説明

コミュニケーションシステム、コミュニケーション装置

【課題】ネットワークを介して遠隔地にいる人とのコミュニケーションを行う場合、相手が違和感を持つことなくコミュニケーションを行うことができるコミュニケーションシステム、コミュニケーション装置を提供する。
【解決手段】特定のコミュニケーション装置1は、表示装置11の横幅、及び、ユーザXと表示装置11との距離に基づき当該ユーザXが表示装置11を見る視野角を他のコミュニケーション装置1’に送信する。他のコミュニケーション装置1’は、特定のコミュニケーション装置1から送信されたユーザXの視野角と同じ角度に撮影装置12’の画角を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を介して遠隔地にいる人とのコミュニケーションを行うコミュニケーションシステム、コミュニケーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像を介して行うコミュニケーション方法として、テレビ会議システムやテレビ電話システムなどが知られている。これらのシステムにおいて、第一視聴者(以下、ユーザXと記す)と第二視聴者(以下、ユーザYと記す)がコミュニケーションを行うとき、ユーザXを撮影した映像がユーザY側の表示装置に表示され、ユーザYを撮影した映像がユーザX側の表示装置に表示される。
【0003】
このとき、例えばユーザXは、表示装置に表示されるコミュニケーション相手のユーザYを見ながらコミュニケーションを行うが、双方のユーザの表示装置に表示されたユーザの視線がずれると、ユーザはお互いに違和感を持つ。
【0004】
そこで、違和感を解消する手段として、特許文献1には、表示装置の全面に半透鏡、及び、当該表示装置の左側及び右側に当該半透鏡からの反射光を撮影する撮影装置を備えたテレビ電話装置が開示されている。表示装置の正面にいる被写体に係る入射光は、半透鏡によって半分透過、半分反射され、この反射光は前記2つの撮影装置により撮影される。
そして、2つの撮影装置により撮影された被写体の映像を、画像処理装置によって合成し、正面から見た映像を生成する。このように合成映像を生成することにより違和感が少なくなる。
【0005】
また、撮影映像の被写体そのものに画像処理を実行することにより通話者同士の視線を一致させて違和感のないコミュニケーションを実現する手法が、例えば、特許文献2に開示されている。特許文献2では、まず、通話前に通話者同士の視線が一致する視線一致画像を撮影して、この画像から通話者Xの目周辺の画像を切り取り記憶する。その後、通話が開始されると、通話時に撮影している通話者Xの映像から目の位置を検出し、この通話者Xの目周辺に前記記憶した通話者Xの目周辺の画像(視線一致画像)を合成する。
このようにして、通話者同士の視線一致を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−30504号公報
【特許文献2】特開2005−117106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の手法は、半透鏡及び当該半透鏡からの反射光を撮影する撮影装置を表示装置の前面に設ける必要があるので、システムが大型化してしまう。さらに、半透鏡を表示装置の全面に設けているので、当該半透鏡には表示装置の表示映像に加え、撮影装置も表示されてしまうので、ユーザ(被写体)の表示装置に対する視認性が低下してしまう。
【0008】
また、特許文献2に開示の手法は、視線一致画像を予め記憶部に記憶しておく必要が有るので、通話を行うたびに通話者の視線一致画像を撮影しなければならず、煩雑である。
また、通話相手が二人いる場合には適用することができない。
このように、非言語コミュニケーション、特に視線によるコミュニケーションを正確に行えず伝達できる情報が少なくなってしまう。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、ネットワークを介して遠隔地にいる人とのコミュニケーションを行う場合、相手が違和感を持つことなくコミュニケーションを行うことができるコミュニケーションシステム、コミュニケーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の技術手段は、ユーザを撮影する撮影装置と、表示装置を備え、当該ユーザの撮影映像データを送受信する2つ以上のコミュニケーション装置が相互にネットワークを介して接続されているコミュニケーションシステムにおいて、前記コミュニケーションシステムの特定のコミュニケーション装置は、前記表示装置の横幅を記憶するメモリと、前記ユーザと前記表示装置との距離を検知する距離検知部と、前記表示装置の横幅、及び、前記ユーザと前記表示装置との距離に基づき当該ユーザが前記表示装置を見る視野角を算出する視野角算出部と、当該算出した視野角を他のコミュニケーション装置に送信する視野角送信部を備え、前記他のコミュニケーション装置は、前記特定のコミュニケーション装置から送信された前記ユーザの視野角と同じ角度に撮影装置の画角を制御する画角制御部を備えることを特徴とするコミュニケーションシステムである。
【0011】
第2の技術手段は、前記表示装置の横幅を記憶するメモリと、前記ユーザと前記表示装置との距離を検知する距離検知部と、前記表示装置の横幅、及び、前記ユーザと前記表示装置との距離に基づき当該ユーザが前記表示装置を見る視野角を算出する視野角算出部と、当該算出した視野角を前記他のコミュニケーション装置に送信する視野角送信部を備えたことを特徴とする第1の技術手段のコミュニケーションシステムを構成する前記特定のコミュニケーション装置である。
【0012】
第3の技術手段は、前記特定のコミュニケーション装置から送信されたユーザの視野角と同じ角度に前記撮影装置の画角を制御する画角制御部を備えたことを特徴とする第1の技術手段のコミュニケーションシステムを構成する前記他のコミュニケーション装置である。
【0013】
第4の技術手段は、第2の技術手段の特定のコミュニケーション装置において、ユーザを撮影する複数の撮影装置と、当該複数の撮影装置が出力する複数の映像データに基づき、前記表示装置における任意の位置から前記ユーザを仮想的に撮影したとみなす前記ユーザの映像データを生成する映像生成部とを備え、前記映像生成部は、当該複数の撮影装置が出力する複数の映像データに基づき、前記ユーザと前記表示装置との距離を検知することを特徴とするものである。
【0014】
第5の技術手段は、第3の技術手段の他のコミュニケーション装置において、ユーザを撮影する複数の撮影装置と、当該複数の撮影装置が出力する複数の映像データに基づき、前記表示装置における任意の位置から前記ユーザを仮想的に撮影したとみなす前記ユーザの映像データを生成する映像生成部とを備え、前記映像生成部は、前記特定のコミュニケーション装置から送信されたユーザの視野角と同じ角度の撮影画角に対応する映像データを生成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、ユーザXが、視線方向などの非言語コミュニケーションを使用したとき、ユーザYに正確にユーザXの意図を伝えることができ、違和感を持つことなくコミュニケーションを行うことができる。また、視線や身振り手振りを介して、正確な非言語的コミュニケーションが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コミュニケーション装置の概要を説明する図である。
【図2】ユーザXのコミュニケーション相手である2人のユーザY1、Y2を撮影する画角を説明する図である。
【図3】ユーザXの視線方向を説明する図である。
【図4】表示装置に表示されるユーザXの視線方向を説明する図である。
【図5】撮像画角と視野角の一致を説明する第1の図である。
【図6】撮像画角と視野角の一致を説明する第2の図である。
【図7】本発明に係るコミュニケーション装置の機能ブロック図である。
【図8】複数の撮影装置を備えたコミュニケーション装置の概要を説明する図である。
【図9】複数の撮影装置がユーザXを撮影した状態を説明する図である。
【図10】撮像画角と視野角の一致を説明する第3の図である。
【図11】本発明に係るコミュニケーション装置の他の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例1)
本発明に係るコミュニケーション装置の概要について図1〜図6を用いて説明する。
図1は、ユーザXがユーザYとコミュニケーションを行う様子を説明する図である。
1は、ユーザX側に設けられたコミュニケーション装置の外観を示している。
11は、ユーザXのコミュニケーション相手であるユーザY等を表示する表示装置で、例えば、動画映像を表示できる液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等から構成される。
【0018】
12は、ユーザXを撮影する撮影装置で、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有する固体撮影デバイスと、レンズ等によって構成される動画映像が撮影できるカメラ等から構成される。撮影装置12は、表示装置11の上部中央に設けられ、ユーザXは撮影装置12の正面に位置しているとする。撮影されたユーザXの映像は、ユーザY側の表示装置に表示される。
【0019】
図中の視野角とは、ユーザXが表示装置11の右端を見たときの方向D1と左端を見たときの方向D2との角度を示す。
【0020】
なお、ユーザYも、ユーザXのコミュニケーション装置1とネットワークを介して接続されている当該装置と同様なコミュニケーション装置を用いて、ユーザXとコミュニケーションを行う。
【0021】
図2は、ユーザXのコミュニケーション相手である2人のユーザY1、Y2を撮影画角A、撮影画角Bで撮影した様子を示す図である。ここでは、撮影画角A>撮影画角Bであり、ユーザY1は、表示装置11’の上部中央に設けられた撮影装置12’の正面に位置し、ユーザY2は、ユーザY1の左横に位置しているものとする。
以下では、例えば、講義や講演など1対複数でコミュニケーションを行う場合を想定して説明する。
【0022】
図3は、図2で説明した撮影画角A又はBでユーザY1、Y2を撮影した場合に、ユーザX側の表示装置11に表示される2人のユーザY1、Y2を示す図で、矢印A1〜A4は、ユーザXの視線の方向を示す。
【0023】
撮影装置12’が撮影画角AでユーザY1、Y2を撮影すると、図3(A)に示すようにユーザY1、Y2が表示装置11に表示され、撮影画角BでユーザY1、Y2を撮影すると、図3(B)に示すようにユーザY1、Y2が表示される。
【0024】
ユーザXが、表示装置11に表示される撮影画角Aで撮影されたユーザY1を見ても、撮影画角Bで撮影されたユーザY1を見ても、図3の矢印A1、A3に示すように、ユーザY1は、撮影装置12’の正面に位置しているので、ユーザXの視線の方向に違いは生じない。
【0025】
一方、ユーザXが表示装置11に表示されるユーザY2を見る場合、撮影画角Aで撮影された映像では、図3(A)の矢印A2に示すように、ユーザXの視線の方向は表示装置11の中央付近やや左よりとなる。また、撮影画角Bで撮影された映像では、図3(B)の矢印A4に示すように、ユーザXの視線の方向は表示装置11の左端寄りとなる。
このように、コミュニケーション相手を撮影する画角によって、ユーザXの視線方向が変化する。
【0026】
ユーザXの視線の方向は、ユーザY1、Y2側の表示装置11’に表示される。
図4(A)は、表示装置11’に表示される、図3(A)に示したユーザXの視線方向を示し、図4(B)は、表示装置11’に表示される、図3(B)に示したユーザXの視線方向を示している。
【0027】
図4(A)の矢印A2に示す、ユーザXの視線は、ユーザXがユーザY1とユーザY2の間を見ているように表示される。
また、図4(B)の矢印A4に示す、ユーザXの視線は、ユーザXがユーザY2の右側を見ているように表示される。
【0028】
このように、双方のユーザを任意に撮影してコミュニケーションを行うと、撮影装置の正面に位置しないユーザを表示装置上で見ながら会話する場合、ユーザの視線方向がずれて、違和感が生じる。同様に、相手ユーザの方向を向いて身振りや手振りを介した非言語コミュニケーションを行う場合も、違和感が生じる。
【0029】
そこで、ユーザXの視野角と、ユーザY2を撮像する撮像装置12’の画角を一致させて撮影した場合について、図5、図6により説明する。
【0030】
図5は、ユーザXが、表示装置11上のユーザY1、Y2を見ている状態の俯瞰図(ふかん図)を示し、図6は、ユーザY1、Y2を撮影装置12’が撮影している状態の俯瞰図を示している。
【0031】
図5において、表示装置11のY1の位置にユーザY1が表示され、同Y2の位置にユーザY2が表示されているものとする。W1は、表示装置11の横幅を示し、W2は、表示装置11の中央M1とユーザY2が表示される位置との距離を示し、L1は、ユーザXと表示装置11との距離を示している。
【0032】
θは、表示装置11の中央M1とユーザXとを結ぶ直線と、表示装置11の左端又は右端とユーザXとを結ぶ直線との角度を示し、この角度の2倍、つまり、2θがユーザXの視野角になる。
A5は、ユーザXが表示装置11に表示されるユーザY1に視線を向けた場合の視線方向を示し、A6は、ユーザXが同ユーザY2に視線を向けた場合の視線方向を示している。
θ1は、ユーザXがユーザY2に視線を向けたときの視角、つまり、視線方向A5、視線方向A6の角度を示す。
【0033】
図6において、表示装置11’のXの位置に、ユーザXが表示されているものとする。
W3は、ユーザY1等に焦点を合わせたときの撮像装置12’の撮影範囲、W4は、ユーザY1とユーザY2との距離を示し、L2は、撮影装置12’と当該撮影装置12’の正面に位置するユーザY1との距離を示し、A7は、図5のA5に対応する、表示装置11’に表示されるユーザXの視線方向を示し、A8は、図5のA6に対応する、同ユーザXの視線方向を示している。
θ2は、視線方向A7、視線方向A8の角度を示す。
前述のように、撮像装置12’の画角は、ユーザXの視野角2θと一致している。
【0034】
図5、図6において、
撮像装置12’の画角2θと、ユーザXの視野角2θとが同じであるので、
W1:W3=L1:L2
撮影装置12’の撮影範囲W3に対応する映像が、表示装置11の横幅W1に対応する表示画面に表示されるので、表示画面に表示されるY2の位置は、W3に対するW4の割合と等しくなり、
W1:W3=W2:W4
したがって、
W2:W4=L1:L2である。
【0035】
つまり、図5の直角三角形PQRと、図6の直角三角形X’YZは相似であり、θ1(直角三角形PQRの角P)とθ2(直角三角形X’YZの角X’)は等しい。
それ故、ユーザY2の映像をユーザX側の表示装置11に表示した場合において、ユーザXが、表示されたユーザY2に視線を向けると、ユーザY2側の表示装置11’に、ユーザY2の方向に視線を向けたユーザXの映像が表示される。
【0036】
また、例えば、図6のY1’、Y2’に示すように、ユーザY1、Y2が撮像装置12’に近づいた場合、ユーザX側の表示装置11には、図5のY2’の位置に、ユーザY2が表示される。ユーザXが、図5のA9に示すように、撮像装置12’に近づいたユーザY2に視線を向けなおすと、撮像装置12’の画角と、ユーザXの視野角が等しいので、図6のA10に示すように、表示装置11’に、このユーザY2の方向に視線を向けなおしたユーザXの映像が表示される。なお、ユーザY2が、左側又は右側に移動した場合、ユーザXが、このユーザY2に視線を向けなおしても、前述と同様に、表示装置11’に、このユーザY2の方向に視線を向けなおしたユーザXの映像が表示される。
【0037】
図7は、本発明に係るコミュニケーション装置1、1’の機能ブロック図で、特定のコミュニケーション装置1と他のコミュニケーション装置1’はネットワークNを介して接続され、コミュニケーションシステムを構成する。なお、2つ以上のコミュニケーション装置が相互にネットワークNを介して接続されていてもよい。
以下、特定のコミュニケーション装置を、コミュニケーション装置1と記し、他のコミュニケーション装置をコミュニケーション装置1’と記す。
【0038】
まず、ユーザX側のコミュニケーション装置1について説明する。
11は、表示装置、12は、表示装置11の上部中央に設けられた撮影装置、13は、ユーザの撮影映像データや各種制御データの送受信処理を制御するデータ送受信制御部、14は、ネットワークNに対するインターフェイスを提供するネットワークI/Fである。
【0039】
21は、距離検知部で、ユーザXと表示装置11との距離L1を検知する。ユーザXとの距離を検知する手段として、例えば、専用の距離測定センサを用いてもよいし、撮影装置の焦点距離から算出してもよい。また、撮影装置12が撮影したユーザXの映像を解析し前記映像内のユーザXの大きさなどから算出してもよい。
【0040】
22は、視野角算出部で、表示装置11の横幅、及び、距離検知部21が検知したユーザXと表示装置11との距離に基づき、ユーザXが表示装置11を見る視野角を算出する。
以下に、ユーザXの視野角の算出について説明する。
図5から、θ、L1、W1は、
tanθ=(W1÷2)÷L1
となる。上式を変形すると
θ=tan−1{(W1÷2)÷L1}
の式を得る。このθを2倍すれば、ユーザXの視野角を得る。
【0041】
23は、視野角算出部22が算出した視野角を他のコミュニケーション装置1’に送信する視野角送信部である。
【0042】
24は、表示装置11の横幅情報、各種制御情報を記憶するメモリ、25は、各機能ブロックを制御する制御部である。
【0043】
次に、ユーザY1側のコミュニケーション装置1’について説明する。
11’は、表示装置、12’は、表示装置11’の上部中央に設けられた撮影装置、13’は、コミュニケーション装置1が送信したユーザXの視野角を受信する処理や、ユーザの撮影映像データや各種制御データの送受信処理を制御するデータ送受信制御部、14’は、ネットワークI/Fである。
【0044】
31は、撮影装置12’の画角を制御する画角制御部で、コミュニケーション装置1が送信したユーザXの視野角を、データ送受信制御部13’を介して受信し、当該視野角と同じ角度に撮影装置12’の画角を制御する。
32は、各種制御情報を記憶するメモリ、33は、各機能ブロックを制御する制御部である。
【0045】
なお、マイク、スピーカなどの音声機器については、図示を省略する。
【0046】
以上説明したように、ユーザXの視野角と同じ角度に撮影装置12’の画角を制御し、撮影装置12’が撮影したユーザY1、Y2の映像をユーザX側の表示装置11に表示した場合において、ユーザXが表示装置11のユーザY2に例えば視線を向けると、ユーザY1側の表示装置11’に、ユーザY2の方向に視線を向けたユーザXの映像が表示される。つまり、ユーザXの視線や向いている方向を、ユーザY1、Y2に正しく伝えることができるので、非言語、特に視線によるコミュニケーションが円滑になる。
【0047】
(実施例2)
実施例1では、1つの撮影装置を備えたコミュニケーション装置について説明したが、実施例2では、複数の撮影装置を用いて撮影した映像データを合成することで、撮影装置が存在しない場所(仮想視点)から見た被写体の映像データを生成できる仮想視点映像生成部を備えたコミュニケーション装置について説明する。
【0048】
図8は、複数の撮影装置を備えたコミュニケーション装置2を示す図で、表示装置11の左枠中央部、上枠中央部、右枠中央部にそれぞれ撮影装置121、122、123が設けられている。
図9(A)〜図9(C)は、撮影装置121、122、123がユーザXを撮影した場合の映像を示す図である。
【0049】
前記仮想視点映像生成部は、図9に示した映像に対してアフィン変換処理や射影変換処理を実行し、得られた映像を重ね合わせて、撮影装置が存在しない任意の視点位置からユーザXを撮影したものとする映像を生成する。以後、任意の視点位置に仮想的に配置された撮影装置を仮想撮影装置と記す。ここでは、ユーザXを表示装置11の真正面方向から撮影するために、表示装置11の中央部に図8に示す仮想撮影装置124を配置するものとする。
なお、この仮想視点映像生成方法については、特開2006−126965号公報などに開示されている。
【0050】
また、ユーザXのコミュニケーション相手であるユーザYのコミュニケーション装置、つまり、画角制御対象となるコミュニケーション装置にも、複数の撮影装置、及び、仮想視点映像生成部を設ける。
【0051】
図10は、ユーザY1、Y2と複数の撮影装置121’、122’、123’が設けられた表示装置11’を示した図である。
【0052】
図10に示すように、θ3に画角を設定した撮影装置121’、122’、123’からの映像データに基づき仮想撮影装置124’からユーザY1等を仮想的に撮影したとみなす映像を生成する。このとき、仮想撮影装置124’の画角を実施例1と同様に、ユーザY1のコミュニケーション相手であるユーザXの視野角と同じ角度に制御する。
【0053】
図11は、複数の撮影装置、及び、仮想視点映像生成部を設けたコミュニケーション装置2、2’の機能ブロック図であり、図7の機能ブロックと同じ機能を備えた機能ブロックについては同じ符号を付してその説明を省略する。
【0054】
特定のコミュニケーション装置2は、前述のように、複数の撮影装置121〜123を備えている。仮想視点映像生成部26は、複数の撮影装置121〜123からの映像に対してアフィン変換処理や射影変換処理を実行し、得られた映像を重ね合わせて、仮想撮影装置124からユーザXを撮影したものとする映像を生成する。
【0055】
複数の撮影装置121〜123を設けることにより、当該撮影装置からの映像に基づきユーザXの距離を検知することができる。図9に示したように、異なる位置から同一の被写体を撮影した場合、撮影された被写体の画角内位置が異なっている。この位置の異なりを利用してユーザXと表示装置11との距離を算出する。例えば、図9(A)、(B)の映像に基づき、ユーザXが何画素異なった位置に撮影されているかを算出する。この値に加え、撮影装置の画角、撮影装置間の距離などの既知の撮影装置に係る情報に基づき、ユーザXと表示装置11との距離を算出できる。
【0056】
このように、複数の撮影装置の視差を利用して距離情報を算出し、視野角を求めると、特別な距離測定センサなどを配置せずに済むので、システムの小型化、低価格化が可能となり好適である。さらに、この方法で得られた距離情報を仮想視点映像生成部26で使用することで、より精度の高い仮想映像を生成することができる。
【0057】
他のコミュニケーション装置2’は、コミュニケーション装置2と同じく、複数の撮影装置121’〜123’を備えている。仮想視点映像生成部34は、複数の撮影装置121’〜123’からの映像に基づき、仮想撮影装置124’がユーザY1等を撮影したものとする映像を生成する。
画角制御部31は、仮想撮影装置124’の画角を、ユーザY1のコミュニケーション相手であるユーザXの視野角と同じ角度に制御する。具体的には、仮想視点映像生成部34は、ユーザXの視野角と同じ角度の撮影画角に対応する映像データを生成する。
【0058】
以上の実施例では、横方向への角度(広がり角)を説明してきたが、縦方向への角度にも本発明を適用することができる。この場合、表示装置の縦幅をメモリに記憶する。
このようにすることで、ユーザが上下方向に視線を動かしても、前述のように、ユーザの視線方向をコミュニケーション相手に正確に伝えることができ、自然で効果的なコミュニケーションが可能である。
【0059】
以上に説明したように、本発明によれば、ユーザの向いている方向や視線を、コミュニケーション相手に正しく伝えることができるので、自然なコミュニケーションが可能である。また、視線や身振り手振りを介した非言語コミュニケーションを正確に行えるので、コミュニケーション相手に多くの情報を伝達することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,2…特定のコミュニケーション装置、1’,2’…他のコミュニケーション装置、11,11’…表示装置、12,12’ ,121〜123,121’〜123’…撮影装置、124,124’…仮想撮影装置、13,13’…データ送受信制御部、14,14’…ネットワークI/F、21…距離検知部、22…視野角算出部、23…視野角送信部、24,32…メモリ、25,33…制御部、26,34…仮想視点映像生成部、31…画角制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザを撮影する撮影装置と、表示装置を備え、当該ユーザの撮影映像データを送受信する2つ以上のコミュニケーション装置が相互にネットワークを介して接続されているコミュニケーションシステムにおいて、
前記コミュニケーションシステムの特定のコミュニケーション装置は、前記表示装置の横幅を記憶するメモリと、前記ユーザと前記表示装置との距離を検知する距離検知部と、前記表示装置の横幅、及び、前記ユーザと前記表示装置との距離に基づき当該ユーザが前記表示装置を見る視野角を算出する視野角算出部と、当該算出した視野角を他のコミュニケーション装置に送信する視野角送信部を備え、
前記他のコミュニケーション装置は、前記特定のコミュニケーション装置から送信された前記ユーザの視野角と同じ角度に撮影装置の画角を制御する画角制御部を備えることを特徴とするコミュニケーションシステム。
【請求項2】
前記表示装置の横幅を記憶するメモリと、
前記ユーザと前記表示装置との距離を検知する距離検知部と、
前記表示装置の横幅、及び、前記ユーザと前記表示装置との距離に基づき当該ユーザが前記表示装置を見る視野角を算出する視野角算出部と、
当該算出した視野角を前記他のコミュニケーション装置に送信する視野角送信部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のコミュニケーションシステムを構成する前記特定のコミュニケーション装置。
【請求項3】
前記特定のコミュニケーション装置から送信されたユーザの視野角と同じ角度に前記撮影装置の画角を制御する画角制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のコミュニケーションシステムを構成する前記他のコミュニケーション装置。
【請求項4】
ユーザを撮影する複数の撮影装置と、
当該複数の撮影装置が出力する複数の映像データに基づき、前記表示装置における任意の位置から前記ユーザを仮想的に撮影したとみなす前記ユーザの映像データを生成する映像生成部とを備え、
前記映像生成部は、当該複数の撮影装置が出力する複数の映像データに基づき、前記ユーザと前記表示装置との距離を検知することを特徴とする請求項2に記載の特定のコミュニケーション装置。
【請求項5】
ユーザを撮影する複数の撮影装置と、
当該複数の撮影装置が出力する複数の映像データに基づき、前記表示装置における任意の位置から前記ユーザを仮想的に撮影したとみなす前記ユーザの映像データを生成する映像生成部とを備え、
前記映像生成部は、前記特定のコミュニケーション装置から送信されたユーザの視野角と同じ角度の撮影画角に対応する映像データを生成することを特徴とする請求項3に記載の他のコミュニケーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−283550(P2010−283550A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134637(P2009−134637)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】