説明

コミック閲覧システム

【課題】電子コミック閲覧の際ユーザがあるページに戻って読み返したくなったとき、ユーザビリティの観点から簡便な操作でもって該当ページ(又はコマ)への遷移を実現する。
【解決手段】本発明に係るコミック閲覧システムは、電子コミックを記憶した第1記憶手段と、コマを分割するコマ分割手段と、コマの構造、形状又は配置を解析しメタデータを抽出する第1抽出手段と、コミックページ又はコマ内の文字列を解析しりメタデータを抽出する第2抽出手段と、コミックページ又はコマ内の画像を解析しメタデータを抽出する第3抽出手段と、抽出されたコメタデータを抽出元の該コミックページ又はコマと対応付けて記憶する第2記憶手段と、コミックページ又はコマのメタデータと同一又は類似するコミックページ又はコマへの遷移情報を含むRinkボタンを生成し、該コミックページ又はコマ上に重畳させて配置するRink生成手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コミック閲覧システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
日本のコンテンツ産業はかねてより世界的にも高い評価を受け、その人気は欧米・アジアと地域を問わずに拡大をし続けている。近年の情報技術の発展に伴い電子書籍端末(他にもスマートフォン等)が急速に普及し、手軽に電子書籍を閲覧できるため、特に電子コミック市場は拡大の傾向にある。携帯端末向けコミックサイト数は年々増加し、近年おおよそその市場規模は約428億円であり、日本の電子書籍市場全体の75%を占めている。
【0003】
具体的に、電子コミック(電子漫画)を読む場合、まずユーザは電子書籍端末を操作してコミックサイトにアクセスし、所望のコンテンツを取得(ダウンロード)する。それから端末のビューアでコンテンツを開くとコミック画像が表示される。またコミック画像をスライドさせると次のページが表示されるので、ユーザは雑誌や単行本のコミックのページをめくる感覚で、パラパラとページをめくって読み進めることができる。
【0004】
ところで、紙媒体のコミックを閲覧している際に、ふと前のページに戻って読み返したくなることがある。連載が長年にわたって続いているコミックであれば、回想シーンのように昔の内容が急に登場したものの、その昔の話(ストーリ)を忘れてしまっていることもある。また登場人物が多いコミックであれば、以前登場していた人物が誰かわからなくなってしまうこともある。その時、紙媒体のコミックでは、ユーザは自分の記憶を手掛かりに、戻りたいページをざっと探しながらパラパラとページをめくり戻ることしかできない。相当ページさかのぼるような場合には、話や巻を跨ぐこともあることから、この作業は、時間や手間の掛かるものである。
【0005】
一方電子コミックの場合、1ページずつページをスライドさせて所望のページに戻ることも勿論可能であるが、例えば「指定ページ移動」、「章・話移動」、「目次から移動」等々、電子ならではのいくつかの方法がある。「指定ページ移動」では、ユーザが直接ページ番号を入力すると、該当のページにジャンプする。「章・話移動」では、ビューア上のPrevious/Nextといった特殊キーを操作すると、前後の章へ一気にジャンプする。「目次から移動」では、ビューア上の目次キーを操作すると目次欄が表示されるので、所望の章やページを指定して、該当のページにジャンプする。
【0006】
またさらに、電子コミックによっては「検索」が行なえるものもあり、例えばビューア上の検索窓に検索キーワードを入力すると、検索キーワードにヒットしたページ一覧から所望のページを指定することにより該当のページにジャンプする。このような電子コミックでは、ページ毎に予めメタデータが紐付けされており、入力された検索キーワードとメタデータとの一致でもって、該当のページを特定する仕組みとなっている。
【0007】
これに関する技術として、特許文献1には、ネーム(セリフ等の文字情報と定義)を検索キーワードとして入力した場合に、そのネームが入れられた漫画のコマの画像を検索結果として得ることができる検索装置が開示されている。つまりネームが掲載されているコマ画像部分を検索する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−098829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の電子コミック閲覧システムにおいて、ユーザが所望のページを読み返したい場合に、思うようにうまく所望のページを閲覧できず、その操作に時間や手間が掛かるという問題があった。
【0010】
上述の「指定ページ移動」、「章・話移動」、「目次から移動」等の方法によれば、1ページずつページをスライドさせるよりは、指定のページに一気にジャンプできるため、操作性はよいものの、指定操作の前提として、ユーザ自身がそもそも所望のページの位置を把握している必要がある。従って長編のコミックの場合、一体所望のページ(シーン)が何ページにあるのか、何章・何話にあるのか、どの目次上(見出し上)にあるのかを特定することは、ユーザにとってなかなか困難である。
【0011】
また、上述の「検索」の方法や特許文献1記載のものによれば、検索キーワードにヒットした該当のページに一気にジャンプできるものの、この場合、あくまで的確な検索キーワードの入力作業が必要であり、具体的に例えば、所望のページ(シーン)で使用されている的確なセリフやキャラクター名等の入力作業が求められる。またコミックを閲覧している際に、ふとあるページに戻って読み返したくなった場合には、所望のページを検索すべく閲覧中のページ内容から的確な検索キーワードを想到しそのワードの入力作業が必要である。即ち少なくとも、ユーザは的確な検索キーワードを決定するとともに、検索窓にそのワードを入力しなくてはならない。
【0012】
そこで本発明は上記の点に鑑みて、電子コミック閲覧の際、ユーザがあるページに戻って読み返したくなったとき、ユーザビリティの観点から簡便な操作でもって、該当ページ(又はコマ)への遷移を実現するコミック閲覧システムを提供することを目的とする。より具体的には、閲覧ページから意味的情報を抽出するとともに、閲覧ページと意味的関連性を有するページ(又はコマ)への遷移を簡便な操作で実現させる手法を本発明により提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係るコミック閲覧システムは、電子コミックを閲覧する電子書籍端末と、電子コミックを電子書籍端末に対し配信するサーバとを含み構成されるコミック閲覧システムであって、前記サーバは、1以上のコミックページからなる電子コミックを記憶した第1記憶手段と、前記電子コミックのコミックページを構成するコマを分割するコマ分割手段と、分割されたコマの構造、形状又は配置を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する第1抽出手段と、前記コミックページ又は分割されたコマ内の文字列を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する第2抽出手段と、前記コミックページ又は分割されたコマ内の画像を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する第3抽出手段と、前記第1抽出手段、前記第2抽出手段及び前記第3抽出手段により抽出されたコミックページ毎又はコマ毎のメタデータを、抽出元の該コミックページ又はコマと対応付けて記憶する第2記憶手段と、前記電子コミックのコミックページ又はコマ上において、該コミックページ又はコマのメタデータと同一又は類似するコミックページ又はコマへの遷移情報を含むRinkボタンを生成し、該コミックページ又はコマ上に重畳させて配置するRink生成手段と、を有する。
【0014】
なお、本発明の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子コミック閲覧の際、ユーザがあるページに戻って読み返したくなったとき、ユーザビリティの観点から簡便な操作でもって、該当ページ(又はコマ)への遷移を実現するコミック閲覧システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るコミック閲覧システム100のシステム構成図である。
【図2】サーバ1の一実施形態の主要構成を示すハードウェア構成図である。
【図3】サーバ1及び端末2の一実施形態の主要機能を示す機能ブロック図である。
【図4】機能ダイアログ操作例を示す。
【図5】本実施形態に係るRink機能の操作例を示す。
【図6】Rink先が存在する場合の画面レイアウト情報のXMLファイル例を示す。
【図7】Rink先の情報を含むXMLファイル例を示す。
【図8】Rink先への遷移プログラム例を示す。
【図9】コミックページ表示処理を説明するフローチャートである。
【図10】サーバ1の前処理を説明するフローチャートである。
【図11】サーバ1の配信処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を各実施形態において図面を用いて説明する。
【0018】
[システム構成]
(全体構成)
はじめに、具体的な発明の内容を説明する前に、本発明を実施するにあたっての全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係るコミック閲覧システム100のシステム構成図である。図に示されるように、本実施形態に係る環境情報管理システム1は、サーバ1、端末2から構成され、ネットワーク3を介し接続される。
【0019】
サーバ1は、端末2に対し電子コミック(データ)を配信する。ここで電子コミックのコミックページには、Rink(Relational Link)ボタンが付加されている。またサーバ1は、Rinkボタンを付加するために配信前の前処理として、電子コミックを解析し、各ページや各コマ(漫画コマ)から意味的情報としてメタデータ(特徴量データともいう)を抽出するとともに、電子コミックのコミックページ上に、Rinkボタンを配置する編集を行う。この点、詳細は後述する。
【0020】
端末2は、ビューアを備える電子書籍端末(他にスマートフォン、携帯電話、PDA、PC等)である。ユーザは電子コミックを読む場合、端末2を操作してサーバ1(コミックサイト)にアクセスし、所望の電子コミック・コンテンツを取得する。それから端末2のビューアでコンテンツを開くとコミック画像が表示されるので、コミック画像をスライドさせるなどして、コミックを読み進めることができる。また本実施形態に係るビューア上において、「Rボタン」(Rinkボタン)をクリックすると特定のページへ遷移する機能だけではなく、その他、閲覧コミックの最初と最後へのページ移動機能、拡大・縮小といった表示方法の変更機能などの閲覧支援機能も有している。
【0021】
ネットワーク3は、有線、無線を含むネットワークである。サーバ1(コミックサイト)は、一般のユーザが広く利用できるようインターネット上に設置されているため、ネットワーク3もまたインターネットにより実現される。
【0022】
なお本システム構成はあくまで一実施形態例であり、これ以外にも様々な形態で構成することができる。例えばサーバ1は電子コミックを配信するサーバであるが、別途コミックサイトを運営するためのWWWサーバを設け、コミックサイト上でダウンロード発生要求時に、別途のサーバ1が電子コミックを配信するよう構成することもできる。
【0023】
(ハードウェア)
ここで本実施形態に係るサーバ1のハードウェア構成について説明しておく。図2は、サーバ1の一実施形態の主要構成を示すハードウェア構成図である。サーバ1は、主要な構成として、CPU11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、補助記憶装置14、記憶媒体読取装置15、入力装置16、表示装置17、及び通信装置18を含む構成である。
【0024】
CPU11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路から構成され、装置全体を制御する回路である。また、ROM12は、CPU11で実行される所定の制御プログラム(ソフトウェア部品)を格納するメモリであり、RAM13は、CPU11がROM12に格納された所定の制御プログラム(ソフトウェア部品)を実行して各種の制御を行うときの作業エリア(ワーク領域)として使用するメモリである。
【0025】
補助記憶装置14は、汎用のOS(Operating System)、プログラムを含む各種情報を格納する装置であり、不揮発性の記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)などが用いられる。
【0026】
なお、上記各種情報は、補助記憶装置14以外にも、CD−ROM(Compact Disk - ROM)やDVD(Digital Versatile Disk)、USBメモリ等の携帯型メディアなどの各種記憶媒体やその他のメディアに記憶されてもよく、これらの記憶媒体に格納された各種情報は、記憶媒体読取装置15などのドライブ装置を介して読み取ることが可能である。
【0027】
入力装置16は、ユーザが各種入力操作を行うための装置である。入力装置16は、マウス、キーボード、表示装置17の表示画面上に重畳するように設けられたタッチパネルスイッチなどを含む。表示装置17は、各種データを表示画面に表示する装置である。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)などから構成される。
【0028】
通信装置18は、ネットワーク3を介して他の機器との通信を行う装置である。有線ネットワークや無線ネットワークなど含む各種ネットワーク形態に応じた通信をサポートする。
【0029】
(機能)
次に、サーバ1及び端末2の主要機能構成について簡単に説明する。図3は、サーバ1及び端末2の一実施形態の主要機能を示す機能ブロック図である。
【0030】
サーバ1は、主要な機能として、記憶部110、電子コミック取得部120、コマ分割部130、メタデータ抽出部140、Rink生成部150、電子コミック配信部160を含む構成である。
【0031】
記憶部110は、電子コミック(コンテンツ・データ)を記憶した電子コミックDB111、電子コミックから抽出されたメタデータを記憶したメタデータDB112、Rink付き画面レイアウト情報を記憶したRink付き画面レイアウトDB113などのDB(Data Base)を記憶した記憶部である。具体的にはHDD等の補助記憶装置14により実現される。
【0032】
電子コミック取得部120は、電子コミックDB111から電子コミックを取得する。ユーザの端末2に対し電子コミックを配信する前の前処理として、電子コミックのコミックページやコマからメタデータを抽出するためである。
【0033】
コマ分割部130は、取得した電子コミックの各コミックページから、コマ分割処理を行う。コミックページ単位のみならず、コマ単位でメタデータを抽出するためである。1のコミックページは、コマと呼ばれる枠・画像の集まりによって構成されており、コマはコミックページにおいて意味を持った最小の単位といえる。
【0034】
メタデータ抽出部140は、分割されたコマの構造、形状又は配置等を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する。またコミックページ又は分割されたコマ内の文字列を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する。またもしくはコミックページ又は分割されたコマ内の画像を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する。そして抽出したメタデータは、抽出元の該コミックページ又はコマと対応付けてメタデータDB112に記憶しておく。
【0035】
ここで、コミックの1ページは様々な要素から成り立っている。いうまでもなくコマ内の描画(キャラクタ、物、背景等)や、またそのキャラクターが発するセリフや効果音、ストーリを解説するナレーション解説がある。また1ページを構成するコマにおいては、作者が作品を表現するために自由なコマ割りを行って、コマの配置、コマの構成、コマ形状、コマ間の余白(及びその色)などを工夫している。このため、これらの各要素にはコミックにおける意味的情報が多大に含まれている。
【0036】
従ってメタデータ抽出部140は、これら各要素に着目し、これら各要素から意味的情報としてのメタデータを抽出する。例えばコミック1ページに対し、コマ分割処理を行うと、コマの大きさや形状、配置、構成、1ページ中におけるコマの並び方等々の情報が抽出できる。ある作者によれば、作中における最も重要なシーンや迫力のあるシーンなどには、読者に強い印象を与えたい時に大きなコマを用いたり、台形などの特殊な形のコマを意図的に用いたりする。よってコマ分割処理後のコマから得られる情報から、作品中における最重要なシーンや、作者が強調したい箇所の検出可能になる。
【0037】
なおまたコミックページやコマ内の文字列(セリフや効果音文字、ナレーション解説等)に対しては文字列認識処理を行うことにより、キャラクターのセリフや効果音などを文字列情報として得ることができる。そしてこの文字列情報に対し文書解析を行い、作品の内容に基づいた意味的情報を抽出する。作品を読解する上で重要となるストーリ上の物事や語句、指示代名詞などを解析し関連する箇所と結び付けることにより、これは作品中における意味的情報である。
【0038】
Rink生成部150は、電子コミックのコミックページ又はコマ上において、該コミックページ又はコマのメタデータと同一又は類似するコミックページ又はコマへの遷移情報を含むRinkボタンを生成し、該コミックページ又はコマ上に重畳させて配置する。具体的には、コミックページ上において、Rinkボタンを表示させる画面レイアウト情報やRink先の情報を生成する(詳細後述)。なおこの画面レイアウト情報やRink先の情報は、Rinkボタンを表示させるコミックページと対応付けたうえで、Rink付き画面レイアウトDB113に保存する。
【0039】
電子コミック配信部160は、Rink付きの電子コミックを端末2に対し配信する。具体的には、電子コミックのコンテンツとともに、Rinkボタンを表示させるレイアウト情報を配信する。
【0040】
次いで端末2は、主要な機能として、電子コミック受信部210、ビューア部220を含む構成である。
【0041】
電子コミック受信部210は、サーバ1から配信される電子コミックを受信する。ユーザが電子コミックを閲覧するためである。
【0042】
ビューア部220は、電子コミックを表示する。なおまたビューア部220は、電子コミックを表示するのみならず、各種閲覧支援の機能を備え、例えば機能ダイアログから、画面の切替え、画面遷移、書誌情報の表示等を行えるようになっている。
【0043】
以上説明したこれらの機能は、実際にはCPU11が実行するプログラムにより実現される。また各機能部の具体的な機能の詳細は具体的を挙げ後述する。
【0044】
[実施例]
<端末2>
(ビューア機能)
本実施形態に係る端末2は、上述の如く電子書籍端末であるため、電子コミックを閲覧するためのビューアが実装される。本実施形態に係るビューア・アプリケーションは、例えば、最初と最後へのページ移動機能、画像を拡大・縮小する機能、特定のページへ遷移させるRink機能等を備える。
【0045】
図4は、機能ダイアログ操作例を示す。最初と最後へのページ移動機能は、画面410から例えば機能キーを操作すると、図4に示されるダイアログ411が下から現れる。その状態で「ファイルの先頭」412を選択すると、その電子コミック・ファイルの先頭ページ画面420へ移動できる。同様に「ファイルの最後」413を選択すると、その電子コミック・ファイルの最後ページ画面430へ移動できる。
【0046】
またダイアログ411から、「拡大・縮小」413を選択したうえで、表示中のコミックページに対し、所定の拡大操作又は縮小操作(例えば2つの指の間隔を離したりくっつけたりする操作)を行うことにより、画像の拡大・縮小を行うことができる。
【0047】
またダイアログ411から、「Rink表示・非表示」415を選択することにより、表示中のページ画像上において、「Rink」ボタンの表示/非表示を設定できる。「Rink」ボタンの表示・非表示をユーザが容易に切り替えることできるため、電子コミックの閲覧を妨害することなく、好きなタイミングで読み返したいページへの遷移が行える。なお以降では、「Rink」ボタンは表示を設定したものとして説明を進める。
【0048】
図5は、本実施形態に係るRink機能の操作例を示す。「Rink」ボタンは表示が設定されているので、画面510においては、「R」ボタン511、512が表示(表示位置は任意)されている。なおこの「Rink」とは「Relational Link」の意であり、任意のページからそれと関連する別のページへの遷移を補助する機能をいう。
【0049】
「R」ボタン511、512を選択すると、Rink先のコミックページに遷移する。この機能により、ユーザは簡単に読み返したいページへの遷移を行える。ここでは、読み返したいページの中でも、「回想シーン」と「久しぶりに登場したキャラクターの初登場シーン」に着目してみる。従ってそれぞれ「回想シーン」に遷移するピンク色の「R」ボタン511と、「久しぶりに登場したキャラクターの初登場シーン」に遷移する緑色の「R」ボタン512とを色分けして作成する。
【0050】
「回想シーン」とは、表示中のコミックページにおいて、登場人物が過去未来に起こったシーンを回想する場面をいう。表示中のコミックページが回想シーンであるときには、ピンク色の「R」ボタン511が表示されるので、その「R」ボタン511を選択すると、電子コミック内の物語においてその回想対象の実際のシーンへと遷移することができる。
【0051】
「久しぶりに登場したキャラクターの初登場シーン」とは、表示中のコミックページにおいて、登場頻度の低い登場人物が電子コミック内の物語において初めて登場する場面をいう。表示中のコミックページに登場頻度の低い登場人物が登場したときには、緑色の「R」ボタン512が表示されるので、その「R」ボタン512を選択すると、電子コミック内の物語においてその登場人物が電子コミック内の物語において初めて登場した実際のシーンへと遷移することができる。
【0052】
なお、「R」ボタンは、全コミックページに表示される訳ではなく、表示中のコミックページにおいてRinkすべき先のコミックページが存在ないときには、「R」ボタンは表示されない。
【0053】
再び図5を参照する。ここで例えば、緑色の「R」ボタン511が選択されると、画面は画面510から画面520へ遷移する。画面520においては、画面中、画面510の登場人物が回想する実際のシーンを含むコマ(又はコミックページページでもよい)521が表示される。そしてユーザがそのコマ521を選択すると、画面530のコマ521を含むコミックページ画面530へ遷移するので、ユーザは簡単な操作でもって回想の実際のシーンを読み返すことができる。
【0054】
また例えば、ピンク色の「R」ボタン512が選択されると、画面は画面510から画面540へ遷移する。画面540においては、画面中、画面510の登場人物が電子コミック内の物語において初めて登場した実際のシーンを含むコマ541が表示される。そしてユーザがそのコマ541を選択すると、画面550へ遷移するので、ユーザは簡単な操作でもってその登場人物が初めて登場した実際のシーンを読み返すことができる。
【0055】
(実装例)
本実施形態に係るコミック閲覧システム100は、Android(登録商標)アプリケーションとして実装できる。Androidアプリケーションでは、GUIデザイナを用いて画像レイアウトを定義する方法がある。コミックページ1ページ毎に、画面レイアウトの雛形としてXML(Extensible Markup Language)で画面レイアウトが定義されており、このXML内にて必要に応じてRinkに関する情報を定義(記述)することでRink機能を実装する。具体的に、Rinkに関する情報としては、ボタンの表示位置、Rink先の情報が定義される。
【0056】
つまりあるコミックページにおいて、Rink先が存在する場合、そのコミックページ1枚毎に、「R」ボタンの表示位置(座標指定)を含む画面レイアウト情報のXMLファイルと、Rink先の情報を含んだXMLファイルが作成される。そして画面レイアウトのファイルには、少なくともボタンの表示位置の情報、Rink先を示す情報が定義される。より具体的に、あるコミックページにおいて、Rink先が存在する場合、そのコミックページ1枚毎に、「R」ボタンの表示位置(座標指定)を含む画面レイアウトのXMLファイルと、Rink先の情報を含んだXMLファイルが存在する。
【0057】
図6は、Rink先が存在する場合の画面レイアウト情報のXMLファイル例を示す。図に示されるように、この画面レイアウト情報には、画面全体のレイアウトとともに、XMLによってボタンの表示位置が定義されている。端末2のビューアはこのレイアウト情報を参照することにより、「R」ボタンが付加されたコミックページを構成する。
【0058】
図7は、Rink先の情報を含むXMLファイル例を示す。この例では、Rink先として、「comic04_35.jpg」が指定されているため、「R」ボタンが選択された際は、コミックページ「comic04_35.jpg」へと遷移することになる。
【0059】
ここでファイル管理に関し、図6の画面レイアウト情報のファイルのXMLファイル名は、コミック・ファイル名(comic04)+「_ページ番号」と同名とし、図7のXMLファイル名は、画面レイアウト情報のXMLファイル名の末尾に「_rink」を加えたものとする。
【0060】
例えばコミックのコミックページP38にRink先が存在するときは、図6の画面レイアウト情報のファイルのXMLファイル名は「comic04_38.xml」となり、同ファイル内には「R」ボタンの位置情報が定義される。また、図7のXMLファイル名は、「comic04_38_rink.xml」となり、同ファイル内にはRink先の情報が定義される。そしてビューア上、コミックページのP38が読み出されたときは、まず画面レイアウト情報のファイル「comic04_38.xml」が読み出される。すると「comic04_38.xml」内に定義される「R」ボタンの表示位置(座席指定)とともに、コミック画像「Comic04_38.jpg」もまた読み出される。
【0061】
なお、Androidアプリケーションでは、コミック画像のリソースにはIDを付けて別途リソースID管理を行っている。そのため、コミック画像については別途そこから参照し読み出すようになっている。
【0062】
そしてその結果、ビューア上には、コミック画像「Comic04_38.jpg」が表示されるとともに、「R」ボタンが指定の位置に重畳され表示される。またこの「R」ボタンにはRink先の情報(例えばcomic04_35.jpg)の定義が埋め込まれていることになる。
【0063】
なお、これらはコミックページにおいてRink情報が存在するときのみ作成する。Rink情報が付与されていないコミックページのときは、常に例えば汎用の画面レイアウト情報のファイルである「novel.xml」を参照する。
【0064】
図8は、Rink先への遷移プログラム例を示す。本例の開発言語はJava(登録商標)によるもので、「R」ボタンを押した際に、XMLファイルを解析してRink先に遷移するプログラムである。Rink機能が表示に設定されると、現在表示しているコミックページと同名の画面レイアウト情報のファイル(例えばcomic04_38.xml)が参照されることにより、定義されている表示位置において「R」ボタンがコミックページ上表示される。そしてその「R」ボタンが選択・操作されると、Rink先への遷移プログラムが実行されることにより、Rink先の情報を含むXMLファイルが参照され、Rink先の関連するコミックページに遷移する。
【0065】
(コミックページ表示処理)
図9は、コミックページ表示処理を説明するフローチャートである。以下図を参照しながら説明する。この時点では、サーバ1からRink付きの電子コミック(データ)は取得済みである。
【0066】
S1:端末2のビューア部220は、Rink表示・非表示を確認する。具体的には、上述のダイアログ411の「Rink表示・非表示」415の設定に従えばよい。
【0067】
S2:Rink表示の場合には、そのコミックページの画面レイアウト情報があるかどうかを判定する。上述の如く、Rink先が存在する場合、そのコミックページには、画面レイアウト情報のXMLファイル(例えば図6)と、Rink先の情報を含んだXMLファイル(例えば図7)が用意されている。
【0068】
S3:画面レイアウト情報(画面レイアウトのファイル)がある場合、そのコミックページの画面レイアウト情報を読み込む。画面レイアウト情報には、上述の如く、画面全体のレイアウト情報とボタンの表示位置が定義されているので、画面全体のレイアウト情報ともに、画面上表示すべき「R」ボタンの位置情報を取得できる。
【0069】
S4:Rink先の情報を含むXMLファイルを読み込む。例えば図7を読み込んで、「R」ボタンが選択・操作されたときの遷移先のコマ又はコミックページの情報を取得する。なおここは、コミックページ表示後において「R」ボタンが操作された時点ではじめて、Rink先の情報を含むXMLファイルを読み込むようにしてもよい。そしてRink先の情報を読み込み後、直ぐにそのRink先へ遷移させる。
【0070】
なおまた、「R」ボタンが複数の場合には、画面レイアウト情報のXMLファイル(例えば図6)には2つのボタンが定義され、またRink先の情報を含んだXMLファイル(例えば図7)にも2つのRink先が定義される。「R」ボタンの個数はそのコミックページにもよるが、「回想シーン」及び「久しぶりに登場したキャラクターの初登場シーン」へのRink情報が含まれている場合には、それぞれのボタンを用意する。
【0071】
S5:そのコミックページにおいて表示するコミック画像(xxx.jpg)を取得する。なお取得対象のコミック画像は、上述の如くリソースID管理されているもので、別途そこから読み出されるようになっている。
【0072】
S6:画面レイアウト情報に従って、画面上にコミック画像を配置し、さらに「R」ボタンを重畳させて配置することにより、コミックページ全体ができあがるので、これをビューア上に表示する。これにより、例えば上述の画面510のように、「R」ボタンが付加されたコミックページが表示される。
【0073】
S7:一方、S1又はS2において、Rink非表示の設定になっている場合、もしくそのコミックページの画面レイアウト情報(画面レイアウトのファイル)がない場合には、「R」ボタンは表示しない、表示できないため、上述の如く汎用の画面レイアウト情報(例えばnovel.xml)のファイルを読み込む。なおこの汎用の画面レイアウト情報は、予め端末2のビューア側で1つ保持しておいてもよいし、電子コミックの取得とともにサーバ1から取得するようにしてもよい。
【0074】
S8:そのコミックページにおいて表示するコミック画像(xxx.jpg)を取得する。コミック画像は、上述の如くリソースID管理されているもので、別途そこから読み出される。
【0075】
S9:画面レイアウト情報に従って画面上にコミック画像を構成(配置)することにより、コミックページができあがるので、これをビューア上に表示する。
【0076】
<サーバ1>
本実施形態に係るサーバ1は、上述の如く端末2に対し電子コミック(データ)を配信するサーバであるが、この電子コミックのページにおいては、「R」ボタンを付加しておき、設定に応じて表示可能なものを配信する。但し端末2のビューア側は、図6〜8等に示したXMLファイルやプログラムが実装されるものの、如何なるコミックページにおいて「R」ボタンを表示させるか、また如何なるRink先の情報(Rink先のコミックページ)を埋め込むかは、サーバ1側の前処理によるものである。つまり、端末2はサーバ1から電子コミック・データを取得(ダウンロード)し、ビューアにてその閲覧するが、電子コミック内のどのコミックページに「R」ボタンを表示させ、その「R」ボタンが選択させた際、どのコミックページに遷移させるかは、予めサーバ1から取得される電子コミック・データに付加されているべき情報である。
【0077】
従って、サーバ1は端末2に対し配信すべき電子コミック・データに対し、前処理を行うことにより、各コミックページから意味的情報としてメタデータ(特徴量データ)を抽出しておき、その意味的情報を踏まえ、Rink先と意味的関連性を有するコミックページに対し、Rink先への「R」ボタンを付加する前処理を行うことになる。即ちサーバ1は端末2に対し電子コミック・データを配信する際、コミック・コンテンツ(コミック画像)とともに、「R」ボタンを付加すべきコミックページには、そのようなコミックページ1ページ毎に、上述の画面レイアウト情報のXMLファイル(例えば図6)と、Rink先の情報を含んだXMLファイル(例えば図7)とを作成しておく。
【0078】
(前処理)
図10は、サーバ1の前処理を説明するフローチャートである。なおこの前処理は、電子コミックDB111の全ての電子コミックに対して予め行っておく。
【0079】
S21:サーバ1の電子コミック取得部120は、電子コミックDB111からまず1の電子コミック(コンテンツ)を取得する。電子コミックのコミックページやコマからメタデータを抽出するためである。
【0080】
S22:コマ分割部130は、取得した電子コミックの各コミックページから、コマ分割処理を行う。コミックページ単位のみならず、コマ単位でメタデータを抽出するためである。
【0081】
S23:メタデータ抽出部140は、分割されたコマの構造、形状又は配置を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する。またコミックページ又は分割されたコマ内の文字列を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する。またもしくはコミックページ又は分割されたコマ内の画像を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する。そして抽出したメタデータは、抽出元の該コミックページ又はコマと対応付けてメタデータDB112に記憶しておく。例えば、抽出元のページ番号やコマ番号などとメタデータとを対応付けできる。
【0082】
具体的に例えば、コミック1ページに対し、コマ分割処理を行うと、コマの大きさや形状、配置、構成、1ページ中におけるコマの並び方等々の情報が抽出できる。そしてコマ分割処理後のコマの大きさや形状、配置、構成、1ページ中におけるコマの並び方等のコマ構造特徴の相関性から、作品中における最重要なシーンや、作者が強調したい箇所を検出する。
【0083】
またコミックページやコマ内の文字列(セリフや効果音文字、ナレーション解説等)に対し文字列認識処理を行うことにより、キャラクターのセリフや効果音などを文字列情報として得ることができる。これに対し文書解析を行い、作品の内容に基づいた意味的情報を抽出する。
【0084】
コミックは、例えばある1コミックページはコマと呼ばれる画像の集まりによって構成されており、その形状や配置方法は多種多様にわたっている。コマは、そのコミック作品の時間軸における任意の一場面を表現しており、コミックページにおいて意味を持った最小の単位といえる。本実施形態においては、作品名、作者名、目次等の書誌情報のほか、コミックページやコマに含まれる意味的情報をメタデータとして、コミックページ毎又はコマ毎に抽出し、コマ毎の意味的情報を抽出されたメタデータの同一・類似度でもって評価する。
【0085】
コミックページの場合、例えばコマの大きさ、配置、コマの構成、コマ形状、コマ間の余白(及びその色)などを工夫することにより、作者はコミックのストーリを表現する手段として用いている。そのため、これらコミックページ内のこれら要素には、ストーリ上の意味的情報が含まれているといえ、これら要素に着目したメタデータを抽出することにより、そのコミックページに含まれている意味的情報を抽出する。
【0086】
またコマの場合、コマ内の描画(キャラクタ、物、背景等)、文字列(セリフや効果音文字、ナレーション解説等)などを工夫することにより、作者はコミックのストーリを表現する手段として用いている。そのため、これらコマ内のこれら要素には、ストーリ上の意味的情報が含まれているといえ、これら要素に着目したメタデータを抽出することにより、そのコマに含まれている意味的情報を抽出する。
【0087】
なおまた、コミックにおいて、類似した画像やキャラクターが出現することは多くある。例えばあるキャラクターが以前あった出来事を思い出す時(回顧・回想)、その出来事に相当する箇所の画像を転用して掲載する場合がある。またキャラクターにおいても、以前登場した人物が再び登場することや、装飾品などを変更して再登場するなど様々な場合がある。このような類似したシーンやキャラクターの再登場は、その作中のストーリにおいて重要な意味的情報である。これらの情報は、SIFTやHOG、パターンマッチング等の画像照合技術により実現が可能である。
【0088】
なおまた、上述のコマ構造特徴や画像特徴の他に、コミックの読者から得られる意味的情報も存在する。読者により作品の解釈は異なってくるため、それらの情報は作品をより奥深いものとすることができる。例えばあるページにおいて多数の読者が注視していた場合、そこには作品における重要なシーンが描かれていると考えられる。ユーザの注視時間情報などは、専用のコミック閲覧システムを用いることにより抽出可能である。また注視時間以外にも、読者にコメントを付与してもらうことで、それらも意味的情報となる。
【0089】
以上の観点に基づき、コミックページ又はコミックページ内の各コマから抽出されたメタデータは、抽出元が分かるように、そのコミックページやコマ(ページ番号、コマ番号)に対応付けて、メタデータDB112に登録しておく。
【0090】
S24:Rink生成部150は、電子コミックのコミックページ又はコマ上において、該コミックページ又はコマのメタデータと同一又は類似するコミックページ又はコマへの遷移情報を含むRinkボタンを生成し、該コミックページ又はコマ上に重畳させて配置する。具体的には、コミックページ上において、上述のRinkボタンを表示させる画面レイアウト情報のXMLファイル(例えば図6)とRink先の情報を含んだXMLファイル(例えば図7)を生成する。またこれらファイルは、Rink付き画面レイアウトDB113に、電子コミックのコミックページと対応付けて保持しておく。
【0091】
以上、サーバ1の行う前処理である。サーバ1は、端末2への電子コミック配信に備え、電子コミックDB111の全ての電子コミックに対して予めこの前処理を行っておく。
【0092】
(配信処理)
図11は、サーバ1の配信処理を説明するフローチャートである。この時点では、電子コミックDB111の全ての電子コミックに対し前処理は済んでいるため、サーバ1はRink機能付きの電子コミックを端末2に対し配信可能な状態にある。
【0093】
S31:サーバ1の電子コミック配信部160は、端末2から電子コミック取得要求があったかどうかを判定する。なければ要求があるまでそのまま待機する。
【0094】
S32:電子コミック取得要求があると、電子コミック配信部160は、Rink付きの電子コミックを端末2に対し配信する。具体的には、Rink付き画面レイアウトDB113から取得した電子コミックのコンテンツとともに、Rinkボタンを表示させる画面レイアウト情報のXMLファイル(例えば図6)とRink先の情報を含んだXMLファイル(例えば図7)を配信する。電子コミックのコンテンツ自体は、電子コミックDB111から取得し、Rinkボタンを表示させる画面レイアウト情報のXMLファイルとRink先の情報を含んだXMLファイルは、Rink付き画面レイアウトDB113から取得し配信する。
【0095】
以上の配信処理により、端末2に対しRink付き電子コミックが配信される。その後端末2側においては、ビューアで同電子コミックを閲覧すると、「R」ボタンが表示されるので、上述の如く意味的関連のあるページに遷移でき、ユーザは簡便な操作でもって、読み返したくなったページへの遷移を行うことができる。
【0096】
[参考]
本発明者は、本実施形態に係るRink機能を搭載したコミック閲覧システムの使用により、ユーザビリティ向上を確認する評価実験を行った。具体的には、「どれくらい早く指定ページへ辿り着けるか」を示す値として、本評価では、手動による「読み返したいページ」への遷移達成時間を測定した。遷移達成時間とは、「左図一番下のコマと「同じ絵が用いられたコマ」がありました。どのページにあったでしょうか?」、「左図中央のコマに登場する男性が、読んだ中で「初登場」したコマは、どのページにあったでしょうか?」などという質問に対して、手動操作において、遷移開始の合図から被験者が質問内容を満たす遷移先を見つけるまでの時間である。つまり、手動操作において、回想シーン、初登場シーンをいかに素早く見つけ出し、そのシーンまで遷移するまでの時間を計測する。
【0097】
計測の結果、手動操作時の遷移達成時間は、約46秒であった。この数値は、本実施形態に係るRink機能を使用した場合の遷移達成時間1秒と比較して、約97%の時間短縮できたことを意味する。つまり、本本実施形態に係るRink機能を搭載したコミック閲覧システムの使用により、ユーザは迅速に所望のコミックページに簡単な操作で遷移できることが可能となった。
【0098】
[総括]
以上、本実施形態に係るコミック閲覧システム100においては、ユーザが端末2にて電子コミックを閲覧するに際し、コミックページ又はコマ上に表示されている「R」ボタンを選択・操作すると、意味的関連のあるページに遷移できるため、ユーザは簡便な操作でもって、読み返したくなったページへの遷移を行うことができる。より具体的に例えば、「回想シーン」が登場した場合には、「R」ボタンが表示されるので、そのボタンを選択することにより、回想された実際のシーンへ遷移できるので、ユーザはそのシーンをあらためで振り返って読み返すことができる。また例えば、あるキャラクターが久しぶりに登場した場合にもまた、「R」ボタンが表示されるので、そのボタンを選択することにより、そのキャラクターの初登場シーンへ遷移できるので、ユーザはそのキャラクターについて」あらためで振り返って読み返すことができる。
【0099】
即ち、本実施形態に係るコミック閲覧システム100によれば、電子コミック閲覧の際、ユーザがあるページに戻って読み返したくなったとき、ユーザビリティの観点から簡便な操作でもって、該当ページ(又はコマ)への遷移を実現するコミック閲覧システム等を提供することが可能となる。なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 サーバ
2 端末
3 ネットワーク
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 補助記憶装置
15 記憶媒体読取装置
16 入力装置
17 表示装置
18 通信装置
110 記憶部
111 電子コミックDB
112 メタデータDB
113 Rink付き画面レイアウトDB
120 電子コミック取得部
130 コマ分割部
140 メタデータ抽出部
150 Rink生成部
160 電子コミック配信部
210 電子コミック受信部
220 ビューア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子コミックを閲覧する電子書籍端末と、電子コミックを電子書籍端末に対し配信するサーバとを含み構成されるコミック閲覧システムであって、
前記サーバは、
1以上のコミックページからなる電子コミックを記憶した第1記憶手段と、
前記電子コミックのコミックページを構成するコマを分割するコマ分割手段と、
分割されたコマの構造、形状又は配置を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する第1抽出手段と、
前記コミックページ又は分割されたコマ内の文字列を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する第2抽出手段と、
前記コミックページ又は分割されたコマ内の画像を解析することにより、コミックページ毎又はコマ毎のメタデータを抽出する第3抽出手段と、
前記第1抽出手段、前記第2抽出手段及び前記第3抽出手段により抽出されたコミックページ毎又はコマ毎のメタデータを、抽出元の該コミックページ又はコマと対応付けて記憶する第2記憶手段と、
前記電子コミックのコミックページ又はコマ上において、該コミックページ又はコマのメタデータと同一又は類似するコミックページ又はコマへの遷移情報を含むRinkボタンを生成し、該コミックページ又はコマ上に重畳させて配置するRink生成手段と、
を有することを特徴とするコミック閲覧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−168590(P2012−168590A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26588(P2011−26588)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】