説明

コヒーレント光受信器、コヒーレント光受信方法、コヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置および検出方法

【課題】コヒーレント光受信器においては、チャネル間にスキューが生じると十分な復調ができず、受信性能が劣化する。
【解決手段】本発明のコヒーレント光受信器は、局所光源と、90°ハイブリッド回路と、光電変換器と、アナログ−デジタル変換器と、デジタル信号処理部を有し、90°ハイブリッド回路は、多重化された信号光を局所光源からの局所光と干渉させて複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力し、光電変換器は、光信号を検波して検波電気信号を出力し、アナログ−デジタル変換器は、検波電気信号を量子化して量子化信号を出力し、デジタル信号処理部は、量子化信号を高速フーリエ変換処理するFFT演算部と、高速フーリエ変換処理した結果から算出された複数の信号成分間の伝播遅延差を補償するスキュー補償部と、量子化信号を復調する復調部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光受信器、コヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置および検出方法に関し、特に、光偏波多重信号をコヒーレント検波とデジタル信号処理により受信するコヒーレント光受信器、コヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの幅広い普及により、ネットワーク内のデータ容量は年々増加している。大都市間を結ぶ大動脈通信路では、1チャネル当たりの伝送容量が10Gb/sおよび40Gb/sの光伝送路がすでに導入されている。10Gb/s伝送では変調方式としてオンオフ変調(On−Off−Keying:OOK)が用いられている。40Gb/s伝送においてもOOK方式が用いられるが、光パルス幅が25psと狭くなり波長分散の影響を大きく受けるため、長距離伝送には不適当である。そのため位相による多値変調方式および偏波多重方式が用いられるようになっており、100Gb/s級伝送では偏波多重4相位相変調(Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying:DP−QPSK)方式が主流となっている。
【0003】
送信器でDP−QPSK変調を施された光信号は、コヒーレント光受信器で受信され復調される(例えば、非特許文献1参照)。図12に、関連するコヒーレント光受信器の構成の一例を示す。関連するコヒーレント光受信器600は、局所光源610、90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)620、光電変換器(O/E)630、アナログ−デジタル変換器(ADC)640、およびデジタル信号処理部(DSP)650を有する。
【0004】
信号光および局所光は、それぞれ片偏波信号として次式で表すことができる。
S(t)=exp[jωt] (1)
L(t)=exp[j(ω+Δω)t] (2)
ここで、Δωは信号光と局所光の周波数オフセットを表す。信号光と局所光は90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)620に入力され、光学干渉系を通って差動構成のフォトダイオードからなる光電変換器(O/E)630によって電気信号に変換される。このときポートIおよびQからそれぞれ次式(3)、(4)で表わされる出力が得られる。
(t)=cos(Δωt) (3)
(t)=sin(Δωt) (4)
偏波多重信号の場合は、S(t)=E+Eとなり、IおよびIポートには混合信号E+Eのcos成分が、QおよびQポートには混合信号E+Eのsin成分が出力される。
【0005】
各ポートから出力された信号は、アナログ−デジタル変換器(ADC)640によってAD変換された後にデジタル信号処理部(DSP)650に入力される。デジタル信号処理部(DSP)650では、偏波分離処理によりE信号とE信号を分離し、さらに位相推定処理によりEとEをそれぞれ4値復調している。
【0006】
このようにして、DP−QPSK信号はコヒーレント光受信器を用いて復調することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M. G. Taylor, “Coherent Detection Method Using DSP for Demodulation of Signal and Subsequent Equalization of Propagation Impairments”, IEEE Photonics Technology Letters, vol. 16, No. 2, February 2004, p. 674-676
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した式(3)、(4)で得られる信号は、コヒーレント光受信器600において90°ハイブリッド回路620の出力からアナログ−デジタル変換器640の入力までの間の4本の信号線の長さがすべて等しい場合にのみ成立する。しかし、90°ハイブリッド回路620の出力から光電変換器630の入力までの光ファイバ、および光電変換器630の出力からアナログ−デジタル変換器640の入力までの同軸線のそれぞれを、4チャネル間で厳密に等長配線とすることは困難である。
【0009】
ここで4チャネル間が等長でない場合、信号の伝達に遅延、すなわちスキューが生じる。このスキューの影響について図13を用いて説明する。図13は、関連する90°ハイブリッド回路620とその周辺部の構成を示すブロック図である。図中、「PBS」は偏光ビームスプリッタを、「CPL」は光カプラを、「τ」は90°位相差部を、「BR」は光電変換器(O/E)630としてのバランス型フォトディテクタをそれぞれ示す。
【0010】
チャネル1(CH1)に対してチャネル2(CH2)にスキューTが存在する場合、上述の(4)式は下記(5)式になる。
(t)=sin(Δω(t+T)) (5)
上述したスキューTが存在しない場合は、上記式(3)および式(4)を用いたデジタル信号処理によって偏波分離および位相推定を行うことができ、完全に復調することができる。しかし、チャネル間スキューが存在すると、式(4)で表わされたポートQからの出力は、式(5)式で表わされる出力信号となり、デジタル信号処理を行っても復調が不十分となり、十分な性能が得られない。このように、コヒーレント光受信器においては、チャネル間にスキューが生じると十分な復調ができず、受信性能が劣化する、という問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上述した課題である、コヒーレント光受信器においては、チャネル間にスキューが生じると十分な復調ができず、受信性能が劣化する、という課題を解決するコヒーレント光受信器、コヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置および検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のコヒーレント光受信器は、局所光源と、90°ハイブリッド回路と、光電変換器と、アナログ−デジタル変換器と、デジタル信号処理部を有し、90°ハイブリッド回路は、多重化された信号光を局所光源からの局所光と干渉させて複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力し、光電変換器は、光信号を検波して検波電気信号を出力し、アナログ−デジタル変換器は、検波電気信号を量子化して量子化信号を出力し、デジタル信号処理部は、量子化信号を高速フーリエ変換処理するFFT演算部と、高速フーリエ変換処理した結果から算出された複数の信号成分間の伝播遅延差を補償するスキュー補償部と、量子化信号を復調する復調部とを備える。
【0013】
本発明のコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出方法は、検査光源からの検査光を局所光源からの局所光と干渉させて複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力し、光信号を検波して検波電気信号を出力し、検波電気信号を量子化して量子化信号を出力し、量子化信号に高速フーリエ変換処理を施し、高速フーリエ変換処理した結果から複数の信号成分間の伝播遅延差を算出する。
【0014】
本発明のコヒーレント光受信方法は、多重化された信号光を局所光源からの局所光と干渉させて複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力し、光信号を検波して検波電気信号を出力し、検波電気信号を量子化して量子化信号を出力し、量子化信号に高速フーリエ変換処理を施し、高速フーリエ変換処理した結果から算出された複数の信号成分間の伝播遅延差を補償する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコヒーレント光受信器によれば、チャネル間にスキューが生じた場合であっても十分な復調が可能であり、受信性能の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信器のFFT演算部が導出するFFTデータをポイント数に対してプロットしたときの概略図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信器のQポートおよびIポートにおける位相差と角周波数との関係をプロットした概略図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信器における別のチャネル間スキュー検出方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信器のQポートおよびIポートにおける位相差と角周波数との別の関係をプロットした概略図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るコヒーレント光受信器のFFT演算部が導出するFFTデータをポイント数に対してプロットしたときの概略図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出方法を示すフローチャートである。
【図12】関連するコヒーレント光受信器の構成を示すブロック図である。
【図13】関連する90°ハイブリッド回路とその周辺部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信器100の構成を示すブロック図である。コヒーレント光受信器100は、局所光源110、90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120、光電変換器(O/E)130、アナログ−デジタル変換器(ADC)140、およびデジタル信号処理部(DSP)150を有する。
【0019】
90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120は、多重化された信号光(Signal)を局所光源110からの局所光と干渉させて、各信号成分に分離した複数の光信号を出力する。本実施形態では、DP−QPSK変調方式を用いた場合について説明する。したがって90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120からは、2偏波(X偏波、Y偏波)についてそれぞれ同相成分(I、I)および直交成分(Q、Q)からなる4チャンネルの信号成分をそれぞれ有する4波の光信号が出力される。
【0020】
光電変換器(O/E)130は、90°ハイブリッド回路120が出力する各光信号を検波して検波電気信号を出力する。アナログ−デジタル変換器(ADC)140は、検波電気信号を量子化して量子化信号を出力する。
【0021】
デジタル信号処理部(DSP)150は、複数の信号成分間の伝播遅延差(以下、「スキュー」と言う)を補償するスキュー補償部151と復調部152を備える。スキュー補償部151は、例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタなどを用いて構成することができ、この場合スキュー値に基づいて決定されるフィルタ係数を有する。復調部152は偏波分離処理により量子化信号をX偏波信号とY偏波信号に分離し、さらに位相推定処理により4チャンネルの信号成分をそれぞれ復調する。
【0022】
次に、コヒーレント光受信器100におけるチャネル間スキューの検出方法について図2を用いて説明する。以下では、コヒーレント光受信器100のデジタル信号処理部(DSP)150がバッファ部(Buf)153とFFT演算部(FFT)154を備えた場合について説明する。ここでFFT演算部154はアナログ−デジタル変換器140が出力する量子化信号に対して高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform、以下では「FFT」と言う)処理を施す。なお図2では、スキュー補償部151および復調部152の記載は省略した。
【0023】
また、以下ではまず、90°ハイブリッド回路においてIポートとQポートの間に90°誤差が存在する場合について説明する。すなわち、90°ハイブリッド回路のIポートとQポートの間には信号周期の90°に相当する遅延があるが、90°ハイブリッド回路の製造ばらつきにより、位相差は必ずしも正確に90°となるとは限らない。この位相差90°の誤差による遅延Δτを考慮すると、上記式(5)は下記式(6)となる。
(t)=sin(Δω(t+T)+Δτ) (6)
この90°誤差が存在する場合、式(4)で表わされたポートQからの出力は、式(6)式で表わされる出力信号となり、この場合もデジタル信号処理を行っても復調が不十分となり、十分な性能が得られない。
【0024】
図2に示すように、コヒーレント光受信器100に検査光源170と制御ブロック180が接続され、コヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置1000を構成する。制御ブロック180は、制御部181、メモリ部182、および演算処理部183を有する。演算処理部183はピーク検出部184とスキュー演算部185を備え、FFT処理結果からスキュー値を算出する。ここでピーク検出部184およびスキュー演算部185は、専用の信号処理回路により構成することもできるし、中央演算処理装置(CPU)とCPUに処理を実行させるプログラムから構成することとしてもよい。
【0025】
90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120のシグナル・ポート121には検査光源(Test)170が接続され、ローカル・ポート122には局所光源110が接続される。90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120の出力ポートであるIポート、Qポート、Iポート、Qポートから出力された光は、それぞれ光電変換器(O/E)130に入力される。
【0026】
コヒーレント光受信器100におけるチャネル間スキューの検出においては、まず、検査光源170から検査光として周波数f(波長λ)の連続発振(Continuous Wave:CW)光をシグナル・ポート121に入力する。ここで検査光源170には波長可変光源を用いることができる。一方、ローカル・ポート122には局所光源110から局所光として周波数f(波長λ)のCW光を入力する。周波数fの検査光と周波数fの局所光は90°ハイブリッド回路120内で干渉し、周波数fIF=│f−f│のビート信号が出力される。このとき、Iポート、Qポート、Iポート、Qポートからそれぞれ出力されるビート信号は下記(7)式から(10)式で表わされる。
=cos(2πfIFt+φIX) (7)
=sin(2πfIFt+φQX) (8)
=cos(2πfIFt+φIY) (9)
=sin(2πfIFt+φQY) (10)
これらのビート信号は光電変換器(O/E)130によって電気信号に変換された後、アナログ−デジタル変換器(ADC)140で量子化されデジタル信号処理部(DSP)150へそれぞれ入力される。デジタル信号処理部(DSP)150では、バッファ部153によって所定の処理単位(例えば、4096ビット)ごとにブロック化され、FFT演算部(FFT)154においてFFT処理が施される。その結果、FFT演算部154の出力として各行列I^(N)、Q^(N)、I^(N)、Q^(N)が得られる。ここで「N」はFFTのポイント数であり、例えばN=0〜4095である。
【0027】
次に、図3に示したフローチャートを参照しながら本実施形態によるコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出方法について説明する。まず、検査光源170の周波数を周波数fS1(波長λS1)に設定する(ステップS1)。これにより、90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120の各出力ポートから周波数fIF=│fS1−f│のビート信号が出力される。
【0028】
次に、データキャプチャを開始する(ステップS2)。このとき制御ブロック180の制御部181はデジタル信号処理部(DSP)150へデータキャプチャ信号を送出する(ステップS3)。FFT演算部154はデータキャプチャ信号を取得し、これをトリガとしてそのときバッファ部(Buf)153に格納されているデータにFFT処理を施し(ステップS4)、FFTデータI^(N)、Q^(N)、I^(N)、Q^(N)を制御部181に返送する。制御部181は取得したFFTデータをメモリ部182に格納する(ステップS5)。
【0029】
制御部181からの指示により演算処理部183のピーク検出部184は、FFTデータI^(N)の4096ポイントの中から、その大きさが最大であるデータI^(Nmax)を抽出する。そして、そのときの周波数(ピーク周波数)fmaxと位相(ピーク位相)φmaxを計算によって求める(ステップ6)。図4に、ポイント数Nに対してI^(N)をプロットしたときの概略図を示す。ここでFFTデータI^(N)は複素数であるので、同図の縦軸はI^(N)の大きさ│I^(N)│であり、横軸はFFTのポイント数Nである。図4に示すように、│I^(N)│がポイント数Nmaxでピークを持つとした場合、ピーク検出部184はI^(Nmax)を検出する。ここで、アナログ−デジタル変換器(ADC)140におけるサンプリング周波数をfとすると、FFTの周波数間隔はf/4096となる。よって、I^(N)がピークとなるときのピーク周波数fmaxはNmax/4096となる。続いて、ピーク周波数がfmaxのときのFFTデータI^(Nmax)からピーク位相情報φmax=∠(I^(Nmax))を計算する。
【0030】
以上により、ピーク検出部184はFFTデータI^(N)の大きさがピークとなるときのピーク周波数fmaxとピーク位相φmaxを求め、制御部181は周波数fIX(1,1)と位相φIX(1,1)としてメモリ部182に格納する(ステップS7)。このとき、その他のFFTデータI^(N)は廃棄することとしてもよい。
【0031】
測定誤差による影響を軽減するため、ステップ3からステップ7までの処理をn回繰り返し、周波数fIX(1,n)と位相φIX(1,n)をそれぞれメモリ部182に格納する(フィードバックループFB1)。n回目のループが終了したとき、終了フラグを立てる(ステップ8)。
【0032】
次に、検査光源170の周波数を周波数fS2に変更し(ステップS9)、再度ステップ2からステップ7までの処理を繰り返して、周波数fIX(2,n)と位相φIX(2,n)をメモリ部182に格納する(ステップS7)。終了フラグを検出したとき(ステップS8)、検査光源170の周波数をさらにスイープし(ステップS9)、再度ステップ2からステップ8までの処理を繰り返す(フィードバックループFB2)。このフィードバックループFB2をm回繰り返すことによって周波数fIX(m,n)と位相φIX(m,n)がそれぞれメモリ部182に格納される。Q^(N)、I^(N)、Q^(N)についても同様の処理を施すことによって、周波数fQX(m,n)、fIY(m,n)、fQY(m,n)と位相φQX(m,n)、φIY(m,n)、φQY(m,n)がそれぞれメモリ部182に格納される。
【0033】
以上の処理が終了したとき、制御部181からの指示により、演算処理部183のスキュー演算部185はスキューを計算する(ステップ10)。例えば、Iポートを基準とするとIポートのスキューはゼロとなり、Q、I、Qの各ポートはIポートに対して位相が進んでいるか、または遅れているかによってスキューを表わす。具体的にはまず、各ポートの位相差を測定回数nおよび測定周波数mについてそれぞれ以下の量を計算することによって求める。
φIX(m,n)=0
φQX(m,n)−φIX(m,n)
φIY(m,n)−φIX(m,n)
φQY(m,n)−φIX(m,n)
図5に、Iポートを基準としたときのQポートおよびIポートにおけるそれぞれの位相差φQX−IX、φIY−IXと角周波数2πfmaxとの関係をプロットした概略図を示す。同図より、QポートおよびIポートについて一次関数による近似式を以下のようにそれぞれ算出する。
φQX−IX=T(2πf)+φ
φIY−IX=T(2πf)+φ
ポートについても同様にして以下のように近似式を算出する。
φQY−IX=T(2πf)+φ
ここで求めた傾きT、T、TがIポートに対するスキューとなる。このとき、スキュー検出の精度はFFTのポイント数NとfIFとの関係から求められる。例えばfIFが1GHzである場合、周期は1ns(=1000ps)であるから、Nが4096のときスキュー検出精度は0.24ps(=1000/4096)となる。すなわち、fIFが小さいと検出精度が低下することがわかる。
【0034】
一方、QポートのIポートに対する位相差は以下のように表される。
φQY(m,n)−φIY(m,n)
このとき、角周波数2πfmaxとの関係は上述した場合と同様に以下の一次関数で近似される。
φQY−IY=T(2πf)+φ
ここで周波数オフセットがない場合、φQX−IXとφQY−IYの位相差はそれぞれπ/2となることから、φおよびφはπ/2となるはずである。よって、IポートとQポート、およびIポートとQポートの90°誤差はそれぞれ、φ−π/2、φ−π/2となる。したがって、図5に示した一次関数のy軸の切片からφ、φを求めることによって、IポートとQポートの90°誤差が得られる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によるコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置およびその検出方法によれば、各出力ポート間のスキューとI−Qポート間の90°誤差を算出することが可能となる。すなわち、90°ハイブリッド回路のシグナル・ポートに検査光を入力し、検査光と局所光のビート信号をアナログ−デジタル変換器で観測し、FFT演算を行って得られた位相情報からスキューと90°誤差を算出することができる。そして本実施形態によるコヒーレント光受信器100によれば、ここで得たスキュー値をデジタル信号処理部150のスキュー補償部151において補償することにより、チャネル間にスキューが生じた場合であっても十分な復調が可能となり、受信性能の劣化を抑制することができる。
【0036】
上述した実施形態では、図3のフィードバックループFB2に示すように、検査光源の周波数をスイープし、各周波数におけるチャネル間のピーク位相の差を求めることによりIポートとQポート間の90°誤差を算出することとした。しかし、この90°誤差が無視できる場合には、より簡易にチャネル間スキューを検出することができる。
【0037】
図6に、この場合におけるチャネル間スキュー検出方法のフローチャートを示す。まず、検査光源170の周波数を周波数fS1(波長λS1)に設定する(ステップS1)。これにより、90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120の各出力ポートから周波数fIF=│fS1−f│のビート信号が出力される。
【0038】
次に、データキャプチャを開始する(ステップS2)。このとき制御ブロック180の制御部181はデジタル信号処理部(DSP)150へデータキャプチャ信号を送出する(ステップS3)。FFT演算部154はデータキャプチャ信号を取得し、これをトリガとしてそのときバッファ部(Buf)153に格納されているデータにFFT処理を施し(ステップS4)、FFTデータI^(N)、Q^(N)、I^(N)、Q^(N)を制御部181に返送する。制御部181は取得したFFTデータをメモリ部182に格納する(ステップS5)。
【0039】
制御部181からの指示により演算処理部183のピーク検出部184は、FFTデータI^(N)の4096ポイントの中から、その大きさが最大であるデータI^(Nmax)を抽出する。そして、そのときの周波数(ピーク周波数)fmaxと位相(ピーク位相)φmaxを計算によって求める(ステップ6)。制御部181はこのときのピーク周波数とピーク位相を周波数fIX(1)、位相φIX(1)としてメモリ部182に格納する(ステップS7)。
【0040】
測定誤差による影響を軽減するため、ステップ3からステップ7までの処理をn回繰り返し、周波数fIX(n)と位相φIX(n)をそれぞれメモリ部182に格納する(フィードバックループFB1)。n回目のループが終了したとき、終了フラグを立てる(ステップ8)。
【0041】
終了フラグを検出したとき、制御部181からの指示により、演算処理部183のスキュー演算部185はスキューを計算する(ステップ9)。例えば、Iポートを基準として、Q、I、Qの各ポートの位相差を測定回数nについてそれぞれ以下のように求める。
φIX(n)=0
φQX(n)−φIX(n)
φIY(n)−φIX(n)
φQY(n)−φIX(n)
図7に、Iポートを基準としたときのQポートおよびIポートにおけるそれぞれの位相差φQX−IX、φIY−IXと角周波数2πfmaxとの関係をプロットした概略図を示す。ここでI−Qポート間の90°誤差が無視できる場合には、QポートおよびIポートについて一次関数による近似式を以下のようにそれぞれ算出することができる。
φQX−IX=a(2πf)+π/2
φIY−IX=a(2πf)
ポートについても同様にして以下のように近似式を算出することができる。
φQY−IX=a(2πf)
ここで求めた傾きa、a、aがIポートに対するスキューとなる。
【0042】
このように、90°誤差が無視できる場合には、より簡易にチャネル間スキューを検出することができる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に係るコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置2000の構成を示すブロック図である。コヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置2000は、コヒーレント光受信器200と、コヒーレント光受信器200に接続された検査光源270および制御ブロック280を有する。
【0044】
コヒーレント光受信器200は、局所光源210、90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)220、光電変換器(O/E)230、アナログ−デジタル変換器(ADC)240、およびデジタル信号処理部(DSP)250を有する。制御ブロック280は、制御部281、メモリ部282、および演算処理部283を有し、演算処理部283はピーク検出部284とスキュー演算部285を備える。
【0045】
本実施形態のコヒーレント光受信器200においては、デジタル信号処理部(DSP)250の構成が、第1の実施形態によるデジタル信号処理部(DSP)150と異なる。デジタル信号処理部(DSP)250は、複素信号生成器252、バッファ部(Buf)253およびFFT演算部(FFT)254を備える。
【0046】
90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)220のシグナル・ポート221には検査光源(Test)270が接続され、ローカル・ポート222には局所光源210が接続される。90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)220の出力ポートであるIポート、Qポート、Iポート、Qポートから出力された光は、それぞれ光電変換器(O/E)230に入力される。
【0047】
コヒーレント光受信器200におけるチャネル間スキューの検出においては、まず、検査光源270から検査光として周波数f(波長λ)の連続発振(Continuous Wave:CW)光をシグナル・ポート221に入力する。ここで検査光源270には波長可変光源を用いることができる。一方、ローカル・ポート222には局所光源210から局所光として周波数f(波長λ)のCW光を入力する。周波数fの検査光と周波数fの局所光は90°ハイブリッド回路220内で干渉し、周波数fIF=│f−f│のビート信号が出力される。このとき、Iポート、Qポート、Iポート、Qポートからそれぞれ出力されるビート信号は、第1の実施形態における場合と同様に、上述の下記(7)式から(10)式で表わされる。
【0048】
これらのビート信号は光電変換器(O/E)230によって電気信号に変換された後、アナログ−デジタル変換器(ADC)240で量子化されデジタル信号処理部(DSP)250へそれぞれ入力される。デジタル信号処理部(DSP)250では、IポートおよびQポートの信号を合成して複素信号として処理する。すなわち、複素信号生成器252はIおよびQを入力して複素信号E=I+jQを出力する。同様に、IおよびQを入力して複素信号E=I+jQを出力する。
【0049】
これらの複素信号EおよびEは、バッファ部253によって所定の処理単位(例えば、4096ビット)ごとにブロック化され、FFT演算部(FFT)254においてFFT処理が施される。その結果、FFT演算部254の出力として各行列E^(N)およびE^(N)が得られる。ここで「N」はFFTのポイント数であり、例えばN=0〜4095である。
【0050】
このときE^(N)は次式で与えられる。

【0051】
ただし、P、P、Δωは下式で表わされる。

【0052】
次に、本実施形態によるコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出方法について説明する。処理のフローは第1の実施形態における場合と同様であり、以下では図3のフローチャートを参照しながら説明する。まず、検査光源270の周波数を周波数fS1(波長λS1)に設定する(ステップS1)。これにより、90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)120の各出力ポートから周波数fIF=│fS1−f│のビート信号が出力される。
【0053】
次に、データキャプチャを開始する(ステップS2)。このとき制御ブロック280の制御部281はデジタル信号処理部(DSP)250へデータキャプチャ信号を送出する(ステップS3)。FFT演算部254はデータキャプチャ信号を取得し、これをトリガとしてそのときバッファ部(Buf)253に格納されているデータにFFT処理を施し、FFTデータE^(N)、E^(N)を制御部281に返送する(ステップS4)。制御部281は取得したFFTデータをメモリ部282に格納する(ステップS5)。
【0054】
制御部281からの指示により演算処理部283のピーク検出部284は、FFTデータE^(N)の4096ポイントの中から、2個のピーク値P=│E^(Npeak1)│およびP=│E^(Npeak2)│を抽出する。そして、そのときの周波数±2πfIFを計算によって求める(ステップ6)。図9に、ポイント数Nに対してE^(N)をプロットしたときの概略図を示す。ここでFFTデータE^(N)は複素数であるので、同図の縦軸はE^(N)の大きさ│E^(N)│であり、横軸はFFTのポイント数Nである。図9に示すように、│E^(N)│がポイント数Npeak1とNpeak2でピークを持つとした場合、ピーク検出部284はPとPを検出する。ここで、アナログ−デジタル変換器(ADC)240におけるサンプリング周波数をfとすると、FFTの周波数間隔はf/4096となる。よって、E^(N)がピークとなるときの周波数は、fpeak1=Npeak1/4096、fpeak2=−(4096−Npeak2)f/4096となる。
【0055】
次に、位相情報φIXとφQXを計算により算出する。まず、ピーク値Pは次式で与えられる。


【0056】

ただし、R、Iは下式で表わされる。


【0057】

また、ピーク値Pは次式で与えられる。


【0058】

ただし、R、Iは下式で表わされる。


【0059】

以上の各式から、下記の関係式が得られる。


【0060】

これらの関係式を解くことにより、位相情報φIXとφQXが下記のように求められる。


【0061】

以上により、ピーク検出部284はFFTデータE^(N)の大きさがピークとなるときの周波数fpeak1とピーク位相φIXとφQXを求め、制御部281は周波数fX(1,1)と位相φIX(1,1)、φQX(1,1)としてメモリ部282に格納する(ステップS7)。このとき、その他のFFTデータE^(N)は廃棄することとしてもよい。
【0062】
測定誤差による影響を軽減するため、ステップ3からステップ7までの処理をn回繰り返し、周波数fX(1,n)と位相φIX(1,n)、φQX(1,n)をそれぞれメモリ部282に格納する(フィードバックループFB1)。n回目のループが終了したとき、終了フラグを立てる(ステップ8)。
【0063】
次に、検査光源270の周波数を周波数fS2に変更し(ステップS9)、再度ステップ2からステップ8までの処理を繰り返して、周波数fX(2,n)と位相φIX(2,n)、φQX(2,n)をメモリ部282に格納する(ステップS7)。終了フラグを検出したとき(ステップS8)、検査光源270の周波数をさらにスイープし(ステップS9)、再度ステップ2からステップ8までの処理を繰り返す(フィードバックループFB2)。このフィードバックループFB2をm回繰り返すことによって周波数fX(m,n)と位相φIX(m,n)、φQX(m,n)がそれぞれメモリ部282に格納される。E^(N)についても同様の処理を施すことによって、周波数fY(m,n)と位相φIY(m,n)、φQY(m,n)がそれぞれメモリ部282に格納される。
【0064】
以上の処理が終了したとき、制御部281からの指示により演算処理部283のスキュー演算部285は、第1の実施形態と同様の手法によりスキューを計算する(ステップ10)。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によるコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置およびその検出方法によれば、各出力ポート間のスキューとI−Qポート間の90°誤差を算出することが可能となる。そして、このスキュー値を第1の実施形態によるコヒーレント光受信器が備えるデジタル信号処理部のスキュー補償部において補償することにより、チャネル間にスキューが生じた場合であっても十分な復調が可能となり、受信性能の劣化を抑制することができる。
【0066】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図10は、本発明の第3の実施形態に係るコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置3000の構成を示すブロック図である。コヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置3000は、コヒーレント光受信器300と、コヒーレント光受信器300に接続された検査光源370、制御ブロック380、およびサンプリングオシロスコープ390を有する。
【0067】
コヒーレント光受信器300は、局所光源310、90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)320、光電変換器(O/E)330を有する。制御ブロック380は、制御部381、メモリ部382、および演算処理部383を有し、演算処理部383はピーク検出部384とスキュー演算部385およびFFT演算部(FFT)386を備える。
【0068】
本実施形態においては、デジタル信号処理部(DSP)の代わりにサンプリングオシロスコープ390を有し、制御ブロック380がFFT演算部(FFT)386を備える点において、第1および第2の実施形態と異なる。サンプリングオシロスコープ390は4チャネルのアナログ−デジタル変換器(ADC)391およびメモリ部392を備える。
【0069】
90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)320のシグナル・ポート321には検査光源(Test)370が接続され、ローカル・ポート322には局所光源310が接続される。90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)320の出力ポートであるIポート、Qポート、Iポート、Qポートから出力されるビート信号は第1の実施形態の場合と同様に上記(7)式から(10)式で表わされる。
【0070】
これらのビート信号は光電変換器(O/E)330によって電気信号に変換された後、サンプリングオシロスコープ390が備えるアナログ−デジタル変換器(ADC)391で量子化され、波形データI(N)、Q(N)、I(N)、Q(N)がメモリ部392に格納される。ここで「N」はデータ数であり、例えばN=0〜4095である。
【0071】
次に、図11に示したフローチャートを参照しながら本実施形態によるコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出方法について説明する。まず、検査光源370の周波数を周波数fS1(波長λS1)に設定する(ステップS1)。これにより、90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)320の各出力ポートから周波数fIF=│fS1−f│のビート信号が出力される。
【0072】
次に、サンプリングオシロスコープ390において波形データをキャプチャする(ステップS2)。このとき制御ブロック380の制御部381はサンプリングオシロスコープ390へ波形取り込み信号を送出する(ステップS3)。そして、そのときサンプリングオシロスコープ390のメモリ部392に格納されている波形データを制御ブロック380のメモリ部382に格納する(ステップ4)。
【0073】
制御ブロック380のFFT演算部(FFT)386はメモリ部382に格納されている波形データI(N)、Q(N)、I(N)、Q(N)にFFT処理を施す(ステップS5)。そして処理結果であるFFTデータI^(N)、Q^(N)、I^(N)、Q^(N)を制御部381に返送する。制御部381は取得したFFTデータをメモリ部382に格納する(ステップS6)。
【0074】
制御部381からの指示により演算処理部383のピーク検出部384は、FFTデータI^(N)の4096ポイントの中から、その大きさが最大であるデータI^(Nmax)を抽出する。そして、そのときの周波数fmaxと位相φmaxを計算によって求める(ステップ7)。
【0075】
測定誤差による影響を軽減するため、ステップ2からステップ7までの処理をn回繰り返し、周波数fIX(1,n)と位相φIX(1,n)をそれぞれメモリ部382に格納する(フィードバックループFB1)。n回目のループが終了したとき、検査光源370の周波数を周波数fS2に変更し(ステップS8)、再度ステップ2からステップ7までの処理を繰り返して周波数fIX(2,n)と位相φIX(2,n)をメモリ部382に格納する(フィードバックループFB2)。検査光源370の周波数をさらにスイープし、フィードバックループFB2をm回繰り返すことによって周波数fIX(m,n)と位相φIX(m,n)がそれぞれメモリ部382に格納される。Q^(N)、I^(N)、Q^(N)についても同様の処理を施すことによって、周波数fQX(m,n)、fIY(m,n)、fQY(m,n)と位相φQX(m,n)、φIY(m,n)、φQY(m,n)がそれぞれメモリ部382に格納される。
【0076】
以上の処理が終了したとき、制御部381からの指示により演算処理部383のスキュー演算部385は、第1の実施形態と同様の手法によりスキューを計算する(ステップ9)。
【0077】
以上説明したように、本実施形態によるコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置および検出方法によれば、各出力ポート間のスキューとI−Qポート間の90°誤差を算出することが可能となる。そして、このスキュー値を第1の実施形態によるコヒーレント光受信器が備えるデジタル信号処理部のスキュー補償部において補償することにより、チャネル間にスキューが生じた場合であっても十分な復調が可能となり、受信性能の劣化を抑制することができる。
【0078】
上述した実施形態では、コヒーレント光受信器は偏波ダイバーシティ型の90°ハイブリッド回路(Polarization Diversity 90° Hybrid)を備えることとした。しかしこれに限らず、単一偏波型90°ハイブリッド回路(Single Polarization 90° Hybrid)、または単一偏波型90°ハイブリッド回路を組み合わせて用いることとしてもよい。
【0079】
また、上述の実施形態では、90°ハイブリッド回路のシグナル・ポートに検査光源を接続して周波数をスイープすることとしたが、これに限らず、検査光源の波長は一定とし、局所光源に波長可変レーザを用いて波長をスイープすることとしてもよい。
【0080】
上述の説明において、「Iポート」、「Qポート」とは、物理的なポートであるIポート、Qポートから出力される信号を示す。ただし、(7)式から(10)式の説明における「Iポート」、「Qポート」、「Iポート」、「Qポート」は、それぞれ物理的なポートを示す。
【0081】
また、図12および図13に関する説明における「4チャネル」とは、90°ハイブリッド回路620の出力からアナログ−デジタル変換器640の入力までの間の4本の信号線を示す。また、「チャネル1(CH1)」とはポートIを、「チャネル2(CH2)」とはポートQをそれぞれ示す。
【0082】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【0083】
この出願は、2010年5月21日に出願された日本出願特願2010−116878を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0084】
100、200、300 コヒーレント光受信器
110、210、310 局所光源
120、220、320 90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)
121、221、321 シグナル・ポート
122、222、322 ローカル・ポート
130、230、330 光電変換器(O/E)
140、240 アナログ−デジタル変換器(ADC)
150、250 デジタル信号処理部(DSP)
151 スキュー補償部
152 復調部
153、253 バッファ部(Buf)
154、254、386 FFT演算部(FFT)
170、270、370 検査光源
180、280、380 制御ブロック
181、281、381 制御部
182、282、382、392 メモリ部
183、283、383 演算処理部
184、284、384 ピーク検出部
185、285、385 スキュー演算部
252 複素信号生成器
390 サンプリングオシロスコープ
600 関連するコヒーレント光受信器
610 局所光源
620 90°ハイブリッド回路(90°Hybrid)
630 光電変換器(O/E)
640 アナログ−デジタル変換器(ADC)
650 デジタル信号処理部(DSP)
1000、2000、3000 コヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所光源と、90°ハイブリッド回路と、光電変換器と、アナログ−デジタル変換器と、デジタル信号処理部を有し、
前記90°ハイブリッド回路は、多重化された信号光を前記局所光源からの局所光と干渉させて複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力し、
前記光電変換器は、前記光信号を検波して検波電気信号を出力し、
前記アナログ−デジタル変換器は、前記検波電気信号を量子化して量子化信号を出力し、
前記デジタル信号処理部は、前記量子化信号を高速フーリエ変換処理するFFT演算部と、前記高速フーリエ変換処理した結果から算出された前記複数の信号成分間の伝播遅延差を補償するスキュー補償部と、前記量子化信号を復調する復調部とを備える
コヒーレント光受信器。
【請求項2】
前記スキュー補償部は、前記高速フーリエ変換処理した結果が最大値をとるときのピーク周波数とピーク位相とから算出された前記伝播遅延差を補償する
請求項1に記載したコヒーレント光受信器。
【請求項3】
請求項1または2に記載したコヒーレント光受信器と、検査光源と、制御ブロックとを有し、
前記90°ハイブリッド回路は、前記検査光源からの検査光を前記局所光源からの局所光と干渉させて複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力し、
前記制御ブロックは、前記高速フーリエ変換処理した結果から前記複数の信号成分間の伝播遅延差を算出する
コヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置。
【請求項4】
前記制御ブロックは、ピーク検出部とスキュー演算部を有し、
前記ピーク検出部は、前記高速フーリエ変換処理した結果が最大値をとるときのピーク周波数とピーク位相を前記複数の信号成分ごとに算出し、
前記スキュー演算部は、前記ピーク周波数と前記ピーク位相とから前記伝播遅延差を算出する
請求項3に記載したコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置。
【請求項5】
前記制御ブロックは、ピーク検出部とスキュー演算部を有し、
前記FFT演算部は、前記複数の信号成分に対応した前記量子化信号を合成した信号について高速フーリエ変換処理を施し、
前記ピーク検出部は、前記高速フーリエ変換処理した結果から複数のピークを検出し、前記各ピークをとるときのピーク周波数とピーク位相をそれぞれ算出し、
前記スキュー演算部は、前記ピーク周波数と前記ピーク位相とから前記伝播遅延差を算出する
請求項3に記載したコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置。
【請求項6】
前記スキュー演算部は、前記複数の信号成分にそれぞれ対応した前記ピーク位相の差分を前記ピーク周波数の1次関数としたときの傾きを前記伝播遅延差とする
請求項4または5に記載したコヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出装置。
【請求項7】
検査光源からの検査光を局所光源からの局所光と干渉させて複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力し、
前記光信号を検波して検波電気信号を出力し、
前記検波電気信号を量子化して量子化信号を出力し、
前記量子化信号に高速フーリエ変換処理を施し、
前記高速フーリエ変換処理した結果から前記複数の信号成分間の伝播遅延差を算出する
コヒーレント光受信器におけるチャネル間スキュー検出方法。
【請求項8】
多重化された信号光を局所光源からの局所光と干渉させて複数の信号成分に分離した複数の光信号を出力し、
前記光信号を検波して検波電気信号を出力し、
前記検波電気信号を量子化して量子化信号を出力し、
前記量子化信号に高速フーリエ変換処理を施し、
前記高速フーリエ変換処理した結果から算出された前記複数の信号成分間の伝播遅延差を補償する
コヒーレント光受信方法。
【請求項9】
前記伝播遅延差を補償する処理は、前記高速フーリエ変換処理した結果が最大値をとるときのピーク周波数とピーク位相とから算出された前記伝播遅延差を補償する
請求項8に記載したコヒーレント光受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−102506(P2013−102506A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−5366(P2013−5366)
【出願日】平成25年1月16日(2013.1.16)
【分割の表示】特願2012−515937(P2012−515937)の分割
【原出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 総務省、「超高速光伝送システム技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】