説明

コポリエーテルエステルエラストマー

本発明は、ソフトセグメントとハードセグメントを含有して成る新規な熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物に関する。本コポリエーテルエステルエラストマー組成物のソフトセグメントはランダムポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールに由来しかつ前記ハードセグメントは短鎖ポリエステルで構成されている。本発明は、また、本新規なコポリエーテルエステルエラストマー組成物を製造する方法およびそれを含有して成る製品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は2009年12月11日付けで出願した国際出願番号PCT/US2009/067688の一部継続出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ソフトセグメントとハードセグメントを含有して成る新規な熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物に関する。本コポリエーテルエステルエラストマー組成物のソフトセグメントは、ランダムポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールに由来する長鎖ポリエステルで構成されておりかつ前記ハードセグメントは短鎖ポリエステルで構成されている。前記ハードセグメントは芳香族ジカルボン酸と短鎖ジオールから誘導可能である。本発明の組成物は同様な使用、例えば繊維、フィルムおよび他の成形品など用として一般に意図される同様な現存組成物に比べて注目すべきほど向上した特性を示す。本発明は、また、本新規なコポリエーテルエステルエラストマー組成物を製造する方法およびそれを含有して成る製品にも関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、他の2種類の重合体、即ち加熱で再成形可能な熱可塑性プラスチックとゴム様重合体であるエラストマーが有する特性が組み合わされた種類の重合体である。TPEの1つの形態はブロック共重合体であり、これは一般に熱可塑性プラスチックの重合体特性に類似した特性を示すブロックをいくつか含有しかつエラストマーの特性に類似した特性を示すブロックをいくつか含有する。熱可塑性プラスチックの特性に類似した特性を有するブロックはしばしば“ハード”セグメントと呼ばれる一方、エラストマーの特性に類似した特性を有するブロックはしばしば“ソフト”セグメントと呼ばれる。そのようなハードセグメントは伝統的熱硬化性エラストマーが有する化学的架橋に類似した特性を与える一方でソフトセグメントはゴム様特性を与えると考えている。
【0004】
ハードセグメントとソフトセグメントの比率ばかりでなくそのようなセグメントの種類によって結果としてもたらされるTPEが示す特性が大きな度合で決定される。例えば、ソフトセグメントが長ければ長いほど一般に初期引張係数が低いTPEがもたらされる一方でハードセグメントのパーセントが高いと初期引張係数がより高いTPEがもたらされる。他の特性も同様に影響を受け得る。このように、分子レベルの操作でTPEが示す特性の変化に影響が生じることから、改良されたTPE材料が絶えず探求されている。
【0005】
TPE材料のソフトセグメントはしばしばポリ(アルキレンオキサイド)セグメントで構成されている。現在のポリエーテルポリオールは、環式エーテル、例えばエチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイドおよびテトラヒドロフランなどに由来する重合体が基になっている。そのような環式エーテルは商業源から容易に入手可能であり、それらに開環重合を受けさせるとポリエーテルグリコール、例えばそれぞれポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(1,2−プロピレン)グリコール(PPG)、PEGキャップドPPG(EOPPG)およびポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)などが生じる。
【0006】
コポリエーテルエステル(COPE)製品およびそれらの製造が特許文献1および2に開示されている。前記製品の2段階合成が非特許文献1に詳述されている。1番目の段階は、テレフタル酸ジメチル(DMT)と長鎖ポリオール、例えばPTMEG、PEG、PPGまたはEOPPGなどと短鎖ジオール、例えばエチレングリコール(EG)、1,4
−ブタンジオール(BDO)などの間のエステル交換であり、それには典型的にチタン化合物、例えばチタン酸テトラ−n−ブチル(TBT)などが触媒として用いられる。2番目の段階で、前記1番目の段階の結果として生じたブチレンテレフタレートおよびポリエーテルテレフタレートを重縮合させると最終的生成物であるコポリエーテルエステル(COPE)を生じるが、余分な短鎖ジオールを高温高真空下で除去することでその重縮合を起こさせている。
【0007】
セグメント化コポリエーテルエステルおよびそれから作られた弾性重合体ヤーンが特許文献3に開示されている。前記セグメント化コポリエーテルエステルの製造は(a)ジカルボン酸またはエステル形成誘導体、(b)式HO(RO)Hで表されるポリエーテルおよび(c)ビスフェノールおよび低級脂肪族グリコールから選択されるジヒドロキシ化合物を用いて実施される。前記式中のRは二価基でありそしてnは分子量が350から6,000ダルトンのポリエーテルをもたらす値の整数である。代表的ポリエーテルには、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールなどが含まれる。
【0008】
共重合したテトラヒドロフランの含有量が80から97モル%で共重合した(好適には3−メチルテトラヒドロフランと共重合した)環式アルキレンオキサイドの含有量が3から20モル%の長鎖ポリアルキレンエーテルグリコールから生じたソフトセグメントを有するセグメント化熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマーが特許文献4に開示されている。前記コポリエーテルエステルエラストマーはソフトセグメントを70から90重量%およびハードセグメントを10から30重量%含有して成る。ソフトセグメントを少なくとも70重量%およびハードセグメントを10から30重量%含有して成るセグメント化熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマーが特許文献5に開示されている。
【0009】
ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールとテレフタル酸から生じたソフトセグメントの含有量が少なくとも70重量%である熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマーが特許文献6に開示されている。ハードセグメントが前記エラストマーを構成している度合は多くて30重量%であり、これの95から100%がポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)である。特許文献6には、前記ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールの分子量は1,500から5,000ダルトンでありかつ酸素に対する炭素の比率は2から4.3であることが開示されている。代表的ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールには、ポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールなどが含まれる。その実施例に示されているソフトセグメントはPTMEGとテトラヒドロフラン/エチレンオキサイドのコポリエーテルが基になっている。
【0010】
ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールとテレフタル酸から生じたソフトセグメントの含有量が少なくとも83重量%である熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマーが特許文献7に記述されている。ハードセグメントが10から17重量%を構成していてポリ(1,3−プロピレンビベンゾエート)を含有して成る。特許文献7には、前記ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールの分子量は1,500から5,000ダルトンでありかつ酸素に対する炭素の比率は2.5から4.3であることが開示されている。代表的な例には、ポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールなどが含まれる。その実施例に示されているソフトセグメントはPTMEGとテトラヒドロフラン/3−メチルテトラヒドロフランが基になっている。
【0011】
ハードセグメントとソフトセグメントを含有して成るブロックコポリエステルが特許8に記述されていて、そのコポリエステルの融点は200℃に等しいか或はそれ以上でありかつそのコポリエステルが示すガラス転移温度は−40℃に等しいか或はそれ以下である。前記ハードセグメントはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであると記述されている。前記ソフトセグメントは少なくとも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪ジオールおよび/またはそれらの相当物から生じたセグメントであると記述されている。
【0012】
ポリトリメチレンエーテルエステルソフトセグメントとポリエチレンエステルハードセグメントを有するポリエーテルエステルエラストマー組成物が特許文献9に記述されており、それに核形成剤、例えばアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩などから選択した核形成剤を含有させている。そのような組成物から成形品、特に鋳込み品、フィルムおよび繊維を製造することが開示されている。
【0013】
ポリトリメチレンエーテルエステルソフトセグメント含有量が60から90重量%でテトラメチレンエステルハードセグメント含有量が10から40重量%のポリエーテルエステルエラストマーおよびそれを繊維および他の成形品で用いることが特許文献10に記述されている。ハードセグメントとソフトセグメントを70/30から30/70の範囲の幅広いハード/ソフト比で含有して成るポリエーテルエステルエラストマー繊維が特許文献11に記述されている。前記ポリエーテルエステルエラストマー繊維が有するソフトセグメントとしてのポリオキシエチレングリコールが含有するオキシエチレングリコールの量は70モル%以上、好適には80モル%以上または90モル%以上である。
【0014】
ポリトリメチレンエーテルエステルソフトセグメントとテトラメチレンエステルハードセグメントを含有して成る熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーが特許文献12に開示されている。ポリトリメチレンエーテルエステルソフトセグメントとトリメチレンエステルハードセグメントを含有して成る熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーが特許文献13に開示されている。ポリエーテルポリオール組成物成分と少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸もしくはそれのエステル形成誘導体を含有して成る芳香族ジカルボン酸成分と少なくとも1種のジオールを含有して成る短鎖ジオール成分の共重合体を含有して成る熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーが特許文献14に開示されている。前記特許文献に開示されている熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーは、例えば繊維、フィルムおよび/または他の成形品などの製造で用いるに有用であると述べられている。
【0015】
ポリトリメチレンエーテルエステルソフトセグメント、特にポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンエステルハードセグメント、特にポリエチレンテレフタレートを含有して成る熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマーが特許文献15に記述されている。そのような材料は前記ポリエチレンテレフタレートハードセグメントの融点および熱安定性の方がテトラメチレンもしくはトリメチレンエステルが基になったハードセグメントのそれよりも高いことが理由でいくつかの用途で潜在的利点を有すると述べられている。しかしながら、それらの使用は特にエンジニアリング樹脂用途に制限されている、と言うのは、それらが示す結晶化速度は比較的遅いからである。ポリトリメチレンエーテルテレフタレートソフトセグメントとポリエチレンテレフタレートハードセグメントを含有して成る未改質ポリエーテルエステルは大部分の射出成形用途に適さない。そのような重合体は結晶化速度が遅いことが原因でペレットまたはフレークにするのが困難であり、繊維に紡績するのが困難でありかつ熱成形、射出成形およびブロー成形などの如き方法で成形品に加工するのも困難である、と言うのは、鋳型から取り出した鋳物が充分には結晶化していないことは製品が使用中に結晶化し続ける可能性があることを意味するからである。
【0016】
典型的な商業的COPE材料の製造は、PBTハードセグメントとPTMEGテレフタレートソフトセグメントを用いて実施され、そのPTMEGの分子量は600から2000g/モルに及んで多様でありかつ前記PBTハードセグメントの含有量は25から90
重量%で多様である。しかしながら、使用するPTMEGの分子量が高く、例えば2000g/モルなどであることに加えてハードセグメントの濃度が高いと、良く知られた“融液相”現象がエステル交換中に起こる可能性がある。そのような融液相が生じるとガラス転移温度(Tg)を2つ示すか或はガラス転移温度の範囲が非常に幅広いCOPE材料がもたらされてしまう。その結果として、そのような材料は相対的に劣った機械的および動的特性、例えば低い引張り強度および低温耐衝撃性などを示す[非特許文献2を参照]。融液相が生じる可能性によって使用可能なPTMEGの分子量およびハードセグメントの濃度が制限される。
【0017】
上述した出版物は全部引用することによって本明細書に組み入れられる。
【0018】
従来技術に例示されている材料が基になったTPE材料は主にPTMEG、テトラヒドロフランと3−アルキルテトラヒドロフランの共重合体、PEG、PPGおよびそれらの共重合体が基になっている。ある範囲のコポリエーテルエステルTPE材料はそのようなポリエーテルポリオールを基にして製造可能ではあるが、機械的、動的および熱特性の全体的改良の必要性が存在したままであり、それらには引張り強度、伸び、引き伸ばし回復特性、耐摩耗性およびガラス転移温度の中の1つ以上が含まれる。本発明は、そのような特性の全体的に向上した均衡の達成に向けた顕著な利点を与えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】英国特許第682,866号
【特許文献2】米国特許第2,744,087号
【特許文献3】米国特許第3,023,192号
【特許文献4】米国特許第4,906,729号(EP 0353768)
【特許文献5】米国特許第5,162,455(EU 0607256)
【特許文献6】米国特許第4,937,314号
【特許文献7】米国特許第5,128,185号
【特許文献8】米国特許第6,670,429号
【特許文献9】米国特許公開2008/0103217A1
【特許文献10】EP 1,448,657B1
【特許文献11】EP 1,643,019 A1
【特許文献12】米国特許第6,562,457号
【特許文献13】米国特許第6,599,625号
【特許文献14】米国特許第6,833,428号
【特許文献15】米国特許公開2005/0282966A1
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】W.K.Witsiepeによる総説、Adv.Chem.Ser.、129、39(1973)
【非特許文献2】O.Olabisi編集の“Handbook of Thermoplastics”の397頁のR.W.M.van Berkel他による“Polyester−Based Thermoplastic Elastomers”、1997
【発明の概要】
【0021】
本発明は、ソフトセグメントとハードセグメントを含有して成る新規な熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物を提供するものである。本発明のコポリエーテルエステルエラストマー組成物のソフトセグメントをランダムポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールから生じさせた長鎖ポリエステルで構成させか
つハードセグメントを短鎖ポリエステルで構成させるが、その短鎖ポリエステルは芳香族ジカルボン酸と短鎖ジオールから誘導可能である。本発明の組成物のソフトセグメントは構造式:
【0022】
【化1】

【0023】
[式中、RおよびR’は、−H、−CH3、−C2H5およびこれらの組み合わせから成る群より選択され、Dは、カルボキシル基が1種以上の相当するジカルボン酸相当物から取り除かれた後に残存する1種以上の二価基であり、xは、1に等しいか或はそれ以上の整数であり、yは、1に等しいか或はそれ以上の整数であるが、x/yの平均は0.33から3.0であり、そしてzは、2に等しいか或はそれ以上の整数であるが、zの平均は4から26である]
で表される。本発明の組成物のハードセグメントは構造式:
【0024】
【化2】

【0025】
[式中、mは、0または1または2に等しい整数であり、そしてDは、カルボキシル基が1種以上の相当するジカルボン酸相当物から取り除かれた後に残存する1種以上の二価基である]
で表される。
【0026】
本組成物のソフトセグメントをコポリエーテルエステルの総組成の70重量%未満にする。そのようなソフトセグメントを主にアルキレンオキサイドとテトラヒドロフランのランダムコポリエーテルグリコールから生じさせたコポリエーテルのエステルで構成させる。前記テトラヒドロフランは2−メチル−テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、3−エチルテトラヒドロフランおよびこれらの組み合わせから成る群より選択した少なくとも1種のアルキルテトラヒドロフランを含有して成っていてもよい。また、前記ソフトセグメントに2番目の少量成分を含有させることも可能であり、それを主要なランダムコポリエーテルグリコールと混合し、そしてそのような2番目の成分はポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)またはそれらのブロックコポリエーテルグリコールであってもよく、かつその少量成分をソフトセグメントの50重量%未満にする。
【0027】
本組成物は、同様な使用、例えば繊維、フィルム、エンジニアリング樹脂および他の成形品などに使用することが一般に意図された現存の同様な組成物に比べて注目すべきほど向上した特性を示す。本発明は、また、本新規なコポリエーテルエステルエラストマー組成物の製造方法およびそれを含有して成る製品、即ち製造品も提供するものである。
【0028】
発明の詳細な説明
我々は、前記を考慮して集中的な研究を行った結果、ランダムポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールから生じたソフトセグメントと芳香族ジカルボン酸と短鎖ジオールから誘導可能な短鎖ポリエステルで構成されているハードセグ
メントを含有して成る新規な熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物、そのような熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物を製造する方法、およびそれを製造品、例えば繊維、軟質フィルム、エンジニアリング樹脂および他の成形品などで有利に用いることができることを見いだした。
【0029】
本明細書で用いる如き用語“重合”は、特に明記しない限り、用語“共重合”をそれの意味の範囲内に包含する。
【0030】
本明細書で用いる如き用語“PTMEG”は、特に明記しない限り、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)を意味する。PTMEGはまたポリオキシブチレングリコールとしても知られる。本明細書で用いる如き用語“PPG”は、特に明記しない限り、ポリプロピレンエーテルグリコールを意味する。本明細書で用いる如き用語“EOPPG”は、特に明記しない限り、エチレンオキサイドキャップドポリプロピレンエーテルグリコールを意味する。本明細書で用いる如き用語“PEG”は、特に明記しない限り、ポリエチレンエーテルグリコールを意味する。本明細書で用いる如き用語“DMT”は、特に明記しない限り、テレフタル酸ジメチル、即ちテレフタル酸とメタノールのエステルを意味する。本明細書で用いる如き用語“BDO”は、特に明記しない限り、1,4−ブタンジオールを意味する。本明細書で用いる如き用語“TBT”は、特に明記しない限り、チタン酸テトラブチルを意味する。
【0031】
本明細書で用いる如き用語“アルキレンオキサイド”は、特に明記しない限り、アルキレンオキサイド環中に炭素原子を2、3または4個含有する化合物を意味する。前記アルキレンオキサイドは、置換されていないか、或は例えば炭素原子数が1から6の直鎖もしくは分枝アルキルで置換されているか、或は非置換もしくは炭素原子数が1または2のアルキルおよび/またはアルコキシまたはハロゲン原子、例えば塩素またはフッ素などで置換されているアリールなどで置換されていてもよい。そのような化合物の例には、エチレンオキサイド(EO)、1,2−プロピレンオキサイド、1,3−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、2,2−ビス−クロロメチル−1,3−プロピレンオキサイド、エピクロロヒドリン、パーフルオロアルキルオキシラン、例えば(1H,1H−パーフルオロペンチル)オキシランなどおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0032】
本発明の1つの態様は、ソフトセグメントとハードセグメントを含有して成る新規な熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物であり、ここでは、前記ソフトセグメントをランダムポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールから生じさせかつ前記ハードセグメントを短鎖ポリエステルで構成させるが、この短鎖ポリエステルは芳香族ジカルボン酸と短鎖ジオールから誘導可能である。本発明の組成物のソフトセグメントは構造式:
【0033】
【化3】

【0034】
[式中、RおよびR’は、−H、−CH3、−C2H5およびこれらの組み合わせから成る群より選択され、Dは、カルボキシル基が1種以上の相当するジカルボン酸相当物から取り除かれた後に残存する1種以上の二価基であり、xは、1に等しいか或はそれ以上の整数であり、yは、1に等しいか或はそれ以上の整数であるが、x/yの平均は0.33から3.0であり、そしてzは、2に等しいか或はそれ以上の整数であるが、zの平均は
4から26である]
で表される。本発明の組成物のハードセグメントは構造式:
【0035】
【化4】

【0036】
[式中、mは、0または1または2に等しい整数であり、そしてDは、カルボキシル基が1種以上の相当するジカルボン酸相当物から取り除かれた後に残存する1種以上の二価基である]
で表される。本発明の別の態様は、前記ソフトセグメントのRおよびR’の片方もしくは両方が-Hを含んで成る前記態様を包含する。本コポリエーテルエステルエラストマー組成物はソフトセグメントを10重量%から70重量%未満、例えば69重量%およびハードセグメントを30重量%、例えば31重量%から90重量%含有して成る。例えば、本コポリエーテルエステルエラストマー組成物はソフトセグメントを20重量%から65重量%およびハードセグメントを35重量%から80重量%、例えばソフトセグメントを30重量%から60重量%およびハードセグメントを40重量%から70重量%含有して成る。本明細書に示すように、本組成物は、同様な使用、例えば繊維、フィルム、エンジニアリング樹脂および他の成形品など用として一般に意図される同様な現存組成物に比べて注目すべきほど向上した特性を示す。
【0037】
本発明の別の態様は、そのような新規な熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物を製造する方法である。この方法は、(1)ランダムポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコール、芳香族ジカルボン酸、例えばそれのメチルエステルなど、短鎖ジオールおよび触媒反応槽内で一緒にし、(2)前記反応槽の内容物をエステル交換(EI)反応に有効な条件(副生成物であるメタノールを除去する手段を包含)下に維持し、(3)前記反応槽の内容物を重縮合反応に有効な条件下に維持しそして(4)コポリエーテルエステルエラストマーを回収する逐次的段階を含んで成る。
【0038】
本発明の他の態様は、本新規な熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物から作られたか或はそれを含有して成る製造品、例えば繊維、軟質フィルムおよび成形品などである。
【0039】
本発明のコポリエーテルエステルエラストマーの非限定例が示す融点は150℃から240℃、例えば170℃から235℃であり、引張り強度は2500psi以上、例えば3000psi以上であり、破壊時伸びは200%以上、例えば300%以上であり、かつこれのソフトセグメントは−50℃未満、例えば−55℃未満に単一のガラス転移温度を示す。本新規なコポリエーテルエステルエラストマーが示す低温固化の度合は、ハードセグメントの組成が匹敵する場合、PTMEGソフトセグメントを含有して成るコポリエーテルエステルエラストマーに比べて低い[例えば、Clash−Berg剛性試験(ASTM D1043)などで測定した時]。
【0040】
本新規な熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物のソフトセグメントを生じさせる時に必要なポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールをエチレンオキサイドとオキシテトラメチレンエーテルグリコール、即ちH(OCHCH(OCHCHCHCHOH[ここで、aは1に等しいか或はそれ以上の整数であり、bは1に等しいか或はそれ以上の整数であるが、a/bの平均は0.33から3.0であり、そしてcは2に等しいか或はそれ以上の整数であるが、c
の平均は4から26である]のランダム共重合体に由来する。そのようなポリオールの数平均分子量は500から5000ダルトンであり、それが示す極性の方がPTMEGのそれよりも高い。前記ランダム共重合体であるポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラ−メチレンエーテル)グリコール[これはオキシエチレンを25から75モル%、例えばオキシエチレンを30から65モル%、例えばオキシエチレンを40から55モル%含有して成り得る]は他の利点、即ち第一ヒドロキシル末端のみであること、融点が非常に低いことおよび粘度が低いことの利点も有する。本明細書で用いるに適したランダム共重合体であるポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールの数平均分子量は500から3000ダルトン、例えば1000から2500ダルトン、例えば1500から2500ダルトンであってもよい。
【0041】
そのようなポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールの製造は当該技術分野で公知の方法のいずれかで実施可能である。そのような材料を製造する方法は、ポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールが本発明における使用に必要な仕様を満足させる限り重要ではない。適切な方法には、米国特許第4,139,567号および米国特許第6,989,432号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている方法が含まれる。
【0042】
本新規な熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物のハードセグメントを短鎖ポリエステルで構成させるが、それは芳香族ジカルボン酸と短鎖ジオールから誘導可能である。
【0043】
前記ソフトもしくはハードセグメントを生じさせるための芳香族ジカルボン酸は、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸もしくはこれのエステル形成誘導体またはこれらの組み合わせを含有して成る。前記式中のDは、カルボキシル基が1種以上の相当するジカルボン酸相当物から取り除かれた後に残存する1種以上の二価基を表し、それを少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸もしくはこれのエステル形成誘導体またはこれらの組み合わせから生じさせる。芳香族ジカルボン酸の“エステル形成誘導体”は、芳香族ジカルボン酸のエステルを意味する。一般に、コポリエーテルエステルエラストマーを生じさせている間に、エステル交換に続いて重縮合をエステル交換反応で起こさせてもよく、それによって、エステル交換反応でエステルを形成するいずれかの芳香族ジカルボン酸誘導体が本発明のコポリエーテルエステルエラストマーの中に芳香族ジカルボン酸エステル単位として取り込まれる可能性がある。
【0044】
芳香族ジカルボン酸の具体例には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸および5−スルホイソフタル酸が含まれる。
【0045】
芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体の例には、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジ−n−プロピル、イソフタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−n−プロピル、テレフタル酸ジイソプロピル、テレフタル酸ジ−n−ブチル、テレフタル酸ジ−s−ブチル、テレフタル酸ジ−t−ブチル、テレフタル酸ジヘプチル、テレフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、テレフタル酸ジイソノニル、テレフタル酸ジイソデシル、テレフタル酸ブチルベンジル、テレフタル酸ジシクロヘキシル、2,6−ナフタレンカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸ジメチル、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸ジエチル、ジフェノキシエタンジカルボン酸ジメチルおよびジフェノキシエタンジカルボン酸ジエチルが含まれる

【0046】
そのような芳香族ジカルボン酸は更に非芳香族ジカルボン酸、例えば脂環式または脂肪族ジカルボン酸およびこれのエステル形成誘導体なども含有している可能性がある。非芳香族ジカルボン酸およびこれのエステル形成誘導体の具体例には、脂環式ジカルボン酸、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、脂肪族ジカルボン酸、例えばこはく酸、しゅう酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸および二量体酸、およびこれらのエステル形成誘導体が含まれる。芳香族ジカルボン酸が脂環式または脂肪族ジカルボン酸を含有する場合、そのような脂環式または脂肪族ジカルボン酸の量を好適には当該芳香族ジカルボン酸のモル量を基準にして15モル%以下にする。
【0047】
最終的コポリエーテルエステルが示す特性を変える目的でハードセグメントに三官能カルボン酸、例えばトリメリット酸トリメチルなどを少量(例えば約2重量%未満)含有させることも可能である。
【0048】
そのようなハードセグメントを生じさせるための短鎖ジオールは、各々の炭素原子数が2から10の脂肪族ジオールおよび脂環式ジオールから成る群より選択した少なくとも1種のジオールを含有して成る。本発明で用いるに適した短鎖ジオールの分子量は一般に300ダルトン以下である。上述したジオールの例には、脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,10−デカメチレングリコールなど、および脂環式ジオール、例えば1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびトリシクロデカンジメタノールなどが含まれる。上述した短鎖ジオールは個別または2種以上の化合物の組み合わせとして使用可能である。本明細書で用いるに有用な上述したジオールの中でエチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールが好適である。
【0049】
前記短鎖ジオールに更に芳香族ジオールを含有させることも可能である。芳香族ジオールの非限定例には、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンおよび1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサンが含まれる。短鎖ジオールが芳香族ジオールを含有して成る場合、その芳香族ジオールの量を一般に短鎖ジオールのモル量を基準にして15モル%以下にする。
【0050】
本新規な熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー組成物を製造する方法は、(1)ランダムポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコール、芳香族ジカルボン酸、例えばそれのメチルエステルなど、短鎖ジオールおよび触媒を反応槽内で一緒にし、(2)前記反応槽の内容物をエステル交換(EI)反応に有効な条件(副生成物であるメタノールを除去する手段を包含)下に維持し、(3)前記反応槽の内容物を重縮合反応に有効な条件下に維持しそして(4)コポリエーテルエステルエラストマーを回収する逐次的段階を含んで成る。本発明の方法の段階(2)のエステル交換反応に有効な条件には、周囲の圧力および180℃から230℃の温度が含まれる。本発明の方法の段階(3)の重縮合反応に有効な条件には、0.02から0.2トールの真空度および240℃から260℃の温度が含まれる。
【0051】
エステル交換工程段階で用いるに有用な触媒には、チタン、ランタン、錫、アンチモン、ジルコニウム、亜鉛およびこれらの組み合わせの有機および無機化合物が含まれる。チタン触媒、例えばチタン酸テトライソプロピルおよびチタン酸テトラブチルなどが好適であり、それを最終的重合体の重量を基準にした重量で表して25から1000ppm、好
適には50から700ppmの量で添加する。チタン酸テトライソプロピルおよびチタン酸テトラブチルはまた重縮合触媒としても有効である。追加的触媒を添加する時期はエステル交換または直接エステル化反応前または後であるが重合前であってもよい。そのような触媒は好適にはチタン酸テトラブチル(TBT)である。
【0052】
本明細書で用いる触媒と一緒に場合により共触媒を用いてもよい。そのような共触媒は金属の酢酸塩、例えば非限定例として酢酸亜鉛、酢酸マンガンまたはこれらの組み合わせなどを含有して成っていてもよい。
【0053】
更に、反応/生成物を向上させる添加剤を反応槽に添加することも可能であり、例えば段階(1)などで添加することも可能である。そのような添加剤には抗酸化剤および消泡剤が含まれる。そのような使用に適した抗酸化剤の非限定例には、Albermarle(商標)のE330、Ciba(商標)のIRGANOX(商標)1010またはこれらの組み合わせが含まれる。そのような使用に適した消泡剤の非限定例にはDow Corning 200(商標)Fluidsが含まれる。
【0054】
本発明のコポリエーテルエステルエラストマーを生じさせる時、公知の分枝剤を添加して溶融強度を向上させるのが有用であり得る。そのような場合、分枝剤を重合体100グラム当たり0.01から0.10当量の濃度で用いてもよい。そのような分枝剤は、ヒドロキシル基を3から6個有するポリオール、カルボキシル基を3または4個有するポリカルボン酸またはヒドロキシルとカルボキシル基を合計で3から6個有するヒドロキシ酸であってもよい。ポリオール系分枝剤の非限定例には、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンおよび1,2,6−ヘキサントリオールが含まれる。適切なポリカルボン酸系分枝剤には、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、ピロメリト酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタン−テトラカルボン酸などが含まれる。そのような酸をそのまま用いてもよいが、それらを低級アルキルエステルの形態で用いる方が好適である。
【0055】
本方法の段階(2)および(3)は不活性ガス雰囲気下で実施可能である。本明細書で用いるに適した不活性ガスの非限定例には、窒素、二酸化炭素または希ガスが含まれる。
【0056】
本発明の段階(2)および(3)を生成物の一貫性が維持されるように連続的に実施してもよいことに加えて、本方法の他の1つ以上の段階は連続的またはバッチ式に実施可能である、即ち供給材料を大きなバッチで調製しそしてそのバッチが消費されるまで反応を連続的に実施してもよい。同様に、生成物を貯蔵しそしてバッチを反応槽内で完全に処理した後に生成物を処理することも可能である。
【0057】
段階(2)および(3)を連続工程に適した通常の反応槽もしくは反応槽アセンブリ、例えば懸濁工程の場合のループ反応槽または撹拌型反応槽または管反応槽などで実施してもよい。
【0058】
原料および触媒を現在の工学実施に通常の搬送装置を用いてバッチ式もしくは連続的に反応槽に導入してもよい。好適な供給材料搬送方法では、原料成分を液状の混合供給材料として反応槽、例えば連続撹拌型タンク反応槽(CSTR)に他の供給材料と一緒に連続様式で搬送することで一緒にする。
【0059】
本発明のコポリエーテルエステルエラストマーは、繊維、フィルム、エンジニアリング樹脂および他の成形品の製造で用いるに有用である。そのような繊維には、単成分および
多成分繊維、例えば2成分繊維(本コポリエーテルエステルエラストマーを少なくとも1つの成分として含有)が含まれ、それは連続フィラメントまたはステープル繊維であってもよい。そのような繊維を用いて織、編および不織布を製造する。不織布の製造は通常の技術、例えばメルトブローン、スパンボンデッドおよびカードおよびボンド布用の技術を用いて実施可能であり、そのような技術には、熱による結合(熱風および点結合)、空気による絡み合いなどが含まれる。本コポリエーテルエステルエラストマーを用いてフィルムまたは膜を溶融加工で製造することも可能である。本コポリエーテルエステルエラストマーが有する高い機械的強度、良好な低温特性および高い使用温度を生かして、それらを用いて様々なエンジニアリング樹脂製品、例えばCVJブーツ、ホース、ダイヤフラム、管材などの成形を行うことができる。
【0060】
通常の添加剤を本コポリエーテルエステルエラストマーもしくは繊維に公知技術で添加することができる。そのような添加剤には、例えば艶消し剤(例えばTiO、硫化バリウム、硫化亜鉛または酸化亜鉛)、着色材料(例えば染料)、安定剤(例えば抗酸化剤、紫外光安定剤、熱安定剤など)、充填剤、難燃剤、顔料、抗菌剤、帯電防止剤、光学的光沢剤、増量剤、加工助剤、粘度増強剤および他の機能的添加剤が含まれる。
【0061】
以下の実施例で本発明および本発明の使用可能性を立証する。本発明は他の様々な態様が可能であり、それのいくつかの詳細は本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な明確な観点で修飾可能である。従って、本実施例は事実上例示として見なされるべきであり、限定するものでない。
【0062】
材料
DMT、PTMEGおよびポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールをINVISTAから入手した。BDO、TBT触媒、酢酸マグネシウム共触媒および抗酸化剤(IRGANOX(商標)330E)をAldrich Chemicalから購入した。
【0063】
分析方法
以下の実験では、インヘレント粘度の測定をm−クレゾール中0.1g/dlの濃度にして30℃で実施してdl/gで報告する。ハードセグメントが示す融点の測定を示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱/冷却速度を10℃/分にして実施した。ガラス転移温度(Tg)の測定をDSCおよび動的機械的分析(DMA)で実施した。融液相が合成中に存在する場合、即ちサンプルが2つのガラス転移温度または幅広いTgを示す場合に特にDMAが有用である。核磁気共鳴(NMR)分光法を用いてコポリエーテルエステルエラストマー組成物サンプルの組成を決定した。その測定ではコポリエーテルエステルエラストマーサンプルを1,1,2,2−テトラ−クロロエタン−D2に溶解させた。機械的特性の試験では、エラストマーサンプルを圧縮成形した後に下記の如き試験を実施した:ショア硬度(ASTM D2240)、引張り強度(ASTM D412)、ヤング係数(ASTM D412)、破壊時伸び(ASTM D412)、引裂き強度(ダイスC)(ASTM D1938)、テーバー摩耗減量(ASTM D1044)およびClash−Bergねじり剛性(ASTM D1043)。
【実施例】
【0064】
蒸留に適した2リットルのステンレス鋼製反応槽を用いて実験を実施した。U字形ステンレス鋼製撹拌機を反応槽の底から約1/8インチの所に位置させた。その反応槽に反応体、触媒および添加剤を仕込んだ後、それに窒素を用いたパージ洗浄を受けさせることで空気をその系から除去した。次に、その反応槽の加熱を電気加熱器を用いて撹拌機の速度を100rpmに設定して実施した。1番目の反応であるエステル交換が典型的には170℃付近で始まり(蒸留カラムの中にメタノールの蒸気が存在することで明らか)、その
時点で窒素流を止めた。エステル交換を反応槽の温度が約210℃に到達しかつ蒸留カラムへのメタノールの流れが止まるまで継続した。次に、その蒸留カラムを取り外した後、その反応槽を真空装置に連結した。その反応槽の温度をゆっくり高くして250℃にした後、約30分以内に最大真空度を得た。最大真空度を得た後、重縮合反応を追加的時間継続したが、その時間を所定rpm下の撹拌機のトルク読みで監視しかつ決定した。前以て決めておいたトルク読みに到達した後、反応槽を再び窒素で満たすことでそれを周囲圧力にし、反応槽の底に位置するプラグを外すことで溶融重合体を押出し、水浴中で急冷した後、回転式切断機でペレット状にした。前記反応槽は1バッチ当たり1kgのコポリエーテルエステルエラストマー組成物を製造する能力を有していた。
【0065】
部およびパーセントを全部特に明記しない限り重量で表す。
【0066】
実施例1
2リットルの反応槽に336gのDMT、250gのBDO、325gのランダムポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコール[これの分子量は2025g/モルでありかつオキシエチレン取り込み率は49モル%である]、0.692gのTBT触媒、0.128gの酢酸Mg共触媒および0.940gのIRGANOX(商標)330E抗酸化剤を仕込んだ。前記反応槽を加熱する前に窒素によるパージ洗浄を実施した。撹拌機の速度を100rpmに設定した。約170℃になった時点でメタノールが塔頂蒸留カラムの中に見え始めたことから窒素の流れを止めた。メタノールの取り出しを開始して、メタノールを凝縮させて受け槽の中に集めた。次に、反応槽の温度をゆっくり高くして約210℃にした。メタノールがカラムの中にもはや見えなくなった時点でエステル交換が終了した。冷却器の口に蓋をした後、反応槽の温度をゆっくり上昇させて250℃にすると同時に最大真空度であるほぼ0.1トールに到達させた。BDOが反応槽から留出し出した時点で重縮合が始まった。重縮合を2.5時間実施し、その時点の撹拌機のトルク読み値は速度が20rpmの時に約400N・cmであった。次に、窒素で真空を壊した後、反応槽を約3psigの若干の加圧下に置いた。熱コポリエーテルエステルエラストマー生成物を反応槽の下部から押出し、脱イオン水浴内で急冷した後、切断装置でペレット状にした。その結果として得たコポリエーテルエステルエラストマー組成物は50重量%がPBTハードセグメントで50重量%がポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)テレフタレートソフトセグメントで構成されていた。
【0067】
実施例2
反応槽に350gのDMT、264gのBDO、282gのポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコール[これの分子量は2025g/モルでありかつエチレンオキサイド取り込み率は49モル%である]、0.667gのTBT触媒、0.123gの酢酸Mg共触媒および1.000gのIRGANOX(商標)330E抗酸化剤を仕込む以外は実施例1を繰り返した。その結果として得たコポリエーテルエステルエラストマー組成物は55重量%がPBTハードセグメントで45重量%がポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)テレフタレートソフトセグメントで構成されていた。
【0068】
実施例3
反応槽に376gのDMT、310gのBDO、250gのポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコール[これの2025g/モルでありかつエチレンオキサイド取り込み率は49モル%である]、0.499gのTBT触媒、0.123gの酢酸Mg共触媒および0.665gのIRGANOX(商標)330E抗酸化剤を仕込む以外は実施例1を繰り返した。その結果として得たコポリエーテルエステルエラストマー組成物は60重量%がPBTハードセグメントで40重量%がポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)テレフタレートソフトセグメントで構成されて
いた。
【0069】
比較実施例1
反応槽に305gのDMT、227gのBDO、294gのPTMEG[これの分子量は2000g/モルである]、0.627gのTBT触媒、0.116gの酢酸Mg共触媒および0.940gのIRGANOX(商標)330E抗酸化剤を仕込む以外は実施例1を繰り返した。その結果として得たコポリエーテルエステルエラストマー組成物は40重量%がPBTハードセグメントで60重量%がポリテトラメチレンエーテルテレフタレートソフトセグメントで構成されていた。
【0070】
比較実施例2
反応槽に383gのDMT、290gのBDO、254gのPTMEG[これの分子量は2000g/モルである]、0.508gのTBT触媒、0.125gの酢酸Mg共触媒および1.016gのIRGANOX(商標)330E抗酸化剤を仕込む以外は実施例1を繰り返した。その結果として得たコポリエーテルエステルエラストマー組成物は50重量%がPBTハードセグメントで50重量%がポリテトラメチレンエーテルテレフタレートソフトセグメントで構成されていた。
【0071】
比較実施例3
ある量の市販コポリエーテルエステルエラストマーをAshland Inc.から購入したが、これはPBTハードセグメントを48重量%およびEOPPGのソフトセグメントを52重量%有していた。そのEOPPGブロック共重合体の分子量は2100g/モルでありかつエチレンオキサイド取り込み率は36モル%であった。
【0072】
この上の実験に示した生成物に様々な重要な特性に関する試験を受けさせた。その試験の結果を以下の表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
本発明のコポリエーテルエステルエラストマーは組成が本質的に同じであってもより高い引張り強度、より高い破壊時伸び(UE%)、同様な耐摩耗性およびより良好な動的特性、即ちより低い単一のソフトセグメントガラス転移温度の向上した特性を示すことが前記実験の結果から観察される。DMAデータは、比較実施例1の生成物が示すガラス転移温度は2つ存在しそして比較実施例2の生成物が示すガラス転移温度は非常に幅広いことを示しており、このことは、そのような現在の材料を用いるとホモ重合体であるPTMEGおよび相対的に高いハードセグメント含有量を用いた溶融重合中に融液相問題が生じることと一致している。実施例1、2および3の生成物は各々が明確に限定された単一のガラス転移温度を示した。Clash−Bergデータは、前記ランダムコポリエーテルを用いて製造した前記3種類のコポリエーテルエステルの方が比較実施例のそれに比べて平均低温固化の度合が低いことを示していた。
【0075】
本明細書に示した特許、特許出願、試験手順、優先資料、論文、出版物、マニュアルおよび他の資料は全部そのような開示が本発明に矛盾しない度合で引用することによって完全に組み入れられる(そのような組み入れが許容される法域全部に関して)。
【0076】
本明細書で数値の下限および数値の上限を示す場合、いずれかの下限からいずれかの上限までの範囲を意図する。
【0077】
本発明の例示態様を詳細に記述してきたが、当業者は本発明の精神および範囲から逸脱しない他の様々な修飾形を思い浮かべかつ容易に成すことができることは理解されるであろう。従って、本明細書に示す請求項の範囲を本明細書に示す実施例および説明に限定することを意図するものでなく、むしろ、本請求項は本発明に存在する特許性のある新規性の特徴全部を包含すると解釈されるべきであり、そのような特徴には、本発明が関係する技術分野の技術者がそれの相当物であるとして取り扱うであろう特徴の全部が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリエーテルエステルエラストマーであって、ソフトセグメントを10重量%から70重量%未満およびハードセグメントを30重量%から90重量%含有して成っていて前記ソフトセグメントが構造式:
【化1】

[式中、RおよびR’は、−H、−CH3、−C2H5およびこれらの組み合わせから成る群より選択され、Dは、カルボキシル基が1種以上の相当するジカルボン酸相当物から取り除かれた後に残存する1種以上の二価基であり、xは、1に等しいか或はそれ以上の整数であり、yは、1に等しいか或はそれ以上の整数であるが、x/yの平均は0.33から3.0であり、そしてzは、2に等しいか或はそれ以上の整数であるが、zの平均は4から26である]
で表されそして前記ハードセグメントが構造式:
【化2】

[式中、mは、0または1または2に等しい整数であり、そしてDは、カルボキシル基が1種以上の相当するジカルボン酸相当物から取り除かれた後に残存する1種以上の二価基である]
で表され、かつ前記ソフトセグメントがオキシエチレン含有量が25から75モル%のランダムポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールに由来しかつ前記ハードセグメントが芳香族ジカルボン酸と短鎖ジオールに由来する短鎖ポリエステルで構成されているコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項2】
前記ソフトセグメントのRおよびR’の片方もしくは両方が-Hを含んで成る請求項1記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項3】
ソフトセグメントを20重量%から65重量%およびハードセグメントを35重量%から80重量%含有して成る請求項1記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項4】
ソフトセグメントを30重量%から60重量%およびハードセグメントを40重量%から70重量%含有して成る請求項1記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項5】
融点が150℃から240℃であり、引張り強度が2500psi以上であり、破壊時伸びが200%以上でありそして前記ソフトセグメントが−50℃未満に単一のガラス転移温度を示す請求項1記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項6】
前記ポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールがオキシエチレンを30から65モル%含有して成る請求項1記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項7】
前記ポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールがオキシエチレンを40から55モル%含有して成る請求項1記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項8】
前記ポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールの数平均分子量が500から3000ダルトンである請求項1記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項9】
前記ポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールの数平均分子量が1000から2500ダルトンである請求項6記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項10】
前記ポリ(オキシエチレン−コ−オキシテトラメチレンエーテル)グリコールの数平均分子量が1500から2500ダルトンである請求項7記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項11】
前記ジカルボン酸相当物が芳香族ジカルボン酸またはこれのエステル形成誘導体の中の1種または組み合わせに由来する請求項1記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項12】
前記芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸およびこれらの組み合わせから成る群より選択される請求項9記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項13】
前記芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体がテレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジ−n−プロピル、イソフタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−n−プロピル、テレフタル酸ジイソプロピル、テレフタル酸ジ−n−ブチル、テレフタル酸ジ−s−ブチル、テレフタル酸ジ−t−ブチル、テレフタル酸ジヘプチル、テレフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、テレフタル酸ジイソノニル、テレフタル酸ジイソデシル、テレフタル酸ブチルベンジル、テレフタル酸ジシクロヘキシル、2,6−ナフタレンカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレン−ジカルボン酸ジエチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,7−ナフタレン−ジカルボン酸ジエチル、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸ジメチル、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸ジエチル、ジフェノキシエタンジカルボン酸ジメチル、ジフェノキシエタンジカルボン酸ジエチルおよびこれらの組み合わせから成る群より選択される請求項9記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項14】
前記短鎖ジオールが各々の炭素原子数が2から10でありかつ分子量が300ダルトン以下である脂肪族ジオールおよび脂環式ジオールから成る群より選択される少なくとも1種のジオールを含んで成る請求項1記載のコポリエーテルエステルエラストマー。
【請求項15】
前記短鎖ジオールがエチレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールおよびこれらの組み合わせから成る群より選択される請求項12記載のコポリエーテルエステルエラストマー。

【公表番号】特表2013−513692(P2013−513692A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543088(P2012−543088)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/033863
【国際公開番号】WO2011/071558
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(309028329)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (80)
【Fターム(参考)】