説明

コネクタ

【課題】部品点数の増加と作業性の悪化を回避しつつ、半嵌合検知を行う。
【解決手段】本発明は、相手側コネクタ50と嵌合可能なコネクタ11であって、相手側コネクタ50に設けられたフード部51内に嵌合するハウジング20と、ハウジング20において外部から視認可能な位置に設けられ、相手側コネクタ50との嵌合に伴ってハウジング20とともにフード部51内に進入するロックアーム24とを備え、ハウジング20がフード部51内に嵌合する途中では解除凹部26がフード部51の開口縁51Aから突出して配されることで解除凹部26の外縁26Aとフード部51の開口縁51Aとからなる段差30が形成されており、嵌合が進行するにつれて段差30の突出量が小さくなり、嵌合が完了した状態では段差30が消滅している構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半嵌合検知機能を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このコネクタは、相手側コネクタとの嵌合状態を保持するためのロックアームを有しており、このロックアームとコネクタハウジングの上面との間に隙間を設けてスペーサ挿入溝を形成したものである。両コネクタを嵌合させた後、スペーサ挿入溝に半嵌合検知用のスペーサを挿入し、その挿入可否によって半嵌合を検知することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3365234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のコネクタでは、半嵌合検知用のスペーサを用意する必要があり、部品点数が増加することに加えて、嵌合作業とは別にスペーサをスペーサ挿入溝に挿入する作業が必要になるため、作業性の悪化が懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、部品点数の増加と作業性の悪化を回避しつつ、半嵌合検知を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、相手側コネクタと嵌合可能なコネクタであって、相手側コネクタに設けられたフード部内に嵌合するハウジングと、ハウジングにおいて外部から視認可能な位置に設けられ、相手側コネクタとの嵌合に伴ってハウジングとともにフード部内に進入する検知部とを備え、ハウジングがフード部内に嵌合する途中では検知部がフード部の開口縁から突出して配されることで検知部の外縁とフード部の開口縁とからなる段差が形成されており、嵌合が進行するにつれて段差の突出量が小さくなり、嵌合が完了した状態では段差が消滅している構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、段差の有無を目視で確認することによって半嵌合を検知することができる。このようにすると、従来のコネクタのように半嵌合検知用のスペーサを用意する必要がなく、部品点数を増加させることがない。また、ハウジングをフード部内に嵌合させるという通常の嵌合作業だけで済むため、作業性を悪化させることもない。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
検知部は、段差が消滅するにしたがってフード部内に隠れることを特徴とする構成としてもよい。
このような構成によると、段差が消滅することに加えて、検知部がフード部内に隠れることを目視で確認することによって、二重で半嵌合検知を行うことができる。
【0009】
フード部の開口縁には、同開口縁を前記ハウジングとの嵌合方向後方に切り欠くことで切り欠きが形成されており、段差が消滅するにしたがって検知部の外縁がフード部の開口縁と面一をなして並ぶ構成としてもよい。
このような構成によると、段差が消滅することに加えて、検知部の外縁がフード部の開口縁と面一をなして並ぶことを目視で確認することによって、二重で半嵌合検知を行うことができる。
【0010】
検知部は、ハウジングの外面から立ち上がった後、フード部との嵌合方向後方に向けて片持ち状に突出する形態をなすロックアームである構成としてもよい。
このような構成によると、ロックアームを利用して半嵌合検知を行うことができる。
【0011】
ハウジングにおいてロックアームの自由端と対向する位置には突部が立設されており、ロックアームの自由端から突部までの寸法は、ハウジングから後方に引き出される複数の電線のうち直径が最も小さい最小電線の直径よりも小さい構成としてもよい。
このような構成によると、ロックアームの自由端と突部との間に電線が入り込んでロックアームがめくれ上がるなどの不具合を規制できる。また、ロックアームと突部の間に電線の入り込み防止構造を設けなくても済むため、防止構造を成形するために金型を複雑化させることがない。さらに、防止構造を成形するための抜き孔をロックアームに設定しなくてもよいため、ロックアームの強度を低下させることがなく、リテーナを設けなくても十分なロック強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部品点数の増加と作業性の悪化を回避しつつ、半嵌合検知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1におけるコネクタを相手側コネクタに嵌合させる前の状態を示した平面図
【図2】図1におけるA−A線断面図
【図3】コネクタを相手側コネクタに嵌合させる途中の状態を示した平面図
【図4】図3におけるB−B線断面図
【図5】コネクタが嵌合完了位置にある状態を示した平面図
【図6】図5におけるC−C線断面図
【図7】コネクタが嵌合係止位置にある状態を示した断面図
【図8】ハウジングの側面図
【図9】ハウジングの背面図
【図10】実施形態2におけるコネクタが嵌合完了位置にある状態を示した平面図
【図11】実施形態3におけるコネクタが嵌合係止位置にある状態を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図9の図面を参照しながら説明する。本実施形態のコネクタ11は縦長の略方形のブロック状をなす合成樹脂製のハウジング20を有し、図1に示すように、相手側コネクタ50に対して嵌合可能とされている。一方、相手側コネクタ50は、コネクタ11の主要部をなすハウジング20の内部に嵌合可能なフード部51を有している。フード部51の天井壁52における中央部には、ロック孔53が天井壁52の板厚方向に貫通して形成されている。なお、以下の説明においては両コネクタ11,50の嵌合方向を前後方向とし、互いの嵌合面側を前側とする。
【0015】
ハウジング20の内部には、端子金具40を内部に収容する上下2段のキャビティ21が形成されている。このキャビティ21は、図9に示すように、前後方向に貫通する形態をなしている。キャビティ21の前端には、端子金具40を抜け止めする前止まり22が形成されている。また、キャビティ21の側方には、ランス23が形成されている。このランス23は、キャビティ21の内部に挿入された端子金具40に係止するようになっており、この端子金具40がキャビティ21から後方へ抜けないように保持している。なお、端子金具40には電線Wの端末が圧着接続されており、複数の電線Wがキャビティ21の内部からハウジング20の後方に引き出されている。
【0016】
ハウジング20の上面には、図8に示すように、ロックアーム24が形成されている。このロックアーム24は、外部から視認可能な位置に設けられており、ハウジング20の上面における前端部から上方に立ち上がった後、後方に向けて片持ち状に突出する形態をなしている。ロックアーム24の上面における中央部には、ロック突部25が上方に突出する形態で形成されている。ロック突部25は、その前縁から円弧状をなして上方に立ち上がりつつ後方に向かう乗上面25Aと、その乗上面25Aの後縁からロックアーム24の上面に向けてオーバーハング状に切り立った平面状の係止面25Bとを備えている。
【0017】
本実施形態におけるロックアーム24の後端部には、指で解除操作をするための解除操作部が設けられておらず、ハウジング20をフード部51の内部に嵌合させた状態では、ロックアーム24の全域がフード部51内に収容されて隠れるようになっている。ただし、ロックアーム24の上面における後端部には、図2などに示すように、マイナスドライバなどの治具を引っかけて解除操作を行うための解除凹部26が上方に開口する形態で凹設されている。
【0018】
ハウジング20の上面における後端部には、図9に示すように、アーチ状をなして上方に立ち上がるアーチ部27が設けられている。このアーチ部27は、ロックアーム24の後方に配されている。アーチ部27は、ロックアーム24の外形より一回り大きい形態とされている。すなわち、アーチ部27の内部空間は、ロックアーム24を成形するための金型を後方に引き抜くための抜き孔とされている。
【0019】
さて、コネクタ11を相手側コネクタ50に嵌合させる途中では、図4に示すように、ロックアーム24がハウジング20とともにフード部51の内部に進入し、ロック突部25の乗上面25Aがフード部51の内壁に摺動しながらロックアーム24が下方に撓み変形するようになっている。このとき、ロックアーム24の解除凹部26は、図3に示すように、フード部51の開口縁51Aよりも後方に突出しており、上方から見た場合に、この解除凹部26の外縁26Aとフード部51の開口縁51Aとによって段差30が形成されるようになっている。
【0020】
そして、コネクタ11を相手側コネクタ50に嵌合させるにしたがってロック突部25の乗上面25Aがフード部51の内壁との摺動部分を乗り越えて弾性的に復帰すると、図6に示すように、ロック孔53に勢いよく嵌まり込む。この間、ロック突部25は、揺動軌跡を描きながら斜め前方に変位するため、ロック突部25の係止面25Bとこの係止面25Bに対向するロック孔53の被係止面53Aとの間には、所定の隙間Sが形成される。この隙間Sが形成された状態におけるコネクタ11の位置を嵌合完了位置という。
【0021】
被係止面53Aは、係止面25Bに対してほぼ平行に配されているため、係止面25Bと被係止面53Aが当接して係止した状態では、図7に示すように、ロックアーム24が下方へ撓み変形して係止面25Bと被係止面53Aとの係止状態が解除されないように、ロックアーム24を上方へ撓み変形させるように作用する。なお、係止面25Bと被係止面53Aが当接した状態におけるコネクタ11の位置を嵌合係止位置という。
【0022】
段差30の突出量(嵌合方向における突出寸法L)は、コネクタ11を相手側コネクタ50に嵌合させるにしたがって小さくなる。コネクタ11が嵌合完了位置にあるときには、図6に示すように、解除凹部26の外縁26Aにおける後端がフード部51の開口縁51Aよりも奥側(図6における図示左側)に配されており、図5に示すように、上方から見た場合に、段差30が消滅した状態となっている。
【0023】
また、電線Wが後方に引っ張られるなどしてコネクタ11が嵌合完了位置から嵌合係止位置へ移動したときには、図7に示すように、解除凹部26の外縁26Aにおける後端がフード部51の開口縁51Aと揃って配されており、上方から見た場合に、段差30が消滅したままの状態となっている。このように、段差30が消滅したことをもってコネクタ11と相手側コネクタ50が嵌合状態(例えば、嵌合完了位置や嵌合係止位置)に至ったことを知ることができ、半嵌合か否かを検知することができる。さらに、段差30が消滅することに加えて、解除凹部26がフード部51の内部に隠れることを目視で確認することによって、二重で半嵌合検知を行うことができる。
【0024】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図10の図面を参照しながら説明する。本実施形態における相手側コネクタ60は、実施形態1の相手側コネクタ50のフード部51の開口縁51Aに切り欠き61を追加したものであって、その他の構成については実施形態1の相手側コネクタ50と同じであるため、実施形態1と同一の符号を用いるものとする。
【0025】
切り欠き61は、図10に示すように、フード部51の天井壁52における開口縁51Aから後方に切り欠くことによって幅方向に長い長方形状に形成されている。図10は、コネクタ11が嵌合完了位置にある状態を示している。解除凹部26の後端部は、切り欠き61を通して外部に露出されている。また、解除凹部26の外縁26Aにおける後端は、フード部51の開口縁51Aと面一をなして幅方向に並んで配されている。
【0026】
段差30の突出量(嵌合方向における突出寸法L)は、コネクタ11を相手側コネクタ60に嵌合させるにしたがって小さくなる。コネクタ11が嵌合完了位置にあるときには、図10に示すように、段差30が消滅するとともに、解除凹部26の外縁26Aにおける後端がフード部51の開口縁51Aと同一平面上に並んで配される。したがって、段差30が消滅することに加えて、解除凹部26の外縁26Aにおける後端がフード部51の開口縁51Aと面一をなして並ぶことを目視で確認することによって、二重で半嵌合検知を行うことができる。
【0027】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図11の図面を参照しながら説明する。本実施形態のコネクタ13は、実施形態1のアーチ部27よりもやや前方に拡幅させたアーチ部28を備えたものであって、その他の構成は実施形態1と同様であるため、実施形態1と同一の符号を用いるものとする。コネクタ13が嵌合係止位置にあるときには、ロックアーム24の後端からアーチ部28の前端までの寸法Lが最も広くなるものの、この寸法Lは電線Wの直径よりも小さい寸法とされているため、電線Wがロックアーム24の後端とアーチ部28の前端との間に入り込んでロックアーム24をめくり上げることを規制できる。また、寸法Lは、ハウジング20から複数の電線Wが引き出されている場合において、最も直径が小さい電線Wの直径よりも小さい寸法とされているため、ロックアーム24のめくれを確実に規制できる。
【0028】
本実施形態によると、ロックアーム24とアーチ部28の間に電線Wの入り込み防止構造を設けなくても済むため、防止構造を成形するために金型を複雑化させることがない。また、防止構造を成形するための抜き孔をロックアーム24に設定しなくてもよいため、ロックアーム24の強度を低下させることがなく、リテーナを設けなくても十分なロック強度を確保することができる。
【0029】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では検知部として撓み可能なロックアーム24を例示しているものの、本発明によると、検知部として撓み不能な突起を形成し、この突起の後端部が嵌まり込む凹部をフード部に設けてもよい。また、検知部は、ロックアームに連結された一対の支持片の後端部としてもよい。
【0030】
(2)実施形態2では切り欠き61を形成しているものの、本発明によると、四方が囲まれた確認窓を形成し、この確認窓の下を検知部が通過することで段差を形成し、または消滅させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
11,13…コネクタ
20…ハウジング
24…ロックアーム(検知部)
26…解除凹部(検知部)
26A…外縁
28…アーチ部(突部)
30…段差
50…相手側コネクタ
51…フード部
51A…開口縁
60…相手側コネクタ
61…切り欠き
L…寸法
W…電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタと嵌合可能なコネクタであって、
前記相手側コネクタに設けられたフード部内に嵌合するハウジングと、
前記ハウジングにおいて外部から視認可能な位置に設けられ、前記相手側コネクタとの嵌合に伴って前記ハウジングとともに前記フード部内に進入する検知部とを備え、
前記ハウジングが前記フード部内に嵌合する途中では前記検知部が前記フード部の開口縁から突出して配されることで前記検知部の外縁と前記フード部の開口縁とからなる段差が形成されており、前記嵌合が進行するにつれて前記段差の突出量が小さくなり、前記嵌合が完了した状態では前記段差が消滅していることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記検知部は、前記段差が消滅するにしたがって前記フード部内に隠れることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記フード部の開口縁には、同開口縁を前記ハウジングとの嵌合方向後方に切り欠くことで切り欠きが形成されており、前記段差が消滅するにしたがって前記検知部の外縁が前記フード部の開口縁と面一をなして並ぶことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記検知部は、前記ハウジングの外面から立ち上がった後、前記フード部との嵌合方向後方に向けて片持ち状に突出する形態をなすロックアームであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングにおいて前記ロックアームの自由端と対向する位置には突部が立設されており、前記ロックアームの自由端から前記突部までの寸法は、前記ハウジングから後方に引き出される複数の電線のうち直径が最も小さい最小電線の直径よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−101871(P2013−101871A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245529(P2011−245529)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】