説明

コネクタ

【課題】端子を保持する構成のコネクタであって、コネクタの長さを抑えた構成を提供する。
【解決手段】コネクタは、ハウジング20と、シール部材30と、を備える。ハウジング20は、機器100に形成された接続孔101に挿入され、当該機器100に接続するための電線10の端子11を保持する。シール部材30は、接続孔101に挿入され、当該機器100内への水の浸入を防止する。シール部材30には、ハウジング取付部31と、防水孔32と、防水面33と、が形成される。ハウジング取付部31は、ハウジング20を取付可能である。防水孔32は、電線10の表面を経由して機器100内へ水が浸入することを防止する。防水面33は、防水孔32の軸に垂直な方向で見たときに当該防水孔32と少なくとも一部が重複する位置に形成されており、接続孔101の内壁と接触することで、当該接続孔101から機器100内へ水が浸入することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水構造を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線を保持可能なコネクタを外部の機器に取り付ける場合において、機器に形成された接続凹部に電線を挿入して、電線の端部に形成される端子と機器側の端子とを電気的に接続する構成が知られている。このようなコネクタによる接続構造においては、電線の表面を経由する経路(第1経路)、又は、接続孔の内壁面を経由する経路(第2経路)を介して、機器内に水が浸入する可能性がある。特許文献1から3までは、上記の2つの経路からの浸水を防止した構成のコネクタを開示する。
【0003】
特許文献1及び2のコネクタは、円筒状のゴム栓を電線の外周面に密着するように取り付けることで、第1経路からの浸水を防止する構成になっている。また、このコネクタは、枠状に形成されたシールリングを接続孔と接触する箇所に取り付けることで、第2経路からの浸水を防止している。
【0004】
特許文献3では、機器に複数の接続孔が形成されている。また、特許文献3のコネクタは、複数の電線を保持しており、複数の接続孔毎に1つずつ電線が挿入されるように、機器に取付可能である。このコネクタでは、保持する電線毎に筒形嵌合部が取り付けられている。筒型嵌合部は、筒状の部分を有しており、内周面において電線と密着することで第1経路からの浸水を防止できる。また、筒形嵌合部は、外周面において接続孔と密着することで第2経路からの浸水を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−281654号公報
【特許文献2】特開2002−373730号公報
【特許文献3】特開2002−246112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2のコネクタは、機器の接続孔の軸方向と垂直な方向で見たときに、第1経路からの浸水を防止する箇所と、第2経路からの浸水を防止する箇所と、が重複して配置されていないので、コネクタの差込方向における当該コネクタの長さが長くなってしまい易く、コンパクト化が困難である。
【0007】
この点、特許文献3のコネクタは、接続孔の軸方向と垂直な方向で見たときに、2つの経路からの浸水を防止する箇所が重複して配置されている。従って、特許文献3の構成は、特許文献1及び2と比べて、コネクタを短くすることによる小型化が容易であるということができる。
【0008】
ところで、特許文献1から3までのコネクタは、電線のみを保持する構成であって、電線の端部に取り付けられた端子までは保持していない。ここで一般に、端子を保持する構成のコネクタでは、コネクタの端部に、端子を保持する部材(端子保持部)や、当該端子保持部及びシール部材の両方が取り付けられる部材等を備える必要があって、レイアウトが複雑になる。特に、特許文献3の筒形嵌合部は、筒状の部分の内周面と外周面とで2つの経路からの浸水を防止する単純な構成である。そのため、端子保持部等を備える構成のコネクタには、特許文献3の構成をそのまま適用することはできない。
【0009】
以上のように、端子を保持する構成のコネクタでは当該コネクタの長さを抑えることが困難であり、改善の余地が残されていた。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、端子を保持する構成のコネクタであって、コネクタの長さを容易に小型化できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によれば、以下の構成のコネクタが提供される。即ち、このコネクタは、端子保持部と、シール部材と、を備える。前記端子保持部は、外部の機器に形成された接続凹部に挿入され、当該機器に接続するための電線の端子を保持する。前記シール部材は、前記接続凹部に挿入され、当該機器内への水の浸入を防止する。前記シール部材には、取付部と、防水孔と、防水面と、が形成される。前記取付部は、前記端子保持部を取付可能である。前記防水孔は、前記電線を挿入可能であって、当該電線の表面を経由して前記機器内へ水が浸入することを防止する。前記防水面は、前記防水孔の軸に垂直な方向で見たときに前記防水孔と少なくとも一部が重複する位置に形成されており、前記接続凹部と接触することで、当該接続凹部から前記機器内へ水が浸入することを防止する。
【0013】
これにより、2つの防水箇所が互いに重なり合うので、防水孔の軸方向におけるコネクタの長さを抑えることができる。また、シール部材が端子保持部を取付可能であるため、端子保持部を支持するための部材を別に備える構成と比較して、部品点数を減らすことができる。
【0014】
前記のコネクタにおいては、前記防水孔の軸に垂直な方向で見たときに、前記取付部、前記防水孔、及び前記防水面の三者が重複する箇所があることが好ましい。
【0015】
これにより、防水孔の軸方向におけるコネクタの長さを一層短くした構成を実現することができる。
【0016】
前記のコネクタにおいては、前記端子保持部には、前記電線が通過可能な挿入孔が貫通状に形成されることが好ましい。
【0017】
これにより、コネクタの組立て時において、シール部材に端子保持部を取り付けた後に、両方の部品に電線を挿入する等の作業を行うことができる。つまり、早い段階で部品同士を組み付けておけるため、作業を行い易くすることができる。
【0018】
前記のコネクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記電線の端子は平板状であり、当該端子の幅方向に突出する突出部が形成されている。前記端子保持部は、前記突出部を保持する。
【0019】
これにより、端子の中央部に形成した孔を用いて当該端子を保持する構成と比較して、端子の長さを抑えた構成を容易に実現できる。また、端子に孔を形成する必要がないので、端子の製造コストを低減させることができる。
【0020】
前記のコネクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このコネクタは、前記電線を覆うように配置されることで、当該電線を流れる信号に発生するノイズを低減する筒状の遮蔽部を備える。前記遮蔽部は、平板状の2つの部材によって前記遮蔽部の端部が挟み込まれることで保持される。
【0021】
これにより、単純な形状の部材だけで遮蔽部を保持することができるので、製造コストを低減させることができる。
【0022】
前記のコネクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このコネクタは、電線保持部を備える。前記電線保持部は、前記電線のうち前記機器の外側に位置する部分を略垂直に曲げた状態で保持する。
【0023】
即ち、上記のように電線を曲げた状態で保持する構成のコネクタを用いる場合、コネクタの機器からの突出量が問題となり易い。この点、本発明のコネクタは、2つの防水箇所が接続凹部の内側に位置しているため、コネクタの機器からの突出量を抑えることができる。従って、全体としてコンパクトな構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの斜視図。
【図2】コネクタの分解斜視図。
【図3】コネクタの防水構造を説明する断面図。
【図4】ハウジングが端子を保持する構造を示す断面斜視図。
【図5】端子を保持する構成を比較する図。
【図6】端子をコネクタに設ける工程を説明する図。
【図7】変形例に係るコネクタの構成を概略的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。初めに、図1から図5を参照してコネクタ1の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタ1の斜視図である。図2は、コネクタ1の分解斜視図である。図3は、コネクタ1の防水構造を説明する断面図である。図4は、ハウジング20が端子11を保持する構造を示す断面斜視図である。図5は、端子11を保持する構成を比較する図である。
【0026】
初めに、コネクタ1及び機器100の概要について説明する。本実施形態のコネクタ1は、2本の電線10を保持している。このコネクタ1は、図3に示すように、自動車等が備える機器100の表面部分を構成する部材(機器100のケース、筐体等)に形成された接続孔(接続凹部)101に差し込まれる。これにより、コネクタ1は、機器100が有する図略の端子等と、電線10と、を電気的に接続する。また、本実施形態のコネクタ1は防水性能を有しており、機器100内への浸水を防止するように構成されている。
【0027】
以下、このコネクタ1の詳細な構成について説明する。コネクタ1は、図2等に示すように、ハウジング(端子保持部)20と、シール部材30と、板状部材40と、編組固定部材50と、編組部材(遮蔽部材)60と、を主要な構成として備えている。なお、以下の説明では、コネクタ1において、機器100に取り付けられる側(端子11側)を「機器側」と称し、その反対側を単に「反機器側」と称することがある。
【0028】
電線10は、図3に示すように、導体部10aと、当該導体部10aを覆うように配置された被覆部10bと、で構成されている。また、図2等に示すように、電線10の一端側には端子11が接続されている。端子11は、機器100が有する図略の端子等と電気的に接続できるように構成されている。なお、端子11には、当該端子11の縁から幅方向に突出する小さな突出部11aが形成されている。本実施形態において、突出部11aが突出する向きは、電線10の長手方向とほぼ垂直になっている。この突出部11aは、後述するように、ハウジング20によって保持される。
【0029】
ハウジング20は、樹脂等で構成されており、断面が長円形の部材である。ハウジング20には、挿入孔21と、保持爪22と、が形成されている。挿入孔21は、電線10を挿入可能に構成されている。保持爪22は、図4に示すように、端子11の突出部11aに引っ掛かることで、当該端子11を固定(保持)するように構成されている。
【0030】
端子11を保持する構成としては、従来から、図5(b)に示すように、端子11に保持孔11xを形成し、この保持孔11xを用いて端子11を保持する構成が知られている。この比較例の構成では、保持孔11xと係合させるための保持爪22xをハウジング20側に形成し、保持爪22xと保持孔11xとを係合させることで端子11の保持を行うことになる。しかし、この構成は、保持孔11xを形成するためのスペースが必要になるため、端子11の大型化による材料コスト等の増加を招くことが考えられる。また、端子11に保持孔11xを形成する必要があるため、加工コストが増大するおそれもある。この点、本実施形態では、突出部11aのみで端子11を保持できるので、端子11のコストを抑えることができる。
【0031】
シール部材30は、機器100内への浸水を防止するために設けられた弾性変形可能なゴム製の部材であって、ハウジング20と同様に断面が長円形となるように形成されている。上述のように、機器100内へ水が浸入する経路としては、電線10の表面を経由する経路(第1経路)と、機器100に形成された接続孔101の内壁面を経由する経路(第2経路)と、の2つが考えられる。シール部材30は、この両方の経路からの浸水を防止することができる。
【0032】
以下、シール部材30の具体的な構成を説明する。このシール部材30には、図2等に示すように、ハウジング取付部(取付部)31と、防水孔32と、防水面33と、板状部材取付部34と、が形成されている。
【0033】
防水孔32は、保持される電線と同数(本実施形態では2つ)形成されている。防水孔32はそれぞれ円形状に形成され、電線10の各外周面と密着するように構成されている。具体的には、図3に示すように、防水孔32の内周面にはリング状の凸部が複数並べて形成され、この凸部が電線10の外周面に接触して潰れることでシールしている。この防水孔32によって、電線10の表面を経由する経路からの浸入を防止できる。
【0034】
防水面33は、シール部材30の外周面に形成されている。防水面33は、シール部材30の他の外周面よりも少し径が大きく、図3に示すように、接続孔101の内壁面と接触して弾性変形により潰れる構成である。これにより、接続孔101の内壁面を経由する経路からの浸水を防止できる。
【0035】
ハウジング取付部31は、防水孔32と防水面33との間に形成された枠状の部分(詳細には枠状の部分の内周面)として構成される。この枠状の部分の内径は、ハウジング20の反機器側の端部の外径よりもやや小さくなるように構成されている。この構成により、ハウジング取付部31を弾性変形させてハウジング20の端部に取り付けることで、ハウジング20とシール部材30とを組み付けることができる。
【0036】
また、本実施形態のシール部材30においては、防水孔32の軸方向に垂直な方向で見たときに、ハウジング取付部31、防水孔32、及び防水面33の三者が重複する部分が生じるように配置されている(図3のAの箇所を参照)。そのため、当該軸方向におけるコネクタ1の長さを短くすることが可能となる。また、本実施形態では、上記した三者の位置が何れも機器100(接続孔101)の内部であるため、機器100への取付後における機器100からのコネクタ1の突出量についても小さくすることができる。
【0037】
また、本実施形態では、接続孔101と電線10との間に、シール部材30及びハウジング20の両方が配置されている。従って、接続孔101と電線10との間にシール部材30のみが配置される構成と比較して、シール部材30の厚み(ゴムの厚み)を抑えることができる。
【0038】
板状部材取付部34は、シール部材30の反機器側の端部に形成された、板状部材40を取り付けるための部分である。板状部材取付部34は、断面が長円形となるように構成されており、板状部材取付部34を弾性変形させて板状部材40に形成された挿通孔41に嵌め込むことで、シール部材30と板状部材40とを組み付けることができる。
【0039】
板状部材40及び編組固定部材50は、ともに金属製の板状の部材であって、編組部材60を支持する機能を有している。
【0040】
板状部材40には、挿通孔41と、編組取付面42と、編組取付孔43と、遮蔽用端子44と、クランプ部材取付部45と、が形成されている。また、編組固定部材50には、挿通孔51と、編組取付面52と、編組取付孔53と、が形成されている。
【0041】
編組部材60は、例えば金属製の線材を編んだ部材(編組チューブ、編組シールド材)等で構成されている。編組部材60は、板状部材40と接続されており、当該板状部材40の遮蔽用端子44を介してアース(接地)が行われている。この構成により、電線を流れる信号に発生するノイズ等を低減することができる。また、編組部材60の機器側の端部には鍔部61が形成されている。鍔部61は平坦状に構成されており、例えば編組を一部折り返すことで形成される。
【0042】
板状部材40の挿通孔41は、上述のようにして板状部材40とシール部材30とを互いに組み付けるための長孔である。この挿通孔41は、編組固定部材50の挿通孔51と同じく、電線10を通過させることができる。板状部材40の編組取付面42は、当該板状部材40において反機器側の面に形成された平坦な面として構成されている。編組固定部材50の編組取付面52は、当該編組固定部材50において機器側に形成された平坦な面として構成されている。
【0043】
以上の構成で、編組部材60をコネクタ1に取り付けるには、以下のようにすれば良い。即ち、作業者は初めに、編組部材60の鍔部61を編組取付面42と編組取付面52との間に挟み込むように配置する。そして、作業者は、編組取付孔43及び編組取付孔53にボルト及びナット等を組み付けることで、板状部材40と編組固定部材50とを固定する。
【0044】
なお、仮に、板状部材40に代えて金属製の円筒状の部材(円筒部材)を用い、この円筒部材の外周面に編組部材60を固定する構成とする場合は、円筒部材の外周に沿う形状の編組固定部材を作成する必要がある。しかし、この編組固定部材は湾曲した形状であるので、製作コストが高くなってしまう。この点、本実施形態では、平板を加工(打抜き加工)するだけで板状部材40を作成できるので、製造コストを抑えることができる。
【0045】
クランプ部材取付部45は、図1に示すように、板状部材40の一側(図1における下側)の端部に形成されている。クランプ部材取付部45には、クランプ部材(電線保持部)70を取り付けることができる。このクランプ部材70に対しては、電線10及び編組部材60を束ねて括り付けることができる。クランプ部材70を用いて、電線10及び編組部材60をクランプ部材取付部45に取り付けることにより、電線10等を略直角に折り曲げた状態で保持することができる。
【0046】
なお、このように電線10が機器100から引き出されてすぐの箇所で大きく曲げられるレイアウトを採用する場合、機器100の周囲のスペースに余裕がない場合が多いので、コネクタ1が機器100から突出する部分の大きさが特に問題となり易い。この点、本発明のコネクタ1は、2つの防水箇所が接続孔101の内側に位置しているため、コネクタ1の機器からの突出量を抑えることができる。従って、全体としてコンパクトな構成を実現できる。
【0047】
次に、コネクタ1を組み立てる工程について簡単に説明する。図6は、端子11をコネクタ1に設ける工程を説明する図である。
【0048】
作業者は、予め、シール部材30に、ハウジング20と板状部材40とを組み付け、アッセンブリを構成しておく。そして、作業者は、このアッセンブリと、編組固定部材50と、編組部材60と、の内部に電線10を通す(図6(a)を参照)。なお、ハウジング20には前述のように挿入孔21が形成されているので、電線10は上記のアッセンブリの内部を問題なく通過することができる。
【0049】
その後、作業者は、電線10の端部に端子11を圧着する。そして、作業者は、電線10を反機器側に引っ張ることによって、端子11の突出部11aを保持爪22に保持させる(図6(b)を参照)。その後、作業者は、板状部材40と編組固定部材50との間に編組部材60の端部を挟み込んだ状態で、ボルト等の固定具により固定する。
【0050】
次に、作業者は、編組部材60(及び内部の電線10)を折り曲げてクランプ部材取付部45の近傍に位置させた後に、クランプ部材70によって編組部材60を保持する(図1を参照)。以上により、コネクタ1の組立てが完了する。
【0051】
なお、仮に、ハウジング20に挿入孔21が形成されていない場合、作業者は、シール部材30に電線10を通し、当該電線の端部に端子11を圧着して端子11をハウジング20に取り付けた後に、シール部材30とハウジング20とを組み付けることになる。つまり、ハウジング20とシール部材30との組付けを予め行っておくことができない。この点、本実施形態では、ハウジング20には挿入孔21が形成されているので、先にハウジング20とシール部材30とを組み付けておくことができる。従って、複数の部品を一体的にまとめて取り扱うことが容易になるので、作業性を向上させることができる。
【0052】
以上に示したように、本実施形態のコネクタ1は、ハウジング20と、シール部材30と、を備える。ハウジング20は、外部の機器100に形成された接続孔101に挿入され、当該機器100に接続するための電線10の端子11を保持する。シール部材30は、接続孔101に挿入され、当該機器100内への水の浸入を防止する。シール部材30には、ハウジング取付部31と、防水孔32と、防水面33と、が形成される。ハウジング取付部31は、ハウジング20を取付可能である。防水孔32は、電線10を挿入可能であって、当該電線10の表面を経由して機器100内へ水が浸入することを防止する。防水面33は、防水孔32の軸に垂直な方向で見たときに防水孔32と少なくとも一部が重複する位置(図3のAの箇所)に形成されており、接続孔101と接触することで、当該接続孔101から機器100内へ水が浸入することを防止する。
【0053】
これにより、2つの防水箇所が互いに重なり合うので、防水孔32の軸方向におけるコネクタ1の長さを抑えることができる。また、シール部材30がハウジング20を取付可能であるため、ハウジング20を支持するための部材を別に備える構成と比較して、部品点数を減らすことができる。
【0054】
また、本実施形態のコネクタ1においては、防水孔32の軸に垂直な方向で見たときに、図3のAの箇所で、ハウジング取付部31、防水孔32、及び防水面33の三者が重複している。
【0055】
これにより、防水孔32の軸方向におけるコネクタ1の長さを一層短くした構成を実現することができる。
【0056】
また、本実施形態のコネクタ1において、ハウジング20には電線10が通過可能な挿入孔21が貫通状に形成される。
【0057】
これにより、組立て工程における早い段階でハウジング20とシール部材30とを組み付けておくことができるので、作業性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態のコネクタ1において、電線10の端子11は平板状であり、当該端子11の幅方向に突出する突出部11aが形成されている。ハウジング20は、突出部11aを保持する。
【0059】
これにより、端子11の中央部に形成した保持孔11xを用いて当該端子11を保持する構成と比較して、端子11の長さを抑えた構成を容易に実現できる。また、端子11に保持孔11xを形成する必要がないので、端子11の製造コストを低減させることができる。
【0060】
また、本実施形態のコネクタ1は、編組部材60を備える。編組部材60は、電線10を覆うように配置されることで、当該電線10を流れる信号に発生するノイズを低減する。編組部材60は、平板状の2つの部材(板状部材40及び編組固定部材50)によって当該編組部材60の端部(鍔部61)が挟み込まれることで保持される。
【0061】
これにより、単純な形状の部材だけで編組部材60を保持することができるので、製造コストを低減させることができる。
【0062】
次に、上記実施形態の変形例について図7を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と同一又は類似する構成については、上記実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図7は、変形例に係るコネクタの端子11及びハウジング20を、挿入孔21の軸方向で見た図(正面図)である。この図7に示すように、本変形例の端子11の幅方向の両端部には、突出部11bが形成されている。本変形例の突出部11bは、上記実施形態の端子11の突出部11aを直角に(L字状に)折り曲げたような形状となっている。
【0064】
また、本変形例のハウジング20には、図7に示すように、保持爪23が形成されている。本変形例の保持爪23は、上記実施形態の保持爪22の取付向きを90°異ならせたような形状となっている。この構成により、保持爪23は、突出部11bを適切に保持することができる。
【0065】
本変形例では端子11が折り曲げられているため、本変形例の端子11の端子幅は、上記実施形態の端子11の端子幅よりも小さい。そのため、本変形例の構成を採用することにより、コネクタの幅についても小さくすることができる。
【0066】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0067】
コネクタ1は、電線10を2本保持する構成であるが、保持する電線10の本数はこれに限られず、例えば1本又は3本以上であっても良い。
【0068】
シール部材30の形状は上記で示した例に限られず、ハウジング取付部、防水孔、及び防水面が形成されていれば、適宜変更することができる。また、シール部材30以外の部品(ハウジング20、板状部材40、及び編組固定部材50等)についても、上記で示した構成は例示であり、その一部又は全部を適宜変更することができる。
【0069】
突出部11aは、端子11の幅方向(図5の左右方向)に突出していれば良く、電線10の長手方向と垂直に突出する形状に限られない。
【0070】
上記実施形態では、電線をL字状に折り曲げて保持する構成であるが、電線を折り曲げない構成のコネクタに本発明を適用することもできる。
【0071】
本発明は、電気部品に信号を送って制御するためのコネクタに限定されず、例えば電力供給のための電力線のコネクタ等、種々のコネクタに適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 コネクタ
10 電線
11 端子
20 ハウジング(端子保持部)
30 シール部材
31 ハウジング取付部(取付部)
32 防水孔
33 防水面
40 板状部材
50 編組固定部材
60 編組部材(遮蔽部材)
70 クランプ部材(電線保持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の機器に形成された接続凹部に挿入され、当該機器に接続するための電線の端子を保持する端子保持部と、
前記接続凹部に挿入され、当該機器内への水の浸入を防止するシール部材と、
を備え、
前記シール部材には、
前記端子保持部を取付可能な取付部と、
前記電線を挿入可能であって、当該電線の表面を経由して前記機器内へ水が浸入することを防止する防水孔と、
前記防水孔の軸に垂直な方向で見たときに前記防水孔と少なくとも一部が重複する位置に形成されており、前記接続凹部の内壁と接触することで、当該接続凹部から前記機器内へ水が浸入することを防止する防水面と、
が形成されることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記防水孔の軸に垂直な方向で見たときに、前記取付部、前記防水孔、及び前記防水面の三者が重複する箇所があることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタであって、
前記端子保持部には、前記電線が通過可能な挿入孔が貫通状に形成されることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタであって、
前記電線の端子は平板状であり、当該端子の幅方向に突出する突出部が形成されており、
前記端子保持部は、前記突出部を保持することを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のコネクタであって、
前記電線を覆うように配置されることで、当該電線を流れる信号に発生するノイズを低減する筒状の遮蔽部を備え、
前記遮蔽部は、平板状の2つの部材によって前記遮蔽部の端部が挟み込まれることで保持されることを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のコネクタであって、
電線保持部を備え、
前記電線保持部は、前記電線のうち前記機器の外側に位置する部分を略垂直に曲げた状態で保持することを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−54941(P2013−54941A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192731(P2011−192731)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】