撓みする(図7を参照)。そして、干渉部49と突起部20とが干渉している間に、本係止用アーム部48の当接部52が仮係止用アーム部43の受け部47に当接し、この当接作用によって、本係止用アーム部48のそれ以上の弾性撓みが抑制され、本係止用アーム部48は、その基端部(前端部)と後端部(延出端部48E)との前後2箇所において両持ち梁形態となり、本係止用アーム部48の見かけ上の撓み剛性が高められる。
【0030】
そのため、この状態からリテーナ40の本係止位置側への組付けを進めるためには、より強い操作力(押込力)が必要となる。これ以降は、押込みを進めるのに伴い、本係止用アーム部48の弾性撓み量が増えた状態で干渉部49と突起部20が摺接する。そして、リテーナ40が本係止位置へ移動すると、図8に示すように、本係止用アーム部48の本係止用当接面50がハウジング10の本係止用受け面22に対して後方から当接することにより、リテーナ40は仮係止位置側への移動(戻り)を規制される。尚、本係止用当接面50と本係止用受け面22は、いずれも、リテーナ40の組付け方向に対して傾斜しているので、リテーナ40の戻り規制は、セミロック構造によって行われていることになる。リテーナ40を本係止位置へ移動させると、第1コネクタFの組付けが完了する。
【0031】
本実施形態の第1コネクタFは、リテーナ40が片持ち状の仮係止用アーム部43と本係止用アーム部48とを有しており、仮係止位置のリテーナ40は、本係止用アーム部48がハウジング10の突起部20に当接することにより、本係止位置側への移動を規制される。また、リテーナ40が仮係止位置から本係止位置へ移動する過程では、本係止用アーム部48が突起部20と干渉して仮係止用アーム部43に接近するように弾性変形する。そして、本係止用アーム部48と仮係止用アーム部43には、夫々、本係止用アーム部48が突起部20と干渉して弾性撓みしたときに互いに当接することで、それ以上の本係止用アーム部48の弾性撓みを抑制する撓み抑制部として当接部52と受け部47とが形成されている。
【0032】
したがって、仮係止位置に保持されているリテーナ40に対して前方から異物の干渉などによる不測の押込力が作用した場合には、リテーナ40が本係止位置に到達する前に、本係止用アーム部48の当接部52が仮係止用アーム部43の受け部47に当接することにより、本係止用アーム部48の見かけ上の撓み剛性が高められ、その時点で、それ以上、リテーナ40が本係止位置側へ押し込まれないようになっている。
【0033】
本実施形態の効果は次の通りである。もし、本係止用アーム部の延出端部を仮係止用アーム部に連結した場合には、突起部との干渉時における本係止用アーム部の最大変位部位が、延出方向における略中央部となるため、本係止用アーム部の塑性変形を回避するためには、本係止用アーム部の延出長を長くする必要がある。これに対し本実施形態では、本係止用アーム部48が片持ち梁形態であってもその撓み剛性を高めることができるので、上記のような両持ち梁形態のものに比べると、本係止用アーム部48の延出長を短くすることが可能となっており、ひいては、第1コネクタFの小型化が可能となっている。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、リテーナを本係止位置に保持する手段として、リテーナを仮係止位置へ移動する際にロック解除操作が不要なセミロック構造を用いたが、仮係止位置へ移動する際にロック解除操作が必要なロック構造によってリテーナを本係止位置に保持してもよい。
(2)上記実施形態では、撓み抑制部を本係止用アーム部の延出端部に配置したが、撓み抑制部は、本係止用アーム部の延出端部よりも基端部に近い位置に配置してもよい。
(3)上記実施形態では、突起部との干渉部を本係止用アーム部の延出端部よりも基端側に配置した上で、撓み抑制部を本係止用アーム部の延出端部に配置したが、撓み抑制部、干渉部よりも基端側に配置してもよい。この場合、干渉部が、本係止用アーム部の延出端部に配置されていてもよい。
(4)上記実施形態では、リテーナの仮係止位置から本係止位置への移動方向が、端子金具の挿入方向とは反対の方向であったが、リテーナの仮係止位置から本係止位置への移動方向は、端子金具の挿入方向と交差する方向でもよい。
【0035】
(5)上記実施形態では、リテーナがランスの弾性撓みを規制することによって間接的に端子金具を抜止めしたが、リテーナが直接端子金具に係止することによって、端子金具を抜止めするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
F…第1コネクタ(コネクタ)
10…ハウジング
20…突起部
30…雌端子金具(端子金具)
40…リテーナ
43…仮係止用アーム部
47…受け部(仮係止用アーム部の撓み抑制部)
48…本係止用アーム部
48E…本係止用アーム部の延出端部
49…干渉部
52…当接部(本係止用アーム部の撓み抑制部)
53…撓み用スペース(仮係止用アーム部と本係止用アーム部との間のスペース)空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具が挿入されるハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられるリテーナとを備え、
前記ハウジングに取り付けられた前記リテーナが、前記端子金具の挿抜を許容する仮係止位置と、挿入済みの前記端子金具を抜止めする本係止位置との間で移動可能とされており、
前記リテーナには、仮係止位置から本係止位置への移動方向と略同方向へ片持ち状に延出する仮係止用アーム部と本係止用アーム部とがスペースを空けて並ぶように形成されており、
前記リテーナが仮係止位置にある状態では、前記仮係止用アーム部と前記ハウジングとの係止によって前記リテーナの本係止位置とは反対方向への移動が規制されるとともに、前記本係止用アーム部が前記ハウジングの突起部に当接することによって、前記リテーナの本係止位置側への移動が規制され、
前記リテーナが仮係止位置から本係止位置へ移動する過程では、前記本係止用アーム部が前記突起部と干渉して前記仮係止用アーム部に接近するように弾性変形して、前記リテーナが本係止位置に到達すると、前記本係止用アーム部が弾性復帰して前記突起部に係止することによって前記リテーナが本係止位置に保持されるようになっているコネクタにおいて、
前記本係止用アーム部と前記仮係止用アーム部は、前記本係止用アーム部が前記突起部と干渉して弾性撓みしたときに互いに当接することで、それ以上の前記本係止用アーム部の弾性撓みを抑制する撓み抑制部を有していることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記本係止用アーム部には、前記突起部と干渉する干渉部が形成され、
前記撓み抑制部が、前記干渉部に対し、前記本係止用アーム部の延出方向にずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−150918(P2012−150918A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7026(P2011−7026)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】