説明

コハク酸プロピオネートに基づく、熱可塑的に加工可能なポリウレタン

【課題】50ショアA〜70ショアD(ISO 868)の硬度を有する熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーを提供する。
【解決手段】a)コハク酸1,3−プロピオネートを含み、1,950〜4,000g/molの平均分子量を有する、1.8〜2.2の官能価の1以上の直鎖ポリエステルジオール、b)1以上の有機ジイソシアネート、およびc)60〜350g/molの分子量を有する1以上のジオール、を含む成分を反応させて得られ、ここで、これら成分は0.9:1〜1.1:1のモルNCO:OH比を有する、ポリウレタンエラストマー。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2010年6月2日に出願された独国特許出願第102010022464.2号の利益を主張するものであり、ここで参照することによって、全ての有用な目的のため、この開示全体が本願明細書に組み込まれたものとする。
【0002】
〔発明の背景〕
本発明は、コハク酸プロピオネートに基づく、熱可塑的に加工可能なポリウレタンに関する。
【0003】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、以前から知られている。それらは、高性能な機械的特性と、安価な熱可塑性の加工可能性という既知の利点との組合せのために、工業的に重要である。異なる化学的ビルダー成分の使用により、種々の機械的特性を、広い範囲で達成することができる。TPUの概要、その特性および用途は、例えば、Kunststoffe 68(1978)、第819〜825頁またはKautschuk、Gummi、Kunststoffe 35(1982)、第568〜584頁に示されている。
【0004】
TPUは、直鎖ポリオール、通常、ポリエステルまたはポリエーテルポリオール、有機ジイソシアネートおよび短鎖ジオール(鎖延長剤)から構成される。触媒をさらに添加し、生成反応を加速することができる。その特性を得るために、ビルダー成分を比較的広範なモル比で変化させることができる。ポリオールと鎖延長剤のモル比は、1:1〜1:12が適当であることがわかっている。これは、生成物に、50ショアA〜75ショアDの範囲をもたらす。
【0005】
TPUは、連続的にまたは不連続的に製造することができる。最もよく知られた製造方法は、ベルトプロセス(英国特許第1057018号)および押出機プロセス(独国特許出願公開第1964834号および独国特許出願公開第2059570号)である。
【0006】
良好な機械的数値は、言うまでもなく特に重要であり、特性の多様な組合せを、ポリオールを通じて制御された方法で達成することができる。ポリエーテルポリオールの使用は、TPUに特に良好な加水分解特性をもたらす。良好な機械的特性を目的とするのであれば、ポリエステルポリオールが有利である。
【0007】
TPUのためのポリエステルポリオールは、例えば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸と多官能性のアルコール、例えば2〜10個の炭素原子を有するグリコールから調製され、500〜5,000の分子量のポリエステルが標準として用いられる。ポリエステルポリオールからのTPUについて、欧州特許出願公開第1757632号にも記載されるように、モノマーの格別な計測配列により、特に良好な安定性を有し、特に均一な成形品であるTPUが得られる。
【0008】
国際公開第2008/104541号には、発酵により炭水化物から生物学的に製造されるコハク酸と、少なくとも二官能性のアルコールとの、ポリエステルアルコールを与える反応が記載されている。選択される二官能性のアルコールは、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチルプロパンジオール、ペンタエリスリトールおよびソルビトールである。1,3−プロパンジオールに基づくポリエステルアルコールは言及されておらず、ポリエステルアルコールの分子量の制限または好ましい範囲も言及されていない。これらのポリエステルアルコールから調製されるTPUは、主張されてもいない。実施例において、コハク酸、アジピン酸およびエチレングリコールおよびブタンジオールの約1,900の分子量を有するポリエステルが記載され、それらを反応させ、特定の特性を有さず、通常の機械的数値であるTPUが得られる。機械的数値の改善は見られず、さらに、引き裂き伝播抵抗はわずかに減少する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kunststoffe 68(1978)、第819〜825頁
【非特許文献2】Kautschuk、Gummi、Kunststoffe 35(1982)、第568〜584頁
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】英国特許第1057018号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第1964834号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第2059570号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1757632号明細書
【特許文献5】国際公開第2008/104541号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、改良された機械的特性、例えば100%モジュラス(ISO 527−1、−3)または引き裂き伝播抵抗(ISO 34−1)を有し、生物学的に生産可能な成分から完全にまたは部分的に製造できるTPUを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、驚くべきことに、1つの態様において、50ショアA〜70ショアD(ISO 868)の硬度を有する熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーであって、
a)コハク酸1,3−プロピオネートを含み、1,950〜4,000g/molの平均分子量を有する、1.8〜2.2の官能価の1以上の直鎖ポリエステルジオール、
b)1以上の有機ジイソシアネート、
c)60〜350g/molの分子量を有する1以上のジオール、
を含む成分を反応させて得られ、ここで、該成分は0.9:1〜1.1:1のモルNCO:OH比を有する、ポリウレタンエラストマーにより達成することが可能である。
【0013】
さらに、本発明の別の態様は、50ショアA〜70ショアD(ISO 868)の硬度を有する熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーであって、
a)1.8〜2.2の官能価を有し、2,000〜3,500g/molの平均分子量を有する、1以上の直鎖ポリエステルジオール、ここで、該1以上の直鎖ポリエステルジオールが、1,3−プロパンジオール、コハク酸、またはそれらの混合物から構成され、発酵により炭水化物から生物学的に製造されたコハク酸1,3−プロピオネートを含み、
b)4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、イソホロン−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート、1,5−ナフチレン−ジイソシアネート、およびそれらの混合物からなる群から選択される1以上の有機ジイソシアネート、
c)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノン、およびそれらの混合物からなる群から選択される1以上の鎖延長ジオール、
を含む成分から得られ、ここで、該成分は、0.9:1〜1.1:1のモルNCO:OH比を有する、ポリウレタンエラストマーである。
【0014】
さらに、本発明の別の態様は、
A)コハク酸1,3−プロピオネートを含み、1,950〜4,000g/molの平均分子量を有する、1.8〜2.2の官能価の1以上の直鎖ポリエステルジオールと、1以上の有機ジイソシアネートの第1部分とを、1.1:1〜3.5:1のモルNCO:OH比で反応させて、より高重量のイソシアネート−末端プレポリマーを生成させること、
B)Aで生成させたより高重量のイソシアネート−末端プレポリマーと、1以上の有機ジイソシアネートの第2部分とを混合すること、ここで、有機ジイソシアネートの第1および第2部分の合計が使用したジイソシアネートの総量である、および、
C)B)で調製した混合物と、60〜350g/molの分子量を有する1以上のジオールとを反応させること、
を含む、上記熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーの製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「モルNCO:OH」比は、ここで、イソシアネート基b)とイソシアネート基に対して反応性であるa)およびc)からのヒドロキシル基の比を指す。
【0016】
「平均分子量」の表現は、ここでおよび以下において、数平均分子量Mnに関する。
【0017】
可能な有機ジイソシアネートb)は、例えば、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、複素環および芳香族ジイソシアネートであり、例えば、Justus Liebigs Annalen der Chemie、562、第75〜136頁に記載されている。
【0018】
具体的には例として以下が挙げられ得る:脂肪族ジイソシアネート、例えばヘキサメチレン−ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、例えばイソホロン−ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサン−ジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサン−ジイソシアネートおよび1−メチル−2,6−シクロヘキサン−ジイソシアネート、ならびに対応する異性体混合物、4,4’−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネートおよび2,2’−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート、ならびに対応する異性体混合物、芳香族ジイソシアネート、例えば2,4−トルイレン−ジイソシアネート、2,4−トルイレン−ジイソシアネートおよび2,6−トルイレン−ジイソシアネートの混合物、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートの混合物、ウレタン−変性液状4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートまたは2,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−1,2−ジフェニルエタンおよび1,5−ナフチレン−ジイソシアネート。1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサン−ジイソシアネート、イソホロン−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート、96重量%より高い4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート含量を有するジフェニルメタン−ジイソシアネート異性体混合物、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートおよび1,5−ナフチレン−ジイソシアネートが好ましくは使用される。上記ジイソシアネートは、単独でまたは相互に混合物の状態で使用することができる。これらは、(ジイソシアネートの合計に対して計算して)15モル%以下のポリイソシアネートと共に使用することもできるが、ポリイソシアネートは、多くても、熱可塑的に加工可能な生成物がなお形成されるような量で添加せねばならない。ポリイソシアネートの例は、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネートおよびポリフェニル−ポリメチレン−ポリイソシアネートである。
【0019】
直鎖ポリエステルジオールは、ポリオールとして用いられる。その製造のために、これらは少量の非直鎖化合物を含有する場合が多い。したがって、「実質上の直鎖ポリオール」も多くの場合に言及される。
【0020】
本発明により使用されるポリエステルジオールまたはいくつかのポリエステルジオールa)の混合物は、40−100重量%、好ましくは90−100重量%の範囲のコハク酸および1,3−プロパンジオールから構成され、この重量%データは使用するポリエステルジオールの合計重量に関する。
【0021】
ポリエステルジオールは、例えば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸および多官能性のアルコールから調製できる。可能なジカルボン酸は、例えば、脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸、または芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸である。ジカルボン酸を、単独で、または、混合物として(例えばコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の混合物の形態で)使用することができる。ポリエステルジオールの調製のために、ジカルボン酸の代わりに、対応するジカルボン酸誘導体、例えばアルコール基中に1〜4個の炭素原子を有するカルボン酸ジエステル、例えばテレフタル酸ジメチルまたはアジピン酸ジメチル、カルボン酸無水物、例えばコハク酸無水物、グルタル酸無水物またはフタル酸無水物、またはカルボン酸塩化物を使用することが有利である可能性があり得る。多官能性のアルコールの例は、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールまたはジプロピレングリコールである。
【0022】
さらに、反応混合物全体の3重量%以下の少量で、より高い官能性の低分子量ポリオール、例えば1,1,1−トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールを併用することもできる。
【0023】
二官能性の出発化合物のみを使用するのが好ましい。
【0024】
例えばジカルボン酸のジメチルエステルを使用するならば、完全とはいえないエステル交換の結果として、少量の未反応メチルエステル末端基がポリエステルの官能価を2.0以下、例えば1.95または1.90までも下げることが起こり得る。
【0025】
重縮合は、当業者に既知の手段で行われ、例えば、150〜270℃の温度で、最初は常圧またはわずかに減圧下で、その後に例えば5〜20mbarにゆっくりと圧力を下げて、反応の水を追い出すことにより行われる。触媒は原則として必要ではないが、通常、極めて有用である。例えば、錫(II)塩、チタン(IV)化合物、ビスマス(III)塩およびその他が触媒に可能である。
【0026】
反応の水を追い出すために、不活性同伴ガス(inert entraining gas)、例えば窒素を使用することがさらに有利であり得る。さらに、共沸性エステル化において、室温で液体の同伴剤(an entraining agent)、例えばトルエンを使用する方法を用いることもできる。
【0027】
通常1つのみである本質的に直鎖のポリエステルジオールを、TPUの合成に使用する。しかしながら、本質的に直鎖のポリエステルジオールの、1より多くの混合物を用いることもできる。
【0028】
上記のように、ポリエステルジオールは、所望によりいくつかのポリエステルジオールの混合物は、使用する全てのポリエステルジオールに基づいて40−100重量%の範囲で、好ましくは90−100重量%の範囲で、コハク酸1,3−プロピオネートを含有する。コハク酸1,3−プロピオネートは、コハク酸および1,3−プロパンジオールから構成される。
【0029】
コハク酸は、石油化学経路により、例えばマレイン酸を出発化合物として用いて製造でき、または、生物源から製造することができる。
【0030】
生物源を用いるのであれば、例えば、米国特許第5,869,301号に記載されるような、発酵によりマイクロバクテリア経路でコハク酸へと変換される炭水化物が可能である。
【0031】
同様に、1,3−プロパンジオールも、石油化学経路により、例えばアクロレインを出発化合物として用いて製造でき、または、生物源から製造することができる。したがって、例えば、1,3−プロパンジオールは、DuPont Tate & Lyleの巨大な工業規模で、発酵によりトウモロコシシロップから得られる。
【0032】
好ましいポリエステルジオールは、(使用するカルボン酸またはコハク酸の総重量に基づいて)少なくとも90重量%のバイオベースコハク酸および/または(使用するジオールまたはプロパンジオールの総重量に基づいて)少なくとも90重量%のバイオベース1,3−プロパンジオールを使用して製造する。
【0033】
本発明によれば、ポリエステルジオールは、1,950〜4,000g/mol、好ましくは2,000〜3,500g/mol、特に好ましくは2,100〜3,000g/molおよび極めて好ましくは2,200〜2,900g/molの数平均分子量Mを有する。
【0034】
使用する鎖延長剤はジオールであり、所望により少量のジアミンとの混合物であり、60〜350g/molの分子量を有し、好ましくは2〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジオール、例えばエタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールおよび、特に1,4−ブタンジオールである。しかしながら、テレフタル酸と2〜4個の炭素原子を有するグリコールとのジエステル、例えばテレフタル酸ビス−エチレングリコールまたはテレフタル酸ビス−1,4−ブタンジオール、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノン、エトキシ化ビスフェノール、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールAも適当である。好ましくは、エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノンを、鎖延長剤として使用する。上記の鎖延長剤の混合物を使用することもできる。さらに、比較的少量のトリオールを添加することもできる。
【0035】
例えば連鎖停止剤または離型助剤として、少量の従来の単官能性化合物をさらに添加することもできる。例示の目的で、アルコール、例えばオクタノールおよびステアリルアルコール、またはアミン、例えばブチルアミンおよびステアリルアミンが挙げられる。
【0036】
TPUの調製のため、所望により触媒、補助物質および/または添加剤の存在下で、NCO基とNCO反応性基の合計との当量比が0.9:1.0〜1.1:1.0、好ましくは0.95:1.0〜1.10:1.0の量で、ビルダー成分を反応させることができる。
【0037】
本発明の適当な触媒は、既知であり従来の先行技術による、第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンおよび同様の化合物であり、特に、有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物または錫化合物、例えば錫ジアセテート、錫ジオクトエート、錫ジラウレートまたは脂肪族カルボン酸の塩の錫−ジアルキル塩、例えばジブチル錫ジアセテートまたはジブチル錫ジラウレートあるいは同様の化合物である。好ましい触媒は、有機金属化合物、特にチタン酸エステルおよび鉄および錫化合物である。TPU中の触媒の総量は、一般に、TPUに基づいて、約0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%である。
【0038】
TPU成分および触媒に加えて、補助物質および/または添加剤を添加することもできる。例として、潤滑油、例えば脂肪酸エステル、それらの金属石鹸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルアミドおよびケイ素化合物、ブロッキング防止剤、阻害剤、抗加水分解安定剤、光安定剤、熱安定剤および変色安定剤、防炎剤、染料、顔料、無機および/または有機充填剤および補強剤が挙げられる。特に、補強剤は繊維強化物質、例えば先行技術に従い調製され、大きさをもって加えることもできる無機繊維である。好ましくは、TPUに、ナノ粒子固体(例えばカーボンブラック)を0〜10重量%の量で添加することもできる。挙げられる補助物質および添加剤のさらなる詳細は技術文献にあり、例えばJ.H. SaundersおよびK.C. Frischによる研究論文である「High Polymers」、第16巻、Polyurethane、第1部および第2部、Verlag Interscience Publishers、1962および1964、R. GaechterおよびH.Muellerによる「Taschenbuch fuer Kunststoff-Additive」(Hanser Verlag Munich 1990)または独国特許出願公開第2901774号である。
【0039】
TPUに導入できるさらなる添加剤は、熱可塑性の、例えばポリカーボネートおよびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー、特にABSである。他のエラストマー、例えばゴム、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマーおよび他のTPUを用いることもできる。市販の可塑剤、例えばホスフェート、フタレート、アジペート、セバケートおよびアルキルスルホン酸エステルが、組み込むのにさらに適当である。
【0040】
TPUを、1段階(反応成分の同時添加=ワンショット)または数段階(例えばプレポリマー法または欧州特許出願公開第571830号によるソフトセグメント予備延長を含む方法)で調製してよい。
【0041】
好ましい態様において、TPUを、ソフトセグメント予備延長を含む数段階法で調製する、ここで、本発明の、
段階A)において、
1.8〜2.2の官能価を有する1以上の直鎖ポリエステルジオール(ここで、1以上の直鎖ポリエステルジオールは、コハク酸1,3−プロピオネートを含み、1,950〜4,000g/molの平均分子量を有する)と、部分量1の有機ジイソシアネートとを、1.1:1〜3.5:1、好ましくは1.3:1〜2.5: 1のモルNCO:OH比で反応させ、より高重量のイソシアネート−末端プレポリマー(「NCOプレポリマー」)を生成させ、
段階B)段階A)で生成させたNCOプレポリマーと部分量2の有機ジイソシアネートとを混合し、ここで、部分量1および部分量2の合計が使用したジイソシアネートの総量と等しく、そして、
段階C)段階B)で調製した混合物を、60〜350g/mol分子量を有する1以上のジオールと反応させる。
【0042】
段階A)における部分量1の1以上のジイソシアネートが、段階B)における部分量2のジイソシアネートと同一であるのが好ましい。
【0043】
工程と独立して、全段階の合計において、NCO基とOH基のモル比は、0.9:1〜1.1:1に設定される。
【0044】
既知の混合装置、好ましくは高せん断力で作動するものが、TPUの製造に適する。連続的製造のため、例として、コニーダー(cokneaders)、好ましくは押出機、例えばツインシャフト押出機およびバスニーダー(Buss kneaders)、または静的ミキサーが挙げられ得る。
【0045】
本発明のTPUは、射出成形品(例えばスポーツシューズの機能的部分)および均一な押出品、特にフィルムに加工できる。
【0046】
それらは、向上した機械値、例えば引張試験において増大したモジュラスおよび改良された引き裂き伝播抵抗を有する。
【0047】
上記の全ての引用文献を、全ての有用な目的のため、その全体を参照によって本明細書中に組み込む。
【0048】
本発明を具体化する特定の具体的な構造を示し記載したが、本発明観念の根底にある精神および範囲から逸脱することなく、当業者により部分的に様々な改良および再構成が示されるであろうし、同じことは、ここに示し記載する特定の形態に制限されるものではない。
【0049】
本発明は、以下の実施例によって、より詳細に説明される。
【実施例】
【0050】
〔(A)使用原料〕
PE 225 B:M=2,200g/molの分子量を有するブタンジオールアジペート(BayerMaterialScience AG)
MDI:ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(BayerMaterialScience AG)
BUT:1,4−ブタンジオール(BASF AG)
1,3−プロパンジオール:バイオベース(DuPont Tate & Lyle)
コハク酸:バイオベース、酸価:946mgKOH/g 、M=118.6g/mol相当(Bioamber)
【0051】
〔(B)ポリエステルの調製〕
BSP 1100:M=1,100g/molの分子量を有するコハク酸1,3−プロピオネート
BSP 2200:M=2,200g/molの分子量を有するコハク酸1,3−プロピオネート
BSP 2900:M=2,900g/molの分子量を有するコハク酸1,3−プロピオネート
【0052】
〔BSP 1100〕
2,421g(20.41mol)のバイオベースコハク酸および1,817g(23.87mol)の1,3−プロパンジオールを、初めは室温で、窒素雰囲気で覆いながら、加熱マッシュルーム(heating mushroom)、自動撹拌装置、内部温度計、40cm充填カラム、カラムヘッド、下降集約コンデンサー(descending intensive condenser)およびメンブラン真空ポンプを備えた6リットルの4つ口フラスコに導入し、反応の水が約140℃の温度から蒸留されるため、攪拌しながら200℃まで徐々に加熱した。約6時間後に反応を停止した。70mgの塩化錫(II)二水和物を添加し、約2時間かけて圧力を200mbarまで下げ、反応をこれらの条件下でさらに16時間続けた。反応を終了させるため、真空をさらに4時間の間16mbarまで下げ、混合物を冷却し、以下のデータを測定した。
【0053】
ポリエステル BSP 1100の分析:ヒドロキシル価:104.1mg KOH/g、酸価:0.22mg KOH/g、粘度:11,800mPas(25℃)、1,470mPas(50℃)、405mPas(75℃)
【0054】
OHおよび酸価は、「Methoden der organischen Chemie(Houben−Weyl)、Makromolekulare Stoffe、第14/2巻、第17頁、Georg Thieme Verlag、Stuttgart 1963に記載されるように決定した。
【0055】
粘度は、CP-50-1測定コーンを備えたAnton Paar製のPhysica MCR 51 粘度計を用いて、1〜1,000/秒のせん断速度で測定した。
【0056】
BSP 2200[b)]およびBSP 2900[c)]を、ポリエステルポリオールの分子量を構築するためにジカルボン酸とジオールのモル比を変えて、BSP 1100と同様に調製した。
【0057】
〔b)BSP 2200〕
1,3−プロパンジオールの重量:3,776g(49.7mol)
コハク酸の重量:5,437g(45.8mol)
塩化錫(II)二水和物の重量:270mg
ポリエステルの分析:ヒドロキシル価:51.4mg KOH/g、酸価:0.4mg KOH/g、粘度:1,660mPas(75℃)
【0058】
〔c)BSP 2900〕
1,3−プロパンジオールの重量:3,743g(49.25mol)
コハク酸の重量:5,493g(46.32mol)
塩化錫(II)二水和物の重量:180mg
ポリエステルの分析:ヒドロキシル価:38.9mg KOH/g、酸価:0.9mg KOH/g、粘度:3,210mPas(75℃)
【0059】
〔C.TPUの調製〕
それぞれの場合において、1つのポリオールを表1に従い、反応容器にまず導入した。180℃まで加熱した後、部分量1の4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート〔MDI〕を攪拌しながら添加し、プレポリマー反応を、ポリオールに基づいて90mol%より大きい変換まで、ポリオールの量に基づいて50ppmの触媒錫ジオクトエートを用いて行った。
【0060】
反応が終了すると、部分量2のMDIを攪拌しながら添加した。表1に示す量の鎖延長剤ブタンジオール[BUT]を次いで添加し、成分のNCO/OH比は1.00であった。激しい、完全な混合の後、TPU反応混合物を金属シート上に注ぎ出し、120℃で30分間整えた。
【0061】
【表1】

【0062】
成形したシートを切断し、粒状にした。Arburg製のAllrounder 470 S (30−スクリュー)射出成形機中で、粒を溶かし、S1バー(型温度:25℃、バーサイズ:115×25/6×2)、シート(型温度:25℃、サイズ:125×50×2mm)または円形プラグ(round plugs)(型温度:25℃、直径30mm、厚さ6mm)に成形した。
【0063】
〔測定〕
硬度測定をISO 868に従い行った;ISO 527−1、−3に従って引張試験を測定し、100%モジュラス、引裂強度および伸びを得た;引き裂き伝播抵抗をISO 34−1に従って測定した。
【0064】
射出成形の直後の凝固速度を、型から離した直後(約3秒)の円形プラグの硬度測定によって、初期硬度として測定した。
【0065】
この値がより高ければ、より高い凝固速度および射出成形の間のより短いサイクル時間となる。
【0066】
測定値を表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
PE 225 Bに基づく従来のTPUと比較して、コハク酸1,3−プロピオネートに基づく本発明のTPU(分子量2,200)は、同じ作り方において、顕著に改良された100%モジュラスおよび引き裂き伝播抵抗(実施例1−2;3−5;6−7;8−9〕を有する。
【0069】
同じ100%モジュラスでは、分子量2,900のポリエステルに基づくTPUはさらに改良された凝固速度を有する(実施例1および10)が、1,100の分子量を有し、本発明によらないポリエステルに基づく比較TPUは、著しく劣る凝固速度(実施例3および4*)を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50ショアA〜70ショアD(ISO 868)の硬度を有する熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーであって、
a)コハク酸1,3−プロピオネートを含み、1,950〜4,000g/molの平均分子量を有する、1.8〜2.2の官能価の1以上の直鎖ポリエステルジオール、
b)1以上の有機ジイソシアネート、
c)60〜350g/molの分子量を有する1以上の鎖延長ジオール、
を含む成分を反応させて得られ、ここで、該成分は0.9:1〜1.1:1のモルNCO:OH比を有する、ポリウレタンエラストマー。
【請求項2】
1以上の直鎖ポリエステルジオールが2,000〜3,500g/molの平均分子量を有する請求項1に記載の熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマー。
【請求項3】
成分a)およびc)の少なくとも1つが、少なくとも部分的に生物学的に製造される、請求項1に記載の熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマー。
【請求項4】
成分a)およびc)の少なくとも1つが、完全に生物学的に製造される、請求項3に記載の熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマー。
【請求項5】
1以上の有機ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、イソホロン−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート、1,5−ナフチレン−ジイソシアネート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマー。
【請求項6】
1以上の鎖延長ジオールが1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマー。
【請求項7】
コハク酸1,3−プロピオネートが、発酵により炭水化物から生物学的に製造されたコハク酸から構成される、請求項1に記載の熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマー。
【請求項8】
コハク酸1,3−プロピオネートが、発酵により炭水化物から生物学的に製造された1,3−プロパンジオールから構成される、請求項1に記載の熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマー。
【請求項9】
1以上の鎖延長ジオールが生物学的に製造された1,3−プロパンジオールを含む、請求項1に記載の熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマー。
【請求項10】
50ショアA〜70ショアD(ISO 868)の硬度を有する熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーであって、
a)1.8〜2.2の官能価を有し、2,000〜3,500g/molの平均分子量を有する、1以上の直鎖ポリエステルジオール、ここで、該1以上の直鎖ポリエステルジオールが、1,3−プロパンジオール、コハク酸、またはそれらの混合物から構成され、発酵により炭水化物から生物学的に製造されたコハク酸1,3−プロピオネートを含み、
b)4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、イソホロン−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート、1,5−ナフチレン−ジイソシアネート、およびそれらの混合物からなる群から選択される1以上の有機ジイソシアネート、
c)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノン、およびそれらの混合物からなる群から選択される1以上の鎖延長ジオール、
を含む成分から得られ、ここで、該成分は0.9:1〜1.1:1のモルNCO:OH比を有する、ポリウレタンエラストマー。
【請求項11】
A)1以上の直鎖ポリエステルジオールと、1以上の有機ジイソシアネートの第1部分とを、1.1:1〜3.5:1のモルNCO:OH比で反応させて、より高重量のイソシアネート−末端プレポリマーを生成させること、
B)Aで生成させたより高重量のイソシアネート−末端プレポリマーと、1以上の有機ジイソシアネートの第2部分とを混合すること、ここで、有機ジイソシアネートの第1および第2部分の合計が使用したジイソシアネートの総量である、および、
C)B)で調製した混合物と、1以上の鎖延長ジオールとを反応させること、
を含む、請求項1に記載の熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーの製造方法。
【請求項12】
同一の1以上の有機ジイソシアネートを、A)およびB)において使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
A)におけるNCO:OH比が1.3:1〜2.5:1である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
A)1以上の直鎖ポリエステルジオールと、1以上の有機ジイソシアネートの第1部分とを、1.1:1〜3.5:1のモルNCO:OH比で反応させて、より高重量のイソシアネート−末端プレポリマーを生成させること、
B)Aで生成させたより高重量のイソシアネート−末端プレポリマーと、1以上の有機ジイソシアネートの第2部分とを混合すること、ここで、有機ジイソシアネートの第1および第2部分の合計が使用したジイソシアネートの総量である、および、
C)B)で調製した混合物と、1以上の鎖延長ジオールとを反応させること、
を含む請求項10に記載の熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーの製造方法。
【請求項15】
同一の1以上の有機ジイソシアネートを、A)およびB)において使用する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
A)におけるNCO:OH比が1.3:1〜2.5:1である、請求項14に記載の方法。

【公開番号】特開2011−256384(P2011−256384A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−124325(P2011−124325)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】