説明

コバルトナノ粒子を銅および酸化銅でコーティングする方法

本発明はコバルトナノ粒子を形成する方法および銅または酸化銅を用いたそのコーティングに関してであり、前記方法は、形成した塩の混合物がコバルト:銅の比率>1:1が得られるように、銅塩がコバルト塩に混合し、還元は還元ガスで実施し、ナノ粒子はコーティングがその表面に形成している間に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコバルトナノ粒子を形成する方法、およびこれを銅および酸化銅でコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コバルトは、産業的なナノ粒子に適用され、例えば、触媒、ならびに磁性および導電性または絶縁性の材料に利用される。金属塩からの還元による、コバルト等のナノ粒子の調製方法は、国際公開第2007/144455号, Forsman, J.; Tapper, U.; Auvinen, A. & Jokiniemi, J. (“Production of cobalt and nickel particles by hydrogen reduction”. J Nanoparticle Res. 10 (2008) 745-759) ja Jang, H.D.; Hwang, D.W.; Kim, D.P.; Kim, H.C.; Lee, B.Y. & Jeong, I.B. (“Preparation of cobalt nanoparticles in the gas phase (I): Kinetics of cobalt dichloride reduction”. J Ind. Eng. Chem. 9 (2003) 407-411) 等の公開により以前から知られていた。
【0003】
銅およびコバルトが互いに混和しないことも、以前から知られている。コバルトは、例えば液相として、銅でコーティングされてきた(例えば米国特許第20060177660号明細書およびSubramanian, Nachal Devi; Balaji, G.; Kumar, Challa S. S. R.; Spivey, James J. Catalysis Today (2009), 147(2), 100-106に開示されている)。通常、コバルトと共に他の金属が、特に触媒としてのナノ粒子中に見られる。他のコバルトと銅との混合物のナノ粒子は、特にボールミルビーターで調製される(例えばAngeles, J.; Velazquez, C; Calderon, H. A. NSTI Nanotech 2007, Nanotechnology Conference and Trade Show, Santa Clara, CA, United States. May 20 24 (2007), Volume 4, 273-276に開示されている)。酸化銅のナノ粒子も製造されてきた(例えばGhodselahi, T.; Vesaghi, M. A., Shafiekbani, A.; Baghizadelh, A.; Lanmeii, M. Applied Surface Science (2008), 255(5, Pt. 2), 2730-2734に開示されている)。従来、他の金属または酸化金属物でコーティングされたナノ粒子は、金属塩化物を還元する方法により生成される。このような材料は市販されておらず、例えばコバルト粒子は銅でコーティングされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ナノ粒子金属およびそのコーティングを生成するためのコストを減少させ、かつ、生成された粒子を、より均質且つ純粋な形状にすることを目的とする。これらの機能をより効果的にするため、例えばアンテナ等の高周波数部材の透磁率を高めることができ、対応するこれらのサイズを減少することができる。これらに一般的に使用されるフェライト粒子と比較して、成分の透磁率は、例えばコバルトのような強磁性体を使用することで向上させることができる。任意にコーティングとして用いられる酸化銅シェルは、その粒子の導電率の一部を実質的に上昇させる。
【0005】
本発明は、磁気絶縁物質の生成にも用いることができ、この方法によれば、アンテナ構造のみならず、回路基板に印刷されたワインディングを小型化することもできる。多様なアンテナが、特に携帯機器に使用し続けられることが多く、そのサイズの縮小が強く望まれている。
【0006】
高周波数部材に用いるのに適切な、新規のコーティングされたコバルトナノ粒子を提供することが本発明の目的である。
【0007】
本発明の目的は、特に、新規の、容易に実施できるコバルトナノ粒子の生成およびコーティングの連続法を提供することにある。
【0008】
したがって、本発明は、コバルトナノ粒子を銅および酸化銅を用いて形成し、コーティングする方法に関する。
【0009】
すなわち、本発明による方法は、おもに請求項1の特性を示す部分に記載のものを特徴とする。
【0010】
本発明による方法の使用は、請求項10に記載されているものを特徴とし、この方法により生成されるコバルトナノ粒子は、請求項11に記載されているものを特徴とする。
【0011】
原則として、本発明の方法は連続的であり、該方法の条件は適宜最適化することができる。同一の方法の条件を用いて、安価且つ純粋な原料を用いるため、生成コストはより低く維持され、生成される物質は競合の方法より、均一かつ純粋である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、コバルトナノ粒子を形成し、それを銅または参加銅でコーティングする方法に関し、銅塩は、コバルトと銅の比率が>1:1になるようにコバルト塩に混合され、水素還元が実施され、ナノ粒子はコーティングが開始される間に形成される。
【0013】
コバルトナノ粒子は、金属塩の水素還元法によって生成される。国際公開第2007/144455号には、その目的に応じた方法が記載されている。
【0014】
本発明において、水素を用いて実施される、前述の、または相当する還元は、ナノ粒子が銅でコーティングされるのと同時に実施される。コーティングは、これら2つの金属(コバルトおよび銅)が互いに混和しないという事実に基づいたものである。粒子の表面においては、気相中よりも迅速に反応することができ、また、金属塩の還元反応は成形粒子の表面で生じるため、コバルト塩および銅塩の双方がこの方法を実施するのに用いられる化学反応炉に供給されたとき、双方の金属(または金属塩)は、結果として同一のナノ粒子となる。コバルトの質量分率が銅より高い場合、コバルトがコア粒子を形成し、銅はそのシェルを形成する。質量分率を変えることによって、銅シェルの厚さは容易に調節することができる。同様に、コバルトコアのサイズ、すなわち粒子の磁気的性質は、塩を混合している間、コバルトの質量分率を調節することによって調節することができる。形成された材料は、銅の化学的性質を有しているが、より強磁性である。
【0015】
塩を混合している間に形成された塩混合物は、多孔質床から、還元ガス、または還元ガスへと蒸気処理され、反応混合物が形成される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、蒸気処理は600〜1000℃、好ましくは700〜900℃で実施される。蒸気処理の間、金属塩は、好ましくは粉末または液体の形状、より好ましくは塩化物、硝酸塩、酢酸塩、ギ酸塩もしくは硫酸塩またはこれらの塩の混合物、最も適切には塩化コバルトおよび塩化銅の形態とする。前記塩は、熱分解温度より低い蒸発温度を有する。
【0017】
還元は、蒸発した混合物または反応混合物に700〜1000℃、好ましくは800〜950℃で、水素を還元ガスとして用いて、最も適切には反応混合物に窒素またはアルゴンをキャリアガスとして含むガス混合物の一部として添加することにより、他の好ましい実施形態に従って実施される。ガス混合物を使用する場合、混合物の還元ガスの割合は、好ましくは10〜90%、一般的には20〜50%である。
【0018】
還元反応において、コア粒子を形成するコバルト塩は還元ガスと反応し、元素コバルトおよび酸に対応する塩が形成する。塩化コバルトが水素と反応することで、コバルトと塩化水素が生成される。
【0019】
還元後、形成された生成混合物を冷却することができる。好ましくは、生成混合物は冷却され、例えば−100℃〜+200℃、通常0〜50℃の窒素またはアルゴン等の冷却ガスによって冷却される。冷却は、好ましくは可能な限り速やかに実施し、形成された粒子の焼結を回避する。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態において、コーティングされたナノ粒子のコア、即ち銅シェルは、コバルトコアに金属性が残存することができるように、酸化物へと酸化される。通常、酸化は約200℃で実施される。この種類の酸化ナノ粒子の導電性は、実質的により低く、酸化シェルの厚さおよび酸化状態に依存する。導電性が低いため、混合物の電気損失は低く、よって高周波数部材の透磁率を高めるために使用することができる。
【0021】
また、酸化物シェルがコバルト粒子を安定化させ、少なくとも200℃で金属性が維持できるようにする。なお、他の純粋なコバルトナノ粒子は、直ちに焼却される。200℃での酸化は、酸化銅および金属コバルトのみが、サンプルに生成されることを可能とする。よって、酸化銅シェルはコバルトコアの酸化を防止する。
【0022】
本発明の方法によって、銅またはその酸化物でコーティングされたコバルトナノ粒子が得られる。これらのコーティングされたナノ粒子は、コバルトと銅の比率が1:1を超え、これらのコーティングは均一であり、特にコバルトコアの効率的なシールドを、例えば酸化条件下で提供する。これらのコーティング粒子の平均直径は200nm以下であり、コバルトから形成されたコア粒子は、平均直径が100nm以下であって、銅コーティング(または酸化銅コーティング)またはシェルは平均厚さ50nm以下である。
【0023】
薄い銅フィルムとコバルトフィルムの間の磁気共鳴現象、“巨大磁気インピーダンス”(GMI)が既知である。この現象は、1000%超に測定信号を拡大するため、非常に感度の高い磁場センサーを生成するために材料を使用することができる。本発明のセンサーに使用される共鳴現象AMRおよびGMRは、シグナルを4%(AMR)および20%(GMR)増幅することができる。尚、公開されている分子力学モデリングによると、薄い銅層はコバルトクラスターの磁気能率を大幅に変える。また、生成された粉末をセンサー物質に使用することもできる。この種類のセンサーを粉末から製造することは、同じ目的の原子フィルムの使用より実質的により高額である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルトナノ粒子を形成し、それらを銅または酸化銅を用いてコーティングする方法であって、
−形成される塩の混合物が、コバルト:銅の比率>1:1になるように、酸化塩をコバルト塩に混合する工程、および
−還元ガスを用いて還元を実施する工程であって、ナノ粒子がコーティングがその表面でコーティングするのと同時に形成される工程を特徴とする方法。
【請求項2】
コバルト:銅の比率、および混合時の出発原料の質量濃度を調節することによって、コバルトの粒子サイズを調節することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
形成された塩の混合物を、多孔質床から、還元ガスまたは還元ガスを含むガス混合物へと蒸気処理し、反応混合物を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
粉末または液状の形態の出発原料、好ましくは塩化物、硝酸塩、酢酸塩、ギ酸塩もしくは硫酸塩またはこれらのいくつかの塩の混合物、最も適切には塩化コバルトおよび塩亜k銅の形態の出発原料から、金属塩を反応混合物ガスへと上記処理することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
蒸発処理を600〜1000℃、好ましくは700〜900℃で実施することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
水素を還元ガスとして使用し、好ましくは、反応混合物に、窒素またはアルゴンをキャリアガスとして含むガス混合物の一部として添加することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
還元を700〜1000℃、好ましくは800〜950℃で実施することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
形成された銅コーティングを酸化して、コバルトコアの周りに酸化銅のシェルを形成し、粒子のコア中のコバルトは金属性を維持している、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
平均直径200nm未満のコーティングされたコバルトナノ粒子を形成することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
高周波数部材の製造における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項11】
コバルト:銅の比率が>1:1であり、コーティングが均一であることを特徴とする、銅または酸化銅を用いてコーティングされたコバルトナノ粒子。
【請求項12】
平均直径が200nm未満であり、コバルトから形成されたコア粒子は平均直径100nm以下であり、その銅または酸化銅の平均厚さが50nm以下をであることを特徴とする、請求項11に記載のコーティングされたコバルトナノ粒子。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法に従って製造することを特徴とする、請求項11または12に記載のコーティングされたコバルトナノ粒子。

【公表番号】特表2013−518992(P2013−518992A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552434(P2012−552434)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/FI2011/050104
【国際公開番号】WO2011/098665
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(511215207)テクノロジアン テュトキムスケスクス ヴェーテーテー (11)
【氏名又は名称原語表記】Teknologian tutkimuskeskus VTT
【Fターム(参考)】