説明

コモンモードチョークコイル

【課題】本発明は、体格の増大を抑制することのできるコモンモードチョーク16を提供する。
【解決手段】外部電源とPFC回路との間に、トロイダルコア17に巻回される一対の1次側巻線16a,16bと、トロイダルコア17に巻回される2次側巻線16cと、抵抗体16dとを備えるコモンモードチョーク16を接続する。ここで、2次側巻線16cの両端のそれぞれが抵抗体16dによって接続されて閉ループ回路が形成される。そして、仕切部36cに形成された貫通孔40を通して2次側巻線16cが巻回される。そして、抵抗体16dは仕切部36cに接触して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源と所定の電力供給対象との間を接続して且つコアに巻回される一対の1次側巻線と、前記コアに巻回される2次側巻線とを備えるコモンモードチョークコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング素子を有する電力変換装置を備える電力変換システム等において、スイッチング素子の高速スイッチング等に起因して、高周波のコモンモード電流が発生することが知られている。詳しくは、例えばスイッチング素子の両端のそれぞれと電力変換装置のグランドライン(フレームグランド)との間などに寄生容量が存在する。スイッチング素子が高速スイッチングされると、スイッチング素子の両端の印加電圧が変動して上記寄生容量が充放電されることで、コモンモード電流が発生することがある。コモンモード電流が発生し、これがフレームグランドに流れると、フレームグランドに接続された電子機器に障害を与えたり、外部への電磁放射ノイズを生じさせたりするおそれがある。
【0003】
こうした問題を解決すべく、下記特許文献1に見られるように、直流電源とインバータとを接続して且つコアに巻回された一対の巻線(1次側巻線)と、コアに巻回された2次側巻線と、抵抗体とを備えるコモンモードチョークコイルであるいわゆるコモンモードトランスを用いる技術が知られている。詳しくは、コモンモードトランスの2次側巻線の両端のそれぞれは、抵抗体によって接続されている。こうした構成において、一対の1次側巻線にコモンモード電流が流れると、電磁誘導によって2次側巻線に電流が流れ、2次側巻線に流れる電流は、抵抗体によって熱に変換される。これにより、コモンモード電流の低減を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−60107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2次側巻線や抵抗体の配置態様によっては、コモンモードトランスの体格が増大することが懸念される。また、抵抗体と2次側巻線との接続の容易化を図ることができない等、コモンモードトランスの組み付け工数が増大することも懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、自身の体格の増大を抑制することのできるコモンモードチョークコイルを提供することにある。また、本発明の目的は、自身の組み立ての容易化を図ることのできるコモンモードチョークコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、電源と所定の電力供給対象との間を接続して且つコアに巻回される一対の1次側巻線と、前記コアに巻回される2次側巻線を有する閉ループ回路とを備えるコモンモードチョークコイルであって、前記閉ループ回路を流れる電流を熱に変換する変換手段を備え、前記変換手段は、当該コモンモードチョークコイルに一体的に設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、上記変換手段をコモンモードチョークコイルに一体的に設けている。すなわち、変換手段をコモンモードチョークコイル本体上に設けている。このため、コモンモードチョークコイルの体格の増大を抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、電源と所定の電力供給対象との間を接続して且つコアに巻回される一対の1次側巻線と、前記コアに巻回される2次側巻線とを備え、回路基板に実装されるコモンモードチョークコイルであって、前記2次側巻線の両端のそれぞれは、当該コモンモードチョークコイルと一体的に設けられる一対の端子のそれぞれに接続され、前記回路基板には、自身に流れる電流を熱に変換する変換手段、一対の取付部、及び該一対の取付部のそれぞれと前記変換手段とを電気的に接続する配線パターンが設けられ、前記一対の端子のそれぞれは、前記一対の取付部のそれぞれに取り付け可能とされていることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、コアに巻回される2次側巻線の両端のそれぞれと、コモンモードチョークコイルと一体的に設けられる一対の端子のそれぞれとを接続している。そして、2次側巻線につながるこれら一対の端子を回路基板の取付部に取り付けることで、2次側巻線及び変換手段からなる閉ループ回路を形成する。こうした上記発明によれば、コモンモードチョークコイルの組み立て工程において、例えば、コモンモードチョークコイルと一体的に設けられる変換手段としての抵抗体に2次側巻線を接続する工程を無くすことができ、コモンモードチョークコイルの組み立ての容易化を図ることができる。したがって、コモンモードチョークコイルの組み立て工数の増大を抑制することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記コアは、環状をなしており、前記コアには、非導電性材料からなって且つ該コアを2分するように直線状に延びる仕切部材が装着され、前記一対の1次側巻線のそれぞれは、前記コアのうち前記仕切部材によって2分された領域のそれぞれに巻回され、前記仕切部材には、該仕切部材が延びる方向と略直交する方向に貫通孔が形成され、前記2次側巻線は、前記貫通孔を通って前記コアに巻回され、前記変換手段は、前記仕切部材に一体的に設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記発明では、一対の1次側巻線同士を絶縁することを目的として上記仕切部材がコアに装着されている。ところで、仕切部材がコアに装着されると、コアにおいて2次側巻線を巻回するためのスペースの確保が困難となることが懸念される。
【0014】
ここで、上記発明では、仕切部材に上記態様にて貫通孔を形成し、貫通孔を通して2次側巻線をコアに巻回する。そして、仕切部材に一体的に変換手段を設ける。こうした構成によれば、コアのうち仕切部材に占有される部分の有効利用を図ることができ、コモンモードチョークコイルの体格の増大をより好適に抑制することができる。しかも、仕切部材によって2次側巻線と一対の1次側巻線のそれぞれとの絶縁を適切に確保することもできる。
【0015】
請求項4記載の発明は、電源と所定の電力供給対象との間を接続して且つコアに巻回される一対の1次側巻線と、前記コアに巻回される2次側巻線を有する閉ループ回路とを備えるコモンモードチョークコイルであって、前記閉ループ回路を流れる電流を熱に変換する変換手段を備え、前記コアは、環状をなしており、前記コアには、非導電性材料からなって且つ該コアを2分するように直線状に延びる仕切部材が装着され、前記一対の1次側巻線のそれぞれは、前記コアのうち前記仕切部材によって2分された領域のそれぞれに巻回され、前記仕切部材には、該仕切部材が延びる方向と略直交する方向に貫通孔が形成され、前記2次側巻線は、前記貫通孔を通って前記コアに巻回されていることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、一対の1次側巻線同士を絶縁することを目的として上記仕切部材がコアに装着されている。ところで、仕切部材がコアに装着されると、コアにおいて2次側巻線を巻回するためのスペースの確保が困難となることが懸念される。
【0017】
ここで、上記発明では、仕切部材に上記態様にて貫通孔を形成する。そして、貫通孔を通して2次側巻線をコアに巻回する。こうした構成によれば、コアのうち仕切部材に占有される部分の有効利用を図ることができ、コモンモードチョークコイルの体格の増大を極力抑制することができる。また、仕切部材によって2次側巻線と一対の1次側巻線のそれぞれとの絶縁を適切に確保することもできる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記2次側巻線の線径は、前記1次側巻線の線径よりも小さいことを特徴とする。
【0019】
一対の1次側巻線にコモンモード電流が流れることに伴う電磁誘導によって2次側巻線に流れる電流は、1次側巻線に流れる電流よりも小さい傾向にある。この点に鑑み、上記発明では、2次側巻線の線径を1次側巻線の線径よりも小さくしている。これにより、2次側巻線を巻回するスペースの増大を抑制することができ、ひいてはコモンモードチョークコイルの体格の増大をいっそう好適に抑制することができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、電源と所定の電力供給対象との間を接続して且つコアに巻回される一対の1次側巻線と、前記コアに巻回される2次側巻線を有する閉ループ回路とを備えるコモンモードチョークコイルであって、前記閉ループ回路を流れる電流を熱に変換する変換手段を備え、前記2次側巻線の線径は、前記1次側巻線の線径よりも小さいことを特徴とする。
【0021】
一対の1次側巻線にコモンモード電流が流れることに伴う電磁誘導によって2次側巻線に流れる電流は、1次側巻線に流れる電流よりも小さい傾向にある。この点に鑑み、上記発明では、2次側巻線の線径を1次側巻線の線径よりも小さくしている。これにより、2次側巻線を巻回するスペースの増大を抑制することができ、ひいてはコモンモードトランスの体格の増大を抑制することができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記変換手段は、抵抗体であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】コモンモード電流が流れる電気経路の等価回路を示す図。
【図3】コモンモードトランスによるノイズ低減効果の一例を示す図。
【図4】第1の実施形態にかかるコモンモードトランスの構成を示す図。
【図5】第2の実施形態にかかるコモンモードトランスの構成を示す図。
【図6】第3の実施形態にかかるコモンモードトランスの構成を示す図。
【図7】その他の実施形態にかかるコモンモードトランスの構成を示す図。
【図8】その他の実施形態にかかるコモンモードトランスの構成を示す図。
【図9】その他の実施形態にかかる2次側巻線近傍を示す図。
【図10】その他の実施形態にかかるコモンモードトランスの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるコモンモードチョークコイルを、車載主機として内燃機関及び回転機を備えるプラグインハイブリッド車両(PHV)に搭載される充電装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0026】
図示される充電装置10は、交流電圧を有する外部電源12(商用電源)によって車載バッテリ14を充電する機能を有する。充電装置10は、平滑コンデンサ11、コモンモードチョークコイル(以下、コモンモードチョーク16)、第1の整流回路18、昇圧チョッパ方式のコンバータ(PFC回路20)、トランス22(高周波トランス)、第2の整流回路24及び制御回路26等を備えて構成されている。
【0027】
充電装置10のうち平滑コンデンサ11は、スイッチングにより発生するノーマルモードノイズを抑制する機能、及び入力電圧の変動を抑制する機能を有し、図示しない車載プラグ等を介して外部電源12と接続可能とされている。そして、平滑コンデンサ11は、コモンモードチョーク16の入力側に接続されている。
【0028】
コモンモードチョーク16は、平滑コンデンサ11の両端のそれぞれに接続される一対の1次側巻線16a,16bと、2次側巻線16cと、これら巻線が巻回されたコアとを備えるいわゆるコモンモードトランスと称される部材である。詳しくは、2次側巻線16cの両端のそれぞれは、抵抗体16d(抵抗素子)によって接続されている。すなわち、2次側巻線16c及び抵抗体16dの直列接続体からなる閉ループ回路が形成されている。
【0029】
コモンモードチョーク16の出力側(一対の1次側巻線16a,16bのそれぞれの両端のうち平滑コンデンサ11に接続されていない側)には、YコンデンサCYが並列接続されている。YコンデンサCYは、一対のコンデンサの直列接続体であり、その接続点がグランドライン(フレームグランドFG)に接続されている。
【0030】
また、コモンモードチョーク16の出力側には、更に、第1の整流回路18が接続されている。第1の整流回路18は、交流電圧を直流電圧に変換(整流)する機能を有し、本実施形態では、ブリッジ整流回路を想定している。
【0031】
第1の整流回路18の出力側には、上記PFC回路20が接続されている。PFC回路20は、この回路に入力される直流電圧を所定電圧(例えば300V)まで昇圧させる機能を有し、リアクトル30、スイッチング素子SW、ダイオード32、及びコンデンサ34を備えて構成されている。なお、本実施形態では、スイッチング素子SWとして、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を想定している。
【0032】
詳しくは、リアクトル30及びスイッチング素子SWの直列接続体は、第1の整流回路18に並列接続されている。具体的には、スイッチング素子SWのコレクタにはリアクトル30が接続され、エミッタには第1の整流回路18が接続されている。また、スイッチング素子SWのコレクタ及びリアクトル30の接続点と、スイッチング素子SWのエミッタとは、コンデンサ34によって接続されている。
【0033】
上記コンデンサ34とスイッチング素子SWのコレクタ側との間にはダイオード32が接続されている。詳しくは、ダイオード32のアノード側には、スイッチング素子SWのコレクタ側が接続され、カソード側にはコンデンサ34が接続されている。
【0034】
PFC回路20の出力側には、フルブリッジ回路が接続されている。フルブリッジ回路は、一対のスイッチング素子Sp1,Sn1の直列接続体、及び一対のスイッチング素子Sp2,Sn2の直列接続体の並列接続体を備えるものである。詳しくは、上記並列接続体のうちスイッチング素子Sp1(Sp2)側には、ダイオード32のカソード側が接続され、上記並列接続体のうちスイッチング素子Sn1(Sn2)側には、スイッチング素子SWのエミッタ側が接続されている。なお、本実施形態では、上記スイッチング素子Sp1,Sp2,Sn1,Sn2として、IGBTを想定している。
【0035】
一対のスイッチング素子Sp1,Sn1の接続点、及び一対のスイッチング素子Sp2,Sn2の接続点のそれぞれには、トランス22の1次側巻線22aの両端のそれぞれが接続されている。
【0036】
トランス22の2次側巻線22bには、第2の整流回路24としてのブリッジ整流回路が接続されている。第2の整流回路24の出力側には、この回路の出力電圧を平滑化するための平滑コンデンサ35を介して車載バッテリ14が接続されている。ちなみに、車載バッテリ14は、車載主機となる回転機(モータジェネレータ)等の電力供給源となる蓄電池である。本実施形態では、車載バッテリ14として、リチウムイオン蓄電池や、ニッケル水素蓄電池を想定している。
【0037】
制御回路26は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、スイッチング素子SW,Sp1,Sp2,Sn1,Sn2のゲート電圧の調節によってこれら素子をオン・オフ操作することで、車載バッテリ14の充電処理を行う。
【0038】
上記充電処理は、例えば充電装置10が外部電源12と接続されたとの条件を含む所定の実行条件が成立すると判断された場合に実行される処理であり、主に、PFC回路20による昇圧処理と、トランス22への給電処理とからなる。
【0039】
PFC回路20による昇圧処理は、スイッチング素子SWのオン・オフ1周期に対するオン時間の時比率を調節することで、PFC回路20に入力される直流電圧を所定の直流電圧に昇圧する処理である。詳しくは、スイッチング素子SWがオンされることで、第1の整流回路18から供給される電力によってリアクトル30に電気エネルギが蓄積される。そしてその後、スイッチング素子SWがオフされると、リアクトル30に蓄積された電気エネルギが放出されることで、PFC回路20の入力電圧が昇圧されて出力される。
【0040】
一方、上記トランス22への給電処理は、スイッチング素子Sp1,Sn2と、スイッチング素子Sp2,Sn1とを交互にオン・オフ操作する処理である。詳しくは、スイッチング素子Sp1,Sn2をオンさせて且つ、スイッチング素子Sp2,Sn1をオフさせるか、スイッチング素子Sp2,Sn1をオンさせて且つ、スイッチング素子Sp1,Sn2をオフさせることで、トランス22の1次側巻線22aに交番電圧を印加し、これにより2次側巻線22bから車載バッテリ14へと充電電流を流す。
【0041】
ところで、PFC回路20とフレームグランドFGとの間には、寄生コンデンサCsが存在する。より具体的には、例えばスイッチング素子SWのコレクタ側及びフレームグランドFG間に寄生コンデンサCsが存在する。
【0042】
ここで、寄生コンデンサCsが存在すると、スイッチング素子SWが高速でオン・オフ操作されることによってスイッチング素子SWのコレクタ側及びエミッタ側のそれぞれの印加電圧が変動することに起因して、寄生コンデンサCsが充放電され、高周波のコモンモード電流が発生することがある。コモンモード電流が発生し、これがフレームグランドFGに流れると、フレームグランドFGに接続された電子機器に障害を与えたり、外部への電磁放射ノイズを生じさせたりするおそれがある。
【0043】
こうした事態の発生を抑制すべく、本実施形態では、充電装置10に上記YコンデンサCY及びコモンモードチョーク16を備えている。以下、図2及び図3を用いて、コモンモード電流対策のうちコモンモードチョーク16について説明する。
【0044】
図2に、先の図1に示す回路のうち、コモンモードチョーク16を含むコモンモード電流が流れる電気経路の等価回路を示す。なお、図中、コモンモードチョーク16の1次側巻線16a,16bの励磁インダクタンスをLtで示し、抵抗体16dの抵抗値をrtで示し、寄生コンデンサCsの容量をCで示し、コモンモード経路の配線インダクタンスの合計値をLで示している。ここで、配線インダクタンスとしては、例えば、YコンデンサCYのうち高電位側と第1の整流回路18とを接続する配線上のものや、フレームグランドFG上のもの、更には平滑コンデンサ11の低電位側と外部電源12とを接続する配線上のものが想定される(先の図1参照)。
【0045】
図2に示すように、コモンモード電流が流れる電気経路の等価回路は、励磁インダクタンスLtを有するリアクトル及び抵抗値rtを有する抵抗体の並列接続体と、配線インダクタンスLを有するリアクトルと、容量Cを有する寄生コンデンサCsとの直列接続体からなる。
【0046】
こうした等価回路のインピーダンスZの周波数応答関数を図3(a)に示す。図中実線にて示すように、インピーダンスZは、共振周波数f0において極小値をとって且つ共振周波数f0からコモンモード電流の周波数fが離れるほど大きくなる傾向にある。こうしたインピーダンスZの周波数特性を有する場合、同図(b)の実線にて示すように、コモンモードチョーク16によるコモンモード電流(ノイズ)の低減効果を得ることができる。
【0047】
ちなみに、コモンモードチョーク16に抵抗体16dを備えない場合の等価回路のインピーダンスZ及びノイズの低減効果を図3(a)及び図3(b)に一点鎖線にて併せて示している。詳しくは、同図(a)に示すように、抵抗体16dを備えないコモンモードチョークを充電装置10に適用する場合、抵抗体16dを備えるコモンモードチョーク16を適用する場合と比較して、等価回路のインピーダンスZが全周波数域において小さくなっている。特に、共振周波数f0近傍におけるインピーダンスZの低下度合いが大きくなり、具体的には、抵抗体16dの抵抗値rtだけ低下している。このため、同図(b)の一点鎖線にて示すように、抵抗体16dを備えるコモンモードチョーク16を適用する場合と比較して、ノイズの低減効果が小さくなっている。すなわち、抵抗体16dを備えるコモンモードチョーク16によれば、ノイズ(コモンモード電流のピーク値及び実効値)の低減効果を向上させることができる。
【0048】
次に、図4を用いて、本実施形態にかかるコモンモードチョーク16の構造について説明する。なお、図4(a)は、コモンモードチョーク16の正面図であり、図4(b)は、コモンモードチョーク16の一部の斜視図である。なお、図4(b)では、コモンモードチョーク16を構成する部品のうち1次側巻線16a,16b及びコアの図示を省略している。また、後述する絶縁ケースのうち一対の1次側巻線16a,16bが巻回される部分、及びこれら部分が仕切部36cに接続される部分の図示を省略している。
【0049】
図4(a)に示すように、コモンモードチョーク16は、一対の1次側巻線16a,16b、2次側巻線16c、抵抗体16d、コア(トロイダルコア17)及び絶縁ケース36を備えて構成されている。
【0050】
トロイダルコア17は、その断面が略矩形状であって且つ、図中破線にて示すようにコアの正面視において円環状をなしている。トロイダルコア17は、磁性体(例えばフェライト)からなる部材である。
【0051】
巻線(1次側巻線16a,16b及び2次側巻線16c)は、その断面が略円形であって且つ表面に絶縁被膜が施された導線(例えば銅線)からなるものである。本実施形態では、2次側巻線16cの線径φD2が1次側巻線16a,16bの線径φD1よりも小さく設定されている。この設定は、コモンモードチョーク16の体格の増大を抑制するためのものである。ここで、2次側巻線16cの線径を小さくすることが可能であるのは、一対の1次側巻線16a,16bにコモンモード電流が流れることに伴い生じる電磁誘導によって2次側巻線16cに流れる電流が、1次側巻線16a,16bに通常流れる電流と比較して小さいことに基づくものである。
【0052】
なお、以降、本実施形態において、コアの中心軸線Lα(図中2点鎖線にて表記)によって囲まれて形成される面(真円形状の面)と直交する方向を基準方向と称することとする。ここで、中心軸線Lαとは、コアの断面の中心を通る軸線(コアの断面の中心を結んでなる軸線)のことであり、より具体的には、コアの円周方向に(円を描くように延びる)軸線のことである。
【0053】
絶縁ケース36は、トロイダルコア17を収容して且つ非導電性材料(例えば樹脂)からなる部材であり、トロイダルコア17を収容した状態(絶縁ケース36をコアに装着した状態)において、一対の巻回部36a,36bと、仕切部36cとを有する。詳しくは、仕切部36cは、コアのうち対向する一対の部分同士を連結するように且つ基準方向と直交する方向に延びる部分であり、より詳しくは、トロイダルコア17を基準方向から見た場合においてトロイダルコア17を2分するように直線状に延びる部材である。そして、仕切部36cによって2分された領域である上記一対の巻回部36a,36bのそれぞれに一対の1次側巻線16a,16bのそれぞれが巻回されている。こうした仕切部36cによれば、一対の1次側巻線16a,16bのそれぞれの間を絶縁することができる。なお、本実施形態では、仕切部36cは、絶縁ケース36と一体成型されている。
【0054】
巻回部36a,36bのそれぞれは、コモンモードチョーク16を基準方向から見た場合(コモンモードチョーク16の正面視)において、円環を2分した形状をなしており、トロイダルコア17及び1次側巻線16a,16bの間を絶縁する機能を有する。そして、巻回部36a,36bのそれぞれには、一対の1次側巻線16a,16bのそれぞれが複数回巻回されている。
【0055】
コモンモードチョーク16には、更に、固定台(ベースプレート38)が備えられている。ベースプレート38は、仕切部36cが延びる方向(図中、上下方向)と直交する略矩形状(長方形状)の板状部材であり、仕切部36cに固定されている。詳しくは、ベースプレート38の下面には、1次側巻線16aの巻き始め及び巻き終わりのそれぞれと接続される一対の端子Ca1,Ca2と、1次側巻線16bの巻き始め及び巻き終わりのそれぞれと接続される一対の端子Cb1,Cb2とが設けられている。具体的には、ベースプレート38の板面の4隅に、ベースプレート38と平行な平面と直交する方向に延びるように端子Ca1,Ca2,Cb1,Cb2が設けられている。
【0056】
ちなみに、端子Ca1,Ca2,Cb1,Cb2は充電装置10を構成する図示しない回路基板の取付部(スルーホール)にはんだにて接続される。また、図4(a)では、1次側巻線16a(16b)のうち略中央部分から端子Ca2(Cb2)まで延びる部分の図示を省略している。
【0057】
仕切部36cには、上記基準方向に仕切部36cを貫通する1つの貫通孔40が形成されている。具体的には、仕切部36cの正面視において、トロイダルコア17と仕切部36cとが交差する一対の部分のうちベースプレート38から遠い方の近傍に貫通孔40が形成されている。そして、図4(b)に示すように、2次側巻線16cは、貫通孔40を通ってトロイダルコア17に巻回されている。なお、図4(b)には、2次側巻線16cをトロイダルコア17に1回巻回する場合を示しているが、これに限らず複数回巻回されていてもよい。
【0058】
2次側巻線16cの両端には、1つの抵抗体16dが接続されている。抵抗体16dは、仕切部36cの上面に接触するように設けられている。すなわち、コモンモードチョーク16の仕切部36c上(コモンモードチョーク16本体)に一体的に設けられている。
【0059】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0060】
(1)コモンモードチョーク16の仕切部36cの上面に抵抗体16dを接触させて設けた。これにより、コモンモードチョーク16の体格の増大を好適に抑制することができる。すなわち、コモンモードチョーク16の小型化を図ることができる。
【0061】
(2)仕切部36cに貫通孔40を形成し、この貫通孔40を通して2次側巻線16cを巻回した。このため、仕切部36cを有効利用することができ、コモンモードチョーク16の体格の増大をより好適に抑制することができる。さらに、非導電性材料からなる仕切部36cに2次側巻線16cを巻回するため、2次側巻線16cと、これに隣接する一対の1次側巻線16a,16bのそれぞれとの絶縁を適切に確保することもできる。
【0062】
(3)2次側巻線16cの線径φD2を1次側巻線16a,16bの線径φD1よりも小さくした。これにより、2次側巻線16cを巻回するために要するスペースの増大を抑制することができ、ひいてはコモンモードチョーク16の体格の増大をいっそう好適に抑制することができる。
【0063】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0064】
本実施形態では、抵抗体16dを、コモンモードチョーク16とは別の部材である回路基板上に設ける。以下、図5を用いて、本実施形態にかかるコモンモードチョーク16の構造について説明する。
【0065】
図5は、本実施形態にかかるコモンモードチョーク16の斜視図である。なお、図5において、先の図4に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0066】
図示されるように、本実施形態では、2次側巻線16cを巻回する位置を変更している。詳しくは、仕切部36cの正面視において、仕切部36cとトロイダルコア17とが交差する一対の部分のうち、ベースプレート38に近い方を挟むように2つの貫通孔44u,44lが形成されている。そして、これら貫通孔44u,44lを通るように2次側巻線16cが巻回されている。
【0067】
ベースプレート38には、上記端子Ca1,Ca2,Cb1,Cb2に加えて、一対の端子(抵抗接続端子T1,T2)が設けられている。抵抗接続端子T1,T2は、ベースプレート38の下面からこのプレートの板面と略直交する方向に延びるように設けられており、1対の抵抗接続端子T1,T2のそれぞれには、2次側巻線16cの両端のそれぞれが接続されている。
【0068】
回路基板46(プリント基板)上には、抵抗体16dが設けられている。回路基板46は、樹脂等からなる絶縁基材に、銅などの導電材料からなる配線パターンを配置してなる平面矩形状(長方形状)の部材である。
【0069】
また、回路基板46上には、抵抗体16dの両端のそれぞれと接続される配線パターン48,50が形成されている。そして、各配線パターン48,50の両端のうち抵抗体16dと接続される側の反対側には、上記抵抗接続端子T1,T2を取り付けるための取付部(スルーホール52,54)が形成されている。なお、回路基板46上には、端子Ca1,Ca2,Cb1,Cb2を取り付けるためのスルーホールも形成されている。
【0070】
こうした構成において、一対の抵抗接続端子T1,T2を回路基板46のスルーホール52,54等に通してはんだづけ接続することで、回路基板46上の配線パターン48,50、2次側巻線16c及び抵抗体16dからなる閉ループ回路が形成される。
【0071】
こうした2次側巻線16c及び抵抗体16dの接続手法によれば、コモンモードチョーク16の組み立て工程において、例えば上記第1の実施形態のような仕切部36cの上面に抵抗体16dを設ける場合と異なり、抵抗体16dと2次側巻線16cとを立体的に接続する等の工程を無くすことができる。これにより、コモンモードチョーク16の組み立て工程における工数の増大を抑制することができる。
【0072】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0073】
図6に、本実施形態にかかるコモンモードチョーク16の構造を示す。詳しくは、図6は、コモンモードチョーク16の部分拡大正面図である。なお、図6において、先の図4に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0074】
図示されるように、本実施形態では、仕切部36cの上面に基準方向に沿って溝56を設け、抵抗体16dと、仕切部36cの上面側を通る2次側巻線16cを溝56に収容する。ここで、本実施形態では、溝56の断面形状を矩形状としている。また、溝56の深さは、コモンモードチョーク16の正面視において抵抗体16dの長さlrよりも大きくなるように設定すればよい。
【0075】
こうした溝56を設定することにより、2次側巻線16cと、これに隣接する1対の1次側巻線16a,16bのそれぞれとの絶縁距離(図中、「lα+lβ」にて表記)を、例えば上記第1の実施形態における2次側巻線16c及び1次側巻線16a,16bの間の絶縁距離lβと比較して長くすることができる。すなわち、2次側巻線16cと1次側巻線16a,16bとの絶縁をいっそう好適に確保することができる。
【0076】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0077】
・抵抗体16dを設ける位置としては、上記第1の実施形態に例示したものに限らない。例えば、図7に示すように、仕切部36cの側面に抵抗体16dが接触する構成としてもよい。
【0078】
また、例えば、図8に示すように、コモンモードチョーク16の正面視において、ベースプレート38の上面と巻回部36aとの間に存在する隙間領域に抵抗体16dを設ける構成としてもよい。なお、図7及び図8では、端子Ca1,Ca2,Cb1,Cb2等の図示を省略している。
【0079】
・変換手段としては、抵抗体16dに限らない。例えば、図9(a)に示すように、フェライトビーズインダクタ58を用いてもよい。この場合であっても、ノイズを熱に変換してノイズ低減効果を得ることができる。なお、上記第2の実施形態において上記インダクタを用いる場合、チップフェライトビーズインダクタを回路基板46上に実装することとなる。
【0080】
また、例えば、2次側巻線16cを含む閉ループ回路の配線長を長くしたり、抵抗値の高い(線抵抗の高い)材質からなる配線を採用したりすることで、抵抗体を備えない構成としてもよい。この場合、例えば、図9(b)に示すように、配線を複数回巻回した多重巻線のみによって2次側巻線を有する閉ループ回路を形成してもよい。
【0081】
・コモンモードチョーク16に備えられるコアとしてはトロイダルコアに限らない。例えば、図10に示すように、例えばE型コア及びI型コアからなるEI型コア60であってもよい。この場合、ノイズ低減効果を向上させる観点から、2次側巻線16cをEI型コア60の中央部60aに巻回することが望ましい。これは、1次側巻線16a,16bにコモンモード電流が流れる場合におけるコア内の磁束密度が、EI型コア60の端部60bよりも中央部60aの方が高いことによるものである。なお、中央部60aには通常、1次側巻線16a,16bを巻回するためのボビンが装着されることから、ボビンに2次側巻線16cを設けるスペースを確保可能であるなら、ボビン上に2次側巻線を巻回することもできる。
【0082】
・スイッチング素子としては、IGBTに限らず、例えばパワーMOS電界効果トランジスタであってもよい。
【0083】
・コモンモードチョーク16に接続される所定の電力供給対象としては、PFC回路20に限らず、例えば、モータジェネレータを操作するインバータであってもよい。
【0084】
・上記第3の実施形態では、溝56を仕切部36cの上面のみに形成したがこれに限らず、例えば、仕切部36cの側面にも溝を形成してもよい。
【0085】
・1次側巻線16a,16bと2次側巻線16cとの絶縁距離を長くする手法としては、上記第3の実施形態に例示したものに限らない。例えば、仕切部36c内に抵抗体16dと2次側巻線16cとを埋め込むような構成を採用してもよい。
【0086】
・上記各実施形態において、コアの断面形状としては、略矩形状に限らず、例えば略円形状であってもよい。
【0087】
・本願発明が適用される車両としては、PHVに限らず、例えば車載主機として回転機のみを備える電動車両(EV)であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
12…外部電源、16…コモンモードチョーク、16d…抵抗体、17…トロイダルコア、20…PFC回路、36…絶縁ケース、36c…仕切部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と所定の電力供給対象との間を接続して且つコアに巻回される一対の1次側巻線と、前記コアに巻回される2次側巻線を有する閉ループ回路とを備えるコモンモードチョークコイルであって、
前記閉ループ回路を流れる電流を熱に変換する変換手段を備え、
前記変換手段は、当該コモンモードチョークコイルに一体的に設けられていることを特徴とするコモンモードチョークコイル。
【請求項2】
電源と所定の電力供給対象との間を接続して且つコアに巻回される一対の1次側巻線と、前記コアに巻回される2次側巻線とを備え、回路基板に実装されるコモンモードチョークコイルであって、
前記2次側巻線の両端のそれぞれは、当該コモンモードチョークコイルと一体的に設けられる一対の端子のそれぞれに接続され、
前記回路基板には、自身に流れる電流を熱に変換する変換手段、一対の取付部、及び該一対の取付部のそれぞれと前記変換手段とを電気的に接続する配線パターンが設けられ、
前記一対の端子のそれぞれは、前記一対の取付部のそれぞれに取り付け可能とされていることを特徴とするコモンモードチョークコイル。
【請求項3】
前記コアは、環状をなしており、
前記コアには、非導電性材料からなって且つ該コアを2分するように直線状に延びる仕切部材が装着され、
前記一対の1次側巻線のそれぞれは、前記コアのうち前記仕切部材によって2分された領域のそれぞれに巻回され、
前記仕切部材には、該仕切部材が延びる方向と略直交する方向に貫通孔が形成され、
前記2次側巻線は、前記貫通孔を通って前記コアに巻回され、
前記変換手段は、前記仕切部材に一体的に設けられていることを特徴とする請求項1記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項4】
電源と所定の電力供給対象との間を接続して且つコアに巻回される一対の1次側巻線と、前記コアに巻回される2次側巻線を有する閉ループ回路とを備えるコモンモードチョークコイルであって、
前記閉ループ回路を流れる電流を熱に変換する変換手段を備え、
前記コアは、環状をなしており、
前記コアには、非導電性材料からなって且つ該コアを2分するように直線状に延びる仕切部材が装着され、
前記一対の1次側巻線のそれぞれは、前記コアのうち前記仕切部材によって2分された領域のそれぞれに巻回され、
前記仕切部材には、該仕切部材が延びる方向と略直交する方向に貫通孔が形成され、
前記2次側巻線は、前記貫通孔を通って前記コアに巻回されていることを特徴とするコモンモードチョークコイル。
【請求項5】
前記2次側巻線の線径は、前記1次側巻線の線径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項6】
電源と所定の電力供給対象との間を接続して且つコアに巻回される一対の1次側巻線と、前記コアに巻回される2次側巻線を有する閉ループ回路とを備えるコモンモードチョークコイルであって、
前記閉ループ回路を流れる電流を熱に変換する変換手段を備え、
前記2次側巻線の線径は、前記1次側巻線の線径よりも小さいことを特徴とするコモンモードチョークコイル。
【請求項7】
前記変換手段は、抵抗体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−38935(P2013−38935A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173564(P2011−173564)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】