説明

コネクタ

【課題】ロック片を正規の姿勢で弾性変形させる。
【解決手段】雌型端子24を収容する雌側ハウジング20と、この雌側ハウジング20に装着可能なリテーナ40を備えたコネクタ10であって、リテーナ40は、雌側ハウジング20に設けられたリテーナ装着孔27に挿入されて雌型端子24を抜け止めする抜け止め部41と、抜け止め部41と一体に形成された基体45から立ち上がった形態で抜け止め部41の挿入方向と交差する方向に抜け止め部41に隣接して配され、雌側ハウジング20に形成された仮係止突起30および本係止突起31に乗り上げることで基体45と連結する基端部を支点に弾性変形して、弾性復帰することで仮係止突起30および本係止突起31と係止するロック片46とを備えており、ロック片46は抜け止め部41と切り離されているところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタハウジングに後方から収容された端子金具を後方に抜け止めする合成樹脂製のリテーナを備えたコネクタとして、下記特許文献1に記載のものが知られている。
このリテーナは、コネクタハウジングの底部に開口して設けられたリテーナ挿入部内に挿入して端子金具を後方から抜け止めする抜け止め部と、抜け止め部の幅方向両端部から上方に立ち上がる一対のロック片とを備えて構成されている。
ロック片は、コネクタハウジングの幅方向両側に位置する側面に沿うようにして抜け止め部よりも前方に延びた形態をなし、抜け止め部と一体に形成されている。ロック片の上端縁には、コネクタハウジングにおけるリテーナ挿入部の前方に突設されたロック部に係止可能な係止爪が形成されており、抜け止め部がリテーナ挿入部に挿入される際に、ロック片がロック部に乗り上げて弾性的に拡開し、弾性復帰することで係止爪とロック部とが係止して、リテーナがコネクタハウジングに固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−222758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のコネクタによると、ロック片が抜け止め部の前方に抜け止め部と一体に形成されていることから、ロック片がロック部に乗り上げると、ロック片が抜け止め部を支点に斜め前上方に弾性的に拡開することになり、ロック片がロック部に対して正規の姿勢と異なる斜め前方に弾性変形した姿勢となって、ロック片とロック部とが点接触した状態になってしまう。このため、リテーナ挿入部に対して抜け止め部が挿抜されると、ロック片とロック部とが点接触する部分が削れてしまい、ロック爪とロック部との係止状態が不安定になってしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ロック片を正規の姿勢で弾性変形させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、端子金具を収容するコネクタハウジングと、このコネクタハウジングに装着可能なリテーナとを備えたコネクタであって、前記リテーナは、前記コネクタハウジングに設けられたリテーナ装着孔に挿入されて前記端子金具を抜け止めする抜け止め部と、前記抜け止め部と一体に形成された基体から立ち上がった形態で前記抜け止め部の挿入方向と交差する方向に前記抜け止め部に隣接して配され、前記コネクタハウジングに形成されたロック部に乗り上げることで前記基体と連結する部分を支点に弾性変形し、弾性復帰することでロック部と係止するロック片とを備えており、前記ロック片は前記抜け止め部と切り離されているところに特徴を有する。
このような構成のコネクタによると、ロック片が抜け止め部と切り離されて形成されているので、抜け止め部に影響されることなく、ロック片を独立して弾性変形させることができる。これにより、ロック片がロック部に対して正規の姿勢とは異なる方向に弾性変形することを防ぎ、ロック片及びロック部が摩耗してしまうことを抑制することができる。ひいては、ロック部とロック片との係止状態を安定させることができる。
【0007】
前記抜け止め部と前記ロック片とが互いに隣り合う位置には、スリットが形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、ロック片を抜け止め部と干渉させることなく、弾性変形させることできる。これにより、抜け止め部とロック片とが密接して形成されている場合に比べて、ロック片を正規の姿勢に弾性変形し易くすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロック片を正規の姿勢で弾性変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】雌側ハウジングにリテーナが仮係止位置に保持された状態を示す側面図
【図2】雌側ハウジングにリテーナが仮係止位置に保持された状態を示す底面図
【図3】雌側ハウジングにリテーナが仮係止位置に保持された状態を示す縦断面図
【図4】図1のA−A線断面図
【図5】リテーナを斜め後方から見た斜視図
【図6】リテーナの側面図
【図7】リテーナの背面図
【図8】雌側ハウジングにリテーナが本係止位置に保持された状態を示す縦断面図
【図9】雌側ハウジングにリテーナが本係止位置に保持された状態であって、図1のA−A位置の断面に相当する断面図
【図10】リテーナが本係止突起に乗り上げた状態であって、図1のA−A位置の断面に相当する断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図10を参照して説明する。
本実施形態は、雄側ハウジングの図示しない収容部内に嵌合可能な合成樹脂製の雌側ハウジング(本発明の「コネクタハウジング」の一例)20と、この雌側ハウジング20に収容される雌型端子(本発明の「端子金具」の一例)24を抜け止めする合成樹脂製のリテーナ40とを備えたコネクタ10を例示している。
【0011】
雌側ハウジング20は、図1及び図3に示すように、大まかには前後方向に縦長なブロック状に形成されている。雌側ハウジング20の上部には前方から後方に向かって片持ち状に延びるロックアーム21が形成されている。ロックアーム21は、上下方向に弾性変形可能に形成されており、ロックアーム21の上面には、雄側ハウジングの収容部内に形成された図示しない被係止部に係止可能な係止突起21Aが形成されている。雌側ハウジング20が雄側ハウジングの収容部内に嵌合されると、ロックアーム21が弾性変形し、雌側ハウジング20と雄側ハウジングの収容部とが正規に嵌合されると、ロックアーム21が弾性復帰することで、係止突起21Aと被係止部とが係止して、雌側ハウジング20と雄側ハウジングとが嵌合状態に保持されるようになっている。
【0012】
雌側ハウジング20の内部には、図3及び4に示すように、雌側ハウジング20の幅寸法よりもやや幅狭な端子収容部22が形成されている。端子収容部22は、前後方向に貫通した形態のキャビティ23を複数有している。キャビティ23は、図4に示すように、上下方向及び幅方向に複数並んで形成されており、キャビティ23内には、図3に示すように、電線Wの端末に接続された雌型端子24が後方から収容可能とされている。
【0013】
雌型端子24は、その前部が角筒状の接続部25とされ、後部が電線Wの端末に圧着されている。雌型端子24は、接続部25がキャビティ23の内壁から前方に向かって片持ち状に延びるランス26によって後方から係止されることで、キャビティ23内に抜け止めされている。
【0014】
そして、雌側ハウジング20と雄側ハウジングとが正規に嵌合されると、雄側ハウジングの収容部内に保持された図示しない雄型端子が雌型端子24の接続部25内に進入して、雌型端子24と雄型端子とが導通可能に接続されるようになっている。
【0015】
雌側ハウジング20の底面における前後方向略中央部には、図2及び図3に示すように、リテーナ装着孔27が形成されている。リテーナ装着孔27の開口部は、略U字状に形成されており、リテーナ装着孔27は、幅方向に横長な抜け止め部収容部28と、抜け止め部収容部28の両端部から後方に延びる前後方向に縦長な一対のロック片収容部29とから構成されている。
【0016】
抜け止め部収容部28は、図3に示すように、雌側ハウジング20の底面から上方に向かって凹んだ形態をなし、抜け止め部収容部28の内部空間は、端子収容部22内の各キャビティ23に連通している。
【0017】
一対のロック片収容部29は、雌側ハウジング20の幅方向両端部に位置する側壁20Aの内側に形成されている。詳しくは、ロック片収容部29は、端子収容部22と雌側ハウジング20の両側壁20Aとの間にそれぞれ配置されており、雌側ハウジング20の側面に沿って形成されている。また、ロック片収容部29は、抜け止め部収容部28と同様に、雌側ハウジング20の底面から上方に向かって凹んだ形態をなしている。
【0018】
ロック片収容部29の幅方向内側である端子収容部22側の内面には、図1及び図4に示すように、後述するリテーナ40を仮係止位置に保持する仮係止突起(本発明の「ロック部」の一例)30と、リテーナ40を本係止位置に保持する本係止突起(本発明の「ロック部」の一例)31とがそれぞれ形成されている。仮係止突起30および本係止突起31は、いずれも端子収容部22側の内面から幅方向外側に向かって突出して形成されており、前後方向に延びた形態をなしている。
【0019】
仮係止突起30は、端子収容部22側の内面から幅方向外側に延びる仮係止面30Aを上部に有して、仮係止面30Aの外側端部から僅かに下方に延びた後、下方に延びるほど端子収容部22側に近づく形態をなしている。
本係止突起31は、仮係止突起30よりもロック片収容部29の奥側である上方に位置しており、端子収容部22側の内面から幅方向の延びる本係止面31Aを上部に有した断面略矩形状に形成されている。
【0020】
一方、リテーナ40は、抜け止め部収容部28内に嵌合可能な抜け止め部41と、一対のロック片収容部29内にそれぞれ嵌合可能な一対のロック板42とを備えて構成されている。
【0021】
抜け止め部41は、図7に示すように、背面視略U字状をなし、前後方向に貫通する略矩形状の端子挿通孔43が上下方向及び幅方向に複数形成されることで、幅方向に横長な格子状に形成されている。
【0022】
各端子挿通孔43の底面および抜け止め部41の上面には、雌側ハウジング20のキャビティ23内に挿入された雌型端子24の接続部25を後方から係止する端子係止部44が各キャビティ23に対応して複数形成されている。
【0023】
また、抜け止め部41は、端子係止部44がキャビティ23内に突出することで雌型端子24を後方から係止して、雌型端子24をキャビティ23内に抜け止めする本係止位置(図8参照)と、端子係止部44がキャビティ23内から退避して、キャビティ23への雌型端子24の挿抜を許容する仮係止位置(図3参照)との間を移動可能とされている。これにより、キャビティ23内に雌型端子24が収容された状態で、抜け止め部41が本係止位置まで嵌合されると、図8に示すように、端子係止部44によって雌型端子24の接続部25が後方から係止され、雌型端子24がランス26と端子係止部44とによって二重に係止されるようになっている。
【0024】
一対のロック板42は、図5及び図6に示すように、平板状をなし、抜け止め部41の後方に隣接して形成されている。また、ロック板42は、抜け止め部41の幅方向両端部から後方に延びる基体45と、基体45から上方に立ち上がるロック片46とを備えて構成されている。なお、図5については、紙面左手前側を後方とし、紙面右奥側を前方としている。
【0025】
基体45は、いずれも矩形平板状をなし、互いに対向した形態で抜け止め部41の後端部に一体に形成されている。
ロック片46は、基体45よりも板厚が薄い矩形平板状に形成されている。ロック片46は、基体45の上端縁における幅方向外側に一体に形成されており、基体45と連結する基端部を支点に幅方向外側に弾性変形可能とされている。また、ロック片46と抜け止め部41とが隣り合う位置には、上下に延びるスリット47が形成されており、ロック片46と抜け止め部41とは切り離された状態となっている。これにより、ロック片46を抜け止め部41と干渉させることなく、ロック片46を独立して弾性変形させることができるようになっている。
【0026】
ロック片46の上端縁には、ロック片収容部29内の仮係止突起30および本係止突起31と係止可能なロック爪48が形成されている。ロック爪48は、ロック片46の上端縁から幅方向内側に向かって突出して形成されており、ロック爪48の下面であるロック側係止面48Aは、抜け止め部41が仮係止位置に配された際に、上方から仮係止突起30の仮係止面30Aに係止して、抜け止め部41を仮係止位置に保持することができるようになっている。また、ロック側係止面48Aは、抜け止め部41が本係止位置に配された際に、上方から本係止突起31の本係止面31Aに係止して、抜け止め部41を本係止位置に保持することができるようになっている。
【0027】
また、ロック爪48は前後方向に延びた形態をなしており、ロック爪48の前後方向の長さ寸法は、仮係止突起30および本係止突起31の前後方向の長さ寸法とほぼ同じ寸法に設定されている。これにより、仮係止位置および本係止位置において、ロック側係止面48Aと仮係止面30Aおよび本係止面31Aとを前後方向に亘って面接触させることで、抜け止め部41を仮係止位置または本係止位置に確実に保持することができる。
【0028】
また、ロック片46における抜け止め部41と隣り合う側縁部には、幅方向内側に突出する補強部49が形成されている。補強部49は、ロック爪48と一体に形成されており、ロック片46が弾性変形に伴ってへたることを抑制している。
【0029】
一方、雌側ハウジング20の両側壁20Aには、前後方向に縦長な略矩形状の貫通孔32がそれぞれ形成されている。貫通孔32は、雌側ハウジング20の側壁20Aの上下方向略中央部において、側壁20Aを幅方向に貫通して形成されている。また、貫通孔32は、同貫通孔32を通して幅方向外側から仮係止突起30および本係止突起31の周辺部が視認できる位置に配されている。このため、抜け止め部41が仮係止位置に保持された状態では、貫通孔32を通してロック片46の上端部が視認可能となり、抜け止め部41が本係止位置に保持された状態では、貫通孔32を通してロック片46の基端部よりも上側の部分が視認可能となる。
【0030】
すなわち、基体45とロック片46の基端部とは、仮係止位置または本係止位置のいずれの場合であっても、貫通孔32よりも下側に位置する側壁20Aの内側に配された状態となり、基体45やロック片46の基端部に他の部材が接触することを抑制することができる。これにより、ロック片46が幅方向外側に完全に露出しているものに比べて、他の部材が接触することで、ロック片46が破損したり、変形したりすることを抑制することができる。
【0031】
また、貫通孔32の上下に隣り合う側壁20Aは、雌側ハウジング20の嵌合方向である前後方向に連続して形成されている。すなわち、貫通孔32の上下に位置する側壁20Aには、段差がなく、雌側ハウジング20の嵌合姿勢が幅方向に僅かに傾いた状態で雌側ハウジング20を雄側ハウジングの収容部内に嵌合させる場合においても、収容部の開口縁部と雌側ハウジング20の側壁20Aとを引っ掛けることなく、嵌合作業を円滑に行うことができる。
【0032】
また、貫通孔32の内部空間は、ロック片46が弾性変形した際の撓み空間とされている。このため、抜け止め部41が仮係止位置から本係止位置へ移動する過程で、ロック爪48は本係止突起31に乗り上げてロック片46が幅方向外側に弾性変形し、貫通孔32の内部空間(撓み空間)にロック片46の先端部が進入することを許容することができる。そして、ロック爪48が本係止突起31を乗り越えると、ロック片46が弾性復帰して、ロック爪48のロック側係止面48Aと本係止突起31の本係止面31Aとが係止することで、抜け止め部41が本係止位置に保持される。
【0033】
すなわち、ロック片46の先端部が貫通孔32の内部空間(撓み空間)に収容されることで、雌側ハウジング20の側壁20Aとロック片収容部29との間に幅方向に広がる撓み空間を設けることなく、ロック片46を弾性変形させることができる。これにより、ロック片46の撓み空間を雌側ハウジング20内に別途形成する場合に比べて、雌側ハウジング20が大型化することを防ぐことができる。
【0034】
また、ロック爪48が本係止突起31に乗り上げて、ロック片46が幅方向外側に弾性変形し始めると、ロック片46が貫通孔32の下側に位置する(貫通孔32の下側に隣り合う)側壁20Aに当接した状態となる。そして、更にロック片46が弾性変形すると、貫通孔32の下側に位置する側壁20Aがロック片46の基端部における外面を幅方向内側に押圧して支持した状態となる。これにより、ロック片46が弾性変形するために必要な挿入力を所定の大きさに調整し、ロック片46が不用意に弾性変形することでリテーナ40が仮係止位置と本係止位置との間を移動することを抑制することができる。また、ロック片46がへたることを抑制することができる。
【0035】
本実施形態は、以上のような構成であって、次に、コネクタ10の組み付け方法について簡単に説明すると共に、その作用効果を説明する。
まず、雌側ハウジング20の下方から、リテーナ40をリテーナ装着孔27に嵌合させ、雌側ハウジング20に対してリテーナ40を上方に移動させる。この過程において、ロック片46のロック爪48が仮係止突起30に乗り上げ、ロック片46が同ロック片46の基端部を支点に幅方向外側に弾性変形する。このとき、ロック片46は、基体45の上縁から上方に立ち上がった形態で、かつ、スリット47によって抜け止め部41と切り離された状態となっているので、ロック片46を抜け止め部41と干渉させることなく、弾性変形させることができる。
【0036】
すなわち、ロック片と抜け止め部とが一体に形成されて、ロック片が後方に拡開しつつ弾性変形する場合に比べて、ロック片46が正規の方向とは異なる方向に傾いて弾性変形することを防ぐことができる。また、ロック片46が傾くことでロック片46と仮係止突起30とが互いに摩耗しまうことを抑制することができるので、ロック片46と仮係止突起30との係止状態を安定させることができる。
【0037】
次に、仮係止突起30に乗り上げたロック爪48が仮係止突起30を乗り越えると、図4に示すように、ロック爪48のロック側係止面48Aが仮係止突起30の仮係止面30Aによって下方から係止され、抜け止め部41が仮係止位置に保持される。また、この状態において、抜け止め部41の端子係止部44は、図3に示すように、キャビティ23内から退避しており、キャビティ23に対して雌型端子24の挿抜が可能とされる。
【0038】
そして、電線Wの端末に接続された雌型端子24を後方からキャビティ23内に挿入し、雌型端子24を正規の位置まで挿入することで、雌型端子24がランス26によってキャビティ23内に抜け止めされる。
【0039】
各キャビティ23内において雌型端子24が抜け止めされたところで、リテーナ40を雌側ハウジング20に対して、更に上方へと移動させる。この過程において、ロック片46のロック爪48が本係止突起31に乗り上げ、ロック片46が同ロック片46の基端部を支点に幅方向外側に弾性変形する。このとき、ロック片46の先端部は、図10に示すように、雌側ハウジング20の貫通孔32の内部空間に収容され、ロック片46が幅方向外側に弾性変形することを許容される。また、幅方向外側に弾性変形したロック片46は、貫通孔32の下側に位置する側壁20Aによって、幅方向内側に押圧された状態となり、ロック片46が不用意に弾性変形することを抑制すると共に、ロック片46がへたることを抑制することができる。
また、ロック片46のロック爪48が仮係止突起30に乗り上げて、ロック片46が弾性変形する際も仮係止突起30の場合と同様に、ロック片46を正規の方向とは異なる方向に弾性変形してしまうことを抑制することができる。
【0040】
そして、ロック片46のロック爪48が本係止突起31を乗り越えると、図9に示すように、ロック爪48のロック側係止面48Aが本係止突起31の本係止面31Aによって下方から係止され、図8に示すように、抜け止め部41が本係止位置に保持される。また、この状態において、抜け止め部41の端子係止部44は、図8に示すように、キャビティ23内に突出して、雌型端子24の接続部25を後方から係止して、雌型端子24をキャビティ23内に抜け止めする。これにより、雌型端子24は、ランス26と端子係止部44とによって二重に係止される。
【0041】
以上のように、本実施形態によると、ロック片46が抜け止め部41とスリット47によって切り離されて形成されているので、ロック片46を抜け止め部41と干渉させることなく、独立して弾性変形させることができる。これにより、ロック片46が仮係止突起30および本係止突起31に対して正規の姿勢とは異なる前後方向に拡開して弾性変形することを防ぎ、ロック片46や仮係止突起30および本係止突起31が互いに摩耗してしまうことを抑制することができる。ひいては、ロック片46と仮係止突起30および本係止突起31との係止状態を安定させることができる。
また、抜け止め部41とロック片46とが密接して形成されている場合に比べて、ロック片46を正規の姿勢に弾性変形し易くすることができる。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、ロック板42を抜け止め部41の後方に隣接して構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、抜け止め部の前方にロック部を構成してもよい。
(2)上記実施形態では、端子収容部22にキャビティ23を上下方向及び幅方向に複数並べた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、端子収容部内にキャビティを幅方向にのみ複数並べた構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、抜け止め部41とロック片46との間にスリット47を形成した構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、ロック片と抜け止め部との間が切断されていればよく、ロック片と抜け止め部とが直接隣り合って形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10:コネクタ
20:雌側ハウジング(コネクタハウジング)
24:雌型端子(端子金具)
27:リテーナ装着孔
30:仮係止突起(ロック部)
31:本係止突起(ロック部)
40:リテーナ
41:抜け止め部
45:基体
46:ロック片
47:スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を収容するコネクタハウジングと、このコネクタハウジングに装着可能なリテーナとを備えたコネクタであって、
前記リテーナは、前記コネクタハウジングに設けられたリテーナ装着孔に挿入されて前記端子金具を抜け止めする抜け止め部と、
前記抜け止め部と一体に形成された基体から立ち上がった形態で前記抜け止め部の挿入方向と交差する方向に前記抜け止め部に隣接して配され、前記コネクタハウジングに形成されたロック部に乗り上げることで前記基体と連結する部分を支点に弾性変形し、弾性復帰することでロック部と係止するロック片とを備えており、
前記ロック片は前記抜け止め部と切り離されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記抜け止め部と前記ロック片とが互いに隣り合う位置には、スリットが形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−101870(P2013−101870A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245528(P2011−245528)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】