説明

コポリカーボネート樹脂

【課題】
光弾性係数(K)がK≦10×10-122/Nであり、ガラス転移温度(Tg)がTg≧100℃を満たすものであり、延伸フィルム成形による薄膜化に十分耐えうる強度物性を与えるポリカーボネート樹脂及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】
特定の構造を有するジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを反応させて得られるコポリカーボネート樹脂により光学用途フィルムに好適な透明性、耐熱性、低い光弾性係数、機械強度を有するコポリカーボネート樹脂及びその製造方法が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学用途フィルムに好適な透明性、耐熱性、低い光弾性係数、機械強度を有するコポリカーボネート樹脂ならびにその製造方法に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、オプトエレクトロニクスの進歩に伴い、光学的に優れた等方性を有する光学用透明高分子に対する要請が高まっている。特に、液晶ディスプレイの位相差フィルム用に適用可能な光学特性の透明フィルムが切望されている。
【0003】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)をホスゲンあるいは炭酸ジエステルと反応させて得られるポリカーボネート樹脂、殊にポリカーボネートフイルムは包装用途、光学装置、表示装置その他各種産業用途に使用されているが、最近液晶表示装置など光電子装置において位相差板、偏光板、プラスチック基板等の材料として注目され、その実用化が進められている。とりわけ、近年の液晶ディスプレーなかでも、進歩が著しいTFT型液晶ディスプレー素子においては画像の視認性を向上させるために液晶層と偏光板との間で使用する位相差フイルムとして注目される。
【0004】
この位相差フイルムは、液晶層を透過した楕円偏光を直線偏光に変換する役割を担っている。そして、その材質は主としてビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂の一軸延伸フイルムが用いられている。
【0005】
しかし、ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂は、低流動性材料であり、また高い光弾性係数を有するため、溶融成形時の分子配向や残留応力に伴う複屈折が大きいという問題点を有している。このため均一性を維持するため、通常溶融押出成形ではなく、溶液状態からの塗膜を乾燥させるキャスト法が多く使用される。
【0006】
より生産性の高い溶融成形フィルムを得るにはビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂では、複屈折の低減には限界があるため、近年の光学材料用途の広がりに伴い、さらなる低光弾性係数、高流動性材料の開発が強く求められている。
【0007】
本出願人は従来の芳香族ポリカーボネートの上記のような問題を解決すべく、スピログリコール等の脂環式ジヒドロキシ化合物とビスフェノールAに代表される芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルとを溶融状態で重縮合させるエステル交換法によって得られるポリカーボネート樹脂を提案した(特許文献1参照)。これにより得られるポリカーボネート樹脂は機械物性、耐熱性、透明性の面で優れている。しかしながら、脂環式ジヒドロキシ化合物を共重合させたポリカーボネートではビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂と比較すれば光弾性係数は低いもののフィルム用途としては光弾性係数が大き過ぎるといった問題がある。
【0008】
一方、色補償用の位相差フィルムとしては、1/2λ、1/4λ板の張り合わせ等が存在している(特許文献2参照)。この用途に用いられるフィルムとしては一枚の状態で複屈折の波長分散がないことが良好とされる。
【0009】
これらのフィルム原料として芳香環を持つジヒドロキシ化合物を原料に用いたポリカーボネートでは広範囲領域での補償がかなわず、もしくは光弾性係数が大きく張り合わせ時の歪が生じてしまうといった問題がある。またアモルファスポリオレフィンを用いた場合は脆いといった強度面での問題が生じる。
【0010】
このため本出願人は、ペンタシクロペンタデカンジメタノールを必須成分とし、トリシクロ(5.2.1.02,6)デカンジメタノール等の脂環式ジヒドロキシ化合物によりなる脂肪族ポリカーボネート共重合体を提案した(特許文献3参照)。これにより光弾性係数の低減を可能としたが、十分なものではなかった。
【0011】
【特許文献1】特開平10−120777号公報
【特許文献2】特開平10−68816号公報
【特許文献3】特開2001−11168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、光弾性係数(K)がK≦10×10-122/Nであり、ガラス転移温度(Tg)がTg≧100℃を満たすものであり、延伸フィルム成形による薄膜化に十分耐えうる強度物性を与えるポリカーボネート樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、一般式(2)、一般式(3)一般式(4)及び一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを反応させて得られるコポリカーボネート樹脂によって上記問題を解決できることを見いだした。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【発明の効果】
【0014】
本発明により、優れた強度、透過性を持つ、複屈折波長分散が少なく、光弾性係数が低く、Tg≧100℃と、位相差フィルム用途に好適なバランスのとれたポリカーボネート樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係わるポリカーボネート樹脂並びにこれらの製造方法を具体的に説明する。
【0016】
本発明に関わるポリカーボネート樹脂は一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位と、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位とからなり、ランダム、ブロック、或いは交互共重合体等を含むものである。
【0017】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物として、3,9-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジエチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジプロピルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどの脂環式ジヒドロキシ化合物があげられる。
好ましくは、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンが用いられる。
【0018】
一般式(2)、及び一般式(3)表されるジヒドロキシ化合物は、ペンタシクロペンタデカンジメタノールであり、種々の異性体を包含する。
【0019】
一般式(4)でさ表れるジヒドロキシ化合物はイソマンニド及びイソソルビドであり、ラセミ体、キラル体等の光学活性異性体を包含する。
【0020】
一般式(5)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物は1,4-シクロヘキサンジオールであり、トランス体、シス体或いはその混合物を包含する。
【0021】
本発明においては、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物(2種以上の場合は、混合物を指す。)との使用割合が、モル比で85:15〜15:85の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは80:20〜20:80であり、特に好ましくは75:25〜25:75である。一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の使用割合が、モル比で85より多くなると、樹脂製造時、もしくは延伸時もしくはその双方で、一部もしくは全体で結晶化してしまい、光線透過率が低下するか、極端に低下するため、望ましくない。
【0022】
また、更に必要に応じて、二官能性カルボン酸を使用しても良い。
二官能性カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸,イソテレフタル酸,ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。この他の二官能性カルボン酸としては例えば、シュウ酸,マロン酸,アジピン酸,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。この中で、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が特に好ましい。
【0023】
炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等があげられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが好ましい。炭酸ジエステルは、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.95〜1.10モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98〜1.05モルの比率である。
【0024】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを塩基性化合物触媒もしくはエステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下反応させる公知の溶融重縮合法が好適に用いられる。塩基性化合物触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物等があげられる。
【0025】
このような化合物としては、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属化合物等の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0026】
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
【0027】
アルカリ土類金属化合物としては、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0028】
含窒素化合物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が用いられる。
【0029】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0030】
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
【0031】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で用いられ、好ましくは10−7〜10−4モルの比率で用いられる。
【0032】
本発明にかかわる溶融重縮合法は、前記の原料、および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段行程で実施される。
【0033】
具体的には、第一段目の反応を120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には1mmHg以下の減圧下、200〜300℃の温度で重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよく、また、これらを重合物の粘度を勘案して適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。
【0034】
本発明にかかわるポリカーボネート樹脂は、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させる。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの酸性物質またはその誘導体としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸モノエチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸モノブチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。
【0035】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1〜1mmHgの圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0036】
本発明で製造されるポリカーボネート樹脂フィルムにおいて、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、安定剤、着色剤、難燃剤等を配合してもよい。混練機としては、押出機、ラボプラストミル、ニーダー等が用いられるが、連続的に混練を行うなら押出機が、バッチ式で混練を行うならラボプラストミルあるいはニーダーが好適に使用される。
【0037】
本発明の樹脂のフィルム製造方法は押出機によって溶融し、ダイスから取り出すことによってなされても良いし、溶融キャスト法を用いても良い。押出機によって溶融される場合は200℃〜300℃で行われるのが望ましく、より望ましくは210℃〜250℃である。溶融キャスト法に使用する溶剤としては本発明の樹脂が溶解する有機溶剤ならば良いが、メチレンクロライドもしくはクロロホルム等のハロゲン系有機溶剤が望ましい。
【0038】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂の好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、15,000〜200,000であり、より好ましくは20,000〜100,000である。Mwが15,000より小さいと、脆くなるため好ましくない。Mwが200,000より大きいと、押出成形が困難になる為望ましくない。
【実施例】
【0039】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
1)ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):GPCを用い、クロロホルムを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいて、GPCのリテンションタイムから算出した。
2)ガラス転移温度(Tg):示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。
3)光弾性係数:エリプソメーターにより、厚さ100μmのキャストフィルムを用い、レーザー波長633nmの光をあて、荷重変化に対する複屈折測定から算出した。
4)フィルム強度及び伸度:実施例で得られた厚み100μmのフィルムの引張強度及び引張伸度をASTM D882―61Tに準拠して、島津製作所製島津オートグラフAGS-100Gを用いて測定した。
【0040】
実施例1
スピログリコール8.523kg(28.0モル)、ペンタシクロデカンジメタノール3.149kg(12.00モル)、ジフェニルカーボネート8.912kg(41.4モル)、および炭酸水素ナトリウム0.02016g(2.4×10−4モル)を攪拌機および留出装置付きの50リットル反応器に入れ、窒素雰囲気150Torrの下1時間かけて215℃に加熱し撹拌した。
その後、215℃、150Torrの条件下で20分間保持しエステル交換反応を行った。さらに10分かけて230℃まで昇温し、230℃、150Torrの条件下で1時間保持し、エステル交換反応を進行させた。その後、10分かけて240℃に昇温し、240℃で50分間エステル交換反応を進行させた。その後、10分かけて100Torrに調整し、240℃、100Torrで20分間保持した。その後、10分かけて40Torrに調整し、240℃、40Torrで30分間保持した。更に20分かけて1Torr以下とし、240℃、1Torr以下の条件下で1時間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出した。得られたポリカーボネート樹脂のMw=53,000、Tg=111℃であった。
【0041】
上記樹脂をT字型ダイスをもつ溶融押出成形機で240℃で成形し厚さ150μmのフィルムを得た。このフィルムの光弾性係数は3.9×10−122/Nであった。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0042】
実施例2
スピログリコール8.523kg(28.0モル)、イソソルビド1.754kg(12.00モル)、ジフェニルカーボネート8.912kg(41.4モル)、および炭酸水素ナトリウム0.02016g(2.4×10−4モル)を攪拌機および留出装置付きの50リットル反応器に入れ、窒素雰囲気150Torrの下1時間かけて215℃に加熱し撹拌した。
その後、215℃、150Torrの条件下で20分間保持しエステル交換反応を行った。さらに10分かけて230℃まで昇温し、230℃、150Torrの条件下で1時間保持し、エステル交換反応を進行させた。その後、10分かけて240℃に昇温し、240℃で50分間エステル交換反応を進行させた。その後、10分かけて100Torrに調整し、240℃、100Torrで20分間保持した。その後、10分かけて40Torrに調整し、240℃、40Torrで30分間保持した。更に20分かけて1Torr以下とし、240℃、1Torr以下の条件下で1時間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出した。得られたポリカーボネート樹脂のMw=56,000、Tg=115℃であった。この共重合ポリカーボネートから得られたフィルムの光弾性係数は8.0×10−122/Nであった。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0043】
実施例3
SPG/CHDO=60/40mol比
スピログリコール6.088kg(24.0モル)、1,4-シクロヘキサンジオール1.859kg(16.00モル)、ジフェニルカーボネート8.912kg(41.4モル)、および炭酸水素ナトリウム0.02016g(2.4×10−4モル)を攪拌機および留出装置付きの50リットル反応器に入れ、窒素雰囲気150Torrの下1時間かけて215℃に加熱し撹拌した。
その後、215℃、150Torrの条件下で20分間保持しエステル交換反応を行った。さらに10分かけて230℃まで昇温し、230℃、150Torrの条件下で1時間保持し、エステル交換反応を進行させた。その後、10分かけて240℃に昇温し、240℃で50分間エステル交換反応を進行させた。その後、10分かけて100Torrに調整し、240℃、100Torrで20分間保持した。その後、10分かけて40Torrに調整し、240℃、40Torrで30分間保持した。更に20分かけて1Torr以下とし、240℃、1Torr以下の条件下で1時間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出した。得られたポリカーボネート樹脂のMw=52,000、Tg=108℃であった。この共重合ポリカーボネートから得られたフィルムの光弾性係数は5.0×10−122/Nであった。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0044】
比較例1
仕込みをペンタシクロペンタデカンジメタノールからトリシクロデカンジメタノール2.355kg(12.00)molに替えた以外は実施例1と全く同じ方法で行った。Mw=57,000の樹脂が得られた。この共重合ポリカーボネートから得られたフィルムの光弾性係数は4.5×10−122/Nであったが、Tgが96℃となり、Tg≧100℃を満たさず、耐熱性に劣ることが明らかであった。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0045】
比較例2
仕込みをペンタシクロペンタデカンジメタノールからビスフェノールA2.739kg(12.00)molに替えた以外は実施例1と同じ方法を用いた。Mw=58,000の樹脂が得られた。この樹脂は光弾性係数Kが30×10−122/Nと高くフィルム用途として本発明より劣ることが明らかであった。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを反応させて得られるコポリカーボネート樹脂。
【化1】

上式(1)において、R、R、RおよびRは水素原子または炭素数1〜5の1価のアルキル基である。)
【化2】



【化3】




【化4】


【化5】

【請求項2】
上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、上記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物との使用割合が、モル比で85:15〜15:85である請求項1記載のコポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
上記一般式(1)中のR、R、RおよびRがCH3である請求項1又は2記載のコポリカーボネート樹脂。
【請求項4】
塩基性化合物触媒存在下、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、上記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融重縮合させてコポリカーボネート樹脂を製造する方法。
【請求項5】
ジヒドキシ化合物の合計1モルに対して10-9〜10-3モルの塩基性化合物触媒を用いる請求項4記載のコポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載のコポリカーボネート樹脂を用いた光学材料。
【請求項7】
請求項1記載のコポリカーボネート樹脂を用いた光学用フィルム。
【請求項8】
光学用フィルムが、位相差フィルムである請求項7記載の光学用フィルム。


【公開番号】特開2006−232897(P2006−232897A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46285(P2005−46285)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】